(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092525
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】電力供給構造
(51)【国際特許分類】
B60L 58/20 20190101AFI20240701BHJP
B60R 16/03 20060101ALI20240701BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240701BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240701BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B60L58/20
B60R16/03 A
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
B60L50/60
B60L1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208527
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真嶋 隆
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA03
5G503BA04
5G503BB01
5G503DA08
5G503DA17
5G503FA06
5G503GA19
5G503GB03
5G503GB06
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB09
5H125BC25
(57)【要約】
【課題】電動バスにおける電力供給構造の複雑化を抑える。
【解決手段】電力供給構造は、後部領域2Bに配置され、高電圧バッテリ20から印加された電圧を低電圧バッテリ30に応じた電圧に降圧して出力する変圧器28と、高電圧バッテリ20の電圧が変圧器28で降圧された電圧の電力と低電圧バッテリ30の電圧の電力との何れによっても作動する複数の電装品33~37と、を備え、電装品33~37は、前部領域2Fに配置された第一の電装品33~36と、後部領域2Bに配置された第二の電装品37とを有し、第一の電装品33~36は、低電圧バッテリ30に対して変圧器28を介することなく電気的に接続され、低電圧バッテリ30からの電力で作動し、第二の電装品37は、高電圧バッテリ20に対して変圧器28を介して電気的に接続され、高電圧バッテリ20の電圧が変圧器28で降圧された電圧の電力で作動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動バスにおける後部領域に配置されているとともに前記電動バスの駆動用に設けられた高電圧バッテリと、前記高電圧バッテリの電圧よりも低い電圧を出力するとともに前記電動バスにおける前部領域に配置された低電圧バッテリとが設けられた前記電動バスにおいて、電力を供給する電力供給構造であって、
前記後部領域に配置され、前記高電圧バッテリから印加された電圧を前記低電圧バッテリに応じた電圧に降圧して出力する変圧器と、
前記高電圧バッテリの電圧が前記変圧器で降圧された電圧の電力と前記低電圧バッテリの電圧の電力との何れによっても作動する複数の電装品と、を備え、
前記電装品は、前記前部領域に配置された第一の電装品と、前記後部領域に配置された第二の電装品とを有し、
前記第一の電装品は、前記低電圧バッテリに対して前記変圧器を介することなく電気的に接続され、前記低電圧バッテリからの電力で作動し、
前記第二の電装品は、前記高電圧バッテリに対して前記変圧器を介して電気的に接続され、前記高電圧バッテリの電圧が前記変圧器で降圧された電圧の電力で作動する
ことを特徴とする電力供給構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、電動バスにおいて電装品に電力を供給する電力供給構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧バッテリから供給された電力によって走行する電気自動車の一つとして、高電圧バッテリのほかに各種の電装品が設けられた電動バスが知られている。たとえば、電動バスにおいて後側に高電圧バッテリが配置された構造が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動バスには、上述のように高電圧バッテリが搭載されるだけでなく、いわゆる「車載バッテリ」と称される低電圧バッテリも搭載されうる。また、電動バスは、普通乗用自動車よりも前後方向の寸法が長いことから、高電圧バッテリや低電圧バッテリが前後に離間して配置されたり、低電圧バッテリによって作動する電装品が種々の箇所に配置されたりしうる。
