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特開2024-92528ガイド部材及びステントデリバリー装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092528
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ガイド部材及びステントデリバリー装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/962 20130101AFI20240701BHJP
【FI】
A61F2/962
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208537
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】大塚 哲也
(72)【発明者】
【氏名】玉井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】宮久 優子
(72)【発明者】
【氏名】向井 智和
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB09
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB20
4C267BB26
4C267BB31
4C267BB39
4C267BB40
4C267CC08
4C267CC09
4C267CC20
4C267CC23
4C267CC24
4C267HH01
4C267HH07
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】ストリングを案内可能であり、好適な形状等を有するガイド部材及びガイド部材を備えるステントデリバリー装置を提供する。
【解決手段】ガイド部材(ガイドリブ10)は、インナーシース2とアウターシース3との間にステント5を収容するステントデリバリー装置(デリバリー装置1)におけるインナーシース2に装着して用いられ、ステント5を縮径状態に縛るストリング6をインナーシース2に沿ってガイドするものである。ガイドリブ10は、軸線方向に延在して、インナーシース2の周面に装着可能な装着部(爪部10a)と、爪部10aの軸線方向に直交する方向に、爪部10aから突出し、ストリング6が通される複数の挿通孔10cを有する突出部10bと、を備える。ガイドリブ10は、軸線方向に視て、突出部10bの外面幅W2が爪部10aの外面幅W1より狭いことを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーシースと該インナーシースの外周を覆うように設けられたアウターシースとを備えて、前記インナーシースと前記アウターシースとの間にステントを収容して、前記ステントを搬送可能なステントデリバリー装置における前記インナーシースに装着して用いられ、前記ステントを縮径状態に縛るストリングを前記インナーシースに沿ってガイドするガイド部材であって、
軸線方向に延在して、前記インナーシースの周面に装着可能な装着部と、
該装着部の前記軸線方向に直交する方向に、前記装着部から突出し、前記ストリングが通される複数の挿通孔を有する突出部と、を備え、
前記軸線方向に視て、前記突出部の外面幅が前記装着部の外面幅より狭いことを特徴とするガイド部材。
【請求項2】
前記突出部は、前記突出部の突出方向及び前記装着部の軸線方向に平行に延在し、かつ、互いに平行に延在する一対の側面を有している請求項1に記載のガイド部材。
【請求項3】
前記突出部における長手方向の少なくとも一方の端部には、その端側に向かうにつれて高さが低くなるように形成された傾斜部が形成されており、
該傾斜部に前記挿通孔が開口している請求項1又は2に記載のガイド部材。
【請求項4】
前記複数の挿通孔は、前記装着部の前記軸線方向に延在する複数の貫通孔であり、
前記複数の貫通孔のうち一部に設けられた開口面は、前記複数の貫通孔のうち他の一部に設けられた貫通孔の開口面に対し、外方に向けられている請求項3に記載のガイド部材。
【請求項5】
前記傾斜部は、部分球面状に形成されている請求項4に記載のガイド部材。
【請求項6】
前記装着部は、前記軸線方向に対して垂直な断面において、少なくとも一部円弧状の接触部を有し、
前記軸線方向に視て、前記突出部の幅方向における前記挿通孔の中心から前記突出部の外面までの長さは、前記突出部の突出方向における前記装着部の前記接触部から前記突出部の外面の最短長さよりも短い請求項5に記載のガイド部材。
【請求項7】
インナーシースと、
