IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-駆動ユニット 図1
  • 特開-駆動ユニット 図2
  • 特開-駆動ユニット 図3
  • 特開-駆動ユニット 図4
  • 特開-駆動ユニット 図5
  • 特開-駆動ユニット 図6
  • 特開-駆動ユニット 図7
  • 特開-駆動ユニット 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092590
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/029 20120101AFI20240701BHJP
   F16D 13/26 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
F16H57/029
F16D13/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208634
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 晋作
【テーマコード(参考)】
3J056
3J063
【Fターム(参考)】
3J056AA53
3J056CC03
3J056GA12
3J063AA01
3J063AB15
3J063AC01
3J063BB01
3J063CB41
3J063CD22
(57)【要約】
【課題】接続機構により被接続軸と補助出力軸のうちの一方を移動させた場合における、シール部材による密封性の低下をより防止するための技術を提供する。
【解決手段】主出力軸を有する主駆動装置と、補助出力軸48を有する補助駆動装置34と、主出力軸が連結される第1入力軸を含む入力軸を有する減速装置36と、主出力軸、第1入力軸、入力軸となる第2入力軸50Bのうちの何れかを被接続軸というとき、主駆動装置が故障したときに、被接続軸と補助出力軸のうちの一方のみを移動させることにより被接続軸と補助出力軸48を接続する接続機構と、補助出力軸48の径方向外側に設けられる第1空間100と、第1空間100よりも軸方向で補助駆動装置34とは反対側に設けられる第2空間102とを隔てるシール部材104と、を備え、シール部材104は、被接続軸と補助出力軸のうちの接続機構により移動させられない軸に接触する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主出力軸を有する主駆動装置と、
補助出力軸を有する補助駆動装置と、
前記主出力軸が連結される第1入力軸を含む入力軸を有する減速装置と、
前記主出力軸、前記第1入力軸又は前記入力軸となる第2入力軸のうちの何れかを被接続軸というとき、前記主駆動装置が故障したときに、前記被接続軸と前記補助出力軸のうちの一方のみを移動させることにより前記被接続軸と前記補助出力軸を接続する接続機構と、
前記補助出力軸の径方向外側に設けられる第1空間と、前記第1空間よりも軸方向で前記補助駆動装置とは反対側に設けられる第2空間とを隔てるシール部材と、を備え、
前記シール部材は、前記被接続軸と前記補助出力軸のうち、前記接続機構により移動させられない軸に接触する駆動ユニット。
【請求項2】
前記減速装置又は前記主駆動装置のうちの前記被接続軸を有する装置を被接続装置というとき、前記接続装置は、前記被接続装置と前記補助駆動装置を相対移動可能に連結するアダプタを備え、
前記アダプタには、前記補助出力軸が挿通される第1挿通孔が形成され、
前記シール部材は、前記第1挿通孔内に配置される請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記第1挿通孔には、前記シール部材に対して軸方向一方側に設けられ前記シール部材を軸方向に位置決めする段部が設けられ、
前記第1挿通孔は、前記段部から前記アダプタの軸方向一方側の端面部までの軸方向範囲において、前記軸方向一方側に向かって内径が一定の箇所と小さくなる箇所との少なくとも一方からなる形状である請求項2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記減速装置又は前記主駆動装置のうちの前記被接続軸を有する装置を被接続装置というとき、前記被接続装置の構成部品には、前記被接続軸が挿通される第2挿通孔が形成され、
