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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092526
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 31/02 20060101AFI20240701BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20240701BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240701BHJP
   B60R 16/03 20060101ALN20240701BHJP
【FI】
B62D31/02 Z
B60L15/00 H
B60L50/60
B60R16/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208528
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真嶋 隆
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125FF03
5H125FF04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高電圧ケーブルに係る作業性を確保する。
【解決手段】天井側の第一電装品と床側の第二電装品とが設けられた電動バスをなす車体構造は、電動バスにおける後端かつ側端に立設されたリアエンドピラー40において車室2Rへ向かう側に凹設された空間4Sをなす凹部42が上下に延設された骨格部41と、第一電装品に対して一端が接続されるとともに第二電装品に対して他端が接続され、第一電装品と第二電装品とを電気的に接続し、一端と他端との間が凹部42のなす空間4Sに収容された高電圧ケーブル4,5,8,10,13と、高電圧ケーブル4,5,8,10,13の収容された凹部42のなす空間4Sを車室2Rとは反対に向かう側から覆うカバー部45と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室に対して上方の天井側に配置されているとともに電動バスの駆動用に設けられた高電圧バッテリと前記高電圧バッテリの電圧が印加されるとともに前記天井側に配置されたアッパ電装品とを有する第一電装品と、前記高電圧バッテリの電圧が印加されるとともに前記車室に対して下方の床側に配置された第二電装品とが設けられた前記電動バスにおいて、前記電動バスをなす車体構造であって、
前記電動バスにおける後端かつ側端に立設されたリアエンドピラーにおいて前記車室へ向かう側に凹設された空間をなす凹部が上下に延設された骨格部と、
前記第一電装品に対して一端が接続されるとともに前記第二電装品に対して他端が接続され、前記第一電装品と前記第二電装品とを電気的に接続し、前記一端と前記他端との間が前記凹部のなす前記空間に収容された高電圧ケーブルと、
前記高電圧ケーブルの収容された前記凹部のなす前記空間を前記車室とは反対に向かう側から覆うカバー部と、を備えた
ことを特徴とする車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、高電圧ケーブルが配索される電動バスの車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧バッテリから供給された電力によって走行する電気自動車の一つとして、天井と床とで上下に囲まれた車室の設けられた電動バスが知られている。電動バスには、車室に対して上方の天井側や車室に対して下方の床側といった車室外側に電装品や高電圧ケーブルといった車載機器が配置されうる。たとえば、電装品が床側に配置された電動バスが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-289252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動バスには、上述のように電装品が床側に配置されるだけでなく、高電圧バッテリをはじめとした電装品が天井側に配置されうる。天井側に配置された高電圧バッテリから印加される高電圧で作動する電装品が床側に配置された場合には、高電圧バッテリと高電圧電装品とを電気的に接続する高電圧ケーブルを電動バスの天井側と床側とを結ぶように配索する必要がある。このような高電圧ケーブルが配索される箇所や構造によっては、高電圧ケーブルの取り付けや保守整備に係る作業性の確保が不十分という課題を招くおそれがある。
