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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092486
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】光学顕微鏡用用具
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/34 20060101AFI20240701BHJP
   G02B 21/26 20060101ALI20240701BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G02B21/34
G02B21/26
G01N1/28 W
G01N1/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】92
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208449
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】520436770
【氏名又は名称】有限会社ウィン
(74)【代理人】
【識別番号】110003454
【氏名又は名称】弁理士法人友野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷹橋 浩幸
【テーマコード(参考)】
2G052
2H052
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AA33
2G052AD52
2G052DA07
2G052DA21
2G052GA32
2H052AD16
2H052AE02
2H052AE04
2H052AE06
2H052AE13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光学顕微鏡を用いる病理検査、病理診断における組織検査、組織診断、並びに、細胞検査、細胞診断等の従事者が、検体の指定された領域を余すところなく観察することができることによって、誤診に繋がることがない正確な検査、診断を迅速に行える上、労力を低減し、安心して業務を遂行することができる光学顕微鏡用用具の提供。
【解決手段】試料、検体の観察の弊害にならない光透過性がない曲線の集合体又は光透過性がある曲線の集合体である、視野制限機能、視線誘導機能、及び、観察領域漏洩防止機能を有する標識が形成されているカバーグラス、スライドグラス、プレパラート、及び、接眼レンズに装着する等倍フラットレンズである。また、試料、検体の観察の弊害にならない光透過性がない曲線又は光透過性がある曲線によって計測手段が形成されている対物ミクロメーター、接眼ミクロメーター、及び、シートゲージである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線を所定の間隔で形成した標識が、観察者のために設けられていることを特徴とする光学顕微鏡用用具。
【請求項2】
前記光学顕微鏡用用具が、カバーグラスであることを特徴とする請求項1に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項3】
前記光学顕微鏡用用具が、スライドグラスであることを特徴とする請求項1に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項4】
前記光学顕微鏡用用具が、底面が略円形である円柱状シートの形態で、接眼レンズの鏡筒の光軸方向に対し、前記底面が垂直となるように装着される等倍フラットレンズであることを特徴とする請求項1に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項5】
前記光学顕微鏡用用具が、
底面が略円形である円柱状シートの形態で、接眼レンズの鏡筒の光軸方向に対し、前記底面が垂直となるように装着される等倍フラットレンズと、
カバーグラスとの組合せ用具であって、
前記等倍フラットレンズに、前記標識が設けられており、
前記カバーグラスに、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域に誘導するための基本単位として、前記曲線又は前記曲線の延長線とカバーグラスの外周との交点の近傍で、前記カバーグラスの重心を通り、前記曲線と略平行な直線と垂直な直線を対象軸として、略線対称の位置に設けられる一対の位置を指示する目印が、前記外周に沿って、所定の間隔で複数形成されている第二の標識が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項6】
前記光学顕微鏡用用具が、
底面が略円形である円柱状シートの形態で、接眼レンズの鏡筒の光軸方向に対し、前記底面が垂直となるように装着される等倍フラットレンズと、
カバーグラスとの組合せ用具であって、
前記等倍フラットレンズに、前記標識が設けられており、
前記スライドグラスに、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域に誘導するための基本単位として、前記曲線とスライドグラスの外周との交点近傍又は前記カバーグラスの外周との交点近傍で、前記スライドグラスの重心を通り、前記曲線と略平行な直線と垂直な直線を対象軸として、略線対称の位置に設けられる一対の位置を指示する目印が、前記スライドグラス外周又は前記カバーグラスの外周に沿って、所定の間隔で複数形成されている第二の標識が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項7】
前記標識が前記試料及び/又は検体と共に観察視野に入るように形成されており、前記試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素の占有面積に対する、前記標識が前記占有面積の視界を遮蔽する面積の割合を視界遮蔽率と定義すると、前記標識の前記視界遮蔽率が約50%未満であることを特徴とする請求項1に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項8】
前記標識が前記試料及び/又は検体と共に観察視野に入るように形成されており、前記試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素の占有面積に対する、前記標識が前記占有面積の視界を遮蔽する面積の割合を視界遮蔽率と定義すると、前記標識の前記視界遮蔽率が約50%未満であることを特徴とする請求項2に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項9】
前記標識が前記試料及び/又は検体と共に観察視野に入るように形成されており、前記試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素の占有面積に対する、前記標識が前記占有面積の視界を遮蔽する面積の割合を視界遮蔽率と定義すると、前記標識の前記視界遮蔽率が約50%であることを特徴とする請求項3に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項10】
前記標識が前記試料及び/又は検体と共に観察視野に入るように形成されており、前記試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素の占有面積に対する、前記標識が前記占有面積の視界を遮蔽する面積の割合を視界遮蔽率と定義すると、前記標識の前記視界遮蔽率が約50%未満であることを特徴とする請求項4に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項11】
前記標識が前記試料及び/又は検体と共に観察視野に入るように形成されており、前記試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素の占有面積に対する、前記標識が前記占有面積の視界を遮蔽する面積の割合を視界遮蔽率とすると、前記標識の前記視界遮蔽率が約50%未満であることを特徴とする請求項5に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項12】
前記標識が前記試料及び/又は検体と共に観察視野に入るように形成されており、前記試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素の占有面積に対する、前記標識が前記占有面積の視界を遮蔽する面積の割合を視界遮蔽率とすると、前記標識の前記視界遮蔽率が約50%未満であることを特徴とする請求項6に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項13】
前記光学顕微鏡用用具は、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域において、前記観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能と、前記観察者の視線を前記視野へ誘導する視線誘導機能と、前記領域を漏洩することがない観察領域漏洩防止機能とを保有していることを特徴とする請求項1に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項14】
前記光学顕微鏡用用具は、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域において、前記観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能と、前記観察者の視線を前記視野へ誘導する視線誘導機能と、前記領域を漏洩することがない観察領域漏洩防止機能とを保有していることを特徴とする請求項7に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項15】
前記光学顕微鏡用用具は、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域において、前記観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能と、前記観察者の視線を前記視野へ誘導する視線誘導機能と、前記領域を漏洩することがない観察領域漏洩防止機能とを保有していることを特徴とする請求項2に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項16】
前記光学顕微鏡用用具は、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域において、前記観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能と、前記観察者の視線を前記視野へ誘導する視線誘導機能と、前記領域を漏洩することがない観察領域漏洩防止機能とを保有していることを特徴とする請求項8に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項17】
前記光学顕微鏡用用具は、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域において、前記観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能と、前記観察者の視線を前記視野へ誘導する視線誘導機能と、前記領域を漏洩することがない観察領域漏洩防止機能とを保有していることを特徴とする請求項3に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項18】
前記光学顕微鏡用用具は、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域において、前記観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能と、前記観察者の視線を前記視野へ誘導する視線誘導機能と、前記領域を漏洩することがない観察領域漏洩防止機能とを保有していることを特徴とする請求項9に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項19】
前記光学顕微鏡用用具は、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域において、前記観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能と、前記観察者の視線を前記視野へ誘導する視線誘導機能とを保有していることを特徴とする請求項4に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項20】
前記光学顕微鏡用用具は、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域において、前記観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能と、前記観察者の視線を前記視野へ誘導する視線誘導機能とを保有していることを特徴とする請求項10に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項21】
前記光学顕微鏡用用具は、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域において、前記観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能と、前記観察者の視線を前記視野へ誘導する視線誘導機能と、前記領域を漏洩することがない観察領域漏洩防止機能とを保有していることを特徴とする請求項5に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項22】
前記光学顕微鏡用用具は、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域において、前記観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能と、前記観察者の視線を前記視野へ誘導する視線誘導機能と、前記領域を漏洩することがない観察領域漏洩防止機能とを保有していることを特徴とする請求項11に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項23】
前記光学顕微鏡用用具は、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域において、前記観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能と、前記観察者の視線を前記視野へ誘導する視線誘導機能と、前記領域を漏洩することがない観察領域漏洩防止機能とを保有していることを特徴とする請求項6に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項24】
前記光学顕微鏡用用具は、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域において、前記観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能と、前記観察者の視線を前記視野へ誘導する視線誘導機能と、前記領域を漏洩することがない観察領域漏洩防止機能とを保有していることを特徴とする請求項12に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項25】
前記標識が、光学顕微鏡のXYステージのX軸及び/又はY軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して形成されている複数の曲線の集合体であることを特徴とする請求項13に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項26】
前記標識が、光学顕微鏡のXYステージのX軸及び/又はY軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して形成されている複数の曲線の集合体であることを特徴とする請求項14に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項27】
前記標識が、光学顕微鏡のXYステージのX軸及び/又はY軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して形成されている複数の曲線の集合体であることを特徴とする請求項15に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項28】
前記標識が、光学顕微鏡のXYステージのX軸及び/又はY軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して形成されている複数の曲線の集合体であることを特徴とする請求項16に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項29】
前記標識が、光学顕微鏡のXYステージのX軸及び/又はY軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して形成されている複数の曲線の集合体であることを特徴とする請求項17に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項30】
前記標識が、光学顕微鏡のXYステージのX軸及び/又はY軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して形成されている複数の曲線の集合であることを特徴とする請求項18に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項31】
前記標識が、光学顕微鏡のXYステージのX軸及び/又はY軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して形成されている複数の曲線の集合体であることを特徴とする請求項19に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項32】
前記標識が、光学顕微鏡のXYステージのX軸及び/又はY軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して形成されている複数の曲線の集合であることを特徴とする請求項20に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項33】
前記標識が、光学顕微鏡のXYステージのX軸及び/又はY軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して形成されている複数の曲線の集合体であることを特徴とする請求項21に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項34】
前記標識が、光学顕微鏡のXYステージのX軸及び/又はY軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して形成されている複数の曲線の集合体であることを特徴とする請求項22に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項35】
前記標識が、光学顕微鏡のXYステージのX軸及び/又はY軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して形成されている複数の曲線の集合体であることを特徴とする請求項23に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項36】
前記標識が、光学顕微鏡のXYステージのX軸及び/又はY軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して形成されている複数の曲線の集合体であることを特徴とする請求項24に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項37】
前記曲線が、光透過性がない物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であることを特徴とする請求項1~36のいずれか一項に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項38】
前記曲線の太さが、約0.02~100μmであることを特徴とする請求項37に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項39】
前記曲線が、光透過性がない物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であって、前記曲線の太さが、約0.02~10μmであることを特徴とする請求項1~3、7~9、13~18、並びに、25~30のいずれか一項に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項40】
