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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092524
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】アース構造
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20240701BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240701BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20240701BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240701BHJP
【FI】
B60L3/00 J
B60R16/02 650Y
H02G3/30
B60L50/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208526
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真嶋 隆
【テーマコード(参考)】
5G363
5H125
【Fターム(参考)】
5G363BA01
5G363DC02
5H125AA01
5H125AC12
5H125FF01
5H125FF03
5H125FF04
(57)【要約】
【課題】電動バスにおけるアース構造の複雑化を抑える。
【解決手段】アース構造は、電動バスにおいて、第一電装品3~5,9,10,14および第二電装品2,6,7,8,11,12,15を接地するアース構造であって、第一電装品3~5,9,10,14のそれぞれの第一アース線3′~5′,9′,10′,14′が接続され、天井側に設けられた導体の第一アース部材4Uと、第二電装品2,6,7,8,11,12,15のそれぞれの第二アース線2′,6′,7′,8′,11′,12′,15′が接続され、床側に設けられた導体の第二アース部材4Dと、第一アース部材4Uに対して一端1Uが接続されるとともに第二アース部材4Dに対して他端1Dが接続され、第一アース部材4Uと第二アース部材4Dとを電気的に接続する一本の連結ケーブル1と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室に対して上方の天井側に配置された複数の第一電装品と、前記車室に対して下方の床側に配置された複数の第二電装品とが設けられた電動バスにおいて、前記第一電装品および前記第二電装品を接地するアース構造であって、
前記第一電装品のそれぞれの第一アース線が接続され、前記天井側に設けられた導体の第一アース部材と、
前記第二電装品のそれぞれの第二アース線が接続され、前記床側に設けられた導体の第二アース部材と、
前記第一アース部材に対して一端が接続されるとともに前記第二アース部材に対して他端が接続され、前記第一アース部材と前記第二アース部材とを電気的に接続する一本の連結ケーブルと、を備えた
ことを特徴とするアース構造。
【請求項2】
前記連結ケーブルは、前記電動バスにおける後端かつ側端に立設されたリアエンドピラーに沿って配索された
ことを特徴とする請求項1に記載のアース構造。
【請求項3】
前記第一電装品には、前記電動バスの駆動用に設けられた高電圧バッテリが含まれる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のアース構造。
【請求項4】
前記第一電装品および前記第二電装品には、前記高電圧バッテリの電圧が印加される高電圧電装品が含まれる
ことを特徴とする請求項3に記載のアース構造。
【請求項5】
前記第一アース部材および前記第二アース部材は、前記高電圧バッテリの電圧が印加されるターミナル端子に対して電気的に絶縁されるとともに前記電動バスのボディーをなす導体に対して絶縁されたアース部位に対して電気的に接続される