該インナーシースの外周を覆うように設けられたアウターシースと、
前記インナーシースと前記アウターシースとの間に収容されたステントと、
前記ステントを縮径状態に縛るストリングと、
前記インナーシースに装着して用いられ、前記ストリングを前記インナーシースに沿ってガイドするガイド部材と、を備えて、前記ステントを搬送可能なステントデリバリー装置であって、
前記ガイド部材は、
軸線方向に延在して、前記インナーシースの周面に装着可能な装着部と、
該装着部の前記軸線方向に直交する方向に、前記装着部から突出し、前記ストリングが通される複数の挿通孔を有する突出部と、を備え、
前記軸線方向に視て、前記突出部の外面幅が前記装着部の外面幅より狭いことを特徴とするステントデリバリー装置。
【請求項8】
前記突出部における長手方向の少なくとも一方の端部には、その端側に向かうにつれて高さが低くなるように形成された傾斜部が形成されており、
前記ガイド部材における前記傾斜部は、前記突出部の近位端部に設けられ、
前記傾斜部の外面は、近位側に向かうにつれて高さが低くなるように形成されている請求項7に記載のステントデリバリー装置。
【請求項9】
前記ステントは、複数のワイヤが編み込まれることによって形成されており、
前記複数のワイヤは、互いに折り返された部分である複数のフック部と、交差するのみの複数のクロス部と、で構成された網目を備え、
前記ガイド部材の前記突出部は、前記網目に収容されており、前記軸線方向において隣接する前記フック部の間に配置されている請求項7又は8に記載のステントデリバリー装置。
【請求項10】
前記突出部における前記装着部からの突出高さは、前記ステントを構成する前記ワイヤの2本分の線径の長さよりも高い請求項9に記載のステントデリバリー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントを体管内の目標位置に好適に搬送できるガイド部材及びステントデリバリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体管(消化管や血管等)内に生じた狭窄部又は閉塞部内に留置され、狭窄部又は閉塞部を拡張して流路を形成するために、ステント(例えば、特許文献1を参照。)を目標位置に搬送するステントデリバリー装置が用いられている。
【0003】
図7及び図8を参照して、ステントデリバリー装置(デリバリー装置100)について説明する。図7は、ストリング106を引いた状態の従来のデリバリー装置100を示す説明図であり、図8は、図7の状態からさらに遠位側ストリング106cを引いた状態の従来のデリバリー装置100を示す説明図である。
なお、図7の状態は、不図示の近位側ストリングが引き抜かれて、ステント105の近位側における近位側ストリングによる縛りが解除されて、ステント105の近位側が拡張している状態である。
【0004】
ステントデリバリー装置(デリバリー装置100)は、インナーシース102と、インナーシース102の外周に配置されるステント105と、ステント105をインナーシース102の外周面に縛り付けるストリング106と、ステント105を収容及び露出可能なアウターシース103と、を備える。
【0005】
ストリング106は、中間ストリング106b及び遠位側ストリング106cで構成されている。
アウターシース103は、インナーシース102に対して軸方向に摺動可能に構成されることによって、ステント105を収容する状態と、露出させる状態とに切り替える。
【0006】
デリバリー装置100は、アウターシース103からステント105が露出している状態で、ストリング106を牽引することで、ステント105の縛り付けを解除して、ステント105を拡張させる。
しかし、図8に示すように、遠位側ストリング106cを牽引するとステント105が開き、遠位側ストリング106cは、牽引力による張力によって張った状態となる。この状態において、遠位側ストリング106cが押圧することによりステント105の向きを目標とする向きから変えてしまうことがある。このため、ストリング106をインナーシース102に沿わせるように案内するガイド部材が必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2005-514106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、インナーシースとアウターシースとの間にはステントが設けられており、また、施術の操作性を高めるためにシースの細径化が求められてこともあり、ガイド部材を設けるスペースが限られていた。この限られたスペースに収容可能とするように、ガイド部材の形状等に関して改善の余地があった。