前記曲線が、光透過性がない物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であって、前記曲線の太さが、約0.2~100μmであることを特徴とする請求項4、10、19、20、31、及び、32のいずれか一項に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項41】
前記曲線が、光透過性がない物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であって、前記曲線の太さが、約0.2~100μmであることを特徴とする請求項5、6、11、12、21~24、並びに、33~36のいずれか一項に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項42】
前記曲線が、光透過性がない物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であって、
前記曲線の太さが、約0.02~10μmであり、かつ、前記間隔が、隣接する前記曲線の中心線の最長の間隔から選択され、約(実視野/√2)×0.5~(実視野/√2)mmであることを特徴とする請求項25~30のいずれか一項に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項43】
前記曲線が、光透過性がない物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であって、
前記曲線の太さが、約0.2~100μmであり、かつ、前記間隔が、隣接する前記曲線の中心線の最長の間隔から選択され、約(視野数/√2)×0.5~(視野数/√2)mmであることを特徴とする請求項31又は32に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項44】
前記曲線が、光透過性がない物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であって、
前記曲線の太さが、約0.2~100μmであり、かつ、前記間隔が、隣接する前記曲線の中心線の最長の間隔から選択され、約(視野数/√2)×0.5~(視野数/√2)mmであることを特徴とする請求項33~36のいずれか一項に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項45】
前記曲線が、光透過性がある物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であることを特徴とする請求項1~36のいずれか一項に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項46】
前記曲線の太さが、約0.1~(実視野/√2)×0.1×1000μmであることを特徴とする請求項45に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項47】
前記曲線が、光透過性がある物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であって、前記曲線の太さが、約1~(実視野/√2)×0.1×1000μmであることを特徴とする請求項4、10、19、20、31、及び、32のいずれか一項に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項48】
前記曲線が、光透過性がある物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であって、前記曲線の太さが、約1~(実視野/√2)×0.1×1000μmであることを特徴とする請求項5、6、11、12、21~24、並びに、33~36のいずれか一項に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項49】
前記曲線が、光透過性がある物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であって、前記曲線の太さが、約0.1~(実視野/√2)×0.1×1000μmであり、かつ、前記間隔が、隣接する前記曲線の中心線の最長の間隔から選択され、約(実視野/√2)×0.5~(実視野/√2)mmであることを特徴とする請求項25~30のいずれか一項に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項50】
前記曲線が、光透過性がある物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であり、かつ、前記曲線の太さが、約1~(実視野/√2)×0.1×1000μmであり、かつ、前記間隔が、隣接する前記曲線の中心線の最長の間隔から選択され、約(視野数/√2)×0.5~(視野数/√2)mmであることを特徴とする請求項31又は32に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項51】
前記曲線が、光透過性がある物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であり、かつ、前記曲線の太さが、約1~(実視野/√2)×0.1×1000μmであり、かつ、前記間隔が、隣接する前記曲線の中心線の最長の間隔から選択され、約(視野数/√2)×0.5~(視野数/√2)mmであることを特徴とする請求項33~36のいずれか一項に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項52】
前記曲線の光透過率が、波長550nmの可視光線について、15~70%であることを特徴とする請求項45に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項53】
前記曲線の光透過率が、波長550nmの可視光線について、15~70%であることを特徴とする請求項46に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項54】
前記曲線の光透過率が、波長550nmの可視光線について、15~70%であることを特徴とする請求項47に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項55】
前記曲線の光透過率が、波長550nmの可視光線について、15~70%であることを特徴とする請求項48に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項56】
前記曲線の光透過率が、波長550nmの可視光線について、15~70%であることを特徴とする請求項49に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項57】
前記曲線の光透過率が、波長550nmの可視光線について、15~70%であることを特徴とする請求項50に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項58】
前記曲線の光透過率が、波長550nmの可視光線について、15~70%であることを特徴とする請求項51に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項59】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項45に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項60】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項46に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項61】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項47に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項62】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項48に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項63】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項49に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項64】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項50に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項65】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項51に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項66】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項52に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項67】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項53に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項68】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項54に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項69】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項55に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項70】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項56に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項71】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項57に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項72】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項58に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項73】
個々に識別及び特定可能な符号が形成されていることを特徴とする請求項37に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項74】
個々に識別及び特定可能な符号が形成されていることを特徴とする請求項45に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項75】
前記透明導電膜で印字領域が形成されていることを特徴とする請求項59に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項76】
前記光学顕微鏡用用具が、対物ミクロメーターであることを特徴とする請求項1に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項77】
前記光学顕微鏡用用具が、接眼ミクロメーターであることを特徴とする請求項1に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項78】
前記光学顕微鏡用用具が、シートゲージあることを特徴とする請求項1に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項79】
前記曲線が、光透過性がない物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であることを特徴とする請求項76~78のいずれか一項に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項80】
前記曲線の太さが約0.2~2.0μmであることを特徴とする請求項79に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項81】
前記曲線が、光透過性がある物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であることを特徴とする請求項76~78のいずれか一項に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項82】
前記曲線の太さが約1~10μmであることを特徴とする請求項81に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項83】
前記曲線の光透過率が、波長550nmの可視光線について、15~70%であることを特徴とする請求項81に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項84】
前記曲線の光透過率が、波長550nmの可視光線について、15~70%であることを特徴とする請求項82に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項85】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項81に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項86】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項82に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項87】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項83に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項88】
前記曲線が、透明導電膜で形成されていることを特徴とする請求項84に記載の光学顕微鏡用用具。
【請求項89】
請求項4、10、19、20、31、32、40、43、47、50、54、57、61、64、68、及び、71のいずれか一項に記載の光学顕微鏡用用具と、前記観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域を漏洩することなく移動する機能を有するXYステージを備えている光学顕微鏡とを組み合わせることにより、前記領域において、前記観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能、前記観察者の視線を前記視野に誘導する視線誘導機能、及び、前記領域を漏洩することがない漏洩防止機能を有することを特徴とする光学顕微鏡システム。
【請求項90】
前記XYステージが、自動位置決めXYステージであることを特徴とする請求項89に記載の光学顕微鏡システム。
【請求項91】
前記XYステージが、前記XYステージのX軸方向及び/又はY軸方向の可動ハンドルと連動するスライド機構に、前記可動ハンドルの操作において、指先に抵抗を触知可能で、前記抵抗が位置を指示するバネであるが、前記X軸方向及び/又はY軸方向の動作に影響を及ぼすことがない前記バネが、前記スライド機構の前記X軸方向及び/又はY軸方向の溝に、所定の間隔で装着されているXYステージであって、前記スライダ機構が、ネジ式スライダ、ボールネジ式スライダ、及び、ラック/ピニオン式スライダのいずれかである手動位置決めXYステージであることを特徴とする請求項89に記載の光学顕微鏡システム。
【請求項92】
前記XYステージが、前記XYステージのX軸方向及び/又はY軸方向の可動ハンドルと連動するスライド機構に、前記可動ハンドルの操作において、前記可動ハンドルの回転数を指先に感知可能な手段を設けてあるXYステージであって、前記スライダ機構が、ネジ式スライダ、ボールネジ式スライダ、及び、ラック/ピニオン式スライダのいずれかである手動位置決めXYステージであることを特徴とする請求項89に記載の光学顕微鏡システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーグラス、スライドグラス、プレパラート、及び、光学顕微鏡用スケール等の光学顕微鏡用用具に関する。特に、光学顕微鏡観察の弊害とならない標識が形成されている光学顕微鏡用用具に関する。
【背景技術】
【0002】
光学顕微鏡を用いる癌を始めとする病理検査及び/又は病理診断における、組織検査及び/又は組織診断、並びに、細胞検査及び/又は細胞診断は、プレパラートの検体を遺漏なく観察することが強く求められ、熟練した技能を有する各種専門技師、専門医、及び、専門検査士に委ねられている(非特許文献1)。これは、組織検査及び/又は組織診断、並びに、細胞検査及び/又は細胞診断の結果が、患者の生命に直接深く関わるためである。
【0003】
具体的には、次のような工程を経て、患者の病変が疑われる組織や細胞の光学顕微鏡観察による検査及び/又は診断が行われている。組織検査及び/又は組織診断の場合では、まず、臨床検査技師によって、内視鏡や手術等により採取された臓器等の組織がパラフィンで固められ、1000分の数ミリの薄さの切片にして染色された後、スライドグラスに載置され、カバーグラスで覆われた半永久的なプレパラートが作製される。次いで、このプレパラートが、病理専門医又は病理医による光学顕微鏡観察が行われ、良性・悪性の鑑別、診断名、病変の本態や病変の広がり、更には、治療効果や予後の判定等の形態学的な診断が行われる。細胞検査及び/又は細胞診断の場合は、まず、尿・子宮頸部・子宮内膜・喀痰等の中にある細胞や乳腺・甲状腺等の組織から採取された細胞がスライドグラスに直接塗抹され、染色された後カバーグラスで覆われ、プレパラートが作製される。近年では、特に、子宮頸部細胞検査及び/又は細胞診断において、不適切標本(プレパラート)を削減して検査及び/又は診断の精度を高めると共に、子宮頸癌との関連性があるヒトパピローマウイルス(HPV、Human Papillomavirus)検査も行えるため、採取された細胞を保存液が入っている無菌状態を保つガラス瓶製のバイアルに投入し、血液や粘液等の不純物を取り除いた後、スライドグラスに塗抹される液状化検体細胞診(LBC法、Liquid-Based Cytology)が、採用され始めた。この方法には、ThinPrep法、SurePath法、TASAC法のプレパラート作製技術があるが、いずれもスライドグラス上の局限された円形状に塗抹され、染色された後カバーグラスで覆われ、プレパラートが作製される。次いで、臨床検査技師が、このプレパラートの光学顕微鏡観察を行い、異常な細胞が見つけ出し、病理専門医、病理医、細胞診専門医、又は、細胞検査士によって、この異常な細胞の診断・判定が行われる。
【0004】
このような一連の業務から分かるように、光学顕微鏡を用いる検査及び/又は診断は、そのための一つのプレパラートを作製するだけでも労力を要するが、患者数が極めて多いため、膨大な数量のプレパラートを作製し、膨大な数量のプレパラートを一つ一つ光学顕微鏡で観察して検査及び/又は診断する必要があり、そこには計り知れない労力が注がれる。それにも関わらず、日本における病理検査及び/又は病理診断において、組織検査及び/又は組織診断、並びに、細胞検査及び/又は細胞診断に従事できる、臨床検査技師、臨床検査専門医、病理専門医、病理医、細胞診専門医、及び、細胞検査士が極めて少ないという悪条件が重なっている。そして、検査及び/又は診断の結果が、患者の健康に直接深く関わるため、気を緩めることができない業務が長時間に亘って続けられる。従って、これらの業務に従事する各種専門技師、専門医、及び、専門検査士には、極めて多大な身体的及び精神的負担が掛かっている(非特許文献2)。
【0005】
特に、病理検査及び/又は病理診断でも、例えば、検体である組織又は細胞に癌等の病変を示す異常な組織又は細胞が存在している場合、それを見落とせば、患者の生命を左右する可能性があるので、その従事者に掛かる、見落とすことができないという精神的圧迫感は、当事者でなければ理解不可能で、想像することは困難である。また、このような検査及び/又は診断は、その性質上、迅速性も求められるので、時間的負担及び経済的負担等も無視することはできない。従って、病理検査及び/又は病理診断の従事者には、高度な検査精度及び/又は診断精度と検査速度及び/又は診断速度とが求められ、心身共に疲弊する過酷な業務が日々続いているのである。
【0006】
そして、このような病理検査及び/又は病理診断に従事する者に重くのしかかる切実な問題を生起する主要な原因は、人体より採集した組織又は細胞から作製されたプレパラートを光学顕微鏡で観察し、その観察所見を疾病の検査及び/又は診断に供した結果として、疾患の良性又は悪性を含めた疾病の具体的な病理診断名が下されるという病理検査及び/又は病理診断の手段である光学顕微鏡観察自体に内在している。それは、光学顕微鏡の円形観察視野である。