よって、高電圧ケーブルに係る作業性を確保するうえで、改善の余地がある。
本件は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、電動バスにおける高電圧ケーブルに係る作業性を確保することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現できる。
適用例に係る車体構造は、車室に対して上方の天井側に配置されているとともに電動バスの駆動用に設けられた高電圧バッテリと前記高電圧バッテリの電圧が印加されるとともに前記天井側に配置されたアッパ電装品とを有する第一電装品と、前記高電圧バッテリの電圧が印加されるとともに前記車室に対して下方の床側に配置された第二電装品とが設けられた前記電動バスにおいて、前記電動バスをなす車体構造であって、前記電動バスにおける後端かつ側端に立設されたリアエンドピラーにおいて前記車室へ向かう側に凹設された空間をなす凹部が上下に延設された骨格部と、前記第一電装品に対して一端が接続されるとともに前記第二電装品に対して他端が接続され、前記第一電装品と前記第二電装品とを電気的に接続し、前記一端と前記他端との間が前記凹部のなす前記空間に収容された高電圧ケーブルと、前記高電圧ケーブルの収容された前記凹部のなす前記空間を前記車室とは反対に向かう側から覆うカバー部と、を備える。
本件の適用例によれば、リアエンドピラーに延設された凹部のなす空間に収容された高電圧ケーブルがカバー部に覆われた状態で配索されるため、カバー部によって高電圧ケーブルを露出させることなく保護することができ、高電圧ケーブルの保守整備や交換の頻度を抑えることができる。
【発明の効果】
【0006】
本件の適用例によれば、電動バスにおける高電圧ケーブルに係る作業性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る車体構造の適用された電動バスを示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る車体構造からカバー部が取り外された要部を拡大して示す斜視図である。
図3】一実施形態に係る車体構造の要部断面図である。
図4】一実施形態に係る車体構造におけるケーブルの接続形態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態としての車体構造を説明する。
本実施形態の車体構造は、電動バスにおいてケーブルを配索するための構造である。電動バスとは、路線バスや観光バスといった乗合自動車(すなわち「バス」)のうち、電動の車両である。この電動バスには、高電圧バッテリに接続された電動発電機のみを動力源とする電気自動車が含まれ、電動発電機だけでなく内燃機関を動力源とするハイブリッド電気自動車も含まれる。
【0009】
[I.一実施形態]
下記の一実施形態では、車体構造に関する構成を項目[1]で述べ、項目[1]の構成による作用および効果を項目[2]で述べる。
なお、一実施形態の説明で用いる方向について、つぎのように定める。
電動バスの前進方向を前方(図中には「F」と記す)とし、その反対方向を後方(図中には「B」と記す)とする。これらの前方および後方は、前後方向(車両前後方向)や車長方向と称してもよい。また、前方を基準に左方(図中には「L」と記す)および右方(図中には「R」と記す)を定める。これらの左方および右方は、車幅方向や左右方向と称してもよい。さらに、重力の作用する方向を下方(図中には「D」と記す)とし、その反対方向を上方(図中には「U」と記す)とする。これらの上方および下方は、上下方向と称してもよい。前後方向,車幅方向および上下方向は互いに直交する。前後方向および車幅方向は水平方向に沿う方向であるのに対し、上下方向は鉛直方向に沿う方向である。
【0010】
[1.構成]
項目[1]で説明する車体構造は、車室を備えた電動バスに適用され、電動バスにおける種々の箇所に配置された電装品どうしを接続する電気ケーブルを配索するための構造である。
