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特開2024-92539パワーコンディショナ、蓄電システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092539
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】パワーコンディショナ、蓄電システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240701BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240701BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240701BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240701BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20240701BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20240701BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
H02J7/34 B
H02J7/35 K
H01M10/48 P
G01R31/389
G01R31/392
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208555
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 翔
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA21
2G216BA51
5G503AA04
5G503BA02
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503DA16
5G503EA08
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】劣化診断に必要な放電電力の消費を可能な限り低減しつつ、蓄電池システムの設備の運用中に蓄電池の劣化診断を実施する。
【解決手段】実施形態のパワーコンディショナは、充放電制御対象の複数の蓄電池のうち、何れかの蓄電池を劣化診断対象蓄電池とし、劣化診断対象蓄電池の蓄電電力を、充放電制御対象の複数の蓄電池のうち非劣化診断対象象蓄電池に対して放電を行わせて劣化診断対象蓄電池の内部抵抗値を測定する内部抵抗測定部と、劣化診断対象蓄電池の内部抵抗を提示する提示部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電制御対象の複数の蓄電池のうち、何れかの蓄電池を劣化診断対象蓄電池とし、前記劣化診断対象蓄電池の蓄電電力を、前記充放電制御対象の複数の蓄電池のうち非劣化診断対象象蓄電池に対して放電を行わせて前記劣化診断対象蓄電池の内部抵抗値を測定する内部抵抗測定部と、
前記劣化診断対象蓄電池の内部抵抗を提示する提示部と、
を備えたパワーコンディショナ。
【請求項2】
測定した前記内部抵抗に基づいて、前記劣化診断対象蓄電池の劣化状態を判断する判断部を備えた、
請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項3】
前記充放電制御対象の複数の蓄電池は、自己が内蔵した蓄電池を含む、
請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項4】
前記充放電制御対象の複数の蓄電池は、自己が内蔵した蓄電池及び外部の蓄電池を含む、
請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項5】
前記外部の蓄電池は、双方向充電器を介して接続された電気自動車の車載蓄電池である、
請求項4に記載のパワーコンディショナ。
【請求項6】
前記パワーコンディショナは、商用系統との連系が可能なパワーコンディショナであって、
前記商用系統の停電を検出する停電検出部と、
前記内部抵抗測定部の測定中に前記停電が検出された場合に前記内部抵抗測定部の測定を中断し、充放電制御対象の複数の蓄電池に給電を行わせる制御部と、
を備えた請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項7】
