(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092511
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】優先度判定装置、学習装置、推論装置、優先度判定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/02 20120101AFI20240701BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240701BHJP
【FI】
G06Q10/02
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208498
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】319011546
【氏名又は名称】株式会社アイ・アイ・エム
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 光平
(72)【発明者】
【氏名】堀 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】國本 恵
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA02
5L010AA03
5L049AA02
5L049AA03
(57)【要約】
【課題】問い合わせについて処理の優先度を判定する。
【解決手段】優先度判定装置は、一連の問い合わせごとに起票される電子的なチケットについての情報を含むチケットデータと、コメントについての情報及びチケット識別情報を含むコメントデータと、チケットごとに定められた優先度とに基づき、新たに登録又は更新されたチケットの優先度を推論する学習済みモデルを生成する学習部と、新たに登録又は更新されたチケットについてのチケットデータと、コメントデータと、学習済みモデルとに基づき、チケットの優先度を推論する推論部とを備え、推論部は、コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じて第1の判定を行う第1判定部と、学習済みモデルを用いた推論により第2の判定を行う第2判定部と、第1判定部による第1の判定結果と、第2判定部による第2の判定結果とに基づいて優先度を判定する第3判定部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の問い合わせごとに起票される電子的なチケットについての情報を含むチケットデータと、前記一連の問い合わせに含まれる個々のコメントについての情報及びいずれの前記チケットに対応付けられるかを示すチケット識別情報を含むコメントデータと、前記チケットごとに定められた優先度とに基づき、新たに登録又は更新された前記チケットの優先度を推論する学習済みモデルを生成する学習部と、
新たに登録又は更新された前記チケットについての前記チケットデータと、前記チケットデータに対応付けられる前記コメントデータと、前記学習済みモデルとに基づき、前記チケットの優先度を推論する推論部とを備え、
前記推論部は、
前記コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じて前記チケットの優先度についての第1の判定を行う第1判定部と、
前記学習済みモデルを用いた推論により前記チケットの優先度についての第2の判定を行う第2判定部と、
前記第1判定部による第1の判定結果と、前記第2判定部による第2の判定結果とに基づいて、前記チケットの優先度を判定する第3判定部とを備える
優先度判定装置。
【請求項2】
前記第1判定部により、前記コメントデータに所定のキーワードが含まれているとして前記第1の判定結果として前記チケットの優先度が判定された場合、前記第3判定部は前記第1判定部による前記第1の判定結果を前記チケットの優先度とする
請求項1に記載の優先度判定装置。
【請求項3】
前記第1判定部により、前記コメントデータに所定のキーワードが含まれているとして前記第1の判定結果として前記チケットの優先度が判定された場合、前記第3判定部は、前記第1判定部による前記第1の判定結果と前記第2判定部による前記第2の判定結果とのうち、優先度が高い方の判定結果を前記チケットの優先度とする
請求項1に記載の優先度判定装置。
【請求項4】
前記コメントデータは、前記一連の問い合わせに含まれる個々のコメントが登録された時刻に関する情報を含み、
前記チケットには、前記一連の問い合わせに含まれる個々のコメントが登録された時刻が異なる複数の前記コメントデータが対応付けられ、
前記推論部は、前記チケットに対応する新たな前記コメントデータが登録されると、前記チケットの優先度を推論し、前記チケットの優先度を新たに推論された優先度に更新する
請求項1又は請求項2に記載の優先度判定装置。
【請求項5】
前記学習済みモデルを学習させるための情報には、既に優先度が付与された情報と、優先度が付与されていない情報とが存在し、
前記学習部は、優先度が付与されていない情報には、所定の規則に則り仮の優先度である仮優先度を付与し、付与された仮優先度に基づき前記学習済みモデルを学習させる
請求項1又は請求項2に記載の優先度判定装置。
【請求項6】
前記学習部は、前記コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じた仮優先度を付与する
請求項5に記載の優先度判定装置。
【請求項7】
前記推論部は、推論により得られた前記チケットの優先度と、当該推論の根拠となった情報とを対応付けて推論結果情報として記憶させ、
前記学習部は、前記推論結果情報が好適か否か判断された結果に基づいて再学習を行う
請求項1又は請求項2に記載の優先度判定装置。
【請求項8】
一連の問い合わせごとに起票される電子的なチケットについての情報を含むチケットデータと、前記一連の問い合わせに含まれる個々のコメントについての情報及びいずれの前記チケットに対応付けられるかを示すチケット識別情報を含むコメントデータと、前記チケットごとに定められた優先度とに基づき、新たに登録又は更新された前記チケットの優先度を推論する学習済みモデルを生成する学習装置であって、
前記学習済みモデルを学習させるための情報には、既に優先度が付与された情報と、優先度が付与されていない情報とが存在し、
優先度が付与されていない情報には、所定の規則に則り仮の優先度である仮優先度を付与し、付与された仮優先度に基づき前記学習済みモデルを学習させる
学習装置。
【請求項9】
一連の問い合わせごとに起票される電子的なチケットについての情報を含むチケットデータと、前記一連の問い合わせに含まれる個々のコメントについての情報及びいずれの前記チケットに対応付けられるかを示すチケット識別情報を含むコメントデータと、予め学習された学習済みモデルとに基づき、前記チケットごとに定められた優先度であって新たに登録又は更新された前記チケットの優先度を推論する推論装置であって、
前記コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じて前記チケットの優先度についての第1の判定を行う第1判定部と、
前記学習済みモデルを用いた推論により前記チケットの優先度についての第2の判定を行う第2判定部と、
前記第1判定部による第1の判定結果と、前記第2判定部による第2の判定結果とに基づいて、前記チケットの優先度を判定する第3判定部とを備える
推論装置。
【請求項10】
一連の問い合わせごとに起票される電子的なチケットについての情報を含むチケットデータと、前記一連の問い合わせに含まれる個々のコメントについての情報及びいずれの前記チケットに対応付けられるかを示すチケット識別情報を含むコメントデータと、前記チケットごとに定められた優先度とに基づき、新たに登録又は更新された前記チケットの優先度を推論する学習済みモデルを生成する学習工程と、
新たに登録又は更新された前記チケットについての前記チケットデータと、前記チケットデータに対応付けられる前記コメントデータと、前記学習済みモデルとに基づき、前記チケットの優先度を推論する推論工程とを有し、
前記推論工程は、
