(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092494
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】粒子、及び該粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/26 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
C01B33/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208463
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】俵迫 祐二
(72)【発明者】
【氏名】町田 成
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 光章
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA04
4G073BA49
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA75
4G073BA76
4G073BC01
4G073BD21
4G073CE01
4G073CE06
4G073FA10
4G073FB11
4G073FB25
4G073FC12
4G073FD07
4G073FD13
4G073GA01
4G073GA11
4G073GA12
4G073GA33
4G073GB02
4G073UB33
(57)【要約】
【課題】被膜に使用した時に着色がなく、十分な硬度(鉛筆硬度)と強度(耐擦傷性)、高い分散性、及び、高い抗菌性能や抗ウイルス性能を有する粒子、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】この粒子は、銀、銅、金、パラジウム、白金、亜鉛、モリブデン、バナジウム、鉛、錫、及びビスマスから選ばれる少なくとも1種の金属元素が担持されている複合酸化物粒子である。この粒子は、動的光散乱法で測定された平均粒子径(R
1)と、比表面積から等価球換算することで求められた粒子径(R
2)との比(R
1/R
2)が1.4~22である。この粒子を含む塗布液によれば、十分な硬度と強度、透明性とを有し、着色が抑制され、かつ、高い抗菌性能と抗ウイルス性能の少なくとも一方を有する被膜が得られる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀、銅、金、パラジウム、白金、亜鉛、モリブデン、バナジウム、鉛、錫、及びビスマスから選ばれる少なくとも1種の金属元素が担持された複合酸化物粒子であって、
動的光散乱法で測定された平均粒子径(R1)と、比表面積から等価球換算することで求められた粒子径(R2)との比(R1/R2)が1.4~22であることを特徴とする粒子。
【請求項2】
前記金属元素を1.5~5質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記金属元素以外の成分が、珪素及びアルミニウムを含む複合酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
29Si-NMR解析によるケミカルシフトが-73.0~-120.0ppmに現れるQ0~Q4構造を表す各々のピークの面積の合計に対する、ケミカルシフトが-82.0~-100.0ppmに現れるQ3構造を表すピークの面積、及び、ケミカルシフトが-100.0~-120.0ppmに現れるQ4構造を表すピークの面積の合計の割合が94~97%であることを特徴とする請求項1記載の粒子。
【請求項5】
27Al-NMR解析によるケミカルシフトが80.0~30.0ppmに現れる4配位構造を表すピークの面積(I4)と、ケミカルシフトが30.0~-30.0ppmに現れる6配位構造を表すピークの面積(I6)との比(I4/I6)が実質的に100/0であることを特徴とする請求項1記載の粒子。
【請求項6】
粒子表面に凹凸を有することを特徴とする請求項1に記載の粒子。
【請求項7】
前記平均粒子径(R1)が10~200nmであることを特徴とする請求項1に記載の粒子。
【請求項8】
アルカリ金属含有量が、酸化物基準で1.0質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の粒子。
【請求項9】
固形分濃度1.5質量%の水分散液における光透過率が、80.0%以上であることを特徴とする請求項1に記載の粒子。
【請求項10】
珪酸ナトリウム水溶液をイオン交換して得られる珪酸液と、酸性のアルミニウム水溶液とを含む酸性の混合液を作製する第一工程と、
種粒子を含むアルカリ性母液に、前記混合液を添加して、珪素及びアルミニウムを含む複合酸化物を含む粒子を作製する第二工程と、
前記複合酸化物を含む粒子に、銀、銅、金、パラジウム、白金、亜鉛、モリブデン、バナジウム、鉛、錫、及びビスマスから選ばれる少なくとも1種の金属元素を担持する第三工程を有することを特徴とする粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属元素が担持された粒子に関する。また、該粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス、プラスチック等で形成されたシートやレンズ等の基材表面の反射を防止するために、その表面に反射防止膜が形成されている。ところで、透明性や反射防止能が要求される部材には、例えば、スマートフォン、ATM、券売機等のタッチパネルを有する表示装置がある。これらの表面には、大腸菌や黄色ブドウ球菌等の菌類や、種々のウイルスに汚染されていることが問題となっており、衛生的見地から抗菌性や抗ウイルス性が要求される。
【0003】
被膜への抗菌性及び抗ウイルス性付与については、従来から被膜表面に抗菌剤や抗ウイルス剤を塗工することが知られている。例えば、有機系の抗菌剤や抗ウイルス剤であれば、塗工自体は比較的容易であるが、溶剤によって被膜が侵されるおそれや、被膜への定着性や耐擦傷性における抗菌性能の持続性に問題がある。一方、無機系の抗菌剤や抗ウイルス剤であれば、被膜内に存在すれば抗菌剤や抗ウイルス性能の持続性は期待できるものの、これを含む被膜を別に作製する必要がある。例えば、反射防止層と、抗菌層や抗ウイルス層とを別々に作製した場合、最表面でない層の効果が不十分となるおそれや、生産性が低下して生産コストが高騰するおそれがある。これに対して、一つの被膜中に、低屈折率成分、抗菌及び抗ウイルス成分を配合させる場合、反射防止性能や抗菌性能、及び抗ウイルス性能が不十分になったり、被膜の透明性や強度が不十分となったりするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-001557号公報
