(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092500
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】スロットルバルブの開度センサの学習装置及び学習方法
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
F02D45/00 364G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208476
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 佑斗
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA27
3G384BA05
3G384DA29
3G384EA07
3G384EB14
3G384ED06
3G384FA04Z
(57)【要約】
【課題】容易にかつ精度よく初期学習が可能な手動式のスロットルバルブの開度センサの学習装置及び学習方法を提供する。
【解決手段】手動式のスロットルバルブ20と、スロットルポジションセンサ61を有しスロットルバルブ20に着脱可能に固定される吸気センサユニット60と、を備えたスロットルバルブユニット59において、スロットルバルブ20の実開度とスロットルポジションセンサ61の検出値との関係を学習するスロットルバルブユニット59の学習装置及び学習方法であって、メインコントロールユニット50は、スロットルの全開操作及び全閉操作を手動で順次行った際のスロットルポジションセンサ61の検出値をメモリ50aに記憶させる第1学習制御と、第1学習において取得した検出値に基づいてスロットルポジションセンサ61の出力勾配を演算してメモリ50aに記憶させる第2学習制御と、を実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路に配置された手動式のスロットルバルブと、前記スロットルバルブの開度を検出する開度センサを有し前記スロットルバルブに着脱可能に固定されるセンサユニットと、を備えたスロットルバルブユニットにおいて、前記スロットルバルブの実開度と前記開度センサの検出値との関係を学習するスロットルバルブの開度センサの学習装置であって、
前記学習装置は、
前記スロットルバルブの実開度と前記開度センサの検出値との差に基づいて前記検出値を補正する補正値を記憶する記憶部と、
前記内燃機関の作動時に前記スロットルバルブが操作された際の前記開度センサの検出値に基づいて前記補正値を演算して前記記憶部に記憶させる学習制御を実行する制御部と、を備え、
前記学習制御は、
前記スロットルバルブの全開操作及び全閉操作が手動で順次行われた際に、前記全開操作時における前記開度センサの検出値と、前記全閉操作時における前記開度センサの検出値を前記記憶部に記憶させる第1学習制御と、
前記第1学習制御における前記検出値に基づいて、前記開度センサの出力勾配を演算して前記記憶部に記憶させる第2学習制御と、を有する
ことを特徴とするスロットルバルブの開度センサの学習装置。
【請求項2】
前記学習制御の実行時に前記スロットルバルブの全閉操作及び全開操作を指示する指示部を備えることを特徴とする請求項1に記載のスロットルバルブの開度センサの学習装置。
【請求項3】
前記開度センサの検出値の最大閾値及び最小閾値を有しており、
前記制御部は、前記学習制御において、前記全開操作時に検出された前記検出値が前記最大閾値以下の場合には当該検出値を前記補正値の学習に使用しないとともに、前記全閉操作時に検出された前記検出値が前記最小閾値以上である場合には当該検出値を前記補正値の学習に使用しない
ことを特徴とする制請求項1に記載のスロットルバルブの開度センサの学習装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記学習制御において、前記スロットルバルブの全開操作及び全閉操作が夫々複数回行われた際に、全開操作時における前記開度センサの検出値の平均値を前記学習に使用する前記検出値として前記記憶部に記憶させるとともに、全閉操作時における前記開度センサの検出値の平均値を前記学習に使用する前記検出値として前記記憶部に記憶させる
ことをと特徴とする制請求項3に記載のスロットルバルブの開度センサの学習装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記学習制御において、前記全開操作を行って前記開度センサの検出値が前記最大閾値を超えない場合、または前記全閉操作を行って前記最小閾値を未満にならない場合の回数が所定回数以上になった場合に、前記学習制御を中止する