【0007】
光学顕微鏡の視野は円形であり、この円形観察視野内に映し出された組織又は細胞の全体を順次観察していくことにより、個々の疾患に特徴的な光学顕微鏡観察の所見を提示するが、通常、組織の場合で20~40倍、細胞の場合で100~200倍の倍率で行われる観察に基づいて疾病の検査を行い、診断を下す。ここで、この検査及び/又は診断の根拠になる組織や細胞が非常に少ないことは稀ではなく、この数少ない組織や細胞を見落とすことが許されないという重大な障害が立ちはだかるのである。この障害とは、人間の目が、円形観察視野の中心部に注意が払われがちであり、その視野の周辺部には意識が向けられにくいという特性があるため、所定の倍率で視野を変えながら観察していく際に、円形観察視野の周辺部にある組織や細胞は見逃され易いという事実である。つまり、この事実に基づけば、視野周辺部にある僅か1~2個の細胞であっても、例えば、その細胞が癌細胞であったとしたならば、それらを見落とすことは、患者の悪性疾患を正確に検査及び/又は診断をしなかったことを意味し、患者の生命に関わる重大な誤診となり得るのである。
【0008】
しかしながら、従来の光学顕微鏡観察に用いるカバーグラス、スライドグラス、プレパラート、及び、光学顕微鏡用スケール等の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具には、観察視野の中央部に集中し易い人間の目の特性を考慮して、観察の弊害となることなく、観察者が凝視し易い円形観察視野の中央部に視野を制限し、観察者の視線をその視野へ誘導すると共に、試料及び/又は検体を見落とさず、視認性に優れた技術が付与されているものは認められない。特に、人間の生命に係わる、一つの細胞も見落とすことができない光学顕微鏡観察による組織検査及び/又は組織診断並びに細胞検査及び/又は細胞診断においては、人間の目の特性を考慮し、身体的負担、精神的負担、時間的負担、及び、経済的負担等を積極的に軽減し、検査及び/又は診断の正確性及び信頼性を高めることが喫緊の課題でもあるにかかわらず、その課題を解決する技術は開発されていない。
【0009】
例えば、花粉検査、水質検査、血液検査及び/又は血液診断、並びに、尿検査及び/又は尿診断等において、標準計数板が開発され(特許文献1)、一般的には、格子状界線が形成された界線スライドグラスとして広く利用されている(非特許文献3及び4)。試料及び/又は検体に境界を設け、試料及び/又は検体中の花粉、微生物、血球、尿沈渣等の計数を主たる目的とするものである。従って、円形観察視野の中心部に注意が払われがちな人間の目の特性を考慮して、円形観察視野の周辺部の試料及び/又は検体ばかりか、観察すべき全ての領域の試料及び/又は検体を見落とさないように、観察者が凝視すべき試料及び/又は検体の視野を制限すると共に、観察者の視線をその視野及び観察領域全体へ誘導するという着想は認められない。
【0010】
また、病理検査及び/又は病理診断において、それぞれの検査の仕様、並びに、試料
又は検体の種類及び状態等に応じた印刷パターンが施されたスライドグラスが利用されている(非特許文献5)。例えば、リングマーク及び角形枠等のパターン、並びに、リング番号及び枠番号等の文字が、シルバーステイン印刷、フロストインク印刷、紫外線(UV)硬化型インク印刷、高撥水性フッ素樹脂ベースインク印刷等によりスライドグラスに形成されている。試料及び/又は検体の位置及び領域の指示、並びに、液状の試料及び/又は検体の保持等、検査及び/又は診断の効率化に一定の役割を果たしている。しかしながら、界線や各種印刷パターン自体が、組織又は細胞を光学的に遮蔽するものであり、検体である組織又は細胞の中から検出すべき癌等の病変を示す異常な1~2個の細胞が、上記界線や各種印刷パターンによって遮蔽されてしまう誤診に繋がることになるものであることが容易に想定されるので、根本的に、観察すべき組織又は細胞を見落とさないためのものではないことが理解される。また、このような印刷パターン及び番号にも、円形観察視野の中心部に注意が払われがちな人間の目の特性を考慮して、円形観察視野の周辺部の試料及び/又は検体ばかりか、観察すべき全ての領域の試料及び/又は検体を見落とさないように、観察者が凝視すべき試料及び/又は検体の視野を制限すると共に、観察者の視線をその視野及び観察領域全体へ誘導するという着想は認められない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11-304672号公報
【特許文献2】実公平4-21041号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】マツダ病院臨床病理検査室,「病理細胞診検査」,[online],[2022年7月18日検索],インターネット<https://hospital.mazda.co.jp/section/rinsho_byori_07.html>
【非特許文献2】一般社団法人日本臨床検査医学会,「臨床検査専門医の声 臨床検査専門医と病理専門医」,[online],[2022年7月18日検索],インターネット<https://www.jslm.org/recognition/purpose/07.html>
【非特許文献3】松浪硝子工業株式会社,「界線スライドグラス」,[online],[2022年7月18日検索],インターネット<http://www.matsunami-glass.co.jp/product/gene/boundary_line_glass_slide/>
【非特許文献4】環境省花粉観測システム(はなこさん),「花粉ライブラリ,3.ダーラム法に関して(抜粋)」,[online],[2022年7月18日検索],インターネット<http://kafun.taiki.go.jp/Library.html>
【非特許文献5】松浪硝子工業株式会社,「印刷スライドグラス」,[online],[2022年7月18日検索],インターネット<http://www.matsunami-glass.co.jp/product/technical/printing_glass_slide/>
【非特許文献6】コムス株式会社,「顕微鏡用XYステージ PT series」, [on line],[2022年10月22日検索],インターネット<https://www.coms-corp.co.jp/product/posicon/step/xy/step_pt_xy.html>
【非特許文献7】東京エレクトロン株式会社,「特集 科学の粋を集める半導体製造技術」,アニュアルレポート2008,2008年3月期,pp.14-15,[on line],[2022年10月22日検索],インターネット<https://www.tel.co.jp/ir/library/ar/#year20083_1>
【非特許文献8】国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO),「世界で圧倒的なシェアを誇る、電子ビームマスク描画装置~株式会社ニューフレアテクノロジー~」,NEDO実用化ドキュメント,[on line],[2022年10月22日検索],インターネット<https://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201202nuflare/pdf/nuflare.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
背景技術で説明したように、病理検査及び/又は病理診断には、患者の生命を担う重大な責務を伴うため、これらに従事する臨床検査技師、臨床検査専門医、病理専門医、病理医、細胞診専門医、及び、細胞検査士には、日々過酷な業務が続いている。従って、これら病理検査及び/又は病理診断の従事者の心身の疲労の低減、安心した業務の遂行に繋がる技術を創出することが、本技術分野における急務となっている。
【0014】
この急務に応えるため、本発明は、光学顕微鏡を用いる癌を始めとする病理検査及び/又は病理診断における、組織検査及び/又は組織診断、並びに、細胞検査及び/又は細胞診断等において、これらに従事する各種専門技師、専門医、及び、専門検査士が、接眼レンズから眼を離すことなく、すなわち、観察視野から視線を離すことなく、プレパラートの検体の指定された領域を余すところなく観察することができ、この領域内に存在する数少ない病変とされる異常な組織又は細胞も遺漏なく視認できることによって、誤診に繋がることがない正確な検査及び/又は診断を迅速に行える上、労力を低減し、安心して業務を遂行することができる、言い換えれば、身体的負担、精神的負担、時間的負担、及び、経済的負担等を積極的に軽減し、検査及び/又は診断の正確性及び信頼性を高める、光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具の提供を目的としている。
【0015】
そして、この目的を達成するため、病理検査及び/又は病理診断に従事する者に重くのしかかる身体的負担、精神的負担、時間的負担、及び、経済的負担等の切実な問題を生起する主要な原因である、接眼レンズから視える円形観察視野の中心部に人間の目の注意が払われる特性によって生起する検体の遺漏、特に、検体の中の異常な組織又は細胞等の特異点の視認の遺漏を克服するため、人間の目の特性を考慮し、円形観察視野から視線を離すことがなくとも、観察者が凝視し易い円形観察視野の中央部に視野を制限し、観察者の視線をその視野へ誘導すると共に、試料及び/又は検体を見落とさないように観察者の視線を誘導することができる視認し易い標識を、光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具に設けることを考案した。
【0016】
すなわち、本発明の課題は、各種試料及び/又は組織や細胞等の検体の光学顕微鏡観察において、光学顕微鏡観察の弊害になることなく、人間の目の特性を考慮した視野制限機能及び視線誘導機能を有すると共に、観察領域の漏洩防止機能を有し、高精度の光学顕微鏡観察が効率的に実施できる標識を設けている光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明者は、光学顕微鏡を用いた様々な試料及び検体の観察を行う中で、接眼及び対物ミクロメーターの試料及び/又は検体の幾何学的特徴を計測するための2~10μmの太さの目盛が、試料及び検体を遮蔽することなく計測できること、また、プレパラートに画くことが可能なインキには、試料及び/又は検体を殆ど遮蔽することがない性状の種類のインキがあり、このようなインキで画かれた直線を透過して試料及び/又は検体を観察できることを看視してきた。これらは、前者が、目盛を画く直線の太さが細いことに、後者が、画かれた曲線の可視光線に対する光透過性に優れていることに起因しているものと考えられる。そこで、発明者は、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の光学顕微鏡観察において、光透過性がある曲線及び光透過性がない細い曲線を用いて形成される、視野を制限する標識、視線を誘導する標識、及び、観察領域の漏洩を防止する標識を、カバーグラス及び/又はスライドグラスに設けることが、上記課題の解決手段となることを着想した。この着想に基づいて、このような標識を形成したカバーグラス又はスライドグラスを用いたプレパラートの観察を実施したところ、光学顕微鏡観察の弊害になることなく、人間の目の特性を考慮した試料及び/又は検体の凝視すべき領域への視野制限機能、その制限された視野への視線誘導機能、及び、観察すべき領域を遺漏することがない観察領域漏洩防止機能を十分に発揮できるカバーグラス及びスライドグラスとなることが分かり、上記目的を達成できる可能性を確信した。更に、この着想は、その他の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具にも応用することが可能であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0018】
すなわち、本発明は、「試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」を所定の間隔で形成した標識が、観察者のために設けられていることを特徴とする光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具である。ここで、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線とした根拠は、光透過性がない細い曲線と光透過性がある曲線とに共通した本質的機能が、試料及び/又は検体を、観察の弊害にならない程度に遮蔽しないことにあり、そこに、本発明の技術思想が凝縮されているためである。また、このような標識が、光学顕微鏡用ガラス及びプラスチックに設けられるとは、光学顕微鏡用ガラス及びプラスチックに直接形成されて設けられることが好ましいが、予め形成された標識が、貼付や転写等の方法で設けられることも含まれる。
【0019】
従って、本発明は、その技術的根幹、すなわち、技術思想が、「試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」にあり、このような曲線を所定の間隔で形成した標識が設けられている光学顕微鏡観察用ガラス及びプラスチックを提供することである。なお、「観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」は、大別すると、「観察の弊害にならない光透過性がない曲線」と「観察の弊害にならない光透過性がある曲線」とがあり、それぞれ、上記「光透過性がない細い曲線」と「光透過性がある曲線」とに対応するが、これらには、共通した本質的機能が存在し、それが「観察の弊害にならない」ということにある。
【0020】
この点について詳しく説明すると、光学顕微鏡観察において、「観察の弊害にならない光透過性がない曲線」は、曲線に光透過性がなく、試料及び/又は検体を遮蔽するために、標識を認識できて試料及び/又は検体を遮蔽しない適切な曲線の太さを規定することによってその意義が明確になるのであり、観察を行って識別すべき試料及び/又は検体の形態が、光学顕微鏡観察の目的によって異なるので、その目的毎に「観察の弊害にならない光透過性がない曲線」の太さを規定する必要があるという表層的な解釈に陥り易い。しかし、本発明者は、目的毎に異なる「観察の弊害にならない光透過性がない曲線」の太さを規定することに意義はなく、「観察の弊害にならない光透過性がない曲線」は、各種倍率で認識可能な太さであり、試料及び/検体の中に存在する、観察して識別すべき対象物を必要以上に遮蔽することがない曲線であって、「観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」と定義するこが妥当であり、光学顕微鏡観察を行う上で必要とされる標識が、「観察の弊害にならない光透過性がない曲線」、すなわち、「観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」を所定の間隔で標識を形成し、その標識が設けられている光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具というものに特別な技術的特徴があり、この技術的特徴は、従来技術から想到することができない着想で、独創性を備えているという認識に至った。
【0021】
「観察の弊害にならない光透過性がある曲線」についても、同様な考え方を適用するのが妥当である。光学顕微鏡観察において、「観察の弊害にならない光透過性がある曲線」は、曲線が光透過性を有し、試料及び/又は検体を遮蔽することはないが、その曲線の太さ及び光透過率が観察に影響を及ぼすために、標識を認識できるための適切な曲線の太さ及び光透過率を規定することによってその意義が明確になるのであり、観察を行って識別すべき試料及び/又は検体の形態が、光学顕微鏡観察の目的によって異なるので、その目的毎に「観察の弊害にならない光透過性がある曲線」の太さ及び光透過率を規定する必要があるという表層的な解釈に陥り易い。しかし、本発明者は、目的毎に異なる「観察の弊害にならない光透過性がある曲線」の太さ及び光透過率を規定することに意義はなく、「観察の弊害にならない光透過性がある曲線」は、各種倍率で認識可能な太さ及び光透過率であり、試料及び/検体の中に存在する、観察して識別すべき対象物を必要以上に遮蔽することがない曲線であって、「観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」と定義するこが妥当であり、光学顕微鏡観察を行う上で必要とされる標識が、「観察の弊害にならない光透過性がある曲線」、すなわち、「観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」を所定の間隔で標識を形成し、その標識が設けられている光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具というものに特別な技術的特徴があり、この技術的特徴は、従来技術から想到することができない着想で、独創性を備えているという認識に至った。
【0022】
このことから、「観察の弊害にならない光透過性がない曲線」と「観察の弊害にならない光透過性がある曲線」は、「光透過性」の有無ではなく、観察の弊害にならなければよく、「観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」と定義することができ、これが、本発明の技術的特徴の根幹となるものであると考えるのが妥当であるという結論に至った。
【0023】
また、このような曲線を所定の間隔で形成した標識の機能としては、観察者が光学顕微鏡観察を行う上で、観察者の観察目的に合致した情報を提供するものである。従って、プレパラート上における、試料及び/又は検体の分類及び分離、観察順序、観察領域の指定、並びに、試料及び/又は検体に関係する特定情報である個人認証や個人情報等、特に限定されるものではない。標識の形態としては、観察者に情報が伝達され得る文字、図形、記号、計測手段である各種目盛、及び、曲線等の符号等が挙げられ、これには、試料及び/又は検体に関係する各種情報等を内蔵しているバーコード及び二次元バーコード等も含まれる。更に、このような標識は、複数の曲線を用いて形成されることが好ましいが、所定の間隔を有していれば、一筆書きのように一本の曲線で形成されていても良い。
【0024】
但し、光学顕微鏡による組織及び/又は細胞の光学顕微鏡観察における検査及び/又は診断のように、細胞の見落としによる誤診が許されない場合には、標識が、観察の精度及び効率を高め、観察者を支援するために、観察者に有効な情報を提供する機能を欠くことはできない。例えば、このような情報としては、観察者が凝視して観察すべき試料及び/又は検体の視野を制限する情報、観察者の視線をその凝視すべき視野へ誘導する情報、並びに、観察すべき領域全てに亘って視線を誘導する情報等を挙げることができ、一つの細胞の見落としもない情報を提供する機能を有する標識とする必要がある。
【0025】
そして、本発明の、試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線によって観察者のための標識が形成されていることを特徴とする光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具を用いれば、観察する試料及び/又は検体の識別の弊害となることがない標識に従って、観察者が、漏洩することなく効率的に観察すべき試料及び/又は検体の光学顕微鏡観察を実施できる。
【0026】
特に、光学顕微鏡観察による組織及び/又は細胞の検査及び/又は診断のように、細胞の見落としによる誤診等が決して許されない場合には、組織及び/又は細胞の識別の弊害となる遮蔽作用がない曲線で形成されており、観察者が凝視して観察すべき試料及び/又は検体の視野を制限する情報、観察者の視線をその凝視すべき視野へ誘導する情報、並びに、観察すべき領域全てに亘って視線を誘導する情報等を提供する機能を有する標識に従えば、円形観察視野から視線を離すことなく、検査士、診断医等の観察者の視野が凝視し易い円形観察視野の中央部に制限されると共に、観察者の視線をその視野に誘導すると共に、観察者が観察すべき組織及び/又は細胞の全領域を見落とすことがないように誘導することが可能となり、一つの細胞も遺漏なく、観察者が安心して検査及び/又は診断を実施できるという顕著に優れた効果を奏するのである。ここで、識別とは、組織及び/又は細胞の同定、検査、及び、診断等である。また、特に、この場合の標識とは、光学顕微鏡観察における円形観察視野の中で、観察者が凝視すべき視野の指示及び制限、その視野への視線の誘導、観察すべき試料及び/又は検体の全領域を漏洩することがない視野及び視線の誘導を掌る曲線、目印、及び、符号等の類で形成又は構成されるものである。
【0027】