本項目[1]では、車室が設けられた電動バスの構造の概要を小項目[1-1]で述べ、電動バスの電装品やケーブルなどの電装系に関して小項目[1-2]で説明する。そして、電動バスにおいて電気ケーブルを配索するための車体構造に関して小項目[1-3]で詳述する。
【0011】
[1-1.構造の概要]
電動バスには、図1に示すように、ドライバや客員が乗る車室2R(「客室」とも称される)が設けられ、車室2Rを囲む各種の構造が設けられている。
車室2Rに対して上方の天井側には、車室2Rを上方から覆うルーフ状の上構造2Uが設けられている。車室2Rに対して下方の床側には、車室2Rを下方から覆うフロア状の下構造2Dが設けられている。上構造2Uおよび下構造2Dによって、車室2Rが上下に挟まれている。
【0012】
これらの上構造2Uおよび下構造2Dは、上下に立設された複数の構造が設けられた中構造2Mによって互いに接続されている。中構造2Mは、車室2Rに対して前後左右に設けられている。
この中構造2Mには、窓やドアなどの領域以外に設けられた柱状の構造が林立している。なお、中構造2Mについては、小項目[1-3]で詳細を後述する。
【0013】
電動バスは、上下方向に沿って領域分けする観点から、既述の上構造2U,中構造2Mおよび下構造2Dの三構造に大別できる。この電動バスは、前後方向に沿って領域分けする観点からは、前側の半部をなす前部領域2Fおよび後側の半部をなす後部領域2Bの二領域に大別できる。
上述のような構造の電動バスには、つぎに説明する種々の電装品が搭載されている。
【0014】
[1-2.電装系]
電動バスには、以下に例示列挙する複数の電装品20~34(「HV components」と称してもよい)が搭載されている。
・電動ドライブモジュール20 :電動バスを走行駆動する原動機系の電装品20
・高電圧バッテリ21~24 :充放電系の電装品21~24
・インターフェースボックス25:交流用の充電系の電装品25
・オンボードチャージャ26 :直流用の充電系の電装品26
・配電ユニット27,28 :電力を分配する電装品27,28
・変圧器29 :電圧を変えて出力する電装品29
・ヒータ30,31 :電熱系の電装品30,31
・空調システム32,33 :空調系の電装品32,33
・コンプレッサ34 :空気を圧縮する電装品34
【0015】
==各電装品==
電動ドライブモジュール20(「electric Drive Module」とも称される,「eDM」とも略称される)は、インバータとドライブモータがユニット化されたモジュールである。インバータとは、直流を交流に変換して、交流のドライブモータを動かす機器である。ドライブモータは、力行状態では電動機として機能し、回生状態では発電機として機能する電動発電機(「モータジェネレータ」とも称される)である。
【0016】
この電動ドライブモジュール20は、下構造2Dに搭載され、車両の後部領域2Bに配置される。すなわち、電動ドライブモジュール20は、従来のように内燃機関のみを動力源として搭載したバスにおける内燃機関と同様の箇所に配置される。
上記の電動ドライブモジュール20は、つぎに説明する高電圧バッテリ21~24からの給電時には力行状態でドライブモータが電動機として作動し、回生状態ではドライブモータが発電機として作動し、発電機として作動するドライブモータからの電力によって高電圧バッテリ21~24が充電される。
【0017】
高電圧バッテリ21~24は、電動バスの駆動用に設けられた高電圧の二次電池であり、電動ドライブモジュール20をはじめとした各種の電装品の電源をなす。たとえば、高電圧バッテリ21~24の電圧(すなわち「高電圧」)は、電動ドライブモジュール20に限らず、他の電装品25~34にも印加される。そのため、電装品20,25~34を「高電圧電装品」と称してもよい。
【0018】
なお、「高電圧バッテリ21~24の電圧」とは、四つの高電圧バッテリ21~24のうち少なくとも一つの電圧と意味する。同様に、「高電圧バッテリ21~23の電圧」とは、三つの高電圧バッテリ21~23のうち少なくとも一つの電圧と意味する。
また、「高電圧バッテリ21~24の電圧が印加される電装品」には、高電圧バッテリ21~24の少なくとも一つから出力された電力が配電ユニット27,28を介して供給される電装品が含まれ、高電圧バッテリ21~24の少なくとも一つへ充電用の電力を入力する電装品も含まれる。同様に、「高電圧バッテリ21~23の電圧が印加される電装品」には、高電圧バッテリ21~23の少なくとも一つから出力された電力が配電ユニット27,28を介して供給される電装品が含まれ、高電圧バッテリ21~23の少なくとも一つへ充電用の電力を入力する電装品も含まれる。