ことを特徴とする請求項3に記載のアース構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、種々の電装品が設けられた電動バスにおけるアース構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧バッテリから供給された電力によって走行する電気自動車の一つとして、天井と床とで上下に囲まれた車室の設けられた電動バスが知られている。電動バスには、車室に対して上方の天井側や車室に対して下方の床側に、電装品やケーブルといった車載機器が配置されうる。たとえば、複数の電装品が床側に配置された電動バスが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-289252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動バスの電装品は、上述のように床側に複数が配置されるだけでなく、天井側にも複数が配置されうる。このように上下に分散して電装品が配置された電動バスでは、電装品のそれぞれからアース線を接地箇所まで配索すると、電装品の数に応じた本数のアース線が接地箇所まで配索されることになり、アース線の配索が煩雑になる。このような配索性の低下は、電動バスにおけるアース構造の複雑化を招くおそれがある。
よって、電動バスにおけるアース構造の複雑化を抑えるうえで、改善の余地がある。
本件は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、電動バスにおけるアース構造の複雑化を抑えることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現できる。
(1)適用例に係るアース構造は、車室に対して上方の天井側に配置された複数の第一電装品と、前記車室に対して下方の床側に配置された複数の第二電装品とが設けられた電動バスにおいて、前記第一電装品および前記第二電装品を接地するアース構造であって、前記第一電装品のそれぞれの第一アース線が接続され、前記天井側に設けられた導体の第一アース部材と、前記第二電装品のそれぞれの第二アース線が接続され、前記床側に設けられた導体の第二アース部材と、前記第一アース部材に対して一端が接続されるとともに前記第二アース部材に対して他端が接続され、前記第一アース部材と前記第二アース部材とを電気的に接続する一本の連結ケーブルと、を備えている。
本適用例に係るアース構造によれば、電動バスにおけるアース構造の複雑化を抑えることができる。
【0006】
(2)本適用例に係るアース構造において、前記連結ケーブルは、前記電動バスにおける後端かつ側端に立設されたリアエンドピラーに沿って配索されてもよい。
本適用例に係るアース構造によれば、アース構造の複雑化をより改善できる。
【0007】
(3)本適用例に係るアース構造において、前記第一電装品には、前記電動バスの駆動用に設けられた高電圧バッテリが含まれてもよい。
本適用例に係るアース構造によれば、電動バスの安全性を高められる。
【0008】
(4)本適用例に係るアース構造において、前記第一電装品および前記第二電装品には、前記高電圧バッテリの電圧が印加される高電圧電装品が含まれてもよい。
本適用例に係るアース構造によれば、電動バスの安全性を高められる。
【0009】
(5)本適用例に係るアース構造において、前記第一アース部材および前記第二アース部材は、前記高電圧バッテリの電圧が印加されるターミナル端子に対して電気的に絶縁されるとともに前記電動バスのボディーをなす導体に対して絶縁されたアース部位に対して電気的に接続されてもよい。
本適用例に係るアース構造によれば、電動バスの安全性を高められる。
【発明の効果】
【0010】
本件の適用例によれば、電動バスにおけるアース構造の複雑化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るアース構造の適用された電動バスを示す斜視図である。
図2】一実施形態に係るアース構造における天井側の要部を示す拡大図である。
図3】一実施形態に係るアース構造における床側の要部を示す拡大図である。