ことを特徴とする請求項4に記載のスロットルバルブの開度センサの学習装置。
【請求項6】
内燃機関の吸気通路に配置された手動式のスロットルバルブと、前記スロットルバルブの開度を検出する開度センサを有し前記スロットルバルブに着脱可能に固定されるセンサユニットと、を備えたスロットルバルブユニットにおいて、前記スロットルバルブの実開度と前記開度センサの検出値との関係を学習するスロットルバルブの開度センサの学習方法であって、
前記学習方法を実行する学習装置は、前記スロットルバルブの実開度と前記開度センサの検出値との差に基づいて前記検出値を補正する補正値を記憶する記憶部と、前記内燃機関の作動時に前記スロットルバルブが操作された際の前記開度センサの検出値に基づいて前記補正値を演算して前記記憶部に記憶させる学習制御を実行する制御部と、を備え、
前記学習制御は、
前記スロットルバルブの全開操作及び全閉操作が手動で順次行われた際に、前記全開操作時における前記開度センサの検出値と、前記全閉操作時における前記開度センサの検出値を前記記憶部に記憶させる第1学習制御と、
前記第1学習制御における前記検出値に基づいて、前記開度センサの出力勾配を演算して前記記憶部に記憶させる第2学習制御と、を有する
ことを特徴とするスロットルバルブの開度センサの学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルバルブの開度センサの学習装置及び学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のスロットルバルブにおいて、開度を検出する開度センサが容易に交換可能なように、開度センサをユニット状にして脱着可能にしたスロットルバルブが開発されている。このように開度センサを交換した場合には、スロットルバルブの実際の開度と開度センサが検出する開度を一致させるために補正値を設定する初期学習が必要である。
【0003】
特許文献1には、スロットルバルブを駆動制御する制御装置において、スロットルバルブを全開及び全閉するように駆動制御して、開度センサの検出値が無変化状態であった場合にスロットルバルブの開閉機構及び開度センサの少なくもいずれかが故障であると判定し、全開及び全閉時の基準となる出力を暫定的に設定する初期学習を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば自動2輪車に使用されるような手動式のスロットルバルブにおいても、開度センサを交換可能に構成している場合がある。そして、手動式のスロットルバルブの場合においても、容易にかつ精度よくスロットルバルブの開度センサの初期学習を可能にすることが要求されている。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、容易にかつ精度よく初期学習が可能な手動式のスロットルバルブユニットにおける開度センサの学習装置及び学習方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のスロットルバルブの開度センサの学習装置は、内燃機関の吸気通路に配置された手動式のスロットルバルブと、前記スロットルバルブの開度を検出する開度センサを有し前記スロットルバルブに着脱可能に固定されるセンサユニットと、を備えたスロットルバルブユニットにおいて、前記スロットルバルブの実開度と前記開度センサの検出値との関係を学習するスロットルバルブの開度センサの学習装置であって、前記学習装置は、前記スロットルバルブの実開度と前記開度センサの検出値との差に基づいて前記検出値を補正する補正値を記憶する記憶部と、前記内燃機関の作動時に前記スロットルバルブが操作された際の前記開度センサの検出値に基づいて前記補正値を演算して前記記憶部に記憶させる学習制御を実行する制御部と、を備え、前記学習制御は、前記スロットルバルブの全開操作及び全閉操作が手動で順次行われた際に、前記全開操作時における前記開度センサの検出値と、前記全閉操作時における前記開度センサの検出値を前記記憶部に記憶させる第1学習制御と、前記第1学習制御における前記検出値に基づいて、前記開度センサの出力勾配を演算して前記記憶部に記憶させる第2学習制御と、を有することを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記学習制御の実行時に前記スロットルバルブの全閉操作及び全開操作を指示する指示部を備えるとよい。
【0009】