前記コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じて前記チケットの優先度についての第1の判定を行う第1判定工程と、
前記学習済みモデルを用いた推論により前記チケットの優先度についての第2の判定を行う第2判定工程と、
前記第1判定工程による第1の判定結果と、前記第2判定工程による第2の判定結果とに基づいて、前記チケットの優先度を判定する第3判定工程とを有する
優先度判定方法。
【請求項11】
コンピュータに、
一連の問い合わせごとに起票される電子的なチケットについての情報を含むチケットデータと、前記一連の問い合わせに含まれる個々のコメントについての情報及びいずれの前記チケットに対応付けられるかを示すチケット識別情報を含むコメントデータと、前記チケットごとに定められた優先度とに基づき、新たに登録又は更新された前記チケットの優先度を推論する学習済みモデルを生成する学習ステップと、
新たに登録又は更新された前記チケットについての前記チケットデータと、前記チケットデータに対応付けられる前記コメントデータと、前記学習済みモデルとに基づき、前記チケットの優先度を推論する推論ステップとを有し、
前記推論ステップは、
前記コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じて前記チケットの優先度についての第1の判定を行う第1判定ステップと、
前記学習済みモデルを用いた推論により前記チケットの優先度についての第2の判定を行う第2判定ステップと、
前記第1判定ステップによる第1の判定結果と、前記第2判定ステップによる第2の判定結果とに基づいて、前記チケットの優先度を判定する第3判定ステップとを実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優先度判定装置、学習装置、推論装置、優先度判定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルプデスク等の問い合わせに対応する業務では、対応する作業員の負荷を超える問い合わせが来た場合、処理すべき問い合わせが滞留してしまう場合がある。そこで、問い合わせを効率的に処理するために様々な工夫が行われている。問い合わせを効率的に処理するための工夫として、顧客からの問い合わせに対して、オペレータが自然な形での聞き返しに基づく対話により、回答を誘導しながら提示することを支援するための技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来技術によれば、問い合わせがあった文章について所定の解析ルールに基づいた構文解析及び意味解析を行うことにより、回答候補の抽出を行う。この場合、オペレータは、抽出された回答候補を用いて効率的に処理することが可能となるかもしれないが、オペレータの処理負荷を超える問い合わせがあった場合は、処理すべき問い合わせが滞留してしまうといった問題が発生する。そこで、優先度の高い問い合わせから処理を行いたいといった要望があった。
【0005】
そこで本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、問い合わせについて処理の優先度を判定することが可能な優先度判定装置、学習装置、推論装置、優先度判定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の一態様は、一連の問い合わせごとに起票される電子的なチケットについての情報を含むチケットデータと、前記一連の問い合わせに含まれる個々のコメントについての情報及びいずれの前記チケットに対応付けられるかを示すチケット識別情報を含むコメントデータと、前記チケットごとに定められた優先度とに基づき、新たに登録又は更新された前記チケットの優先度を推論する学習済みモデルを生成する学習部と、新たに登録又は更新された前記チケットについての前記チケットデータと、前記チケットデータに対応付けられる前記コメントデータと、前記学習済みモデルとに基づき、前記チケットの優先度を推論する推論部とを備え、前記推論部は、前記コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じて前記チケットの優先度についての第1の判定を行う第1判定部と、前記学習済みモデルを用いた推論により前記チケットの優先度についての第2の判定を行う第2判定部と、前記第1判定部による第1の判定結果と、前記第2判定部による第2の判定結果とに基づいて、前記チケットの優先度を判定する第3判定部とを備える優先度判定装置である。
【0007】
[2]また、本発明の一態様は、[1]に記載の優先度判定装置において、前記第1判定部により、前記コメントデータに所定のキーワードが含まれているとして前記第1の判定結果として前記チケットの優先度が判定された場合、前記第3判定部は前記第1判定部による前記第1の判定結果を前記チケットの優先度とするものである。
【0008】
[3]また、本発明の一態様は、[1]に記載の優先度判定装置において、前記第1判定部により、前記コメントデータに所定のキーワードが含まれているとして前記第1の判定結果として前記チケットの優先度が判定された場合、前記第3判定部は、前記第1判定部による前記第1の判定結果と前記第2判定部による前記第2の判定結果とのうち、優先度が高い方の判定結果を前記チケットの優先度とするものである。
【0009】
[4]また、本発明の一態様は、[1]から[3]のいずれかに記載の優先度判定装置において、前記コメントデータは、前記一連の問い合わせに含まれる個々のコメントが登録された時刻に関する情報を含み、前記チケットには、前記一連の問い合わせに含まれる個々のコメントが登録された時刻が異なる複数の前記コメントデータが対応付けられ、前記推論部は、前記チケットに対応する新たな前記コメントデータが登録されると、前記チケットの優先度を推論し、前記チケットの優先度を新たに推論された優先度に更新するものである。
【0010】
[5]また、本発明の一態様は、[1]から[4]のいずれかに記載の優先度判定装置において、前記学習済みモデルを学習させるための情報には、既に優先度が付与された情報と、優先度が付与されていない情報とが存在し、前記学習部は、優先度が付与されていない情報には、所定の規則に則り仮の優先度である仮優先度を付与し、付与された仮優先度に基づき前記学習済みモデルを学習させるものである。
【0011】
[6]また、本発明の一態様は、[5]に記載の優先度判定装置において、前記学習部は、前記コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じた仮優先度を付与するものである。
【0012】
[7]また、本発明の一態様は、[1]から[6]のいずれかに記載の優先度判定装置において、前記推論部は、推論により得られた前記チケットの優先度と、当該推論の根拠となった情報とを対応付けて推論結果情報として記憶させ、前記学習部は、前記推論結果情報が好適か否か判断された結果に基づいて再学習を行うものである。
【0013】
[8]また、本発明の一態様は、一連の問い合わせごとに起票される電子的なチケットについての情報を含むチケットデータと、前記一連の問い合わせに含まれる個々のコメントについての情報及びいずれの前記チケットに対応付けられるかを示すチケット識別情報を含むコメントデータと、前記チケットごとに定められた優先度とに基づき、新たに登録又は更新された前記チケットの優先度を推論する学習済みモデルを生成する学習装置であって、前記学習済みモデルを学習させるための情報には、既に優先度が付与された情報と、優先度が付与されていない情報とが存在し、優先度が付与されていない情報には、所定の規則に則り仮の優先度である仮優先度を付与し、付与された仮優先度に基づき前記学習済みモデルを学習させる学習装置である。
【0014】
