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特開2024-92479通信制御装置、通信端末、通信システム、通信制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092479
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】通信制御装置、通信端末、通信システム、通信制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/28 20090101AFI20240701BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20240701BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20240701BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20240701BHJP
   H04W 16/10 20090101ALI20240701BHJP
【FI】
H04W16/28
H04W88/02 140
H04B7/06 956
H04B7/08 804
H04W16/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208435
(22)【出願日】2022-12-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G研究開発促進事業/次世代の5次元モバイルインフラ技術の研究開発」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昂平
(72)【発明者】
【氏名】小野 真和
(72)【発明者】
【氏名】船田 純一
(72)【発明者】
【氏名】若藤 健司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真吾
(72)【発明者】
【氏名】須尭 一志
(72)【発明者】
【氏名】林 和幸
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA11
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067FF03
5K067FF16
5K067KK03
(57)【要約】
【課題】複数の基地局を効率的に利用する。
【解決手段】通信制御装置(1)は、複数の基地局(4,5)と、複数の領域の何れかに位置する複数の通信端末(8)と、の間での通信を制御する通信制御装置であって、制御部(11)を備え、前記制御部は、前記複数の通信端末の位置を予測した端末位置予測情報(T1)と、前記複数の基地局と、各基地局からの電波のビーム方向と、前記複数の領域と、各領域内での前記電波の受信電力と、を関連付ける電波環境データベース(DB)と、に基づいて、前記複数の通信端末のアンテナ(83)の指向方向(BT)を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局と、複数の領域の何れかに位置する複数の通信端末と、の間での通信を制御する通信制御装置であって、
制御部を備え、
前記制御部は、
前記複数の通信端末の位置を予測した端末位置予測情報と、
前記複数の基地局と、各基地局からの電波のビーム方向と、前記複数の領域と、各領域内での前記電波の受信電力と、を関連付ける電波環境データベースと、
に基づいて、
前記複数の通信端末のアンテナの指向方向を決定する、通信制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電波環境データベースに基づき、所定の領域内の通信端末のアンテナの指向方向を、前記所定の領域内で第1の受信強度の第1の電波のビームを送信する第1の基地局ではなく、前記所定の領域内で前記第1の受信強度より小さい第2の受信強度の第2の電波のビームを送信する第2の基地局に向けた場合において、前記第1の電波のビームが、前記第2の電波のビームに対して、干渉する度合いを算出し、
前記干渉する度合いが所定以下の場合に、
前記端末位置予測情報に基づき、前記所定の領域内に位置する通信端末のアンテナの指向方向を前記第1、第2の基地局に向けた場合それぞれでの第1、第2の通信効率を算出し、
前記第1、第2の通信効率に基づいて、前記所定の領域内に位置する通信端末のアンテナの指向方向を決定する、請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記第1の電波のビームは、前記所定の領域内での受信電力が最大であり、前記第2の電波のビームは、前記所定の領域内での受信電力が、前記第1の電波のビームに次ぐ大きさを有する、請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記所定の領域内に位置する通信端末が、前記第1、第2の基地局にアンテナの指向方向を向けた場合それぞれでの、前記第1、第2の基地局と通信可能な通信端末の第1、第2の台数を算出し、
前記第1、第2の台数に基づき、前記第1、第2の通信効率を算出する、請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記端末位置予測情報および前記電波環境データベースに基づき、前記複数の基地局がそれぞれ送信する電波による干渉の度合いが所定以上の領域を特定し、
前記特定された領域において、干渉の度合いに与える影響が最も大きい基地局を特定し、
前記特定された基地局からの電波ビームの向きを決定し、
前記決定された電波ビームの向に対応するように、前記特定された領域に位置する通信端末のアンテナの指向方向を決定する、請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記複数の基地局は、地上基地局および非地上系ネットワーク基地局が含まれ、
前記制御部は、
前記電波環境データベースに基づき、前記非地上系ネットワーク基地局からの電波のビームが所定の領域に位置する通信端末において、干渉する度合いを算出し、
前記干渉する度合いが、所定以上の場合に、前記非地上系ネットワーク基地局を避けるように地上基地局に向けるか、または、前記非地上系ネットワーク基地局に向けるように、前記所定の領域に位置する通信端末のアンテナの指向方向を決定する、請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の通信制御装置が決定したアンテナの指向方向に基づいて、アンテナの指向方向を変化させる通信端末。
【請求項8】
請求項1~6の何れか1項に記載の通信制御装置と、請求項7に記載の通信端末とを備える通信システム。
【請求項9】
複数の基地局と、複数の領域の何れかに位置する複数の通信端末との間での通信を制御する通信制御方法であって、
前記複数の通信端末の位置を予測した端末位置予測情報と、
前記複数の基地局と、各基地局から送信される電波のビーム方向と、前記複数の領域と、各領域内での前記電波の受信電力と、を関連付ける電波環境データベースと、
に基づいて、前記複数の通信端末のアンテナの指向方向を決定する、通信制御方法。
【請求項10】
コンピュータを通信制御装置として機能させるプログラムであって、
前記コンピュータに、前記複数の通信端末の位置を予測した端末位置予測情報と、
前記複数の基地局と、各基地局から送信される電波のビーム方向と、前記複数の領域と、各領域内での前記電波の受信電力と、を関連付ける電波環境データベースと、に基づいて、