【0019】
ここでは、高電圧バッテリ21~24として、第一バッテリ21,第二バッテリ22,第三バッテリ23,第四バッテリ24の四つが後部領域2Bに配置された例を挙げる。
第一バッテリ21,第二バッテリ22および第三バッテリ23は、上構造2Uに支持されており、車室2Rに対して天井側に配置されている。天井側において、最も前方に第一バッテリ21が配置され、最も後方に第三バッテリ23が配置され、第一バッテリ21と第三バッテリ23との間に第二バッテリ22が配置される。
【0020】
このように三つのバッテリ21~23が前後に並設されるのに対し、第四バッテリ24は、一つだけが下構造2Dに支持されており、車室2Rに対して床側に配置されている。
ただし、三つのバッテリ21~23のみが高電圧バッテリとして設けられ、第四バッテリ24の搭載を省略してもよい。このようにバッテリ21~23の全てが天井側に配置された形態は、床側の第四バッテリ24が省略されることから、電動バスの低床化に資する。
なお、高電圧バッテリ21~24が設けられる数は、上記のように四つに限らず三つ以下であってもよいし、五つ以上であってもよく、電動バスに要求される航続距離や充電容量などに応じて適宜設定することができる。
【0021】
インターフェースボックス25およびオンボードチャージャ26は、充電ガンの差込口(いわゆる「インレット」)に接続された充電系に機器である。これらのインターフェースボックス25およびオンボードチャージャ26は、下構造2Dに支持されており、車室2Rに対して床側であって後部領域2Bに配置されている。
インターフェースボックス25は、交流の電力で充電するときに使用され、「DC interface box」と称されたり、「DCB」と略称されたりする。オンボードチャージャ26は、直流の電力で充電するときに使用され、「AC onboard charger」と称されたり、「OBC」と略称されたりする。
【0022】
配電ユニット27,28は、高電圧バッテリ21~24からの電力(いわば「電源」)を分配する機器であり、「Power Distribution Unit」と称されたり、「PDU」と略称されたりする。これら配電ユニット27,28は、ヒューズを内蔵しており、過電流あるいは加熱に対する保護機能を担う。
ここでは、配電ユニット27,28として、第一配電ユニット27,第二配電ユニット28の二つが上構造2Uに支持されており、車室2Rに対して天井側であって後部領域2Bに配置されている。ただし、第二配電ユニット28を省略して、第一配電ユニット27のみが配置されていてもよい。
【0023】
変圧器29は、高電圧バッテリ21~24から印加された直流の電圧を降圧して出力する機器であり、「DC/DC converter」とも称される。高電圧バッテリ21~24から印加された電圧は、変圧器11によって、いわゆる「車載バッテリ」(図示省略)と称される低電圧バッテリに応じた電圧に降圧して出力される。
この変圧器29は、下構造2Dに支持されており、車室2Rに対して床側であって後部領域2Bに配置されている。
【0024】
ヒータ30,31は、何らかの対象を加熱して過冷却の抑制や暖房を図る装置である。
ここでは、ヒータ30,31として、第四バッテリ24用の第一ヒータ30やドライバ用の第二ヒータ31が設けられた例を挙げる。
上記のヒータ30,31は、下構造2Dに支持されており、車室2Rに対して床側に配置されている。ただし、第一ヒータ30は後部領域2Bに配置されているのに対し、第二ヒータ31は前部領域2Fに配置されている。すなわち、加熱対象に応じた箇所にヒータ30,31のそれぞれが配置されている。
【0025】
空調システム32,33は、暖房,換気といった空調系のユニット機器であり、いわゆるHVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)システムである。ここでは、空調システム32,33として、ドライバ用の第一空調システム32と、車室用の第二空調システム33とが設けられた例を挙げる。
