(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092482
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240701BHJP
G05D 1/43 20240101ALN20240701BHJP
【FI】
A01B69/00 303J
A01B69/00 303D
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208438
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】楫野 豊
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB11
2B043AB15
2B043BA02
2B043BB01
2B043DA17
2B043EA37
2B043EB04
2B043EB05
2B043EB08
2B043EB15
2B043EB17
2B043EB18
2B043EB23
2B043EB24
2B043EB27
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B043ED12
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD17
5H301GG07
5H301GG09
5H301LL01
5H301LL08
5H301LL17
(57)【要約】
【課題】自動で圃場間を移動する作業車両において障害物センサが状況に応じて適切なセンシングを実行できる作業車両を提供することを目的とする。
【解決手段】作業車両1に複数設置され、前方や側方等、周囲の障害物を検出可能に構成された障害物センサ2を備え、作業車両1にカメラ30を搭載し撮像データに基づいて予定走行路の状況を判別する予定走行路状態判別手段C1Aを備え、予定走行路に植物の有無と繁茂状態が判定され、植物が多いと判定されると、障害物センサ2の検出感度を鈍く設定する構成とした。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両(1)に複数設置され、前方や側方等、周囲の障害物を検出可能に構成された障害物センサ(2)を備え、作業車両(1)にカメラ(30)を搭載し撮像データに基づいて予定走行路の状況を判別する予定走行路状態判別手段(C1A)を備え、予定走行路に植物の有無と繁茂状態が判定され、所定基準に基づき、植物が多いと判定されると、障害物センサ(2)の検出感度を鈍く設定する構成としたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
圃場走行モードと路上走行モードを切り替える走行モード切替スイッチ(31)を設け、圃場走行モード時には障害物センサ(2)の検出感度を鈍くする構成とした請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業車両を制御する作業車両に関し、特に、障害物検知制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転により作業走行する作業車両において、作業終了後、別の圃場へ自動で移動する作業車両が公知である。そして、トラクタには、周囲の障害物を検出する障害物センサ2が設置され、前方や側方等、周囲の障害物を検出可能な構成が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圃場内を作業走行するときと農道を走行するときとでは車両周囲の環境が大きく異なるため、圃場内を走行するときに設定された障害物センサの配置や検知範囲のまま農道を走行したり、農道を走行するときに設定された障害物センサの配置や検知範囲のまま圃場内を走行すると、不要な停止が発生することがあった。
【0005】
