(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092552
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】導波管、導波管の製造方法及びアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01P 5/02 20060101AFI20240701BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01P5/02 601
H01P11/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208578
(22)【出願日】2022-12-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/研究開発課題名:テラヘルツ帯を用いたBeyond 5G超高速大容量通信を実現する無線通信技術の研究開発 研究開発項目2 テラヘルツ帯を用いた限定エリア内無線システムの研究開発 研究開発項目3 テラヘルツ帯を用いた地上~NTN プラットホーム間フィーダーリンクシステムの研究開発 副題:テラヘルツ帯通信の高密度化・長距離化に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】西 清次
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】爲末 和彦
(72)【発明者】
【氏名】川西 哲也
(57)【要約】
【課題】導波管の周波数特性を良好に維持しつつ導波管の小型化を実現する。
【解決手段】導波管1は、第1導体板11と、第1導体板11と接触している第2導体板12とを有する導波管であって、第1導体板11は、長手方向が第1方向になるように第1導体板11の第2導体板12側の平面である第1主平面と平行に形成された断面が長方形の溝部111と、溝部111における分岐位置を起点として、第1方向及び第1主平面と直交する第2方向において第2導体板12から離れる向きに形成された第1垂直管部112と、を有し、第2導体板12は、第1主平面と接触する第2導体板12における平面である第2主平面から突出した態様で溝部111に挿入された、溝部111に沿って伝搬した電波を第1垂直管部112に向けて反射する反射面Rを有する反射部122を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体板と、前記第1導体板と接触している第2導体板とを有する導波管であって、
前記第1導体板は、
長手方向が第1方向になるように前記第1導体板の前記第2導体板側の平面である第1主平面と平行に形成された断面が長方形の溝部と、
前記溝部における分岐位置を起点として、前記第1方向及び前記第1主平面と直交する第2方向において前記第2導体板から離れる向きに形成された第1垂直管部と、
を有し、
前記第2導体板は、前記第1主平面と接触する前記第2導体板における平面である第2主平面から突出した態様で前記溝部に挿入された、前記溝部に沿って伝搬した電波を前記第1垂直管部に向けて反射する反射面を有する反射部を有する、
導波管。
【請求項2】
前記反射面は、前記第1垂直管部における前記電波が入射する側に最も近い側の面の前記第1方向における位置と、前記第1垂直管部における前記電波が入射する側から最も遠い側の面の前記第1方向における位置との間に位置する反射領域を有する、
請求項1に記載の導波管。
【請求項3】
前記反射面における前記第1導体板側の第1端部の前記第1方向における位置は、前記第1垂直管部における前記電波が入射する入射側から最も遠い側の面の前記第1方向における位置と同一であり、
前記反射面における前記第1端部と反対側の第2端部の前記第1方向における位置は、前記第1垂直管部における前記入射側に最も近い側の面の前記第1方向における位置と、第1前記垂直管部における前記入射側から最も遠い側の面の前記第1方向における位置との間である、
請求項1又は2に記載の導波管。
【請求項4】
前記第2導体板は、前記溝部における前記第1垂直管部が形成されている側と反対側の端部から前記第2方向に延びて前記第2導体板を貫通する第2垂直管部をさらに有する、
請求項1又は2に記載の導波管。
【請求項5】
方形導波管規格により定められている前記導波管の内法の幅をWa[mm]、光速をC0[106m/s]とした場合に、
前記電波の周波数は1.4×C0/(2×Wa)[GHz]以上1.7×C0/(2×Wa)[GHz]以下であり、
前記反射部の前記第1方向と平行な外側面と前記溝部の前記第1方向と平行な内側面との距離が、前記溝部の2つの前記内側面間の距離に対して12%以上38%未満である、
請求項1又は2に記載の導波管。
【請求項6】
第1導体板材料に、長手方向が第1方向になるように、かつ前記第1導体板材料の第1主平面と平行に、断面が長方形の溝部を形成する工程と、
前記第1導体板材料に、前記溝部における分岐位置を起点として、前記第1方向及び前記第1主平面と直交する第2方向に延びる垂直管部を形成することにより第1導体板を製造する工程と、