前記複数の通信端末のアンテナの指向方向を決定させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置、通信端末、通信システム、通信制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムにおいて、無線通信の高速化のために、高周波帯の電波(例えば、ミリ波)を用いることが検討されている。ここで、高周波帯の電波は、直進性が高く、且つ、減衰が大きい。このため、基地局が通信可能な範囲(セル半径)が小さくなり、複数の基地局のセルを有効に活用することが必要となる。特許文献1は、端末装置と基地局間を中継する中継装置の技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2022/224655号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1には、通信端末と基地局間での直接的な通信において、複数の基地局を効率的に利用する考え方は示されていない。さらに、特許文献1には、複数の基地局を効率的に利用するために、通信端末のアンテナの指向方向を制御する考え方も示されていない。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、複数の基地局を効率的に利用するために、通信端末のアンテナの指向方向を制御する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る通信制御装置は、複数の基地局と、複数の領域の何れかに位置する複数の通信端末と、の間での通信を制御する通信制御装置であって、制御部を備え、前記制御部は、前記複数の通信端末の位置を予測した端末位置予測情報と、前記複数の基地局と、各基地局からの電波のビーム方向と、前記複数の領域と、各領域内での前記電波の受信電力と、を関連付ける電波環境データベースと、に基づいて、前記複数の通信端末のアンテナの指向方向を決定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、端末位置予測情報、および電波環境データベースに基づいて、前記複数の通信端末のアンテナの指向方向を決定することで、複数の基地局を効率的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の例示的実施形態1に係る通信制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の例示的実施形態1に係る通信制御方法の流れを示すフロー図である。
図3】本発明の例示的実施形態2に係る通信システムの構成を示す模式図である。
図4】本発明の例示的実施形態2に係る通信制御装置の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の例示的実施形態2に係る地上基地局、NTN基地局、および通信端末の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の例示的実施形態2に係る通信制御方法の流れを示すフロー図である。
図7】本発明の例示的実施形態2に係る通信制御方法の流れの一部の一例を示す図である。
図8】本発明の例示的実施形態2に係る通信制御方法の流れの一部の一例を示す図である。
図9】本発明の例示的実施形態2に係る地上基地局からの電波のビーム方向を選択する処理の例を示す図である。
図10】本発明の例示的実施形態2に係る地上基地局からの電波のビーム方向を選択する処理の他の例を示す図である。
図11】本発明の例示的実施形態2に係る通信端末のアンテナの指向方向を変更する処理の例を示す図である。
図12】本発明の例示的実施形態2に係る地上基地局からの電波のビーム方向を変更する処理の例を示す図である。
図13】本発明の例示的実施形態2に係る地上基地局からの電波のビームの送信電力を上げる処理の例を示す図である。
図14】本発明の例示的実施形態2に係るNTN基地局からの電波のビームを調節する処理の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔例示的実施形態1〕
本発明の第1の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態は、後述する例示的実施形態の基本となる形態である。
【0010】
(通信制御装置1の構成)
本例示的実施形態に係る通信制御装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本例示的実施形態に係る通信制御装置1の構成を示すブロック図である。
【0011】
本例示的実施形態に係る通信制御装置1は、複数の基地局と、複数の領域の何れかに位置する複数の通信端末と、の間での通信を制御する通信制御装置であって、図1に示すように、制御部11を備える。制御部11は、端末位置予測情報と、電波環境データベースとに基づき、複数の通信端末のアンテナの指向方向を決定する。
【0012】
端末位置予測情報は、複数の通信端末それぞれの位置を予測した情報である。電波環境データベースは、複数の基地局と、各基地局からの電波のビーム方向と、複数の領域と、各領域内での電波の受信電力と、を関連付けるデータベースである。
【0013】
このように、本例示的実施形態に係る通信制御装置1は、端末位置予測情報と、電波環境データベースとに基づき、複数の通信端末のアンテナの指向方向を決定することで、複数の基地局と複数の通信端末との間での通信を制御する。制御部11は、通信端末のアンテナの指向方向を、例えば、以下(1)~(3)のような基準に基づいて決定することができる。これらの基準に基づく決定により、複数の基地局の効率的利用を図ることができる。
【0014】
(1)当該方向に通信端末のアンテナの指向方向を向けた場合の接続先の基地局からの受信電力が強くなる方向を選択する。任意の方向に通信端末のアンテナの指向方向を向けた場合の接続先の基地局からの受信電力は、端末位置予測情報と電波環境データベースとに基づいて推定することができる。
【0015】
(2)当該方向に通信端末のアンテナの指向方向を向けた場合の干渉の度合い(例えば、SINR)が低下する方向を選択する。任意の方向に通信端末のアンテナの指向方向を向けた場合の干渉の度合いは、端末位置予測情報と電波環境データベースとに基づいて推定することができる。
【0016】
(3)当該方向に通信端末のアンテナの指向方向を向けた場合の接続先の基地局の収容端末数(この基地局からの電波を受信する通信端末の台数)が減少する方向を選択する。任意の方向に通信端末のアンテナの指向方向を向けた場合の接続先の基地局の収容端末数は、端末位置予測情報と電波環境データベースとに基づいて推定することができる。
【0017】
(通信制御方法S1の流れ)
本例示的実施形態に係る通信制御方法S1の流れについて、図2を参照して説明する。図2は、本例示的実施形態に係る通信制御方法S1の流れを示すフロー図である。
【0018】
制御部11は、端末位置予測情報と、電波環境データベースとに基づき、複数の通信端末のアンテナの指向方向を決定する(ステップS11)。
【0019】
以上のように、本例示的実施形態に係る通信制御方法S1では、複数の基地局と、複数の通信端末との間での通信を制御する通信制御方法であって、端末位置予測情報と、電波環境データベースとに基づき、複数の通信端末のアンテナの指向方向を決定する。このため、本例示的実施形態に係る通信制御方法S1によれば、上述した通信制御装置1と同様の効果が得られる。
【0020】
〔例示的実施形態2〕
本発明の第2の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、例示的実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0021】
(通信システム100の概要および構成)