前記内部抵抗値の測定結果に対応して、充放電制御対象の複数の蓄電池のうち、実際に充放電を行わせる蓄電池を選択する制御部を備えた、
請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項8】
複数の蓄電池と、
前記複数の蓄電池の充放電制御を行って、商用系統との連系が可能なパワーコンディショナと、を備えた蓄電システムであって、
前記パワーコンディショナは、前記複数の蓄電池のうち、何れかの蓄電池を劣化診断対象蓄電池とし、前記劣化診断対象蓄電池の蓄電電力を、前記複数の蓄電池のうち非劣化診断対象象蓄電池に対して放電を行わせて前記劣化診断対象蓄電池の内部抵抗値を測定する内部抵抗測定部と、
測定した前記内部抵抗値に基づいて、前記劣化診断対象蓄電池の劣化状態を判断する判断部と、
を備えた蓄電システム。
【請求項9】
複数の蓄電池と、前記複数の蓄電池の充放電制御を行って、商用系統との連系が可能なパワーコンディショナと、を備えた蓄電システムで実行される方法であって、
前記複数の蓄電池のうち、何れかの蓄電池を劣化診断対象蓄電池とし、前記劣化診断対象蓄電池の蓄電電力を、前記複数の蓄電池のうち非劣化診断対象象蓄電池に対して放電を行わせて前記劣化診断対象蓄電池の内部抵抗値を測定するステップと、 測定した前記内部抵抗値を提示し、あるいは、測定した前記内部抵抗値に基づいて、前記劣化診断対象蓄電池の劣化状態を判断するステップと、
を備えた方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パワーコンディショナ、蓄電システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電池システムの設置が進む中、多頻度の充放電に強いリチウムイオンバッテリ(以下、LiBという)が注目されている。
このLiBの劣化診断を行うには、LiBから一定の時間一定出力で放電を実施する必要がある。しかしながら、万一の停電時に放電することを目的として充電されている電力を、放電して行うLiBの劣化診断は、装置の運用中には実施できず、年次点検時など蓄電池システムの設備を使用しない時間帯に実施することが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-009100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蓄電池システムを使用しない時間帯にLiBの劣化診断を実施する場合であっても、劣化診断に必要な放電電力は、負荷に供給されて消費されることとなっていたため、LiBの残存容量を減らしてしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、劣化診断に必要な放電電力の消費を可能な限り低減しつつ、蓄電池システムの設備の運用中にLiBの劣化診断を実施することが可能なパワーコンディショナ、蓄電システム及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のパワーコンディショナは、充放電制御対象の複数の蓄電池のうち、何れかの蓄電池を劣化診断対象蓄電池とし、前記劣化診断対象蓄電池の蓄電電力を、前記充放電制御対象の複数の蓄電池のうち非劣化診断対象象蓄電池に対して放電を行わせて前記劣化診断対象蓄電池の内部抵抗値を測定する内部抵抗測定部と、前記劣化診断対象蓄電池の内部抵抗を提示する提示部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態の蓄電システムの概要構成ブロック図である。
図2図2はマルチパワーコンディショナ、DC入力型双方向充電器及び特定負荷の概要構成説明図である。
図3図3は、第1実施形態の動作処理フローチャートである。
図4図4は、第1実施形態の動作例の説明図である。
図5図5は、停電時の動作説明図である。
図6図6は、第2実施形態の動作処理フローチャートである。
図7図7は、第2実施形態の動作例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態の蓄電システムの概要構成ブロック図である。
蓄電システム10は、マルチパワーコンディショナ11と、DC入力型双方向充電器12と、特定負荷13と、を備えている。
【0009】
マルチパワーコンディショナ11は、系統連系機能を有しており、受変電設備21を介して商用系統を構成している電力会社(発電設備、送電設備を含む)22及び一般負荷(他需要家等)23に電力を供給可能となっている。
【0010】
