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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092545
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/30 20080401AFI20240701BHJP
   G05G 1/01 20080401ALI20240701BHJP
   G05G 5/05 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G05G1/30 E
G05G1/01 F
G05G5/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208564
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】宮内 愛奈
【テーマコード(参考)】
3J070
【Fターム(参考)】
3J070AA32
3J070BA71
3J070CB01
3J070CC03
3J070DA24
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構成でブレーキペダル操作によるオートクルーズ解除が可能な作業車両を提供することを目的とする。
【解決手段】
無段変速装置41を操作する変速ペダル18f,18rと、車体を制動するブレーキペダル19を備えた作業車両において、クルーズレバー85に連動して変速ペダル18fを所定の踏込み位置で固定するクルーズアーム82を設け、ブレーキペダル19とクルーズアーム82をクルーズ解除連係リンク88で連結し、ブレーキペダル19を踏み込むとクルーズアーム82を解除方向に作動する構成とした。また、クルーズ解除連係リンク88を、変速ペダル18fを挟んでブレーキペダルアーム19bに対向すべく配置してなる。
【選択図】 図13


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無段変速装置(41)を操作する変速ペダル(18f,18r)と、車体を制動するブレーキペダル(19)を備えた作業車両において、クルーズレバー(85)に連動して変速ペダル(18f)を所定の踏込み位置で固定するクルーズアーム(82)を設け、ブレーキペダル(19)とクルーズアーム(82)をクルーズ解除連係リンク(88)で連結し、ブレーキペダル(19)を踏み込むとクルーズアーム(82)を解除方向に作動する構成としたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
クルーズ解除連係リンク(88)を、変速ペダル(18f)を挟んでブレーキペダルアーム(19b)に対向すべく配置してなる請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
クルーズ解除連係リンク(88)は、ブレーキペダル(19)のペダル連動軸(76)とクルーズアーム軸(84)を連結する中継ロッド(87)を備え、変速ペダル(18f)の下方にクルーズアーム軸(84)を配置し変速ペダル(18f)を挟んで一側にクルーズアーム(82)を他側に中継ロッド(87)を配置してなる請求項1又は請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
中継ロッド(87)に長孔(87a)を設け、ブレーキペダル(19)が踏込み操作されることなくクルーズアーム(82)が操作されるとき、クルーズアーム(82)と中継ロッド(87)の連結部は長孔(87a)の範囲で移動する構成とした請求項3に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用トラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
前進方向を向いた運転手の左手方向の足元にブレーキペダル、右側下方のトランスミッションケースの側方にブレーキ機構、運転席側方のフェンダ上に構成されたオートクルーズ入切レバーを備え、ブレーキペダルを踏み込み操作するとオートクルーズ入り状態を解除する作業車両が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4720113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように構成すると、フェンダ上のオートクルーズ入切レバーでオートクルーズ入りに操作でき、ブレーキペダルを踏み込み操作するとオートクルーズ入り状態を解除できるが、上記の構成ではブレーキペダルとオートクルーズ入切レバーがプッシュプルワイヤで連結されることで、ブレーキペダルの踏み込みがオートクルーズ機構に作用しているが、ブレーキペダルとオートクルーズ入切レバーは離れた位置に配置されているため、長いワイヤを必要としていた。またブレーキペダル操作がオートクルーズ入切レバーを介してオートクルーズ機構に作用していたため、作用の伝達経路が肥大化していた。