前記第1導体板材料と異なる第2導体板材料に、前記溝部に沿って伝搬した電波を前記垂直管部に向けて反射する反射面を有する反射部を、前記第2導体板材料において前記第1主平面と接触する第2主平面から突出した態様で形成することにより第2導体板を製造する工程と、
前記第1導体板及び前記第2導体板を形成した後に、前記反射部を前記溝部に挿入した状態で前記第1主平面と前記第2主平面とが接触するように前記第1導体板と前記第2導体板とを結合させる工程と、
を有する導波管の製造方法。
【請求項7】
アンテナポートを有するアンテナ素子と、
前記アンテナポートに接続された導波管と、
を有し、
前記導波管は、第1導体板と、前記第1導体板と接触している第2導体板とを有する導波管であって、
前記第1導体板は、
長手方向が第1方向になるように前記第1導体板の前記第2導体板側の平面である第1主平面と平行に形成された断面が長方形の溝部と、
前記溝部における分岐位置を起点として、前記第1方向及び前記第1主平面と直交する第2方向において前記第2導体板から離れる向きに形成された第1垂直管部と、
を有し、
前記第2導体板は、
前記アンテナポートと前記溝部との間において前記第2方向に形成された第2垂直管部と、
前記第2導体板は、前記第1主平面と接触する前記第2導体板における平面である第2主平面から突出した態様で前記溝部に挿入された、前記溝部に沿って伝搬した電波を前記第1垂直管部に向けて反射する反射面を有する反射部と、
を有するアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波管、導波管の製造方法及びアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、方向が異なる複数の導波管が接続されたベンド型導波管が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の導波管は、直交する2つの導波管の交わり部に、片面に45度のテーパ面を有する金属部材が嵌め込まれた状態で、導波管と金属部材を金属板で覆うことにより構成されていた。導波管が伝送する信号の周波数が高くなると、導波管の径と金属部材を小さくする必要がある。導波管の径と金属部材が小さくなると、導波管の周波数特性に与える金属部材の位置ずれの影響が大きくなってしまうという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、導波管の周波数特性を良好に維持しつつ導波管の小型化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の導波管は、第1導体板と、前記第1導体板と接触している第2導体板とを有する導波管であって、前記第1導体板は、長手方向が第1方向になるように前記第1導体板の前記第2導体板側の平面である第1主平面と平行に形成された断面が長方形の溝部と、前記溝部における分岐位置を起点として、前記第1方向及び前記第1主平面と直交する第2方向において前記第2導体板から離れる向きに形成された第1垂直管部と、を有し、前記第2導体板は、前記第1主平面と接触する前記第2導体板における平面である第2主平面から突出した態様で前記溝部に挿入された、前記溝部に沿って伝搬した電波を前記第1垂直管部に向けて反射する反射面を有する反射部を有する。
【0007】
前記反射面は、前記第1垂直管部における前記電波が入射する側に最も近い側の面の前記第1方向における位置と、前記第1垂直管部における前記電波が入射する側から最も遠い側の面の前記第1方向における位置との間に位置する反射領域を有してもよい。
【0008】
前記反射面における前記第1導体板側の第1端部の前記第1方向における位置は、前記第1垂直管部における前記電波が入射する入射側から最も遠い側の面の前記第1方向における位置と同一であり、前記反射面における前記第1端部と反対側の第2端部の前記第1方向における位置は、前記第1垂直管部における前記入射側に最も近い側の面の前記第1方向における位置と、第1前記垂直管部における前記入射側から最も遠い側の面の前記第1方向における位置との間であってもよい。
【0009】
前記第2導体板は、前記溝部における前記第1垂直管部が形成されている側と反対側の端部から前記第2方向に延びて前記第2導体板を貫通する第2垂直管部をさらに有してもよい。
【0010】
方形導波管規格により定められている前記導波管の内法の幅をWa[mm]、光速をC0[106m/s]とした場合に、前記電波の周波数は1.4×C0/(2×Wa)[GHz]以上1.7×C0/(2×Wa)[GHz]以下であり、前記反射部の前記第1方向と平行な外側面と前記溝部の前記第1方向と平行な内側面との距離が、前記溝部の2つの前記内側面間の距離に対して12%以上38%未満であってもよい。
【0011】
本発明の第2の態様の導波管の製造方法は、第1導体板材料に、長手方向が第1方向になるように、かつ前記第1導体板材料の第1主平面と平行に、断面が長方形の溝部を形成する工程と、前記第1導体板材料に、前記溝部における分岐位置を起点として、前記第1方向及び前記第1主平面と直交する第2方向に延びる垂直管部を形成することにより第1導体板を製造する工程と、前記第1導体板材料と異なる第2導体板材料に、前記溝部に沿って伝搬した電波を前記垂直管部に向けて反射する反射面を有する反射部を、前記第2導体板材料において前記第1主平面と接触する第2主平面から突出した態様で形成することにより第2導体板を製造する工程と、前記第1導体板及び前記第2導体板を形成した後に、前記反射部を前記溝部に挿入した状態で前記第1主平面と前記第2主平面とが接触するように前記第1導体板と前記第2導体板とを結合させる工程と、を有する。