【0005】
上記のように種々の箇所に配置された電装品は、低電圧バッテリよりも高電圧バッテリのほうが近くに配置されているにもかかわらず低電圧バッテリに対して接続されると、ケーブルの取り回しが煩雑になり、配索性の低下を招くおそれがある。そのため、電装品への電力供給構造が複雑化するおそれがある。
よって、電動バスにおける電力供給構造の複雑化を抑えるうえで、改善の余地がある。
本件は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、電動バスにおける電力供給構造の複雑化を抑えることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現できる。
適用例に係る車体構造は、電動バスにおける後部領域に配置されているとともに前記電動バスの駆動用に設けられた高電圧バッテリと、前記高電圧バッテリの電圧よりも低い電圧を出力するとともに前記電動バスにおける前部領域に配置された低電圧バッテリとが設けられた前記電動バスにおいて、電力を供給する電力供給構造であって、前記後部領域に配置され、前記高電圧バッテリから印加された電圧を前記低電圧バッテリに応じた電圧に降圧して出力する変圧器と、前記高電圧バッテリの電圧が前記変圧器で降圧された電圧の電力と前記低電圧バッテリの電圧の電力との何れによっても作動する複数の電装品と、を備え、前記電装品は、前記前部領域に配置された第一の電装品と、前記後部領域に配置された第二の電装品とを有し、前記第一の電装品は、前記低電圧バッテリに対して前記変圧器を介することなく電気的に接続され、前記低電圧バッテリからの電力で作動し、前記第二の電装品は、前記高電圧バッテリに対して前記変圧器を介して電気的に接続され、前記高電圧バッテリの電圧が前記変圧器で降圧された電圧の電力で作動する。
本適用例によれば、低電圧バッテリからの電力は、低電圧バッテリと同領域に配置された第一の電装品へ供給され、高電圧バッテリからの電力は、同領域に配置された変圧器を介して、同領域に配置された第二の電装品へ供給されるため、同領域に配置された機器どうしで電力が供給され、第一の電装品や第二の電装品へ電力を供給するケーブルの取り回しが煩雑になるのを抑制できる。
【発明の効果】
【0007】
本件の適用例によれば、電動バスにおける電力供給構造の複雑化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る電力供給構造の適用された電動バスを示す斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る電力供給構造におけるケーブルの接続形態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態としての電力供給構造を説明する。
本実施形態の電力供給構造は、電動バスにおいて電装品に電力を供給するための構造である。電動バスとは、路線バスや観光バスといった乗合自動車(すなわち「バス」)のうち、電動の車両である。この電動バスには、高電圧バッテリに接続された電動発電機のみを動力源とする電気自動車が含まれ、電動発電機だけでなく内燃機関を動力源とするハイブリッド電気自動車も含まれる。
【0010】
[I.一実施形態]
下記の一実施形態では、電力供給構造に関する構成を項目[1]で述べ、項目[1]の構成による作用および効果を項目[2]で述べる。
なお、一実施形態の説明で用いる方向について、つぎのように定める。
電動バスの前進方向を前方(図中には「F」と記す)とし、その反対方向を後方(図中には「B」と記す)とする。これらの前方および後方は、前後方向(車両前後方向)や車長方向と称してもよい。また、前方を基準に左方(図中には「L」と記す)および右方(図中には「R」と記す)を定める。これらの左方および右方は、車幅方向や左右方向と称してもよい。さらに、重力の作用する方向を下方(図中には「D」と記す)とし、その反対方向を上方(図中には「U」と記す)とする。これらの上方および下方は、上下方向と称してもよい。前後方向,車幅方向および上下方向は互いに直交する。前後方向および車幅方向は水平方向に沿う方向であるのに対し、上下方向は鉛直方向に沿う方向である。