本例示的実施形態に係る通信システム100の概要および構成について、図3を参照して説明する。図3は、本例示的実施形態に係る通信システム100の構成を示す模式図である。
【0022】
図3に示すように、通信システム100は、通信制御装置1,地上基地局4(地上基地局4a~4c)、非地上系ネットワーク基地局5(以下、NTN(Non-Terrestrial Network)基地局5とも称する)、通信端末8(通信端末8a~8c)を有する。
【0023】
地上基地局4およびNTN基地局5は、複数の基地局として機能する。NTN基地局の例として、LEO(Low Earth Orbit)衛星、HAPS(High Altitude Platform Station)、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)等が挙げられる。複数の通信端末8(通信端末8a~通信端末8c)は、複数の基地局(地上基地局4、およびNTN基地局5)の何れかと通信する。通信システム100に含まれる地上基地局4、NTN基地局5、および通信端末8の数は限定されない。
【0024】
地上基地局4はそれぞれ、送信する電波のビーム方向を変更することができる。地上基地局4は、例えば、ビーム方向#0~#5を切り替えることができる(後述の図9参照)。一例として、地上基地局4aは、図3に示すように、ビーム方向#1、ビーム方向#2、およびビーム方向#5の少なくとも何れかの方向に、電波を送信することができる。
【0025】
NTN基地局5も同様に、ビーム方向を変更することができる。NTN基地局5は、複数のアンテナを備え、当該複数のアンテナの全てから電波を送信した場合に電波が届く範囲(以下、「セルの範囲」とも称する)のうち、一部の範囲をセル範囲外にするようにビーム方向を変更してもよい。具体的には、NTN基地局5は、複数のアンテナのうち、一部のアンテナから電波を送信しないことにより、一部の範囲をセル範囲外にすることができる(後述の図14参照)。
【0026】
地上基地局4は、セルの範囲内に位置する通信端末8と通信を行う。一例として、図3に示すように、通信端末8aは地上基地局4bと通信を行い、通信端末8bは地上基地局4cと通信を行う。また、NTN基地局5は、地上基地局4のセルの範囲外であり、NTN基地局5のセル範囲CSの範囲内に位置する通信端末8と通信を行う。一例として、図3に示すように、通信端末8cはNTN基地局5と通信を行う。なお、NTN基地局5は、地上基地局4のセルの範囲内の通信端末8(例えば、通信端末8a)と通信を行ってもよい。
【0027】
通信端末8は、複数の領域のいずれかに位置する。領域の例として、空間を区分する複数の領域(以下、「メッシュ」ともいう)が挙げられる(後述の図11のメッシュM11~M13を参照)。このメッシュは、広い空間内に設定される。このため、通信端末8が移動された場合であっても、通信端末8は、いずれかのメッシュ内に位置する。個々のメッシュは、例えば、番号1、2,…iで特定することができる。
【0028】
通信端末8も、基地局(地上基地局4およびNTN基地局5)と同様に、アンテナ83の指向方向を変更することができる。後述のように、通信端末8は、通信制御装置1からの指示情報に基づいて、アンテナ83の指向方向を制御して、適宜の基地局と通信できる。この結果、複数の基地局の効率的な利用が可能となる。
【0029】
通信制御装置1は、端末位置予測情報TIと、電波環境データベースDBとに基づき、複数の基地局および複数の通信端末8が送信するアンテナ83の指向方向を決定する。通信制御装置1は、この決定を基地局(地上基地局4、NTN基地局5)、および通信端末8に伝達する。この決定は、インターネットNW1、コアネットワークNW2を介して、地上基地局4に伝達され、インターネットNW1、コアネットワークNW2、およびゲートウェイGWのパラボラアンテナを介して、NTN基地局5に伝達される。通信端末8のアンテナ83の指向方向の決定は、地上基地局4またはNTN基地局5を介して、通信端末8に伝達される。通信端末8は、伝達された通信端末8のアンテナ83の指向方向に従って、アンテナ83の指向方向を変更する。
【0030】
(通信制御装置1の構成)
本例示的実施形態に係る通信制御装置1の構成について、図4を参照して説明する。図4は、本例示的実施形態に係る通信制御装置1の構成を示すブロック図である。通信制御装置1は、図4に示すように、制御部11、記憶部12、および通信部13を備える。
【0031】
制御部11は、後述の通信制御方法S2を実行する。制御部11は、例えば、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2から構成できる。メモリC2には、プロセッサC1を動作させるためのプログラムPが記録されている。プロセッサC1は、プログラムPをメモリC2から読み取り、通信制御方法S2を実行する。
【0032】
プロセッサC1としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)、量子プロセッサ、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。メモリC2としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0033】
また、プログラムPは、コンピュータCが読み取り可能な、一時的でない有形の記録媒体Mに記録することができる。このような記録媒体Mとしては、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、又はプログラマブルな論理回路などを用いることができる。プロセッサC1は、このような記録媒体Mを介してプログラムPを取得することができる。また、プログラムPは、伝送媒体を介して伝送することができる。このような伝送媒体としては、例えば、通信ネットワーク、又は放送波などを用いることができる。コンピュータCは、このような伝送媒体を介してプログラムPを取得することもできる。
【0034】
記憶部12は、制御部11が参照するデータを格納する。記憶部12に格納されているデータの一例として、電波環境データベースDBおよび端末位置予測情報TIが挙げられる。記憶部12は、複数の基地局(地上基地局4、NTN基地局5)の位置を表す基地局位置情報T2を有してもよい。NTN基地局5は移動するため、基地局位置情報T2は、時刻と関連付けたNTN基地局5の位置の情報を有することが好ましい。
【0035】
通信部13は、データを送受信するインタフェースである。通信部13が受信するデータの例として、端末位置予測情報TIが挙げられる。また、通信部13が送信するデータの例として、地上基地局4、NTN基地局5、または通信端末8に対してアンテナ83の指向方向、ビーム方向、または周波数を指示する指示情報が挙げられる。
【0036】
(地上基地局4の構成)
地上基地局4は、図5に示すように、制御部41、通信部42、およびアンテナ43を備える。
【0037】
制御部41は、通信制御装置1からの指示情報に基づいて、ビーム方向、周波数を変更する。制御部41は、通信制御装置1の制御部11と同様に、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2から構成できる。
【0038】
通信部42は、データを送受信するインタフェースである。通信部42が受信するデータの例として、送信する電波のビーム方向、送信電力、または周波数を指示する指示情報が挙げられる。
【0039】
アンテナ43は、電波を送受信する装置である。アンテナ43は、制御部41によって指示されたビーム方向に、制御部41によって指示された電力および周波数で電波を送受信する。
【0040】
(NTN基地局5の構成)