【0012】
本発明の第3の態様のアンテナは、アンテナポートを有するアンテナ素子と、前記アンテナポートに接続された導波管と、を有し、前記導波管は、第1導体板と、前記第1導体板と接触している第2導体板とを有する導波管であって、前記第1導体板は、長手方向が第1方向になるように前記第1導体板の前記第2導体板側の平面である第1主平面と平行に形成された断面が長方形の溝部と、前記溝部における分岐位置を起点として、前記第1方向及び前記第1主平面と直交する第2方向において前記第2導体板から離れる向きに形成された第1垂直管部と、を有し、前記第2導体板は、前記アンテナポートと前記溝部との間において前記第2方向に形成された第2垂直管部と、前記第2導体板は、前記第1主平面と接触する前記第2導体板における平面である第2主平面から突出した態様で前記溝部に挿入された、前記溝部に沿って伝搬した電波を前記第1垂直管部に向けて反射する反射面を有する反射部と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、導波管の周波数特性を良好に維持しつつ導波管の小型化を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】シミュレーションで用いたパラメータについて説明するための図である。
【
図5】導波管1の透過特性のL_ref依存性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図6】導波管1の透過特性のL_ref依存性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】導波管1の透過特性のd_x依存性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】導波管1の透過特性のd_x依存性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】導波管1の反射特性のd_x依存性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】導波管1の反射特性のd_x依存性のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[導波管1の構成]
図1は、導波管1の構成の概要を示す透視図である。
図2は、導波管1の一部の領域の分解図である。
図3は、導波管1の一部の領域の拡大図である。
【0016】
図1に示すように、導波管1は、アンテナ素子2に接続されるように構成されている。アンテナ素子2が導波管1に接続されることでアンテナが構成される。導波管1は、アンテナ素子2の出力ポートから入力された電波を伝搬する導波路を有する。導波管1は、アンテナ素子2から入力された電波をアンテナ素子2の出力ポートと異なる位置まで伝搬してから出力する。
図1に示す例においては、導波管1が2つの導波路を有するが、導波管1は1つの導波路を有していてもよく、3以上の導波路を有していてもよい。
【0017】
導波管1は、第1導体板11と、第1導体板11と接触している第2導体板12と、を有する。第1導体板11及び第2導体板12は、例えば長方形の板状の金属(例えば銅)により構成されているが、第1導体板11及び第2導体板12の形状は任意である。導波管1の製造時に第1導体板11と第2導体板12との位置合わせをしやすいように、第1導体板11及び第2導体板12の形状は、第1導体板11と第2導体板12とを接触させた状態で、第1導体板11の複数の側面と第2導体板12における対応する複数の側面とが同一平面に位置する形状であることが望ましい。
【0018】
第1導体板11は、溝部111と、第1垂直管部112と、を有する。第2導体板12は、第2垂直管部121と、反射部122と、を有する。
図1においては、アンテナ素子2を中心として対称となる位置に、第2垂直管部121aから溝部111aを介して第1垂直管部112aに達する第1の導波路と、第2垂直管部121bから溝部111bを介して第1垂直管部112bに達する第2の導波路とが示されている。以下の説明においては、第2垂直管部121aから溝部111aを介して第1垂直管部112aに達する第1の導波路を例にして詳細を説明する。
【0019】
溝部111は、長手方向が第1方向になるように第1導体板11の第2導体板12側の平面である第1主平面と平行に形成されている。溝部111の断面は長方形である。
図1に示す例における第1方向は、例えば第1導体板11及び第2導体板12の長手方向であり、
図1から
図3におけるY方向である。
【0020】
溝部111における第2垂直管部121と結合される位置に対応する端部には、第2垂直管部121を介してアンテナ素子2からZ方向に入射した電波の向きをY方向に変えるための反射面が形成されている。反射面において電波の伝搬方向が90°変化するので、第2垂直管部121及び溝部111は第1のコーナ導波管として機能する。