好ましくは、前記開度センサの検出値の最大閾値及び最小閾値を有しており、前記制御部は、前記学習制御において、前記全開操作時に検出された前記検出値が前記最大閾値以下である場合には当該検出値を前記補正値の演算に使用しないとともに、前記全閉操作時に検出された前記検出値が前記最小閾値以上である場合には当該検出値を前記補正値の演算に使用しないとよい。
【0010】
好ましくは、前記制御部は、前記学習制御において、前記スロットルバルブの全開操作及び全閉操作が夫々複数回行なわれた際に、全開操作時における前記開度センサの検出値の平均値を前記学習に使用する前記検出値として前記記憶部に記憶させるとともに、全閉操作時における前記開度センサの検出値の平均値を前記学習に使用する前記検出値として前記記憶部に記憶させるとよい。
【0011】
好ましくは、前記制御部は、前記学習制御において、前記全開操作を行って前記開度センサの検出値が前記最大閾値を超えない場合、または前記全閉操作を行って前記最小閾値を未満にならない場合の回数が所定回数以上になった場合に、前記学習制御を中止するとよい。
【0012】
本発明のスロットルバルブの開度センサの学習方法は、内燃機関の吸気通路に配置された手動式のスロットルバルブと、前記スロットルバルブの開度を検出する開度センサを有し前記スロットルバルブに着脱可能に固定されるセンサユニットと、を備えたスロットルバルブユニットにおいて、前記スロットルバルブの実開度と前記開度センサの検出値との関係を学習するスロットルバルブの開度センサの学習方法であって、前記学習方法を実行する前記学習装置は、前記検出値を補正する補正値を記憶する記憶部と、前記内燃機関の作動時に前記スロットルバルブが操作された際の前記開度センサの検出値に基づいて前記補正値を演算して前記記憶部に記憶させる学習制御を実行する制御部と、を備え、前記学習制御は、前記スロットルバルブの全開操作及び全閉操作が手動で順次行われた際に、前記全開操作時における前記開度センサの検出値と、前記全閉操作時における前記開度センサの検出値を前記記憶部に記憶させる第1学習制御と、前記第1学習制御における前記検出値に基づいて、前記開度センサの出力勾配を演算して前記記憶部に記憶させる第2学習制御と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスロットルバルブの開度センサの学習装置及び学習方法によれば、第1学習制御によって、スロットルバルブの全開時及び全閉時における開度センサの検出値を規定することができる。更に、第2学習制御によって、開度センサの出力勾配を規定することができる。そして学習制御として、スロットルバルブの全開時または全閉時における開度センサの検出値と、開度センサの出力勾配とが記憶部に記憶される。
【0014】
これにより、当該学習制御を行うことで記憶された全開時及び全閉時における開度センサの検出値を利用して、以降のスロットルバルブの使用時に開度センサの検出値を補正することで、開度センサの検出値の精度を高めることができ、手動式のスロットルバルブにおいて、容易にかつ精度よく開度センサの初期学習が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態の学習装置を適用するスロットルバルブを備えた内燃機関の概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係るスロットルバルブユニットの構成を示す斜視図である。
【
図3】スロットルポジションセンサの学習制御の制御手順を示すフローチャートである。
【
図4】スロットルポジションセンサの学習制御実行時における各種機器の状態の推移の一例を示すタイムチャートである。
【
図5】学習制御実行時におけるスロットルポジションセンサ61の出力値の推移の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態の学習装置を適用するスロットルバルブを備えた内燃機関1の構成図である。
図2は、本実施形態に係るスロットルバルブユニットの構成を示す斜視図である。
【0018】
本発明の一実施形態のスロットルバルブの開度センサの学習装置は、例えば自動2輪車(以下、車両という)に備えられた内燃機関1のスロットルバルブ20に対して適用される。
【0019】
図1に示すように、本実施形態を適用する内燃機関1は、吸気ポート2に吸気バルブ3、排気ポート4に排気バルブ5を備えるとともに、燃料タンク6から燃料ポンプ7によって供給された燃料を吸気ポート2内に噴射するインジェクタ8と、燃焼室9内に火花を発生させる点火プラグ10を備えた点火式のガソリンエンジンである。
【0020】
内燃機関1の排気通路11には、排気浄化触媒13(3元触媒)が備えられている。排気通路11には、排気浄化触媒13を挟んで上流側O2センサ15、下流側O2センサ16を備えている。下流側O2センサ16には、低温時に活性化させるためのヒータが備えられている。
