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特開2024-92473コンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092473
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】コンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
E21D9/06 311A
E21D9/06 331
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208418
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000189903
【氏名又は名称】植村 誠
(71)【出願人】
【識別番号】501200491
【氏名又は名称】植村 賢治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【弁理士】
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】植村 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 賢治郎
(72)【発明者】
【氏名】日浦 正一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元晶
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AB05
2D054AC16
2D054AC18
2D054FA13
(57)【要約】
【課題】発進立坑坑口部分に負担を掛けることなく、発進立坑からコンクリート函体を前方へ推進させる場合に生じるフリクションカットプレートの移動などを防止し、かつ構造簡易なので立坑内作業にも支障をきたさないコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置を提供する。
【解決手段】コンクリート函体4の上面に並列で敷設する前記フリクションカットプレート23の端部の上に掛止桁25を横架し、この掛止桁25はその端部を発進立坑8の前面の坑口部両端の鏡土留矢板11に係合させる場合において、発進立坑8の形成の左右土留鋼矢板10の内側に発進立坑8の後端に向けて反力伝達部材29を取付け、この反力伝達部材29と掛止桁25の端部とを固定した。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート函体の上面に並列で敷設する前記フリクションカットプレートの端部の上に掛止桁を横架し、この掛止桁はその端部を発進立坑前面の坑口部両端の鏡土留矢板に係合させる場合において、発進立坑形成の左右土留鋼矢板の内側に発進立坑の後端に向けて反力伝達部材を取付け、この反力伝達部材と掛止桁端部とを固定したことを特徴とするコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置。
【請求項2】
反力伝達部材と掛止桁とで平面コの字状の枠をその開放端を後方に向けて形成する請求項1記載のコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋が両側に密着したような狭隘な施工箇所や、既設橋下を横断しての函渠敷設、鉄道などの高架橋下の横断施工等、架空制限がある場合などでは、左右の側壁板とこれら側壁板に連結する底板とからなる前面、後面及び上面を開口したオープンシールド機を使用したオープンシールド工法が採用されることがあり、オープンシールド工法の一つとして、オープンシールド機をコンクリート函体を反力にシールドジャッキにより推進し、一方コンクリート函体を発進立坑内に設置した元押しジャッキにより順次推進・敷設するものがある。
【0003】
前記オープンシールド工法でのオープンシールド機1は布設するコンクリート函体の幅とシールド機の幅が同一で、前記側壁板1aと底板の先端を刃口として形成し、また側壁板1aの中央又は後端近くにシールドジャッキ3を後方に向け上下に並べて配設する。前記刃口のうち、側壁部分はスライド式土留17として分割して可動に形成されている(図11参照)。
【0004】
図8図10に示すように、発進立坑8にはジャッキ架台27(図8では省略)に配置する元押しジャッキ14、および前記元押しジャッキ14の伸長によるコンクリート函体4の推進反力を支持するための支圧壁9を設置する。支圧壁9は鋼材を井桁状に組み、または無筋コンクリートを打設するものとし必要に応じ鉄筋コンクリートとする。支圧壁9の前面には鋼板による支圧板を配置している。
【0005】
また、発進立坑8にH鋼をレール状に並べその上の全面に鉄板を設置してシールド機の据付及び発進のための受台18を形成する。
【0006】
発進立坑8内にオープンシールド機1を設置し、推進させ、オープンシールド機1と元押しジャッキ14との間にコンクリート函体4を設置し、元押しジャッキ14で推進させる。コンクリート函体4の上部に砂等の埋戻土5を施す。
【0007】
図中23は函体と埋戻土の縁を切り、函体のみを推進させるために設置するフリクションカットプレートで、帯状の薄鉄板等からなり、コンクリート函体4の上に並列に敷設して、一枚一枚は順次短尺のものを溶接等で繋げることで長く形成し、発進立坑8から外に出た所から設置していく。