本発明は、自動で圃場間を移動する作業車両において、障害物センサが状況に応じて適切なセンシングを実行できる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の上記課題は、次の解決手段により解決される。請求項1に記載の発明は、作業車両1に複数設置され、前方や側方等、周囲の障害物を検出可能に構成された障害物センサ2を備え、作業車両1にカメラ30を搭載し撮像データに基づいて予定走行路の状況を判別する予定走行路状態判別手段C1Aを備え、予定走行路に植物の有無と繁茂状態が判定され、所定基準に基づき、植物が多いと判定されると、障害物センサ2の検出感度を鈍く設定する構成とした。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において圃場走行モードと路上走行モードを切り替える走行モード切替スイッチ31を設け、圃場走行モード時には障害物センサ2の検出感度を鈍くする構成とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、雑草等の植物を障害物と誤認しないように自動調整して適切に障害物を検出できる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、圃場内の走行は雑草等を誤検知する可能性があるうえ、走行速度も遅いので、感度を鈍くする方ことで適切に障害物を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる作業車両の制御システムの説明図である。
【
図2】同上実施の形態の作業車両の制御システムで作業が行われる圃場の一例の説明図である。
【
図3】同上実施の形態の作業車両の制御システムの制御部の説明図である。
【
図5】(A)ミリ波レーダ検出状況を示す概要図、(B)検出された反射強度グラフである。
【
図7】(A)圃場の選択前の状態の説明図、(B)圃場を選択した状態の説明図、(C)農場の範囲を設定した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1において、本発明の実施の形態の作業車両の制御システムSは、作業車両の一例としてのトラクタ1を有する。トラクタ1には、後部の作業機を付け替えることで、耕うんやプラウ、整地、播種、施肥等が可能な作業車両である。
トラクタ1には、周囲の障害物を検出する障害物センサ2が設置されている。障害物センサ2は、トラクタ1に複数設置されており、前方や側方等、周囲の障害物を検出可能に構成されている。なお、障害物センサ2は、光の反射を使用するものや音波を使用するもの、カメラを使用して画像解析で障害物を検出するもの等、従来公知の任意のものを採用可能である。
【0012】
また、トラクタ1には、測位装置の一例としてのGPS装置3が設置されている。GPS装置3は、GPS衛星4との間での通信で、自身の位置を測位可能である。なお、実施の形態の作業車両の制御システムSでは、複数台のトラクタ1を有するが、各トラクタ1に障害物センサ2やGPS装置3を搭載されている。
トラクタ1は、携帯電話回線やインターネット回線等の通信回線を介して、情報処理装置の一例としてのサーバ6に接続されている。
【0013】
また、サーバ6は、通信回線を介して、情報処理装置の一例としてのタブレット端末7に接続されている。タブレット端末7は、作業者が表示された情報を閲覧したり、入力を行うことが可能に構成されている。
【0014】
図2は実施の形態の作業車両の制御システムで作業が行われる圃場の一例の説明図である。
図2において、実施の形態の作業車両の制御システムSでは、トラクタ1は、複数の圃場8と、圃場間移動区間の一例としての農道9とを有する農場(圃場8+農道9)内を自律的に移動可能である。トラクタ1が自律走行を行う範囲A1と、自律走行を行わない範囲A2との境界の部分には、境界を示す標識10が設置されている。実施の形態では、標識10は、農場(圃場8+農道9)の境界の農道9に設置される。標識10は、一例として、いわゆるスタンド看板や三角コーンのような形態とすることが可能であり、作業が行われる日に、作業者がトラクタ1が移動する範囲の境界に設置可能な形態とすることが望ましい。なお、標識10の形態は、例示した形態に限定されず、根元が農道に埋設された道路標識状のもの等、任意の形態とすることが可能である。
【0015】