前記シール部材は、前記第2挿通孔内に配置される請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記補助駆動装置側から前記シール部材側に向けて前記第1空間内を通ろうとする異物を捕捉する異物捕捉構造を備える請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記減速装置又は前記主駆動装置のうちの前記被接続軸を有する装置を被接続装置というとき、前記接続装置は、前記被接続装置と前記補助駆動装置を相対移動可能に連結するアダプタを備え、
前記アダプタには、前記補助出力軸が挿通される第1挿通孔が形成され、
前記異物捕捉構造は、前記第1挿通孔に少なくとも設けられる請求項5に記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記被接続軸と前記補助出力軸のうち前記接続機構により移動させられる軸にはテーパ軸部が形成され、
前記被接続軸と前記補助出力軸のうち前記接続機構により移動させられない軸には、前記テーパ軸部が嵌合可能なテーパ穴部が形成される請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項8】
前記接続機構は、前記被接続軸と前記補助出力軸のうちの前記補助出力軸のみを移動させることにより前記被接続軸と前記補助出力軸を接続する請求項1に記載の駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、主出力軸を有する主駆動装置と、補助出力軸を有する補助駆動装置と、少なくとも一つの入力軸を有する減速装置とを備える駆動ユニットを開示する。この駆動ユニットは、主駆動装置が故障したときに補助出力軸を移動させることで入力軸又は主出力軸と補助出力軸を接続する接続機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-081055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の駆動ユニットでは、接続機構により移動させられる補助出力軸と接続機構のアダプタ(接続ブロック)との間にシール部材が配置されている。この場合、接続機構により補助出力軸を移動させたときに、シール部材の接触相手となる補助出力軸の軸方向移動に起因して、シール部材による密封性の低下の恐れがある。これは、接続機構により補助出力軸に替えて被接続軸(後述する)を移動させることで両者を接続するうえで、その被接続軸にシール部材が接触している場合にも共通して生じる問題である。
【0005】
本開示の目的の1つは、接続機構により被接続軸と補助出力軸のうちの一方を移動させた場合における、シール部材による密封性の低下をより防止するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の駆動ユニットは、主出力軸を有する主駆動装置と、補助出力軸を有する補助駆動装置と、前記主出力軸が連結される第1入力軸を含む入力軸を有する減速装置と、前記主出力軸、前記第1入力軸又は前記入力軸となる第2入力軸のうちのいずれかを被接続軸というとき、前記主駆動装置が故障したときに、前記被接続軸と前記補助出力軸のうちの一方のみを移動させることにより前記被接続軸と前記補助出力軸を接続する接続機構と、前記補助出力軸の径方向外側に設けられる第1空間と、前記第1空間よりも軸方向で前記補助駆動装置とは反対側に設けられる第2空間とを隔てるシール部材と、を備え、前記シール部材は、前記被接続軸と前記補助出力軸のうちの前記接続機構により移動させられない軸に接触する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、接続機構により被接続軸と補助出力軸のうちの一方を移動させた場合における、シール部材による密封性の低下をより防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の電動パワーステアリング装置の模式的な構成図である。
図2】第1実施形態の駆動ユニットの一部を示す断面図である。
図3図2の拡大図である。
図4】第2実施形態の駆動ユニットを図3と同じ視点から見た拡大図である。
図5】第3実施形態の駆動ユニットを図3と同じ視点から見た拡大図である。
図6】第4実施形態の駆動ユニットを図3と同じ視点から見た拡大図である。
図7】第5実施形態の駆動ユニットの一部を示す断面図である。