【0005】
本発明は、コンパクトな構成でブレーキペダル操作によるオートクルーズ解除が可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、無段変速装置41を操作する変速ペダル18f,18rと、車体を制動するブレーキペダル19を備えた作業車両において、クルーズレバー85に連動して変速ペダル18fを所定の踏込み位置で固定するクルーズアーム82を設け、ブレーキペダル19とクルーズアーム82をクルーズ解除連係リンク88で連結し、ブレーキペダル19を踏み込むとクルーズアーム82を解除方向に作動する構成とした。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、クルーズ解除連係リンク88を、変速ペダル18fを挟んでブレーキペダルアーム19bに対向すべく配置してなる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、クルーズ解除連係リンク88は、ブレーキペダル19のペダル連動軸76とクルーズアーム軸84を連結する中継ロッド87を備え、変速ペダル18fの下方にクルーズアーム軸84を配置し変速ペダル18fを挟んで一側にクルーズアーム82を他側に中継ロッド87を配置してなる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、中継ロッド87に長孔87aを設け、ブレーキペダル19が踏込み操作されることなくクルーズアーム82が操作されるとき、クルーズアーム82と中継ロッド87の連結部は長孔87aの範囲で移動する構成とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1から請求項3に記載の発明によれば、コンパクトな構成でブレーキペダル19操作によるオートクルーズ解除が可能になる。特に請求項3に記載の発明によると、変速ペダル18fとブレーキペダル19が接近配置でありながら変速ペダル18fの下方のクルーズアーム軸84を介してクルーズアーム82と中継ロッド87を対向配置することで狭い空間を有効利用できる。
【0011】
請求項4に記載の発明によると、請求項3に記載の効果に加え、中継ロッド87ひいてはクルーズ解除連係リンク88がクルーズアーム82の操作を阻害しないように構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の作業車両の実施の形態に係るトラクタの左側面図である。
図2図1のトラクタの平面図である。
図3】同トラクタの動力伝達装置の動力伝動線図である。
図4】同トラクタの静油圧式の無段変速装置の構成および動作状態を示す概要図である。
図5】同トラクタのブレーキペダルと連携機構を示す斜視図である。
図6】同トラクタのクルーズ機構とパーキング機構を示す側面図である。
図7図6の平面図である。
図8】同トラクタの操縦部右側ステップ部の斜視図である。
図9図8の平面図である。
図10】同トラクタの変速ペダル、ブレーキペダルの配置側面図である。
図11】同トラクタの変速ペダルの作用状況を示す右側面図である。
図12】同トラクタの変速ペダルの作用状況を示す左側面図である。
図13】同トラクタのクルーズ連係状態を示す斜視図である。
図14】同トラクタの変速ペダル、ブレーキペダル及びその周辺の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1および図2には、本発明の実施形態に係る作業車両の一例であるトラクタ1が示されている。
【0015】
このトラクタ1は、図示しない支持フレーム等に、エンジン3、動力伝達装置4、左右一対の前輪5および後輪6、操縦席7等の機器が搭載又は設けられた走行車体2を備えている。このうちエンジン3は、開閉可能に設けられたボンネットカバー11で覆われている。動力伝達装置4は、ミッションケース40内に配置される静油圧式の無段変速装置(HST:Hydraulic Static Transmission)41、副変速装置51等により構成されている。
【0016】