[9]また、本発明の一態様は、一連の問い合わせごとに起票される電子的なチケットについての情報を含むチケットデータと、前記一連の問い合わせに含まれる個々のコメントについての情報及びいずれの前記チケットに対応付けられるかを示すチケット識別情報を含むコメントデータと、予め学習された学習済みモデルとに基づき、前記チケットごとに定められた優先度であって新たに登録又は更新された前記チケットの優先度を推論する推論装置であって、前記コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じて前記チケットの優先度についての第1の判定を行う第1判定部と、前記学習済みモデルを用いた推論により前記チケットの優先度についての第2の判定を行う第2判定部と、前記第1判定部による第1の判定結果と、前記第2判定部による第2の判定結果とに基づいて、前記チケットの優先度を判定する第3判定部とを備える推論装置である。
【0015】
[10]また、本発明の一態様は、一連の問い合わせごとに起票される電子的なチケットについての情報を含むチケットデータと、前記一連の問い合わせに含まれる個々のコメントについての情報及びいずれの前記チケットに対応付けられるかを示すチケット識別情報を含むコメントデータと、前記チケットごとに定められた優先度とに基づき、新たに登録又は更新された前記チケットの優先度を推論する学習済みモデルを生成する学習工程と、新たに登録又は更新された前記チケットについての前記チケットデータと、前記チケットデータに対応付けられる前記コメントデータと、前記学習済みモデルとに基づき、前記チケットの優先度を推論する推論工程とを有し、前記推論工程は、前記コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じて前記チケットの優先度についての第1の判定を行う第1判定工程と、前記学習済みモデルを用いた推論により前記チケットの優先度についての第2の判定を行う第2判定工程と、前記第1判定工程による第1の判定結果と、前記第2判定工程による第2の判定結果とに基づいて、前記チケットの優先度を判定する第3判定工程とを有する優先度判定方法である。
【0016】
[11]また、本発明の一態様は、コンピュータに、一連の問い合わせごとに起票される電子的なチケットについての情報を含むチケットデータと、前記一連の問い合わせに含まれる個々のコメントについての情報及びいずれの前記チケットに対応付けられるかを示すチケット識別情報を含むコメントデータと、前記チケットごとに定められた優先度とに基づき、新たに登録又は更新された前記チケットの優先度を推論する学習済みモデルを生成する学習ステップと、新たに登録又は更新された前記チケットについての前記チケットデータと、前記チケットデータに対応付けられる前記コメントデータと、前記学習済みモデルとに基づき、前記チケットの優先度を推論する推論ステップとを有し、前記推論ステップは、前記コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じて前記チケットの優先度についての第1の判定を行う第1判定ステップと、前記学習済みモデルを用いた推論により前記チケットの優先度についての第2の判定を行う第2判定ステップと、前記第1判定ステップによる第1の判定結果と、前記第2判定ステップによる第2の判定結果とに基づいて、前記チケットの優先度を判定する第3判定ステップとを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、問い合わせについて処理の優先度を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る優先度判定装置の機能構成を説明するためのブロック図である。
【
図2】実施形態に係るチケットデータに含まれる情報の一例について説明するための図である。
【
図3】実施形態に係るコメントデータに含まれる情報の一例について説明するための図である。
【
図4】実施形態に係るチケットデータ取得部の詳細な機能構成を説明するためのブロック図である。
【
図5】実施形態に係る学習部の詳細な機能構成を説明するためのブロック図である。
【
図6】実施形態に係る推論部の詳細な機能構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施形態]
本実施形態に係る優先度判定装置、学習装置、推論装置、優先度判定方法及びプログラムについて、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0020】
まず、本実施形態の前提となる事項について説明する。本実施形態に係る優先度判定装置、学習装置、推論装置、優先度判定方法及びプログラムは、ヘルプデスクやサービスデスク等の問い合わせに対応する業務を支援するために用いられる。ヘルプデスクやサービスデスク等は、例えば、製品や情報システム等についての技術的な問い合わせ等に対応する。問い合わせを行う者は、製品や情報システム等を利用するユーザであってもよいし、ヘルプデスクやサービスデスク等が設置された企業や組織等の従業員等であってもよい。
【0021】
ヘルプデスクやサービスデスク等の問い合わせに対応する業務では、オペレータがユーザや社員等からの様々な問い合わせに対応する。問い合わせの種類としては様々考えられるが、例えば、購入した製品の使用方法の問い合わせ、購入した製品が動作しない、導入したシステムが停止した、等を例示することができる。オペレータは、ユーザからどのような問い合わせがあったのか、それに対してどのように対応したのか、対応の結果としてユーザは満足したか等といった様々なノウハウを蓄積していく。
【0022】
ここで、オペレータの処理負荷を超える問い合わせがあった場合は、処理すべき問い合わせが滞留してしまうといった問題が発生する。処理すべき問い合わせが滞留してしまっているような場合、オペレータは、蓄積したノウハウに基づき問い合わせごとに優先度をつけて、優先度の高い問い合わせから処理を行っていく。優先度の高い問い合わせとは、例えばシステムが停止することにより顧客の業務が停止してしまうような場合や、問い合わせに直近の期限が定められている等の対応に緊急性を要する場合を例示することができる。従来、優先度の判定はオペレータのノウハウに基づいていたため、熟練のオペレータが不在の場合等には、優先度の高い問い合わせが埋もれてしまい、問い合わせを行う者の要求に適切に応えられない場合があった。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、本実施形態に係る優先度判定装置、学習装置、推論装置、優先度判定方法及びプログラムは、上述したような問題を解決するためのものである。
【0023】
図1は、実施形態に係る優先度判定装置の機能構成を説明するためのブロック図である。同図を参照しながら、優先度判定装置1の機能構成の一例について説明する。優先度判定装置1は、チケットデータ取得部11と、辞書メンテナンスUI12と、チケット優先度判定ルールメンテナンスUI13と、学習部14と、推論部15と、推論結果出力部UI16と、チケット・コメント情報記憶部21と、辞書記憶部22と、チケット優先度判定ルール記憶部23と、チケット優先度学習済みモデル24と、優先度判定結果データ優先度判定根拠データ記憶部25とを含んで構成される。これらの各機能部は、例えば、電子回路を用いて実現される。また、各機能部は、必要に応じて、半導体メモリや磁気ハードディスク装置などといった記憶手段を内部に備えてよい。また、各機能を、コンピュータおよびソフトウェアによって実現するようにしてもよい。また、各機能部は、単一の装置に含まれるものでなくてもよく、複数の装置から優先度判定装置1を構成するような態様であってもよい。
【0024】
チケットデータ取得部11は、チケット管理サービス3からチケットに関する情報を取得する。具体的には、チケットデータ取得部11は、チケット管理サービス3からチケットの追加や更新等に関する通知を取得し、取得した要求に基づいて、追加または更新されたチケットに関する情報を取得してもよい。チケット管理サービス3は、ヘルプデスクやサービスデスク等の問い合わせに対応する業務を行う者(以下、ヘルプデスク担当者と記載する)により管理される。ヘルプデスク担当者は、チケット管理サービス3に対しチケットの追加や更新を行う。ヘルプデスク担当者は、自己のノウハウに基づき、チケットごとに優先度を判定し、判定した優先度を入力する。ヘルプデスク担当者は、優先度判定装置1により判定された結果に基づいてチケットごとの優先度を判定し、判定した優先度を入力してもよい。
【0025】