図8】第6実施形態の駆動ユニットを図3と同じ視点から見た拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の駆動ユニットを実施するための実施形態を説明する。同一又は同等の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0010】
(第1実施形態)図1を参照する。本実施形態の駆動ユニットは、車両の運転者による車輪Wの操舵操作をアシストする電動パワーステアリング装置10に用いられる。電動パワーステアリング装置10は、ステアリングホイール12と、ステアリングシャフト14と、ギヤボックス16と、駆動ユニット18と、操舵機構20と、を備える。
【0011】
ステアリングホイール12は、運転者による操舵操作によって操舵トルクを受ける。ステアリングシャフト14は、ステアリングホイール12に連結され、ステアリングホイール12の操舵トルクを伝達する。ギヤボックス16は、ステアリングシャフト14に連結され、増幅されたステアリングシャフト14の操舵トルクを出力する。駆動ユニット18は、操舵操作をアシストするためのアシストトルクを出力する。操舵機構20は、ギヤボックス16、駆動ユニット18から出力されたトルクを車両の左右の車輪Wに伝達することで車輪Wを操舵する。本実施形態の操舵機構20は、ギヤボックス16、駆動ユニット18からトルクが出力されるアーム20aと、アーム20aに伝達されたトルクを左右の車輪Wに伝達するタイロッド20bとを備える。
【0012】
ステアリングシャフト14には、ステアリングホイール12が受ける操舵トルク及び操作方向を検出するためのセンサが取り付けられている。制御装置(不図示)は、そのセンサから出力される信号に基づいてステアリングホイール12の操舵操作に応じた制御信号を駆動ユニットに出力する。駆動ユニットは、制御信号に基づいて各駆動装置(後述する)を作動させることにより、運転者によるステアリングホイール12の操舵操作に応じたアシストトルクを出力し、それにより運転者の操舵操作をアシストする。
【0013】
図2を参照する。駆動ユニット18は、主駆動装置32と、補助駆動装置34と、減速装置36と、接続機構38と、故障検出センサ40と、制御装置(不図示)と、を備える。本実施形態では減速装置36の軸方向両側に主駆動装置32及び補助駆動装置34が配置される。故障検出センサ40は、主駆動装置32の電力供給系統等の故障を検出する。故障検出センサ40の検出信号は制御装置に入力される。制御装置は、主駆動装置32、補助駆動装置34、接続機構38の動作を制御する。
【0014】
主駆動装置32は、主駆動源(例えば、バッテリー)のエネルギーを受けて回転する主出力軸42を有する。本実施形態の主駆動装置32は電動モータであるが、この他にもエンジン等でもよい。主駆動装置32は、主出力軸42の他に、車両の車体等の外部支持部材に回転不能に支持される第1装置本体44を有する。本実施形態の第1装置本体44は、主出力軸42を回転させる回転磁界を生成するステータ及びロータ(不図示)を収容する。第1装置本体44は、第1アダプタ46を介して減速装置36の第1キャリヤ72A(後述する)に連結される。
【0015】
補助駆動装置34は、主駆動源又は補助駆動源(例えば、バッテリー)のエネルギーを受けて回転する補助出力軸48を有する。本実施形態の補助駆動装置34は電動モータであるが、この他にもエンジン等でもよい。補助駆動装置34は、補助出力軸48の他に、外部支持部材に回転不能に支持される第2装置本体50を有する。本実施形態の第2装置本体50は、補助出力軸48を回転させる回転磁界を生成するステータ及びロータ(不図示)を収容する。本明細書では、特に言及がない限り、補助出力軸48の中心線C48に沿った方向に関して単に「軸方向」という。
【0016】
減速装置36は、少なくとも一つの入力軸50A、50Bと、減速装置本体52とを備える。減速装置本体52は、入力軸50A、50Bに入力された入力回転を減速する減速機構54と、入力回転よりも減速された出力回転を外部に出力する出力回転体56と、外部支持部材に回転不能に支持される支持体58と、を備える。少なくとも一つの入力軸50A、50Bは、主出力軸42が連結された第1入力軸50Aを含む。本実施形態の少なくとも一つの入力軸50A、50Bは、この他に、補助出力軸48が接続可能な第2入力軸50Bを含む。支持体58は、主軸受78を介して出力回転体56を回転自在に支持する。
【0017】