これらの空調システム32,33は、前部領域2Fに配置されている。ただし、第一空調システム32は、下構造2Dに支持されており、車室2Rに対して床側に配置されている。一方、第二空調システム33は、上構造2Uに支持されており、車室2Rに対して天井側に配置されている。
【0026】
コンプレッサ34は、電動で空気を圧縮する機器である。ここでは、コンプレッサ34として、電動バスのエアサスペンション用に空気を圧縮するコンプレッサ34が設けられた例を挙げる。
このコンプレッサ34は、下構造2Dに支持されており、車室2Rに対して床側であって後部領域2Bに配置されている。
【0027】
==電装品の配置==
つぎに、上述の電装品20~34について、配置された領域ごとにまとめて整理する。
車室2Rに対して上方の天井側には配置された複数の電装品(以下「第一電装品」とも称する)は、第一バッテリ21,第二バッテリ22,第三バッテリ23,第一配電ユニット27,第二配電ユニット28,第二空調システム33である。すなわち、第一電装品には、高電圧バッテリ21~23のほか、高電圧バッテリ21~24の電圧が印加される他の電装品27,28,33(以下「アッパ電装品」とも称する)も含まれる。
【0028】
車室2Rに対して下方の床側に配置された複数の電装品(以下「第二電装品」とも称する)は、電動ドライブモジュール20,第四バッテリ24,インターフェースボックス25,オンボードチャージャ26,変圧器29,第一ヒータ30,第二ヒータ31,第一空調システム32,コンプレッサ34である。
【0029】
なお、前部領域2Fに配置された複数の電装品(第一の電装品)は、第二ヒータ31,第一空調システム32,第二空調システム33である。
一方、後部領域2Bに配置された複数の電装品(第二の電装品)は、電動ドライブモジュール20,高電圧バッテリ21~24,インターフェースボックス25,オンボードチャージャ26,第一配電ユニット27,第二配電ユニット28,変圧器29,第一ヒータ30,コンプレッサ34である。
【0030】
==電装品のケーブル==
上述の電装品20~34のそれぞれには、電力授受用に電気ケーブルが接続されている。ここでいう「電気ケーブル」とは、高電圧バッテリ21~24の電圧が印加される電気ケーブルであり、電装品どうしを電気的に接続する電線である。
この電気ケーブルには、接続されている電装品20~34のそれぞれに設定された消費電力や定格などに応じて、電線の導体の太さ(いわゆる「スケア」)が設定されている。すなわち、電気ケーブルには、さまざまな太さが混在しうる。
なお、各電装品20~34には、電力授受用に電気ケーブルのほかに、漏電対策用のアース線(図示省略)が接続されている。
【0031】
以下、図4を参照して、電気ケーブル1~13,16の接続形態を説明する。なお、図1では、電気ケーブル1~13,16のうち一部の図示を便宜上省略している。
電気ケーブル1~13,16は、配索される領域によって、下掲の三種に大別できる。
・上ケーブル:天井側の領域のみで配索される電気ケーブル
・下ケーブル:床側の領域のみで配索される電気ケーブル
・中ケーブル:天井側および床側の領域に跨がって配索される電気ケーブル
【0032】
上ケーブルは、車室2Rに対して上方の天井側に配置された二つの電装品どうしを接続する電気ケーブルである。この上ケーブルは、中構造2Mや下構造2Dには進入せず、上構造2Uのみで配索される。
下ケーブルは、車室2Rに対して下方の床側に配置された二つの電装品どうしを接続する電気ケーブルである。この下ケーブルは、上構造2Uや中構造2Mには進入せず、下構造2Dのみで配索される。
これら上ケーブルおよび下ケーブルのそれぞれは、二つの電装品のうち一方に対して一端が接続され、二つの電装品のうち他方に対して他端が接続される。
【0033】
中ケーブルは、車室2Rに対して上方の天井側に配置されたバッテリ21~23およびアッパ電装品の第一電装品と、車室2Rに対して下方の床側に配置された第二電装品とを接続する電気ケーブルである。中ケーブルの一端は、第一電装品に対して接続される。また、中ケーブルの他端は、第二電装品に対して接続される。この中ケーブルは、上構造2U,中構造2Mおよび下構造2Dに跨がって配索されている。
以下、上ケーブル,下ケーブル,中ケーブルのそれぞれについて、具体的に説明する。
【0034】
<上ケーブル>
以下、上ケーブルとして、五本の上ケーブル2,3,7,11,16を例示する。