また、実施の形態の標識10は、第2の測位装置の一例としてのGPS装置(図示せず)が設置されている。標識10のGPS装置は、標識10の現在位置の情報を取得して、通信回線を介してサーバ6に位置情報を送信可能である。
なお、実施の形態のトラクタ1は標識10を障害物センサ2で検出した場合には、障害物と見なして停車することで、標識10よりも外側に移動することが防止される。
【0016】
(制御部の説明)
図3は実施の形態の作業車両の制御システムの制御部の説明図である。
図3において、制御手段の一例としてのトラクタ1の制御部Caや、サーバ6の制御部Cb、タブレット端末7の制御部Ccは、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、制御部Ca~Ccは、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部Ca~Ccは、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御部Ca~Ccは、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。したがって、実施の形態の制御部Ca~Ccは、情報処理装置、いわゆるコンピュータにより構成されている。よって、制御部Ca~Ccは、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる 。
【0017】
(トラクタ1の制御部Caに接続された信号入力要素)
図3において、トラクタ1の制御部Caには、障害物センサ2やGPS装置3、その他の図示しない信号入力部材からの信号が入力される。
【0018】
障害物センサ2は、トラクタ1の周囲の障害物を検出する。障害物センサ2は、トラクタ1前部、左右側部に配置されるもので、例えばミリ波レーダとされる(
図4)。
【0019】
GPS装置3は、トラクタ1の位置を測位する。(トラクタ1の制御部Caに接続された被制御要素)
トラクタ1の制御部Caは、トラクタ1のエンジン11やハンドル12、ブレーキ13、作業機14、その他、図示しない被制御要素に制御信号を出力する。
【0020】
(トラクタ1の制御部Caの説明)
トラクタ1の制御部Caは、以下の機能(機能手段、プログラムモジュール)を有する。
【0021】
障害物検出手段C1は、障害物センサ2の検知結果に基づいて、障害物の検知を行う。すなわち、トラクタ1の前部、左右側部に配置したミリ波レーダ2は、対象物にミリ波の電波を照射して跳ね返ってきた電波を検出し、その往復にかかった時間を計測することで対象物までの距離を推定できる公知の構成である。
測位手段C2は、GPS装置3の測位結果に基づいて、トラクタ1の位置を測定する。
【0022】
通信手段C3は、サーバ6との間で情報の送受信、すなわち、通信を行う。実施の形態の通信手段C3は、サーバ6に対して、障害物の検知結果やトラクタ1の位置情報、トラクタ1の状況(作業中や移動中、停車中等)を送信したり、サーバ6から次に作業を行う圃場の位置情報や、圃場での作業領域や作業内容、移動や停車の指示情報等を受信する。
【0023】
走行制御手段C4は、逸脱判別手段C4Aを有し、トラクタ1のエンジン11やハンドル12、ブレーキ13等を制御して、トラクタ1の走行を制御する。
図2において、実施の形態の走行制御手段C4は、サーバ6から目的の圃場8に移動する指示がされた場合には、サーバ6から送信された移動経路22に沿って目的の圃場8に移動するようにトラクタ1を走行させる(圃場間移動モード)。また、サーバ6から圃場8内で作業する指示がされた場合には、サーバ6から送信された作業経路23に沿って走行するようにトラクタ1を制御する(作業モード)。サーバ6から停車して待機するように指示がされた場合には、トラクタ1を停止させる(待機モード)。なお、サーバ6から特定の待機位置24に移動して待機するように指示がされた場合には、待機位置24にトラクタ1を移動させた後に停車させる。なお、実施の形態の走行制御手段C4は、障害物検出手段C1が障害物を検出した場合には、トラクタ1を停止(異常停止、緊急停止)させて、その場で待機させる(異常停止モード)。
【0024】