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ストリングを案内可能であり、好適な形状等を有するガイド部材及びガイド部材を備えるステントデリバリー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のガイド部材は、インナーシースと該インナーシースの外周を覆うように設けられたアウターシースとを備えて、前記インナーシースと前記アウターシースとの間にステントを収容して、前記ステントを搬送可能なステントデリバリー装置における前記インナーシースに装着して用いられ、前記ステントを縮径状態に縛るストリングを前記インナーシースに沿ってガイドするガイド部材であって、軸線方向に延在して、前記インナーシースの周面に装着可能な装着部と、該装着部の前記軸線方向に直交する方向に、前記装着部から突出し、前記ストリングが通される複数の挿通孔を有する突出部と、を備え、前記軸線方向に視て、前記突出部の外面幅が前記装着部の外面幅より狭いことを特徴とする。
【0011】
本発明のステントデリバリー装置は、インナーシースと、該インナーシースの外周を覆うように設けられたアウターシースと、前記インナーシースと前記アウターシースとの間に収容されたステントと、前記ステントを縮径状態に縛るストリングと、前記インナーシースに装着して用いられ、前記ストリングを前記インナーシースに沿ってガイドするガイド部材と、を備えて、前記ステントを搬送可能なステントデリバリー装置であって、前記ガイド部材は、軸線方向に延在して、前記インナーシースの周面に装着可能な装着部と、該装着部の前記軸線方向に直交する方向に、前記装着部から突出し、前記ストリングが通される複数の挿通孔を有する突出部と、を備え、前記軸線方向に視て、前記突出部の外面幅が前記装着部の外面幅より狭いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ストリングを案内可能であり、好適な形状等を有するガイド部材及びガイド部材を備えるステントデリバリー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係るデリバリー装置を示す模式図である。
図2】インナーシース上に配置されたガイドリブを模式的に示す説明図である。
図3】本実施形態に係るガイドリブを示す斜視図である。
図4】(a)は、ガイドリブの正面図、(b)は、ガイドリブの平面図、(c)は、ガイドリブの側面図である。
図5】自然状態のステントに対する、ガイドリブの配置を説明する説明図である。
図6】ストリングを引いた状態の本実施形態に係るデリバリー装置を示す説明図である。
図7】ストリングを引いた状態の従来のデリバリー装置を示す説明図である。
図8図7の状態からさらに遠位側ストリングを引いた状態の従来のデリバリー装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0015】
なお、本実施形態で用いる図面は、本発明のガイド部材(ガイドリブ10)及びステントデリバリー装置(デリバリー装置1)の構成、形状、ステントデリバリー装置を構成する各部材の配置を例示するものであり、本発明を限定するものではない。また、図面は、ガイドリブ10及びデリバリー装置1の長さ、幅、高さといった寸法比を必ずしも正確に表すものではない。
なお、近位側(基端側)は、施術時に術者の近くに配置される側をいい、遠位側(先端側)は、施術時に術者の遠くに配置される側をいう。例えば、肛門側から口側に挿入されるデリバリー装置1においては、近位側は肛門側をいい、遠位側は口側をいう。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0016】
<概要>
はじめに、本実施形態に係るガイド部材(ガイドリブ10)及びステントデリバリー装置(デリバリー装置1)の概要を、図1から図4を主に参照して説明する。図1は、本実施形態に係るデリバリー装置1を示す模式図である。図2は、インナーシース2上に配置されたガイドリブ10を模式的に示す説明図、図3は、本実施形態に係るガイドリブ10を示す斜視図である。図4(a)は、ガイドリブ10の正面図、図4(b)は、ガイドリブ10の平面図、図4(c)は、ガイドリブ10の側面図である。
【0017】
本実施形態に係るステントデリバリー装置(デリバリー装置1)は、図1及び図2に示すように、インナーシース2と、インナーシース2の外周を覆うように設けられたアウターシース3と、インナーシース2とアウターシース3との間に収容されたステント5と、ステント5を縮径状態に縛るストリング6と、インナーシース2に装着して用いられ、ストリング6をインナーシース2に沿ってガイドするガイド部材(ガイドリブ10)と、を備えて、ステント5を搬送可能なものである。