また、トラクタ1は、エンジン3の回転動力が動力伝達装置4等を経由して左右の前輪5と左右の後輪6に伝達されて駆動する四輪駆動(4WD)と左右の後輪6に伝達されて駆動する二輪駆動(2WD)との駆動方式が切り替え可能であり、そのいずれかの駆動方式で走行する。
【0017】
さらに、トラクタ1は、走行車体2の後部に、ロワリンク29等の取付け部分を介してロータリ耕うん機等の図示しない作業機を装着することにより所望の作業を行うことが可能である。走行車体2の後部には、装着した作業機にエンジン3の回転動力を出力するためのPTO軸59が設けられている。
【0018】
操縦席7は、運転者が座る座席部7aと運転者が乗るときや運転時に足を置くステップ床部7bとを有している。
【0019】
操縦席7の前方には、走行車体2の支持フレームに設けられたハンドルポスト20に支持され前輪5を操舵するステアリングハンドル12が設けられている。ステアリングハンドル12の前方には、運転者に対して操縦に関する情報(走行速度、動作状態など)を表示する表示パネル13が設けられている。
【0020】
ハンドルポスト20の上端部でステアリングハンドル12の下方の左端部には、前進走行と後進走行のいずれかに切り替える際に操作する前後進切替えレバー14が設けられている。
【0021】
また、ハンドルポスト20の上部でステアリングハンドル12の下方の他端部には、エンジン3の回転数を変更するアクセルレバー15が設けられている。アクセルレバー15は、アクセル操作具の一例であり、作業走行時に使用される。
【0022】
操縦席7のステップ床部7bには、そのハンドルポスト20よりも右側の部分に、アクセルペダル16、HSTペダル18、ブレーキペダル19等が設けられている。
【0023】
アクセルペダル16は、アクセル操作具の一例であり、その踏み込み量に応じてエンジン回転数、ひいては走行車体2の車速を上昇させる際に操作される踏み込み式ペダルである。このアクセルペダル16は、基本的に路上走行時に使用される。
【0024】
変速ペダル(以下、HSTペダル)18は、変速操作具の一例であり、車体内側に位置する前進ペダル18fと外側に位置する後進ペダル18rの一対からなる。その踏み込み量に応じて上記HSTからなる無段変速装置41から出力する回転速度(回転数)、ひいては走行車体2の車速の調整を行う際に操作する踏み込み式ペダルである。このHSTペダル18f,18rは、主に作業走行時に使用される。
【0025】
操縦席7の前進方向に対する左側には、副変速レバー21、PTOクラッチレバー22、主変速レバー23等が設けられている。
【0026】
副変速レバー21は、副変速装置51を伝動させる回転動力の回転速度を例えば低速、中速、高速のいずれかの変速段(車速域)を選択する際に操作するレバーである。この変速段のうち低速および中速は圃場内で作業を行う際に圃場内を走行する場合に適した車速域であり、高速は圃場間等を移動する際に路上走行する場合に適した車速域である。PTOクラッチレバー22は、PTO軸59への駆動伝達の断続を行う際に操作するレバーである。主変速レバー23は、変速操作具の他の例であり、無段変速装置41のトラニオン軸47を操作して変速を行うレバーである。
【0027】
操縦席7の前進方向に対する右側には、図2に示されるように、作業機昇降用のポジションレバー24、調整パネル25等が設けられている。
【0028】
ポジションレバー24は、作業機の昇降時における高さを調整する操作レバーである。調整パネル25は、トラクタ1の動作の一部について必要な調整の設定を行うダイヤル、スイッチ等が配置された部分である。
【0029】
動力伝達装置4は、図3に示されるように、まず、エンジン3の出力軸の回転動力が、メインクラッチ31を介してミッションケース40の入力軸32に伝達されて増速ギア33a,33bで増速された後、無段変速装置41の入力軸42に伝達されるよう構成されている。メインクラッチ31は、クラッチペダルの踏み込み操作の有無によって作動する。
【0030】
無段変速装置41は、上記HSTが適用されており、油圧ポンプ43と油圧モータ44を組み合わせて一体にした装置である。
【0031】
油圧ポンプ43は、可変容量型の油圧ポンプであり、入力軸42を通して入力されるエンジン3の回転動力により作動し、ポンプ内における斜板45の傾斜角度を変えることで油圧モータ44に送る作動油の吐出状態(向きおよび流量(ゼロを含む))を調整する。油圧モータ44は、例えば固定容量型の油圧モータであり、油圧ポンプ43から吐出される作動油の状態に応じてモータ出力軸44aを所定の回転方向および回転速度(回転数)で回転させる。
【0032】
そして、動力伝達装置4では、図3に示されるように、無段変速装置41における油圧モータ44のモータ出力軸44aの回転動力が、副変速装置51を経てから駆動出力軸34を通して出力された後に後輪デフギア装置35を介して左右の後輪6に伝達される。