本実施形態の減速装置36は振り分け型の偏心揺動型減速装置である。この減速装置36は、少なくとも一つ(本実施形態では二つ)の偏心体60を有する複数のクランク軸62と、クランク軸62に設けられるクランク軸歯車64と、偏心体60により揺動される揺動歯車66と、揺動歯車66と噛み合う噛合歯車68と、揺動歯車66の径方向外側に配置されるケーシング70と、揺動歯車66に対して軸方向側方に配置されるキャリヤ72A、72Bと、を備える。クランク軸62は第1入力軸50A、揺動歯車66及び噛合歯車68は減速機構54、ケーシング70は出力回転体56、キャリヤ72A、72Bは支持体58の一例となる。
【0018】
本実施形態のクランク軸62は、出力回転体56の回転中心線C56からオフセットした位置において回転中心線C56周りの径方向に間隔を空けて複数(ここでは一つのみ図示)設けられる。クランク軸62は揺動歯車66を貫通している。複数の偏心体60の偏心位相は、偏心体60の個数をM個(本実施形態では2個)とするとき、360°/Mの分だけずれている。偏心体60の個数は特に限定されず、単数及び三つ以上のいずれでもよい。クランク軸歯車64は、主出力軸42に設けられた入力歯車74と噛み合っている。本実施形態の入力歯車74は主出力軸42と同じ部材の一部として設けられるが、主出力軸42と別体に設けられてもよい。第1入力軸50Aとなるクランク軸62は、クランク軸歯車64及び入力歯車74を介して主出力軸42に連結され、主出力軸42から出力される回転が第1入力軸50Aに入力回転として入力される。
【0019】
揺動歯車66及び噛合歯車68の一方(本実施形態では揺動歯車66)は外歯歯車となり、他方(本実施形態では噛合歯車68)は内歯歯車となる。揺動歯車66は、複数の偏心体60のそれぞれに対応して個別に設けられ、個別の偏心軸受76を介して偏心体60に相対回転自在に支持される。本実施形態の噛合歯車68は、ケーシング70と一体化されている。ケーシング70とキャリヤ72A、72Bとの間には主軸受78が配置される。キャリヤ72A、72Bは、揺動歯車66の自転成分(ゼロを含む)と同期可能である。本実施形態のキャリヤ72A、72Bは、揺動歯車66に対して軸方向で主駆動装置32側に配置される第1キャリヤ72Aと、揺動歯車66に対して軸方向で主駆動装置32とは反対側に配置される第2キャリヤ72Bとを含む。第1キャリヤ72Aと第2キャリヤ72Bは、複数の揺動歯車66を貫通する柱部80により連結される。キャリヤ72A、72Bは、クランク軸受82を介してクランク軸62を回転自在に支持している。
【0020】
第2入力軸50Bは、減速装置本体52を軸方向に貫通している。本実施形態の第2入力軸50Bは、揺動歯車66、キャリヤ72A、72Bのそれぞれを軸方向に貫通している。第2入力軸50Bは、入力軸受83を介してキャリヤ72A、72Bに回転自在に支持される。第2入力軸50Bに入力された入力回転を減速機構54に伝達するうえで、本実施形態の第2入力軸50Bは、入力回転を伝達可能に第1入力軸50Aに連結される。これを実現するうえで、本実施形態の第2入力軸50Bは、主出力軸42に対してスプライン、圧入等により一体回転可能に接続される。これにより、第2入力軸50Bは、主出力軸42、入力歯車74及びクランク軸歯車64を介して第1入力軸50A(クランク軸62)に入力回転を伝達可能に連結される。
【0021】
以上の減速装置36の動作を説明する。入力軸50A、50Bに入力回転が入力されると減速機構54が作動する。減速機構54が作動すると、減速機構54から出力回転が出力回転体56に伝達され、その出力回転が出力される。本実施形態では、主出力軸42から出力される回転は、入力歯車74、クランク軸歯車64を介してクランク軸62(第1入力軸50A)に伝達される。クランク軸62に入力回転が伝達されると、クランク軸62の偏心体60によって、揺動歯車66の中心が噛合歯車68の中心周りを回転するように揺動歯車66が揺動する。揺動歯車66が揺動すると、揺動歯車66と噛合歯車68の噛合位置が周方向に変化する。これに伴い、クランク軸62が一回転する毎に、揺動歯車66と噛合歯車68の歯数差分だけ揺動歯車66及び噛合歯車68の一方(ここでは揺動歯車66)が自転し、その自転成分が出力回転として出力回転体56に伝達される。
【0022】