なお、曲線は、数学において、大きさのない点が平面上又は空間内を連続的に動いた軌跡と定義され、特に、平面上の曲線の場合、閉区間a≦t≦bで定義された二つの連続関数f(t),g(t)により、x=f(t),y=g(t)で表される座標(x,y)の点の集合(点が動いた軌跡)が、平面上の曲線で、連続曲線とも称され、太さがなく、直線は曲線に含まれる。そして、(f(a),g(a))及び(f(b),g(b))は、それぞれ、曲線の始点及び曲線の終点である。なお、空間内の曲線の場合、三つの連続関数で同様に表される。しかし、本発明の曲線は、太さを有し、厚さ又は窪みを持つと共に、連続して形成される実線である必要がないため、数学と全く同様に定義することはできない。そこで、本発明の曲線は、大きさを有する点が平面上を連続的に動いた軌跡であり、太さ、始点、及び、終点を有する直線を含む連続又は不連続曲線であるとする。連続曲線とは実線であり、不連続曲線とは、破線、一点鎖線、二点鎖線等である。また、上記有限直線は、一般的に、線分と呼称されるが、有限である曲線の対となる単語として直線を用いる。更に、異なる領域を分ける境界線の太さはないものとする。
【0028】
本発明の技術思想が適用可能な光学顕微鏡用(ガラス及び/もしくはプラスチックであってよい)用具として、カバーグラス、スライドグラス、プレパラート、等倍フラットレンズ、対物ミクロメーター、接眼ミクロメーター、及び、シートゲージを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。本発明は、試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線を所定の間隔で形成した標識が、観察者のために設けられている光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具全てに該当する。なお、等倍フラットレンズとは、既存の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具にはなく、本発明によって創作された光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具であり、後程説明する。また、シートゲージとは、計測手段が形成されている透明なシートであり、光学顕微鏡ばかりでなく、拡大顕微鏡、マイクロスコープ等を用い、長さ、角度、図形等を計測することができる透明シートで、工業製品等の各種目視検査及び目視測定、キャリブレーション(較正)、並びに、バイオ技術等の組織観察用スケールとして幅広い分野で利用されているものである(特許文献2)。
【0029】
このように適用範囲は限定されないが、試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線を所定の間隔で形成した標識が、観察者のために設けられている光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具としては、カバーグラス及びスライドグラスであることが特に好ましい。これは、光学顕微鏡観察が、光学顕微鏡観察に適した染色や切断等が施された試料及び/又は検体を、カバーグラス及びスライドグラスによって挟持したプレパラートを用いて行うものであり、このように標識が設けられているカバーグラス及び/又はスライドグラスがプレパラートに用いられると、各種試料及び/又は検体の光学顕微鏡観察において、観察の弊害になることなく、標識の指示に従った観察を実行することができるためである。
【0030】
そして、このようなカバーグラス及び/又はスライドグラスを用いて作製されるプレパラートを用いれば、例えば、組織及び/又は細胞の光学顕微鏡観察による検査及び/又は診断において、細胞の同定及び良否の識別に弊害となることがない曲線を所定の間隔で形成した標識、すなわち、検査士、診断医等の観察者の視野が凝視し易い円形観察視野の中央部に制限されると共に、観察者の視線をその視野に誘導し、観察者が観察すべき組織及び/又は細胞の全領域を見落とすことがないように視線を誘導する標識が設けられているカバーグラス又はスライドグラスを用いてプレパラートが作製されていれば、異常な細胞を見落とすことがなく、観察者が安心して観察することができるので、誤診がなく、精度及び効率の高い検査及び/又は診断が可能となるという顕著に優れた効果を奏するのである。
【0031】
更に、本発明者は、接眼及び対物ミクロメーターの試料及び/又は検体の幾何学的特徴を計測するための2~10μmの太さの目盛が、試料及び/又は検体を遮蔽することなく計測できるという事実に基づいて、接眼ミクロメーターの目盛の代わりに、試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線を所定の間隔で形成した標識が、観察者のために設けられることによって、上記カバーグラス及びスライドグラスと同等以上の効果を奏することを見出し、本発明の技術思想を適用した光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具を創作した。
【0032】
この本発明が新たに提案する光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具は、底面が略円形である円柱状シートの形態で、接眼レンズの鏡筒の光軸方向に対し、底面が垂直となるように装着されるガラス又はプラスチックの円形板であって、試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線を所定の間隔で形成した標識が、観察者のために設けられていることを特徴とするものである。この光学的に拡大縮小する機能を有していない円形状のガラス板及びプラスチック板であって、接眼ミクロメーターの目盛の代わりに標識が形成されているものを、本発明において等倍フラットレンズと呼称する。一般的に、フラットレンズというレンズが存在するが、この等倍フラットレンズにはレンズ機能はなく、光学顕微鏡観察のための標識を有するレンズで、本発明における造語である。
【0033】
この等倍フラットレンズに設けられている標識を通して、対物レンズで拡大された倒立虚像を接眼レンズで拡大した正立虚像を視ることになるので、正立虚像において、等倍フラットレンズに設けられている標識は、接眼レンズの倍率でしか拡大されないのに対し、その標識と重複した試料及び/又は検体の正立虚像は、対物レンズにより大きさを調整することができるので、等倍フラットレンズに設けられている標識は、観察の弊害になる遮蔽作用が極めて低いものとなり、標識に従った光学顕微鏡観察を行うことが容易である。特に、標識を形成するために光透過性がない曲線を用いる場合、等倍フラットレンズに設けられる標識を形成する曲線の太さは、この倍率の差に対応して、カバーグラス及び/又はスライドグラスに設けられる標識を形成する曲線の太さよりも大きくすることができ、両者で同等の遮蔽作用となるという特長がある。
【0034】
しかしながら、この等倍フラットレンズの長所は短所でもある。標識を設けたカバーグラス及びスライドグラスを用いて作製されたプレパラートのように、観察者が観察すべき観察領域を規定し、その観察領域に視線を誘導し、その観察領域を隈なく観察することができない。これは、等倍フラットレンズに設けられている標識は、観察対象要素が接触するカバーグラス及びスライドグラスとは異なり、これらとは分離し独立して存在しているので、組織及び/又は細胞の光学顕微鏡観察による検査及び/又は診断において、細胞の同定及び良否の識別に弊害となることがない曲線によって、検査士、診断医等の観察者の視野が凝視し易い円形観察視野の中央部に制限されると共に、観察者の視線をその視野に誘導する標識とはなり得るが、標識をカバーグラス及び/又はスライドグラスに設ける場合のように、観察対象領域を指示する機能を有していない。例えば、対物レンズの倍率を変化させた場合を想定すると、カバーグラス又はスライドグラスに設けられる標識は、観察対象要素と共に変化し、曲線に設定された観察領域だけを観察することができる。しかし、等倍フラットレンズに設けられている標識は、対物レンズの倍率変化に伴って変化しないので、観察対象領域を設定する機能を有していないことが容易に理解できる。従って、接眼レンズを介して視る正立虚像において、等倍フラットレンズの標識と共に視認することができ、規定された観察領域を指示する標識をプレパラートに画いておく、又は、光学顕微鏡のXYステージの操作による規定された観察領域内を移動させる等の工夫が必要である。
【0035】
そこで、この等倍フラットレンズを用いた光学顕微鏡観察において、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の規定された観察領域全体を隈なく観察するための具体的方法を種々検討した結果、次のような解決手段を見出した。
【0036】
第一の手段は、一般的な無地のカバーグラス及びスライドグラスに、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の規定された観察領域全体を隈なく観察するための、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線を形成した標識とは異なる第二の標識ともいうべき位置情報を有する目印で構成される標識を設け、このカバーグラス及び/又はスライドグラスを用いて作製したプレパラートと等倍フラットレンズとを併用する光学顕微鏡用ガラス及びプラスチックによって、等倍フラットレンズの課題を解決するものである。
【0037】
すなわち、本発明の光学顕微鏡用具(ガラス及び/もしくはプラスチックであってもよい。以下同じ。)は、底面が略円形である円柱状シートの形態で、接眼レンズの鏡筒の光軸方向に対し、この底面が垂直となるように装着される等倍フラットレンズと、カバーグラスとの組合せ用具であって、等倍フラットレンズには、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線を所定の間隔で形成した標識が、観察者のために設けられており、カバーグラスには、観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域に誘導するための基本単位として、標識を形成する曲線又はその曲線の延長線とカバーグラスの外周との交点の近傍で、カバーグラスの重心を通り、標識を形成する曲線と略平行な直線と垂直な直線を対象軸として、略線対称の位置に設けられる一対の位置を指示する目印が、カバーグラスの外周に沿って、所定の間隔で複数形成されている第二の標識が設けられていることを特徴とする光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具である。なお、ここで、曲線と略平行というのは、曲線が直線以外の場合、曲線の長さ方向の向きを示す曲線の始点と終点を結ぶ直線と略平行という意味である。
【0038】
また、本発明の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具は、底面が略円形である円柱状シートの形態で、接眼レンズの鏡筒の光軸方向に対し、この底面が垂直となるように装着される等倍フラットレンズと、スライドグラスとの組合せ用具であって、等倍フラットレンズには、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線を所定の間隔で形成した標識が、観察者のために設けられており、スライドグラスには、観察者が観察すべき前記試料及び/又は検体の領域に誘導するための基本単位として、標識を形成する曲線又はその曲線の延長線とスライドグラスの外周との交点近傍又はカバーグラスの外周との交点近傍又はカバーグラスの外周との交点近傍で、スライドグラスの重心を通り、標識を形成する曲線と略平行な直線と垂直な直線を対象軸として、略線対称の位置に設けられる一対の位置を指示する目印が、スライドグラスの外周又はカバーグラスの外周に沿って、所定の間隔で複数形成されている第二の標識が設けられていることを特徴とする光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具である。なお、ここでも、曲線と略平行というのは、段落0037に記載した通りである。
【0039】
一般的なカバーグラス及びスライドグラス、すなわち、四つの角が全て等しい四角形であれば、次のように表現することができる。本発明の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具は、底面が略円形である円柱状シートの形態で、接眼レンズの鏡筒の光軸方向に対し、この底面が垂直となるように装着される等倍フラットレンズと、四つの角が等しい四角形のカバーグラス又はスライドグラスとの組合せ用具であって、等倍フラットレンズには、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線を所定の間隔で形成した標識が、観察者のために設けられており、カバーグラス又はスライドグラスには、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の規定された観察領域に誘導するための基本単位として、少なくとも一方の対辺の近傍で、この対辺に平行な直線を対称軸として略線対称の位置に設けられる一対の位置を指示する目印が、対辺に沿って所定の間隔で、複数形成されている第二の標識が設けられていることを特徴とする光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具である。
【0040】
このような等倍フラットレンズと、四つの角が等しい四角形のカバーグラス又はスライドグラスとの組合せ用具の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具が、段落0026に記載したように、細胞検査及び/又は細胞診断において採用される頻度が高まっているLBC法において用いられる場合には、スライドグラスの外周近傍に第二の標識が設けられるのではなく、カバーグラスの外周に形成される第二の標識の位置近傍のスライドグラスに設けることが好ましい。これは、LBC法では、検体がスライドガラス上全体ではなく、スライドグラスよりも小さな面積で円形状に塗抹され、その検体の大きさに沿ったカバーグラスが用いられるためである。
【0041】
このように、LBC法においては、検体がスライドグラス上で円形状に塗抹されるので、必ずしも四つの角が全て等しい四角形のカバーグラス及びスライドグラスに限定されるものではなく、円形状のカバーグラス及び/又はスライドグラスが使用される可能性がある。この場合の本発明の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチックは、次のように表現することができる。本発明の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具は、底面が略円形である円柱状シートの形態で、接眼レンズの鏡筒の光軸方向に対し、この底面が垂直となるように装着される等倍フラットレンズと、円形状のカバーグラス又はスライドグラスとの組合せ用具であって、等倍フラットレンズには、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線を所定の間隔で形成した標識が、観察者のために設けられており、円形状のカバーグラス又はスライドグラスには、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の規定された観察領域に誘導するための基本単位として、円の直径と外周との交点近傍に設けられる一対の位置を指示する目印と、直径に平行で所定の間隔にある弦と外周との交点近傍に設けられる一対の位置を指示する目印とから形成される第二の標識が設けられていることを特徴とする光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具である。
【0042】
この方法によれば、カバーグラス及び/又はスライドグラスの外周に沿って、所定の間隔で複数設けられている位置情報を有する目印から構成される第二の標識に従って、光学顕微鏡のXYステージを操作して観察すると、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の規定された観察領域全体を隈なく観察することができる。
【0043】
その原理を、四つの角が等しい四角形のスライドグラスに第二の標識を設けた具体的代表例で説明する。まず、第二の標識を構成する目印を短い線分とし、一対の位置を指示する目印を、検体が載置されている長方形のスライドグラスの表面の、光学顕微鏡のXYステージのY軸に平行な短辺の対辺に垂直に交わり、線対称の位置関係にある短い二本の線分として設ける。であるとする。この一対の目印が観察領域の遺漏を防止する第二の標識の基本単位であり、所定の間隔で、短辺の対辺に沿って複数配置され、最上端の一対の線分を第一の一対の線分、第一の線分に隣接する一対の線分を第二の一対の線分とすれば、順に、第三の一対の線分、第四の一対の線分と呼称し、最下端の一対の線分まで名称をつけることができ、これらの一対の線分の集合体が第二の標識として設けられ機能する。そして、最上端の左側の第一の一対の線分とそれに隣接する第二の一対の線分とが、円形観察視野に入るようにして、XYステージをX軸の右方向に操作すれば、プレパラートが長方形であるため、第一及び第二の一対の線分の右端が視認されるように視線が誘導される。その後、右側の第二の一対の線分とそれに隣接する第三の一対の線分とが、円形観察視野に入るようにして、XYステージをX軸の左方向に操作すれば、プレパラートが長方形であるため、第二及び第三の一対の線分の左端が視認されるように視線が誘導される。このことを繰り返し、最下端の一対の線分まで観察すれば、観察者が、観察領域を漏洩することはない。
【0044】
この操作から分かるように、観察領域の漏洩をより確実に防止するため、接眼レンズを介して視認される正立虚像において、上記一対の位置を指示する線分を結ぶ直線の間隔が、等倍フラットレンズに形成されている曲線の最短の間隔より狭くなるように形成されていると、等倍フラットレンズに形成されているXYステージのX軸に交わらない複数の曲線が、視野を制限すると共に、その制限された視野に視線を誘導することができる。そして、この等倍フラットレンズに形成されている曲線より、上記一対の位置を指示する線分を結ぶ直線の間隔の方が狭いため、曲線と一対の線分を結ぶ仮想直線との間の領域は重複して観察されるため、観察すべき領域を漏洩する心配がない。
【0045】
従って、底面が略円形である円柱状シートの形態で、接眼レンズの鏡筒の光軸方向に対し、この底面が垂直となるように装着され、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線を所定の間隔で形成した標識が、観察者のために設けられている等倍フラットレンズと、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の領域に誘導するための基本単位として、外周に沿って、位置を指示する目印が、所定の間隔で複数形成されている第二の標識が設けられているカバーグラス又はスライドグラスとの組み合わせた光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具によって、標識に従って、精度が高く、効率的な光学顕微鏡観察を実施することができる。特に、組織及び/又は細胞の光学顕微鏡観察による検査及び/又は診断において、検査士、診断医等の観察者が凝視し易い円形観察視野の中央部に視野を制限すると共に、観察者の視線をその視野に誘導し、観察者が観察すべき組織及び/又は細胞の領域を見落とすことがないように視線を誘導することができるので、誤診がなく、精度及び効率の高い検査及び/又は診断を安心して行えるという顕著に優れた効果を奏する。
【0046】
第二の手段は、等倍フラットレンズを用いる場合には、XYステージとして、精度よく特定した領域を移動可能なXYステージを備えている光学顕微鏡と組み合わせて、等倍フラットレンズの課題を解決するものである。すなわち、本発明は、本発明の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具である上記等倍フラットレンズと、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の領域を漏洩することなく移動する機能を有するXYステージを備えている光学顕微鏡とを組み合わせることにより、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の領域において、観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能、観察者の視線を視野に誘導する視線誘導機能、及び、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の領域を漏洩することがない漏洩防止機能を有することを特徴とする光学顕微鏡システムを提供するものでもある。
【0047】
特に、XYステージとしては、位置決めすることが可能であれば、特に限定されるものではないが、正確に位置決め可能であり、設置が容易な自動位置決めXYステージであることが好ましい(非特許文献6)。
【0048】