ここで、障害物検出手段C1について詳細に説明する。障害物センサ2としてのミリ波レーダは、検出した電波反射強度と設定されたしきい値との対比によって障害物の有無を推定することができる構成である。雑草等の植物(以下、雑草)Zが繁茂する地面Gの障害物Sをミリ波レーダで受信しその反射強度Dは、
図5のようになり、一定しきい値αで障害物Sを判定しようとすると一部の雑草Zを障害物Sとみなしてしまう結果、真の障害物の見極めがなし難い。その対応策として、CFARしきい値βを採用する。CFARは、最適しきい値を動的に変更する一般的な技術である。つまり、CFARはミリ波レーダの検出感度を鈍くする。
【0025】
トラクタ1の障害物センサ2としてミリ波レーダとすると、雨や霧、埃があっても確実に障害物を認識できる効果がある、圃場内で作業を行うトラクタ1にとって最適であり、誤検出等で停止して作業効率が低下することを防止できる。また、CFARはミリ波レーダの反射強度について周辺の強度値を参考に突出した反射強度の信号点のみを検出できる。このため、圃場内の雑草が多い環境下などでCFARしきい値βを有効にすることで誤検出によってトラクタ1が停止して作業効率が低下する課題を解決できる。
【0026】
トラクタ1に前方を撮像できるカメラ30を搭載し、撮像データに基づいて予定走行路の状況を判別する予定走行路状態判別手段C1Aを備え、トラクタ1の走行予定路が圃場内か農道であるかの判定、舗装路か未舗装路であるかの判定、雑草の繁茂状況の判定を司る。
【0027】
次いで、
図6のフローチャートに基づき、予定走行路状態判別手段C1Aの状態判別とミリ波レーダしきい値選択制御の一例について説明する。カメラ30の撮像データを入力し、トラクタ1直前の予定走行路が圃場であるか否か判定する(S101)。YES(圃場8である)と判定されると、雑草の有無と繁茂状態が判定され(S103,S104)、「雑草有、雑草が多い」と判定されると、前記CFAR「有効」側に切替えられ(S105)、CFARしきい値βに設定される(S106)。以後ミリ波レーダ検出データを入力しCFARしきい値βと比較しつつ検出データがこのCFARしきい値を超えると障害物有りと判定され異常停止モード(トラクタ1走行停止、作業機停止)となる(S107~S110)。
【0028】
CFARしきい値βを有効にすることで、ミリ波レーダの反射強度について周辺の強度値を参考に突出した反射強度の信号点のみを検出できるから、繁茂する雑草を障害物と誤検出することを少なくし、誤検出によるトラクタ1異常停止を防止でき作業効率低下を来たさない。
【0029】
前記S102でNO(農道9である)と判定されると、舗装路か未舗装路か判定され(S111)、舗装路である場合には、CFAR「無効」側に切り替えられる(S112)。したがって、前記一定しきい値αに設定される(S113)。以後ミリ波レーダ検出データを入力し一定しきい値αと比較しつつ検出データがこの一定しきい値αを超えると障害物有りと判定され異常停止モード(トラクタ1走行停止、作業機停止)となる(S114~S117)。
【0030】
なお、前記S104で「雑草有る」も繁茂状態がNO「雑草有、雑草少なし」と判定されると、S112に移行し、CFAR「無効」側に切替えられる。
【0031】
また、上記S111で未舗装路と判定されると、S103に移行し、雑草の有無と繁茂状態が判定されることとなる(S103,S104)。
【0032】
舗装された道路を走行する場合は、雑草等も少なく反射強度の検知するしきい値を動的に変更するよりも規定値以上の反射強度であれば確実に検知するよう一定しきい値αにすることで安全性を確保できる。
【0033】
上記のように、必要時のみCFARしきい値βが有効になり、つまり障害物センサ2のセンサ感度を鈍くすることで、誤検出を低減できる共に、比較的外乱の少ない安定した走行(舗装路等)では安全性の高い検出が可能となる。
【0034】
なお、
図6による実施例では、CFARの有効、無効の切替えを自動的に行ったが、手動で任意に行える構成としてもよい。比較的雑草の少ない圃場であれば、CFARを有効に切り替わっても目視判定をもってCFAR無効に切り替えることで安全性は高くなる。
【0035】
