(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092518
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】マイクロモビリティ及びマイクロモビリティの運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20240701BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B60W30/08
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208506
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】坂田 優
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 功介
(72)【発明者】
【氏名】下郷 直隆
(72)【発明者】
【氏名】土方 武
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA33
3D241BA60
3D241BB41
3D241CA14
3D241CE04
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB20Z
3D241DC31Z
3D241DC33Z
3D241DC41Z
3D241DC58Z
3D241DD12Z
5H181AA05
5H181CC04
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】ユーザの安全に配慮したマイクロモビリティ及びマイクロモビリティの運転支援装置を提供すること。
【解決手段】本開示に係るマイクロモビリティ100は、マイクロモビリティの進行方向にある障害物を検知する第1検出部111と、マイクロモビリティの走行状況を検出する第2検出部112と、第1検出部の検知結果及び走行状況に基づき、マイクロモビリティが走行する道路の混雑度を判定する判定部113と、道路の混雑度に基づき、マイクロモビリティの走行状況を変更する誘導案内をユーザに対して行う通知部114と、ユーザが誘導案内へのユーザの対応状況に応じて、マイクロモビリティの速度制御を行う制御部115と、を備えるものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロモビリティの進行方向にある障害物を検知する第1検出部と、
前記マイクロモビリティの走行状況を検出する第2検出部と、
前記第1検出部の検知結果及び前記走行状況に基づき、前記マイクロモビリティが走行する道路の混雑度を判定する判定部と、
前記道路の混雑度に基づき、前記マイクロモビリティの前記走行状況を変更する誘導案内をユーザに対して行う通知部と、
前記誘導案内への前記ユーザの対応状況に応じて、前記マイクロモビリティの走行制御を行う制御部と、を備える
マイクロモビリティの運転支援装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記マイクロモビリティが歩道/車道のどちらを走行している状況かを判定し、
前記通知部が行う前記誘導案内は、前記マイクロモビリティが歩道/車道の一方を走行している時に、歩道/車道の他方に移行するよう指示するものである
請求項1に記載のマイクロモビリティの運転支援装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記マイクロモビリティ又は前記ユーザが前記障害物と接触する可能性を含めて前記道路の混雑度を判定する
請求項1に記載のマイクロモビリティの運転支援装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ユーザが前記誘導案内への反応が遅れた、或いは前記誘導案内に応じなかった場合において、前記マイクロモビリティを減速させる
請求項1に記載のマイクロモビリティの運転支援装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロモビリティの運転支援装置を備える
マイクロモビリティ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロモビリティ及びマイクロモビリティの運転支援装置に関し、特に歩道/車道の両方を走行可である動力付きマイクロモビリティ及びマイクロモビリティの運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、進行方向を検知し走行障害物であるか否かを判定し、走行障害物であると判定すると警告部によりブレーキ機構や電動モータを制御して減速などを行う一人用電動車の運転支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の一人用電動車は、一般的には車道ではなく歩道を通行することを想定したものである。近年、動力付きマイクロモビリティの普及が進んでおり、例えば電動キックボードでは保安部品などを装備したものについて車道の走行が認められている。