【特許文献2】国際公開2013/073555号
【特許文献3】特開2021-031450号公報
【特許文献4】特開2007-090336号公報
【特許文献5】特開平7-033616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抗菌性能を有する粒子が配合された被膜付基材において、その粒子サイズがマイクロメートル程度に大きいと、所望する抗菌性能を得るためには粒子の配合量を多くせねばならず、該粒子を含む塗布液の分散安定性が低下するおそれがある。また、被膜付基材の硬度や強度、透明性及び光沢性が損なわれるおそれがある(例えば、特許文献1~3)。一方、抗菌性能を有する粒子のサイズが、例えばナノメートルオーダーの様にマイクロメートルオーダーよりも小さい粒子の方が、分散性が高く、単位量あたりの個数も多くなるので、被膜付基材の粒子の配合量が少量でも十分な抗菌性能が発揮されやすい。ただし、その抗菌性能発現の場が酸化分解反応であると、分散媒や基材等も分解してしまうおそれがある(例えば、特許文献4)。また、抗菌性を示す金属元素であるAgがAg2Oとして粒子中に混在していると、Ag2Oが他の組成物と反応して着色を呈したり、粒子が不均一であるために溶媒分散時に凝集したりするおそれがある(例えば、特許文献5)。更には、安定性の低い粒子が混在していると、分散液の濃縮安定性が低く高濃度にできない問題があり、塗布液への持ち込み分散媒が多くなる問題や、低濃度の塗布液使用による被膜付基材の製造における生産性低下や、膜中の粒子分散性低下等の問題がある。
【0006】
そのため、被膜に使用した時に着色がなく、十分な硬度(鉛筆硬度)と強度(耐擦傷性)、高い分散性、及び、高い抗菌性能や抗ウイルス性能を有する粒子が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するため、以下のような粒子を見出した。
【0008】
この粒子は、銀、銅、金、パラジウム、白金、亜鉛、モリブデン、バナジウム、鉛、錫、及びビスマスから選ばれる少なくとも1種の金属元素が担持されている複合酸化物粒子である。この粒子は、動的光散乱法で測定された平均粒子径(R1)と、比表面積から等価球換算することで求められた粒子径(R2)との比(R1/R2)が1.4~22である。
【0009】
この粒子は、pHが酸性からアルカリ性の領域でも十分な硬度と強度、及び高い分散性を有し、かつ高い抗菌性能と抗ウイルス性能の少なくとも一方を有する。このような粒子を含む塗布液によれば、十分な硬度と強度、透明性とを有し、酸性領域では着色が抑制され、かつ、高い抗菌性能と抗ウイルス性能の少なくとも一方を有する被膜が得られる。
【0010】
この粒子を得るために、以下のような製造方法を見出した。
【0011】
まず、珪酸ナトリウム水溶液をイオン交換して得られる珪酸液と、酸性のアルミニウム水溶液とを含む酸性混合液を作製する(第一工程)。種粒子を含むアルカリ性母液に、第一工程で作製された酸性混合液を添加して、珪素及びアルミニウムを含む複合酸化物を含む粒子を作製する(第二工程)。第二工程で作製された複合酸化物を含む粒子に、銀、銅、金、パラジウム、白金、亜鉛、モリブデン、バナジウム、鉛、錫、及びビスマスから選ばれる少なくとも1種の金属元素を担持する(第三工程)。
【0012】
この製造方法で得られた粒子の性状は、前述の粒子の性状に準じる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粒子によれば、粒子に担持された金属元素の変色による着色が抑制され、十分な硬度と強度、透明性とを有し、かつ、高い抗菌性能と抗ウイルス性能の少なくとも一方を有する被膜を作製可能な塗布液が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】UVライト(左側)、UV照射装置の外観(中央)、及び、筒状治具の端からUVライト側を見た図(右側)である。
【
図2】実施例1及び比較例4の粒子に対して、UV光の照射前後における試料の色調を観察した図である。
【
図3】実施例1で製造された粒子の走査型電子顕微鏡写真図である。
【
図4】実施例2で製造された粒子の走査型電子顕微鏡写真図である。
【
図5】実施例3で製造された粒子の走査型電子顕微鏡写真図である。
【
図6】比較例1で製造された粒子の走査型電子顕微鏡写真図である。
【
図7】比較例3で製造された粒子の走査型電子顕微鏡写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る粒子(以下、この本発明に係る粒子を単に「粒子」ということがある)は、銀、銅、金、パラジウム、白金、亜鉛、モリブデン、バナジウム、鉛、錫、及びビスマスから選ばれる少なくとも1種の金属元素が担持されている。この粒子は、動的光散乱法で測定された平均粒子径(R1)と、比表面積から等価球換算することで求められた粒子径(R2)との比(R1/R2)が1.4~22である。
【0016】
粒子に担持された銀、銅、金、パラジウム、白金、亜鉛、モリブデン、バナジウム、鉛、錫、及びビスマスから選ばれる少なくとも1種は、抗菌性と抗ウイルス性の少なくとも一つ(以下、この本発明に係る「抗菌性と抗ウイルス性の少なくとも一つ」の特性を単に「抗菌・抗ウイルス性」ということがある)を有する。この粒子を使用した被膜付基材は、抗菌・抗ウイルス性が得られる。
【0017】
粒子は、動的光散乱法で測定された平均粒子径(R1)と、比表面積から等価球換算することで求められた粒子径(R2)との比(R1/R2)が1.4~22である。比(R1/R2)が、この範囲にあると、粒子に抗菌・抗ウイルス性を発揮するのに十分な金属元素が担持される場が存在する。より具体的には、粒子が多孔質で、比表面積が高いため、金属元素を多く担持することが可能となる。
【0018】
ここで、粒子の比(R1/R2)が、1.4未満であると、粒子の比表面積が低く、金属元素の担持量が不十分となるおそれがある。逆に、22を超えると、粒子が凝集体となり、ナノサイズの粒子としての高い分散性による抗菌・抗ウイルス性の効果が発揮出来ないおそれがある。この比(R1/R2)は、好ましくは1.4~15、より好ましくは2~10である。
【0019】
粒子のシアーズ法による比表面積としては、250~350m2/gであることが好ましい。比表面積がこの範囲にあると、高表面積で多孔質であり、抗菌・抗ウイルス性を有する金属成分元素を多く担持することができるからである。
【0020】
ここで、粒子の比表面積が250m2/g未満であると、表面積が不足し、金属成分元素の担持量が不足となるおそれがある。逆に、350m2/gを超えると、粒子が小さくなり過ぎて、安定性が低下し凝集し易くなるおそれがある。この比表面積は、より好ましくは280~350m2/g、更に好ましくは300~350m2/gである。