第一の上ケーブル2は、第一バッテリ21と第二バッテリ22とを接続するケーブルである。第二の上ケーブル3は、第二バッテリ22と第三バッテリ23とを接続するケーブルである。これらの上ケーブル2,3により、バッテリ21,22,23が直列に接続される。
【0035】
第三の上ケーブル7は、第一バッテリ21と第一配電ユニット27とを接続するケーブルである。第三の上ケーブル7によって第一バッテリ21から第一配電ユニット27へ電力が供給される。
第四の上ケーブル11は、第二バッテリ22と第二配電ユニット28とを接続するケーブルである。第四の上ケーブル11によって第二バッテリ22から第二配電ユニット28へ電力が供給される。なお、第二配電ユニット28が省略された場合には、第四の上ケーブル11も省略される。
【0036】
第五の上ケーブル16は、第二配電ユニット28と第二空調ユニット33とを接続するケーブルである。第五の上ケーブル16によって、第二配電ユニット28に供給された電力が第二空調ユニット33へ分配される。
なお、第二配電ユニット28が省略された場合には、第五の上ケーブル16によって、第一配電ユニット27と第二空調ユニット33とが接続される。この場合には、第一配電ユニット27に供給された電力が第二空調ユニット33へ分配される。
【0037】
<下ケーブル>
以下、下ケーブルとして、二本の下ケーブル1,6を例示する。
第一の下ケーブル1は、第四バッテリ24と電動ドライブモジュール20とを接続するケーブルである。第一の下ケーブル1によって、後述する中ケーブル4を介して高電圧バッテリ21~24からの電力が電動ドライブモジュール20へ供給される。
この下ケーブル1は、高電圧や大電流の電力供給に用いられるため、安全性を高めるためにヒューズ付きのケーブルを用いることが好ましい。
【0038】
第二の下ケーブル6は、インターフェースボックス25とオンボードチャージャ26とを接続するケーブルである。第二の下ケーブル6によって、後述する中ケーブル5を介して直流の電力でバッテリ21~24が充電可能となる。
なお、インターフェースボックス25やオンボードチャージャ26には、充電ガンの差込口(図示省略)が接続されている。
【0039】
<中ケーブル>
以下、中ケーブルとして、七本の中ケーブル4,5,8,9,10,12,13を例示する。
これら七本の中ケーブル4,5,8,9,10,12,13は、配索された領域に着目すると、前部領域2Bに設けられた二本の前中ケーブル9,12と、後部領域2Bに設けられた五本の後中ケーブル(以下「高電圧ケーブル」と称する)4,5,8,10,13との二種に細別できる。
【0040】
第一の前中ケーブル9は、第一配電ユニット27と第一ヒータ30とを接続するケーブルである。第一の前中ケーブル9によって、第一配電ユニット27に供給された電力が第一ヒータ30へ分配される。
第二の前中ケーブル12は、第一配電ユニット27と第一空調システム32とを接続するケーブルである。第二の前中ケーブル12によって、第一配電ユニット27に供給された電力が第一空調システム32へ分配される。
【0041】
第一の高電圧ケーブル4は、第三バッテリ23と第四バッテリ24とを接続するケーブルである。第一の高電圧ケーブル4によって、バッテリ23,24が直列に接続される。なお、第四バッテリ24が省略された場合には、第一の高電圧ケーブル4も省略される。この場合には、第一の下ケーブル1に代えて、第三バッテリ23と電動ドライブモジュール20とを接続する高電圧ケーブルが用いられる。
第二の高電圧ケーブル5は、インターフェースボックス25と第一バッテリ21とを接続するケーブルである。第二の高電圧ケーブル5によって、インターフェースボックス25から充電用の電力が第一バッテリ21に供給可能となる。
【0042】
第三の高電圧ケーブル8は、第一配電ユニット27と変圧器29とを接続するケーブルである。第三の高電圧ケーブル8によって、第一配電ユニット27に供給された電力が変圧器29へ分配される。
第四の高電圧ケーブル10は、第一配電ユニット27と第二ヒータ31とを接続するケーブルである。第四の高電圧ケーブル10によって、第一配電ユニット27に供給された電力が第二ヒータ31へ分配される。
【0043】
第五の高電圧ケーブル13は、第二配電ユニット28とコンプレッサ34とを接続するケーブルである。第五の高電圧ケーブル13によって、第二配電ユニット28に供給された電力がコンプレッサ34へ分配される。