補助出力軸48は被接続軸150と接続される。被接続軸150は、第1入力軸50A、第2入力軸50B又は主出力軸42のうちの何れかとなり、本実施形態では第2入力軸50Bとなる。被接続軸150及び補助出力軸48は、それらのうちの一方(ここでは補助出力軸48)が他方に近接する軸方向に移動することにより互いに接続可能に構成される。これを実現するうえで、被接続軸150及び補助出力軸48の一方(ここでは被接続軸150)にはテーパ軸部84が形成され、それらの他方(ここでは補助出力軸48)にはテーパ軸部84が嵌合可能なテーパ穴部86が形成される。テーパ軸部84は先端側に向かうに連れて細くなるようにテーパ状に縮径し、テーパ穴部86は奥側に向かうに連れて窄まるようにテーパ状に縮径する。被接続軸150及び補助出力軸48は、テーパ穴部86にテーパ軸部84が接触していないときに接続が解除された状態となる。被接続軸150及び補助出力軸48は、それらのうちの一方を他方に近接する軸方向に移動させることにより、テーパ穴部86内にテーパ軸部84に圧入され、それにより接続された状態となる。
【0023】
減速装置36又は主駆動装置32のうちの被接続軸150を備える装置を被接続装置152という。本実施形態の被接続装置152は、被接続軸150となる第2入力軸50Bを備える減速装置36となる。接続機構38は、主駆動装置32が故障したときに、制御装置による制御に従って、被接続軸150と補助出力軸48のうちの一方(ここでは補助出力軸48)のみを他方に近接する軸方向に移動させることにより被接続軸150と補助出力軸48を接続可能である。これを実現するうえで、本実施形態の接続機構38は、補助駆動装置34を被接続装置152に近接する軸方向に移動させる。接続機構38は、被接続装置152と補助駆動装置34を相対移動可能に連結する第2アダプタ88と、電磁石90aを用いて補助出力軸48と被接続軸150のうちの一方のみを移動させることで両者を接続する電磁接続機構90とを備える。この他に、接続機構38は、補助出力軸48と被接続軸150のうちの一方の移動に連動して補助駆動装置34と第2アダプタ88を接続する機械接続機構92と、を備える。
【0024】
第2アダプタ88は、被接続装置152と補助駆動装置34との間に配置される。第2アダプタ88は、外部支持部材に回転不能に支持される。主駆動装置32の第1装置本体44、補助駆動装置34の第2装置本体50、減速装置36の支持体58、第2アダプタ88のそれぞれは外部支持部材に回転不能に支持される。これを実現するうえでは、これらのいずれかを外部支持部材に固定したうえで、残りを外部支持部材に固定されているものに固定、連結等することで支持させればよい。本実施形態では支持体58が固定されている。本実施形態の第2アダプタ88は、ボルト等の固定具Bを用いて、被接続装置152の支持体58(ここでは第2キャリヤ72B)に固定される。第2アダプタ88は、ガイド機構94によって補助駆動装置34を移動可能に支持しており、それにより補助駆動装置34を軸方向に移動可能に被接続装置152に連結する。ガイド機構94は、第2アダプタ88及び被接続装置152の一方(ここでは第2アダプタ88)に設けられ軸方向に突き出る複数のガイド突部94aと、それらの他方に設けられる複数のガイド穴94bとを備える。ここでは単数のガイド突部94a及びガイド穴94bを図示する。複数のガイド穴94bのそれぞれには対応する個別のガイド突部94aが嵌合される。ガイド機構94は、ガイド穴94b及びガイド突部94aを軸方向に沿って相対的に摺動させることで補助駆動装置34を軸方向にガイドする。これにより、ガイド機構94は、第2アダプタ88に対して補助駆動装置34を軸方向に移動可能に支持させる。
【0025】
電磁接続機構90は、第2アダプタ88及び補助駆動装置34の一方(ここでは第2アダプタ88)に取り付けられる電磁石90aと、それらの他方に取り付けられる磁性体90bと、第2アダプタ88及び補助駆動装置34を軸方向に離間させる方向に付勢する第1付勢部材90cとを備える。電磁石90aは、補助駆動源の電力を受けて磁力を発生し、その発生した磁力により磁性体90bを吸引することにより補助駆動装置34を被接続装置152側に移動させ、それにより被接続軸150及び補助出力軸48が接続される。
【0026】