また、前記S102でカメラ撮像によって圃場内走行か農道走行かを判別する構成としたが、圃場走行モードと路上(農道)走行モードを切り替える走行モード切替スイッチ31を配置し、その切替え状態に基づいてCFARの有効、無効の切替えを実施する形態としてもよい。圃場内では雑草を誤検知する可能性があり走行速度も遅いのでCFARを有効とし、検出感度を鈍くしておく方がよい。
【0036】
さらに、前記の例では、S111で舗装路、未舗装路の相違によってCFARの有効又は無効を選択する構成としたが、CFARのパラメータ、すなわち反射強度に応じたしきい値βの変化量Δβを調整できる構成としてもよい。例えば、
図5のCFARしきい値βを、舗装路の場合は下げ、未舗装路の場合はそのまま又は上げて対応するものである。また、このパラメータの調整は路上(農道)走行モード中の走行速度によって実行することで効果的である。車速に応じてトラクタ1自体の上下左右の変化が変わるため、それに応じてパラメータを変更することで最適な障害物検知が可能となる。 障害物検知手段C1には次の機能を有する。すなわち、圃場内走行時と農道走行時とで障害物検知領域および検出条件を異ならせている。例えば、農道走行時の障害物検知領域は車両情報、作業機情報、車両の運動状況及び農場情報に基づいて設定され、圃場内走行時と異ならせている。ここで、車両情報は車両の寸法であり、作業機情報は装着作業機の寸法、車両の運動状況は車速情報・前輪切れ角情報・前後進情報、農場情報は走行路の幅員情報・地物情報・走行路の勾配情報・圃場入り口情報等がある。
【0037】
逸脱判別手段C4Aは、トラクタ1が予め定められた経路の一例としての移動経路22や作業経路23から逸脱したか否かを判別する。実施の形態の逸脱判別手段C4Aは、経路22,23から逸脱した場合には、トラクタ1の現在位置の情報と圃場8の形状の情報とに基づいて、圃場8と農道9との境界線(圃場8の外周線)を跨ぐようにトラクタ1が移動するか否かを判別する。すなわち、圃場8を走行中のトラクタ1が農道9に進入しそうになるか、農道9を走行中のトラクタ1が圃場8に進入しそうになるかを判別する。
【0038】
走行制御手段C4は、トラクタ1が経路22,23から逸脱した場合に、圃場8と農道9との境界線を跨ぐように移動しない場合には、経路22,23に復帰するように、ハンドル12等を制御する。また、走行制御手段C4は、圃場8と農道9を走行中、障害物検出手段C1が障害物を検出した場合にはトラクタ1を走行停止(異常停止)させ、異常停止モードになった場合には、通信手段C3を通じてサーバ6に、その旨の情報を送信する。 作業機制御手段C5は、作業機を制御して圃場8での作業を行う。実施の形態の作業機制御手段C5は、サーバ6から送信された作業領域25内にトラクタ1が進入した場合は作業機を作動させて作業を行う。そして、作業領域25の外部にトラクタ1が移動した場合は作業機を停止させる。なお、作業機が耕うんやプラウ等の場合は、作業時に作業機を下降させ、非作業時には作業機を上昇させる。なお、実施の形態の作業機制御手段C5は、障害物検出手段C1が障害物を検出した場合には、作業機を停止(異常停止、緊急停止)させる。
【0039】
(タブレット端末7の制御部Ccに接続された信号入力要素)
図3において、タブレット端末7の制御部Ccには、表示部の一例であって入力部の一例としてのタッチパネル7a、その他の図示しない信号入力部材からの信号が入力される。タッチパネル7aは作業者が指で触れた位置を検出する。
【0040】
(タブレット端末7の制御部Ccに接続された被制御要素)
タブレット端末7の制御部Ccは、タッチパネル7a、その他、図示しない被制御要素に制御信号を出力する。タッチパネル7aは、サーバ6や制御部Ccから送信された制御信号に応じて画像を表示する。
【0041】
(タブレット端末7の制御部Ccの説明)
表示制御手段C11は、タッチパネル7aを制御して画像を表示する。タッチパネル7aには、トラクタ1の作業状況を示す画像を表示したり、トラクタ1の作業計画(作業する圃場や作業する内容、作業範囲、作業経路等)を設定するための画像を表示したり、トラクタ1の異常停止等の異常事態を通知する画像を表示したりすることが可能である。
【0042】
図7は実施の形態の圃場と圃場間移動区間を含む農場の範囲の一例の説明図であり、