【0021】
抗菌・抗ウイルス性を有する金属元素(この「抗菌・抗ウイルス性を有する金属元素」を「活性金属」ということがある)としては、銀、銅、亜鉛、鉛、錫、及びビスマスから選ばれる元素が挙げられる。これらの金属元素は、粒子中に単独で存在していても、複数種で存在していても良い。中でも好ましい金属元素は、銀、銅、及び亜鉛であり、より好ましいものは銀及び亜鉛である。これら金属元素の形態としては、イオンあるいは錯体であることが好ましい。このような形態であることで、抗菌・抗ウイルス性が効果的に発揮できる。
【0022】
これらの金属元素は、金属基準で1.5~5質量%含まれていることが好ましい。
【0023】
ここで、金属元素の含有量が1.5質量%よりも少ないと、十分な抗菌・抗ウイルス性能が得られないおそれがある。逆に、5質量%を超えても、更に抗菌・抗ウイルス性能が向上することもなく、場合によってはこの金属元素を含む成分が不安定となり、粒子からの遊離や、変色等を生じやすくなる。この金属元素の含有量は、より好ましくは2~4質量%、更に好ましくは2.5~3質量%である。
【0024】
複合酸化物粒子としては、珪素、及びアルミニウムを含む複合酸化物を含むことが好ましい。この珪素、及びアルミニウムを含む複合酸化物としては、例えば、シリカアルミナが挙げられる。この複合酸化物には、チタニウム、ジルコニウム、アンチモン、錫、及びインジウムが含まれていても良い。これらの元素は、単独種で存在していても、複数種で存在していても構わない。
【0025】
粒子の29Si-NMR解析において、ケミカルシフトが-73.0~-120.0ppmに現れるQ0~Q4構造を表す各々のピークの面積の合計に対する、ケミカルシフトが-82.0~-100.0ppmに現れるQ3構造を表すピークの面積、及び、ケミカルシフトが-100.0~-120.0ppmに現れるQ4構造を表すピークの面積の合計の割合((Q3+Q4)/ΣQ)×100)は94~97%であることが好ましい。ここで、ΣQ=Q0+Q1+Q2+Q3+Q4である。Q3以上の構造の割合が多いと、粒子のSi-O骨格は強固なものとなり、耐酸性や耐有機溶媒性が高く、粒子としても十分な硬度と強度とが実現できる。
【0026】
ここで、この割合が94%未満であると、耐酸性が低く、酸性雰囲気下では粒子形状を維持できないおそれがある。逆に、97%を超えると、粒子を構成するアルミニウムが少ないため、粒子中の抗菌・抗ウイルス性を有する金属元素の含有量が不十分となるおそれがある。この割合は、より好ましくは95~97%、更に好ましくは96~97%である。
【0027】
粒子の27Al-NMR解析において、ケミカルシフトが80.0~30.0ppmに現れる4配位構造を表すピークの面積(I4)と、ケミカルシフトが30.0~-30.0ppmに現れる6配位構造を表すピークの面積(I6)との比(I4/I6)が実質的に100/0であることが好ましい。この「実質的に100/0である」とは、測定時の6配位構造を表すピークがノイズ程度に観察されるレベルであり、例えば、面積(I6)が1%にも満たない状態を表す。
【0028】
ここで、珪素がQ3構造以上のSi-Oの骨格をもち、かつ、Alが4配位構造をもつと、担体粒子として三次元的な構造をとることができる。これにより、酸性下でもAlの溶出による粒子の崩壊や、その溶出物による汚染もなく、Alの置換による永久電荷も保持されるため、抗菌・抗ウイルス性を有する金属元素を担持することができる。
【0029】
粒子のアルミナの含有量はAl2O3として、2~5質量%であることが好ましい。アルミナの含有量がこの範囲にあると、抗菌・抗ウイルス性を有する金属元素を担持する上で、十分な酸点が確保できる。このアルミナの含有量は、より好ましくは2~4質量%、更に好ましくは3~4質量%である。
【0030】
粒子の形状については特に制限されない。例えば、球状、楕球体(ラグビーボール)状、繭状、金平糖状、鎖状、サイコロ状等が挙げられる。中でも、球状粒子は、分散性が高く、被膜中で均一に分散できるため好ましい。また、抗菌・抗ウイルス性を有する金属元素をより多く担持させたり、被膜の耐擦傷性を向上させたりするためには、粒子の表面は、滑らかなものよりも多少の凹凸を有することが好ましい。粒子表面に凹凸を有することは、同じ粒子径で表面が滑らかな粒子に比べて、その形状効果によって粒子の高表面積化が図れ、抗菌・抗ウイルス性を有する金属元素の担持量をより多く担持することが可能となる。
【0031】
粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、被膜付基材として使用する場合、動的光散乱法で測定された平均粒子径(R1)は、10~200nmが好ましい。平均粒子径がこの範囲にあると、粒子が安定して存在できる。また、塗布液中や被膜中でも分散性が良く、透明性、硬度及び強度が高い被膜が得られる。
【0032】
ここで、平均粒子径が10nm未満の粒子は、安定性が低く、また体積が小さいため活性金属の担持量が少なくなる。逆に、200nmを超えると、塗布液中での分散性が低いため、所望する抗菌・抗ウイルス性能を得られないおそれがある。また、光散乱が生じやすく、透明な被膜が得られないおそれがある。この平均粒子径は、より好ましくは20~90nm、更に好ましくは30nm~80nmである。
【0033】
粒子のアルカリ金属含有量は、酸化物基準での合計が1.00質量%未満であることが好ましい。
【0034】
ここで、1.00質量%以上であると、粒子同士が凝集し、塗布液中や被膜中での粒子の分散性が低下したり、十分な膜の硬度が得られなかったり、透明性が不十分になったりするおそれがある。アルカリ金属含有量は、より好ましくは0.50質量%未満、更に好ましくは0.10質量%未満、最も好ましいのはアルカリ金属を含有していないことである。ところで、粒子にアルカリ土類金属が含まれる場合は、上述の「アルカリ金属含有量」を「アルカリ金属とアルカリ土類金属の合計の含有量」と読み替えることとする。なお、アルカリ金属とは、Li、Na、K、Rb、Cs、Frを、アルカリ土類金属とは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raを表す。
【0035】
粒子分散液の光透過率は、80.0%以上が好ましい。
【0036】
ここで、光透過率が80.0%未満であると、得られた被膜の透過率が不十分となるおそれがある。この光透過率は、より好ましくは90.0%以上である。
【0037】
粒子は、シランカップリング材等、公知の有機珪素化合物で表面処理されていてもよい。表面処理された粒子は、粒子の分散媒中や被膜形成用塗布液中、あるいは被膜のマトリックス中での分散性が高く、この粒子を使用した被膜付基材には、粒子の凝集が抑制されていて、十分な硬度と強度とを有する。