また、マルチパワーコンディショナ11には、接続箱25を介して複数の太陽電池を備えた太陽光発電システム26が接続されており、太陽光発電の発電電力がマルチパワーコンディショナ11に供給されるようになっている。
【0011】
さらにマルチパワーコンディショナ11の動作状態を監視、制御するために、専用通信線31を介してリモート監視端末32が接続されたり、インターネット等の通信ネットワーク34を介して、監視センタ35が接続されたりしている。
【0012】
また、DC入力型双方向充電器12を介して、n(nは自然数)台の電気自動車(EV)37-1~37-nが接続可能とされている。ここで、電気自動車(EV)37-1~37-nには、それぞれ、マルチパワーコンディショナ11の制御下で、互いに独立して充放電可能な車載蓄電池BT1~BTnが搭載されている。
【0013】
次にマルチパワーコンディショナ11の構成例について説明する。
図2はマルチパワーコンディショナ、DC入力型双方向充電器及び特定負荷の概要構成説明図である。
【0014】
マルチパワーコンディショナ11は、遮断器(CB)51と、高圧交流負荷開閉器(LBS:Load Break Switch)52と、Δ-Δ変圧器53と、AC/DCコンバータ54と、DC/DCコンバータ55と、スコット変圧器56と、m個(mは、2以上の整数)のDC/DCコンバータ57-1~57-mと、m個のLiB58-1~58-mと、遮断器59-1、59-2と、PCSコントローラ11Aと、を備えている。
【0015】
遮断器(CB)51は、受変電設備21との間の電路を遮断する。
高圧交流負荷開閉器(LBS)52は、Δ-Δ変圧器53、スコット変圧器56およびこれらに対応する電路の入/切のために使用される。
【0016】
Δ-Δ変圧器53は、受変電設備21からの供給三相交流電力の電圧あるいは受変電設備21への供給三相交流電力の電圧の電圧変換を行う。
AC/DCコンバータ54は、受変電設備21からの供給交流電力を直流電力に変換し、DC/DCコンバータ55及びDC/DCコンバータ57-1~57-mからの供給直流電力を交流電力に変換する。
【0017】
DC/DCコンバータ55は、接続箱25を介して太陽光発電システム26から供給された直流電力の電圧を所定の直流電圧に変換してAC/DCコンバータ54あるいはDC/DCコンバータ57-1~57-mに供給する。
スコット変圧器56は、受変電設備21側からの三相交流電力を単相交流電力に変換して、特定負荷13側(より詳細には、単相負荷である特定負荷13-2)へ供給する。
【0018】
DC/DCコンバータ57-1~57-mは、それぞれ対応するLiB58-1~58-mから供給された直流電圧を所定の電圧に変換して、AC/DCコンバータ54又はDC/DCコンバータ61に供給する。また、DC/DCコンバータ57-1~57-mは、AC/DCコンバータ54、DC/DCコンバータ55あるいはDC/DCコンバータ61からの直流電力の電圧をそれぞれ対応するLiB58-1~58-mに合わせた電圧に変換して直流電力をそれぞれ供給する。
【0019】
遮断器59-1は、高圧交流負荷開閉器(LBS)52あるいはΔ-Δ変圧器53と、特定負荷13(より詳細には、三相負荷である特定負荷13-1)と、の間の電路を遮断する。
【0020】
遮断器59-2は、高圧交流負荷開閉器(LBS)52あるいはΔ-Δ変圧器53と、特定負荷13(より詳細には、単相負荷である特定負荷13-2)と、の間の電路を遮断する。
【0021】
DC入力型双方向充電器12は、AC/DCコンバータ54、DC/DCコンバータ55あるいはDC/DCコンバータ57-1~57-mから供給された直流電力の電圧をEV充電器62-1~62-nに対応する所定の入力電圧に変換してEV充電器62-1~62-nに供給する。また、電気自動車37-1~37-nに搭載された蓄電池から供給された直流電圧を所定の出力電圧に変換して、AC/DCコンバータ54あるいはDC/DCコンバータ57-1~57-mに供給する。
【0022】
特定負荷13は、三相負荷である特定負荷13-1及び単相負荷である特定負荷13-2を備えている。なお、図2においては、それぞれ一つの特定負荷13-1及び特定負荷13-2を示しているが、それぞれ一又は複数備えることも可能である。
PCSコントローラ11Aは、マルチパワーコンディショナ11全体の制御を行うとともに、蓄電池の劣化診断機能を有している。
【0023】