図4】一実施形態に係るアース構造の接続形態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態としてのアース構造を説明する。
本実施形態のアース構造は、電動バスおいて電装品を接地する構造である。電動バスとは、路線バスや観光バスといった乗合自動車(すなわち「バス」)のうち、電動の車両である。この電動バスには、高電圧バッテリに接続された電動発電機のみを動力源とする電気自動車が含まれ、電動発電機だけでなく内燃機関を動力源とするハイブリッド電気自動車も含まれる。
【0013】
本実施形態でいう「接地」とは、基準電位に接続することを意味し、大地と同電位に接続する意味とも言える。
「接地」は、「アース」,「接地」,「グランド」と言い換えることができる。接地形態の一つとしては、いわゆる「ボディーアース」(車両のボディーに接地する形態)が例に挙げられる。
【0014】
[I.一実施形態]
下記の一実施形態では、アース構造に関する構成を項目[1]で述べ、項目[1]の構成による作用および効果を項目[2]で述べる。
なお、一実施形態の説明で用いる方向について、つぎのように定める。
電動バスの前進方向を前方(図中には「F」と記す)とし、その反対方向を後方(図中には「B」と記す)とする。これらの前方および後方は、前後方向(車両前後方向)や車長方向と称してもよい。また、前方を基準に左方(図中には「L」と記す)および右方(図中には「R」と記す)を定める。これらの左方および右方は、車幅方向や左右方向と称してもよい。さらに、重力の作用する方向を下方(図中には「D」と記す)とし、その反対方向を上方(図中には「U」と記す)とする。これらの上方および下方は、上下方向と称してもよい。前後方向,車幅方向および上下方向は互いに直交する。前後方向および車幅方向は水平方向に沿う方向であるのに対し、上下方向は鉛直方向に沿う方向である。
【0015】
[1.構成]
項目[1]で説明するアース構造は、車室を備えた電動バスに適用され、電動バスにおける種々の箇所に配置された電装品を接地する構造である。
本項目[1]では、車室が設けられた電動バスの構造に関して小項目[1-1]で概説し、電動バスの各電装品に関して小項目[1-2]で説明する。そして、電動バスにおいて電装品を接地するアース構造に関して小項目[1-3]で詳述する。
【0016】
[1-1.構造]
電動バスには、図1に示すように、ドライバや客員が乗る車室20(「客室」とも称される)が設けられ、車室20を囲む各種の構造が設けられている。
車室20に対して上方の天井側には、車室20を上方から覆うルーフ状の上構造2Uが設けられている。車室20に対して下方の床側には、車室20を下方から覆うフロア状の下構造2Dが設けられている。上構造2Uおよび下構造2Dによって、車室20が上下に挟まれている。
【0017】
これらの上構造2Uおよび下構造2Dは、上下に立設された複数の構造が設けられた中構造2Mによって互いに接続されている。中構造2Mは、車室20に対して前後左右に設けられている。
この中構造2Mには、窓やドアなどの領域以外に設けられた柱状の構造が林立している。このように林立した柱状の構造としては、車室20に対して左後,右後の各箇所(電動バスにおける後端かつ側端)に立設されたリアエンドピラー30が挙げられる。リアエンドピラー30によって、上構造2Uと下構造2Dが車両後部の隅で構造的に接続されている。このリアエンドピラー30は、電動バスの四隅のうち後方で上下に立設された支持構造を担うことから、他のピラーと比較して太く丈夫に設けられている。
【0018】
電動バスは、上下方向に沿って領域分けする観点から、既述の上構造2U,中構造2Mおよび下構造2Dの三構造に大別できる。この電動バスは、前後方向に沿って領域分けする観点からは、前側の半部をなす前部領域2Fおよび後側の半部をなす後部領域2Bの二領域に大別できる。
一実施形態で例示の電動バスをなす構造には、鋼板(導体)だけでなく、軽量化のために樹脂材(誘電体)が用いられている。樹脂材に対しては接地(具体的には「ボディーアース」)ができないことから、ここで例示する電動バスには接地箇所に制約があると言える。
上述のような構造の電動バスには、つぎに説明する種々の電装品が搭載されている。
【0019】