ここで、本実施形態に係るチケットについて説明する。本実施形態に係るチケットとは、一連の問い合わせごとに起票される電子的なチケットである。本実施形態に係る優先度判定装置1が所定のシステムについてのヘルプデスクに適用される場合、チケットはインシデントごとに起票されるものであってもよい。当該チケットの詳細が含まれた情報を、チケットに関する情報と記載する。チケットに関する情報には、チケットデータと、コメントデータとが含まれる。チケットデータには、チケットについての書誌的な情報が含まれる。チケットデータには、1以上のコメントデータが対応付けられる。コメントデータには、一連の問い合わせに含まれる個々のコメントについての情報と、当該コメントデータがいずれのチケットに対応付けられるかを示すチケット識別情報とが含まれる。コメントデータに含まれる「一連の問い合わせに含まれる個々のコメント」とは、問い合わせ元からの情報と、当該問い合わせに対する応答の情報とが含まれる。
【0026】
コメントデータには、一連の問い合わせに含まれる個々のコメントが登録された時刻に関する情報(例えばタイムスタンプ等)が含まれていてもよい。1つのチケットには、問い合わせと、回答とが経時的に行われたやり取りに関する情報(すなわち1以上のコメントデータ)が対応付けられる。当該一連のやり取りをスレッドということもできる。1つのチケットに対応付けられる複数のコメントデータは、異なるタイムスタンプが付与されたものであってもよい。すなわちチケットには、一連の問い合わせ(一連のやり取り、又はスレッド)に含まれる個々のコメントが登録された時刻が異なる複数のコメントデータが対応付けられていてもよい。
【0027】
図2は、実施形態に係るチケットデータに含まれる情報の一例について説明するための図である。同図を参照しながら、チケットデータに含まれる情報の一例について説明する。同図には、フィールド名と、当該フィールド名に対応する情報の概要について示されている。具体的には、フィールド名として、“ID”と、“タイトル”と、“グループ”と、“担当者”と、“リクエスタ”と、“ステータス”と、“優先度”と、“作成日”と、“更新日”とが示されている。“ID”とは、チケットを識別するID(すなわちチケット識別情報)であり、コメントがいずれのチケットに対応付けられるかを特定するために用いられる。換言すれば、“ID”はチケットデータとコメントデータとの紐づけ(対応付け)に用いられる。“ID”は、連番で発行されることが好適である。“タイトル”とは、チケットのタイトルである。“タイトル”は、例えば問い合わせを行う者又はヘルプデスク担当者により任意に決定される。チケットは“ID”により識別されるため、複数のチケット間において“タイトル”が重複していてもよい。“グループ”とは、起票先グループの種類を示す。“グループ”とは、起票先を一意に特定するものであってもよい。すなわち、本実施形態に係る優先度判定装置1が複数のヘルプデスク等において使用される場合、“グループ”により起票先のヘプデスク等を特定することができる。“担当者”とは、チケットに対応する問い合わせに対応した者を特定するための情報である。チケットが起票された後、担当者が決定される前(すなわち担当者が未割り当ての場合)は、“担当者”は空欄であってもよい。チケットが起票された後、担当者が変更された場合は、“担当者”が更新されてもよい。“リクエスタ”とは、起票者名を示すものである“リクエスタ”は、一連の問い合わせ(一連のやり取り、又はスレッド)のうち、最初の問い合わせが行われた際の情報に基づき決定され、例えば問い合わせを行う者が氏名を記入しなかった場合等は、空欄であってもよい。“ステータス”とは、チケットのステータスを示すものである。“ステータス”は、例えば「新規」、「オープン」、「待機中」、「保留中」、「解決済」、「終了」のいずれかであってもよい。“優先度”とは、優先度判定装置1により判定された優先度である。“優先度”は、優先度判定装置1により判定された後、ヘルプデスク担当者により見直されたものであってもよい。“優先度”は、例えば、優先度が高い順に、「緊急」、「高」、「普通」、「低」のいずれかであってもよい。また、“優先度”は、優先度判定装置1により優先度が判定される前は空欄であってもよい。“作成日”は、チケットが作成された日時を特定するものであり、“更新日”は、チケットが最新の状態に更新された日時を特定するものである。“作成日”及び“更新日”は、いずれもYYYY/[M]M/[D]D [H]H:MM:SS(年/月/日 時:分:秒)のフォーマットで入力されていてもよい。
【0028】
なお、チケットデータには、図示した一例に含まれないその他の情報が含まれていてもよい。その他の情報としては、グループID、担当者ID、リクエスタID、期日、外部ID、チャネル、問い合わせ内容、受信者アドレス、作成者、作成者ID、組織、組織ID、CC、CC ID、タグ、重要度、対応期限、回答日、分類、完了日、参考情報の有無等の情報を例示することができる。
【0029】
図3は、実施形態に係るコメントデータに含まれる情報の一例について説明するための図である。同図を参照しながら、コメントデータに含まれる情報の一例について説明する。同図には、フィールド名と、当該フィールド名に対応する情報の概要について示されている。具体的には、フィールド名として、“チケットID”と、“コメントID”と、“コメント”と、“作成者”と、“閲覧範囲”と、“作成日”と、“添付リンク”とが示されている。“チケットID”とは、チケットを識別するIDであり、コメントがいずれのチケットに対応付けられるかを示す。“チケットID”はチケットデータとコメントデータとの紐づけ(対応付け)に用いられる。通常、チケットには、1以上のコメントが紐づけられている。“コメントID”とは、コメントを特定するための情報(すなわちコメント識別情報)である。“コメントID”は、13桁程度の整数であることが好適である。“コメント”とは、問い合わせを行う者が自由に記入可能(すなわちテキストの平打ちが可能)な情報である。“コメント”とは、一連の問い合わせ(一連のやり取り、又はスレッド)に含まれる個々のコメントについての情報ということもできる。“作成者”とは、コメントを作成した者(通常は、問い合わせを行う者)を識別するための情報である。“閲覧範囲”とは、当該コメントデータが、「通常返信」であるか、「特定返信」であるかを示す情報である。「通常返信」とは、当該コメントデータが通常の返信であり、問い合わせを行う者に対する返信であることを示す。「特定返信」とは、当該コメントデータが通常の返信とは異なり、問い合わせを行う者に対しての返信ではないことを示す。「特定返信」であるコメントデータは、特定の権限を持つ者のみ閲覧可能であって、起票者に見えない。「特定返信」のコメントデータは、例えば、ヘルプデスク内での、情報共有や、記憶のために用いられてもよい。“作成日”とは、コメントが作成された日時を特定するものである。“作成日”は、YYYY/[M]M/[D]D [H]H:MM:SS(年/月/日 時:分:秒)のフォーマットで入力されていてもよい。“添付リンク”は、添付リンク(URI)や、ファイル名等が示される。なお、コメントデータには、図示した一例に含まれないその他の情報が含まれていてもよい。
【0030】
図1に戻り、チケットデータ取得部11は、チケット管理サービス3からチケットデータやコメントデータを取得する。チケットデータ取得部11は、取得したチケットデータやコメントデータをチケット・コメント情報記憶部21に記憶させる。チケット・コメント情報記憶部21は、チケットデータやコメントデータ等が記憶されるデータベースである。チケット・コメント情報記憶部21に記憶された情報は、学習部14、推論部15及び推論結果出力部UI16等により参照され、処理に用いられる。チケットデータ取得部11は、チケット管理サービス3からチケットデータやコメントデータを取得すると、学習部14に対して学習要求を行ってもよい。
【0031】