【0021】
スロットルバルブ20は、エアクリーナ21と内燃機関1の吸気ポート2との間の吸気通路17に設けられている。スロットルバルブ20は、車両の図示しないスロットルとワイヤ等で接続され、機械的に駆動する手動式のマニュアルバルブである。
【0022】
また吸気通路17にはスロットルバルブ20の弁体をバイパスするバイパス路22が備えられるとともに、バイパス路22の開度を調整するアイドルスピードコントロールバルブ23(例えばDSV)が備えられている。
【0023】
スロットルバルブ20と吸気バルブ3との間の吸気通路17に燃料タンク6内の蒸発ガスを導入するブローバイガス路24が設けられ、ブローバイガス路24にはキャニスタ25が介装されている。
【0024】
更に、本実施形態の内燃機関1の駆動軸に、スタータを兼ねたACジェネレータ26が備えられている。ACジェネレータ26は、スタータコントロールユニット27によって作動制御される。
【0025】
車両には、イグニッションスイッチ30(IG-SW)、サイドスタンドスイッチ31、燃料残量警告スイッチ32、キルスイッチ33、及び後述するスロットルポジションセンサ61の学習を行うために使用するテストスイッチ35が備えられている。更に、車両に備えられたエンジン回転速度メータ等を有する表示部36には、燃料残量警告灯37、誤動作表示ランプ38(MIL、指示部)が備えられている。
【0026】
内燃機関1は、メインコントロールユニット50(制御部)によって作動制御される。メインコントロールユニット50は、出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)等から構成されている。メインコントロールユニット50は、バッテリ51から電力が供給されて作動し、クランクポジションセンサ52よりクランク角、エンジン温度センサ53よりエンジン温度、後述する吸気センサユニット60より吸気温度、吸気圧及びスロットルバルブ20の開度、上流側O2センサ15及び下流側O2センサ16より酸素濃度等を入力するとともに、イグニッションスイッチ30及び上記各種スイッチの操作信号を入力する。そして、メインコントロールユニット50は、入力した各種情報に基づいて、インジェクタ8、点火プラグ10、スロットルバルブ20、アイドルスピードコントロールバルブ23、下流側O2センサ16のヒータ等を作動制御するとともに、燃料残量警告灯37及び誤動作表示ランプ38を作動制御する。なお、この誤動作表示ランプ38が本発明における表示部に該当する。
【0027】
更に、メインコントロールユニット50及びスタータコントロールユニット27には、ノート型コンピュータやハンディターミナル等の設定用の端末であるダイアグツール56(制御部)を接続可能になっている。
【0028】
図2に示すように、本実施形態のスロットルバルブ20は、バルブボディ62内にバイパス路22を有するとともに、アイドルスピードコントロールバルブ23と吸気センサユニット60(センサユニット)とが備えられてスロットルバルブユニット59を構成している。
【0029】
吸気センサユニット60は、スロットルバルブ20の開度を検出するスロットルポジションセンサ61(開度センサ)、図示しない吸気菅内圧力センサ及び吸気温度センサをまとめてユニット化して構成されている。
【0030】
吸気センサユニット60は、スロットルバルブ20のバルブボディ62に、ボルト63等によって着脱可能に固定されている。
【0031】
次に、スロットルポジションセンサ61の補正値を設定する学習制御について説明する。スロットルポジションセンサ61の学習制御は、例えば故障等によりスロットルバルブユニット59から吸気センサユニット60を交換した場合に実行される。
【0032】
スロットルポジションセンサ61の学習制御を行う学習装置は、車両のイグニッションスイッチ30、テストスイッチ35、メインコントロールユニット50、表示部36の誤動作表示ランプ38、バッテリ51によって構成されている。
【0033】
メインコントロールユニット50には、スロットルポジションセンサ61の実検出値に対する出力値の補正値を記憶するメモリ50a(記憶部)が備えられている。
【0034】
なお、スロットルポジションセンサ61の学習制御は、メインコントロールユニット50において行うものとして以降に説明するが、メインコントロールユニット50に接続したダイアグツール56を使用して行うようにしてもよい。
【0035】
図3は、スロットルポジションセンサ61の学習制御の制御手順を示すフローチャートである。