【0011】
[1.構成]
本項目[1]で説明する電力供給構造は、車室を備えた電動バスに適用され、電動バスにおける種々の箇所に配置された電装品どうしを接続する電気ケーブルを配索するための構造である。
電動バスには、
図1に示すように、ドライバや客員が乗る車室2R(「客室」とも称される)が設けられ、車室2Rを囲む各種の構造が設けられている。
車室2Rに対して上方の天井側には、車室2Rを上方から覆うルーフ状の上構造2Uが設けられている。車室2Rに対して下方の床側には、車室2Rを下方から覆うフロア状の下構造2Dが設けられている。上構造2Uおよび下構造2Dによって、車室2Rが上下に挟まれている。
【0012】
これらの上構造2Uおよび下構造2Dは、上下に立設された複数の構造が設けられた中構造2Mによって互いに接続されている。中構造2Mは、車室2Rに対して前後左右に設けられている。
この中構造2Mには、窓やドアなどの領域以外に設けられた柱状の構造が林立している。このように林立した柱状の構造としては、車室2Rに対して左後,右後の各箇所(電動バスにおける後端かつ側端)に立設されたリアエンドピラー10が挙げられる。リアエンドピラー10によって、上構造2Uと下構造2Dが車両後部の隅で構造的に接続されている。
【0013】
電動バスは、上下方向に沿って領域分けする観点から、既述の上構造2U,中構造2Mおよび下構造2Dの三構造に大別できる。この電動バスは、前後方向に沿って領域分けする観点からは、前側の半部をなす前部領域2Fおよび後側の半部をなす後部領域2Bの二領域に大別できる。
上述のような構造の電動バスには、つぎの小項目[1-1]で説明する種々の電装品が搭載されている。
【0014】
[1-1.電装系]
電動バスには、電動バスの駆動用に設けられた高電圧バッテリ20だけでなく、高電圧バッテリ21~23よりも電圧の低い低電圧バッテリ30(いわゆる「車載バッテリ」)も搭載されている。これらのバッテリ20,30は、何れも充放電可能な二次電池である。
高電圧バッテリ20は、低電圧バッテリ30よりも高い電圧(すなわち「高電圧」)の電力を出力し、高電圧の電力で作動する電装品の電源をなす。この高電圧バッテリ20は、後部領域2Bに配置されている。
【0015】
ここでは、高電圧バッテリ20として、第一高電圧バッテリ21,第二高電圧バッテリ22,第三高電圧バッテリ23の三つを例示する。
図1には、これら三つの高電圧バッテリ21~23が上構造2Uに支持された例を示す。
なお、高電圧バッテリ20が設けられる数は、上記のように三つに限らず二つ以下であってもよいし、四つ以上であってもよく、電動バスに要求される航続距離や充電容量などに応じて適宜設定することができる。
【0016】
低電圧バッテリ30は、高電圧バッテリ20よりも低い電圧(すなわち「低電圧」)の電力を出力し、低電圧の電力で作動する電装品の電源をなす。この低電圧バッテリ30は、前部領域2Fに配置されている。
ここでは、低電圧バッテリ30として、第一低電圧バッテリ31,第二低電圧バッテリ32の二つを例示する。いわゆる12V出力用のバッテリとして第一低電圧バッテリ31が設けられ、いわゆる24V出力用のバッテリとして第二低電圧バッテリ32が設けられている。
図1には、これら二つの低電圧バッテリ31,32が下構造2Dに支持された例を示す。
【0017】
このように二種の低電圧バッテリ31,32を併設することで、作動電圧が12Vの基本的な電装品を作動させる電源を搭載したうえで、作動電圧が24Vの付加的な電装品を作動させる電源も搭載している。
これらの低電圧バッテリ31,32には、二種の低電圧バッテリ31,32を併用するためにバッテリイコライザ33が接続されている。バッテリイコライザ33は、低電圧バッテリ31,32の充放電バランスを維持するために用いられ、二種の低電圧(ここでは12Vおよび24V)を変換可能な機器である。このバッテリイコライザ33は、前部領域2Fに配置され、下構造2Dに支持されている。
【0018】
上述のように出力電圧の相違する二種のバッテリ20,30が混在して搭載された電動バスには、作動電圧の相違する電装品も混在して搭載されている。
以下、作動電圧が高電圧の電装品である「高電圧電装品」(「HV components」と称してもよい)について説明し、その後に、作動電圧が低電圧の電装品である「低電圧電装品」について説明する。