【0005】
電動キックボードでは、利便性をさらに高めるべく歩道と車道の双方を走行することを考慮したものが検討され、歩道走行と車道走行で走行速度の上限を変える走行モードやその走行モードを周囲に報知する仕組み、実運用に向けての法整備などが進められている。
【0006】
車道を走行する車両における自動ブレーキシステムであったり、特許文献1に開示される歩道を走行する一人用電動車の運転支援装置であったり、歩道/車道のどちらか一方を走行する車両の安全性に関する開発は進んでいる。
【0007】
しかしながら、歩道走行と車道走行においては、走行速度の差や、道路環境などの整備状況、また、走行の妨げとなる障害物の種類が異なるなど、走行状況は大きく異なる。したがって、歩道/車道の両方を走行可である動力付きマイクロモビリティにおける安全性に関する開発は、その特有性から、重要性は高く、ユーザの安全に配慮したマイクロモビリティ及びマイクロモビリティの運転支援装置を提供することが必要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るマイクロモビリティの運転支援装置は、マイクロモビリティの進行方向にある障害物を検知する第1検出部と、前記マイクロモビリティの走行状況を検出する第2検出部と、前記第1検出部の検知結果及び前記走行状況に基づき、前記マイクロモビリティが走行する道路の混雑度を判定する判定部と、前記道路の混雑度に基づき、前記マイクロモビリティの前記走行状況を変更する誘導案内をユーザに対して行う通知部と、前記ユーザが前記誘導案内へのユーザの対応状況に応じて、前記マイクロモビリティの走行制御を行う制御部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、ユーザの安全に配慮したマイクロモビリティ及びマイクロモビリティの運転支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係るマイクロモビリティの構成を表す図である。
【
図2】本実施の形態に係るマイクロモビリティ内の構成を表すブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係るマイクロモビリティの制御を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係るマイクロモビリティを表している。本実施の形態に係るマイクロモビリティ100は、電動キックボードであり、少なくとも、ハンドル101、ブレーキレバー102、車輪103、ボディ部104を備えている。なお、マイクロモビリティ100は、車道の走行に限定するものではなく、車道と歩道の両方の道路を走行することを想定したものであり、以降、「歩道を走行可」と表記する場合がある。
【0012】
また、マイクロモビリティ100は、さらにライト、バックミラー、動力、バッテリー、ナンバープレートホルダなどを備えていることが好ましいが、煩雑さを避けるために、
図1からは割愛している。
【0013】
なお、
図1では、電動キックボードの形状の例を示しているが、これに限定されず、一輪車の構造や、前方又は後方の車輪を2つ備える三輪車の構造などを有してもよい。
【0014】
図2は、本実施の形態に係るマイクロモビリティ100内の構成を表すブロック図である。本実施の形態に係るマイクロモビリティ100は、第1検出部111、第2検出部112、判定部113、通知部114、制御部115を備える。
【0015】
第1検出部111は、マイクロモビリティ100の進行方向にある障害物を検知する機能を有する。第1検出部111の取り付け位置は特に限定されないが、ハンドル101及びブレーキレバー102の近傍や、前方の車輪103の近傍が好ましい。また、第1検出部111の種類は特に限定されないが、例として、カメラ、距離検出センサなどが挙げられ、単体或いは任意に組み合わせて用いることができる。
【0016】
本実施の形態における障害物とは、マイクロモビリティ100が歩道を走行する際に、ユーザに接触、衝突、或いは走行の妨げとなる可能性のある移動体及び非移動体を指す。移動体の例として、歩行者、自転車、他のユーザが操作するマイクロモビリティなどが挙げられる。非移動体の例として、柱、壁、看板、木の枝葉、路上に落ちている石などが挙げられる。
【0017】