【0018】
本実施形態に係るガイド部材(ガイドリブ10)は、インナーシース2とアウターシース3との間にステント5を収容するステントデリバリー装置(デリバリー装置1)におけるインナーシース2に装着して用いられ、ステント5を縮径状態に縛るストリング6をインナーシース2に沿ってガイドするものである。
ガイドリブ10は、図3及び図4に示すように、軸線方向に延在して、インナーシース2の周面に装着可能な装着部(爪部10a)と、爪部10aの軸線方向に直交する方向に、爪部10aから突出し、ストリング6が通される複数の挿通孔10cを有する突出部10bと、を備える。ガイドリブ10は、図4(a)に示すように、軸線方向に視て、突出部10bの外面幅W2が爪部10aの外面幅W1より狭いことを特徴とする。
【0019】
上記の爪部10aがインナーシース2に対して「装着可能」であるとは、接着剤等によって固着されているものや、弾性復元力により圧接されているもの、又は構造的に係合しているものを含むものとする。本実施形態においては、装着部としての爪部10aがインナーシース2を半周以上に亘って挟持することによって、ガイドリブ10はインナーシース2の周面に装着されている。
【0020】
また、「軸線方向」とは、爪部10aの縦断面の内縁である円弧の中心の延在方向であり、軸方向ともいう。
突出部10bの外面幅W2は、突出部10bを構成する一対の側面10dの外面の幅を意味する。この一対の側面10dは、互いに平行に延在しており、後述する2個の挿通孔10cの中間点と、爪部10aの断面中心(軸方向の延在方向に垂直な縦断面における、インナーシース2を収容する部位の中心)とを結ぶ径方向に沿って、起立している。
【0021】
上記構成によれば、突出部10bの外面幅W2が装着部(爪部10a)の外面幅W1よりも幅狭であることで、インナーシース2に爪部10aを装着させつつ、ステント5の網目5a内にガイド部材を配置しやすくなる。
【0022】
<ステントデリバリー装置>
次に、ステント5を生体管内にデリバリーするデリバリー装置1について図1を主に参照して説明する。
デリバリー装置1は、ステント5と、ステント5が周囲に取り付けられるインナーシース2と、インナーシース2及びステント5の外周を覆い、インナーシース2に対して軸心方向に相対移動可能に構成されたアウターシース3と、を主に備える。
【0023】
また、デリバリー装置1は、ステント5の近位側への移動を制限するストッパ7と、術者が把持するハンドル8と、アウターシース3が固定され、ハンドル8に対して軸心方向に相対的に摺動可能なスライダ9と、ステント5を縮径状態に縛るストリング6と、インナーシース2に装着して用いられ、ストリング6をインナーシース2に沿ってガイドするガイド部材(ガイドリブ10)と、をさらに備える。
【0024】
インナーシース2は、PEEK(ポリ・エーテル・エーテル・ケトン)チューブによって形成されている。インナーシース2の外周の複数個所に、後述するガイドリブ10が接着により固定されている。
【0025】
ステント5は、樹脂膜の無いベアステントである。本実施形態に係る自然状態におけるステント5の長さは、例えば120mmであり、自然状態におけるステント5の外径は例えば22mmである。ステント5のワイヤ線径は、例えば直径0.17mmである。
ステント5の長さは、60、80又は100mm等、任意の長さでよく、ステント5の外径は、22mmの他に18mm等、任意の大きさでよい。
【0026】
ストリング6は、ステント5を搬送する際にアウターシース3内にステント5が収容されるように、ステント5を縮径状態に縛るためのものである。ストリング6は、ステント5を拡張させる際には、術者に牽引されることによって、ステント5の縛りが解除される。
【0027】
本実施形態に係るストリング6は、ステント5の近位側を縛る近位側ストリング6aと、ステント5の中間部分を縛る中間ストリング6bと、ステント5の遠位側を縛る遠位側ストリング6cと、によって構成されている。ストリング6は、このように複数本で構成されていることで、ステント5の軸方向の部分ごとに、段階的に拡張させることが可能に構成されている。
【0028】
本実施形態においては、近位側ストリング6a、中間ストリング6b及び遠位側ストリング6cは、いずれも縛り終わりが縛り領域の近位側に位置しており、それぞれの縛り領域の近位側からステント5が開かれる構成となっている。
しかしながら、このような構成に限定されず、ストリング6をUターンさせるようにインナーシース2上に配置して、ステント5の縛り終わりを縛り領域の遠位側にして、縛り領域の遠位側からステント5を開くようにしてもよい。