【0021】
第1垂直管部112は、溝部111における分岐位置を起点として、第1方向及び第1主平面と直交する第2方向において第2導体板12から離れる向きに形成されている。第2方向は、第1導体板11の厚み方向であり、
図1から
図3におけるZ方向である。分岐位置は、
図3において符号Bで示すように、第1垂直管部112の第1方向における中央位置である。第1垂直管部112は、例えば導波管1を貫通するように形成されている。第1垂直管部112の断面は、例えば長方形である。
【0022】
第2垂直管部121は、一端がアンテナ素子2に結合されており、他端が溝部111に結合されている。
図1及び
図2に示すように、第2垂直管部121は、溝部111における第1垂直管部112が形成されている側と反対側の端部から第2方向に延びて第2導体板12を貫通する。第2垂直管部121の断面は、例えば長方形である。
【0023】
反射部122は、
図3(a)の斜視図に示すように、第2導体板12における第1主平面と接触する平面である第2主平面から突出した態様で溝部111に挿入されている。反射部122は、溝部111に沿ってY方向に伝搬した電波を第1垂直管部112に向けてZ方向に反射する反射面Rを有する。反射面Rにおいて電波の伝搬方向が90°変化するので、溝部111、反射部122、及び第1垂直管部112は第2のコーナ導波管として機能する。
【0024】
反射部122は、導体板をドリルで切削加工することにより形成されてもよく、予め成形された状態で導体板に結合されてもよい。反射部122がドリルで切削加工される場合、反射面Rを完全に平坦に形成することは困難なので、反射面Rは階段状に形成されていてもよい。
【0025】
反射部122は、溝部111における分岐位置Bに対して第2垂直管部121よりも遠い側(
図3(a)における右手前側)の領域に挿入されている。反射部122は、溝部111に収容されるように、第1方向及び第2方向に直交する第3方向(
図1から
図3におけるX方向)における幅が、第3方向における溝部111の幅よりも小さい。反射部122における反射面Rが形成されている側と反対側の端面は、
図3(a)に示すように溝部111の内面と接していなくてもよいが、溝部111の内面に接していてもよい。
【0026】
図3(b)は、
図3(a)に示す領域のA-A線断面図である。
図3(b)に示すように、反射部122は、溝部111の下面と接していなくてもよいが、溝部111の下面と接していてもよい。
【0027】
図3(b)に示すように、反射面Rは、第1垂直管部112における電波が入射する側に最も近い側の面の第1方向における位置P1と、第1垂直管部112における電波が入射する側から最も遠い側の面の第1方向における位置P2との間に位置する反射領域を有する。
【0028】
一例として、反射面Rにおける第1導体板11の側の第1端部E1の第1方向における位置は、第1垂直管部112における電波が入射する入射側から最も遠い側の面の第1方向における位置P2と同一である。反射面Rにおける第1端部E1と反対側の第2端部E2の第1方向における位置は、第1垂直管部112における入射側に最も近い側の面の第1方向における位置P1と、第1垂直管部112における入射側から最も遠い側の面の第1方向における位置P2との間である。このような位置に反射面Rが設けられていることで、反射面Rで反射した電波が、溝部111の下面に当たることなく第1垂直管部112に沿って伝搬されやすくなる。その結果、導波管1から出力される電波の強度の低下を防ぐことができる。
【0029】
[導波管1の製造方法]
導波管1の製造方法の一例を説明する。
まず、加工前の第1導体板材料及び第2導体板材料を準備する。そして、準備した第1導体板材料に、長手方向が第1方向になるように、かつ第1導体板材料の第1主平面と平行に、断面が長方形の溝部111を形成する。溝部111における一方の端部には、第1主平面及び第1方向に対して45°傾斜した反射面を形成する。溝部111における他方の端部には、第1主平面及び第1方向に直交する端面を形成する。
【0030】
続いて、第1導体板材料に、溝部111における分岐位置を起点として、第1方向及び第1主平面と直交する第2方向に延びる第1垂直管部112を形成することにより第1導体板11が完成する。溝部111及び第1垂直管部112を形成する方法は任意であるが、例えばフライス盤により溝部111及び第1垂直管部112を形成することができる。
【0031】
第1導体板材料の加工の前若しくは後、又は第1導体板材料の加工と並行して、加工前の第2導体板材料に第2垂直管部121及び反射部122を形成する。具体的には、加工前の第2導体板材料から反射部122以外の領域を削り取ることにより、反射部122が突出した態様で残るように第2導体板材料を加工する。その後、第2垂直管部121を形成することにより第2導体板12が完成する。第2垂直管部121及び反射部122を形成する方法も任意であるが、例えばフライス盤を用いることができる。
【0032】