辞書メンテナンスUI(ユーザーインターフェース)12は、辞書のメンテナンスを行う。本実施形態に係る辞書とは、学習部14により学習が行われる際に、コメントに書かれているテキストを好適に処理するためのものである。辞書メンテナンスUI12は、ヘルプデスクやサービスデスク等において、辞書のメンテナンスを行う者(以下、辞書メンテナンス担当者と記載する)により管理される。辞書メンテナンス担当者は、ヘルプデスク担当者と同一であってもよい。辞書メンテナンスUI12は、辞書メンテナンス担当者の操作に応じて、辞書記憶部22に記憶された情報を参照し、辞書記憶部22に記憶された情報を更新する。辞書記憶部22には、辞書情報が記憶される。辞書記憶部22に記憶された情報は、学習部14により参照され、処理に用いられる。また、辞書メンテナンスUI12は、辞書記憶部22が更新されると、学習部14に対して学習要求を行ってもよい。
【0032】
チケット優先度判定ルールメンテナンスUI(ユーザーインターフェース)13は、チケット優先度判定ルールのメンテナンスを行う。本実施形態に係るチケット優先度判定ルールとは、コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じてチケットの優先度を判定する際に用いられるルールである。以下の説明において、コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じてチケットの優先度を判定することを、静的な判定、又は第1の判定と記載する場合がある。チケット優先度判定ルールには、例えばキーワードと、当該キーワードが含まれている場合の優先度等が対応付けられていてもよい。キーワードと、当該キーワードが含まれている場合の優先度等についての情報は、チケット優先度判定ルール記憶部23に記憶される。チケット優先度判定ルールメンテナンスUI13は、ヘルプデスクやサービスデスク等において、チケット優先度判定ルールのメンテナンスを行う者(以下、チケット優先度判定ルールメンテナンス担当者と記載する)により管理される。チケット優先度判定ルールメンテナンス担当者は、辞書メンテナンス担当者や、ヘルプデスク担当者と同一であってもよい。チケット優先度判定ルールメンテナンスUI13は、チケット優先度判定ルールメンテナンス担当者の操作に応じて、チケット優先度判定ルール記憶部23に記憶された情報を参照し、チケット優先度判定ルール記憶部23に記憶された情報を更新する。チケット優先度判定ルール記憶部23に記憶された情報は、学習部14により参照され、処理に用いられる。また、チケット優先度判定ルールメンテナンスUI13は、チケット優先度判定ルール記憶部23が更新されると、学習部14に対して学習要求を行ってもよい。
【0033】
学習部14は、チケットデータ取得部11、辞書メンテナンスUI12又はチケット優先度判定ルールメンテナンスUI13からの学習要求等に応じて、チケット優先度学習済みモデル24を学習させる。チケット優先度学習済みモデル24は、単に学習済みモデルと記載する場合がある。また、チケット優先度学習済みモデル24を学習させることを、チケット優先度学習済みモデル24を生成すると記載する場合がある。学習部14は、チケット・コメント情報記憶部21に記憶されたチケットデータと、コメントデータと、チケットごとに定められた優先度とに基づき(換言すれば、チケットデータと、コメントデータと、チケットごとに定められた優先度とを教師データとして)、新たに登録又は更新されたチケットの優先度を推論するようチケット優先度学習済みモデル24を学習させる。ここで、教師データとは、学習するときに利用するデータであって、その教師データの特徴や基準をAIが学び、それに基づき新しく入ってきたデータを分類したり情報を付与したりするためのデータをいう。優先度は、ヘルプデスク担当者により判定されたものであってもよいし、優先度判定装置1により判定されたものであってもよい。学習部14は、学習が完了した旨の通知や、学習した結果等を推論部15に出力する。なお、以下の説明において、学習部14のことを学習装置と記載する場合がある。
【0034】
推論部15は、新たに登録又は更新されたチケットについての優先度を推論する。推論部15は、例えばチケットに対応する新たなコメントデータが登録されること等をトリガとして、チケットの優先度を推論する。推論部15は、チケットの優先度が予め登録されている場合には、新たに推論された優先度に更新してもよい。推論部15は、チケット・コメント情報記憶部21を参照することにより、チケットデータとチケットデータに対応付けられるコメントデータに基づき、またチケット優先度学習済みモデル24を参照することにより学習済みモデルに基づき、チケットの優先度を推論する。推論部15は、優先度を判定した結果と、優先度を判定した根拠について、優先度判定結果データ優先度判定根拠データ記憶部25に記憶させる。以下の説明において、推論部15のことを推論装置と記載する場合がある。
【0035】
推論結果出力部UI(ユーザーインターフェース)16は、推論結果の出力を行う。具体的には、推論結果出力部UI16は、チケット・コメント情報記憶部21及び優先度判定結果データ優先度判定根拠データ記憶部25を参照することにより、推論結果の出力を行う。推論結果出力部UI16は、ヘルプデスク担当者等により管理される。ヘルプデスク担当者は、推論結果出力部UI16により出力された推論結果の閲覧を行い、推論結果の評価を行う。すなわち、ヘルプデスク担当者は、優先度判定装置1により判定された優先度が正しいか否かの判定を行う。ヘルプデスク担当者は、優先度判定装置1により判定された優先度が正しくない場合、正しくない優先度を正しい優先度に更新してもよい。推論結果出力部UI16は、優先度を判定した結果(またはヘルプデスク担当者により更新された優先度)を、チケット管理サービス3に通知し、チケット情報を更新する。また、推論結果出力部UI16は、優先度の高いチケットに関する情報更新があった場合、情報をチャットツール4に出力する。チャットツール4とは、ヘルプデスク等で用いられるコミュニケーションツール等であってもよい。チャットツール4は、ヘルプデスク担当者等による情報共有のために用いられるものであってもよい。
【0036】
図4は、実施形態に係るチケットデータ取得部の詳細な機能構成を説明するためのブロック図である。同図を参照しながら、チケットデータ取得部11の詳細な機能構成の一例について説明する。チケットデータ取得部11は、チケット更新管理サービス111と、タイマー112と、チケット情報取得部113と、チケット・コメント情報記憶部114とを含んで構成される。これらの各機能部は、例えば、電子回路を用いて実現される。また、各機能部は、必要に応じて、半導体メモリや磁気ハードディスク装置などといった記憶手段を内部に備えてよい。また、各機能を、コンピュータおよびソフトウェアによって実現するようにしてもよい。
【0037】
チケット更新管理サービス111は、チケット管理サービス3から、チケットの追加や、チケットの更新等についての通知を取得する。当該追加や更新等についての通知は、チケット更新管理サービス111からの追加や更新等の確認に基づいて行われてもよい。当該追加や更新等の確認は、後述するタイマー112からの通知に基づいて行われてもよいし、チケット管理サービス3からの通知に基づいて行われてもよい。当該追加や更新等の確認は、優先度判定装置1が取り扱うチケットに関する情報(チケットデータ及びコメントデータ)をシステム内部に同期するために行われる。チケット更新管理サービス111は、チケット管理サービス3からチケットの追加やチケットの更新等についての通知を取得すると、チケット情報取得部113に対してチケットに関する情報の取得要求を出力する。
【0038】
タイマー112は、所定の時間間隔でチケット更新管理サービス111に対して通知を行う。当該通知は、チケット管理サービス3に対して追加や更新等の確認を要求するものである。
【0039】
チケット情報取得部113は、チケット更新管理サービス111からチケットに関する情報の取得要求を取得すると、チケット管理サービス3に対して追加又は更新されたチケットに関する情報の取得を行う。チケット情報取得部113は、チケット管理サービス3から取得したチケットに関する情報を、チケット・コメント情報記憶部114に記憶させる。なお、チケット・コメント情報記憶部114は、チケット・コメント情報記憶部21と同一であってもよい。
【0040】