【0019】
==高電圧電装品==
高電圧電装品としては、以下に列挙する電装品24~28が挙げられる。なお、電動バスに搭載される高電圧電装品は、下掲の電装品24~28に限らず、ヒータ,空調システム,コンプレッサとった他の高電圧電装品を含んでいてもよい。
・電動ドライブモジュール24 :電動バスを走行駆動する原動機系の電装品24
・インターフェースボックス25:交流用の充電系の電装品25
・オンボードチャージャ26 :直流用の充電系の電装品26
・配電ユニット27 :電力を分配する電装品27
・変圧器28 :電圧を変えて出力する電装品28
【0020】
電動ドライブモジュール24(「electric Drive Module」とも称される,「eDM」とも略称される)は、インバータとドライブモータがユニット化されたモジュールである。インバータとは、直流を交流に変換して、交流のドライブモータを動かす機器である。ドライブモータは、力行状態では電動機として機能し、回生状態では発電機として機能する電動発電機(「モータジェネレータ」とも称される)である。
【0021】
この電動ドライブモジュール24は、下構造2Dに搭載され、車両の後部領域2Bに配置される。すなわち、電動ドライブモジュール24は、従来のように内燃機関のみを動力源として搭載したバスにおける内燃機関と同様の箇所に配置される。
上記の電動ドライブモジュール24は、高電圧バッテリ20からの給電時には力行状態でドライブモータが電動機として作動し、回生状態ではドライブモータが発電機として作動し、発電機として作動するドライブモータからの電力によって高電圧バッテリ20が充電される。
【0022】
インターフェースボックス25およびオンボードチャージャ26は、充電ガンの差込口(いわゆる「インレット」)に接続された充電系の機器である。これらのインターフェースボックス25およびオンボードチャージャ26は、下構造2Dに支持されており、車室2Rに対して床側であって後部領域2Bに配置されている。
インターフェースボックス25は、交流の電力で充電するときに使用され、「DC interface box」と称されたり、「DCB」と略称されたりする。オンボードチャージャ26は、直流の電力で充電するときに使用され、「AC onboard charger」と称されたり、「OBC」と略称されたりする。
【0023】
配電ユニット27は、高電圧バッテリ20からの電力(いわば「電源」)を分配する機器であり、「Power Distribution Unit」と称されたり、「PDU」と略称されたりする。この配電ユニット27は、ヒューズを内蔵しており、過電流あるいは加熱に対する保護機能を担う。
ここでは、上構造2Uに支持されており、車室2Rに対して天井側であって後部領域2Bに配置された配電ユニット27を例示する。
【0024】
変圧器28は、高電圧バッテリ20から印加された直流の電圧を降圧して出力する機器であり、「DC/DC converter」とも称される。この変圧器28は、後部領域2Bに配置されている。ここでは、下構造2Dに支持されており、車室2Rに対して床側に配置され、第一低電圧バッテリ31の出力電圧にあわせて12Vに降圧して出力する変圧器28を例示する。
高電圧を低電圧にして出力する変圧器28は、つぎに説明する低電圧電装品の電力を供給することが可能である。すなわち、変圧器28は、低電圧電装品が高電圧バッテリ20を電源とする場合に、高電圧バッテリ20と低電圧電装品との間に介装される電装品である。
【0025】
==低電圧電装品==
低電圧電装品としては、以下に例示する電装品34~37が挙げられる。なお、電動バスに搭載される低電圧電装品は、下掲の電装品34~37に限らず、他の低電圧電装品を含んでいてもよい。
・信号変換器34 :電動バスに係る信号処理系の電装品34
・パワステポンプ35 :操舵系の電装品35
・ボデー電装品36 :ボデーに取り付けられる種々の電装品36
・ラジエータファン37:熱交換系の電装品37
【0026】
信号変換器34は、電動バスにおける「CAN」(Controller Area Network)などの通信ラインとアナログ信号を変換するモジュールである。
パワステポンプ35は、電動バスのステアリング操作(すなわち操舵)を補助する動力系のポンプである。
ボデー電装品36には、速度計やタコメータといった計器,ワイパー,エアバッグといったさまざまな電装品が含まれる。