【0008】
オープンシールド機1の推進は、布設したコンクリート函体4を反力にシールド機内部に装置したシールドジャッキ3により推進させる。
【0009】
その次に、支圧壁9を反力に元押しジャッキ14を前方へ伸長し、発進立坑8内に布設した全てのコンクリート函体4を推進させる函体推進工程に移行する。
【0010】
コンクリート函体4の上面に並列で敷設する前記フリクションカットプレート23はその端部の上に掛止桁25を横架し、フリクションカットプレート23に突設した三角形状の係止フランジ24でこの掛止桁25にフリクションカットプレート23を固定する。
【0011】
また、前記掛止桁25はその端部を発進立坑8前面の坑口部両端の鏡土留矢板11に係合させた。
【0012】
このようにしてコンクリート函体4の推進時に生じる函体上部と函体上部の埋戻土または地山とのフリクションによるフリクションカットプレート23が前方に引っ張られる力に対して、前記発進立坑8前面の坑口部両端の鏡土留矢板11と掛止桁25が係合した部分の鏡土留矢板11前方の地山の受働土圧で支持する。
【0013】
なお、下記特許文献にはフリクションカット部材を地下道外郭構造体の接触面での摩擦抵抗により共動しないように、タイロッド部材や油圧ジャッキなどで反力壁に固定することが示されている。
【特許文献1】特開2008-144377号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記図8図10に示す従来の方法では、函体推進時に掛止桁25に伝達されるフリクションカットプレート23が受ける函体との摩擦抵抗による引張り力は、前記掛止桁25と坑口部両端の鏡土留矢板11との係合部分のみで支持されるものである。
【0015】
したがって、坑口部分の土留が変形し周辺地盤への影響が大きくなる懸念がある。特に、発進立坑8が家屋等に近接している場合はその影響が大きく懸念される。
【0016】
また、前記特許文献1ではタイロット部材数が多く、これが発進立坑内へのコンクリート函体の吊り下ろしに支障をきたす。
【0017】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、発進立坑坑口部分に負担を掛けることなく、発進立坑からコンクリート函体を前方へ推進させる場合に生じるフリクションカットプレートの移動などを防止し、かつ構造簡易なので立坑内作業にも支障をきたさないコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するため本発明は、第1に、コンクリート函体の上面に並列で敷設する前記フリクションカットプレートの端部の上に掛止桁を横架し、この掛止桁はその端部を発進立坑前面の坑口部両端の鏡土留矢板に係合させる場合において、発進立坑形成の左右土留鋼矢板の内側に発進立坑の後端に向けて反力伝達部材を取付け、この反力伝達部材と掛止桁端部とを固定したこと、第2に、反力伝達部材は少なくとも発進立坑奥行の半分以上の長さとすること、反力伝達部材と掛止桁とで平面コの字状の枠をその開放端を後方に向けて形成することを要旨とするものである。
【0019】
請求項1記載の本発明によれば、発進立坑形成の左右土留鋼矢板の内側に発進立坑の後端に向けて反力伝達部材を取付け、この反力伝達部材と掛止桁端部とを固定したので、コンクリート函体推進時において、コンクリート函体上面に配設されたフリクションカットプレートの摩擦により生じる引張力に対して、発進立坑前面の坑口部両端の鏡土留矢板のみに負担を掛けることなく、土留鋼矢板に横架した反力伝達鋼材による抵抗力が加わるので、確実にフリクションカットプレートの移動を防止できる。
【0020】
また、反力伝達鋼材は発進立坑内面の周囲に設置されるので、発進立坑での函体吊り下ろし等の上下作業に支障せず、安全に発進立坑での作業を行うことができる。
【0021】
請求項2記載の本発明によれば、反力伝達部材と掛止桁とで平面コの字状の枠をその開放端を後方に向けて形成するので、コの字状の枠の内部に十分な空間を確保でき、コンクリート函体の吊下ろしなど立坑内作業にも支障をきたすことがない。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように本発明のフリクションカットプレートの固定装置は、発進立坑坑口部分に負担を掛けることなく、発進立坑からコンクリート函体を前方へ推進させる場合に生じるフリクションカットプレートの移動などを防止し、かつ構造簡易なので立坑内作業にも支障をきたさないものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のフリクションカットプレートの固定装置の1実施形態を示す平面図である。
図2】本発明のフリクションカットプレートの固定装置の1実施形態を示す縦断側面図である。
図3図1のA-A線矢視図である。
図4図1のB-B線矢視図である。
図5図1のC部の拡大図である。
図6】本発明のフリクションカットプレートの固定装置の要部の部分拡大側面図である。
図7】本発明のフリクションカットプレートの固定装置の反力伝達部材の正面図である。
図8】従来例を示す平面図である。
図9】従来例を示す縦断側面である。
図10図8のF-F線矢視図である。