ここで、蓄電池の劣化診断機能を実現するためのPCSコントローラ11Aの機能としては、LiB58-1~58-mのうちから、劣化診断対象のLiBを選択する対象選択機能、劣化診断対象のLiBの放電先の設定を含む放電制御、劣化診断対象のLiBの放電後の電圧測定機能及び劣化診断対象のLiBに対応する単位時間あたりの放電電流量が異なる複数の電圧測定結果に基づいて内部抵抗を算出し、劣化度合いを判断する判断機能を備えている。
【0024】
次に第1実施形態の動作を説明する。
図3は、第1実施形態の動作処理フローチャートである。
図4は、第1実施形態の動作例の説明図である。
【0025】
まず、PCSコントローラ11Aは、LiB58-1~58-mのうち、何れか一のLiB58-x(x:1~m)を劣化診断対象のLiBとして選択する(ステップS11)。
より具体的には、図4の例においては、PCSコントローラ11Aは、LiB58-mを劣化診断対象のLiBとして選択している。
【0026】
続いてPCSコントローラ11Aは、LiB58-xの放電先LiBとして、一又は複数のLiB58-y(y:1~m,y≠x)を選択する(ステップS12)。
より具体的には、図4の例においては、PCSコントローラ11Aは、LiB58-1を放電先LiBとして選択している。
【0027】
次にPCSコントローラ11Aは、内部抵抗測定部として機能し、劣化診断処理を開始し、劣化診断対象のLiB58-xの無負荷状態の電圧、すなわち、負荷電流が流れていない状態で電圧を測定する(ステップS13)。
【0028】
続いてPCSコントローラ11Aは、PCSコントローラ11Aは、劣化診断処理を開始し、劣化診断対象のLiB58-xを放電先LiB58-yに電気的に接続した状態で、所定の第1負荷電流(例えば、1A)で所定時間(例えば、10秒)放電し、放電後の電圧を測定する(ステップS14)。
【0029】
具体的には、図4に黒太矢印A1で示すように、劣化診断対象のLiB58-m(=LiB58-x)から放電先であるLiB-1(=LiB58-y)に対して第1負荷電流で所定時間放電を行い、放電後の電圧を測定している。
【0030】
さらにPCSコントローラ11Aは、ステップS14の場合と同様に、所定の第2負荷電流(>第1負荷電流。例えば、5A)で所定時間(例えば、10秒)放電し、放電後の電圧を測定する(ステップS15)。
【0031】
続いてPCSコントローラ11Aは、ステップS13~ステップS15の測定結果に基づいて、電流-電圧近似直線を求め、電流-電圧近似直線の傾きから内部抵抗値を算出する(ステップS16)。
【0032】
次にPCSコントローラ11Aは、提示部及び判断部として機能し、算出した内部抵抗値を予め記憶した内部抵抗値-劣化状態テーブル等を参照して、劣化診断対象LiB58-xの劣化状態を提示する(ステップS17)。提示態様としては、例えば、「正常です。」、「劣化が進んでいます。」、「電池の交換が必要です。」等のように、劣化状態に応じたコメントを表示したり、ランプの点灯状態を変更したり等が可能である。
【0033】
そして、PCSコントローラ11Aは、LiB58-1~58-mの全てについて劣化診断が終了したか否かを判断する(ステップS18)。
ステップS18の判断において、LiB58-1~58-mの全てについて劣化診断が終了した場合には(ステップS18;Yes)、PCSコントローラ11Aは、劣化診断処理を終了し、通常動作に移行する。
【0034】
ステップS18の判断において、未だLiB58-1~58-mの全てについて劣化診断が終了していない場合には(ステップS18;No)、PCSコントローラ11Aは、処理を再びステップS11に移行して、上述した処理を繰り返す。
【0035】
上述したステップS11~ステップS18の処理と並行して、PCSコントローラ11Aは、常時、商用系統において停電が発生したか否かを判断している(ステップS19)。
【0036】
ステップS19の判断において、商用系統において停電が発生していない場合には(ステップS19;No)、PCSコントローラ11Aは、LiB58-1~58-mの全てについて劣化診断が終了したか否かを判断する(ステップS20)。
【0037】
ステップS20の判断において、LiB58-1~58-mの全てについて劣化診断が終了した場合には(ステップS20;Yes)、PCSコントローラ11Aは、劣化診断処理を終了し、通常動作に移行する。
【0038】
ステップS20の判断において、未だLiB58-1~58-mの全てについて劣化診断が終了していない場合には(ステップS20;No)、PCSコントローラ11Aは、処理を再びステップS19に移行して、停電検出処理を繰り返す。
【0039】
ステップS19の判断において、商用系統において停電が発生した場合には(ステップS19;Yes)、PCSコントローラ11Aは、ステップS11~ステップS18の劣化診断処理を中断し(ステップS21)、停電時処理を行って(ステップS22)、劣化診断処理を終了する。