【0027】
ラジエータファン37は、ラジエータに送風して熱交換するファンである。
このラジエータファン37は車室2Rに対して下方の床側に配置されており、先述した三つの電装品34~36のそれぞれも車室2Rに対して下方の床側に配置されている。
一方、ラジエータファン37は後部領域2Bに配置されているのに対し、信号変換器34,パワステポンプ35およびボデー電装品36は前部領域2Fに配置されている。
【0028】
以下、信号変換器34,パワステポンプ35およびボデー電装品36のように前部領域2Fに配置された低電圧電装品を「第一の電装品34~36」とも称する。また、ラジエータファン37のように後部領域2Bに配置された低電圧電装品を「第二の電装品37」とも称する。
【0029】
低電圧電装品として例示列挙した全ての電装品34~37の電源は、低電圧バッテリ30の電圧がそのまま出力された第一電源と、高電圧バッテリ20の電圧が変圧器28で降圧されて出力された第二電源との何れも用いることができる。
第一電源の低電圧バッテリ30は、上述のように前部領域2Fに配置されている。これに対し、第二電源の高電圧バッテリ20および変圧器28は、上述のように後部領域2Bに配置されている。
【0030】
そのため、前部領域2Fの第一電源から後部領域2Bの低電圧電装品に電力が供給されたり、後部領域2Bの第二電源から前部領域2Fの低電圧電装品に電力が供給されたりすると、電力供給ケーブルの取り回しが煩雑になり、配索性の低下を招くおそれがある。
このような電力供給構造の複雑化を抑えるために、本実施形態では、つぎに説明する電力供給構造が用いられている。
【0031】
[1-2.電力供給構造]
本実施形態の電力供給構造は、低電圧電装品の配置領域ごとに電源を設定することにより、低電圧電装品に電力を供給するケーブルの取り回しが煩雑になったり配索性が低下したりすることの抑制を図っている。
なお、低電圧電装品に電力を供給するケーブルには、接続されている低電圧電装品のそれぞれに設定された消費電力や定格などに応じて、電線の導体の太さ(いわゆる「スケア」)が設定されている。
【0032】
この電力供給構造では、
図2に示すように、前部領域2Fに配置された低電圧バッテリ30(第一電源)から前部領域2F(
図1参照)に配置された第一の電装品34~36に電力が供給され、後部領域2B(
図1参照)に配置された高電圧バッテリ20および変圧器28(第二電源)から後部領域2Bに配置された第二の電装品37に電力が供給される。敷衍して言えば、同領域に配置された機器どうしで電力が供給される。
【0033】
以下、
図2に例示する電力供給系の接続形態を具体的に述べる。なお、
図1では、各機器どうしを接続するケーブルのうち一部の図示を便宜上省略している。
変圧器28の入力側には、高電圧バッテリ20をはじめとした高電圧系の電気回路(
図2では破線で囲って示す)が接続されている。
高電圧系の電気回路では、充電用の電力を供給するインターフェースボックス25やオンボードチャージャ26が高電圧バッテリ21~23に接続されている。また、高電圧バッテリ21~23からの電力が供給される電動ドライブモジュール24や配電ユニット27が接続されている。
【0034】
入力側に高電圧バッテリ20(
図2に示す例では第一高電圧バッテリ21)が接続された配電ユニット27の出力側には、変圧器28が接続されている。このようにして、高電圧バッテリ20からの電力が配電ユニット27を介して変圧器28へ分配される。
変圧器28の出力側には、低電圧バッテリ30をはじめとした低電圧系の電気回路が接続されている。
【0035】
低電圧系の電気回路では、前部領域2Fに配置された信号変換器34,パワステポンプ35およびボデー電装品36に対して、低電圧バッテリ30が変圧器28を介することなく接続されている。すなわち、信号変換器34,パワステポンプ35およびボデー電装品36を例示した第一の電装品は、低電圧バッテリ30に対して変圧器28を介することなく電気的に接続され、低電圧バッテリ30からの電力で作動する。
【0036】
このようにして、前部領域2Fの低電圧バッテリ30(第一電源)から電力が供給される第一回路1が設けられている。
第一回路1では、低電圧バッテリ31,32が直列に接続され、低電圧バッテリ31,32とバッテリイコライザ33とが接続されている。
【0037】