NTN基地局5は、図5に示すように、制御部51、通信部52、およびアンテナ53を備える。
【0041】
制御部51は、通信制御装置1からの指示情報に基づいて、ビーム方向、周波数を変更する。制御部51は、通信制御装置1の制御部11と同様に、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2から構成できる。
【0042】
通信部52は、データを送受信するインタフェースである。通信部52が受信するデータの例として、送信する電波のビーム方向、または周波数を指示する指示情報が挙げられる。
【0043】
アンテナ53は、電波を送受信する装置である。アンテナ43は、制御部41によって指示されたビーム方向に、制御部41によって指示された周波数で電波を送受信する。
【0044】
また、アンテナ53は、複数のアンテナ要素を有してもよい。アンテナ53の複数のアンテナ要素の一部から電波を送信しないことにより、複数のアンテナ要素の全てが電波を送信した場合のセル範囲の一部をセル範囲外にすることができる(後述の図14参照)。
【0045】
(通信端末8の構成)
通信端末8は、図5に示すように、制御部81、通信部82、およびアンテナ83を備える。
【0046】
制御部81は、通信制御装置1からの指示情報に基づいて、アンテナ83の指向方向、電波の周波数を変更する。制御部81は、通信制御装置1の制御部11と同様に、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2から構成できる。
【0047】
通信部82は、データを送受信するインタフェースである。通信部82が受信するデータの例として、アンテナ83の指向方向、または送受信する電波の周波数を指示する指示情報が挙げられる。
【0048】
アンテナ83は、電波を送受信する装置である。アンテナ83は、アンテナ83の指向方向を調整可能なアンテナであればよく、例えば、フェーズドアレイアンテナであってよい。アンテナ83は、制御部81からの制御によって、アンテナ83の指向方向、送受信する電波の周波数を変更する。なお、以下では、アンテナ83の指向方向を「アンテナ83の向き」と称することがある。
【0049】
アンテナ83は、指向性の第1のアンテナ要素と、無指向性の第2のアンテナ要素とを含んでもよい。無指向性の第2のアンテナ要素は、第1のアンテナ要素による基地局との接続以前における、指示情報の受信を容易とする。なお、指示情報は、第1、第2のアンテナ要素のいずれで、受信してもよい。
【0050】
このとき、第1、第2のアンテナ要素がそれぞれ送信する電波の第1、第2の周波数が、異なることが好ましい。第1、第2のアンテナ要素それぞれでの同時の通信が可能となる。第2の周波数には、例えば、Sub6の帯域の周波数を用いることができる。
【0051】
(端末位置予測情報TI)
端末位置予測情報TIとは、複数の通信端末8のそれぞれの位置を予測した情報である。一例として、端末位置予測情報TIは、複数の通信端末8のそれぞれから取得した位置情報の履歴に基づいて生成される。以下では、通信制御装置1の制御部11が端末位置予測情報TIを生成する方法の例について説明するが、端末位置予測情報TIは他の装置によって生成され、他の装置によって生成された端末位置予測情報TIを通信制御装置1が取得する構成であってもよい。
【0052】
例えば、制御部11は、複数の通信端末8のそれぞれから位置情報を取得し、当該位置情報に取得した日時を関連付けて記憶部12に格納する。位置情報の一例として、通信端末8がGPS(Global Positioning System)を用いて取得した位置情報が挙げられる。そして、制御部11は、ある時刻における通信端末8の位置を予測した端末位置予測情報TIを、当該ある時刻と同じ時刻に取得した位置情報に基づき生成する。制御部11は、メッシュの何れに通信端末8が位置するかを予測した端末位置予測情報TIを生成してもよい。
【0053】
(電波環境データベースDB)
電波環境データベースDBは、複数の基地局と、各基地局からの電波のビーム方向と、複数の領域(例えば、メッシュ)と、各領域内での電波の受信電力と、を関連付けるデータベースである。
【0054】
「受信電力」は、関連付けられた領域における電波の受信電力である。受信電力の一例として、関連付けられた領域が示す3次元空間における電波の受信電力の分布、または当該分布の平均値が挙げられる。
【0055】
電波環境データベースDBは、例えば、基地局、ビーム、メッシュを特定したときの受信電力を含む。例えば、基地局、その基地局からの電波のビーム、メッシュを番号n,m,iで特定した場合、受信強度Pnmiが保存される。この結果、そのメッシュi内に位置する通信端末8が基地局nからのビームmを受信する場合において、与干渉信号Iが所望信号Sに与える干渉の度合い(例えば、後述のSINR:Signal-to-Interference plus Noise power Ration)を算出できる。
【0056】
ここで、電波環境データベースDB中の受信強度Pは、通信端末8のアンテナ83の指向性をも考慮した値としてもよい。例えば、アンテナ83が複数の向きを有するとして、この向きを番号kで特定して、受信強度Pnmiを受信強度Pnmikに替えることができる。この場合、電波環境データベースDBは、複数の基地局と、各基地局からの電波のビーム方向と、複数の領域(例えば、メッシュ)と、各領域でのアンテナ83の向きと、各領域内のアンテナ83での電波の受信電力と、を関連付けるデータベースとなる。このようにすることで、電波環境データベースDBに基づいて、通信端末8のアンテナ83の向きを考慮した干渉の度合いを算出可能となる。
【0057】
一方、電波環境データベースDB中の受信強度Pは、通信端末8のアンテナ83の指向性を捨象した値としてもよい。この場合、電波環境データベースDBは、通信端末8のアンテナ83が無指向性として、受信強度Pnmiを保持する。このとき、通信端末8から通信対象とする基地局に向かう方向に対する、通信端末8のアンテナ83の向き(アンテナ83の指向方向)のずれの大きさに基づき、受信強度Pnmiを補正することができる。
【0058】
例えば、次の式(1)によって、受信強度Pnmiを補正することができる。
Pnmi(θ)=Pnmi*G(θ) …… 式(1)
Pnmi(θ):補正後の受信強度
Pnmi:補正前の受信強度
θ: 通信端末8から通信対象とする基地局に向かう方向に対する、通信端末8のアンテナ83の向き(アンテナ83の指向方向)の角度θ
G(θ):θが0のとき最大で、θが0から変化するにつれて小さくなる正の係数であり、通信端末8のアンテナ83のアンテナゲインを表す。
【0059】
すなわち、θが0のとき、アンテナ83は、通信対象の基地局の方向を向き、その基地局からの電波の受信強度が最大となる(G(θ)は最大)。θが0から変化するにつれて、その基地局からの電波の受信強度は小さくなる(G(θ)は小さくなる)。
【0060】
なお、通信端末8から通信対象とする基地局に向かう方向は、端末位置予測情報TIおよび(複数の基地局の位置を表す)基地局位置情報T2に基づき、算出できる。
【0061】
このようにして補正された受信強度Pnmi(θ)を用いることで、アンテナ83の向きを考慮した、受信強度P、ひいては、干渉の度合いを算出することが可能となる。以下では、通信端末8のアンテナ83の向き(アンテナ83の指向方向)を考慮する場合、角度θ(基地局の方向に対するアンテナ83の向きのずれ)に基づいて、電波環境データベースDB中の受信強度Pnmiを補正するものとする。
【0062】