また、XYステージの移動速度を観察者が制御可能であるという点に光学顕微鏡観察の特徴を発揮できる手動方式であることがより好ましい。この場合には、XYステージのX軸方向及び/又はY軸方向の可動ハンドルと連動するスライド機構に、可動ハンドルの操作において、所定の位置で指先に抵抗を触知させることできるが、XYステージのX軸方向及び/又はY軸方向の動作に影響を及ぼすことがないバネが、スライド機構のX軸方向及び/又はY軸方向の溝に、所定の間隔で装着されることによって、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の領域を認識可能とすることができるので、このようなバネが装着されているXYステージは、手動式位置決めXYステージとして用いることができる。また、XYステージの可動ハンドルに、ハンドルの回転数を触知可能な手段を設けているXYステージも、手動式位置決めXYステージとして用いることもできる。これらのXYステージを用いれば、等倍フラットレンズを用いた光学顕微鏡観察において、観察者が、XYステージを操作すると観察すべき試料及び/又は検体の観察領域の情報を認識でき、光学顕微鏡の接眼レンズから目を離すことなく、移動速度を制御し、観察すべき試料及び/又は検体の領域を漏洩することがなく、安心して光学顕微鏡観察を行うことができる。この原理は、長さ等を高精度で計測することができるマイクロメータに代表される、回転量と移動量との比例関係であり、その原理に基づく周知の技術が本発明に応用されたものである。特にスライド機構としては、ネジ式スライダ機構、ボールネジ式スライダ機構、及び、ラック/ピニオン式スライダ機構を用いることが好ましい。
【0049】
本発明の技術思想である、「試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」に求められる条件は、既に説明したように、試料及び/又は検体の形態が千差万別であり、光学顕微鏡観察の目的も多岐に亘ることから、定量的に規定する意義に乏しく、「試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線を所定の間隔で形成した標識が、観察者のために設けられている光学顕微鏡観察用ガラス及びプラスチック」という記述が、本発明の技術的特徴を十分に表現しているものである。
【0050】
しかしながら、試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素の大きさを基準とすれば、その構成要素の隠蔽する割合が、その構成要素の識別の妥当性に影響を及ぼすという観点から、「観察の弊害となる遮蔽作用」を、次のように視界遮蔽率と定義し、定量化することが望ましい。すなわち、本発明の「試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」は、その曲線で形成されている標識が、試料及び/又は検体と共に観察視野に入るように形成されており、試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素の占有面積に対する、標識がその占有面積の視界を遮蔽する面積の割合を視界遮蔽率とし、視界遮蔽率が約50%未満であることを特徴としている。ここで、下限値を設定する必要がないのは、本発明の「試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」には、光透過性があり、曲線としての識別はできるが、試料及び/又は検体を遮蔽しない曲線を含んでいるからである。
【0051】
特に、人体の組織及び/又は細胞を、光学顕微鏡観察に基づいた疾病の検査及び/又は診断を行う場合、個々の細胞の状態を視認でき、1~2個の細胞であっても見落とすことがない場合には、「試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」に対する要求は厳しく、この曲線で形成されている標識が、試料及び/又は検体と共に観察視野に入るように形成されており、試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素の占有面積に対する、標識が占有面積の視界を遮蔽する面積の割合を視界遮蔽率とした場合、その視界遮蔽率が約30%未満であることがより好ましく、約15%未満であることがより更に好ましく、約10%未満であることが最も好ましい。
【0052】
このように、本発明の技術的特徴は、標識が観察対象要素を遮蔽する割合、すなわち、本発明で定義している視界遮蔽率を限定することによって、「試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」の意義を、一層明確にすることができる。更に、光学顕微鏡観察の目的が、視界遮蔽率の定義に記述された試料及び/又は検体を組織化している観察対象を精度よく識別できる上に、その観察対象を見落とすことなく、安心して観察できることが求められる場合には、例えば、光学顕微鏡観察による人体の組織及び/又は細胞の検査及び/又は診断等の場合には、「観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」を所定の間隔で形成した標識にも、特定の機能を付与することが好ましく、視界遮蔽率による限定の有無に関わらず、少なくとも、次に示す三つの機能を有していることが好ましい。
【0053】
第一に、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の領域において、観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能である。第二に、観察者が凝視すべき視野へ観察者の視線を誘導する視線誘導機能である。そして、第三に、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の領域を漏洩することがない観察領域漏洩防止機能である。上記本発明の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチックに設けられている標識は、これら三つの機能を有していることを特徴としている。
【0054】
ただし、試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線によって形成された観察者のための標識が設けられている等倍フラットレンズを単独で使用する場合では、第三の機能を備えていないため、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の領域を漏洩することなく移動する機能を有するXYステージを備えている光学顕微鏡を用いる必要がある。
【0055】
また、試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線によって形成された標識が設けられている等倍フラットレンズと、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の領域に誘導するための基本単位として、一対の位置を指示する目印が、外周に沿って、所定の間隔で複数形成されている第二の標識が設けられているカバーグラス又はスライドグラスとを組み合わせた光学顕微鏡用具は、本発明の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具の範疇であり、上記三つの機能を分担して備えている。すなわち、等倍フラットレンズが、上記第一の視野制限機能と、上記第二の視線誘導機能とを備え、カバーグラス又はスライドグラスが、第三の観察領域漏洩防止機能を備えている。
【0056】
このような三つの機能を発現するための標識には、観察すべき試料及び/又は検体の視野を制限する情報、観察者の視線をその凝視すべき視野へ誘導する情報、及び、観察すべき領域全てに亘って視線を誘導する情報が、観察者に伝達され得る文字、図形、記号、及び、曲線等の符号であれば特に限定されるものではないが、光学顕微鏡のXYステージのX軸及び/又はY軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して形成されている複数の曲線の集合体であることが好ましい。
【0057】
このような曲線の集合体には、三つの形態がある。第一に、X軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して、複数の曲線がY軸方向に一列に並べられる形態である。第二に、Y軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して、複数の曲線がX軸方向に一列に並べられる形態である。第三に、第一の形態の曲線と第二の形態の曲線が交差し、複数の曲線がおよそ碁盤目状に並べられる形態である。そして、段落0027に示したように、曲線は、直線を含み、特に、直線であることが好ましく、一般的には線分と呼称される両端を有する有限直線である。また、曲線は、連続曲線又は不連続曲線のいずれでも良い。
【0058】
このような曲線の集合体の形態が好ましい理由には、まず、XYステージを備えた光学顕微鏡を用いるという物理的意義がある。実際に観察されるカバーグラスとスライドグラスとから作製されるプレパラートを移動させる手段がXYステージであり、X軸方向とY軸方向とを交互に操作して試料及び/又は検体の視野を移動させ、観察すべき領域全体を隈なく観察するためである。
【0059】
一方、曲線の集合体の形態自体に基づく理由としては、次のように視野制限、視線誘導、及び、観察領域漏洩防止機能を発揮することができる点にある。X軸に交差しない位置関係で、所定の間隔を確保して、複数の曲線がY軸方向に一列に並べられる第一の形態を例に挙げて説明する。
【0060】
まず、接眼レンズを介して視る円形観察視野に入るように設定した隣接する曲線は、有限曲線であり、並列しているので、観察を開始すべき位置を明確に設定することができる。例えば、開始位置は、最上段の最左端と設定されることができる。その位置から、隣接する曲線の間に存在する試料及び/又は検体が観察者にとって凝視すべき視野であることを指示すると共に、その領域外の弓形領域の観察は必要がなく、人間の目の特性である円形観察視野の中心部に集中することができる。
【0061】
それと共に、隣接する曲線は、そのX軸の右方向にプレパラートを移動させることを指示する情報を与えるので、そのいずれか一方へ移動させる操作によって、移動する隣接する曲線は、観察者の視線をその凝視すべき視野へと誘導する指示を与える情報となる。
【0062】
この操作を進めると、曲線には両端が存在するので、左端から右端まで一つの隣接する曲線の領域の観察が完了したことを認識できる。次いで、プレパラートを移動させてきた方向と直角なY軸方向で、曲線が形成されている下方向に移動させると、その隣接する曲線の一方が、これと視野を制限してきた曲線の反対側の隣接する曲線と新たな制限された視野を形成することができるので、新たに、観察者にとって凝視すべき視野であることが指示される。その領域外の弓形領域の観察は必要がなく、人間の目の特性である円形観察視野の中心部に集中することができることは、上記のとおりであり、次には、段落0059とは反対方向に同様の操作、観察が行われる。
【0063】
段落0059及び0060を反復して観察を行っていくと、接眼レンズを介して視る円形観察視野に入るように設定した隣接する曲線は、有限曲線であり、並列しているので、観察を終了すべき位置も明確に設定できる。例えば、曲線の本数が奇数とすれば、最下段の最右端を観察終了位置と設定できるので、観察領域が明確に規定される。従って、観察すべき領域を漏洩することがない。
【0064】
特に、人間の目の特性を積極的に活用するための、隣接する曲線で制限された視野が形成されると、円形観察視野の中心部に視線を集中させることができる点について、第一~三の曲線の集合体について説明する。第一の形態では、視線がX軸方向に誘導されるので、曲線と円形観察視野とが形成するX軸方向と垂直な二つの弓形領域が観察領域から削除され、常に円形観察視野の中心部が凝視され、第二の形態では、視線がY軸方向に誘導されるので、曲線と円形観察視野とが形成するY軸方向と垂直な二つの弓形領域が観察領域から削除され、常に円形観察視野の中心部が凝視される。第三の形態では、視線がX軸方向又はY軸方向に誘導されるが、例えば、Y軸方向に誘導される場合、曲線と円形観察視野とが形成するX軸方向と垂直な二つの弓形領域が観察領域から削除され、常に円形観察視野の中心部が凝視されるが、Y軸方向に隣接する曲線が視界に入るため、Y軸方向と垂直な二つの弓形領域も観察領域から削除され、より円形観察視野の中心部に視線を集中させることができる。また、Y軸方向に誘導される場合、観察の進捗状況も把握することができる。なお、視線誘導機能及び観察領域漏洩防止機能については、第二及び第三の形態においても、上記第一の形態で説明した通りである。
【0065】
以上説明した複数の曲線の集合体の機能を発揮させる上で、曲線に求められる最も重要な要素は、光透過性の有無に関わらず、本発明の技術思想である「試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」であればよい。ただし、観察の目的に応じて、本発明で定義する、「試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素の占有面積に対する、標識が占有面積の視界を遮蔽する面積の割合」という視界遮蔽率で限定されることが好ましい場合がある。しかし、このような複数の曲線の集合体を構成する曲線には、光透過性がある曲線と光透過性がない曲線が包含されており、複数の曲線の集合体の機能を更に効果的に発揮させるためには、光透過性がある曲線と光透過性がない曲線の場合によって、それぞれの集合体に特徴的な特性とすることが好ましい。また、カバーグラス又はスライドグラスと等倍フラットレンズにおいても、等倍フラットレンズの複数の曲線の集合体に特徴的な特性とすることが好ましい。更に、このことは、光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具の種類によっても同様のことがいえる。
【0066】
そこで、以下、光透過性の有無、並びに、光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具の種類によって異なる複数の曲線の集合体に好ましい特性を説明する。
【0067】
まず、カバーグラス又はスライドグラスに光透過性がない連続曲線又は不連続曲線で形成されている標識を設ける場合、約0.02~100μmの太さの曲線を用いることができる。この下限値は、カバーグラス又はスライドグラスに光学顕微鏡観察の倍率で認識可能な太さであるという観点と、曲線が形成するのは標識であって、試料及び/又は検体の観察のような分解能等を問われないという観点によって設定されているものであって、遮蔽率との関連性はない。しかし、等倍フラットレンズに標識を形成する場合、接眼レンズによって拡大されるだけであるため、約0.2μm以上の太さの曲線を用いることができる。一方、上限値は、試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素の直径が約250μmであると想定し、試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素の占有面積に対する、標識がその占有面積の視界を遮蔽する面積の割合である視界遮蔽率が、観察対象の構成要素を識別可能な約50%と設定したものである。観察対象の構成要素に応じて、それよりも細い曲線に設計することが好ましい。従って、試料及び/又は検体の種類、観察の目的及びそれに伴う倍率、並びに、使用する光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具等に応じて、約0.02~100μmの範囲から曲線の太さを選択することができる。
【0068】
しかし、人体の細胞の観察による検査及び/又は診断の場合、一つの細胞も見落とすことができないため、検査及び/又は診断される組織及び/又は細胞に応じた曲線の太さの設計が必要である。人体の細胞の大きさは、細胞の短軸方向の長さが約4~26μmであり、染色することによって約80~90%に収縮する。特殊な細胞も含む組織及び/又は細胞の検査及び/又は診断の場合、染色された細胞の短軸方向の長さの最小値が約2μmとなる可能性がある。その場合、カバーグラス又はスライドグラスに形成する曲線の太さは、視界遮蔽率約50%で、約0.8μm、視界遮蔽率約1%で約0.02μmとする必要がある。逆に、染色された細胞の短軸方向の最大値は約25μmであるため、その場合の曲線の太さは、視界遮蔽率約50%で、約10μm、視界遮蔽率約1%で約0.25μmであればよい。また、人体の細胞よりも大きな構成要素で組織化されている試料及び/又は検体の場合は、その構成要素の短軸方向の長さが約25μm以上であるため、曲線の太さは、約10μm未満であればよい。
【0069】
このように、カバーグラス又はスライドクラスに標識が形成される場合の曲線の太さは、細い程好ましいが、曲線を視野制限機能及び視線誘導機能を果たすことが可能な程度に視認される必要があることと、観察すべき試料及び/又は検体の大きさの約1%の視界遮蔽率が必要な場合もあることから、約0.02~10μmの曲線の太さを有していることが望まれる。しかし、細胞、試料及び/又は検体の種類、並びに、顕微鏡観察の目的に応じた曲線の太さに設計することが好ましい。
【0070】
一方、等倍フラットレンズに光透過性がない連続曲線又は不連続曲線で形成されている標識を設ける場合の曲線の太さは、次のように設定することができる。短軸方向の長さの最小値が約2μmである細胞の場合、曲線の太さは、細胞の識別が可能な視界遮蔽率である約50%で、約8μm、視界遮蔽率が約1%で約0.2μmとなる。逆に、短軸方向の最大値が約25μmである細胞の場合、曲線の太さは、視界遮蔽率が約50%で、約100μm、視界遮蔽率が約1%で、約2.5μmであればよい。また、人体の細胞よりも大きな構成要素で組織化されている試料及び/又は検体の場合は、その構成要素の短軸方向の長さが約25μm以上であるため、曲線の太さは、約100μm未満であればよい。従って、等倍フラットレンズに標識が形成される場合の曲線の太さは、曲線の視認性も含め、約0.2~100μmであることが好ましい。
【0071】
更に、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の領域において、人間の目の特性である円形観察視野の中心部に集中することを利用した観察者が凝視すべき視野を制限する視野制限機能を十分に発揮するためには、曲線の間隔も重要な役割を果たす。この曲線の間隔も、カバーグラス及び/又はスライドグラスと等倍フラットレンズとでは異なる。従って、その間隔に応じた曲線の太さに制限される。
【0072】
曲線が、光透過性がない物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であって、カバーグラス又はスライドクラスに標識が設けられる場合、曲線の太さが、約0.02~10μmであり、かつ、曲線の間隔が、隣接する曲線の中心線の最長の間隔から選択され、約(実視野/√2)×0.5~(実視野/√2)mmであることが好ましい。この間隔は、視野制限機能をより高めるためには、狭い程好ましいが、段落0058~0061で説明したように、曲線の間隔は、観察すべき領域を漏洩なく観察する観察領域漏洩防止機能も果たし、間隔が狭い程、プレパラートの移動操作が増加するという観察効率にも影響を及ぼす。そのため、(実視野/√2)×0.55~(実視野/√2)×0.85であることがより好ましく、(実視野/√2)×0.60~(実視野/√2)×0.75であることがより更に好ましい。特に、曲線が直線の場合、この間隔は、平行な直線の間隔である。
【0073】
一方、曲線が、光透過性がない物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であって、等倍フラットレンズに標識が形成される場合、曲線の太さが、約0.2~100μmであり、かつ、曲線の間隔が、隣接する曲線の中心線の最長の間隔から選択され、約(視野数/√2)×0.5~(視野数/√2)mmであることが好ましい。この場合も、特に、曲線が直線の場合、この間隔は、平行な直線の間隔である。従って、段落0037~0040で説明したように、等倍フラットレンズと併用する観察領域漏洩防止機能を補うためのカバーグラス又はスライドグラスに形成して位置を示す一対の目印の間隔は、等倍フラットレンズに形成される曲線が直線でない場合には、その間隔の最短距離未満となるように形成され、その曲線が直線の場合、約(視野数/√2)×0.5~(視野数/√2)mmの範囲内に形成されることが好ましい。なお、曲線の間隔を定義する基準となるのは、上記の通り、曲線の中心線である。
【0074】
次いで、光透過性がある物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線で形成されている標識の場合について説明する。この場合、曲線は、光透過性を有するため、確実に視認される必要があり、光の透過率は適度に抑制されるので、試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素が曲線と重なる領域の視認性がある程度低下するが、観察には支障がなく、曲線の太さを過度に留意する必要がないという長所がある。
【0075】
従って、本発明の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具に設ける標識の形成に、太さが、約0.1~(実視野/√2)×0.1×1000μmの範囲にある光透過性がある曲線を用いることが可能である。しかし、等倍フラットレンズに標識を設ける場合は、接眼レンズによって拡大されるだけであるため、光が透過する曲線の視認性を考慮する必要があり、約1~(実視野/√2)×0.1×1000μmの範囲の太さとすることが好ましい。