なお、第二配電ユニット28が省略された場合には、第五の高電圧ケーブル13によって、第一配電ユニット27とコンプレッサ34とが接続される。この場合には、第一配電ユニット27に供給された電力が第二空調ユニット33へ分配される。
【0044】
[1-3.車体構造]
一実施形態の車体構造は、車体の骨格をなす構造の外側に高電圧ケーブル4,5,8,10,13用のスペースを設け、このスペースをカバー部45で覆うことにより、高電圧ケーブル4,5,8,10,13の取り付けや保守整備に係る作業性の確保を図っている。
この車体構造は、図1を参照して上述の上構造2U,中構造2Mおよび下構造2Dのうち、中構造2Mに適用される。
【0045】
中構造2Mには、上構造2Uと下構造2Dとを結ぶ柱状の構造が林立されている。
このように林立した柱状の構造としては、車室2Rに対して左後,右後の各箇所(電動バスにおける後端かつ側端)に立設されたリアエンドピラー40が挙げられる。リアエンドピラー40によって、上構造2Uと下構造2Dが車両後部の隅で構造的に接続されている。
【0046】
このリアエンドピラー40は、電動バスの四隅のうち後方で上下に立設された支持構造を担うことから、四隅以外に設けられた他のピラー50と比較して太く丈夫に設けられている。
なお、後部領域2Bに配置された電装品のうち、電動ドライブモジュール20,第三バッテリ23,第四バッテリ24,インターフェースボックス25,オンボードチャージャ26,変圧器29,第一ヒータ30などは、リアエンドピラー40の近傍に配置されている。
【0047】
リアエンドピラー40には、図2図3に示すように、アングル形状(平面視でL字状)の骨格部41が設けられている。
骨格部41には、車室2Rへ向かう側(すなわち「内側」)に凹設された空間4Sをなす凹部42が上下に延設されている。凹部42は、空間4Sに対して車室2R側に配置された構造である。換言すれば、凹部42に対して車室2Rとは反対側(すなわち「外側」)のスペースが空間4Sである。
【0048】
この骨格部41には、車幅方向の外側を向く姿勢で立設されたインナーパネル43と、車体の骨格を担う部位(いわば「ボデー骨格」)のうち後方を向く板状をなす一部44とが含まれる。
インナーパネル43や骨格を担う部位の一部44に対して車室2Rとは反対側に空間4Sが位置する。
【0049】
骨格部41において上下に延設された凹部42のなす空間4Sには、高電圧ケーブル4,5,8,10,13が収容されている。具体的に言えば、高電圧ケーブル4,5,8,10,13において、第一電装品に接続された一端と第二電装品に接続された他端との間の部位(中間部)が、凹部42のなす空間4Sにおいて上下に配索されている。図2図3では、結束バンド60によって束ねられた高電圧ケーブル4,5,8,10,13が空間4Sに収容された例を示す。ただし、図3では、高電圧ケーブル4,5,8,10,13のうち天井側に配置された第一電装品へ延びる部分については図示を便宜上省略している。
なお、凹部42のなす空間4Sには、高電圧ケーブル4,5,8,10,13が収容されるのに限らず、各電装品20~34の漏電対策用に接続されたアース線が収容されてもよい。
【0050】
仮に、凹部のなす空間に収容された高電圧ケーブルが露出していると、高電圧ケーブルの耐久性低下や保護性低下といった不具合を招くおそれがある。延いては、高電圧ケーブルの保守整備や交換の頻度が高まるおそれがある。
そこで、本実施形態の車体構造には、高電圧ケーブル4,5,8,10,13が収容された空間4Sを外側(車室2Rとは反対に向かう側)から覆うカバー部45が設けられている。このカバー部45は、着脱自在(着脱可能)に設けられていることが好ましい。
【0051】
このカバー部45は、車体の構造を担うものではなく、たとえば樹脂性のパネル部材が用いられる。本カバー部45は、インナーパネル43対して外側に配置されるため、アウターパネルと称してもよい。
上述の車体構造により、高電圧ケーブル4,5,8,10,13が上構造2Uと下構造2Dとを結ぶ柱状の構造に沿って配索されている。
【0052】
そのほか、図1に示すように、前中ケーブル9,12も上構造2Uと下構造2Dとを結ぶ柱状の構造に沿って配索されている。具体的に言えば、前中ケーブル9,12は、後部領域2Bのリアエンドピラー40とは異なる他のピラー50に沿って配索されている。ここで例示する他のピラー50は、電動バスの四隅以外に設けられたピラーであって、前部領域2Fにおいて立設されたピラーである。