【0038】
[被膜形成用塗布液]
本発明の粒子は、被膜形成用の塗布液に適用できる。この塗布液は、粒子とマトリックス形成成分とを含む。これ以外に、有機系分散媒や、重合開始剤、レベリング剤、界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0039】
[被膜付基材]
本発明の粒子は、抗菌・抗ウイルス性能が要求される材に使用することができる。本発明の粒子によれば、高い抗菌・抗ウイルス性能を有するだけでなく、組成物の変色が抑制され、十分な硬度と強度とを有している。このため、例えば、被膜を作製可能な塗布液に使用される。また、この塗布液を使用して、抗菌・抗ウイルス性能が要求される被膜付基材を作製することができる。
【0040】
本発明に係る被膜付基材は、上述の粒子と、マトリックスとを含む被膜が、基材上に形成された被膜付基材である。マトリックスとしては、粒子以外で、固形分として含まれるもので、塗布液に由来する樹脂や、重合開始剤やレベリング剤等の添加剤が挙げられる。具体的には、基材に塗布液を公知の方法で塗布した後、乾燥及び紫外線照射を行い、基材上に被膜を形成する。被膜では、塗布液中の粒子とマトリックス形成成分の固形分の割合が、そのまま被膜中の粒子成分とマトリックスの割合となる。
【0041】
この被膜と基材との間に、その用途に応じて、従来公知のハードコート層、アンチグレア層、高屈折率層、導電性層等を配置してもよい。これらの層は、複数の層を組み合わせることも可能である。例えば、ディスプレイ用途の透明被膜付基材として、更に反射率を低減する場合には、ハードコート層と高屈折率層との組合せや、ハードコート層とアンチグレア層との組合せが例示される。
【0042】
被膜の膜厚は、用途に応じて適宜選択できる。例えば、反射防止膜用であれば、80~350nmが好ましい。
【0043】
ここで、膜厚が80nm未満であると、膜の強度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。また、膜が薄すぎて十分な反射防止性能が得られないことがある。逆に、350nmより厚いと、反射防止性能が低下する場合がある。また、収縮が非常に大きい場合には、クラックが発生するおそれもある。この膜厚は、より好ましくは85~220nm、更に好ましくは90~110nmである。
【0044】
反射防止能を有する透明被膜付基材の反射率は、2.0%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下である。
【0045】
また、透明被膜付基材のヘイズは、3.0%以下が好ましく、より好ましくは0.3%以下である。
【0046】
透明被膜付基材の全光線透過率は、85.0%以上が好ましい。
【0047】
ここで、全光線透過率が85.0%未満であると、得られた被膜の表示装置等において画像の鮮明度が不十分となるおそれがある。この全光線透過率は、より好ましくは90.0%以上である。
【0048】
被膜の強度(耐擦傷性)は、#0000のスチールウールを用い、荷重1000g/cm2にて摺動させて評価する。この摺動回数が少なくとも100回の時点で膜表面に筋状の傷が認められないことが好ましい。この耐擦傷性は、より好ましくは500回の時点で傷が認められないこと、更に好ましくは1000回の時点で傷が認められないことである。
【0049】
被膜の鉛筆硬度は、H以上が好ましい。ここで、H未満では、反射防止膜として硬度が不十分である。この鉛筆硬度は、より好ましくは2H以上、更に好ましくは3H以上である。
【0050】
被膜の抗菌性試験は、JIS Z 2801に準じて行う。この抗菌活性値が2.0以上であることが好ましい。2.0以上であれば抗菌性を有すると判断できる。この抗菌活性値は、より好ましくは4.0以上である。
【0051】
被膜の抗ウイルス性試験は、ISO21702に準じて行う。この抗ウイルス活性値が2.0以上であることが好ましい。2.0以上であれば抗ウイルス性を有すると判断できる。この抗菌活性値は、より好ましくは3.0以上である。
【0052】
基材は、公知のものが使用可能である。例えば、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)等の透明な樹脂基材が好ましい。これらの基材は、上述の塗布液によって形成される透明被膜との密着性が優れ、硬度、強度等に優れた被膜付基材を得ることができる。このため、薄い基材に好適に用いられる。基材の厚みに特に制限はないが、10~100μmが好ましく、より好ましくは20~80μmである。
【0053】
[粒子の製造方法]
本発明に係る粒子の製造方法は、珪酸ナトリウム水溶液をイオン交換して得られる珪酸液と、酸性のアルミニウム水溶液とを含む酸性の混合液を作製する第一工程と、種粒子を含むアルカリ性母液に、第一工程で作製された酸性の混合液を添加して、珪素及びアルミニウムを含む複合酸化物を含む粒子を作製する第二工程と、第二工程で作製された複合酸化物を含む粒子に、抗菌・抗ウイルス性を有する金属元素を担持する第三工程とを含む。
【0054】
第一工程において使用される「珪酸ナトリウム水溶液をイオン交換して得られる珪酸液」及び「酸性のアルミニウム水溶液」は、酸性の水溶液である。これらを混合した「酸性の混合液」では、シリカアルミナ粒子のような複合酸化物粒子の析出はなく、均質な溶液として添加することができる。ここで使用する「珪酸液」としては、予めイオン交換によりナトリウム量を低減している。このため、粒子中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量を低減するための洗浄の負荷を低減することができる。また、使用する「酸性のアルミニウム水溶液」としては、例えば、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の水溶液が挙げられる。中でも、低腐食性で、廃水処理の負荷が軽減されるため、硫酸アルミニウム水溶液が好適に使用される。添加する「酸性混合液」については、安定的な粒子成長のために、硫酸イオン(SO4
2-)等を除去されたものを使用することが好ましい。
【0055】
第二工程における「珪素及びアルミニウムを含む複合酸化物を含む粒子」の作製においては、添加の開始から終了まで、反応液のpHをアルカリ性に保持することが好ましい。このため、第一工程で作製された酸性混合液を添加する際には、予め、母液のpHを高く調整しておく方法や、水酸化ナトリウム水溶液やアンモニア水等のアルカリ性溶液を同時に添加する方法を採用することが好ましい。また、予め、母液中に、微細なシリカやシリカアルミナ等の種粒子を用意しておく方法(シード法)を採用することが好ましい。この第二工程で作製される「珪素及びアルミニウムを含む複合酸化物を含む粒子」は、第三工程における「抗菌・抗ウイルス性を有する金属元素」を担持する際の担体粒子となる。この担体粒子は、上述のように、珪素がQ3構造以上のSi-Oの骨格をもち、かつ、Alが4配位構造をもつため、粒子は、三次元的な強固な骨格と、適度な酸点と、粒子表面の凹凸とを有することができる。このため、粒子は、耐酸性が高く十分な不純物イオンの精製が可能となる。このような粒子は、第三工程において、「抗菌・抗ウイルス性を有する金属元素」を安定的に担持することが可能である。例えば、「抗菌・抗ウイルス性を有する金属元素」として、Agイオンを担持する場合、硝酸銀の状態で担持することが可能であり、組成物の変色を抑制することができる。