図4は、スロットルポジションセンサ61の学習制御実行時における各種機器の状態の推移の一例を示すタイムチャートである。
図4では、全閉・全開指示を各5回ずつ行い、学習制御が完了した場合の一例を示している。
図5は、学習制御実行時におけるスロットルポジションセンサ61の出力値の推移の一例を示すタイムチャートである。
【0036】
スロットルポジションセンサ61の学習制御は、テストスイッチ35をONにし、イグニッションスイッチ30をONにすることで実行が開始される。
【0037】
始めにステップS10では、スロットルポジションセンサ61(TPS)の学習制御であるTPS出力勾配学習及びアイドル出力学習といった学習の移行条件が成立したか否かを判別する。なお、TPS出力勾配学習は本発明の第2学習制御、アイドル出力学習は本発明の第1学習制御に該当する。
【0038】
学習制御の移行条件は、下記(a)~(c)の3個の条件が全て満足している場合に移行条件が成立したものとする。
(a)テストスイッチ35ON、及びイグニッションスイッチ30ON
(b)イグニッションスイッチ30ON後に第1所定時間t1(例えば5秒)以内にスロットルを全開にする(スロットルポジションセンサ61の出力電圧V(検出値)が、後述する最大閾値V1を超えている)。
(c)誤動作表示ランプ38が点滅するまでスロットルを全開(スロットルポジションセンサ61の出力電圧Vが最大閾値V1を超えている状態)で保持する。なお、誤動作表示ランプ38は、(b)のスロットル全開から第2所定時間t2(例えば30秒)経過すると点滅を開始するように設定されている。
【0039】
なお、上記の(a)~(c)以外にも、ダイアグツール56を接続した場合にダイアグツール56において学習の開始が操作された場合に、学習制御の移行条件が成立したと判定してもよい。
【0040】
学習制御の移行条件が成立した場合には、ステップS20に進む。学習制御の移行条件が成立しない場合には、本ルーチンのスタートに戻る。
【0041】
ステップS20(学習モード)では、TPS出力値取得が成立したか否かを判別する。詳しくは、メインコントロールユニット50は、まず学習制御に移行することを作業者に知らせる学習制御開始表示を誤動作表示ランプ38によって表示させる。学習制御開始表示は、例えば誤動作表示ランプ38の点灯と消灯を0.5秒間おきに5回ずつ繰り返す。
【0042】
次に、メインコントロールユニット50は、スロットルバルブ20の全開を指示する表示(例えば点灯を2秒間)、及び全閉を指示する表示(例えば消灯を2秒間)を交互に、第1所定回数n1(例えば3~5回)繰り返すように誤動作表示ランプ38に表示させる。
なお、
図4では3回表示、
図5では5回表示した場合を示している。
【0043】
これにより、作業者はこの点灯と消灯に合わせて、スロットルの全開と全閉を繰り返す。メインコントロールユニット50は、誤動作表示ランプ38の各点灯時及び各消灯時において、点灯時におけるスロットルポジションセンサ61の検出値の最大値Vmaxと、消灯時における検出値の最小値Vminを入力する。
【0044】
なお、メインコントロールユニット50は、点灯時に検出された検出値の最大値Vmaxが最大閾値V1を超えている場合に、この検出値の最大値Vmaxを取得し、スロットル全開操作カウンタを1カウントアップする。誤動作表示ランプ38の点灯時に検出された検出値の最大値Vmaxが最大閾値V1以下の場合には、このときの点灯時における検出値の最大値Vmaxを取得しない。
【0045】
また、メインコントロールユニット50は、消灯時に検出された検出値の最小値Vminが最小閾値V2未満である場合に、この検出値の最小値Vminを取得し、スロットル全閉操作カウンタを1カウントアップする。誤動作表示ランプ38の消灯時に検出された検出値の最小値Vminが最小閾値V2以上である場合には、このときの消灯時における検出値の最小値Vminを取得しない。
【0046】
最大閾値V1と最小閾値V2については、スロットルバルブ20が明らかに中間開度で固着している場合にスロットルポジションセンサ61の検出値が最大閾値V1と最小閾値V2との間の検出値となるように設定すればよい。
【0047】
そして、スロットルバルブ20の全開・全閉操作回数が第2所定回数n2以上となった場合に、TPS出力値取得が成立したと判定し、ステップS30に進む。適宜選定された学習可能最大時間t3内(例えば30秒内)において、最大値Vmaxと最小値Vminの少なくともいずれの取得した回数が第2所定回数n2未満である場合には、TPS出力値取得が成立しなかったと判定し、本ルーチンのスタートに戻る。なお、第2所定回数n2は、上記の第1所定回数n1以下の値に適宜設定すればよい。