図5は、実施形態に係る学習部の詳細な機能構成を説明するためのブロック図である。同図を参照しながら、学習部14の詳細な機能構成の一例について説明する。学習部14は、学習メインエンジン141と、チケット優先度判定ルールエンジン142と、学習データ前処理エンジン143と、仮優先度つきチケット・コメント情報記憶部144とを含んで構成される。これらの各機能部は、例えば、電子回路を用いて実現される。また、各機能部は、必要に応じて、半導体メモリや磁気ハードディスク装置などといった記憶手段を内部に備えてよい。また、各機能を、コンピュータおよびソフトウェアによって実現するようにしてもよい。
【0041】
学習メインエンジン141は、チケット優先度判定ルールエンジン142及び学習データ前処理エンジン143に対して実行指示を行う。学習メインエンジン141は、例えばチケットデータ取得部11、辞書メンテナンスUI12又はチケット優先度判定ルールメンテナンスUI13からの学習要求等に応じて、チケット優先度判定ルールエンジン142及び学習データ前処理エンジン143に対して実行指示を行う。
【0042】
チケット優先度判定ルールエンジン142は、学習メインエンジン141からの実行指示に基づき、チケット優先度学習済みモデル24を学習させるための準備を行う。具体的には、チケット優先度判定ルールエンジン142は、チケット・コメント情報記憶部21に記憶された情報に基づき、チケットと優先度が対応付けられた情報を仮優先度つきチケット・コメント情報記憶部144に出力する。ここで、チケット・コメント情報記憶部21に記憶された情報には、既に優先度が付与されたチケットと、未だ優先度が付与されていないチケットが存在する。例えば優先度判定装置1の対象となるヘルプデスクが5年間運用されている場合、チケット・コメント情報記憶部21には5年分のチケットに関する情報が記憶されている。チケット・コメント情報記憶部21に記憶されているチケットに関する情報には、チケットを処理した当時、ヘルプデスク担当者が付与した優先度が付与されている場合もあるし、付与されていない場合もある。また、優先度判定装置1により優先度が既に付与されている場合もある。すなわち、チケット優先度学習済みモデル24を学習させるための情報には、既に優先度が付与された情報と、優先度が付与されていない情報とが存在する。チケット優先度判定ルールエンジン142は、チケット優先度判定ルール記憶部23を参照することにより、優先度が付与されていないチケットについて仮の優先度を付与する。チケット優先度判定ルールエンジン142は、仮の優先度と、チケットとを対応付けた情報を仮優先度つきチケット・コメント情報記憶部144に記憶させる。すなわち、本実施形態に係る学習部14は、優先度が付与されていない情報には、所定の規則に則り仮の優先度である仮優先度を付与し、付与された仮優先度に基づきチケット優先度学習済みモデル24を学習させるということができる。
【0043】
仮優先度を付与するための所定の規則とは、例えばチケット優先度判定ルール記憶部23に記憶されたキーワードと優先度とに基づくものであってもよい。例えば、チケット優先度判定ルールエンジン142は、チケットに対応付けられるコメントの中に、チケット優先度判定ルール記憶部23に記憶されたキーワードが存在するか否かを検索し、キーワードが存在する場合には、当該キーワードに対応する優先度を付与する。すなわち、本実施形態に係る学習部14は、コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じた仮優先度を付与するということもできる。
【0044】
学習データ前処理エンジン143は、辞書記憶部22を参照し、仮優先度つきチケット・コメント情報記憶部144に記憶された情報を、学習に適した情報に変換する。学習データ前処理エンジン143は、チケット優先度学習済みモデル24の学習のためのアノテーションを行うということもできる。学習データ前処理エンジン143は、アノテーションを行った情報をチケット優先度学習済みモデル24に出力し、チケット優先度学習済みモデル24を学習させる。
【0045】
図6は、実施形態に係る推論部の詳細な機能構成を説明するためのブロック図である。同図を参照しながら、推論部15の詳細な機能構成の一例について説明する。推論部15は、推論メインエンジン151と、チケット優先度判定ルールエンジン152と、優先度推論エンジン153と、判定結果マージエンジン154と、ルール優先度情報記憶部155と、AI優先度情報記憶部156とを含んで構成される。これらの各機能部は、例えば、電子回路を用いて実現される。また、各機能部は、必要に応じて、半導体メモリや磁気ハードディスク装置などといった記憶手段を内部に備えてよい。また、各機能を、コンピュータおよびソフトウェアによって実現するようにしてもよい。
【0046】
推論メインエンジン151は、チケット優先度判定ルールエンジン152、優先度推論エンジン153及び判定結果マージエンジン154に対して実行指示を行う。推論メインエンジン151は、例えばチケット・コメント情報記憶部21にチケットが新たに登録又は更新されたこと等に応じてチケット優先度判定ルールエンジン152、優先度推論エンジン153及び判定結果マージエンジン154に対して実行指示を行う。
【0047】
チケット優先度判定ルールエンジン152は、推論メインエンジン151からの実行指示に基づき、チケットの優先度についての静的な判定(又は第1の判定)を行う。チケットの優先度についての静的な判定とは、例えばコメントデータに含まれる所定のキーワードに応じた判定である。具体的には、静的な判定とは、コメントデータに所定のキーワードが含まれている場合、キーワードに応じて予め設定された優先度を付与するといった判定である。静的な判定とは、人によって定義されたルールであるということもできる。チケット優先度判定ルールエンジン152は、チケット優先度判定ルール記憶部23に記憶されたルールを参照することにより静的な判定を行う。チケット優先度判定ルールエンジン152は、静的な判定を行った結果を、ルール優先度情報記憶部155に出力する。なお、チケット優先度判定ルールエンジン152を第1判定部と記載する場合がある。推論部15が備えるチケット優先度判定ルールエンジン152は、学習部14が備えるチケット優先度判定ルールエンジン142と同一であってもよい。
【0048】
ここで、チケット優先度判定ルール記憶部23に記憶されたルールは、例えばエラーコードや、エラーの内容、又は回答納期等が特定できる場合に、所定の優先度とするものである。すなわち、チケット優先度判定ルール記憶部23に記憶されたルールによれば、優先度を付与するための根拠が明確である。しかしながら、コメントデータにエラーコードや納期が明記されていなかったり、フリーで打ち込まれたテキストデータからエラーの内容や納期等が特定できなかったりする場合等もあるため、チケット優先度判定ルール記憶部23に記憶されたルールは、表記の揺れに弱いということができる。コメントデータに所定のキーワードが含まれていない場合、第1の判定結果は、例えば最も優先度が低いものとして判定されてもよいし、判定結果を無しとしてもよい。
【0049】
優先度推論エンジン153は、推論メインエンジン151からの実行指示に基づき、推論メインエンジン151からの実行指示に基づき、チケットの優先度についての動的な判定(又は第2の判定)を行う。チケットの優先度についての動的な判定とは、チケット優先度学習済みモデル24を用いた推論による判定である。静的なルールとは、機械学習アルゴリズムに基づいて生成されたモデル自体であるということもできる。また、動的な判定とは、AIによって定義されたルールであるということもできる。優先度推論エンジン153は、チケット優先度学習済みモデル24を用いて静的な判定を行った結果を、AI優先度情報記憶部156に出力する。なお、優先度推論エンジン153を第2判定部と記載する場合がある。優先度推論エンジン153は、機械学習により推論を行うため、第2の判定結果が無しとなることはなく、優先度推論エンジン153により何らかの判定結果を得ることができる。
【0050】
判定結果マージエンジン154は、推論メインエンジン151からの実行指示に基づき、チケットの優先度についての最終的な判定(又は第3の判定)を行う。チケットの優先度についての最終的な判定とは、チケット優先度判定ルールエンジン152による第1の判定結果と、優先度推論エンジン153による第2の判定結果とに基づいた判定である。判定結果マージエンジン154は、ルール優先度情報記憶部155に記憶された情報、及びAI優先度情報記憶部156に記憶された情報を参照することにより、最終的な判定を行う。判定結果マージエンジン154は、最終的な判定を行った結果を、辞書記憶部22及び優先度判定結果データ優先度判定根拠データ記憶部25に出力する。なお、判定結果マージエンジン154を第3判定部と記載する場合がある。