【0029】
<ガイド部材>
次に、ガイドリブ10について、図1から図4に加えて、図5及び図6を主に参照して説明する。図5は、自然状態のステント5に対する、ガイドリブ10の配置を説明する説明図、図6は、ストリング6を引いた状態の本実施形態に係るデリバリー装置1を示す説明図である。
なお、図5は、後述のようにガイドリブ10が隣接するフック部5c間に配置されることを説明する模式的な図面であり、網目5aとガイドリブ10の寸法比を正確に示すものではない。
つまり、後述するように、自然状態ではなく、径方向に縮径し軸方向に延びた状態のステント5の網目5aに、ガイドリブ10がはまり込む、または網目5aを押し広げる大きさであると、ステント5の位置を遊びなく抑制できるため好適である。
【0030】
ガイドリブ10は、ストリング6をガイドし、且つステント5の網目5aに入りこんで配置されることによって、ステント5を展開させる際にインナーシース2に対してステント5がずれることを抑制するものであり、樹脂で形成されている(例えばポリカーボネート製)。
【0031】
ガイドリブ10は、径方向外側に突出する突出部10bを有して偏心状に形成されており、複数のガイドリブ10は、すべて同じ方向に突出部10bが位置するように、インナーシース2上に取り付けられている。
本実施形態に係るガイドリブ10の高さ(突出部10bの最も突出する部分と爪部10aの端部との間の軸心を通る長さ)は、1.7mmであり、ガイドリブ10の軸方向長さは3mmである。
【0032】
図3に示すように、突出部10bは、突出部10bの突出方向及び装着部(爪部10a)の軸線方向に平行に延在し、かつ、互いに平行に延在する一対の側面10dを有している。
【0033】
上記構成によれば、平行に延在する一対の側面10dが突出部10bに設けられていることで、曲面状に形成されているものと比較して、ステント5の網目5aの間に突出部10bが入り込んだ状態に、ステント5を留めやすくできる。
【0034】
爪部10aは、突出部10b側とは逆側にあり、中央のインナーシース2の収容空間に連続するように開かれた正面視円弧状に形成されており、軸方向に延在している。このように、爪部10aが開かれて形成されていることで、ガイドリブ10の突出部10b側とは逆側の突出量を抑制でき、ガイドリブ10が収容される限られたアウターシース3内の空間において、突出部10bの突出量を大きくすることができる。
【0035】
図3に示すように、突出部10bにおける長手方向の少なくとも一方の端部には、その端側に向かうにつれて高さが低くなるように形成された傾斜部10fが形成されており、傾斜部10fに挿通孔10cが開口している。
具体的には、挿通孔10cは、2つ形成されており、一方の挿通孔10cに、中間ストリング6bが通され、他方の挿通孔10cに遠位側ストリング6cが通される。
本実施形態において、図4(a)における正面視(軸方向視)における挿通孔10cの内径は0.3mmである。
【0036】
ガイドリブ10にストリング6を通す挿通孔10cが設けられていることで、ストリング6が挿通孔10cを通過するようにガイドリブ10にガイドされることになる。このため、図6に示すように、シース(インナーシース2及びアウターシース3)が屈曲している状態で、ステント5を展開する際に、ストリング6からシースに直接的に荷重が加わることを抑制できる。このため、ストリング6からの荷重によりシースが撓むことなく、ステント5を好適に展開することができる。
さらに、ガイドリブ10にストリング6を通す挿通孔10cが設けられていることで、ストリング6が挿通孔10cを通過することになるため、ストリング6を回収する際に、ステント5に絡まることを防ぐことができる。
【0037】
傾斜部10fについての「高さが低くなる」について換言すると、突出部10bにおけるガイドリブ10の径方向外側にある外面が中心側に近づくように傾斜しつつ、突出部10bの肉厚が薄くなっていることをいう。ここで、「径方向」とは軸線方向に垂直な方向である。
【0038】
上記構成によれば、傾斜部10fが設けられていることで、ガイドリブ10の外側を相対的に通るものに引っかかることを抑制できる。
ガイドリブ10の外側を相対的に通るものとしては、例えば、インナーシース2を体内から体外に引き抜く際に、ガイドリブ10の外側を相対的に通るステント5又は不図示の病変部に形成された狭窄部がある。
また、ガイドリブ10の傾斜部10fに、ストリング6が通される挿通孔10cが形成されていることで、ステント5を縛るストリング6を、ガイドリブ10からストリング6の外周にスムーズに配設することができる。
【0039】