電波環境データベースDBは、基地局と通信端末8間での通信に用いられる電波の周波数、時刻の情報を含んでもよい。この場合、例えば、電波環境データベースDBに基づいて、基地局が送信する電波のビームの周波数を、他の基地局からの電波のビームとの干渉の度合いが小さい、周波数に変更することが容易となる。また、基地局から送信される電波のビーム方向や強度の時間的変化に対応することが容易となる。例えば、NTN基地局5は、上空を周期的に移動するため、その位置、およびビーム方向は、周期的に変化する。
【0063】
(通信制御方法S2の流れ)
本例示的実施形態に係る通信制御方法S2の流れについて、図6を参照して説明する。図6は、本例示的実施形態に係る通信制御方法S2の流れを示すフロー図である。図7図8はそれぞれ、図6のステップS21,S23の詳細を示すフロー図である。
【0064】
通信制御方法S2は、通信制御装置1、特に、制御部11が、基地局(地上基地局4、NTN基地局5)、および通信端末8を制御する方法である。但し、通信制御方法S2のステップS21~S25は、基地局および通信端末8の最良のビーム方向を決定するためのステップであり、通信制御装置1は、基地局および通信端末8を制御しなくてもよい。ステップS26において、ステップS21~S25で決定されたビーム方向に基づく制御が行われる。なお、通信制御方法S2は、所定の時間間隔(例えば、30分間隔)にて繰り返し実行されてもよい。
【0065】
A.制御部11は、各地上基地局4からの電波のビームを受信する通信端末8の台数(収容端末数)が最も多くなるように、各地上基地局4の電波のビーム方向を決定する(ステップS21)。
【0066】
このステップS21は、図7に示すステップS211~S215に区分することができる。
【0067】
(1)制御部11は、地上基地局4からの電波を受信する通信端末8の台数(地上基地局4の収容端末数の総数)が最も大きくなるように、地上基地局4からのビーム方向を決定する(ステップS211)。
この段階では、後述の被干渉メッシュは考慮しない。また、通信端末8のアンテナ83の指向方向は、電波環境データベースDB上で、各メッシュにおいて、受信電力が最大の地上基地局4に向けられるとする。すなわち、ここでは、通信端末8のアンテナ83の向きに起因する受信電力の変化は無視してもよい。
【0068】
制御部11は、端末位置予測情報T1に基づき、各地上基地局4の電波のビーム方向を決定することができる。例えば、図9に示すように、制御部11は、電波のビームを受信する通信端末8が最も多いビーム♯1を選択する。このとき、地上基地局4は、ビーム♯1を受信する通信端末8aと通信し、ビーム♯4を受信する通信端末8bとは通信しない。
【0069】
このとき、制御部11は、端末位置予測情報TIおよび電波環境データベースDBに基づいて、各地上基地局4の収容端末数が最も多くなるビーム方向を選択することができる。例えば、図10に示すように、地上基地局4からのビーム#1の電波を受信する範囲において、建物の反対側に通信端末8(例えば、通信端末8a)が位置することを想定する。このとき、電波環境データベースDBにおいて、通信端末8aが位置するメッシュでの受信電力は、建物が無い場合よりも小さな値となる。すなわち、電波状況データベースDBは、建物の影響をも考慮した受信電力を保持する。
【0070】
制御部11は、送信する電波を受信する通信端末8の台数として、所定値以上の受信電力となる通信端末8をカウントする。ここで、地上基地局4に対して建物の反対側に位置する通信端末8aは、受信電力が所定値未満となり、送信する電波を受信する通信端末8の台数としてカウントされない。この結果、制御部11は、ビーム#1を受信する通信端末8の台数は、通信端末8bの1台であると算出する。一方、制御部11は、ビーム#4を受信する範囲内全ての通信端末8の受信電力は所定値以上として、ビーム#4を受信する通信端末8の台数は、通信端末8cを含む3台であると算出する。このように、制御部11は、電波環境データベースDBを用いることで、結果的に建物の影響を考慮した上で、地上基地局4が送信する電波の受信電力が所定以上の通信端末8の台数が最も多くなるように、地上基地局4のビーム方向を選択することができる。
【0071】
(2)制御部11は、被干渉メッシュの発生の有無を判定する(ステップS212)。
制御部11は、端末位置予測情報T1および電波環境データベースDBに基づき、複数の基地局がそれぞれ送信する電波による干渉の度合いが所定以上の領域(例えば、被干渉メッシュ)を特定する。被干渉メッシュは、地上基地局4の電波間での干渉の度合いが所定以上のメッシュを意味する。例えば、あるメッシュにおいて、最大受信電力の地上基地局4の電波のビームに対して、それ以外の地上基地局4の電波のビームが干渉する度合いが所定以上のメッシュが被干渉メッシュである。
【0072】
制御部11は、例えば、以下の式(2)を用いて、メッシュ#10での干渉の度合いとしてSINRを算出する。ここでは、メッシュ#10において、地上基地局#1のビーム#1が最大受信電力とする。
SINR=P1,1,10/(ΣPi,j,10+N) …(2)
1,1,10: メッシュ#10における、地上基地局#1のビーム#1の受信電力(最大受信電力)
ΣPi,j,10:メッシュ#10における、地上基地局#1以外の地上基地局からのビームの受信電力の和
N:雑音電力
【0073】
制御部11は、メッシュ#10における干渉の度合いが所定以上であれば、メッシュ#10が被干渉メッシュであると判定する(ステップS212)。
例えば、算出された干渉の度合がSINRの場合、制御部11は、次の式(3)が満たされる場合、干渉の度合いは所定以上とし、メッシュ#10は被干渉メッシュであると判定する。
SINRth≦SINRd …(3)
SINRd:通信が成立するための所望のSINRの値
SINRth:SINRの分布において、累積確率がPoutになるSINRの値
Pout:許容される通信停止確率
なお、制御部11は、次の式(4)が満たされる場合、干渉の度合いは所定未満とし、メッシュ#10は無干渉メッシュであると判定する。
SINRth>SINRd …(4)
【0074】
この判定において、制御部11は、通信端末8のアンテナ83の向きを考慮することが好ましい。例えば、制御部11は、そのメッシュ内の通信端末8のアンテナ83が、そのメッシュで最大受信電力の電波のビームを送信する地上基地局4の方を向いているとして、受信電力を補正して、干渉する度合いを算出する。既述のように、例えば、式(1)を用いて、受信電力を補正できる。
【0075】
(3)制御部11は、被干渉メッシュが無い場合、通信端末8のアンテナ83の指向方向は、電波環境データベースDB上で、各メッシュにおいて、受信電力が最大の地上基地局4に向けると決定する(ステップS215)。
【0076】
(4)制御部11は、被干渉メッシュがある場合、被干渉メッシュを考慮して、電波を受信する通信端末8の台数(地上基地局4の収容端末数の総数)が最も大きくなるように、地上基地局4からのビーム方向を決定する(ステップS213~S214)。
【0077】
制御部11は、被干渉メッシュがある場合、被干渉メッシュにおいて、干渉する度合いに最も影響が大きい地上基地局4の電波のビーム方向を変更することによって、電波を受信する通信端末8の台数(地上基地局4の収容端末数の総数)の増加を図る(ステップS213)。すなわち、制御部11は、特定された領域(例えば、被干渉メッシュ)において、干渉の度合いに与える影響が最も大きい基地局を特定し、特定された基地局からの電波ビームの向きを決定する。
【0078】
干渉する度合いに最も影響が大きい地上基地局4は、例えば、そのメッシュにおいて、最大受信電力に次ぐ受信電力の、電波のビームを送信する地上基地局4である。制御部11は、この地上基地局4からの電波を受信する通信端末8の台数(収容端末数)が最大となる方向から、収容端末数がその次に多くなる方向に、電波のビーム方向を調節する。この調節によって、被干渉メッシュでの干渉が低減され、このメッシュにおいて、地上基地局4と通信できる通信端末8の台数が増加することで、地上基地局4の収容端末数の総数が増加し得る。