【0048】
ステップS30(出力勾配計算モード、書き込みモード)では、TPS出力勾配を計算するとともに、アイドル出力学習値メモリ(メモリ50a)に書込成立したか否かを判別する。
【0049】
本ステップでは、上記ステップS20において取得した複数の最大値Vmaxと最小値Vminに基づいて、下記(d)~(h)の出力勾配学習許可条件が成立したか否かを判別する。
(d)スロットル全開時における複数の最大値Vmaxのうち、その最も大きい値と最も小さい値との差が適宜設定された許容値以下である。
(e)スロットル全閉時における複数の最小値Vminのうち、その最も大きい値と最も小さい値との差が適宜設定された許容値以下である。
(f)スロットル全開操作カウンタが適宜設定された学習希望回数(第2所定回数n2)を超えている。
(g)スロットル全閉操作カウンタが適宜設定された学習希望回数(第2所定回数n2)を超えている。
(h)ステップS20における全閉・全開操作指示の開始から、スロットルの全開・全閉操作回数が第2所定回数n2以上となってステップS30に移行するまでの時間(TPS学習タイマ)が、適宜設定されたTPS学習可能最大時間以下である。
【0050】
メインコントロールユニット50は、出力勾配学習許可条件(d)~(h)のいずれかが成立しない場合には、本ルーチンのスタートに戻る。出力勾配学習許可条件(d)~(h)のいずれも成立した場合には、TPS出力勾配演算及びアイドル出力学習を実行する。
【0051】
TPS出力勾配Aは、以下の計算式により演算される。
A=スロットル開き角/(各全開操作時の最大値Vmaxの平均値-各全閉操作時の最小値Vminの平均値)
【0052】
このTPS出力勾配Aと、全閉操作時の最小値Vminの平均値を、全閉操作時の検出値、即ちアイドル時の開度Bとしてメモリ50aに記憶する。そして、ステップS40に進む。
(
【0053】
ステップS40では、TPS出力勾配とアイドル出力学習(学習制御)の完了判定をする。メインコントロールユニット50は、例えは誤動作表示ランプ38を高速に点滅させて、作業者に学習制御の終了を報知する。
【0054】
これにより、作業者はIG-OFFをすることで本ルーチンが終了する。
【0055】
なお、上記の学習制御中において、下記の禁止条件(1)~(7)のいずれかが満たされた場合には、本学習制御を中断する。
(1)メインコントロールユニット50がクランク入力信号(エンジンスタート信号)を入力した場合。
(2)他の故障検出装置により、スロットルポジションセンサ61が故障であると判定された場合。
(3)バッテリ51の電圧が異常であると判定された場合。
(4)スロットルポジションセンサ61の電源電圧が異常であると判定された場合。
(5)学習可能最大時間t3以内にスロットル全開・全閉操作カウンタが学習希望回数(第2所定回数n2)に未達の場合。
(6)TPS全開・全閉学習値である最大値Vmax、最小値Vminが以下の条件(a)または(b)の場合。
(a)複数のスロットル全開時のTPS出力電圧の最大値Vmaxの最大偏差 ≧ TPS全開出力電圧許容差
(b) 複数のスロットル全閉時TPS出力電圧の最小値Vminの最大偏差≧ TPS全閉出力電圧許容差
(7)学習したTPS出力勾配Aが以下の条件(a)または(b)の場合。
(a) TPS学習可能下限出力勾配Amin>TPS出力勾配A
(b) TPS出力勾配A>TPS 学習可能上限出力勾配Amax
TPS学習可能下限出力勾配Amin及びTPS 学習可能上限出力勾配Amaxは、TPS出力勾配Aの設定範囲を制限するように適宜設定すればよい。
【0056】
以上(1)~(7)の禁止条件のいずれかが満たされた場合には、IG-OFFにするまで誤動作表示ランプ38を点灯し続ける。
【0057】
以上のように、本実施形態の学習装置を適用するスロットルバルブ20は、スロットルポジションセンサ61を含む吸気センサユニット60が着脱可能に固定され、スロットルバルブユニット59としてユニット化している。したがって、吸気センサユニット60が故障した場合に交換可能になっている。そして、吸気センサユニット60を交換した場合には、スロットルバルブ20の実開度とスロットルポジションセンサ61の検出開度との差を補正するための学習制御(初期学習)が必要となる。
【0058】
学習制御は、メインコントロールユニット50あるいはメインコントロールユニット50に接続されたダイアグツール56によって行われる。
【0059】