【0040】
ここで、停電時処理について説明する。
図5は、停電時の動作説明図である。
図5においては、停電時の電力供給経路を一部太線矢印で示している。
【0041】
商用系統において停電が発生した場合にはPCSコントローラ11Aは、実際に負荷(一般負荷23、特定負荷13)において必要とされる電力量に応じて、LiB58-1~58-m、車載蓄電池BT1~BTnの蓄電している直流電力及び太陽光発電システム26から供給される直流電力を交流電力に変換して供給することとなる。
【0042】
より詳細には、LiB58-1~58-mについては、対応するDC/DCコンバータ57-1~57-mにより、LiB58-1~58-mの蓄電電力をAC/DCコンバータ54に対応する直流電圧に変換して、AC/DCコンバータ54に供給する。
【0043】
同様に、車載蓄電池BT1~BTnについては、対応するEV充電器62-1~62-nを介してDC/DCコンバータ61により、車載蓄電池BT1~BTnの蓄電電力をAC/DCコンバータ54に対応する直流電圧に変換して、AC/DCコンバータ54に供給する。
【0044】
また、太陽光発電システム26においては、発電電力を接続箱25により集約して、DC/DCコンバータ55により、発電電力をAC/DCコンバータ54に対応する直流電圧に変換して、AC/DCコンバータ54に供給する。
【0045】
これらの結果、AC/DCコンバータ54は、供給された所定電圧の直流電力をΔ-Δ変圧器53に対応する交流電圧を有する交流電力に変換してをΔ-Δ変圧器53に供給する。
【0046】
Δ-Δ変圧器53は供給された交流電力の電圧を系統連系で要求される電圧及び周波数を有する交流電力に変換して、受変電設備21を介して一般負荷23および三相負荷である特定負荷13-1及びスコット変圧器56に供給する。
【0047】
スコット変圧器56は、三相交流電力を単相交流電力に変換して単相負荷である特定負荷13-2に供給する。
これらの結果、一般負荷23、特定負荷13-1及び特定負荷13-2は、商用系統の停電の影響を受けずに動作を継続することとなる。
【0048】
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、マルチパワーコンディショナ11の運用を実効的に止めることなく、内蔵蓄電池としてのLiB58-1~LiB58-mの劣化診断を行うことができる。
【0049】
さらに劣化診断に用いる劣化診断対象のLiBの放電電力は、各LiB58-1~LiB58-mのうち、劣化診断対象のLiB以外のLiBに蓄電されるので、劣化診断に必要な放電電力の消費を可能な限り低減しつつ、劣化診断を行うことが可能となる。
【0050】
[2]第2実施形態
第1実施形態においては、マルチパワーコンディショナ11に内蔵しているLiB58-1~58-mの劣化診断を行う際にLiB58-1~58-m同士で、劣化診断時に放電及び蓄電する構成を採っていたが、本第2実施形態は、電気自動車37-1~37-nの車載蓄電池BT-1~BT-nの劣化診断を行う際に、マルチパワーコンディショナ11に内蔵しているLiB58-1~58-mに対して放電し、LiB58-1~58-mにおいて蓄電するようにした実施形態である。
【0051】
本第2実施形態のシステム構成は、第1実施形態と同様であるので、その詳細な説明を援用するものとする。
【0052】
したがって、ここでは、第2実施形態の動作を説明する。
図6は、第2実施形態の動作処理フローチャートである。
図7は、第2実施形態の動作例の説明図である。
【0053】
まず、PCSコントローラ11Aは、車載蓄電池BT-1~BT-nのうち、何れか一の車載蓄電池BT-x(x:1~n)を劣化診断対象の車載蓄電池として選択する(ステップS31)。
より具体的には、図7の例においては、PCSコントローラ11Aは、車載蓄電池BT-nを劣化診断対象の車載蓄電池として選択している。
【0054】
続いてPCSコントローラ11Aは、車載蓄電池BT-nの放電先LiBとして、一又は複数のLiB58-y(y:1~m,y≠x)を選択する(ステップS32)。
より具体的には、図7の例においては、PCSコントローラ11Aは、LiB58-1を放電先LiBとして選択している。
【0055】
次にPCSコントローラ11Aは、劣化診断処理を開始し、劣化診断対象の車載蓄電池BT-nの無負荷状態の電圧、すなわち、負荷電流が流れていない状態で電圧を測定する(ステップS33)。
【0056】