【0079】
このようにして、全ての被干渉メッシュにおける地上基地局4のビーム方向が調節されたら、制御部11は、地上基地局4のビーム方向に対応するように通信端末8のビーム方向を決定する(ステップS215)。制御部11は、決定された基地局の電波のビームの向きに対応するように、特定された領域に位置する通信端末8のアンテナ83の指向方向を決定する。すなわち、地上基地局4のビーム方向が調節されたことで、そのメッシュで最大受信電力となる地上基地局4のビームが変更される。その結果、通信端末8のアンテナ83の指向方向は、新たに最大受信電力となる地上基地局4に向けられる。
【0080】
B.制御部11は、被干渉メッシュが発生しない範囲で、地上基地局4からの電波のビームの送信電力を増加させる(ステップS22)。これにより、地上基地局4での収容端末数の総数をさらに増加させ、基地局の効率的な利用が可能となる。
【0081】
例えば、送信電力に余力があり、収容端末数が多い基地局から順に、送信電力を一定値上げる。基地局での送信電力の増大によって、被干渉メッシュが発生しない場合、その基地局での送信電力をさらに一定値上げる。一方、基地局での送信電力の増大によって、被干渉メッシュが発生した場合、その基地局での送信電力を元に戻し、次に収容端末数が多い基地局での送信電力を上げる。なお、被干渉メッシュは、既述の式(2)を用いて判定できる。
【0082】
以上のようにして、送信電力に余力がある基地局の全てにおいて、被干渉メッシュが発生しない範囲で、送信電力を増加させ、基地局の収容端末数の総数の増加を図る。+このとき、送信電力を上げるたびに、通信端末8のアンテナ83の指向方向を調節することが好ましい。
【0083】
C.制御部11は、通信システム100全体での通信効率(スループット)が最大化するように、通信端末8のアンテナ83の指向方向を調節する(ステップS23)。
このステップS23は、図8に示すステップS231~S236に区分することができる。
【0084】
(1)制御部11は、各メッシュにおいて、受信電力が最大の地上基地局4(最大電力局:主セル)に、通信端末8のアンテナ83の指向方向を向けるとして、端末位置予測情報TIに基づき、各基地局での収容端末数N1を算出する(ステップS231)。
【0085】
(2)制御部11は、電波環境データベースDBに基づき、所定の干渉する度合いが所定以下の領域(例えば、耐干渉メッシュ)の有無を判定する(ステップS222)。
所定の干渉の度合いは、所定の領域内の通信端末8のアンテナ83の指向方向を、(所定の領域内で第1の受信強度の第1の電波のビームを送信する)第1の基地局ではなく、(所定の領域内で第1の受信強度より小さい第2の受信強度の第2の電波のビームを送信する)第2の基地局に向けた場合において、第1の基地局からの第1の電波のビームが、第2の基地局からの第2の電波のビームに対して、干渉する度合いである。例えば、第1の電波のビームは、所定の領域内での受信電力が最大であり、第2の電波のビームは、所定の領域内での受信電力が、第1の電波のビームに次ぐ大きさを有する。
【0086】
制御部11は、例えば、以下の式(5)を用いて、メッシュ#10での所定の干渉の度合いとしてSINR2を算出する。ここでは、メッシュ#10において、地上基地局#1のビーム#1が最大受信電力、地上基地局#2のビーム#2がこれに次ぐ受信電力とする。
SINR2=P2,2,10(0)/(P1,1、10(θ)+N) …(5)
1,1、10(θ): メッシュ#10内の通信端末8のアンテナ83を地上基地局#2に向けたときの、アンテナ83における、地上基地局#1のビーム#1の受信電力
2,2,10(0):メッシュ#10内の通信端末8のアンテナ83を地上基地局#2に向けたときの、アンテナ83における、地上基地局#2のビーム#2の受信電力
θ: 通信端末8のアンテナ83を地上基地局#2に向けたときの、アンテナ83の向きに対する、地上基地局#1の方向
N:雑音電力
なお、通信端末8のアンテナ83を地上基地局#2に向けたとき、アンテナ83の向きに対する、地上基地局#2の方向は、「P2,2,10(0)」に示されるように、θ=0となる。
【0087】
アンテナ83の向きを変化させることで、アンテナ83での第1、第2の基地局からの電波の受信電力が変化する。すなわち、本来の受信電力が小さい第2の基地局に、アンテナ83を向けることで、第2の基地局からの第2の電波の受信電力は増加し、本来の受信電力が大きい第1の基地局からの第1の電波の受信電力は低下する傾向となる。この結果、第2の基地局にアンテナ83を向けることで、本来の受信電力が大きい第1の基地局による干渉を実質的に受けることなく(所定の干渉する度合い、例えば、SINR2が、所定値Th2以下)、通信端末8が第2の基地局と通信できる可能性がある。ここでは、このような通信が可能なメッシュを耐干渉メッシュと称する。
【0088】
(3)耐干渉メッシュがある場合、制御部11は、耐干渉メッシュを選択し、耐干渉メッシュ内の通信端末8のアンテナ83の指向方向を第1の基地局に次いで、受信電力が大きい地上基地局4に向けた場合の各基地局での収容端末数N2を算出する(ステップS233)。
【0089】
(4)さらに、制御部11は、収容端末数N1,N2の場合それぞれについて、通信端末8の通信効率(スループット)を算出し(ステップS234)、通信効率がより良好な収容端末数N1,N2、最終的には、通信端末8のアンテナ83の指向方向を決定する(ステップS235)。
【0090】
一般的には、通信端末8は、受信電力が最大の地上基地局4と通信することで、高い通信効率が得られると考えられる。しかし、受信電力が最大の地上基地局4での収容端末数が多くなると、その地上基地局4との通信効率は低下する傾向となる。このため、受信電力と収容端末数の双方を勘案して、通信効率を算出する。
【0091】
すなわち、第1の基地局よりも第2の基地局に向けた方が、通信効率が高くなる場合、通信端末8のアンテナ83の指向方向を第2の基地局に向ける。例えば、図11に示すように、基地局4aからの電波のビームの受信電力が最大のメッシュ、例えば、メッシュM11中の通信端末8のアンテナ83の指向方向BTは、原則として、基地局4a(第1の基地局)に向けられる。しかし、メッシュM12,M13のように、基地局4aに次ぐ受信電力の基地局4b(第2の基地局)からの受信が可能なメッシュ(耐干渉メッシュ)においては、通信端末8のアンテナ83の指向方向BTを基地局4bに向けることができる。
【0092】
このようにして、メッシュM12,M13の通信端末8のアンテナ83の指向方向BTを基地局4aに向けた場合、基地局4bに向けた場合の双方について、基地局4a、基地局4bでの収容端末数を算出する。メッシュM12,M13の通信端末8のアンテナ83の指向方向BTを基地局4aに向けた場合、基地局4a、4bの収容端末数はそれぞれ、28,16となる。メッシュM12,M13の通信端末8のアンテナ83の指向方向BTを基地局4bに向けた場合、メッシュM12,M13中の6台の通信端末8がアンテナ83の指向方向BTを変えるため、基地局4a、4bの収容端末数はそれぞれ、22,22となる。この収容端末数の相違を勘案して、メッシュM12,M13の通信端末8のアンテナ83の指向方向BTを基地局4a、4bに向けた場合それぞれの、通信効率を算出して、メッシュM12,M13の通信端末8のアンテナ83の指向方向BTを決定する。
【0093】