溝部111、第1垂直管部112、第2垂直管部121及び反射部122を形成した後に、反射部122を溝部111に挿入した状態で第1導体板11の第1主平面(溝部111が形成された側の面)と第2導体板12の第2主平面(反射部122が形成された側の面)とが接触するように第1導体板11と第2導体板12とを結合させる。第1導体板と第2導体板の平面形状が同一である場合、第1導体板の4辺と第2導体板の4辺とが一致するように第1導体板11と第2導体板12とを結合させることで、高い精度で反射部122を所望の位置に挿入することができる。
【0033】
[シミュレーション結果]
以下、
図4から
図9を参照しながら、導波管1の特性をシミュレーションした結果を説明する。
図4は、シミュレーションで用いたパラメータについて説明するための図である。
【0034】
図4(a)は、
図3(b)と同等のA-A線断面図である。
図4(b)は、第1垂直管部112の端部の側から第2導体板12の向きに導波管1を見た状態を示す図である。溝部111をドリルで切削する場合、溝部111の角を直角にすることは困難なので、
図4(b)においては、溝部111の右側端部の角が円弧状になっている。
【0035】
図4(a)に示すように、反射部122の下面と溝部111の下側の内面との距離をd_z×Waとする。分岐位置Bと反射部122における反射面Rと反対側の端面との距離をL_ref×Waとする。分岐位置Bと溝部111の端面との距離をL_wg×Waとする。
図4(b)に示すように、反射部122の側面と溝部111の内側面との距離をd_x×Waとする。ここで、Waは、方形導波管規格により定められている内法の幅である。一例として、WR-3の導波管の場合、Wa=0.864mmである。また、溝部111の長手方向の側面が内側に曲がり始める位置を溝部111の端面としている。
【0036】
図5及び
図6は、導波管1の透過特性のL_ref依存性のシミュレーション結果を示す図である。具体的には、
図5及び
図6は、(L_wg-L_ref)×Wa=0.1mm、d_z×Wa=0.05mm、d_x×Wa=0.138mmの場合の透過係数S21の周波数特性を示している。L_refが0.45以上0.60以下、0.90以上1.20以下、又は1.60以上1.90以下の範囲であれば、導波管1を伝搬させる電波の周波数が240GHz以上300GHz以下の範囲において透過係数S21に共振点が生じないことを確認できた。
【0037】
この周波数範囲は、導波管の大きさによって変化する。すなわち、方形導波管規格により定められている導波管の内法の幅をWa[mm]、光速をC0[106m/s]とした場合に、電波の周波数は1.4×C0/(2×Wa)[GHz]以上1.7×C0/(2×Wa)[GHz]以下であることを確認できた。
【0038】
図7及び
図8は、導波管1の透過特性のd_x依存性のシミュレーション結果を示す図である。具体的には、
図7及び
図8は、(L_wg-L_ref)×Wa=0.1mm、d_z×Wa=0.05mm、L_ref=0.105の場合の透過係数S21の周波数特性を示している。d_xが0.12以上である場合に、導波管1を伝搬させる電波の周波数が240GHz以上300GHz以下の範囲において透過係数S21に共振点が生じないことを確認できた。
【0039】
図9及び
図10は、導波管1の反射特性のd_x依存性のシミュレーション結果を示す図である。具体的には、
図9及び
図10は、(L_wg-L_ref)×Wa=0.1mm、d_z×Wa=0.05mm、L_ref=0.105の場合の入力反射係数S11の周波数特定を示している。d_xが0.38以上である場合に、導波管1を伝搬させる電波の周波数が240GHz以上300GHz以下の範囲において入力反射係数S11が悪くなることが確認できた。
【0040】
図7及び
図8を参照して示した結果、及び
図9及び
図10を参照して示した結果から、d_xが0.12以上0.38未満であることが望ましいということを確認できた。すなわち、反射部122の第1方向と平行な外側面と溝部111の第1方向と平行な内側面との距離d_x×Waが、溝部111の2つの内側面間の距離に対して12%以上38%未満であることが好ましいということを確認できた。
【0041】
[導波管1による効果]
以上説明したように、導波管1は、第1導体板11及び第2導体板12により構成されている。そして、第1導体板11は、長手方向が第1方向になるように第1導体板11の第1主平面と平行に形成された断面が長方形の溝部111と、溝部111における分岐位置Bを起点として、第2導体板12から離れる向きに形成された第1垂直管部112と、を有する。第2導体板12は、第2導体板における前記第1主平面と接触する平面である第2主平面から突出した態様で溝部111に挿入された、溝部111に沿って伝搬した電波を第1垂直管部112に向けて反射する反射面Rを有する反射部122を有する。
【0042】
導波管1がこのように構成されていることで、第1導体板11と第2導体板12の位置を合わせることにより、反射部122が高い精度で所望の位置に固定される。その結果、導波管の周波数特性を良好に維持しつつ導波管の小型化を実現することができる。
【0043】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0044】
1 導波管
2 アンテナ素子
11 第1導体板
12 第2導体板
111 溝部
112 第1垂直管部
121 第2垂直管部
122 反射部