【0056】
第三工程で使用される抗菌・抗ウイルス性の金属元素を含む成分としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩といった金属塩や金属の錯イオンの溶液、金属アルコキシドの溶液として添加して複合酸化物粒子化することが可能である。中でも、銀の場合は硝酸銀がより好ましく、銅、亜鉛、錫の場合は塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩がより好ましい。
【0057】
添加量としては、最終的に、粒子中に担持される金属元素が、金属として1.0~10質量%となるように添加する。添加時は、複数種の抗菌・抗ウイルス性の金属元素を含む成分を別々に、或いは同時に添加してもよい。また、含有量を高めるために、この金属元素を含む成分を複数回に分けて添加してもよい。
【0058】
第三工程での抗菌・抗ウイルス性の金属元素を含む成分を添加する際の条件としては、最終的に所望する抗菌・抗ウイルス性の金属元素含有量となれば特に制限はないが、この時の粒子の分散液の濃度としては、固形分として1~2質量%が好ましい。また、この金属元素を含む成分の添加時のpHとしては2~5が好ましく、より好ましくは3~4である。
【0059】
ここで、pHが2未満であると粒子中のAlが溶解して粒子が不安定となり凝集するおそれがある。逆に、pHが5を超えると金属元素が酸化物となり、変色する事がある。また、この金属元素を含む成分の添加時の温度としては、溶媒の沸点未満が好ましい。例えば、溶媒が水の場合100℃未満が好ましく、より好ましくは30~95℃である。
【0060】
粒子中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量を低減するために、第二工程の後で、イオン交換樹脂や限外濾過膜を使用して、洗浄することが好ましい。このアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量は、酸化物基準での合計が1.0質量%未満であることが好ましい。
【0061】
最終的に得られた粒子は、水分散液として用いても良く、有機系分散媒に置換して用いても良く、更に乾燥して粉体として用いても良い。
【0062】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0063】
[実施例1]
〈酸性の混合液の作製(第一工程)〉
3号ケイ酸ナトリウム(AGCエスアイテック(株)製)をイオン交換水で5質量%に希釈して、液温10℃に冷却した。これを1700mlの強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学製 SK 1B)を充填したカラムに空間速度9(L/Hr)で通液してSiO2換算濃度4.5質量%の珪酸液9500gを得た。この珪酸液3945gにイオン交換水を2078gと硫酸アルミニウム水溶液(Al2O3換算濃度7.1質量%、SO4濃度20.4質量%)77.3gを添加し混合した。この混合液のpHは2.5、電気伝導度は3.1mS/cm、液温は14℃であった。次いで、この混合液に陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 SA 10A)を200g添加して、SO4を除去した後に、イオン交換樹脂を分離して混合液を得た。この混合液のpHは3.2、電気伝導度は1.1mS/cm、液温は16℃であった。また、SiO2換算濃度は2.9質量%、Al2O3換算濃度は0.09質量%、SO4濃度は500ppmであった。
【0064】
〈複合酸化物粒子の作製(第二工程)〉
マントルヒーターにセットした10Lのステンレス製のセパラブルフラスコに、イオン交換水 406gと3号珪酸ナトリウム24.7gを入れて混合攪拌した。これに、SiO2換算濃度4.5質量%の珪酸液24.2gを添加した後に昇温して、液温を83℃で30分保持し、シリカの種粒子を含むアルカリ性の母液を準備した。
【0065】
次に、液温を83℃で保持したまま、第一工程で作製された混合液6044gと、0.16質量%の水酸化ナトリウム水溶液2000gとを、各々20時間かけて連続的に母液に添加した。添加終了後、液温を79℃で30分保持した後、冷却して、シリカアルミナ粒子の分散液8499gを得た。次いで、この分散液を限外濾過膜(旭化成(株)製 SIP-1013)を用いて1883gまで濃縮し、この時の液面レベルを保持しながら、イオン交換水9000gを連続的に加えて洗浄を行った。この洗浄品のpHは9.2、電気伝導度は500μS/cm、液温は25℃であった。また、固形分濃度は10質量%であった。
【0066】
〈複合酸化物粒子への抗菌・抗ウイルス性を有する金属元素の担持(第三工程)〉
セパラブルフラスコに、第二工程で作製されたシリカアルミナ粒子の分散液の洗浄品108.8gと、イオン交換水531gとを入れて、攪拌しながら60℃まで昇温した。次いで、これに強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 SK 1B)50gを10分かけて添加して、20分攪拌した後に35℃まで冷却した。その後、洗浄用のイオン交換水267gと共に樹脂を分離して、イオン交換品878gを得た。この時のpHは3.5、電気伝導度は89μs/cm、液温は31℃であった。また、固形分濃度は1.2質量%であった。
【0067】
このイオン交換品878gをセパラブルフラスコに入れて、これに、イオン交換水でAgとして0.47質量%に調整された硝酸銀水溶液90.5gを攪拌しながら40分かけて添加した。その後、液温95℃まで昇温して、この温度で4時間保持した後、50℃以下まで冷却した。この時のpHは3.2、液温は21℃であった。次いで、これを限外濾過膜(旭化成(株)製SIP-1013)を用いて、イオン交換水を補給しながら電気伝導度が100μs/cm以下になるまで洗浄を行った。得られた銀が担持された粒子の分散液は、pH4.1、電気伝導度62μs/cm、液温27℃、固形分濃度1.5質量%であった。
【0068】
粒子、及びその分散液について、以下の方法で測定した。
【0069】