【0076】
視野制限機能を発揮するために重要な要素である曲線の間隔は、光透過性がない場合と同様、カバーグラス及びスライドグラスと等倍フラットレンズでは異なり、それに伴う曲線の太さも制限される。
【0077】
曲線が、光透過性がある物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であって、カバーグラス又はスライドクラスに標識が設けられる場合、曲線の太さが、約0.1~(実視野/√2)×0.1×1000μmであり、かつ、曲線の間隔が、隣接する曲線の中心線の最長の間隔から選択され、約(実視野/√2)×0.5~(実視野/√2)mmであることが好ましい。この間隔は、光透過性がない曲線と同様の理由により、(実視野/√2)×0.55~(実視野/√2)×0.85であることがより好ましく、(実視野/√2)×0.60~(実視野/√2)×0.75であることがより更に好ましい。特に、曲線が直線の場合、この間隔は、平行な直線の間隔である。
【0078】
一方、曲線が、光透過性がある物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線であって、等倍フラットレンズに標識が設けられる場合、曲線の太さが、約1~(実視野/√2)×0.1×1000μmであり、かつ、曲線の間隔が、隣接する曲線の中心線の最長の間隔から選択され、約(視野数/√2)×0.5~(視野数/√2)mmであることが好ましい。光透過性がある曲線同様、等倍フラットレンズと併用する観察領域漏洩防止機能を補うためのカバーグラス又はスライドグラスに形成して位置を示す一対の目印の間隔は、等倍フラットレンズに形成される曲線が直線でない場合には、その間隔の最短距離未満となるように形成され、その曲線が直線の場合、約(視野数/√2)×0.5~(視野数/√2)mmの範囲内に形成される。なお、曲線の間隔を定義する基準となるのは、上記の通り、曲線の中心線である。
【0079】
光透過性がある物質で形成されている連続曲線又は不連続曲線の場合、重要な点は、光透過率である。光透過性が高いため、試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素が曲線と重なる領域においても、観察に支障はない。しかし、過度に光透過性が高い場合、曲線自体の視認性が低下し、逆に、過度に光透過性が低いと、試料及び/又は検体を組織化している観察対象の視認性が著しく低下し、その識別が困難になる。従って、光透過性がある物質で形成される曲線の透過率は、本発明の全てに亘って、波長550nmの可視光線について、15~70%であることが好ましく、20~65%であることがより好ましく、25~65%であることがより更に好ましい。
【0080】
本発明の、試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線によって観察者のための標識が形成されていることを特徴とする光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具において、このように制御された光透過率の曲線を適用することは、段落0065~0068で説明したような視界遮蔽率を無視することができるという、光透過率がない物質で形成された曲線を用いて形成される標識とは端的な差異があり、優位な特徴でもあり、本発明の課題に対する好ましい解決手段である。
【0081】
以上では、本発明の、試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線によって観察者のための標識が形成されていることを特徴とする光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具について、曲線の形態や位置関係等の物理的特徴を説明したが、以下では、標識を形成する曲線の材質や製造法等の化学的特徴を説明する。
【0082】
本発明の曲線は、試料及び/又は検体の染色等の化学的処理に安定で、標識のパターン形成可能な材質及び方法によって製造され得る。その方法としては、半導体、電子・電気部品、精密機械部品、医療機器部品等の製造に広く活用されているフォトファブリケーションと呼称される、光学技術と化学技術の組み合わせにより、複雑で微細な形状をミクロン及びサブミクロンオーダーの精度で製造することができる精密加工技術を用いることが好ましい。
【0083】
フォトファブリケーションには、フォトレジストの露光及び現像によって形成されたフォトレジストで被覆されていない部分を、化学的又は電気化学的に溶解除去(エッチング)した後レジストを剥離して、パターンを形成するフォトエッチング法と、フォトレジストの露光及び現像によって形成されたフォトレジストで被覆されていない部分に、金属を電気的に堆積(メッキ)させた後レジストを剥離して、パターンを形成するフォトフォーミング法があり、本発明の曲線は、いずれの方法を用いても作製することができる。また、フォトエッチング法の範疇に入るが、物理的に研削除去(サンドブラスト)した後レジストを剥離するサンドブラスト法、フォトフォーミングの範疇に入るが、金属等を堆積する方法として物理蒸着を用い、レジスト上に堆積した金属等と共にレジストを剥離するリフトオフ法を用いることもできる。
【0084】
特に、本発明の精密な曲線を製造するには、ガラス及びプラスチック基板上にクロムやニッケル等の金属薄膜を無電解メッキ又は物理蒸着により形成された基板のフォトエッチング法と、フォトレジストが被覆されていない部分に、クロムやニッケル等の金属を物理蒸着によって堆積させた後、レジストと金属薄膜とを同時に剥離するリフトオフ法とが、精度及び効率という観点から好ましく、特に、微細化には、後者が望ましい。また、更に微細な曲線を必要とする場合には、レジストの露光及び現像によるレジストで被覆されていない部分を微細化すればよく、レジストとしてポジ型レジスト、特に化学増幅型ポジ型レジストを用いることが好ましい。より更なる微細化に対しては、レジストを露光する光源を、紫外線よりも短い遠紫外線、X線、電子線、及び、レーザーとし、それぞれの光源に適したレジストを用いることによって対応することができる。特に、0.02μmレベルの細線は、半導体の製造に使用されるフォトマスクの製造技術である電子ビームマスク描画装置を使用することによって形成され得る(非特許文献7及び8)。
【0085】
光透過性がない曲線の場合には、接眼ミクロメーターや対物ミクロメーターで一般的に使用されている上記クロム及びニッケル等の光を透過しない金属、並びに、光を透過しない金属酸化物等を用いることができる。また、光透過性がある曲線の場合には、光透過率を制御可能で化学的安定性に優れ、段落0080~0082に記載したようなフォトファブリケーションを用いて微細なパターンを形成できる各種透明導電膜を用いることが好ましい。
【0086】
透明導電膜としては、特に限定されないが、酸化スズ(SnO)系、酸化インジウム(In、)系、酸化亜鉛(ZnO)系、酸化カドミウム(CdO)系の透明導電膜を広く用いることができる。代表的なものとしては、導電性を高めた、スズ添加酸化インジウム(ITO、Indium-Tin-Oxide)、ガリウム添加酸化亜鉛(GZO、Gallium-Zinc-Oxide)、インジウム添加酸化亜鉛(IZO、Indium-Zinc-Oxide)、アルミニウム添加酸化亜鉛(AZO、Aluminium-Zinc-Oxide)、及び、アンチモン添加酸化スズ(ATO、Antimony-Tin-Oxide)等を挙げることができる。しかし、本発明では、導電性を必要としていないため、酸化スズ(SnO)系、酸化インジウム(In、)系、酸化亜鉛(ZnO)系、酸化カドミウム(CdO)系の光透過性を有する金属酸化物膜を広く用いることができる。
【0087】
この各種透明導電膜は、鉛筆やボールペン等の印字適正もあるため、フォトファブリケーションにより、この透明導電膜で曲線を形成すると同時に印字領域をパターン形成することによって、カバーグラス、スライドグラス、及び、プレパラートに必要なことを表記する領域を形成することもできる。
【0088】
光透過性がある曲線は、試料及び/又は検体の染色等の化学的処理に安定で、光透過利を制御可能な曲線が形成可能であれば、その材質及び方法は特に限定されないので、光透過性を重視した粒子径の小さな顔料や染料を用いた光透過率が高い紫外線硬化型及び熱硬化型印刷インキを用いて形成してもよい。
【0089】
ところで、以上説明した、試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線によって形成された観察者のための標識が設けられていることを特徴とする光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具は、光学顕微鏡を用いる癌を始めとする患者の病理検査及び/又は病理診断における、組織検査及び/又は組織診断、並びに、細胞検査及び/又は細胞診断に使用される場合、プレパラートの作製及びその後の取り扱い等は、ある患者から採取された組織及び/又は細胞のプレパラートが、他の患者から採取された組織及び/又は細胞のプレパラートとなり得る可能性があり、誤診同様、決して許されることではなく、極めて慎重に行われている。その回避策として、本発明のカバーグラス及びスライドグラスには、個々に識別及び特定可能な符号等が形成されていることが好ましい。符号としては、氏名、バーコード、及び、二次元バーコード等の患者を特定することができるものであれば、特に限定されるものではないが、診断患者の情報が記録されているものが好ましい。これは、プレパラートがあれば、光学顕微鏡による検査及び/又は診断の結果に、それ以外の方法による検査及び/又は診断の結果を含めた総合的な検査及び/又は診断等を加えることができるためである。
【0090】
このような個々に識別及び特定可能な符号は、段落0080~0090に記載したような方法、並びに、紫外線硬化型及び熱硬化型インク等による各種印刷法、インクジェット印刷法、フロスト加工法、ステイン印刷法、及び、転写印刷法等の一般的な方法によって形成することができる。
【0091】
本発明の、試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線によって観察者のための標識が形成されている光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具であるカバーグラス、スライドグラス、及び、等倍フラットレンズは、標識が、試料及び/又は検体と共に観察視野に入るように形成されており、試料及び/又は検体を組織化している観察対象の構成要素の占有面積に対する割合が低く、試料及び/又は検体の視認性も大きく向上することが明らかとなったため、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線を対物ミクロメーター、接眼ミクロメーター、及び、シートゲージの標識に適用した。その結果、カバーグラス、スライドグラス、及び、等倍フラットレンズと同様の効果を奏した。この標識には、目盛以外に必要な、メーター及びゲージの識別番号等も含んでおり、表示されるものを全て含む。
【0092】
特に、標識が、試料及び/又は検体の幾何学的特徴の計測手段である目盛の場合、目盛を形成する曲線の光透過性の有無にかかわらず、光透過性がない曲線の細さと光透過性がある曲線の視認性の向上による精度の高い計測が可能となった。
【0093】
このような効果は、曲線の光透過性の有無によって最適な曲線の太さがある。光透過性がない曲線の場合、曲線の太さが約0.2~2.0μmであることが好ましい。約0.2μm未満であると目盛の分解能が低く、約2.0μmを超えると遮蔽効果が大きく視認性が向上しない。光透過性である曲線の場合、曲線の太さが、約1.0~10μmであることが好ましい。約1.0μm未満であると目盛の視認性が悪く、約10μmを超えると、計測精度の低下を招く。
【発明の効果】
【0094】
本発明により、光学顕微鏡による検査及び/又は診断であるということ自体に起因する、光学顕微鏡観察の接眼レンズから視える円形観察視野の中心部に注意が払われがちで、その視野の周辺部には意識が向けられにくいという人間の目の特性による検体の観察の遺漏、特に、検体の中の異常な組織又は細胞等の特異点の視認の遺漏という課題を克服することができる。
【0095】
この課題の克服によって、特に、光学顕微鏡を用いる癌を始めとする病理検査及び/又は病理診断における組織検査及び/又は組織診断、並びに、細胞検査及び/又は細胞診断等において、これらに従事する各種専門技師、専門医、及び、専門検査士が、プレパラートに調製された検体の指定された領域を余すところなく観察することができ、この領域内に存在する数少ない病変とされる細胞も遺漏なく視認できることによって、誤診に繋がることがない正確な検査及び/又は診断を迅速に行える上、労力を低減し、安心して業務を遂行することができるという効果を奏する。言い換えれば、本発明により、検査及び/又は診断に従事する人の身体的負担、精神的負担、時間的負担、及び、経済的負担等を積極的に軽減し、検査及び/又は診断の正確性及び信頼性を高めるという効果を奏する。
【0096】
本発明の技術思想である「試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」で、従来の接眼ミクロメーター、対物ミクロメーター、及び、シートゲージの標識、特に、試料及び/又は検体の幾何学的特徴の計測手段である目盛を置換することによって、目盛を形成する曲線の光透過性の有無にかかわらず、視認性が向上して精度の高く効率的な計測が可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】本発明の一実施形態に係る、光学顕微鏡観察による検体である人体の組織及び/又は細胞の検査及び診断において、検体を構成する観察要素である細胞の観察に弊害となる遮蔽作用を及ぼさない、光透過性がない複数の直線の集合体が、円形観察視野の中心部に視野を制限し、制限された視野に視線を誘導すると共に、検体を遺漏なく観察できる標識として形成されているカバーグラス及びスライドグラスの平面模式図である。(a)光学顕微鏡のXYステージのX軸と平行な位置関係にある光透過性がない直線がY軸方向に一列に並んでいる直線の集合体である標識が設けられているカバーグラス。(b)光学顕微鏡のXYステージのY軸と平行な位置関係にある光透過性がない直線がX軸方向に一列に並んでいる直線の集合体が標識として形成されているスライドグラス。
図2】光学顕微鏡観察による検体である人体の組織及び/又は細胞の検査及び診断において、検体を構成する観察要素である細胞の観察に弊害となる遮蔽作用を及ぼさず、円形観察視野の中心部に視野を制限し、制限された視野に視線を誘導すると共に、検体を遺漏なく観察できる標識として、光透過性がない平行な位置関係にある複数の直線の集合体が形成されているカバーグラスの優れていることを示す模式図である。(a)光学顕微鏡のXYステージのX軸と平行な位置関係にある光透過性がない複数の直線の集合体が標識として形成されているカバーグラスを用いて作製したプレパラートの異常細胞を含む実視野を描いている模式図。(b)実視野(a)を対物レンズで拡大した倒立実像で、視野数を直径とする円形観察視野を描いている模式図。(c)倒立実像(b)を接眼レンズで拡大した正立虚像として観察される円形観察視野を描いている模式図。(d)円形観察視野(c)の中の、異常細胞と、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない標識を構成する光透過性がない直線とが重なっている領域。(e)破線で囲まれている領域(d)の拡大図。
図3】本発明の一実施形態に係る、光学顕微鏡観察による検体である人体の組織及び/又は細胞の検査及び診断において、検体を構成する観察要素である細胞の観察に弊害となる遮蔽作用を及ぼさない、光透過性がある複数の直線の集合体が、円形観察視野の中心部に視野を制限し、制限された視野に視線を誘導すると共に、検体を遺漏なく観察できる標識として形成されているカバーグラス及びスライドグラスの平面模式図である。(a)光学顕微鏡のXYステージのX軸と平行な位置関係にある光透過性がある直線がY軸方向に一列に並んでいる直線の集合体である標識が設けられているカバーグラス。(b)光学顕微鏡のXYステージのX軸と平行な位置関係にある光透過性がある直線とY軸と平行な位置関係にある光透過性がある直線とが碁盤目状に並んでいる直線の集合体が標識として形成されているスライドグラス。
図4】光学顕微鏡観察による検体である人体の組織及び/又は細胞の検査及び診断において、検体を構成する観察要素である細胞の観察に弊害となる遮蔽作用を及ぼさず、円形観察視野の中心部に視野を制限し、制限された視野に視線を誘導すると共に、検体を遺漏なく観察できる標識として、光透過性がある平行な位置関係にある複数の直線の集合体が形成されているカバーグラスの優れていることを示す模式図である。(a)光学顕微鏡のXYステージのX軸と平行な位置関係にある光透過性がある複数の直線の集合体が標識として形成されているカバーグラスを用いて作製したプレパラートの異常細胞を含む実視野を描いている模式図。(b)実視野(a)を対物レンズで拡大した倒立実像で、視野数を直径とする円形観察視野を描いている模式図。(c)倒立実像(b)を接眼レンズで拡大した正立虚像として観察される円形観察視野を描いている模式図。(d)円形観察視野(c)の中の、異常細胞と、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない標識を構成する光透過性がある直線とが重なっている領域。(e)破線で囲まれている領域(d)の拡大図。
図5】本発明の一実施形態に係る、光学顕微鏡観察による検体である人体の組織及び/又は細胞の検査及び診断において、検体を構成する観察要素である細胞の観察に弊害となる遮蔽作用を及ぼさない、光透過性がない直線の二本の集合体が、円形観察視野の中心部に視野を制限し、制限された視野に視線を誘導する標識として形成されている等倍フラットレンズと、この等倍フラットレンズの機能を補完するための、検体を遺漏なく観察できる標識として、短辺の対辺の近傍で、対辺に平行な直線を対称軸として略線対称の位置に設けられる一対の位置を指示する目印が、対辺に沿って、所定の間隔で複数形成されている長方形のカバーグラスの模式図である。(a)光学顕微鏡のXYステージのX軸と平行な位置関係にある光透過性がない直線の二本の集合体が標識として形成されている等倍フラットレンズの斜視図。(b)等倍フラットレンズが装着されている接眼レンズの断面模式図。(c)等倍フラットレンズ(a)の拡大平面図。(d)等倍フラットレンズ(a)の機能を補完するための検体を遺漏なく観察できる目印が形成されているカバーグラスの平面模式図。
図6】光学顕微鏡観察による検体である人体の組織及び/又は細胞の検査及び診断において、検体を構成する観察要素である細胞の観察に弊害となる遮蔽作用を及ぼさず、円形観察視野の中心部に視野を制限し、制限された視野に視線を誘導する標識として、平行な位置関係にある光透過性がない直線の二本の集合体が所定の間隔で形成されている等倍フラットレンズと、検体を遺漏なく観察できる標識として、短辺の対辺の近傍で、対辺に平行な直線を対称軸として略線対称の位置に設けられる一対の位置を指示する目印が、対辺に沿って、所定の間隔で複数形成されている長方形のカバーグラスとの組合せが優れていることを示す模式図である。(a)光学顕微鏡のXYステージのX軸方向の対辺の近傍にY軸方向に等間隔で対を成して並んでいる位置を示す目印が、検体を遺漏なく観察できる標識として形成されているカバーグラスを用いて作製したプレパラートの異常細胞を含む実視野を描いている模式図。(b)実視野(a)を対物レンズで拡大した倒立実像で、視野数を直径とする円形観察視野を描いている模式図。(c)倒立実像(b)を接眼レンズで拡大した正立虚像として観察される円形観察視野を描いている模式図。(d)円形観察視野(c)の中の、異常細胞と、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない標識を構成する光透過性がない直線とが重なっている領域。(e)破線で囲まれている領域(d)の拡大図。
図7】本発明の一実施形態に係る、LBC法によって作製されたプレパラートが、図6に示す長方形のカバーグラスの替りに円形状のカバーグラスが使用された場合において、位置を示す目印が形成されている円形状のカバーグラスの平面模式図である。
図8】本発明の一実施形態に係る、視野制限機能と視線誘導機能を備える等倍フラットレンズと、等倍フラットレンズの機能を補完するための、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の領域を漏洩することなく移動する機能を有する自動位置決めXYステージを備えている光学顕微鏡とを組み合わせた、視野制限機能、視線誘導機能、及び、観察領域漏洩防止機能を備える光学顕微鏡システムの概要模式図である。
図9】本発明の一実施形態に係る、視野制限機能と視線誘導機能を備える等倍フラットレンズと、等倍フラットレンズの機能を補完するための、観察者が、ハンドル操作で観察すべき試料及び/又は検体の領域を漏洩することなく観察可能な機能を有するXYステージを備えている光学顕微鏡とを組み合わせた視野制限機能、視線誘導機能、及び、観察領域漏洩防止機能を備える光学顕微鏡システムの、XYステージの機構を示す外観模式図である。(a)ボールネジスライド機構部と可動ハンドルに装着した位置設定ボタンが連携して観察視野から眼を離すことなく、精度の高い位置設定が可能なボールネジ式スライダ。(b)ラック/ピニオン式スライダ機構部と可動ハンドルに装着した位置設定ボタンが連携して観察視野から眼を離すことなく、精度の高い位置設定が可能なラック/ピニオン式スライダ。