【0033】
また、動力伝達装置4では、接続ギアを含む駆動切替え装置36が四輪駆動の側に切り替えられると、副変速装置51から駆動出力軸34を通して出力される回転動力が、駆動切替え装置36を経て前輪中継軸37に伝達された後に前輪増速装置38と前輪デフギア装置39を介して左右の前輪5にも伝達される。前輪5は、前輪増速装置38が作動して増速処理されるときだけ後輪6よりも増速した回転動力が伝達されるが、それ以外は後輪6と同じ回転速度の回転動力が伝達される。
【0034】
さらに、動力伝達装置4は、図3に示されるように、無段変速装置41における油圧ポンプ43に入力軸42と同様に回転するポンプ出力軸43aが設けられている。これにより、動力伝達装置4では、そのポンプ出力軸43aの回転動力が、PTO正逆クラッチ56を経てPTO中継軸57へ伝達された後にPTO変速装置58を経てPTO軸59に伝達される。
【0035】
無段変速装置41では、油圧ポンプ43における斜板45が前進出力位置、中立位置、
および後進出力位置のいずれかの位置に切り替えられる。
【0036】
無段変速装置41は、斜板45が前進出力位置に切り替えられると、油圧モータ44が前進させる方向にかつ傾斜角度に応じた回転速度で回転する動力をモータ出力軸44aから出力し、また斜板45が後進出力位置に切り替えられると、油圧モータ44が後進させる方向にかつ傾斜角度に応じた回転速度で回転する動力をモータ出力軸44aから出力する。一方、無段変速装置41は、斜板45が中立位置に切り替えられると、油圧モータ44がモータ出力軸44aを回転させることがなく動力も出力しない。
【0037】
また、無段変速装置41は、図4に示されるように、油圧ポンプ43における斜板45の傾斜角度を調整するよう回動するトラニオン軸47を有している。トラニオン軸47は、軸回動機構60の作動により動くトラニオンアーム48を介して回動させられる。
【0038】
軸回動機構60は、駆動源となる油圧シリンダ機構61と、油圧シリンダ機構61の動力をトラニオンアーム48に伝達させるリンク機構65とを有している。
【0039】
油圧シリンダ機構61は、複動型の油圧シリンダ62と、その油圧シリンダ62を作動させる制御弁63とで構成されている。
【0040】
リンク機構65は、油圧シリンダ機構61における油圧シリンダ62のピストンロッド62aの先端部に一端部が接続されるとともに第1固定軸66aに回動可能に支持された第1揺動アーム67と、トラニオンアーム48の後端部に一端部が接続されるとともに第2固定軸66bに回動可能に支持された第2揺動アーム68と、第1揺動アーム67の他端部と第2揺動アーム68の他端部との間を回動自在に連結する連結アーム69とで構成されている。
【0041】
制御弁63は、図示しないシリンダ用の油圧ポンプから送られる作動油を複動型のシリンダ部62bの一端および他端に所要のタイミングで供給し、これによりピストンロッド62aを伸長又は短縮させる。制御弁63としては、作動油の供給動作を制御する一対のソレノイド63a,63bを備えた電磁式油圧比例弁が適用されており、一方のソレノイド63aを伸長用として作動させ、他方のソレノイド63bを短縮用として作動させるようになっている。図4中の符合64は、制御弁63とシリンダ部62bの一端および他端との間をそれぞれ接続する送油管を示す。
【0042】
この軸回動機構60は、制御弁63の作動油の供給動作により油圧シリンダ機構61のピストンロッド61aを図4に示される中立位置に相当する位置から矢印D1で示す方向に伸長させた場合、その伸長するピストンロッド61aの力がリンク機構65を介してトラニオンアーム48に伝達され、このときのトラニオンアーム48がトラニオン軸47を矢印E1で示す方向に回動させるよう作動する。この場合は、油圧ポンプ43における斜板45が前進出力位置の側に傾斜するよう動かされる。
【0043】
また、軸回動機構60は、制御弁63の作動油の供給動作により油圧シリンダ機構61のピストンロッド61aを中立位置に相当する位置から矢印D2で示す方向に短縮させた場合、その短縮するピストンロッド61aの力がリンク機構65を介してトラニオンアーム48に伝達され、このときのトラニオンアーム48がトラニオン軸47を矢印E2で示す方向に回動させるよう作動する。この場合は、油圧ポンプ43における斜板45が後進出力位置の側に傾斜するよう動かされる。
【0044】
さらに、無段変速装置41は、図4に示されるように、斜板45を回動させるトラニオン軸47とトラニオンアーム48を中立の位置に保持する中立保持機構49が設けられている。