粒子の各製造工程における特徴、及び粒子及び分散液の性状を表1に示す(以下の実施例及び比較例も同様)。
【0070】
(1)平均粒子径(R1)
粒子の分散液をOtsuka Electronics製ELSZ-2000にて、キュムラント法による平均粒子径(R1)を測定した。
【0071】
(2)シアーズ法による比表面積、及び平均粒子径(R2)
SiO2として1.5gに相当する試料(粒子の分散液)をビーカーに採取し、25℃に保持された恒温反応槽に移し、純水を加えて液量を90mlとした。次に、pHが3.6になるように0.1モル/L塩酸水溶液を加えた後、塩化ナトリウムを30g加え、純水で150mlに希釈し、10分間攪拌した。次に、pH電極をセットし、攪拌しながら0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液を滴下して、pH4.0に調整した。このpH4.0に調整された分散液を0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液を用いて滴定し、pH8.7~9.3の範囲での滴定量とpH値を4点以上記録して、0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の滴定量をX、その時のpH値をYとして、検量線を作った。なお、式(1)からSiO21.5g当たりのpH4.0から9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の消費量V(ml)を求め、式(2)より比表面積SA(m2/g)を求めた。また、平均粒子径R2(nm)については、式(3)から求めた。
V=(A×f×100×1.5)/(W×C)・・・(1)
(ここで、AはSiO21.5g当たりpH4.0から9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の滴定量(ml)、fは0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の力価、Cは試料(粒子の分散液)のSiO2換算濃度(質量%)、Wは試料採取量(SiO2として1.5g相当)を表す)
SA=29.0V-28・・・(2)
R2=6000/(ρ×SA)・・・(3)
(ここで、ρは粒子の密度(g/cm3)を表す。シリカの場合は2.2を代入する。)
【0072】
(3)粒子表面形状の観察
走査型電子顕微鏡にて3,00000倍の倍率にて粒子表面の形状観察を行った。
【0073】
(4)29Si-NMR解析による評価
粒子の乾燥品約100mgをジルコニア製5mmφローターに密に詰め、14.1T NMR装置(Agilent製VNMRS-600、1H共鳴周波数600MHz)を用いて、29Si核(119.2MHz)の測定を行った。NMR測定にはシングルパルスノンデカップリング法を用い、積算回数は128回、待ち時間は400秒とし、基準物質にはポリジメチルシロキサン(-34.44ppm)を用いた。得られたスペクトルについて波形解析を行い、各シグナルの化学シフト及び積分値を求めた。この化学シフトから、Q0、Q1、Q2、Q3、及びQ4の帰属を行い、各成分の積分値から面積百分率を算出した。
【0074】
(5)27Al-NMR解析による評価
粒子の乾燥品約20mgをジルコニア製3.2mmφローターに密に詰め、14.1T NMR装置(Agilent製VNMRS-600、1H共鳴周波数600MHz)を用いて、27Al核(156.3MHz)の測定を行った。NMR測定にはシングルパルス法を用い、パルスのフリップ角は10°、積算回数は256回、待ち時間は0.1秒とした。なお、基準物質には1mol/L Al(NO3)3水溶液を用いた。
【0075】
(6)分散液固形分濃度
粒子の分散液に1000℃灼熱減量を行い、秤量して求めた。
【0076】
(7)金属元素濃度
各元素の含有率は、次の方法にて測定した。まず、固形分として約0.2g相当の試料を白金皿に採取した。これに、リン酸3ml、硝酸5ml、弗化水素酸10mlを加えて、サンドバス上で加熱した。これが乾固した後、少量の水と硝酸50mlとを加え溶解させて100mlのメスフラスコに移し、水を加えて100mlとした。この溶液で、Naを原子吸光分光分析装置((株)日立製作所製 Z-2310)を使用して測定した。次に、100mlに調整された溶液から、分取した液を用いて、Ag、AlについてICPプラズマ発光分析装置(SII(株)製 SPS5520)を使用して測定した。
【0077】
(8)SiO2の濃度
粒子の分散液10gに50%硫酸水溶液2mlを加え、白金皿上にて蒸発乾固した。得られた固形物を1000℃にて1時間焼成後、冷却して秤量した。次に、秤量した固形物を微量の50%硫酸水溶液に溶かした。更に、フッ化水素酸20mlを加えてから、白金皿上にて蒸発乾固し、1000℃にて15分焼成後、冷却して秤量した。これらの質量差により、シリカ含有量を求めた。
【0078】
(9)粒子分散液の光透過率
蒸留水を用いて、分散液の固形分濃度を1.5質量%に調整した。これを分光光度計((株)島津製作所 UV-1800)を使用して、蒸留水を対象液として10mmガラスセルにて波長500nmの光透過率を測定した。
【0079】
(10)UV照射試験
粒子の分散液を120℃で16時間乾燥させて、0.3g~0.5gの乾燥粉とし、これを乳鉢で粉末にした。次いで、内径18mm、深さ7mmの容器に、乾燥粉末の試料を0.2g入れて表面を平滑に均した。この試料を、光を遮蔽できるように筒状の治具を取り付けたUVライト(Vansky製 10W395nm)で覆った(
図1に装置の外観を示す)。光源と試料表面との距離を115mmとしてUV光を照射し、12時間後の試料の色調を観察した。
【0080】
(11)耐溶剤試験
固形分として8g相当の粒子の分散液を限外膜(ザルトリウス(株)製 ビバフローMw10000)を使用して267gまで濃縮した。次いで、メタノール1600gを連続添加しながら濾水を排出させて溶媒をメタノールに置換した。このメタノール置換品の固形分濃度は3.7質量%、水分は0.3質量%であった。このメタノール置換品90gをポリ容器に入れて、メタノールを21g加えて、固形分濃度を3質量%に調整した。次に、これを撹拌しながら、シランカップリング剤(信越化学工業(株)製 KBM503)0.33gを加えて、更に30分間撹拌した。次に、容器を密閉して、50℃の恒温槽中で15時間攪拌し、シランカップリング剤で表面処理された粒子を作製した。この表面処理された粒子80gをナス型フラスコに入れて、メチルイソブチルケトン(MIBK)を150g加えてロータリーエバポレーターに取り付けて、減圧しながら80℃の湯浴にてMIBKに溶媒置換させ、粒子のMIBK分散液を作製した。この時の固形分濃度は2.0質量%、水分は0.2質量%あった。その後、このMIBK分散液を5~10℃で24時間冷蔵保管し、冷蔵保管前の状態と比べて、目視にて色調や流動性に変化が観察されない場合、耐溶剤性を良好と判断した。また、色調に変化が見られたり、流動性が低下したりしている場合は、耐溶剤性を不良と判断した。