本実施形態においては、ステント5がアウターシース3内に収容されている状態においては、ステント5の近位側は、ガイドリブ10を通らない近位側ストリング6aで縛られ、ステント5の中間側は、中間ストリング6bで縛られ、ステント5の遠位側は、遠位側ストリング6cで縛られている。本実施形態においては、ガイドリブ10の挿通孔10cは、中間ストリング6bと遠位側ストリング6cとの2本を挿通可能に構成されている。
しかしながら、ガイドリブ10の挿通孔10cは必ずしも中間ストリング6b及び遠位側ストリング6cを通される必要はない。
【0040】
ガイドリブ10におけるストリング6をガイドする機能は任意であり、例えば、中間ストリング6bよりも遠位側にあるガイドリブ10の挿通孔10cには、中間ストリング6bを挿通しなくてもよい。つまり、一部のガイドリブ10は、ストリング6をガイドする機能を有さずに、ステント5の網目5a内に配置されていることで、ステント5の相対的な移動を抑制する機能のみを有していてもよい。
【0041】
図3図4(b)及び(c)に示すガイドリブ10における傾斜部10fは、突出部10bの近位端部に設けられ、傾斜部10fの外面は、近位側に向かうにつれて高さが低くなるように形成されている。
換言すると、ガイドリブ10は、傾斜部10fが設けられている端部が近位側に位置する向きで、例えば接着によりインナーシース2に取り付けられている。
【0042】
上記のように傾斜部10fが形成されていることで、ステント5を展開した後、デリバリー装置1のシース(インナーシース2及びアウターシース3)を体内から抜去する際に、インナーシース2に取り付けられたガイド部材(ガイドリブ10)がステント5又は狭窄部に引っかかることを抑制できる。
【0043】
図3及び図4(b)に示すように、複数の挿通孔10cは、装着部(爪部10a)の軸線方向に延在する複数の貫通孔であり、複数の貫通孔(挿通孔10c)のうち一部に設けられた開口面10gは、複数の貫通孔(挿通孔10c)のうち他の一部に設けられた貫通孔の開口面10hに対し、外方に向けられている。
具体的には、開口面10g、10hは、一対の挿通孔10cそれぞれの傾斜部10fに設けられている。
【0044】
「一部に設けられた開口面10gが、他の一部に設けられた貫通孔の開口面10hに対し、外方に向けられている」について、換言すると、図4(b)に示す開口面10gの法線方向N1は、他の開口面10hの法線方向N2に対して、貫通孔から延出方向外側に向かうにつれて離間する方向にある。
【0045】
また、法線方向N1、法線方向N2は、図4(b)に示すように、開口面10g、開口面10hから離れるにつれて、ガイドリブ10の幅方向(短尺方向)において互いに逆の成分を含み、且つガイドリブ10の径方向において爪部10aに対する突出部10bの突出側の成分を含んで延在している。
なお、「幅方向」とは、ガイドリブ10の図4(a)に示す軸線方向視において、突出部10bの突出方向に直交する方向のことをいう。
【0046】
上記構成によれば、開口面10gが開口面10hに対して外方に向けられていることで、複数の貫通孔の開口面10g、10hから延在する複数のストリング6(本実施形態においては、一対の挿通孔10cに通された中間ストリング6b及び遠位側ストリング6c)同士が絡み合うことを抑制できる。
【0047】
図3図4(b)及び(c)に示すように、傾斜部10fは、部分球面状に形成されている。
具体的には、傾斜部10fにおいて、突出部10bにおけるガイドリブ10の径方向外側にある外面(上面)が、軸方向における近位側の端に向かうにつれて、水平面から中心側に漸近し、さらに、鉛直面に漸近して湾曲している。
【0048】
さらに、傾斜部10fは、図4(b)及び(c)に示すように、中央部から幅方向外側に向かうにつれて、軸方向中央側に向かうように湾曲して形成されていることで、部分球面状に形成されている。
上記構成によれば、傾斜部10fが部分球面状に形成されていることで、軸線方向(長手方向)に対して垂直な方向についても引っかかり抑制をすることができる。
【0049】
図4(a)に示すように、装着部(爪部10a)は、軸線方向に対して垂直な断面において、少なくとも一部円弧状の接触部10iを有する。
軸線方向に視て、突出部10bの幅方向における挿通孔10cの中心から突出部10bの外面までの長さL1は、突出部10bの突出方向における爪部10aの接触部10iから突出部10bの外面(傾斜部10fを除いた上面10e)の最短長さL2よりも短い。
【0050】
本実施形態における最短長さL2は、軸線方向に対して垂直な断面において、爪部10aを形成する円弧状の内面と突出部10bの幅方向の中心を通る中心線とが交わる部分から、突出部10bの外面における突出方向(突出部10bの幅方向の中心を通る中心線の方向)に交わる部分までの長さである。