制御部11は、端末位置予測情報に基づき、所定の領域内に位置する通信端末のアンテナ83の指向方向を前記第1、第2の基地局に向けた場合それぞれでの第1、第2の通信効率を算出し、第1、第2の通信効率に基づいて、前記所定の領域内に位置する通信端末のアンテナ83の指向方向を決定する。より具体的には、制御部11は、所定の領域内に位置する通信端末8が、第1、第2の基地局にアンテナ83の指向方向を向けた場合それぞれでの、第1、第2の基地局と通信可能な通信端末の第1、第2の台数を算出し、第1、第2の台数に基づき、前記第1、第2の通信効率を算出する。一例として、基地局当たりで可能な通信速度Vを収容端末数Nで割って、1台の通信端末8当たりの通信速度E(=V/N)を算出する。この通信速度Eによって、通信効率を判定できる。すなわち、通信速度Eの大小によって、通信効率の良否を判定できる。
【0094】
図11では、一例として、基地局4aのビーム♯1、基地局4bのビーム♯2の範囲から外れた通信端末8でも、受信電力が最大の基地局4a、4bの方向を向くとして、基地局4a、4bでの収容端末数を算出している。但し、収容端末数の算出に際して、ビームの範囲内か否かを勘案してもよい。
【0095】
以上のように、制御部11は、基地局の収容端末数を平準化して、通信システム100全体での通信効率を向上させることができる。
【0096】
図8に示すように、耐干渉メッシュの判定は、全てのメッシュにおいて行うことができる。但し、この判定を一部のメッシュに限定してもよい。
【0097】
(5)被干渉メッシュがある場合、制御部11は、次のように、被干渉メッシュを考慮して、収容端末数を算出してもよい。既述のように、式(3)を満たすメッシュが被干渉メッシュであり、式(4)を満たすメッシュが無干渉メッシュである。
【0098】
制御部11は、無干渉メッシュ内の通信端末8の台数を算出する。制御部11は、算出された無干渉メッシュ内の通信端末8の台数を集計して、基地局毎の収容端末数および通信システム100全体での収容端末数を算出する。なお、この算出において、通信端末8の通信効率(スループット)を考慮してもよい。例えば、一定以上の通信効率を有する通信端末8の台数を算出する。
【0099】
被干渉メッシュにおいて、干渉の度合いに影響が大きい基地局のビーム方向を変更する。例えば、基地局のビーム方向を、ビームを受信する通信端末8の台数が次に多いビーム方向とする。このようにすることで、被干渉メッシュが無干渉メッシュに変化し得る。
【0100】
制御部11は、無干渉メッシュ内の通信端末8の台数、さらに基地局毎の収容端末数および通信システム100全体での収容端末数を算出する。
【0101】
干渉の度合いに影響が大きい基地局のビーム方向を変更して、通信システム100全体での収容端末数が増えた場合、他の被干渉メッシュにおいて、干渉の度合いに影響が大きい基地局のビーム方向を変更して、通信システム100全体での収容端末数を算出する。
【0102】
被干渉メッシュにおいて、干渉の度合いに影響が大きい基地局のビーム方向を変更による通信システム100全体での収容端末数が最大になったら、収容端末数が少ない基地局のビーム方向の変更を検討する。すなわち、この基地局のビーム方向を変更して、通信システム100全体での収容端末数の増加を図る。このとき、被干渉メッシュが発生したら、干渉の度合いに影響が大きい基地局のビーム方向の変更を検討する。
【0103】
図12に示すように、基地局4a~4cからビーム♯1~♯3が送信されているとする。この場合、基地局4cからのビーム♯3は、9台の通信端末8によって受信される。しかし、ビーム♯3は、基地局4a、4bからビーム♯1、♯2と重なっているため、基地局4cの収容端末数は、6台となり、基地局4a~4cでの収容端末数の合計は、17台となる。
【0104】
これに対して、基地局4cからのビームをビーム♯4に変更すると、基地局4cからのビーム♯4は、7台の通信端末8によって受信される。そして、ビーム♯4は他のビームと重ならないため、基地局4cの収容端末数も、7台となり、基地局4a~4cでの収容端末数の合計は、21台と増加する。なお、このとき、ビーム♯4の送信強度を増加させ、ビーム♯4pとすると、図13に示すように、基地局4cの収容端末数は、9台まで増加する。
【0105】
D.NTN基地局5と通信する通信端末8およびNTN基地局5のビーム方向を決定する(ステップS24)。
例えば、地上基地局4と良好な通信効率で通信できない通信端末8をNTN基地局5と通信可能とする。このとき、制御部11は、電波環境データベースDBに基づき、NTN(非地上系ネットワーク)基地局からの電波のビームが所定の領域に位置する通信端末8において、干渉する度合いを算出する。
【0106】
制御部11は、例えば、以下の式(6)を用いて、メッシュ#10における、NTN基地局5から電波のビームにより、地上基地局4からの電波のビームが干渉される度合いとしてSINRを算出する。既述の式(3)が成立するメッシュ#10が被干渉メッシュである。
【0107】
SINR=P1,1,10/(P(t)+N) …(6)
1,1、10:メッシュ#10における、地上基地局#1のビーム#1の受信電力
(t):メッシュ#10における、時刻tでのNTN基地局5のビームの受信電力
N:雑音電力
【0108】
ここで、NTN基地局5は常時移動しているため、電波環境データベースDBは、時刻とNTN基地局5のビームの受信電力とを関連させていることが好ましい。このようにすることで、制御部11は、移動を考慮して被干渉メッシュになる時刻を算出可能となる。
【0109】
この判定の結果、ステップS21~S23において、地上基地局4間での干渉の度合いが比較的小さく、被干渉メッシュとされなかったメッシュが被干渉メッシュとなることがあり得る。
【0110】
NTN基地局5は、この被干渉メッシュを避けるように、ビームを制御するか、または
周波数を変更することができる。
【0111】
例えば、図14に示すように、通信端末8aは、地上基地局4からの干渉の度合いが小さい状態で、NTN基地局5から電波のビームを受信することができる。一方、通信端末8b、8cは、NTN基地局5から電波のビームBSによる干渉の度合いが大きい状態で、地上基地局4b、4cからの電波のビーム#2,#3を受信する可能性がある。
【0112】
このような場合、NTN基地局5から電波のビームを調節して、NTN基地局5の本来のセルCS内に、NTN基地局5から電波のビームが受信されない領域CS2,CS3を形成する(図14参照)。この結果、通信端末8b、8cにおいて、NTN基地局5からの電波が地上基地局4b、4cからの電波に干渉する度合いを低減できる。なお、NTN基地局5のアンテナ53が、複数のアンテナ要素を有すると、このような電波のビームの調節が容易となる。
【0113】
E.地上基地局4、NTN基地局5間で電波が干渉する通信端末8でのアンテナ83の指向方向の変更(ステップS25)
制御部11は、NTN基地局5からの電波のビームが、所定の領域に位置する通信端末において、干渉する度合いが、所定以上の場合に、このNTN基地局5を避けるように地上基地局に向けるか、または、NTN基地局に向けるように、所定の領域に位置する通信端末8のアンテナ83の指向方向を決定する。また、制御部11は、NTN基地局5からの電波のビームが干渉する度合いが、所定以上となる時刻において、NTN基地局5を避けるように、通信端末8のアンテナ83の指向方向を決定する。
【0114】
このとき、制御部11は、NTN基地局5や他の地上基地局4から干渉し難く、且つ、通信効率が大きくなる地上基地局4に向くように、またはNTN基地局5に向くように、通信端末8のアンテナ83の指向方向を決定する。すなわち、制御部11は、アンテナ83の指向方向を地上基地局4、NTN基地局5から適宜に選択できる。
【0115】
アンテナ83の指向方向を変更しても、地上基地局4からの電波とNTN基地局5から電波との干渉の度合いが所定以上のメッシュ中の通信端末8について、通信する周波数を変更してもよい。
【0116】
F.通信端末8および基地局の制御(ステップS26)