機械接続機構92は、第2アダプタ88及び補助駆動装置34の一方(ここでは補助駆動装置34)に設けられる爪受け部92aと、それらの他方に設けられ爪受け部92aに引っ掛けられる可動爪部92bと、可動爪部92bを引っ掛け解除位置から引っ掛け位置に付勢する第2付勢部材92cとを備える。本実施形態の爪受け部92aは、補助駆動装置34の第2装置本体50に設けられ径方向外側に突き出るフランジ部により構成される。可動爪部92bは、第2アダプタ88に可動に取り付けられる。可動爪部92bは、爪受け部92aに対する引っ掛けが解除された引っ掛け解除位置と、爪受け部92aに対して引っ掛けられる引っ掛け位置との間を移動可能である。第2入力軸50B及び補助出力軸48の接続が解除された状態にあるとき、可動爪部92bは引っ掛け解除位置にある。この状態から被接続装置152側に補助駆動装置34を移動させると、それに連動して可動爪部92bが引っ掛け解除位置から引っ掛け位置に移動することで、補助駆動装置34が第2アダプタ88に接続される。
【0027】
以上の接続機構38の動作を説明する。接続機構38は、補助出力軸48と被接続軸150を軸方向に離間させることで、被接続軸150と補助出力軸48の接続を解除した状態にする。本実施形態では、電磁石90aに対する通電がオフ状態にあるとき、この状態になる。図2では、この状態を示す。接続機構38は、被接続軸150と補助出力軸48のうちの一方(ここでは補助出力軸48)のみを他方に近接する軸方向に移動させることにより補助出力軸48と被接続軸150を接続した状態にする。本実施形態では、電磁石90aに対する通電がオン状態にあるとき、この状態となる。このとき、接続機構38は、補助駆動装置34を被接続装置152に近接する軸方向に移動させる。
【0028】
以上の駆動ユニット18全体の動作を説明する。故障検出センサ40によって主駆動装置32の故障が検出されていない場合(主駆動装置32が正常に作動する場合)、制御装置による制御に従って、接続機構38によって被接続軸150と補助出力軸48の接続が解除された状態となる。この状態で主駆動装置32の主出力軸42が回転すると、減速装置36の第1入力軸50Aが回転する。第1入力軸50Aに入力された回転は、減速装置36の減速機構54によって減速され、出力回転体56から外部の駆動対象(ここでは車輪W)に出力される。
【0029】
一方、主駆動装置32の故障が故障検出センサ40によって検出された場合、制御装置による制御に従って、接続機構38によって、被接続軸150と補助出力軸48が接続される。この後、補助駆動装置34が主駆動源又は補助駆動源の電力を受けて作動すると、補助駆動装置34の補助出力軸48とともに被接続軸150(第2入力軸50B)が回転する。本実施形態において、第2入力軸50Bに入力された回転は、減速装置36の第1入力軸50Aに伝達される。第2入力軸50Bに入力された回転は、減速装置36の減速機構54によって減速され、出力回転体56から外部に出力される。
【0030】
図3を参照する。駆動ユニット18は、補助出力軸48の径方向外側に設けられる第1空間100と、第1空間100よりも軸方向で補助駆動装置34とは反対側に設けられる第2空間102とを隔てるシール部材104を備える。シール部材104は、オイルシール、Oリング等の接触型シールである。
【0031】
補助出力軸48は、補助駆動装置34の第2装置本体50から被接続装置152側に突出する。第1空間100は、この第2装置本体50からの補助出力軸48の突出部における少なくとも根本部を取り囲むように設けられる。第1空間100は、駆動ユニット18の周囲の外部空間106(図2参照)に連通している。第1空間100は、補助駆動装置34と第2アダプタ88との間に軸方向に挟まれて形成される軸方向隙間100aと、少なくとも補助出力軸48と第2アダプタ88との間に補助出力軸48の径方向に挟まれて形成される径方向隙間100bとを含む。径方向隙間100bは、補助駆動装置34と軸方向に対向する第2アダプタ88の対向面部88gにおける径方向隙間100bの開口箇所100cから被接続装置152側に向かって広がっている。
【0032】
本実施形態の第2空間102は、被接続装置152の内部空間となる。詳しくは、被接続装置152となる減速装置36の減速機構54を収容する減速装置36の内部空間となる。シール部材104は、第2空間102を封止することで、その第2空間102に封入される流動体の第1空間100への漏れを阻止する。この流動体は、液体又は半固体からなり、例えば、潤滑油、グリース等の潤滑剤である。
【0033】