図10図9には、本発明の一実施形態に係る、視野制限機能と視線誘導機能を備える等倍フラットレンズと、等倍フラットレンズの機能を補完するための、観察者が、ハンドルに伝達される負荷で観察すべき試料及び/又は検体の領域を漏洩することなく観察可能な機能を有するXYステージを備えている光学顕微鏡とを組み合わせた視野制限機能、視線誘導機能、及び、観察領域漏洩防止機能を備える光学顕微鏡システムの、XYステージの動作を規定する機構を示す外観模式図を示した。(a)ボールネジシャフトのネジ溝に装着された位置設定リング状バネプランジャーで発生する負荷がボールネジシャフトを介して可動ハンドルに装着した位置設定ボタンで感知され、XYステージの位置設定が行われる機構を示すボールネジスライド機構部の要部断面模式図。(b)ラックの谷に装着された位置設定バー状バネプランジャーで発生する負荷がピニオンを介して可動ハンドルに装着した位置設定ボタンで感知され、XYステージの位置設定が行われる機構を示すラック/ピニオン式スライド機構部の要部断面模式図。
図11】本発明の一実施形態に係る、対物ミクロメーターと組み合わせて使用される、スケールの水平目盛を、光透過性がある太さ約1μmの直線に置換した接眼ミクロメーターで、スケールが観察の弊害となることなく、観察し易い接眼ミクロメーターに改良されていることを説明する模式図である。(a)接眼ミクロメーターが装着される接眼レンズの断面模式図。(b)スケールの水平目盛を、光透過性がある直線で形成している接眼ミクロメーターの斜視模式図。(c)スケールの水平目盛の平面拡大模式図。
図12】本発明の一実施形態に係る、接眼ミクロメーターと組み合わせて使用される、スケールの水平目盛を、光透過性がない太さ約1μmの直線に置換した透過型対物ミクロメーターで、スケールが観察の弊害となることなく、観察し易い対物ミクロメーターに改良されていることを説明する模式図である。(a)スケールの水平目盛を、光透過性がない直線で形成している対物ミクロメーターの平面模式図。(b)スケールの水平目盛の平面拡大模式図。
図13】本発明の一実施形態に係る、視野制限機能、視線誘導機能、及び、観察領域漏洩防止機能を発揮する標識として、光学顕微鏡のXYステージのX軸に平行な位置関係で、Y軸方向に一列に並んでいる光透過性がある直線の集合体が、スライドグラスに形成されていると共に、個々に識別可能な個人名と個々に特定可能な情報が記録されている二次元コードを形成したスライドグラスの平面模式図(a)と、その中の個人名の拡大模式図(b)と、二次元コードの拡大平面模式図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
以下、本発明の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具について、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載した技術思想によってのみ限定されるものである。
【0099】
図1は、本発明の一実施形態に係る、光学顕微鏡観察による検体である人体の組織及び/又は細胞の検査及び診断において、検体を構成する観察要素である細胞の観察に弊害となる遮蔽作用を及ぼさない、光透過性がない複数の直線の集合体が、円形観察視野の中心部に視野を制限し、制限された視野に視線を誘導すると共に、検体を遺漏なく観察できる標識として形成されているカバーグラス100-1及びスライドグラス200-1の平面模式図である。
【0100】
図1(a)に示すカバーグラス100-1には、光学顕微鏡のXYステージのX軸と平行な位置関係にある光透過性がない直線がY軸方向に一列に並んでいる直線110-1の集合体である標識が設けられており、フォトファブリケーションの技術の範疇であるリフトオフ法によって形成されたクロムの物理蒸着膜である。この複数の直線110-1は、一例として、図2に示す、接眼レンズの視野数及び倍率が、それぞれ、20及び10倍で、対物レンズの倍率が10倍である場合に適した設計の、直線110-1の集合体をなし、視野を制限し、視線を誘導すると共に、観察すべき検体の領域を漏洩することがないように視野及び視線を誘導する標識として無地のカバーグラスに形成され、視野制限機能、視線誘導機能、観察領域漏洩防止機能を有するカバーグラス100-1を構成している。この直線110-1の太さβは1.0μmであり、その間隔θは1.8/√2mmである。このような太さ、間隔は一例であり、検体の種類や観察の目的等に応じ、特許請求の範囲内において種々変更することが好ましい。
【0101】
図1(a)の例では、カバーグラス100-1の場合、直線110-1が、光学顕微鏡のXYステージのX軸(横軸)に平行で、Y軸(縦軸)方向に一列に並べられているが、図1(b)のスライドグラス200-1のように、直線110-1が、光学顕微鏡のXYステージのY軸に平行で、X軸方向に一列に並べられていてもよい。図1(b)のスライドグラス200-1の場合も同様である。また、直線が、交差しない曲線であり、曲線の最大の間隔が1.8/√2mmであってもよい。
【0102】
図2は、光学顕微鏡観察による検体である人体の組織及び/又は細胞の検査及び診断において、検体を構成する観察要素である細胞の観察に弊害となる遮蔽作用を及ぼさず、円形観察視野の中心部に視野を制限し、制限された視野に視線を誘導すると共に、検体を遺漏なく観察できる標識として、光透過性がない平行な位置関係にある複数の直線の集合体が形成されているカバーグラス100-1の優れていることを示す模式図である。そして、図2(a)は、異常細胞610を含む染色された細胞で組織化されている検体600が、光学顕微鏡のXYステージのX軸と平行な位置関係にある光透過性がない複数の直線110-1の集合体が標識として形成されているカバーグラス100-1とスライドグラス10とに挟持されたプレパラートの平面模式図であり、実視野を直径とする円形観察視野500を含んでいる。図2(b)は、実視野を直径とする円形観察視野500を10倍の対物レンズで拡大した、視野数を直径とする倒立実像の円形観察視野501を描いている模式図である。図2(c)は、図2(b)の倒立実像を10倍の接眼レンズで拡大した正立虚像として観察される円形観察視野502を描いている模式図である。図2(d)は、正立虚像の円形観察視野502の中の、異常細胞613と、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない標識を構成する光透過性がない直線110-1とが重なっている領域で、破線で囲われている。図2(e)は、破線で囲まれている領域の拡大図である。
【0103】
図2は、視野数20及び倍率10倍の接眼レンズと倍率10倍の対物レンズを用いる場合に適した複数の直線110-1の集合体で標識を形成しているカバーグラス100-1であって、プレパラート上の実視野を直径(2mm)とする円形観察視野500の周辺部に、異常細胞610が存在している検体を観察し、検査及び/又は診断する一例であるが、この検体600では、直径が約12μmの異常細胞が、染色されて収縮し、直径が約10μmの異常細胞610として示されており、この実施形態においては、この検体600を組織化している細胞の中で最小である。
【0104】
このような図を用いて、本発明の重要な特長の一つである視野の制限及び視線の誘導について説明する。直線110-1の太さβは、約1.0μmであり、その間隔θは、実視野の円に内接する正方形510の一片の長さτの約90%にあたる1.8/
mmである。観察は、隣接する直線110-1が挟む平面と実視野を直径とする円形観察視野500の円孤に囲まれた領域を、直線110-1に誘導されるプレパラートの移動により行われる。例えば、図2(a)のX軸方向の左から右へ走査させると、直線110-1は、両端を有する線分であるので、隣接する直線110-1の間の一つの領域の観察が完了したことを認識でき、次いで、直線110-1がY軸方向に一列に並んでいるので、隣接する直線110-1のY軸方向下方(下側)の直線110-1がY軸方向上方(上側)となるようにY軸方向に移動させ、新たな隣接する直線110-1の間の領域をX軸方向の右から左へ移動させて観察し、これを繰り返すことにより、全ての観察すべき観察領域を漏洩することなく観察できる。また、観察の開始及び完了は、直線110-1がY軸方向の上下に視認されないことで、接眼レンズから目を離すことなく容易に判断できる。
【0105】
このように、複数の直線110-1の集合体で標識が形成されるカバーグラス100-1をプレパラートに用いれば、視野を円形観察視野の中央部に制限し、視線を誘導すると共に、検体の全領域に亘って見落とすことがないように、視野及び視線を誘導することができる。すなわち、カバーグラスに形成される、X軸に平行で、Y軸方向に一列に並ぶ複数の直線の集合体の標識は、光学顕微鏡観察において、円形観察視野の中心部に集中しやすい人間の目の特性に即した視野制限機能、その視野への視線誘導機能、及び、観察すべき領域を漏洩しない観察領域漏洩防止機能を有している。
【0106】
そして、本発明の本質的な特徴は、検体を組織化する構成要素である細胞が、直線110-1の集合体で形成されている標識によって観察の弊害になることなく、この実施形態では、一つの異常細胞610を見落とすことなく観察してその細胞の検査及び/又は診断をできることにある。この様子を、図2(c)の正立虚像の円形観察視野502を描いている模式図において、異常細胞612(610の拡大図)が、視野を制限し視線を誘導する機能を有する直線112-1(110-1の拡大図)と重なっている破線で囲まれた領域(d)の拡大図(e)で説明する。実視野上で約1.0μmの太さの直線110-1は、太さが約100μmに拡大された直線113として視認され、検体の中の最小の細胞で、染色されて収縮した直径が約10μmの異常細胞610は、直径が約1000μmの異常細胞613として視認されるので、観察の弊害となるような、異常細胞610の標識を構成する直線110-1よる遮蔽がなく、細胞の良否を問題なく判断することができる。この場合の、直線110-1が異常細胞610を遮蔽する視界遮蔽率は約12.7%である。
【0107】
図3は、本発明の一実施形態に係る、光学顕微鏡観察による検体である人体の組織及び/又は細胞の検査及び診断において、検体を構成する観察要素である細胞の観察に弊害となる遮蔽作用を及ぼさない、光透過性がある複数の直線の集合体が、円形観察視野の中心部に視野を制限し、制限された視野に視線を誘導すると共に、検体を遺漏なく観察できる標識として形成されているカバーグラス100-2及びスライドグラス200-2の平面模式図である。
【0108】
図3(a)に示すカバーグラス100-1には、光学顕微鏡のXYステージのX軸と平行な位置関係にある光透過性がある直線がY軸方向に一列に並んでいる直線110-2の集合体である標識が設けられており、フォトファブリケーションの技術の範疇であるフォトエッチング法によって形成された透明導電膜であるITOの物理蒸着膜である。このITO薄膜の波長550nmにおける光透過率は約64%であり、検体を視認することができると共に、光透過性がある直線110-2として視認することもできた。この複数の直線110-2は、一例として、図4に示す、接眼レンズの視野数及び倍率が、それぞれ、20及び10倍で、対物レンズの倍率が10倍である場合に適した設計の、直線110-2の集合体をなし、視野を制限し、視線を誘導すると共に、観察すべき検体の領域を漏洩することがないように視野及び視線を誘導する標識として無地のカバーグラスに形成され、視野制限機能、視線誘導機能、観察領域漏洩防止機能を有するカバーグラス100-2を構成している。この直線110-2の太さγは約10μmであり、その間隔κは1.8/√2mmである。このような太さ、間隔は一例であり、検体の種類や観察の目的等に応じ、特許請求の範囲内において種々変更することが好ましい。
【0109】
図3(b)の例では、光透過性がある直線210-2が、光学顕微鏡のXYステージのX軸に平行で、Y軸方向に一列に並べられると共に、光透過性がある直線220-2が、光学顕微鏡のXYステージのY軸に平行で、X軸方向に一列に並べられており、光透過性がある直線が碁盤目状に形成されている。直線210-2及び直線220-2の太さγ及び間隔κは、図3(a)と同様であるが、この場合も、検体の種類や観察の目的等に応じ、特許請求の範囲内において種々変更することが好ましい。
【0110】
図4は、光学顕微鏡観察による検体である人体の組織及び/又は細胞の検査及び診断において、検体を構成する観察要素である細胞の観察に弊害となる遮蔽作用を及ぼさず、円形観察視野の中心部に視野を制限し、制限された視野に視線を誘導すると共に、検体を遺漏なく観察できる標識として、光透過性がある平行な位置関係にある複数の直線の集合体が形成されているカバーグラス100-2の優れていることを示す模式図である。そして、図4(a)は、異常細胞610を含む染色された細胞で組織化されている検体600が、光学顕微鏡のXYステージのX軸と平行な位置関係にある光透過性がある複数の直線110-2の集合体が標識として形成されているカバーグラス100-2とスライドグラス10とに挟持されたプレパラートの平面模式図であり、実視野を直径とする円形観察視野500を含んでいる。図4(b)は、実視野を直径とする円形観察視野500を10倍の対物レンズで拡大した、視野数を直径とする倒立実像の円形観察視野501を描いている模式図である。図4(c)は、図4(b)の倒立実像を10倍の接眼レンズで拡大した正立虚像として観察される円形観察視野502を描いている模式図である。図2(d)は、正立虚像の円形観察視野502の中の、異常細胞612と、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない標識を構成する光透過性がある直線110-2とが重なっている領域で、破線で囲われている。図2(e)は、破線で囲まれている領域の拡大図である。
【0111】
図4は、視野数20及び倍率10倍の接眼レンズと倍率10倍の対物レンズを用いる場合に適した複数の光透過性がある直線110-2の集合体で標識を形成しているカバーグラス100-2で、プレパラート上の実視野を直径(2mm)とする円形観察視野500の周辺部に最小の異常細胞610が存在している検体を観察する一例である。ここで、異常細胞610は、染色されて収縮した細胞の長軸方向の長さが10μmで、検体の中の最小の細胞である。
【0112】
また、光透過性がある直線110-2の太さγは、10μmであり、その間隔κは、実視野の円に内接する正方形511の一片の長さτの90%にあたる1.8/√2mmである。ここで、間隔λは、光透過性がある直線110-2の長手方向の中心線の間隔である。光透過性がある直線の太さや間隔も、検体の種類や観察の目的等に応じ、特許請求の範囲内において種々変更することが好ましい。
【0113】
図4に示す、標識として、光透過性がある平行な位置関係にある複数の直線の集合体が形成されているカバーグラス100-2の機能及び効果は、図2に示す、標識として、光透過性がない平行な位置関係にある複数の直線の集合体が形成されているカバーグラス100-1のそれらとの差異はなく、光透過性の有無によって決定的な相違点が生起する。これは、光透過性がある直線は、光透過性がない直線と異なり、観察すべき検体と重複しても視認されない領域が全くない、すなわち、視界遮蔽率が0%であるということに基づく直線の太さ、間隔、及び、性状等の相違点として生起する。従って、図2と共通する図4の説明は省略する。
【0114】
上記の通り、光透過性がある直線110-2によって形成された標識を備えたカバーグラス100-2の最大の特徴は、検体を組織化している構成要素である細胞が、光透過性がある直線110-2によって遮蔽されることなく観察できることにある。この様子を、図4(c)の正立虚像の円形観察視野502を描いている模式図において、異常細胞612(610の拡大図)が、視野を制限し視線を誘導する機能を有する直線112-2(110-2の拡大図)と重なっている破線で囲まれた領域(d)の拡大図(e)で説明する。
実視野上で約10μmの太さの光透過性がある直線110-2は、太さが約1000μmに拡大された直線113-2として視認され、検体の中の最小の細胞で、染色されて収縮した直径が約10μmの異常細胞610は、直径が約1000μmの異常細胞613として視認される。異常細胞613は、光透過性がある直線113-2で略覆われているが、高い光透過率であるが故に視界遮蔽率が0%で、細胞の良否を問題なく判断することができる。このことが、光透過性がない直線の場合との相違点であり、光透過性がない直線の場合には、細胞の良否を判断するために、太さが制約を受けなければならないのである。
【0115】
そこで、本発明者が、接眼及び対物ミクロメーターの試料及び/又は検体の幾何学的特徴を計測するための2~10μmの太さの目盛が、試料及び検体を遮蔽することなく計測できることに着目し、種々検討した結果、この光透過性がない直線を用いて形成される標識の課題を改善する方法を見出した。これが、本発明の、接眼レンズの計測手段である目盛を、光透過性がない直線で形成される標識に置換したもので、本発明者が等倍フラットレンズと命名した本発明の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック製品である。この等倍フラットレンズは、単体で使用しても、視野制限機能及び視線誘導機能を発揮するが、観察領域漏洩防止機能を備えていないため、実施形態としては、観察領域漏洩防止機能を補完する観察領域漏洩防止機能を補完することができる標識を形成したカバーグラス又はスライドグラスと組み合わせた本発明の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチックを代表例として説明する。
【0116】
図5には、本発明の一実施形態に係る、光学顕微鏡観察による検体である人体の組織及び/又は細胞の検査及び診断において、検体を構成する観察要素である細胞の観察に弊害となる遮蔽作用を及ぼさない、光透過性がない直線311の二本の集合体が、円形観察視野の中心部に視野を制限し、制限された視野に視線を誘導する標識として形成されている等倍フラットレンズ300と、この等倍フラットレンズ300の機能を補完するための、検体を遺漏なく観察できる標識として、短辺の対辺の近傍で、対辺に平行な直線を対称軸として略線対称の位置に設けられる一対の位置を指示する目印410-1、420-1が、対辺に沿って、所定の間隔で複数設けられている長方形のカバーグラス400-1の模式図を示した。そして、図5(a)は、光学顕微鏡のXYステージのX軸と平行な位置関係にある光透過性がない直線310の二本の集合体が標識として形成されている等倍フラットレンズ300の斜視図で、それを拡大した等倍フラットレンズ301を図5(b)に示し、等倍フラットレンズ300が装着されている、接眼レンズ720の筐体の断面模式図を図5(c)に示した。また、図5(d)は、等倍フラットレンズ300の機能を補完するための検体を遺漏なく観察できる目印410-1、420-1が形成されているカバーグラス400-1の平面模式図である。
【0117】
一例として、図6に示す、接眼レンズの視野数及び倍率が、それぞれ、20及び10倍で、対物レンズの倍率が10倍である場合に適した設計の等倍フラットレンズ300及び長方形のカバーグラス400-1を示した。等倍フラットレンズ300は、二つの同心円で描かれ、外側の直径が約24mmで、円形観察視野として視認される内側の直径が20mmである。光透過性がない直線310の直線の太さδは約1.0μmで、直線の間隔λは約18/√2mmで標識が形成されている。一方、長方形のカバーグラス400-1の対辺で、Y軸方向に線対称の位置に設けられている一対の位置を指示する目印410-1、420-1は、少なくとも、隣接する目印の形態が異なる形状で形成される。この目印410-1、420-1の、位置を指示して対辺に接触する先端は約2.0μm以下の太さである。一対の目印410、420のY軸方向の間隔νは、実視野上において約1.6/
mmであり、対物レンズで拡大され、等倍フラットレンズ上に約16/√2mmの間隔で結像されるので、等倍フラットレンズ300に形成される標識の直線の間隔λよりも狭く設定することが、観察領域漏洩防止機能を発揮するために重要である。また、隣接する目印410-1、420-1が異なる形態であることが好ましいのは、例えば、左端の目印と、X軸方向にプレパラートを移動させたときの右端の目印の一致により、プレパラートのX軸方向への移動が正しく行われたものであることを確認することができるためである。なお、光透過性がない直線310及び対辺で、Y軸方向に線対称の位置に設けられている一対の位置を指示する目印410-1、420-1は、物理蒸着によって製膜されたクロムが、フォトファブリケーションの加工技術を用いて作製されたものである。
【0118】
本発明の等倍フラットレンズとその漏洩防止機能を補完するカバーグラスを組み合わせた光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用品の概要を説明したが、この用品の作用効果の発現機構を図6で説明する。
【0119】