【0081】
〈被覆形成用の塗布液の製造〉
日揮触媒化成(株)製 反射防止膜形成塗料(Anti-Reflection塗料、あるいはAR塗料ということがある) ELCOM-P-5062(固形分濃度3.0質量%)に、前述の耐溶剤試験で得られた固形分濃度2.0質量%のMIBK分散液を粒子の固形分比率で5質量%相当分を添加して被膜形成用塗布液を製造した。
【0082】
〈被膜付基材の製造〉
ハードコート塗料(日揮触媒化成(株)製 ELCOM HP-1004)を、TACフィルム(パナック(株)製 FT-PB80UL-M、厚さ 80μm、屈折率 1.51)にバーコーター法(#18)にて塗布し、80℃で120秒間乾燥した。その後、300mJ/cm2の紫外線を照射、硬化させてハードコート膜を作製した。このハードコート膜の膜厚は8μmであった。
【0083】
次に、本発明の粒子を使用した被膜形成用塗布液をバーコーター法(#4)にて塗布し、80℃で120秒間乾燥した。その後、N2雰囲気下で400mJ/cm2の紫外線を照射、硬化させて被膜付基材を製造した。
【0084】
被膜付基材を以下の項目について測定した。結果を表2に示す(以下の実施例及び比較例も同様)。
【0085】
(12)外観
得られた被膜付基材を目視で確認し、異物欠点の有無を確認した。
異物欠点が認められない :◎
異物欠点が僅かに認められる:○
異物欠点が多数認められる :△
異物欠点が全体的に存在 :×
【0086】
(13)膜厚、反射率
エリプソメーター(ULVAC社製、EMS-1)を使用して、被膜付基材の膜厚、波長550nmの反射率を測定した。
【0087】
(14)ヘイズ、全光線透過率
ヘーズメーター(スガ試験機(株)製)を使用して、被膜付基材のヘイズ、全光線透過率を測定した。
【0088】
(15)耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重1000g/cm2で100回摺動した。摺動後の被膜付基材の表面を目視観察し、以下の基準で評価した。
評価基準;
筋状の傷が認められない :◎
筋状の傷が僅かに認められる:○
筋状の傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0089】
(16)鉛筆硬度の測定
JIS-K-5400に準じて鉛筆硬度試験器により測定した。
【0090】
(17)密着性
被膜付基材の表面に、ナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作った。これにセロファンテープを接着し、次いで、セロファンテープを剥離した時に被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することによって密着性を評価した。
残存升目の数95個以上 :◎
残存升目の数90~94個:○
残存升目の数85~89個:△
残存升目の数84個以下 :×
【0091】
(18)抗菌性試験
抗菌性試験は、JIS Z 2801に従って行い、下記式(4)により抗菌活性値を求めた。
QB=UBt-ABt ・・・・(4)
(但し、QBは抗菌活性値、UBtは無加工試験片の24時間後の1cm2当たりの生菌数の対数値の平均値、ABtは抗菌加工試験片の24時間後の1cm2当たりの生菌数の対数値の平均値を示す。)
【0092】
この抗菌活性値が2.0以上ある場合に抗菌効果があると判断した。
【0093】
試験菌には、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 12732)、大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)を用い、栄養として1/500普通ブイヨン培地(培地1000mlあたり肉エキス3g+ペプトン10g、塩化ナトリウム5.0g)を使用した。
【0094】
測定は5cm角に切り取った被膜付基材と無加工フィルムにそれぞれ0.4mlの菌液を滴下し、4cm角のPEフィルムで被覆した。試験片を35℃±1℃、相対湿度90%以上で24時間培養し、試験片上の試験菌をSCDLP培地10mlで洗い出して回収した後、洗い出し液の生菌数を平板混釈培養法にて1cm2当たりの生菌数を測定した。
【0095】
(19)抗ウイルス性試験
抗ウイルス性試験は、ISO 21702に従って行い、下記式(5)により抗ウイルス活性値を求めた。
QV=UVt-AVt ・・・・(5)
(但し、QVは抗ウイルス活性値、UVtは無加工試験片の24時間後の1cm2当たりのウイルス感染価の対数値の平均値、AVtは抗ウイルス加工試験片の24時間後の1cm2当たりのウイルス感染価の対数値の平均値を示す。)
【0096】
この抗ウイルス活性値が2.0以上ある場合に抗ウイルス効果があると判断した。
【0097】
測定は5cm角に切り取った被膜付基材と無加工フィルムにそれぞれ1~5×107pfu/mlに調製されたウイルス懸濁液(A型インフルエンザウイルス(H3N2)ATCC VR-1679)0.4mlを滴下し、4cm角のPEフィルムで被覆した。試験片を25℃±1℃、相対湿度90%以上で24時間培養し、試験片上の試験菌をSCDLP培地10mlで洗い出して回収した後、洗い出し液の10倍希釈系列を作製し、プラーク測定法によって、1cm2当たりのウイルス感染価を測定した。
【0098】
[実施例2]
第二工程にて、イオン交換水を695g、3号珪酸ナトリウムを29.5g、4.5質量%珪酸液を122.4gとし、昇温した液温を79℃とした以外は実施例1と同様にして、粒子の分散液を製造し、これを使用して塗布液及び被膜付基材を製造した。
【0099】
[実施例3]
第一工程にて、珪酸液を3945g、イオン交換水を2115g、及び硫酸アルミニウム水溶液を104.2gとした以外は実施例1と同様にして混合液を作製した。この混合液のpHは2.5、電気伝導度は3.7mS/cm、液温は14℃であった。また、イオン交換処理後の混合液のpHは3.2、電気伝導度は1.0mS/cm、液温は16℃であった。また、SiO2換算濃度は2.88質量%、Al2O3換算濃度は0.12質量%、SO4濃度は550ppmであった。以降の工程は実施例1と同様にして、粒子の分散液を製造し、これを使用して塗布液及び被膜付基材を製造した。
【0100】
[実施例4]
第二工程にて、イオン交換水を695g、3号珪酸ナトリウムを29.5g、4.5質量%珪酸液を122.4gとし、昇温した液温を79℃とした以外は実施例1と同様にして、粒子の分散液を製造し、これを使用して塗布液及び被膜付基材を製造した。
【0101】
[実施例5]