[1-2.電装品]
電動バスには、以下に例示列挙する複数の電装品2~15(「HV components」と称してもよい)が搭載されている。
・電動ドライブモジュール2 :電動バスを走行駆動する原動機系の電装品2
・高電圧バッテリ3~6 :充放電系の電装品3~6
・インターフェースボックス7:交流用の充電系の電装品7
・オンボードチャージャ8 :直流用の充電系の電装品8
・配電ユニット9,10 :電力を分配する電装品9,10
・変圧器11 :電圧を変えて出力する電装品11
・ヒータ12,13 :電熱系の電装品12,13
・コンプレッサ14,15 :空気を圧縮する電装品14,15
【0020】
==各電装品==
電動ドライブモジュール2(「electric Drive Module」とも称される,「eDM」とも略称される)は、インバータとドライブモータがユニット化されたモジュールである。インバータとは、直流を交流に変換して、交流のドライブモータを動かす機器である。ドライブモータは、力行状態では電動機として機能し、回生状態では発電機として機能する電動発電機(「モータジェネレータ」とも称される)である。
【0021】
この電動ドライブモジュール2は、下構造2Dに搭載され、車両の後部領域2Bに配置される。すなわち、電動ドライブモジュール2は、従来のように内燃機関のみを動力源として搭載したバスにおける内燃機関と同様の箇所に配置される。
上記の電動ドライブモジュール2は、つぎに説明する高電圧バッテリ3~6からの給電時には力行状態でドライブモータが電動機として作動し、回生状態ではドライブモータが発電機として作動し、発電機として作動するドライブモータからの電力によって高電圧バッテリ3~6が充電される。
【0022】
高電圧バッテリ3~6は、電動バスの駆動用に設けられた高電圧の二次電池であり、電動ドライブモジュール2をはじめとした各種の電装品の電源をなす。たとえば、高電圧バッテリ3~6の電圧が印加される電装品を「高電圧電装品」とすれば、高電圧電装品には、電動ドライブモジュール2のほか、インターフェースボックス7,オンボードチャージャ8,配電ユニット9,10や変圧器11などが含まれる。
【0023】
ここでは、高電圧バッテリ3~6として、第一バッテリ3,第二バッテリ4,第三バッテリ5,第四バッテリ6の四つが後部領域2Bに配置された例を挙げる。
第一バッテリ3,第二バッテリ4および第三バッテリ5は、上構造2Uに支持されており、車室20に対して天井側に配置されている。天井側において、最も前方に第一バッテリ3が配置され、最も後方に第三バッテリ5が配置され、第一バッテリ3と第三バッテリ5との間に第二バッテリ4が配置される。
【0024】
このように三つのバッテリ3~5が前後に並設されるのに対し、第四バッテリ6は、一つだけが下構造2Dに支持されており、車室20に対して床側に配置されている。
ただし、三つのバッテリ3~5のみが高電圧バッテリとして設けられ、第四バッテリ6の搭載を省略してもよい。このようにバッテリ3~5の全てが天井側に配置された形態は、床側の第四バッテリ6が省略されることから、電動バスの低床化に資する。
なお、高電圧バッテリ3~6が設けられる数は、上記のように四つに限らず三つ以下であってもよいし、五つ以上であってもよく、電動バスに要求される航続距離や充電容量などに応じて適宜設定することができる。
【0025】
インターフェースボックス7およびオンボードチャージャ8は、充電ガンの差込口(いわゆる「インレット」)に接続された充電系の機器である。これらのインターフェースボックス7およびオンボードチャージャ8は、下構造2Dに支持されており、車室20に対して床側であって後部領域2Bに配置されている。
インターフェースボックス7は、交流の電力で充電するときに使用され、「DC interface box」と称されたり、「DCB」と略称されたりする。オンボードチャージャ8は、直流の電力で充電するときに使用され、「AC onboard charger」と称されたり、「OBC」と略称されたりする。
【0026】