図7(A)は圃場の選択前の状態の説明図、
図7(B)は圃場を選択した状態の説明図、
図7(C)は農場の範囲を設定した状態の説明図である。
図7において、作業計画における作業を行う圃場8の範囲を選択する場合には、一例として、
図7(A)に示す圃場選択画像26が表示される。圃場選択画像26には、複数の圃場8の地図画像が表示されている。圃場選択画像26において、圃場8を作業者が選択すると、選択された圃場8は、
図7(B)に示すように圃場8を表示する色が変更される。そして、圃場8の選択が完了すると、
図7(C)に示すように、全ての圃場8を囲む外枠線27が自動作成され、外枠線27が農場(圃場8+農道9)の範囲となる。いわば、選択された圃場8がグループ化された状態となる。
【0043】
なお、この圃場8がグループ化されたものを、作業時期や圃場に植えられる植物の違い等に応じて複数種類グループ登録しておき、作業者が作業を行う当日に、登録されたグループの中から選択して、当日行う作業の範囲を容易に設定可能とすることも可能である。なお、このグループの登録は、タブレット端末7ではなくサーバ6で行うことが望ましい。また、外枠線27が生成された後、外枠線27の内側に、選択されていない圃場8が存在する場合には、作業者に、「選択されていませんがよろしいですか」といった確認の表示を行うことも可能である。
【0044】
入力検出手段C12は、タッチパネル7aの指の触れた位置の検知結果と表示されている画像とに基づいて、入力内容を検出する。
通信手段C13は、サーバ6との間で通信を行う。実施の形態の通信手段C13は、タッチパネル7aで入力された作業計画の情報をサーバ6に送信したり、サーバ6から送信された作業状況の情報や異常事態の情報を受信したりする。
【0045】
(サーバ6の制御部Cbの説明)
サーバ6の制御部Cbは、以下の機能(機能手段、プログラムモジュール)を有する。圃場情報記憶手段C21は、圃場8の情報を記憶する。実施の形態の圃場情報記憶手段C21は、圃場8の位置情報と、圃場8の形状の情報と、圃場の出入り口31の位置情報と、圃場8どうしの間の圃場間移動区間である農道9の情報と、を含む圃場情報(農場情報)を記憶する。作業計画記憶手段C22は、トラクタ1での圃場の作業計画を記憶する。実施の形態の作業計画記憶手段C22は、作業計画として、作業が行われる農場(圃場8+農道9)の範囲や、各圃場8で行われる作業の内容、作業範囲、作業経路が記憶される。作業内容としては、圃場8で行われる耕うん、整地、播種等の作業が記憶されている。また、作業領域25として、タブレット端末7で設定された圃場8内の特定の領域(全域の場合も含む)が記憶される。さらに、作業経路23として、トラクタ1が通過する経路が記憶される。作業経路23は、作業者がタブレット端末7から手動で入力することも可能であるし、設定された作業領域25の広さと形状に応じて作業領域25の全域を作業機14が通過する作業経路23をソフトウェアで自動作成する構成とすることも可能である。
【0046】
したがって、一例として、ある圃場8(8A)において、耕うん、整地、播種の作業が行われる場合には、耕うん用の作業機14を備えたトラクタ1(1A)、整地用の作業機14を備えたトラクタ1(1B)、播種用の作業機14を備えたトラクタ1(1C)が順に圃場に進入して、それぞれの作業内容に対して設定された作業領域25と作業経路23に応じて作業を行うことが作業計画として記憶されている。
【0047】
また他の例として、圃場間移動区間の農道9情報に、交差点情報と共にウインカ開始ポイントとウインカ停止ポイントを記憶し、トラクタ1が各ポイントに至るとウインカ点滅出力又は停止出力する。さらに、障害物検知によってトラクタ1を停止する場合にはブレーキランプの点灯出力、ハザードランプ点滅出力するよう構成する。
【0048】
通信手段C23は、トラクタ1やタブレット端末7、標識10と通信を行う。通信手段C23は、トラクタ1からトラクタ1の現在位置や現在の作業状況(作業モードや待機モード等)の情報を受信したり、トラクタ1に対して次に向かう圃場8の情報や待機、圃場8で行う作業の内容等の指示の情報を送信したりする。また、通信手段C23は、タブレット端末7から作業計画の入力情報を受信したり、タブレット端末7に作業状況の情報を送信したりする。さらに、通信手段C23は、標識10の位置情報を標識10から受信する。