続いてPCSコントローラ11Aは、PCSコントローラ11Aは、劣化診断処理を開始し、劣化診断対象の車載蓄電池BT-nをLiB58-1(放電先LiB58-y)に電気的に接続した状態で、所定の第1負荷電流(例えば、1A)で所定時間(例えば、10秒)放電し、放電後の電圧を測定する(ステップS34)。
【0057】
具体的には、図7に黒太矢印A2で示すように、劣化診断対象の車載蓄電池BT-n(=車載蓄電池BT-x)から放電先であるLiB-1(=LiB58-y)に対して第1負荷電流で所定時間放電を行い、放電後の電圧を測定している。
【0058】
さらにPCSコントローラ11Aは、ステップS34の場合と同様に、所定の第2負荷電流(>第1負荷電流。例えば、5A)で所定時間(例えば、10秒)放電し、放電後の電圧を測定する(ステップS35)。
【0059】
続いてPCSコントローラ11Aは、ステップS33~ステップS35の測定結果に基づいて、電流-電圧近似直線を求め、電流-電圧近似直線の傾きから内部抵抗値を算出する(ステップS36)。
【0060】
次にPCSコントローラ11Aは、算出した内部抵抗値を予め記憶した内部抵抗値-劣化状態テーブル等を参照して、劣化診断対象の車載蓄電池BT-n(BT-x)の劣化状態を提示する(ステップS37)。提示態様としては、例えば、「車載蓄電池は、正常です。」、「車載蓄電池の劣化が進んでいます。」、「車載蓄電池の交換が必要です。」等のように、劣化状態に応じたコメントを表示したり、ランプの点灯状態を等が可能である。
【0061】
そして、PCSコントローラ11Aは、車載蓄電池BT-1~BT-nの全てについて劣化診断が終了したか否かを判断する(ステップS38)。
ステップS38の判断において、車載蓄電池BT-1~BT-nの全てについて劣化診断が終了した場合には(ステップS38;Yes)、PCSコントローラ11Aは、劣化診断処理を終了し、通常動作に移行する。
【0062】
ステップS38の判断において、未だ車載蓄電池BT-1~BT-nの全てについて劣化診断が終了していない場合には(ステップS38;No)、PCSコントローラ11Aは、処理を再びステップS31に移行して、上述した処理を繰り返す。
【0063】
上述したステップS31~ステップS38の処理と並行して、PCSコントローラ11Aは、常時、商用系統において停電が発生したか否かを判断している(ステップS39)。
【0064】
ステップS39の判断において、商用系統において停電が発生していない場合には(ステップS39;No)、PCSコントローラ11Aは、LiB58-1~58-mの全てについて劣化診断が終了したか否かを判断する(ステップS40)。
【0065】
ステップS40の判断において、LiB58-1~58-mの全てについて劣化診断が終了した場合には(ステップS40;Yes)、PCSコントローラ11Aは、劣化診断処理を終了し、通常動作に移行する。
【0066】
ステップS40の判断において、未だ車載蓄電池BT-1~BT-nの全てについて劣化診断が終了していない場合には(ステップS40;No)、PCSコントローラ11Aは、処理を再びステップS39に移行して、停電検出処理を繰り返す。
【0067】
ステップS39の判断において、商用系統において停電が発生した場合には(ステップS19;Yes)、PCSコントローラ11Aは、ステップS31~ステップS38の劣化診断処理を中断し(ステップS41)、第1実施形態で説明した停電時処理と同様の処理を行って(ステップS42)、劣化診断処理を終了する。
【0068】
以上の説明のように、本第2実施形態によれば、マルチパワーコンディショナ11の運用を実効的に止めることなく、車載蓄電池BT-1~BT-nの劣化診断を行うことができる。
さらに劣化診断に用いる劣化診断対象の車載蓄電池BTの放電電力は、LiB58-1~LiB58-mに蓄電されるので、蓄電システム10全体としては、劣化診断に必要な放電電力の消費を可能な限り低減しつつ、劣化診断を行うことが可能となる。
【0069】
[3]実施形態の通常時の蓄電動作
以上の説明においては、通常時の蓄電動作については、述べなかったが、ここで、詳細に説明するものとする。
【0070】
通常時においては、PCSコントローラ11Aは、受変電設備21を介して、電力会社22から交流電力が供給されると、Δ-Δ変圧器53は、受変電設備21からの供給三相交流電力の電圧変換を行って、AC/DCコンバータ54、特定負荷13-1及びスコット変圧器56に供給する。
【0071】
これにより、スコット変圧器56は、受変電設備21側からの三相交流電力を単相交流電力に変換して、特定負荷13-2へ供給し、特定負荷13-2が動作する。