配電ユニット9,10は、高電圧バッテリ3~6からの電力(いわば「電源」)を分配する機器であり、「Power Distribution Unit」と称されたり、「PDU」と略称されたりする。これら配電ユニット9,10は、ヒューズを内蔵しており、過電流あるいは加熱に対する保護機能を担う。
ここでは、配電ユニット9,10として、第一配電ユニット9,第二配電ユニット10の二つが上構造2Uに支持されており、車室20に対して天井側であって後部領域2Bに配置されている。
【0027】
変圧器11は、高電圧バッテリ3~6から印加された直流の電圧を降圧して出力する機器であり、「DC/DC converter」とも称される。高電圧バッテリ3~6から印加された電圧は、変圧器11によって、いわゆる「車載バッテリ」(図示省略)と称される低電圧バッテリに応じた電圧に降圧して出力される。
この変圧器11は、下構造2Dに支持されており、車室20に対して床側であって後部領域2Bに配置されている。
【0028】
ヒータ12,13は、何らかの対象を加熱して過冷却の抑制や暖房を図る装置である。これらのヒータ12,13には、いわゆるPTCヒータ(Positive Temperature Coefficient heater)を用いることができる。
ここでは、ヒータ12,13として、第四バッテリ6用の第一ヒータ12やドライバ用の第二ヒータ13が設けられた例を挙げる。たとえば、第一ヒータ12によって第四バッテリ6の過度な冷却を抑制でき、第二ヒータ13によってデフロスタ用に空気を加熱できる。
【0029】
ヒータ12,13にPTCヒータが用いられていれば、第四バッテリ6用の第一ヒータ12は「PTC heater for HV battery」と言え、ドライバ用の第二ヒータ13は「PTC heater for driver」と言える。
上記のヒータ12,13は、下構造2Dに支持されており、車室20に対して床側に配置されている。ただし、第一ヒータ12は後部領域2Bに配置されているのに対し、第二ヒータ13は前部領域2Fに配置されている。すなわち、加熱対象に応じた箇所にヒータ12,13のそれぞれが配置されている。
【0030】
コンプレッサ14,15は、電動で空気を圧縮する機器である。ここでは、コンプレッサ14,15として、車室20の空調用に空気を圧縮する第一コンプレッサ14や電動バスのエアサスペンション用に空気を圧縮する第二コンプレッサ15が設けられた例を挙げる。第一コンプレッサ14は「e A/C」と略称してもよく、第二コンプレッサ15は「Air sus comp」と略称してもよい。
第一コンプレッサ14は、上構造2Uに支持されており、車室20に対して天井側であって前部領域2Fに配置されている。一方、第二コンプレッサ15は、下構造2Dに支持されており、車室20に対して床側であって後部領域2Bに配置されている。
【0031】
==電装品の配置==
つぎに、上述の電装品2~15について、配置された領域ごとにまとめて整理する。
車室20に対して上方の天井側には配置された複数の電装品(以下「第一電装品」とも称する)は、第一バッテリ3,第二バッテリ4,第三バッテリ5,第一配電ユニット9,第二配電ユニット10,第一コンプレッサ14である。すなわち、第一電装品には、高電圧バッテリ3~5が含まれる。
【0032】
車室20に対して下方の床側に配置された複数の電装品(以下「第二電装品」とも称する)は、電動ドライブモジュール2,第四バッテリ6,インターフェースボックス7,オンボードチャージャ8,変圧器11,第一ヒータ12,第二ヒータ13,第二コンプレッサ15である。
高電圧バッテリ3~6の電圧が印加される電装品(すなわち「高電圧電装品」)には、床側に配置された電動ドライブモジュール2や天井側に配置された配電ユニット9,10などが含まれる。このことから、第一電装品および第二電装品には、高電圧電装品が含まれる。
【0033】
なお、前部領域2Fに配置された複数の電装品(第一の電装品)は、第二ヒータ13,第一コンプレッサ14である。
一方、後部領域2Bに配置された複数の電装品(第二の電装品)は、電動ドライブモジュール2,高電圧バッテリ3~6,インターフェースボックス7,オンボードチャージャ8,第一配電ユニット9,第二配電ユニット10,変圧器11,第一ヒータ12,第二コンプレッサ15である。後部領域2Bに配置された複数の電装品のうち、電動ドライブモジュール2,第三バッテリ5,第四バッテリ6,インターフェースボックス7,オンボードチャージャ8,変圧器11,第一ヒータ12は、リアエンドピラー30の近傍に配置されている。