また、第1検出部111は、車道を走行する際の障害物の情報を得る機能も備えているとより好ましい。車道の障害物の情報の例として、車道を走行する際のガードレールの有無、歩道と車道の間の段差やスロープ、白線などが挙げられる。
【0018】
第2検出部112は、マイクロモビリティ100の走行状況を検出する機能を有する。第2検出部112の取り付け位置は、ボディ部104の内部又は近傍が好ましい。
【0019】
本実施の形態におけるマイクロモビリティ100の走行状況とは、マイクロモビリティ100の走行速度、マイクロモビリティ100が歩道/車道のどちらを走行しているかなどが挙げられる。第2検出部112において、例えば、カメラを用いて撮影データを取得して画像解析をし、歩道/車道の判断をしてもよく、ユーザの所有する携帯端末と連携して位置情報データや地図情報データを取得して照合し、歩道/車道の特定をしてもよい。また、マイクロモビリティ100が、歩道と車道にそれぞれに合わせた走行モードの設定を有する場合、その設定を取得することにより簡易的に歩道/車道の特定をしてもよい。
【0020】
また、第2検出部112は、マイクロモビリティ100に乗車するユーザの乗車状況を検出する機能も備えているとより好ましい。ユーザの乗車状況の例として、乗車位置や、荷重のかかり方や、走行中の重心移動状態などが挙げられる。これらの情報は、例えば、ユーザの利き足などの身体的特徴、走行中の揺れに対する反応の速さ、即ち、ユーザの反射神経、またユーザの体幹、慣れなど、様々なパラメータに依存する。したがって、第2検出部112による走行中の乗車状況の検出だけでなく、マイクロモビリティ100に乗る前に年齢(反射神経に大きく影響すると考えられるため)、利用回数などのユーザ情報を予め入力しておくと良い。これにより、ユーザの乗車状況の検出レベルをユーザ情報に応じて調整できるため、乗車状況の検出の精度をより向上させることが可能となる。
【0021】
判定部113は、第1検出部111から得られた障害物などの検知結果と、第2検出部112から得られた走行状況などに基づき、マイクロモビリティ100が走行する道路の混雑度を判定する。また、混雑度の判定には、マイクロモビリティ100又はユーザが障害物と接触する可能性を含めて判定してもよい。例えば、進行方向の歩行者の移動方向や分布、速度差やユーザが走行中の道路の種類、乗車状況、などを考慮して接触する可能性を含めて判定すると安全性の面においてより好ましい。判定部の取り付け位置は、ボディ部104の内部又は近傍が好ましく、第2検出部112と同じ領域に設けられてもよい。
【0022】
通知部114は、判定部113が判定した道路の混雑度に基づいて、マイクロモビリティ100の走行状況を変更するよう指示する誘導案内をユーザに行う機能を有する。
【0023】
マイクロモビリティ100が歩道/車道の一方、例えば、歩道を走行していて、マイクロモビリティ100又はユーザが障害物と接触する可能性が生じる或いは高まると、通知部114は、マイクロモビリティ100を歩道/車道の他方、即ち、車道に移行するように誘導案内をユーザに行う。その後、ユーザが誘導案内にしたがってマイクロモビリティ100を車道に移行させるよう操作することにより、障害物との接触を好適に回避することが可能となる。
【0024】
通知部114の取り付け位置は特に限定されないが、ハンドル101及びブレーキレバー102の近傍であると、ユーザに伝えやすいため好ましい。
【0025】
通知部114の例として、視覚的にユーザに知らせるモニターや、聴覚的にユーザに伝えるスピーカーや、触覚的にユーザに伝えるバイブレータなどが挙げられる。モニターの場合は、文字情報で伝えてもよいし、簡易的に色味の変化で伝えてもよい。スピーカーの場合は、音声で伝えてもよいし、簡易的にアラームやブザーを鳴らす方法でもよい。
【0026】
また、通知部114は、モニターなどの出力部を有することは必須では無く、例えば、ユーザがヘルメットを装着している場合には、ヘルメット内に設けたモニターなどに、無線通信などを介して誘導案内を出力するように制御してもよい。
【0027】
制御部115は、通知部114が行った誘導案内へのユーザの対応状況に応じて、マイクロモビリティ100の走行制御を行う機能を有する。制御部115の取り付け位置や構成は特に限定されず、例えば、ブレーキレバー102で操作する制動部や、車輪103を制御する駆動モータ部などと連動している。
【0028】
例えば、歩道から車道へ移行する誘導案内に対し、ユーザが案内に気付かなかった、反応が遅れた、案内に応じなかった、ブレーキやハンドル操作が遅れた、などの事態が生じた場合には、マイクロモビリティ100又はユーザが障害物と接触する危険性が高まる。そこで、制御部115は、マイクロモビリティ100を減速させる走行制御を行う。
【0029】