図6は、光学顕微鏡観察による検体である人体の組織及び/又は細胞の検査及び診断において、検体を構成する観察要素である細胞の観察に弊害となる遮蔽作用を及ぼさず、円形観察視野の中心部に視野を制限し、制限された視野に視線を誘導する標識として、平行な位置関係にある光透過性がない直線311の二本の集合体が所定の間隔λで形成されている等倍フラットレンズ300と、検体を遺漏なく観察できる標識として、短辺の対辺の近傍で、対辺に平行な直線を対称軸として略線対称の位置に設けられる一対の位置を指示する目印410-1、420-1が、対辺に沿って、所定の間隔νで複数設けられている長方形のカバーグラス400-1との組合せが優れていることを示す模式図である。図6(a)は、異常細胞610を含む染色された細胞で組織化されている検体600が、光学顕微鏡のXYステージのX軸方向の対辺の近傍にY軸方向に等間隔で対を成して並んでいる位置を示す目印410-1、420-1を、検体を遺漏なく観察できる標識として形成している長方形のカバーグラス400-1と、一般的な無地のスライドグラス10とに挟持されたプレパラートの平面模式図で、作製したプレパラートの検体600内の異常細胞610を含む実視野を直径とする円形観察視野500含んでいる模式図である。図6(b)は、視野数を直径とする倒立立像の円形観察視野501を描いている模式図である。図6(c)は、図6(b)の倒立実像を接眼レンズで拡大した正立虚像として観察される円形観察視野502を描いている模式図である。図6(d)は、正立虚像の円形観察視野502の中の、異常細胞612と、等倍フラットレンズに形成されている標識を構成する観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない直線312とが重なっている領域で、破線で囲われている。図6(e)は、破線で囲まれている領域の拡大図である。図6においても、図2及び図6同様、検体600内の異常細胞610は、直径が約12μmの異常細胞が、染色されて収縮し、直径が約10μmと収縮したものであり、この検体600を組織化している細胞の中で最小である。
【0120】
図6から明らかなように、約1μmの太さの視野制限機能及び視線誘導機能を有する光透過性がない直線310を用いて標識が形成された等倍フラットレンズ300の大きな特徴は、一つでも見落とすことができない異常細胞610を光透過性がない直線310が遮蔽する視界遮蔽率が約1.27%であり、極めて視界遮蔽率を小さくできることにある。
これは、約1μmの太さの視野制限機能及び視線誘導機能を有する光透過性がない直線310が、接眼レンズ720によって拡大されるだけであることに起因している。
【0121】
一方、対辺の近傍で、対辺に平行な直線を対称軸として略線対称の位置に設けられる一対の位置を指示する目印410、420が、対辺に沿って、所定の間隔νで複数設けられている長方形のカバーグラス400-1が、等倍フラットレンズ300にはない観察領域漏洩防止機能を補完することができるのは、等倍フラットレンズ300に形成されている標識の間隔と長方形のカバーグラス400-1に形成されている一対の目印の間隔とが、次のような位置関係にあるためである。つまり、一対の目印410-1、420-1のY軸方向の間隔νは、実視野上において約1.6/√2mmであり、対物レンズで拡大され、等倍フラットレンズ300上に約16/√2mmの間隔で結像されるのに対し、等倍フラットレンズ300に形成されている標識の直線の間隔λが約18/√2mmで、間隔νよりも広いことである。この位置関係にあることによって、一対の目印410-1、420-1の両端を直線で結ぶ仮想線を、図2のカバーグラスに形成される標識を構成する複数の直線110-1として、段落0100に記載したように操作すると、等倍フラットレンズ300に形成されている視野制限機能及び視線誘導機能を発揮する直線とカバーグラスに形成されている観察視野漏洩防止機能を発揮する一対の目印の両端を直線で結ぶ仮想線との間の平面が重複して観察されることになり、観察領域を漏洩することはない。
【0122】
図7は、近年採用される頻度が高まっているLBC法によって作製されたプレパラートが、図6に示す長方形のカバーグラスの替りに円形状のカバーグラスが使用された場合において、位置を示す目印が形成されている円形状のカバーグラス400-2の平面模式図である。目印410-2、420-2の様相が変化しているように視えるが、機能上及び構成上、基本的には、長方形のカバーグラス400-1の目印410-1、420-1と異なることはない。この図7には、一実施形態として、位置を示す目印が形成されている円形状のカバーグラス400-2を示したが、目印のないカバーグラスを用い、図7に示すカバーグラス外周に形成されている位置を示す目印を、その近傍のスライドグラスに形成することもできる。
【0123】
このような等倍フラットレンズ300の観察領域漏洩防止機能の補完方法以外にも、次のような自動式補完方法及び手動式補完方法がある。
【0124】
第一に、光学顕微鏡に自動位置決めXYステージ30を装備して、観察領域を正確に設定する自動式補完方法である。図8は、本発明の一実施形態に係る、視野制限機能と視線誘導機能を備える等倍フラットレンズと、等倍フラットレンズの機能を補完するための、観察者が観察すべき試料及び/又は検体の領域を漏洩することなく移動する機能を有する自動位置決めXYステージ30を備えている光学顕微鏡とを組み合わせた、視野制限機能、視線誘導機能、及び、観察領域漏洩防止機能を備える光学顕微鏡システムの概要模式図である。
【0125】
第二に、本発明者が開発した位置設定機能を有するボールネジ式スライダ又は位置設定機能を有するラック/ピニオン式スライダの手動式補完方法である。これらの機構について、図9及び10を用いて説明する。
【0126】
一般的な光学顕微鏡の手動式XYステージは、X軸方向可動ハンドルとY軸方向可動ハンドルとが備えられ、これらの可動ハンドルの指先による回転運動が、ボールネジやラック/ピニオンによって直線運動に変換されて、ステージ上のプレパラートを二次元的に隈なく観察することができるようになっている。しかし、観察視野を規定するのは、接眼レンズを介した円形観察視野から認識することができるプレパラートの結像の情報であって、観察領域が規定されるものではないので、プレパラートの観察すべき領域を見落とす場合が多い。
【0127】
ノギスよりも精度よく計測可能なマイクロメータの原理であるボールネジの回転数と直線距離及びピニオンの回転数と直線距離の相関関係を利用することによって、観察視野から眼を離すことなく、精度の高い位置設定が可能な方法を見出した。すなわち、可動ハンドルにハンドルの回転数を感知できる手段を設け、その回転数が観察者の指先に伝達されることによって観察領域を規定する方法、逆に、一定の直線距離毎に負荷が発生するバネプランジャーをネジシャフト又はラックに装着し、その負荷が可動ハンドルに伝達されることによって観察領域を規定する方法である。
【0128】
図9には、本発明の一実施形態に係る、視野制限機能と視線誘導機能を備える等倍フラットレンズ300と、等倍フラットレンズ300の機能を補完するための、観察者が、ハンドル操作で観察すべき試料及び/又は検体の領域を漏洩することなく観察可能な機能を有するXYステージを備えている光学顕微鏡とを組み合わせた視野制限機能、視線誘導機能、及び、観察領域漏洩防止機能を備える光学顕微鏡システムの、XYステージの動作を規定する機構を示す外観模式図を示した。図9(a)がボールネジスライド機構部41と可動ハンドル44に装着した位置設定ボタン46が連携して観察視野から眼を離すことなく、精度の高い位置設定が可能なボールネジ式スライダ40であり、図9(b)がラック/ピニオン式スライダ機構部51と可動ハンドル54に装着した位置設定ボタン56が連携して観察視野から眼を離すことなく、精度の高い位置設定が可能なラック/ピニオン式スライダ50である。
【0129】
このような、図9(a)に示すボールネジ式スライダ40は、可動ハンドル44に装着した位置設定ボタン46によって、観察者が回転数を感知することができるので、ハンドルの回転数を規定すれば、ボールネジスライド機構部41を介してステージの移動距離が規定され、観察視野から眼を離すことなく、精度の高い位置設定が可能となる。図9(b)に示すラック/ピニオン式スライダ50は、可動ハンドル44に装着した位置設定ボタン56によって、観察者が回転数を感知することができるので、ハンドルの回転数を規定すれば、ラック/ピニオン式スライダ機構部51を介してステージの移動距離が規定され、観察視野から眼を離すことなく、精度の高い位置設定が可能となる。
【0130】
図10は、本発明の一実施形態に係る、視野制限機能と視線誘導機能を備える等倍フラットレンズ300と、等倍フラットレンズ300の機能を補完するための、観察者が、ハンドルに伝達される負荷で観察すべき試料及び/又は検体の領域を漏洩することなく観察可能な機能を有するXYステージを備えている光学顕微鏡とを組み合わせた視野制限機能、視線誘導機能、及び、観察領域漏洩防止機能を備える光学顕微鏡システムの、XYステージの動作を規定する機構を示す外観模式図を示した。図10(a)は、ボールネジシャフト42のネジ溝42-1に装着された位置設定リング状バネプランジャー47で発生する負荷がボールネジシャフトを介して可動ハンドルで感知され、XYステージの位置設定が行われる機構を示すボールネジスライド機構部の要部断面模式図である。図10(b)は、ラックの谷に装着された位置設定バー状バネプランジャーで発生する負荷がピニオンを介して可動ハンドルに装着した位置設定ボタンで感知され、XYステージの位置設定が行われる機構を示すラック/ピニオン式スライド機構部の要部断面模式図である。
【0131】
このような、図10(a)に示すボールネジ式スライダは、ボールネジシャフト42のネジ溝42-1に装着された位置設定リング状バネプランジャー47で発生する負荷がボールネジシャフトを介して可動ハンドルで感知され、XYステージの位置設定が行われるので、観察視野から眼を離すことなく、精度の高い位置設定が可能となる。図10(b)は、ラック観察視野から眼を離すことなく、精度の高い位置設定が可能となる。
【0132】
図11及び12は、本発明の技術思想である「試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」を接眼ミクロメーター及び対物ミクロメーターに応用した実施形態を示している。
【0133】
図11は、本発明の一実施形態に係る、対物ミクロメーターと組み合わせて使用される、スケールの水平目盛を、光透過性がある太さ約1μmの直線710に置換した接眼ミクロメーター700で、スケールが観察の弊害となることなく、観察し易い接眼ミクロメーター700に改良されていることを説明する模式図である。図11(a)が、接眼ミクロメーター700が装着される接眼レンズ720の筐体の断面模式図であり、図11(b)が、スケールの水平目盛を、光透過性がある直線710で形成している接眼ミクロメーター700の斜視模式図で、図11(c)は、置換したスケールの水平目盛710の平面拡大模式図である。
【0134】
本発明の接眼ミクロメーター700は、従来の接眼ミクロメーターのクロム物理蒸着膜で形成されている目盛を、フォトファブリケーションのフォトエッチング法によって形成されるITO物理蒸着膜に置き換えたものである。このITO物理蒸着膜は、波長550nmにおける光透過率が約68%であり、目盛の太さは、約2.0μmであった。このように、光透過性を有する目盛に置き換えるだけで、試料及び/又は検体並びに対物ミクロメーターの目盛を遮蔽することがなく、視認性が高く、計測が容易になった。
【0135】
図12は、本発明の一実施形態に係る、接眼ミクロメーターと組み合わせて使用される、スケールの水平目盛を、光透過性がない太さ約1μmの直線810に置換した透過型対物ミクロメーター800で、スケールが観察の弊害となることなく、観察し易い対物ミクロメーター800に改良されていることを説明する模式図である。図12(a)が、スケールの水平目盛を、光透過性がない直線810で形成している対物ミクロメーターの平面模式図であり、図12(b)が、置換したスケールの水平目盛810の平面拡大模式図である。
【0136】
本発明の対物ミクロメーター800も、従来の対物ミクロメーターのクロム物理蒸着膜で形成されている太さ約10μmの目盛を、フォトファブリケーションのフォトエッチング法によって形成される太さ約1.0μmのクロム物理蒸着膜に置き換えたものである。目盛を細くすることによって、計測対象物の位置の設定が容易になり、測定精度を高めることができた。
【0137】
最後に、光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック、特に、光学顕微鏡観察による人体の組織及び/又は細胞の検診及び/又は診断に用いられるカバーグラス又はスライドグラス等のように、個人情報を添付する必要性がある場合に、本発明の技術思想である「試料及び/又は検体を構成する観察対象要素に対し、観察の弊害となる遮蔽作用を及ぼさない曲線」を利用して個人情報を形成した光学顕微鏡用ガラス及びプラスチックを説明する。
【0138】
図13は、本発明の一実施形態に係る、視野制限機能、視線誘導機能、及び、観察領域漏洩防止機能を発揮する標識として、光学顕微鏡のXYステージのX軸に平行な位置関係で、Y軸方向に一列に並んでいる光透過性がある直線の集合体が、スライドグラスに形成されていると共に、個々に識別可能な個人名と個々に特定可能な情報が記録されている二次元コードを形成したスライドグラスの平面模式図(a)と、その中の個人名の拡大模式図(b)と、二次元コードの拡大平面模式図(c)である。
【0139】
図1及び3に示す、視野制限機能及び視線誘導機能を有し、正確な検査及び/又は診断が行われても、検体を取り違えては意味がない。従って、このような個々に識別可能なスライドグラス900は、病理検査及び/又は病理診断の検体取り違えを防止するための有効な手段の一つであると考えられる。また、検体の患者情報がスライドグラスに記録された二次元コードから読み取れるのは、病理検査及び/又は病理診断に有用な情報を提供するものである。
【0140】
本発明では、フォトファブリケーションの加工技術を用い、複数の細い直線910を形成すると同時に、氏名920及び二次元コード930を描いた。図13では、フォトエッチング法を用い、クロム物理蒸着膜である、太さ1.0μmの複数の細い直線910を、1.6/√2mmの間隔で、視野制限機能及び視線誘導機能を有する標識として無地のスライドグラス上に形成すると同時に、氏名920及び二次元コード930を形成し、識別可能なスライドグラス900を作製した。透明導電膜を用いても、同様の識別可能なスライドグラスを作製することができる。この結果、個人情報の形成が効率的になると共に、情報量を増加させることができる。また、肉眼では視認できない大きさで形成できるので、情報の漏洩を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の光学顕微鏡用ガラス及びプラスチック用具は、観察者の肉体的及び精神的負担を軽減すると共に、観察速度及び精度を高めることができるため、光学顕微鏡、拡大顕微鏡、及び、マイクロスコープ等を利用している全ての産業分野で利用されるものと考えられる。また、本発明は、人間の目が円形視野の中央部に集中するという特性に着目したことによって創生されたものであり、この特性を活用した技術開発があらゆる産業分野にも波及するという意味でも、産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0142】
10 無地の汎用スライドグラス
20 光学顕微鏡
30 自動位置決めXYステージ
31 XYステージ制御装置
40 位置設定機能を有するボールネジ式スライダ
41 ボールネジスライド機構部
42 ボールネジシャフト
42-1 ネジ溝
42-2 ランド
43 スライダブロック
43-1 ナット
43-11 ナット溝
43-12 リターンチューブ
43-2 ボール
44 可動ハンドル
45 テーブル支持プレート
46 位置設定ボタン
47 位置設定リング状バネプランジャー
50 位置設定機能を有するラック/ピニオン式スライダ
51 ラック/ピニオンスライド機構部
52 ラック
52-1 山
52-2 谷
53 スライダブロック
53-1 ピニオン
53-11 歯
53-12 溝
54 可動ハンドル
55 テーブル支持プレート
56 位置設定ボタン
57 位置設定バー状バネプランジャー
100-1 光透過性がない直線を用いた視野制限及び視線誘導機能を有するカバーグラス
110-1 観察の弊害とならず視野制限及び視線誘導機能を担う長辺に平行な直線
111-1 対物レンズで拡大された倒立実像における観察の弊害とならず視野制限及び視線誘導機能を担う長辺に平行な直線
112-1 接眼レンズで拡大された正立虚像で視認される観察の弊害とならず視野制限機能及び視線誘導機能を担う長辺に平行な直線
113-1 正立虚像で視認される観察の弊害とならず視野制限機能及び視線誘導機能を担う長辺に平行な直線の拡大図
100-2 光透過性がある直線を用いた視野制限及び視線誘導機能を有するカバーグラス
110-2 観察の弊害とならず視野制限及び視線誘導機能を担う長辺に平行な直線
111-2 対物レンズで拡大された倒立実像における観察の弊害とならず視野制限及び視線誘導機能を担う長辺に平行な直線
112-2 接眼レンズで拡大された正立虚像で視認される観察の弊害とならず視野制限及び視線誘導機能を担う長辺に平行な直線
113-2 正立虚像で視認される観察の弊害とならず視野制限及び視線誘導機能を担う長辺に平行な直線の拡大図
200-1 光透過性がない直線を用いた視野制限及び視線誘導機能を有するスライドグラス
210-1 観察の弊害とならず視野制限及び視線誘導機能を担う短辺に平行な直線
200-2 光透過性がある直線を用いた視野制限及び視線誘導機能を有するスライドグラス
210-2 観察の弊害とならず視野制限機能及び視線誘導機能を担う長辺に平行な直線
220-2 観察の弊害とならず視野制限機能及び視線誘導機能を担う短辺に平行な直線
300 光透過性がない直線を用いた視野制限及び視線誘導機能を有する等倍フラットレンズ
301 等倍フラットレンズの拡大図
310 観察の弊害とならず視野制限及び視線誘導機能を担うXYステージのX軸に平行な直線
311 拡大した等倍フラットレンズにおける観察の弊害とならず視野制限及び視線誘導機能を担うXYステージのX軸に平行な直線
312 正立虚像の円形観察視野における観察の弊害とならず視野制限及び視線誘導機能を担うXYステージのX軸に平行な直線
400-1 等倍フラットレンズと併用し観察領域漏洩防止機能を有する長方形のカバーグラス
400-2 等倍フラットレンズと併用し観察領域漏洩防止機能を有し、LBC法で用いられるプレパラートの円形状のカバーグラス
410-1 長方形のカバーグラスの対辺の近傍に設けられている、観察領域漏洩防止機能を担う一対の棒状目印
410-2 円形状のカバーグラスの対辺の近傍に設けられている、観察領域漏洩防止機能を担う一対の棒状目印
420-1 長方形のカバーグラスの対辺の近傍に設けられている、観察領域漏洩防止機能を担う一対の四角状目印
420-2 円形状のカバーグラスの対辺の近傍に設けられている、観察領域漏洩防止機能を担う一対の四角状目印
500 プレパラート上における実視野(Field of View,FOV)を直径とする円形観察視野
501 視野数(Field Number,FN)を直径とする倒立実像の円形観察視野
502 正立虚像の円形観察視野
510 実視野を直径とする円に内接する正方形
511 視野数を直径とする円に内接する正方形
600 染色された細胞で組織化されている検体
610 検体の中の異常細胞
611 対物レンズで拡大された倒立実像における異常細胞
612 接眼レンズで拡大された正立虚像で視認される異常細胞
613 正立虚像で視認される異常細胞の拡大図
700 光透過性を有する直線で水平目盛が形成されている接眼ミクロメーター
710 光透過性を有する直線で形成されているスケール
720 接眼レンズ
730 目当てゴム
740 レンズ筒
750 視度調整ネジ
760 接眼ミクロメーター筒
770 接眼ミクロメーター受け
780 接眼ミクロメーター固定リング
800 細い直線で水平目盛が形成されている透過型対物ミクロメーター
810 細い直線で形成されている水平目盛
900 視野制限機能及び視線誘導機能を有する複数の細い横線が平行に形成されていると共に、透明導電膜で個人認証名及び個人情報記録二次元バーコードが形成されているスライドグラス
910 視野制限機能及び視線誘導機能を有する平行な位置関係にある複数の細い横線
920 透明導電膜で形成されている個別に識別可能な個人名
930 透明導電膜で形成されている個別に特定可能な情報が記録されている二次元バーコード
α 染色細胞の直径
β カバーグラス上の光透過性がない直線の太さ
γ カバーグラス上の光透過性がある直線の太さ
δ 等倍フラットレンズ上の光透過性がない直線の太さ
ρ 実視野の直径
τ 実視野の円周に内接する正方形の一辺の長さ
φ 実視野の円周と実視野に内接する正方形の最大間隔
θ カバーグラス上の光透過性がない直線の間隔
κ カバーグラス上の光透過性がある直線の間隔
λ 等倍フラットレンズ上の光透過性がない直線の間隔
ν 観察領域漏洩防止目印の間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13