【0034】
==電装品のアース線==
上述のように上下に分散して配置された電装品2~15のそれぞれには、漏電対策用にアース線が接続されている。
以下の説明では、電装品2~15のそれぞれに接続された十四本のアース線について、各電装品2~15に付した符号の末尾に「′」を添えた符号を用いて示す。たとえば、電動ドライブモジュール2に接続されたアース線には符号「2′」を付す。
【0035】
第一電装品のアース線(以下「第一アース線」とも称する)を具体的に列挙すれば、第一バッテリ3のアース線3′,第二バッテリ4のアース線4′,第三バッテリ5のアース線5′,第一配電ユニット9のアース線9′,第二配電ユニット10のアース線10′,第一コンプレッサ14のアース線14′の六本である。
第二電装品のアース線(以下「第二アース線」とも称する)を具体的に列挙すれば、電動ドライブモジュール2のアース線2′,第四バッテリ6のアース線6′,インターフェースボックス7のアース線7′,オンボードチャージャ8のアース線8′,変圧器11のアース線11′,第一ヒータ12のアース線12′,第二ヒータ13のアース線13′,第二コンプレッサ15のアース線15′の八本である。
【0036】
第一アース線や第二アース線のそれぞれは、接続されている電装品2~15のそれぞれに設定された消費電力や定格などに応じて、電線の導体の太さ(いわゆる「スケア」)が設定されている。すなわち、第一アース線および第二アース線には、さまざまな太さのアース線が混在しうる。
仮に、さまざま径のアース線が電装品のそれぞれから所定の接地箇所まで配索されると、多数のアース線を所定の接地箇所まで取り回すことが必要となり、アース線の配索が煩雑になる。このようなアース構造の複雑化を抑えるために、つぎに説明するアース構造が電動バスに設けられている。
【0037】
[1-3.アース構造]
一実施形態のアース構造は、電装品の配置領域ごとにアース線を集約することで、配索が煩雑になることによる構造の複雑化の抑制を図っている。
このアース構造では、図4に示すように、ルーフアースブラケット4U(第一アース部材)およびリヤボディーブラケット4D(第二アース部材)の二箇所にアース線2′~15′を集約し、ブラケット4U,4Dどうしを連結ケーブル1で電気的に接続している。
【0038】
ブラケット4U,4Dのそれぞれには、少なくとも導体が用いられ、たとえば金属プレートからなるブラケットを採用することができる。
ルーフアースブラケット4Uは上構造2Uに取り付けらており、リヤボディーブラケット4Dは下構造2Dに取り付けられている。
ルーフアースブラケット4Uは、車室20に対して天井側に設けられたブラケットであり、第一電装品のそれぞれのアース線(すなわち「第一アース線」)が接続されている。具体的に言えば、六本の第一アース線3′,4′,5′,9′,10′,14′が六つの電装品3,4,5,9,10,14からルーフアースブラケット4Uに対して電気的に接続されている。ここで例示のルーフアースブラケット4Uには、第二ヒータ13のアース線13′(第二電装品のうち前部領域2Fに配置された電装品)も接続されている。図2には、電動バスの上構造2Uに取り付けられたL字状のルーフアースブラケット4Uがバッテリ4,5の近傍に配置された例を示す。
【0039】
図1図4に示すように、リヤボディーブラケット4Dは、車室20に対して床側に設けられた導体のブラケットであり、第二電装品のそれぞれのアース線(すなわち「第二アース線」)が接続されている。具体的に言えば、七本の第二アース線2′,6′,7′,8′,11′,12′,15′が七つの電装品2,6,7,8,11,12,15からリヤボディーブラケット4Dに対して電気的に接続されている。図3には、電動バスの下構造2Dに取り付けられたZ字状のリヤボディーブラケット4Dを例示する。
【0040】