この第一回路1では、低電圧バッテリ31,32の各プラス端子に対して信号変換器34,パワステポンプ35およびボデー電装品36といった第一の電装品が電気的に接続される。詳細に言えば、第一低電圧バッテリ31のプラス端子は、第一ヒューズボックス41を介して作動電圧が12Vの電装品に対して電気的に接続されている。また、第二低電圧バッテリ32のプラス端子が第二ヒューズボックス42を介して作動電圧が24Vの低電圧電装品に対して電気的に接続されている。
【0038】
また、低電圧系の電気回路では、後部領域2Bに配置されたラジエータファン37に対して、低電圧バッテリ30を介することなく変圧器28が接続されている。すなわち、ラジエータファン37を例示した第二の電装品は、高電圧バッテリ20に対して変圧器28を介して電気的に接続され、高電圧バッテリ20の電圧が変圧器28で降圧された電圧の電力で作動する。
【0039】
このようにして、後部領域2Bの高電圧バッテリ20および変圧器28(第二電源)から電力が供給される第二回路2が設けられている。
第二回路2では、変圧器28とラジエータファン37との間に第三ヒューズボックス43が介設されている。
第二回路2における変圧器28と第一回路1における低電圧バッテリ30とが電気的に接続されることで、第一回路1および第二回路2が接続されている。
図2に示す具体例では、変圧器28の出力側と第一低電圧バッテリ31のプラス端子とがヒューズ49を介して接続されている。
【0040】
なお、ヒューズボックス41,42,43は、供給された電力を分岐して供給可能な機器である。こられヒューズボックス41,42,43のそれぞれには、例示の電装品34~37が接続されるのに限らず、他の低電圧電装品が接続されていてもよい。
そのほか、第一回路1では、低電圧バッテリ30(
図2の例では第一低電圧バッテリ31)が電動バスのボデーに接地(いわゆる「ボディーアース」)されている。一方、第二回路2では、たとえば高電圧バッテリ20のケースのように電動バスのボデーではない所定の箇所に変圧器28の接地箇所が設定されている。
【0041】
[2.作用および効果]
一実施形態の電力供給構造は、上述の構成を備えるため、下記のような作用および効果を得ることができる。
一実施形態の電力供給構造によれば、電動バスの前部領域2Fには低電圧バッテリ30および第一の電装品34~36が配置され、電動バスの後部領域2Bには高電圧バッテリ20,変圧器28および第二の電装品37が配置されている。また、第一の電装品34~36に対して低電圧バッテリ30は変圧器28を介することなく電気的に接続され、第二の電装品37に対して高電圧バッテリ20は変圧器28を介して電気的に接続される。
【0042】
そのため、電動バスの前部領域2Fに配置された低電圧バッテリ30からの電力は、低電圧バッテリ30と同領域に配置された第一の電装品34~36へ供給される。また、電動バスの後部領域2Bに配置された高電圧バッテリ20からの電力は、同領域に配置された変圧器28を介して、同領域に配置された第二の電装品37へ供給される。このようにして同領域に配置された機器どうしで電力が供給されるため、第一の電装品34~36や第二の電装品37へ電力を供給するケーブルの取り回しが煩雑になるのを抑制でき、ケーブルの配索性が低下するのを抑制できる。
よって、電動バスにおける電力供給構造の複雑化を抑えることができる。
【0043】
[II.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
たとえば、一実施形態で具体的に挙げた電装品は、あくまで例示であり、具体的に挙げた電装品の一部が省略されてもよいし、他の電装品が含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 第一回路
2 第二回路
10 リアエンドピラー
20 高電圧バッテリ
21 第一高電圧バッテリ
22 第二高電圧バッテリ
23 第三高電圧バッテリ
24 電動ドライブモジュール
25 インターフェースボックス
26 オンボードチャージャ
27 配電ユニット
28 変圧器
2R 車室
2B 後部領域
2F 前部領域
2U 上構造
2D 下構造
2M 中構造
30 低電圧バッテリ
31 第一低電圧バッテリ
32 第二低電圧バッテリ
33 バッテリイコライザ
34 信号変換器(第一の電装品)
35 パワステポンプ(第一の電装品)
36 ボデー電装品(第一の電装品)
37 ラジエータファン(第二の電装品)
41,42,43 ヒューズボックス
49 ヒューズ