第三工程にて、イオン交換品878gを15%アンモニア水にてpH5.0に調整して、これに、硝酸銀水溶液128gを57分かけて添加した以外は実施例1と同様に、95℃で4時間保持させて冷却した。この時のpHは4.0、電気伝導度は1.2mS/cm、液温は33℃であった。以降、実施例1と同様に洗浄を行い、粒子の分散液を製造した。この粒子の分散液は、pH4.2、電気伝導度86μS/cm、液温26℃、固形分濃度1.5質量%であった。これを使用して、塗布液及び被膜付基材を製造した。
【0102】
[比較例1]
第一工程にて、珪酸液を3667g、イオン交換水を2148g、及び硫酸アルミニウム水溶液を223gとした以外は実施例1と同様にして混合液を作製した。この混合液のpHは2.6、電気伝導度は5.8mS/cm、液温は15℃であった。また、イオン交換処理後の混合液のpHは3.1、電気伝導度は1.3mS/cm、液温は17℃であった。また、SiO2換算濃度は2.90質量%、Al2O3換算濃度は0.12質量%、SO4濃度は700ppmであった。以降の工程は実施例1と同様にして、粒子の分散液を製造し、これを使用して塗布液及び被膜付基材を製造した。
【0103】
[比較例2]
第一工程にて、珪酸液3715g、イオン交換水1943g、及び硫酸アルミニウム水溶液36gを混合した以外は実施例1と同様にして、混合液を作製した。この混合液のpHは2.6、電気伝導度は2.5mS/cm、液温は15℃であった。また、イオン交換処理後の混合液のpHは3.1、電気伝導度は1.0mS/cm、液温は17℃であった。また、SiO2換算濃度は2.95質量%、Al2O3換算濃度は0.05質量%、SO4濃度は500ppmであった。以降の工程は実施例1と同様にして、粒子の分散液を製造し、これを使用して塗布液及び被膜付基材を製造した。
【0104】
[比較例3]
シリカ濃度20質量%のシリカゾル(日揮触媒化成(株)製Cataloid SI-550)を1941gとイオン交換水80459gとを混合し、これを5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH11に調整した。次に、これを80℃に昇温し、液温を80℃に保持して30分攪拌した。次にSiO2換算濃度が0.75質量%の珪酸ナトリウム水溶液67840gと、Al2O3換算濃度が0.25質量%のアルミン酸ソーダ溶液67840gとを同時に、連続的に6時間かけて添加した。この間、液温は80℃を保持し、添加終了後、更に1時間保持した。その後、室温まで冷却して、シリカアルミナ粒子の分散液218080gを得た。次に得られた分散液を31934gまで濃縮し、この時の液面レベルを保持しながら、イオン交換水320000gを連続的に加えて洗浄を行った。その後、更に、液量が9187gとなるまで濃縮を行い、洗浄品を得た。この洗浄品のpHは10.5、電気伝導度は900μs/cm、液温は20℃であった。また、固形分濃度は6質量%であった。
【0105】
第三工程において、洗浄品を181.3g、イオン交換水を485.5gとした以外は、実施例1と同様に行った。しかしながら、強酸性陽イオン交換樹脂を添加、撹拌後、冷却したところ、内容物がゲル化していることが観察された。そのため、以降の操作は中止した。
【0106】
[比較例4]
第三工程のイオン交換品を作製する方法において、比較例3で得られた洗浄品を181.3g、イオン交換水を485.5gとした以外は、実施例1と同様にイオン交換処理を行った。ただし、強酸性陽イオン交換樹脂の添加は徐々に行い、pHが4.5になったところで、素早くイオン交換樹脂を分離し、30℃まで冷却して、イオン交換品600gを得た。このイオン交換品のpHは4.6、電気伝導度は200μs/cm、液温は30℃であった。また、固形分濃度は1.5質量%であった。
【0107】
このイオン交換品600gを15%アンモニア水にてpH9に調整した後に、イオン交換水でAgとして0.47質量%に調整された硝酸銀水溶液77.3gを攪拌しながら40分かけて添加し、その後、液温95℃まで昇温して、この温度で4時間保持した後、50℃以下まで冷却した。この時のpHは7.9、液温は21℃であった。次いで、限外濾過膜にて、イオン交換水を補給しながら電気伝導度が100μs/cm以下になるまで洗浄を行った。得られた銀が担持された粒子の分散液のpHは8.0、電気伝導度は62μs/cm、液温27℃、固形分濃度は1.5質量%であった。これを使用して、塗布液の製造を試みたが、液の粘度が増加したため、以降の操作は中止した。
【0108】
[比較例5]
第三工程のイオン交換品を作製する方法において、洗浄品の代わりに、シリカ換算濃度30質量%のシリカゾル(日揮触媒化成(株)製Cataloid SI-30)を36.3g、イオン交換水603.5gを使用した以外は、実施例1と同様にして、イオン交換品878gを得た。このイオン交換品のpHは3.1、電気伝導度は75μs/cm、液温は32℃であった。また、固形分濃度は1.2質量%であった。
【0109】
このイオン交換品878gに、イオン交換水でAgとして0.47質量%に調整された硝酸銀水溶液90.5gを攪拌しながら40分かけて添加し、その後、液温95℃まで昇温して、この温度で4時間保持した後、50℃以下まで冷却した。この時のpHは3.3、液温は21℃であった。以降、実施例1と同様に洗浄を行い、粒子の分散液を製造した。この粒子の分散液は、pH4.2、電気伝導度60μs/cm、液温28℃、固形分濃度1.5質量%であった。しかしながら、Agがほとんど担持されていなかったため、以降の操作は中止した。
【0110】
【0111】
【0112】
図1は、粒子に対するUV照射試験に使用するUVライト(左側)、UV照射装置の外観(中央)、及び、筒状治具の端から装置内の光源(UVライト)側を見た図(右側)である。
【0113】
図2は、実施例1及び比較例4の粒子に対して、UV照射試験におけるUV光の照射前後における試料の色調を観察したものである。これによると、実施例1の粒子については、試料の色調は変化せず、白色のままであるのに対して、比較例4の粒子については、UV光照射後の試料は黒色に変化していることが観察された。
【0114】
図3~5に、実施例1~3で製造された粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す。これらの写真から、本発明の粒子は表面に凹凸を有する球状粒子であることが観察された。
【0115】
図6に、比較例1製造された粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す。また、
図7に、比較例3の第二工程で作製されたシリカアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す。ここで、比較例1の粒子は、形状が一定していない非球状粒子であり、比較例3の粒子は、表面が滑らかな球状粒子であることが観察された。