【0051】
最終的な判定の一例としては、例えば静的な判定による結果を優先させることであってもよい。チケット優先度判定ルールエンジン152により、コメントデータに所定のキーワードが含まれているとしてチケットの優先度が判定された場合、判定の根拠がはっきりしているため、信頼性が高い場合が多い。したがってこのような場合、判定結果マージエンジン154は、チケット優先度判定ルールエンジン152による第1の判定結果をチケットの優先度としてもよい。
【0052】
また、最終的な判定の他の一例としては、例えば優先度が高い方を優先させることであってもよい。チケット優先度判定ルールエンジン152により、コメントデータに所定のキーワードが含まれていないとして第1の判定結果が得られなかった場合、判定結果マージエンジン154は、第2の判定結果を、そのまま第3の判定結果としてもよい。しかしながらチケット優先度判定ルールエンジン152により、コメントデータに所定のキーワードが含まれているとしてチケットの優先度が判定された場合、第1の判定結果及び第2の判定結果をいずれも得ることができる。このような場合、対応を安全側にするため、判定結果マージエンジン154は、第1の判定結果と第2の判定結果とのうち、優先度が高い方の判定結果をチケットの優先度としてもよい。
【0053】
なお、優先度判定装置1は、推論部15による推論の結果に基づいた再学習を行ってもよい。推論結果は優先度判定結果データ優先度判定根拠データ記憶部25に記憶されているため、優先度判定装置1は、優先度判定結果データ優先度判定根拠データ記憶部25に記憶された情報、又は優先度判定結果データ優先度判定根拠データ記憶部25をヘルプデスク担当者が確認した情報に基づき、再学習を行ってもよい。再学習を行う場合、推論部15は、推論により得られたチケットの優先度と、当該推論の根拠となった情報とを対応付けて推論結果情報として優先度判定結果データ優先度判定根拠データ記憶部25に記憶させる。優先度判定結果データ優先度判定根拠データ記憶部25に記憶された推論結果情報は、ヘルプデスク担当者により好適か否かが判断される。学習部14は、推論結果情報が好適か否か判断された結果に基づいて再学習を行う。
【0054】
なお、判定結果マージエンジン154は、最終的な判定を行った結果、対応が完了していないチケットについて、優先度順のチケットリストを作成し、作成したリストを出力してもよい。ヘルプデスク担当者は、出力された優先度順のチケットリストに基づき、優先度の高いチケットから対応することができる。
【0055】
[実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、優先度判定装置1は、学習部14を備えることにより、チケットデータと、チケット識別情報を含むコメントデータと、チケットごとに定められた優先度とに基づき、チケット優先度学習済みモデル24を生成する。チケット優先度学習済みモデル24は、新たに登録又は更新されたチケットの優先度を推論するための学習済みモデルである。また、優先度判定装置1は、推論部15を備えることにより、新たに登録又は更新されたチケットについてのチケットデータと、当該チケットデータに対応付けられるコメントデータと、チケット優先度学習済みモデル24とに基づき、チケットの優先度を推論する。また、推論部15は、チケット優先度判定ルールエンジン152を備えることによりコメントデータに含まれる所定のキーワードに応じてチケットの優先度についての第1の判定を行い、優先度推論エンジン153を備えることによりチケット優先度学習済みモデル24を用いた推論によりチケットの優先度についての第2の判定を行い、判定結果マージエンジン154を備えることにより第1判定部による第1の判定結果と第2判定部による第2の判定結果とに基づいてチケットの優先度についての最終的な判定を行う。すなわち、優先度判定装置1によれば、人為的なルールに基づいた静的な判定と、AIによる動的な判定とに基づいて総合的に優先度を判定する。したがって、優先度判定装置1によれば、ヘルプデスク等に問い合わせがあった場合、問い合わせについて好適な処理の優先度を判定することができる。したがって、本実施形態によれば、ヘルプデスク等においてオペレータの処理負荷を超える問い合わせがあったこと等により処理すべき問い合わせが滞留してしまった場合であっても、優先度判定装置1により判定された優先度に基づいて、優先度の高い問い合わせから順に処理を行うことで、優先的に対応すべき問い合わせの取りこぼしを防ぐことができる。また、本実施形態によれば、優先的に対応すべき問い合わせの取りこぼしを防ぐことができるため、対象のシステムを利用する顧客の離脱を防止することができ、結果として、ビジネス上のリスクを低減することができる。
【0056】
ここで、問い合わせによっては、チケットの内容(問い合わせを行う者によるコメントの記載内容)が十分であり、静的な判定のみにより十分に優先度を判定することができる場合がある。チケットの内容が十分な場合とは、例えばエラーコードや納期等が明記されているような場合である。しかしながら、「今週中に、今すぐに」等の納期を示すキーワードや、「システムが停止しています、動作不可能です」等の致命的な状態を示すキーワードは、言葉の揺らぎにより静的な判定では拾いきれない場合がある。本実施形態によれば、静的な判定と併せて動的な判定を行うことにより、精度よく優先度を判定することができる。
【0057】
また、本実施形態とは異なる態様として静的な判定を組み込んだ学習済みモデルを生成することも考えられる。しかしながら、動的な判定のみによれば、判定の精度が上がらない(すなわち誤判定をしてしまう)場合がある。判定の精度を上げるためにはAIをチューニングしていく必要があるが、AIのチューニングには時間を要し、すぐに実用レベルに達することは容易でない。換言すれば、精度の良い学習済みモデルを用意するには学習のための時間を要する。本実施形態によれば、補助的に静的な判定を取り入れることにより、学習のための時間を要することなく期待値に近い判定結果に引き上げていくことができる。
【0058】
また、問い合わせを行う者(優先度判定装置1が適用されるヘルプデスク等の顧客)によっては、質問の仕方が上手い場合もあり、逆に下手な場合もある。質問の仕方が上手い場合とは、例えば最初の問い合わせ時にエラーコードや納期等を明記して、状況を的確に提示するような場合である。このような場合、最初の問い合わせで適切な優先度を判定することができる。一方、質問の仕方が下手な場合とは、最初の問い合わせ時には困っていることのみを伝え、状況を聞き出すための質問(例えば、エラーコードの問い合わせ)等をしなければ、状況を的確に把握できないような場合である。このような場合、最初の問い合わせでは適切な優先度を判定することができず、何度かやり取りを重ねた結果、ようやく優先度が判明する。本実施形態による優先度判定装置1は、チケットの更新ごとに推論が行われるため、状況を的確に判断できた段階において、適切な優先度を適用することができる。
【0059】
また、上述した実施形態によれば、優先度判定装置1の判定結果マージエンジン154は、静的な判定を優先し、最終的な判定としてもよい。具体的には、チケット優先度判定ルールエンジン152により、コメントデータに所定のキーワードが含まれているとして第1の判定結果としてチケットの優先度が判定された場合、判定結果マージエンジン154は、チケット優先度判定ルールエンジン152による第1の判定結果をチケットの優先度としてもよい。第1の判定結果は、人によって定義されたルールに基づく判定結果であり、AIによる判定結果と比較して判定の根拠がはっきりしている。したがって、優先度判定装置1は、静的な判定を優先することにより、明確な判定根拠に基づいた優先度の判定をすることができる。明確な判定根拠に基づいた優先度は、誤判定である場合が少ない、したがっても本実施形態によれば、AIによる誤判定を抑止することができる。
【0060】