【0072】
一方、AC/DCコンバータ54は、受変電設備21からの供給交流電力を直流電力に変換し、DC/DCコンバータ57-1~57-m及びDC/DCコンバータ61に供給する。
【0073】
これと並行してDC/DCコンバータ55は、接続箱25を介して太陽光発電システム26から供給された直流電力の電圧を所定の直流電圧に変換してAC/DCコンバータ54あるいはDC/DCコンバータ57-1~57-mに供給する。
【0074】
DC/DCコンバータ57-1~57-mは、AC/DCコンバータ54、DC/DCコンバータ55あるいはDC/DCコンバータ61からの直流電力の電圧をそれぞれ対応するLiB58-1~58-mに合わせた電圧に変換して直流電力をそれぞれ供給して、停電時に備えて蓄電する。
【0075】
この場合において、いずれのLiB58-1~58-mを優先的に蓄電するかについては述べなかったが、第1実施形態において、判断したLiB58-1~58-mの劣化状態に基づいて、劣化度合いの低い電池から優先して充放電を行うように制御を行うようにしてもよい。
【0076】
また、DC/DCコンバータ61は、DC/DCコンバータ57-1~57-mと同様に、AC/DCコンバータ54、DC/DCコンバータ55あるいはDC/DCコンバータ61からの直流電力の電圧をEV充電器62-1、62-2に対応する電圧に変換してEV充電器62-1、62-2に直流電力をそれぞれ供給して、停電時に備えて蓄電する。
【0077】
AC/DCコンバータ54、DC/DCコンバータ55あるいはDC/DCコンバータ57-1~57-mから供給された直流電力の電圧をEV充電器62-1~62-nに対応する所定の入力電圧に変換してEV充電器62-1~62-nに供給する。
【0078】
この結果、EV充電器62-1~62-nは、供給された直流電力を対応する車載蓄電池BT-1~BT-nの充電状態に応じて変換し、車載蓄電池BT-1~BT-nに直流電力をそれぞれ供給して、停電時に備えて蓄電する。
【0079】
[4]実施形態の変形例
本実施形態のPCSコントローラ11Aは、CPUなどの制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶装置と、HDD、SSD(Solid State Drive)等の外部記憶装置と、ディスプレイ装置などの表示装置と、を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0080】
本実施形態のPCSコントローラ11Aで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでUSBメモリ、SSD等の半導体記憶装置、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0081】
また、本実施形態のPCSコントローラ11Aで実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のPCSコントローラ11Aで実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0082】
また、本実施形態のPCSコントローラ11Aのプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0083】
本実施形態のPCSコントローラ11Aで実行されるプログラムは、上述した各部(内部抵抗測定部、提示部、判断部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、内部抵抗測定部、提示部、判断部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
10 蓄電システム
11 マルチパワーコンディショナ
11A PCSコントローラ
12 DC入力型双方向充電器
13 特定負荷
21 受変電設備
22 電力会社
23 一般負荷
25 接続箱
26 太陽光発電システム
31 専用通信線
32 リモート監視端末
34 通信ネットワーク
35 監視センタ
37 電気自動車
53 Δ-Δ変圧器
54 AC/DCコンバータ
55 DCコンバータ
56 スコット変圧器
57-1~57-m DC/DCコンバータ
58-1~58-m LiB
59-1、59-2 遮断器
61 DCコンバータ
62 EV充電器
A1、A21 黒太矢印
BT-1~BT-n 車載蓄電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7