【0045】
中立保持機構49は、トラニオン軸47を支持軸として一体になって回動するとともに中立位置に戻るように構成されたカムプレート49aと、そのカムプレート49aの窪んだ形状からなる周縁カム部に弾性的な付勢を受けて押し付けられるローラ49bを有している。この中立保持機構49に対してトラニオン軸47は、その一端が、カムプレート49aの一部に回動可能に連結された構造になっている。
【0046】
無段変速装置41では、軸回動機構60が作動しないときは、中立保持機構49の作用によりトラニオンアーム48が中立の位置に保持され(図4参照)、これにより斜板45も中立位置に戻されるようになっている。
【0047】
無段変速装置41においては、変速操作具、すなわち主変速レバー23の操作量が図外主変速位置センサで検出されるか又はHSTペダル18f,18rの踏み込み量が図外HSTペダル位置センサで検出されると、その検出値に応じて軸回動機構60における制御弁63のソレノイド63a,63bに供給する駆動用電流値がそれぞれ制御される。これにより、無段変速装置41では、トラニオンアーム48を介してトラニオン軸47が所要の方向に踏み込み量に応じた所要の角度だけ回動させられる。
【0048】
この結果、無段変速装置41では、トラニオン軸47の回動に連動して油圧ポンプ43における斜板45の傾斜角度が任意に変更されて油圧ポンプ43から油圧モータ44に吐出される作動油の向きや流量が調整されるので、油圧モータ44からモータ出力軸44aを通して所要の方向に回転してかつ所要の回転速度(回転数)に無段状に変更された回転動力が出力される。
【0049】
前記動力伝達装置4において、無段変速装置41における油圧モータ44のモータ出力軸44aの回転動力が、副変速装置51を経てから駆動出力軸34を通して出力された後に後輪デフギア装置35を介して左右の後輪6に伝達される。
【0050】
そして、後輪デフギア装置35の左右デフ出力軸70L,70Rの各端部に左右ブレーキ機構71L,71Rを備えている。左右デフ出力軸70L,70Rと前記左右の後輪6L,6Rを支持する後車軸72L,72Rとの間に、平ギヤの組合せによる最終減速機構73L,73Rを構成している。
【0051】
前記左右ブレーキ機構71L,71Rの構成及び連動構成について説明する。左右ブレーキ機構71L,71Rは共通の構成であるから、適宜に左側を意味する符号L及び右側を意味する符号Rを省略して説明する。ブレーキ機構71は、デフ出力軸70に嵌合し軸方向に摺動自在なブレーキディスク、一対のブレーキカムディスク、回転カム板とボールからなるカム機構等を備える公知の構成である。そして、カム機構によって押し広げられる状態でブレーキディスクを固定壁部に押し付けることによりデフ出力軸70を制動できる構成である。
【0052】
前記デフ出力軸70及び後車軸72を支持するとともにこれらを覆う車軸ケース(図示せず)を前記ミッションケース40に連結している。左右車軸ケースには、前記ブレーキ機構71L,71Rの前記カム機構を連動するブレーキアーム74L,74Rを水平軸芯回りに回動自在のブレーキ作動軸75の左右端部に設けている。
【0053】
前記ブレーキ機構71L,71Rを作動するブレーキペダル19は水平軸芯回りに回動自在に設けられる。詳細には、操縦席7のステップ床部7bの下方において、ペダル連動軸76を設ける。該ペダル連動軸76の右側部にブレーキペダル19の基部側ボス19aを貫通し連動可能に設ける。ペダル連動軸76の左右端部には左ペダルアーム77Lと右ペダルアーム77Rを設ける。そして、左ペダルアーム77Lと左側のブレーキアーム74Lを左ブレーキロッド78L,左ブレーキリンク79Lを介して連結し、右ペダルアーム77Rと右側のブレーキアーム74Rを右ブレーキロッド78R,右ブレーキリンク79Rを介して連結している。したがって、ブレーキペダル19を踏み込むと、左右ブレーキロッド78L,78R及び左右ブレーキリンク79L,79Rは連動し、左右のブレーキアーム74L,74Rを同時に作動しブレーキ機構71L,71R共に制動状態とする。なお、ブレーキペダル19のアーム19bは、前進ペダル18fと後進ペダル18rの間に位置して回動操作によって上下動しうる構成である。
【0054】
次いで、前記HSTペダル18を前進操作域への踏み込み状態を維持またはHSTペダル18維持状態を解除するクルーズ機構Cについて説明する。HSTペダル18のうち、前進ペダル18fのペダルアーム18aに、鋸刃状に形成した係合爪81を設け、クルーズアーム82に設けたクルーズ固定爪83を係合することで前進ペダル18fは所定踏み位置を維持して停止し得る構成である。クルーズアーム82は、L型アームに形成され先端部に前記係合爪81に対向するクルーズ固定爪83を形成しており、クルーズアーム軸84回りに正逆に回動してクルーズ固定爪83を係合爪81に接近又は離反できる構成としている。