次に、マイクロモビリティ100の制御について、
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0030】
まず、マイクロモビリティ100に乗る前に、ユーザ情報を入力する(S101)。この段階は任意であるが、ユーザ情報の入力は、ユーザの乗車状況を検知する上で有用であるため、行うことが好ましい。入力されたユーザ情報は、記憶部(図示なし)にユーザ毎の設定値として記憶し、任意に読み出して再使用してもよい。
【0031】
ユーザがマイクロモビリティ100を操作し、マイクロモビリティ100の走行を開始させる。そして、第2検出部112は走行状況の検出を開始する。この段階において、マイクロモビリティ100の走行速度や、マイクロモビリティ100が歩道/車道のどちらを走行しているかなどを検出する。また、走行中は、第1検出部111によってマイクロモビリティ100の進行方向にある障害物や、車道側の情報を検知し取得する(S102)。
【0032】
その後、判定部によって、マイクロモビリティ100が走行する道路の混雑度を判定する(S103)。
【0033】
次に、判定部113の判定した混雑度に基づいて、例えば、マイクロモビリティ100又はユーザが障害物と接触する可能性が生じた場合(S104でY)には、誘導案内を行う段階(S111)へ移行する。また、接触の可能性が生じていない場合(S104でN)には、混雑度の判定(S103)に戻り、走行を継続する。
【0034】
マイクロモビリティ100又はユーザが障害物と接触する可能性が生じた時、通知部114によって誘導案内を行う(S111)。例えば、マイクロモビリティ100が歩道を走行している場合には、通知部114は、歩道から車道に移行する誘導案内をユーザに行う。
【0035】
ユーザが適切に誘導案内に反応できた場合(S112でY)、例えば、歩道から車道への移行が行えた場合には、誘導案内を終え、混雑度の判定(S103)に戻り、走行を継続する。一方、ユーザの反応が遅れた、或いは誘導案内に応じなかった場合(S112でN)は、制御部115によってマイクロモビリティ100を減速させる制御を行い(S113)、障害物との接触を回避するように促す。この時、通知部114は、誘導案内に加え、減速制御を行ったことをユーザに通知してもよい。
【0036】
ユーザがマイクロモビリティ100を減速させる制御を受けて、適切に車道への移行が行えた場合(S114でY)には、制御部115は、減速させる制御を解除してマイクロモビリティ100の速度を回復可能に戻し(S116)、走行を継続する(S103)。
【0037】
一方、減速制御を行ってもユーザが車道に移行できなかった場合(S114でN)には、障害物との接触を回避するために、マイクロモビリティ100を停止させる制御を行い(S115)、制御を終了する。なお、第1検出部111、第2検出部112、判定部113によって周囲の安全が確保されたと判断されたら、制御部115は、マイクロモビリティ100の速度を回復可能に戻し、走行を再開できるようにしてもよい。
【0038】
このような制御を行う構成とすることにより、本実施の形態に係るマイクロモビリティは、ユーザの安全に配慮したものとなる。また、マイクロモビリティを操作するユーザに限らず周囲の歩行者などに対する安全にも貢献できる。
【0039】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、第1検出部により検知する範囲は、マイクロモビリティの走行状況や、ユーザ情報に応じて定めることができる。また、本開示では歩道/車道と表記したが、歩道は車道に比べて低速走行が推奨される道路に相当するものであるため、例えば、公園や私有地を歩道と同様の条件として制御してもよい。
【0040】
また上記の構成要素の任意の組み合わせ、本実施の形態の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどで構成したものもまた、本実施形態の態様として有効である。また、上記の実施の形態の制御を行う構成要素の各部を任意のハードウェアやソフトウェアを組合せて実現してもよく制御の一部を外部の装置から無線通信などを介して実現してもよい。例えば、本開示ではマイクロモビリティの本体における制御として実施の形態を説明したが、マイクロモビリティに配置される運転支援装置の制御部の機能として実現してもよいし、ユーザの所有する携帯端末のアプリケーションソフトなどと連携して構成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
100 マイクロモビリティ
101 ハンドル
102 ブレーキレバー
103 車輪
104 ボディ部
111 第1検出部
112 第2検出部
113 判定部
114 通知部
115 制御部