図1に示すように、連結ケーブル1は、ルーフアースブラケット4Uに対して一端1Uが接続され、リヤボディーブラケット4Dに対して他端1Dが接続されている。すなわち、連結ケーブル1は、天井側のルーフアースブラケット4Uと床側のリヤボディーブラケット4Dとを構造的に連結するように配索されている。
連結ケーブル1の一端1Uは、ルーフアースブラケット4Uに接続されることから、車室20に対して天井側に配置された端部である。連結ケーブル1の他端1Dは、リヤボディーブラケット4Dに接続されることから、車室20に対して床側に配置された端部である。
【0041】
すなわち、連結ケーブル1は、ルーフアースブラケット4Uとリヤボディーブラケット4Dとを電気的に接続する一本のケーブルであり、上構造2U,中構造2Mおよび下構造2Dに跨がって配索されている。
ここで例示の連結ケーブル1は、リアエンドピラー30に沿って配索されている。換言すれば、連結ケーブル1は、ルーフアースブラケット4Uに接続された一端1Uとリヤボディーブラケット4Dに接続された他端1Dとの間の部位(以下「中間部」と称する)1Mが中構造2Mのうちリアエンドピラー30に沿って上下に沿って取り回されている。
【0042】
ルーフアースブラケット4Uおよびリヤボディーブラケット4Dならびに連結ケーブル1の少なくとも一箇所を所定の接地箇所に対して電気的に接続すれば、全ての電装品2~15を接地することが可能である。
ここでは、ルーフアースブラケット4Uおよびリヤボディーブラケット4Dならびに連結ケーブル1の何れも車両のボディーには接地されておらず(「ボディーアース」ではなく)、ルーフアースブラケット4Uおよびリヤボディーブラケット4Dの少なくとも一箇所が所定の接地箇所に対して電気的に接続される。
所定の接地箇所の具体的な一例としては、第三バッテリ5あるいは第二バッテリ4のケース45が挙げられる。このケース45は、バッテリ4,5の電圧が印加されるターミナル端子に対して電気的に絶縁されるとともに、電動バスのボディーをなす導体に対して絶縁された部位(アース部位)である。
【0043】
[2.作用および効果]
一実施形態のアース構造は、上述の構成を備えるため、下記のような作用および効果を得ることができる。
(1)一実施形態のアース構造では、天井側に配置された第一電装品3~5,9,10,14の第一アース線3′~5′,9′,10′,14′がルーフアースブラケット4Uに接続されている。また、床側に配置された第二電装品2,6,7,8,11,12,15の第二アース線2′,6′,7′,8′,11′,12′,15′がリヤボディーブラケット4Dに接続されている。係る接続形態により、電装品2~15の配置された天井側および床側の各領域においてアース線2′~15′を集約(二箇所に集約)することができ、アース構造を簡素化することができる。
【0044】
さらに、本アース構造によれば、ブラケット4U,4Dどうしが一本の連結ケーブル1で電気的に接続されている。そのため、ブラケット4U,4Dあるいは連結ケーブル1における任意の一箇所を接地するだけで、電装品2~15の全てを接地でき、アース線2′~15′の配索が煩雑になるのを抑えられる。
よって、電動バスにおけるアース構造の複雑化を抑えることができる。
なお、アース構造の複雑化が抑えられることにより、アース用の部材点数抑制や車両の軽量化に資する。
【0045】
(2)ところで、リアエンドピラー30の近傍には、電動ドライブモジュール2,第三バッテリ5,第四バッテリ6,インターフェースボックス7,オンボードチャージャ8,変圧器11,第一ヒータ12などが配置されている。このように多くの電装品が近傍に配置されたリアエンドピラー30に沿って連結ケーブル1の中間部1Mが配索されているため、連結ケーブル1の配索距離が抑えられる。また、リアエンドピラー30は、他のピラーと比較して太く丈夫に設けられていることから、連結ケーブル1の配索空間を確保しやすい。配索距離の抑制や配索空間の確保によって、アース構造の複雑化をより改善できる。
【0046】
(3)仮に、高電圧バッテリ3~6や高電圧バッテリの電圧が印加される高電圧電装品からの漏電が発生した際には、高電圧の漏電が生じるおそれがある。これに対し、高電圧バッテリ3~6の漏電対策用に配備されたアース構造を改善できるため、高電圧バッテリ3~6によって駆動される電動バスの安全性を高められる。