挿通孔10cが3つ以上ある場合には、幅方向両端にある挿通孔10cの中心からの長さL1を基準として上記の長さを比較するものとする。
【0051】
上記構成によれば、挿通孔10cの中心から突出部10bの外面までの長さL1が短いことで、突出部10bをステント5の網目5aの間に収容しやすくなり、挿通孔10cのスペースを確保しやすくなる。
【0052】
図3図4(b)及び(c)に示すガイドリブ10における傾斜部10fは、突出部10bの近位端部に設けられ、傾斜部10fの外面は、近位側に向かうにつれて高さが低くなるように形成されている。
【0053】
上記のように傾斜部10fが形成されていることで、ステント5を展開した後、デリバリー装置1のシース(インナーシース2及びアウターシース3)を体内から抜去する際に、インナーシース2に取り付けられたガイド部材(ガイドリブ10)が狭窄部に引っかかることを抑制できる。
【0054】
ステント5の移動を制限するものとして、ガイドリブ10の他に、ステント5の軸方向の一箇所である近位側端部において移動を制限するストッパ7が設けられている。
ガイドリブ10は、ストッパ7と異なり、ステント5(インナーシース2)の軸方向に複数設けられていることで、ステント5が軸方向に圧縮することを抑制できる。
なお、ガイドリブ10によりステント5の移動を制限できるため、ステント5の近位側端部に当接するストッパ7は必ずしも必要ではない。
【0055】
そして、ガイドリブ10によれば、ステント5が軸方向に圧縮して径方向に突出してアウターシース3の内面を押圧することを抑制できるため、アウターシース3内の収納性が良好となる。さらに、ガイドリブ10によれば、ステント5を構成するワイヤ5dが径方向に重なることを抑制できることで、インナーシース2とアウターシース3との間の空間内に占めるステント5の割合である充填率を良好にできる。
【0056】
また、本実施形態においては、図2に示すように、ガイドリブ10は、インナーシース2の軸方向に5つ配設されており、特にステント5の近位側に多く、遠位側よりも近い間隔で配設されている。
このように構成されていることで、曲げ変形が生じやすいインナーシース2の中央側であるステント5の近位側において、ストリング6を好適にガイドすることが可能となる。
【0057】
図5に示すように、ステント5は、複数のワイヤ5dが編み込まれることによって形成されている。
複数のワイヤ5dは、互いに折り返された部分である複数のフック部5cと、交差するのみの複数のクロス部5bと、で構成された網目5aを備える。
ガイド部材(ガイドリブ10)の突出部10bは、網目5aに収容されており、特に、軸線方向において隣接するフック部5cの間に配置されていると好適である。
具体的には、フック部5cは、交差するワイヤ5dが上下に絡んで、U字状に折り返されている部位であり、クロス部5bは、上下に交差するのみで、折返しはない部位である。
なお、本実施形態においては、軸方向に隣接するフック部5cとフック部5cとの間が7mmである。
【0058】
上記構成によれば、クロス部5bよりも剛性が高くなるフック部5cの間にガイドリブ10の突出部10bが配置されていることで、ステント5の位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0059】
図5に示す構成(突出部10b及び網目5aの大きさに係る構成)においては、突出部10bが網目5aを押し広げずにガイドリブ10上にステント5が配置されている。
しかしながら、このような構成に限定されず、例えば、ガイドリブ10は図示のものよりも大きく、ガイドリブ10の突出部10bにより、突出部10bの周囲の網目5aが押し広げられるようにして、突出部10bは網目5a内に入り込む構成であってもよい。
【0060】
図4(a)に示す突出部10bにおける装着部(爪部10a)からの突出高さHは、ステント5を構成するワイヤ5dの2本分の線径の長さよりも高い。
ここで、突出部10bの「突出高さH」とは、図4(a)に示すように、爪部10aと突出部10bとの境目から突出部10bの突出側端部にある縁までの高さをいい、本実施形態においては、0.5mmである。
上記構成によれば、上下に重なるワイヤ5dのうち、上側(ステント5の径方向外側)のワイヤ5dが、突出部10bに乗りあがることを抑制でき、ガイドリブ10に保持されたステント5の位置ずれを好適に防ぐことができる。
【0061】
なお、本発明のガイド部材及びステントデリバリー装置に係る各種構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0062】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