メインコントロールユニット50(あるいはダイアグツール56)は、学習制御として、スロットルバルブ20の全開操作及び全閉操作を手動で順次行った際の、スロットルポジションセンサ61の検出値の最大値Vmax及び最小値Vminを取得し、スロットル全閉時即ちアイドル時のスロットルポジションセンサ61の検出値をメインコントロールユニット50に記憶させる第1学習制御と、最大値Vmax及び最小値Vminに基づいて、スロットルポジションセンサ61の出力勾配(TPS出力勾配A)を演算してメモリ50aに記憶させる第2学習制御と、を実行する。
【0060】
これにより、第1学習制御によって、スロットルバルブ20の全閉時におけるスロットルポジションセンサ61の検出値を規定することができる。なお、第1学習制御において、スロットルバルブの全開時におけるスロットルポジションセンサ61の検出値を規定するようにしてもよい。
【0061】
更に、第2学習制御によって、スロットルポジションセンサ61の出力電圧V(検出値)と実開度との関係を示す出力勾配(TPS出力勾配A)を規定することができる。
【0062】
そして、スロットルバルブ20の全閉時におけるスロットルポジションセンサ61の検出値(即ち、アイドル時のスロットルバルブ20の開度B)と、スロットルバルブ20の検出値の出力勾配Aとを、メモリ50aに補正用の学習値として記憶し、当該学習値を使用して以降のスロットルバルブ20の使用時にスロットルポジションセンサ61の検出値Vを補正することで、スロットルポジションセンサ61の検出値の精度を高めることができる。
【0063】
作業者はスロットルバルブ20の全開操作及び全閉操作を順次行って、全開操作時及び全閉操作時の検出値を使用して学習制御が行われるので、手動式のスロットルバルブ20であっても学習制御が容易に可能になる。
【0064】
本実施形態では、スロットルバルブ20の全閉操作及び全開操作を指示する誤動作表示ランプ38を備えているので、学習制御の実行時にタイミング良く作業者がスロットルバルブ20の全開操作及び全閉操作を行うことができ、メインコントロールユニット50が全開操作時の検出値及び全閉操作時の検出値を効率的に精度良く取得することができる。
【0065】
また、スロットルポジションセンサ61の検出値の最大閾値V1及び最小閾値V2を有しており、メインコントロールユニット50は、学習制御において、全開操作時に検出された最大値Vmaxが最大閾値V1以下の場合には当該最大値Vmaxを補正値の学習に使用しないとともに、全閉操作時に検出された最小値Vminが最小閾値V2以上の場合には当該最小値Vminを補正値の学習に使用しない。
【0066】
これにより、スロットルポジションセンサ61の検出値Vから、精度の低い検出値を使用せずに学習を行うことができ、学習制御の精度を高めることができる。
【0067】
また、メインコントロールユニット50は、学習制御において、スロットルの全開操作及び全閉操作を夫々複数回行うように指示し、複数回操作を行った際の、スロットルポジションセンサ61の複数の最大値Vmaxの平均値を補正に使用する最大値Vmaxとしてメモリ50aに記憶させるとともに、検出されたスロットルポジションセンサ61の複数の最小値Vminの平均値を補正に使用する最小値Vminとしてメモリ50aに記憶させる。
【0068】
これにより、スロットルポジションセンサ61の検出値のバラつきを吸収し、全開操作時の検出値である最大値Vmax及び全閉操作時の検出値である最小値Vminを精度良く取得することができる。
【0069】
更に、メインコントロールユニット50は、学習制御において、全開操作によりスロットルポジションセンサ61の検出値Vが最大閾値V1を超えない場合、または全閉操作を行って最小閾値V2未満にならない場合の回数(n1-n2)が所定回数以上になった場合に、学習制御を中止する。
【0070】
これにより、例えばスロットルバルブ20が固着等の故障をしている場合に、学習制御を中止することができ、不正確な学習を回避することができる。
【0071】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、学習制御の禁止条件等の詳細な条件や制御について、適宜変更してもよい。
【0072】
また上記実施形態では、2輪自動車の内燃機関に備えられたスロットルバルブ20に対して本発明を適用したが、各種内燃機関の手動式のスロットルバルブに本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 内燃機関
17 吸気通路
20 スロットルバルブ
38 誤動作表示ランプ(指示部)
50 メインコントロールユニット(制御部)
50a メモリ(記憶部)
56 ダイアグツール(制御部)
59 スロットルバルブユニット
60 吸気センサユニット(センサユニット)
61 スロットルポジションセンサ(開度センサ)