なお、高電圧バッテリ3~6のうち床側の第四バッテリ6が省略され、天井側の第一バッテリ3,第二バッテリ4,第三バッテリ5のみが高電圧バッテリとして電動バスに設けられた場合には、電動バスの低床化に資するため、電動バスのうち路線バスのアース構造として好適である。
【0047】
(4)仮に、車両のボディーに接地するボディーアースが採用された際には、高電圧バッテリ3~6や高電圧バッテリの電圧が印加される高電圧電装品からの漏電が発生すると、高電圧の漏電が車両のボディーに流れるおそれがある。
これに対し、一実施形態のアース構造は、車両のボディーには接地されていない。具体的には、バッテリ4,5の電圧が印加されるターミナル端子に対して電気的に絶縁されるとともに電動バスのボディーをなす導体に対して絶縁されたケース45が所定の接地箇所に設定されている。よって、高電圧バッテリ3~6によって駆動される電動バスの安全性を高められる。そのほか、電動バスをなす構造に樹脂材(誘電体)が用いられて接地箇所に制約がある場合であっても、接地箇所を確保できる。
【0048】
[II.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
たとえば、所定の接地箇所は、電装品の基準電位や大地と同電位の箇所であれば、電動バスにおける任意の箇所であってもよい。
【0049】
また、一実施形態で具体的に挙げた電装品は、あくまで例示であり、具体的に挙げた電装品の一部が省略されてもよいし、他の電装品が含まれていてもよい。
そのほか、連結ケーブルは、リアエンドピラーに沿って配索される形態に限らず、ルーフアースブラケット4Uとリヤボディーブラケット4Dとを電気的に接続する配索形態であれば、電動バスにおける任意の箇所に配索することができる。
【0050】
[III.付記]
以上の適用例に関する付記を開示する。
[付記1]
車室に対して上方の天井側に配置された複数の第一電装品と、前記車室に対して下方の床側に配置された複数の第二電装品とが設けられた電動バスにおいて、前記第一電装品および前記第二電装品を接地するアース構造であって、
前記第一電装品のそれぞれの第一アース線が接続され、前記天井側に設けられた導体の第一アース部材と、
前記第二電装品のそれぞれの第二アース線が接続され、前記床側に設けられた導体の第二アース部材と、
前記第一アース部材に対して一端が接続されるとともに前記第二アース部材に対して他端が接続され、前記第一アース部材と前記第二アース部材とを電気的に接続する一本の連結ケーブルと、を備えた
ことを特徴とするアース構造。
[付記2]
前記連結ケーブルは、前記電動バスにおける後端かつ側端に立設されたリアエンドピラーに沿って配索された
ことを特徴とする付記1に記載のアース構造。
[付記3]
前記第一電装品には、前記電動バスの駆動用に設けられた高電圧バッテリが含まれる
ことを特徴とする付記1または2に記載のアース構造。
[付記4]
前記第一電装品および前記第二電装品には、前記高電圧バッテリの電圧が印加される高電圧電装品が含まれる
ことを特徴とする付記3に記載のアース構造。
[付記5]
前記第一アース部材および前記第二アース部材は、前記高電圧バッテリの電圧が印加されるターミナル端子に対して電気的に絶縁されるとともに前記電動バスのボディーをなす導体に対して絶縁されたアース部位に対して電気的に接続される
ことを特徴とする付記3または4に記載のアース構造。
【符号の説明】
【0051】
1 連結ケーブル
1D 他端
1M 中間部
1U 一端
2 電動ドライブモジュール
3~6 高電圧バッテリ
7 インターフェースボックス
8 オンボードチャージャ
9,10 配電ユニット
11 変圧器
12,13 ヒータ
14,15 コンプレッサ
2′,6′,7′,8′,11′,12′,15′ 第二アース線
3′,4′,5′,9′,10′,13′,14′ 第一アース線
20 車室
2B 後部領域
2D 下構造
2F 前部領域
2M 中構造
2U 上構造
30 リアエンドピラー
45 ケース
4U ローフアースブラケット(第一アース部材)
4D リヤボディーブラケット(第二アース部材)
図1
図2
図3
図4