インナーシースと該インナーシースの外周を覆うように設けられたアウターシースとを備えて、前記インナーシースと前記アウターシースとの間にステントを収容して、前記ステントを搬送可能なステントデリバリー装置における前記インナーシースに装着して用いられ、前記ステントを縮径状態に縛るストリングを前記インナーシースに沿ってガイドするガイド部材であって、
軸線方向に延在して、前記インナーシースの周面に装着可能な装着部と、
該装着部の前記軸線方向に直交する方向に、前記装着部から突出し、前記ストリングが通される複数の挿通孔を有する突出部と、を備え、
前記軸線方向に視て、前記突出部の外面幅が前記装着部の外面幅より狭いことを特徴とするガイド部材。
(2)
前記突出部は、前記突出部の突出方向及び前記装着部の軸線方向に平行に延在し、かつ、互いに平行に延在する一対の側面を有している(1)に記載のガイド部材。
(3)
前記突出部における長手方向の少なくとも一方の端部には、その端側に向かうにつれて高さが低くなるように形成された傾斜部が形成されており、
該傾斜部に前記挿通孔が開口している(1)又は(2)に記載のガイド部材。
(4)
前記複数の挿通孔は、前記装着部の前記軸線方向に延在する複数の貫通孔であり、
前記複数の貫通孔のうち一部に設けられた開口面は、前記複数の貫通孔のうち他の一部に設けられた貫通孔の開口面に対し、外方に向けられている(1)から(3)のいずれか一項に記載のガイド部材。
(5)
前記傾斜部は、部分球面状に形成されている(3)及び(3)を引用する(4)に記載のガイド部材。
(6)
前記装着部は、前記軸線方向に対して垂直な断面において、少なくとも一部円弧状の接触部を有し、
前記軸線方向に視て、前記突出部の幅方向における前記挿通孔の中心から前記突出部の外面までの長さは、前記突出部の突出方向における前記装着部の前記接触部から前記突出部の外面の最短長さよりも短い(1)から(5)のいずれか一項に記載のガイド部材。
(7)
インナーシースと、
該インナーシースの外周を覆うように設けられたアウターシースと、
前記インナーシースと前記アウターシースとの間に収容されたステントと、
前記ステントを縮径状態に縛るストリングと、
前記インナーシースに装着して用いられ、前記ストリングを前記インナーシースに沿ってガイドするガイド部材と、を備えて、前記ステントを搬送可能なステントデリバリー装置であって、
前記ガイド部材は、
軸線方向に延在して、前記インナーシースの周面に装着可能な装着部と、
該装着部の前記軸線方向に直交する方向に、前記装着部から突出し、前記ストリングが通される複数の挿通孔を有する突出部と、を備え、
前記軸線方向に視て、前記突出部の外面幅が前記装着部の外面幅より狭いことを特徴とするステントデリバリー装置。
(8)
前記突出部における長手方向の少なくとも一方の端部には、その端側に向かうにつれて高さが低くなるように形成された傾斜部が形成されており、
前記ガイド部材における前記傾斜部は、前記突出部の近位端部に設けられ、
前記傾斜部の外面は、近位側に向かうにつれて高さが低くなるように形成されている(7)に記載のステントデリバリー装置。
(9)
前記ステントは、複数のワイヤが編み込まれることによって形成されており、
前記複数のワイヤは、互いに折り返された部分である複数のフック部と、交差するのみの複数のクロス部と、で構成された網目を備え、
前記ガイド部材の前記突出部は、前記網目に収容されており、前記軸線方向において隣接する前記フック部の間に配置されている(7)又は(8)に記載のステントデリバリー装置。
(10)
前記突出部における前記装着部からの突出高さは、前記ステントを構成する前記ワイヤの2本分の線径の長さよりも高い(7)から(9)のいずれか一項に記載のステントデリバリー装置。
【符号の説明】
【0063】
1 デリバリー装置(ステントデリバリー装置)
2 インナーシース
3 アウターシース
5 ステント
5a 網目
5b クロス部
5c フック部
5d ワイヤ
6 ストリング
6a 近位側ストリング
6b 中間ストリング
6c 遠位側ストリング
7 ストッパ
8 ハンドル
9 スライダ
10 ガイドリブ(ガイド部材)
10a 爪部(装着部)
10b 突出部
10c 挿通孔(貫通孔)
10d 側面
10e 上面
10f 傾斜部(近位面)
10g、10h 開口面
10i 接触部
100 デリバリー装置
102 インナーシース
103 アウターシース
105 ステント
106 ストリング
106b 中間ストリング
106c 遠位側ストリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8