図11】オープンシールド工法の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のコンクリート函体推進におけるフリクションカットプレートの固定装置および固定方法の1実施形態を示す平面図、図2は同上縦断側面図で、図中8は発進立坑を示す。
【0025】
この発進立坑8はオープンシールド工法におけるシールド機の発進立坑であり、オープンシールド工法は図11に示すように、左右の側壁板1aとこれら側壁板1aに連結する底板とからなる前面、後面及び上面を開口したシールド機であるオープンシールド機1を使用するもので、オープンシールド機1は布設するコンクリート函体4の幅とシールド機の幅が同一で、前記側壁板1aと底板の先端を刃口2として形成し、また側壁板1aの中央又は後端近くにシールドジャッキ3を後方に向け上下に並べて配している。
【0026】
前記刃口2は側壁部分は掘削時に側部の地山崩壊を防止するためスライド式土留17として分割して可動に形成されている。
【0027】
発進立坑8は鋼矢板工法、親杭横矢板工法、ライナープレート工法等により築造され、シートパイル等の土留鋼矢板10で構成される。
【0028】
発進立坑8にはコンクリート函体4を発進立坑の所定の位置に据え付け後、前方へ函体4を推進させるための元押しジャッキ14と、前記元押しジャッキ14の伸長による函体4の推進反力を支持するための支圧壁9とを設置した。
【0029】
支圧壁9は鋼材を井桁状に組み、または無筋コンクリートを打設するものとし、必要に応じ鉄筋コンクリートとする。元押しジャッキ14は鋼材を組んで形成するジャッキ架台27に収納する。
【0030】
発進立坑8内では、砕石基礎20の上に均しコンクリート19を敷設し、その上にH鋼をレール状に並べその上の全面に鉄板を設置して構成したシールド機の据付及び発進のための受台18を形成した。
【0031】
図示は省略するが、発進立坑8内にオープンシールド機を設置し、推進させ、オープンシールド機と元押しジャッキ14との間にコンクリート函体4を設置し、元押しジャッキ14で推進させる。
【0032】
このようなコンクリート函体4の推進に際し、フリクションカットプレート23をコンクリート函体4の上面に敷設して並列配設するが、その固定装置としては、並列するフリクションカットプレート23端部上に横架する掛止桁25と
発進立坑8形成の左右土留鋼矢板10の内側に発進立坑8の後端に向けて取付ける反力伝達部材29とからなるものとした。
【0033】
前記掛止桁25はフリクションカットプレート23に突設した三角形状の係止フランジ24でフリクションカットプレート23に固定する。
【0034】
また、掛止桁25はその端部を発進立坑8前面の坑口部両端の鏡土留矢板11に係合させた。
【0035】
前記反力伝達部材29は図7に示すように溝形鋼を利用し、アングル材による固定材35を添えて土留鋼矢板10に溶接固定した。
【0036】
掛止桁25と反力伝達部材29は図5に示すように接続用ボルト・ナット30で固定し、反力伝達部材29は掛止桁25に直交するように発進立坑8の後端側に向けて設けられるので、反力伝達部材29と掛止桁25とで平面コの字状の枠をその開放端を後方に向けて形成することになる。
【0037】
また、反力伝達部材29の長さは少なくとも発進立坑奥行の半分以上の長さとするのが望ましい。
【0038】
使用法について説明すると、コンクリート函体4の推進時、コンクリート函体4とその上面に配設したフリクションカットプレート23の接触面の摩擦により、フリクションカットプレート23はコンクリート函体4の推進方向へ引っ張られようとする。
【0039】
それに伴って、掛止桁25も引っ張られようとするが、掛止桁25に伝達された引張力は鏡土留矢板11を介して埋戻土5に支持された状態になっており、受働土圧が反力として抵抗する。
【0040】
それに加えて、前記の反力伝達鋼材29にもフリクションカットプレート23の引張力が掛止桁25を介して土留鋼矢板10に横架された反力伝達部材29に伝達され、反力伝達部材29には反力が生じ、フリクションカットプレート23の引張力に対して抵抗する。
【0041】
反力伝達部材29は発進立坑8の土留鋼矢板10に、発進立坑延長の半分程横架されているが、推進させるコンクリート函体4の規模や敷設深さによって、推進時のフリクションカットプレートに生じる引張力がさらに大きくなると想定される場合は、さらに後方に向けて反力伝達部材29を延長して土留鋼矢板10に横架することが可能である。
【0042】
また、推進させたコンクリート函体4の後に新なコンクリート函体4を吊下ろすのに、反力伝達部材29と掛止桁25とで平面コの字状となっているので十分な空間を確保できる。
【符号の説明】
【0043】
1…オープンシールド機 1a…側壁板
2…刃口 3…シールドジャッキ
4…コンクリート函体 5…埋戻土
8…発進立坑 9…反力壁
10…土留鋼矢板 11…鏡土留矢板
12…支保工 14…元押しジャッキ
17…スライド式土留 18…受台
19…均しコンクリート 20…砕石基礎
23…フリクションカットプレート
24…係止フランジ 25…掛止桁
27…ジャッキ架台 29…反力伝達部材
30…接続用ボルト・ナット 34…支圧板
35…固定材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11