通信制御装置1は、以上の決定に基づいて、通信端末8のアンテナ83の指向方向、電波の周波数および基地局の電波のビーム方向、周波数の変更を指示する指示情報を基地局および通信端末8に通知する。通信端末8、基地局は、この指示情報に基づいて、アンテナ83の指向方向、ビーム方向、周波数を変更する。
【0117】
基地局に接続され、通信が確立している通信端末8は、基地局を介して、指示情報を受信できる。また、基地局に接続されていない通信端末8は、アンテナ83の向きを変えながら(ビームスキャン)指示情報を受信することができる。指示情報は情報量が少ないため、基地局との通信が確立する前でも送受信可能である。また、通信端末8のアンテナ83が無指向性のアンテナ要素を有すれば、このアンテナ要素を用いて、指示情報を受信してもよい。
【0118】
以上のように、例示的実施形態2においては、通信制御装置1が、端末位置予測情報と、電波環境データベースと、に基づいて、複数の通信端末8のアンテナ83の指向方向を決定し、通信端末8はこの決定に応じて、アンテナ83の指向方向を変更し、基地局と通信する。これにより、複数の基地局を効率的に利用することができる。
【0119】
〔付記事項1〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0120】
〔付記事項2〕
上述した実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得る。ただし、本発明は、以下の記載する態様に限定されるものではない。
【0121】
(付記1)
付記1の通信制御装置(1)は、複数の基地局(4,5)と、複数の領域(メッシュ)の何れかに位置する複数の通信端末(8)と、の間での通信を制御する通信制御装置であって、制御部(11)を備え、前記制御部は、前記複数の通信端末の位置を予測した端末位置予測情報と、前記複数の基地局と、各基地局からの電波のビーム方向と、前記複数の領域と、各領域内での前記電波の受信電力と、を関連付ける電波環境データベースと、に基づいて、前記複数の通信端末のアンテナの指向方向を決定する。これにより、端末位置予測情報、および電波環境データベースに基づいて、前記複数の通信端末のアンテナの指向方向を決定することで、複数の基地局を効率的に利用することができる。
【0122】
(付記2)
付記2の通信制御装置(1)は、付記1の通信制御装置において、前記制御部は、前記電波環境データベースに基づき、所定の領域(メッシュ)内の通信端末(8)のアンテナ(83)の指向方向(BT)を、前記所定の領域内で第1の受信強度の第1の電波のビームを送信する第1の基地局ではなく、前記所定の領域内で前記第1の受信強度より小さい第2の受信強度の第2の電波のビームを送信する第2の基地局に向けた場合において、前記第1の電波のビームが、前記第2の電波のビームに対して、干渉する度合いを算出し、前記干渉する度合いが所定以下の場合に、前記端末位置予測情報に基づき、前記所定の領域内に位置する通信端末のアンテナの指向方向を前記第1、第2の基地局に向けた場合それぞれでの第1、第2の通信効率を算出し、前記第1、第2の通信効率に基づいて、前記所定の領域内に位置する通信端末のアンテナの指向方向を決定する。これにより、第1の基地局よりも受信強度が小さい第2の基地局を効率的に利用することができる。
【0123】
(付記3)
付記3の通信制御装置(1)は、付記2の通信制御装置において、前記第1の電波のビームは、前記所定の領域内での受信電力が最大であり、前記第2の電波のビームは、前記所定の領域内での受信電力が、前記第1の電波のビームに次ぐ大きさを有する。これにより、受信強度が最大の基地局に次ぐ大きさの第2の基地局を効率的に利用することができる。
【0124】
(付記4)
付記4の通信制御装置(1)は、付記2の通信制御装置において、前記制御部は、前記所定の領域内に位置する通信端末が、前記第1、第2の基地局にアンテナの指向方向を向けた場合それぞれでの、前記第1、第2の基地局と通信可能な通信端末の第1、第2の台数を算出し、前記第1、第2の台数に基づき、前記第1、第2の通信効率を算出する。基地局が通信する通信端末の台数に基づき通信効率を算出することで、基地局を効率的に利用し、通信効率を高めることができる。
【0125】
(付記5)
付記5の通信制御装置(1)は、付記1の通信制御装置において、前記制御部は、前記端末位置予測情報および前記電波環境データベースに基づき、前記複数の基地局がそれぞれ送信する電波による干渉の度合いが所定以上の領域を特定し、前記特定された領域において、干渉の度合いに与える影響が最も大きい基地局を特定し、前記特定された基地局からの電波ビームの向きを決定し、前記決定された電波のビームの向きに対応するように、前記特定された領域に位置する通信端末のアンテナの指向方向を決定する。干渉に与える影響が最も大きい基地局のビーム方向を変更することで、基地局の効率的な利用が可能となる。
【0126】
(付記6)
付記6の通信制御装置(1)は、付記1の通信制御装置において、前記複数の基地局は、地上基地局および非地上系ネットワーク基地局が含まれ、前記制御部は、前記電波環境データベースに基づき、前記非地上系ネットワーク基地局からの電波のビームが所定の領域に位置する通信端末において、干渉する度合いを算出し、前記干渉する度合いが、所定以上の場合に、前記非地上系ネットワーク基地局を避けるように地上基地局に向けるか、または、前記非地上系ネットワーク基地局に向けるように、前記所定の領域に位置する通信端末のアンテナの指向方向を決定する。これにより、地上基地局および非地上系ネットワーク基地局の双方を効率的に利用することができる。
【0127】
(付記7)
付記7の通信端末(8)は、付記1~6の何れかの通信制御装置が決定したアンテナの指向方向に基づいて、アンテナの指向方向を変化させる。これにより、通信端末が、通信制御装置が決定したアンテナの指向方向に基づいて、アンテナの指向方向を変化させることで、基地局を効率的に利用することができる。
【0128】
(付記8)
付記8の通信システム(100)は、付記1~6の何れかの通信制御装置と、付記7に記載の通信端末とを備える。これにより、基地局を効率的に利用することができる通信システムを実現できる。
【0129】
(付記9)
付記9の通信方法(S1)は、複数の基地局と、複数の領域の何れかに位置する複数の通信端末との間での通信を制御する通信制御方法であって、前記複数の通信端末の位置を予測した端末位置予測情報と、前記複数の基地局と、各基地局から送信される電波のビーム方向と、前記複数の領域と、各領域内での前記電波の受信電力と、を関連付ける電波環境データベースと、に基づいて、前記複数の通信端末のアンテナの指向方向を決定する。これにより、基地局を効率的に利用することができる通信制御方法を実現することができる。
【0130】
(付記10)
付記10のプログラムは、コンピュータを通信制御装置として機能させるプログラムであって、前記コンピュータに、前記複数の通信端末の位置を予測した端末位置予測情報と、前記複数の基地局と、各基地局から送信される電波のビーム方向と、前記複数の領域と、各領域内での前記電波の受信電力と、を関連付ける電波環境データベースと、に基づいて、前記複数の通信端末のアンテナの指向方向を決定させる。これにより、基地局を効率的に利用することができる通信制御装置として、コンピュータを機能させることができる。
【符号の説明】
【0131】
100 通信システム
1 通信制御装置
4 地上基地局
5 NTN(非地上系ネットワーク)基地局
8 通信端末
11、41,51、81 制御部
12 記憶部
13、42、52、82 通信部
43、53、83 アンテナ
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