【0053】
[2.作用および効果]
一実施形態の車体構造は、上述の構成を備えるため、下記のような作用および効果を得ることができる。
一実施形態の車体構造によれば、リアエンドピラー40に延設された凹部42のなす空間4Sに収容された高電圧ケーブル4,5,8,10,13がカバー部45に覆われた状態で配索される。そのため、カバー部45によって高電圧ケーブル4,5,8,10,13を露出させることなく保護することができ、高電圧ケーブル4,5,8,10,13の保守整備や交換の頻度を抑えることができる。また、このカバー部45は着脱可能であってもよく、その場合、カバー部45を取り外せば高電圧ケーブル4,5,8,10,13の取り付け作業や交換作業の向上に資する。
【0054】
仮に、高電圧ケーブルの配索経路に車室の内部が含まれている場合には、高電圧ケーブルが車室へ進入する箇所(いわば「連絡貫通部」)に高電圧ケーブルの本数に応じた大きさや数の貫通口を穿設する必要があったり、特に天井側の貫通口には防止処置を施す必要があったりするため、高電圧ケーブルの配索作業性を確保するのが困難である。
また、高電圧ケーブルは、高電圧が印加されることから分割不能(一体不可分)に設けられることが多い。たとえば、ヒューズ付きの高電圧ケーブルでは、ヒューズが溶断したとしてもヒューズのみを交換することはできず、ケーブル全体を交換する必要がある。
【0055】
上記のように配索作業性の確保が困難であったりケーブルの部分的な交換や保守が困難であったりしたとしても、本実施形態の車体構造によれば、車体の骨格をなす構造の外側に高電圧ケーブル4,5,8,10,13用のスペースとして、リアエンドピラー40に延設された凹部42のなす空間4Sが設けられている。そのため、高電圧ケーブル4,5,8,10,13の配索作業性を確保することができる。
よって、高電圧ケーブル4,5,8,10,13に係る作業性を確保することができる。
【0056】
ところで、リアエンドピラー40の近傍には、第一電装品のうち第三バッテリ23が配置され、電動ドライブモジュール20,第四バッテリ24,インターフェースボックス25,オンボードチャージャ26,変圧器29,第一ヒータ30などの第二電装品が配置されている。このように多くの電装品が近傍に配置されたリアエンドピラー40に沿って高電圧ケーブル4,5,8,10,13が配索されているため、高電圧ケーブル4,5,8,10,13の配索距離が抑えられる。また、リアエンドピラー40は、他のピラー50などの構造と比較して太く丈夫に設けられていることから、高電圧ケーブル4,5,8,10,13の配索空間を確保しやすい。配索距離の抑制や配索空間の確保によって、高電圧ケーブル4,5,8,10,13に係る作業性を向上させることができる。
【0057】
なお、高電圧バッテリ21~24のうち床側の第四バッテリ24が省略され、天井側の第一バッテリ21,第二バッテリ22,第三バッテリ23のみが高電圧バッテリとして電動バスに設けられた場合には、電動バスの低床化に資するため、電動バスのうち路線バスの車体構造として好適である。
【0058】
[II.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
たとえば、一実施形態で具体的に挙げた電装品は、あくまで例示であり、具体的に挙げた電装品の一部が省略されてもよいし、他の電装品が含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1,6 下ケーブル
2,3,7,11,16 上ケーブル
4,5,8,10,13 高電圧ケーブル
9,12 前中ケーブル
2D 下構造
2B 後部領域
2F 前部領域
2M 中構造
2R 車室
2U 上構造
20 電動ドライブモジュール
21~24 高電圧バッテリ
25 インターフェースボックス
26 オンボードチャージャ
27,28 配電ユニット
29 変圧器
30,31 ヒータ
32,33 空調システム
34 コンプレッサ
40 リアエンドピラー
41 骨格部
42 凹部
43 インナーパネル
44 ボデー骨格の一部
45 カバー部
4S 空間
50 他のピラー
60 結束バンド
図1
図2
図3
図4