また、上述した実施形態によれば、優先度判定装置1の判定結果マージエンジン154は、優先度が高い方を優先し、最終的な判定としてもよい。具体的には、チケット優先度判定ルールエンジン152により、コメントデータに所定のキーワードが含まれているとして第1の判定結果としてチケットの優先度が判定された場合、判定結果マージエンジン154は、チケット優先度判定ルールエンジン152による第1の判定結果と優先度推論エンジン153による第2の判定結果とのうち、優先度が高い方の判定結果をチケットの優先度としてもよい。ここで、第1の判定結果と、第2の判定結果とが異なり、いずれか一方において優先度が高いと判定される場合がある。この場合、実際には優先度が高いにもかかわらず、優先度を低く判定してしまうことは危険である。したがって、本実施形態によれば、対応を安全側にすることにより、優先的に対応すべき問い合わせの取りこぼしを抑止することができる。
【0061】
また、本実施形態に係るコメントデータは、一連の問い合わせに含まれる個々のコメントが登録された時刻に関する情報を含む。また、本実施形態に係るチケットには、一連の問い合わせに含まれる個々のコメントが登録された時刻が異なる複数のコメントデータが対応付けられる。推論部15は、チケットに対応する新たなコメントデータが登録されると、チケットの優先度を推論し、チケットの優先度を新たに推論された優先度に更新する。すなわち、本実施形態によれば、時間の経過とともにチケットが更新されていく。ここで、本実施形態による優先度判定装置1は、ヘルプデスク等の問い合わせに対応する業務に適用される。ヘルプデスク等の問い合わせに対応する業務では、1つのチケットに対応するコメントが、時間の経過とともに増えていくという特徴を有する。最初のコメントでは優先度が低いと判定された場合であっても、時間の経過とともに優先度が高くなっていく場合がある。本実施形態による優先度判定装置1は、チケットの更新ごとに推論が行われるため、コメントの追加に伴い、適切な優先度を適用することができる。
【0062】
また、上述した実施形態によれば、チケット優先度学習済みモデル24を学習させるための情報には、既に優先度が付与された情報と、優先度が付与されていない情報とが存在する。これは、チケット管理サービス3には、優先度判定装置1が適用される前における過去の情報が含まれているためである。過去の情報には、ヘルプデスク担当者により優先度が付与されて記憶されているものと、優先度が付与されていないものがある。また、ヘルプデスク担当者等の者は、学習のために過去のチケットに優先度を付与してもよい。学習部14は、優先度が付与されていない情報には、所定の規則に則り仮の優先度である仮優先度を付与し、付与された仮優先度に基づきチケット優先度学習済みモデル24を学習させる。したがって、本実施形態によれば、過去のチケットに基づいた学習を行うことができる。また、過去にヘルプデスク担当者が実際に付与した優先度に基づいた学習を行うことができる。
【0063】
また、上述した実施形態によれば、学習部14は、コメントデータに含まれる所定のキーワードに応じた仮優先度を付与する。すなわち、学習部14は、静的な判定ルールに基づいて仮優先度を付与する。静的な判定ルールに基づく優先度の付与とは、例えば所定のキーワードが含まれているか否かを判定し、キーワードに対応する優先度を付与することである。静的な判定ルールに基づいて仮優先度を付与することは、複雑なアルゴリズムを要することなく、容易である。したがって、本実施形態によれば、容易に仮優先度を付与することができる。
【0064】
また、上述した実施形態によれば、優先度判定装置1は、判定した優先度をヘルプデスク担当者等が確認した結果に基づき再学習を行う。具体的には、推論部15は、推論により得られたチケットの優先度と、当該推論の根拠となった情報とを対応付けて推論結果情報として優先度判定結果データ優先度判定根拠データ記憶部25に記憶させ、学習部14は、ヘルプデスク担当者等により推論結果情報が好適か否か判断された結果に基づいて再学習を行う。ここで、優先度判定装置1による優先度の判定が適切でないような場合が考えられる。本実施形態によれば、優先度判定装置1による優先度の判定が適切でないような場合であっても、ヘルプデスク担当者等が実際に確認して訂正した優先度に基づいて再学習を行うことにより、判定精度を上げていくことができる。
【0065】
また、上述した実施形態によれば、学習装置は、チケットデータと、チケット識別情報を含むコメントデータと、チケットごとに定められた優先度とに基づき、チケット優先度学習済みモデル24を生成する。チケット優先度学習済みモデル24は、新たに登録又は更新されたチケットの優先度を推論するための学習済みモデルである。ここで、チケット優先度学習済みモデル24を学習させるための情報には、既に優先度が付与された情報と、優先度が付与されていない情報とが存在する。学習装置は、優先度が付与されていない情報には、所定の規則に則り仮の優先度である仮優先度を付与し、付与された仮優先度に基づきチケット優先度学習済みモデル24を学習させる。したがって、本実施形態によれば、過去のチケットに基づいた学習を行うことができる。また、過去にヘルプデスク担当者が実際に付与した優先度に基づいた学習を行うことができる。
【0066】
また、上述した実施形態によれば、推論装置は、チケットデータと、新たに登録又は更新されたチケットについてのチケットデータと、当該チケットデータに対応付けられるコメントデータと、チケット優先度学習済みモデル24とに基づき、チケットの優先度を推論する。推論装置は、チケット優先度判定ルールエンジン152を備えることによりコメントデータに含まれる所定のキーワードに応じてチケットの優先度についての第1の判定を行い、優先度推論エンジン153を備えることによりチケット優先度学習済みモデル24を用いた推論によりチケットの優先度についての第2の判定を行い、判定結果マージエンジン154を備えることにより第1判定部による第1の判定結果と第2判定部による第2の判定結果とに基づいてチケットの優先度についての最終的な判定を行う。すなわち、優先度判定装置1によれば、人為的なルールに基づいた静的な判定と、AIによる動的な判定とに基づいて優先度を判定する。したがって、優先度判定装置1によれば、ヘルプデスク等に問い合わせがあった場合、問い合わせについて処理の優先度を判定することができる。したがって、本実施形態によれば、ヘルプデスク等においてオペレータの処理負荷を超える問い合わせがあった場合であって、処理すべき問い合わせが滞留してしまった場合であっても、優先度判定された優先度に基づいて、優先度の高い問い合わせから順に処理を行うことで、優先的に対応すべき問い合わせの取りこぼしを防ぐことができる。本実施形態によれば、優先的に対応すべき問い合わせの取りこぼしを防ぐことができるため、対象のシステムを利用する顧客の離脱を防止することができ、結果として、ビジネス上のリスクを低減することができる。
【0067】
なお、上述した実施形態における優先度判定装置1が備える各装置、及び各装置が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0068】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…優先度判定装置、3…チケット管理サービス、4…チャットツール、11…チケットデータ取得部、12…辞書メンテナンスUI、13…チケット優先度判定ルールメンテナンスUI、14…学習部、15…推論部、16…推論結果出力部UI、21…チケット・コメント情報記憶部、22…辞書記憶部、23…チケット優先度判定ルール記憶部、24…チケット優先度学習済みモデル、25…優先度判定結果データ優先度判定根拠データ記憶部、111…チケット更新管理サービス、112…タイマー、113…チケット情報取得部、114…チケット・コメント情報記憶部、141…学習メインエンジン、142…チケット優先度判定ルールエンジン、143…学習データ前処理エンジン、144…仮優先度つきチケット・コメント情報記憶部、151…推論メインエンジン、152…チケット優先度判定ルールエンジン、153…優先度推論エンジン、154…判定結果マージエンジン、155…ルール優先度情報記憶部、156…AI優先度情報記憶部