【0055】
そして、ハンドルポスト20の右側にクルーズレバー85を設け、このクルーズレバー85とクルーズアーム軸84の端部に一体的に設けた第1ブラケット84aとを連係ロッド86で連結し、クルーズレバー85操作で連係ロッド86を押し下げることにより(図13中矢印Y方向)、クルーズアーム軸84を回転し(同図中矢印Z方向)、クルーズ固定爪83を係合爪81に押し当てペダル支持軸80を所定踏み込み位置でロックできるようになっている。またクルーズレバー85を上記と反対側に操作すると、連係ロッド86が引き上げられクルーズ固定爪83は係合爪81から離反でき、以後連係ロッド86はばね86bの付勢力で復帰しペダル支持軸80及び前進ペダル18fの規制を解除状態で維持できる。
【0056】
また、前記ブレーキペダル19のペダル連動軸76と前記クルーズアーム82との間に該クルーズアーム82をクルーズ解除側に連動するクルーズ解除連係リンク88を構成している。すなわち、ペダル連動軸76またはブレーキペダルアーム19bと一体のブラケット部材19cに、長孔87aを備えたプレート部材87bと軸長調整可能に形成した螺合調整ロッド87cからなる中継ロッド87を回動自由に連結し、前記クルーズアーム軸84の中間部に固定した第2ブラケット84bの先端部の連係ピン84cを前記長孔87aにのぞませて構成している。これらブラケット部材76a、中継ロッド87、第2ブラケット84b等をもってクルーズ解除連係リンク88を構成している。
【0057】
したがって、クルーズレバー85操作で前進ペダル18fが所定踏み込み位置でロックされている状態のとき、ブレーキペダル19を踏み込むと、ペダル連動軸76、ブラケット部材76a、中継ロッド87、連係ピン84c及び第2ブラケット84bを介してクルーズアーム82を図13中反矢印Z方向に回動し、クルーズ固定爪83を係合爪81から離反させることができ、前進ペダル18fを踏み込み状態から解除できる。
【0058】
なお、長孔87aに沿って第2ブラケット84bの連係ピン84cが摺動可能であるから、ブレーキペダル19を踏み込まない非制動状態において、クルーズアーム82のクルーズ解除動作を許容できる。すなわち、中継ロッド87に長孔87aを設け、ブレーキペダル19が踏込み操作されることなくクルーズアーム82が操作されるとき、クルーズアーム82と中継ロッド87の連結部である連係ピン84cは長孔87aの範囲で移動することとなるから、クルーズレバー85によるクルーズ解除操作をブレーキペダル19に影響されることなく、つまり中継ロッド87ひいてはクルーズ解除連係リンク88がクルーズアーム82の操作を阻害しないで実行できるものである。
【0059】
そして、クルーズ解除連係リンク88の中継ロッド87と第2ブラケット84bは前進ペダル18fのペダルアーム18aよりも下方であってかつ車体内側に配置し、クルーズアーム82を前進ペダル18fのペダルアーム18aとブレーキペダル19のペダルアーム19bとの間に位置させている。またクルーズアーム軸84を各ペダルアーム18a,19b踏込み下方に配置している。したがって、クルーズ機構の連動構成をコンパクトに配置できリンク機構やワイヤ配策長さを短くできて嵩張らない。
【0060】
したがって、HSTペダル18のうち前進ペダル18fのペダルアーム18aに設ける係合爪81、クルーズ固定爪83を有したクルーズアーム82、クルーズレバー85等によってクルーズ固定機構C1とされる。そしてブレーキペダル19側にはクルーズ解除連係リンク88を介してクルーズアーム82をクルーズ解除側に連動するクルーズ解除機構C2が構成されるものである。クルーズ機構Cはクルーズ固定機構C1、クルーズ解除機構C2、クルーズレバー85等による。
【0061】
図6図7において、ハンドルポスト20のフレーム部20aにステアリングハンドル12の連動軸12aを支架し立設している。そして、このフレーム部20aの一側部(図例では右側)に前記クルーズレバー85を支持している。
【符号の説明】
【0062】
18f 前進ペダル(変速ペダル)
18r 後進ペダル(変速ペダル)
19 ブレーキペダル
19b ブレーキペダルアーム
41 無段変速装置
76 ペダル連動軸
82 クルーズアーム
84 クルーズアーム軸
85 クルーズレバー
87 中継ロッド
87a 長孔
88 クルーズ解除連係リンク
図1
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