【0049】
作業車両の位置取得手段C24は、トラクタ1から送信された位置情報に基づいて各トラクタ1の位置の情報を取得する。
【0050】
作業指示手段C25は、各トラクタ1が備えている作業機14と、各圃場で行われる作業計画とに基づいて、各トラクタ1に対して、次に作業を行う目標の圃場8と圃場8までの移動経路22、および、その圃場8で行われる作業(作業領域25、作業経路23)の情報を送信して、作業を実行するように指示する。
【0051】
作業車両の状況取得手段(異常停止検出手段)C26は、各トラクタ1から送信された位置情報と作業状況(作業モード等)の情報に基づいて、各トラクタ1の作業状況を取得する。例えば、あるトラクタ1Aは圃場8で作業モードで、別のトラクタ1Bは圃場間移動モードで現在位置はGPS装置3で検出された位置にいる、更に別のトラクタ1CはGPS装置3で検出された位置で待機している、といった作業状況を取得する。なお、実施の形態の作業車両の状況取得手段C26は、例えば、トラクタ1Aから異常停止モードとの情報を受信した場合には、トラクタ1Aが異常停止している状況と判別して、通信手段C23を介してトラクタ1Aが異常停止している旨の情報をタブレット端末7に送信させる。
なお、トラクタ1の位置情報や作業状況の履歴データは保存しておき、他のトラクタ1が次の作業に移る際に参照可能にしておくことが望ましい。履歴データは所定の期間保持し、所定期間が経過したものから破棄していき、データ量が過剰になることを抑制することが望ましい。ただし、異常停止モードの情報については、再発防止や原因究明のために、破棄をせず別個にエラー履歴として保存しておくことが望ましい。 標識位置の確認手段C27は、標識10の位置を確認する。実施の形態の標識位置の確認手段C27は、トラクタ1のいずれかが圃場間移動モードとなった場合に、通信手段C23を介して標識10の位置情報を取得する。そして、標識10の位置情報と、作業計画の農場(圃場8+農道9)の範囲の情報とに基づいて、標識10の位置が、農場(圃場8+農道9)の外縁から予め定められた範囲内(例えば、距離1m以内)であるか否かを判別する。標識10の位置が農場(圃場8+農道9)の外縁から所定の範囲内であれば、標識10の位置は問題ないと判別する。一方、標識10の位置が農場(圃場8+農道9)の外縁から所定の範囲外であれば、標識10の位置が不適切であると判別する。 標識10の位置が不適切と判別された場合には、標識位置の確認手段C27は、通信手段C23を通じて、圃場間移動モードのトラクタ1に対して、停車するように指示すると共に、タブレット端末7に標識10の位置が不適切であることを通知する。
【0052】
前記構成を備えた実施の形態の作業車両の制御システムSでは、作業計画に応じて、各トラクタ1が自律的に移動して作業する。実施の形態では、トラクタ1が経路22,23を逸脱して、圃場8と農道9の境界線を圃場8の内側から外側に跨ぐ場合には、圃場8で作業中のトラクタ1が圃場8外に出るほどの逸脱であるため、安全のためトラクタ1の走行を停止する。また、農道9を走行中のトラクタ1が圃場8に進入する場合は、農道9の凹凸や他のトラクタ1とのすれ違いで一時的に圃場8側に進入したものとみて、トラクタ1の走行を継続する。したがって、農道9を走行中のトラクタ1が停止せずに、移動を継続することとなり、停止する場合に比べて、圃場間の移動が円滑に行われる。よって、複数の作業車両を自律的に作業させつつ安全性を確保することができる。
【0053】
なお、前記実施の形態において、各処理はトラクタ1、タブレット端末7、サーバ6の各制御部Ca~Ccにおいて分散して処理を行う構成を例示したがこれに限定されない。例えば、全ての処理をサーバ6で一括して処理をする構成とすることも可能であるし、サーバ6で行っていた一部の処理をトラクタ1で行わせる構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 トラクタ(作業車両)
2 障害物センサ
30 カメラ
3 1走行モード切替スイッチ
C1A 予定走行路状態判別手段