本実施形態のシール部材104は、補助出力軸48と被接続軸150のうち、接続機構38によって移動させられる補助出力軸48には接触せず、接続機構38によって移動させられない被接続軸150(第2入力軸50B)に接触している。第2アダプタ88には、補助出力軸48が挿通される第1挿通孔88aが形成される。本実施形態のシール部材104は、第2アダプタ88の第1挿通孔88a内に配置される。シール部材104は、圧入等により、その第1挿通孔88aに固定され、その一部(ここではリップ部)が第2入力軸50Bに弾性変形を伴い接触することで第2空間102を封止する。シール部材104及びシール部材104が配置される配置部材(ここでは第2アダプタ88)は、接続機構38によって補助出力軸48が移動させられたとき、接続機構38によって移動させられない。接続機構38は、シール部材104及び配置部材を移動させないまま補助出力軸48を移動させることになる。
【0034】
以上の駆動ユニット18の効果を説明する。
【0035】
(A)シール部材104は、接続機構38により軸方向に移動させられる補助出力軸48ではなく、接続機構38によって移動させられない被接続軸150に接触している。よって、被接続軸150と補助出力軸48のうち、接続機構38により移動させられるべき軸(ここでは補助出力軸48)を移動させた場合に、シール部材104の接触相手となる回転軸(ここでは被接続軸150)を軸方向に移動させずに済む。よって、その場合における、シール部材104の接触相手の軸方向移動に起因するシール部材104による密封性の低下をより防止できる。
【0036】
(B)シール部材104は、第2アダプタ88に形成される第1挿通孔88a内に配置される。よって、被接続装置152と第2アダプタ88との間の微小な隙間108を通して第1挿通孔88aまで流動体が漏れ出たとしても、その流動体の第1空間100側への漏れをシール部材104により抑制できる。本実施形態では、被接続装置152となる減速装置36の第2キャリヤ72Bに貫通孔72aが形成されており、その貫通孔72aの補助駆動装置34側の端部がシールキャップ110により封止されている。ここでは、このシールキャップ110と第2キャリヤ72Bとの間と隙間を通して流動体が漏れ出る場合を想定している。また、本実施形態では、第2空間102内において入力軸受83内を通して補助駆動装置34側に流れる流動体の第1空間100側への漏れも抑制できる。
【0037】
次に、駆動ユニット18の他の特徴を説明する。第1挿通孔88aには、シール部材104に対して軸方向一方側(ここでは被接続装置152側)に設けられる段部88bが設けられる。段部88bは、シール部材104と接触することでシール部材104を軸方向に位置決めする。段部88bは、第1挿通孔88aにおける被接続装置152側の端部に設けられる。
【0038】
段部88bから第2アダプタ88の軸方向一方側(ここでは被接続装置152側)の端面部88dまでの軸方向範囲Raを想定する。第1挿通孔88aは、この軸方向範囲Raにおいて、一定径箇所と縮径箇所との少なくとも一方からなる形状である。ここでの一定径箇所は、軸方向一方側に向かって内径が一定となる箇所であり、縮径箇所は、軸方向一方側に向かって内径が小さくなる箇所である。本実施形態の第1挿通孔88aは、この軸方向範囲Raにおいて一定径箇所のみからなる形状である。この他にも、縮径箇所のみからなる形状であってもよいし、一定径箇所と縮径箇所との双方からなる形状であってもよい。第1挿通孔88aは、この軸方向範囲Raにおいて、軸方向一方側に向かって内径が大きくなる拡径箇所のない形状であるともいえる。この軸方向範囲Raには、第2アダプタ88の端面部88dは含まれない。第2アダプタ88の端面部88dと第1挿通孔88aのなす内縁部88eにアール部又は面取り部が設けられる場合、そのアール部又は面取り部は第2アダプタ88の端面部88dの一部であり、軸方向範囲Raに含まない部分として捉える。よって、ここに記載の第1挿通孔88aの形状に関する条件を満たすううえでは、このアール部又は面取り部において最も内径の小さくなる箇所から段部88bまでの軸方向範囲Raにおいて、軸方向一方側に向かって内径が小さくなっていればよい。この形状に関する条件は、あくまで設計図面において定まる形状(設計図面通りに切削加工することで得られた製品形状)において満たしていればよく、意図しない傷等により生じた形状は考慮しない。
【0039】
(C)切削加工により第2アダプタ88に第1挿通孔88aを形成する場合、ドリル等の切削工具を軸方向に移動させることで、第2アダプタ88における第1挿通孔88aの形成予定箇所を切削する。このとき、第1挿通孔88aが、前述の軸方向範囲Raにおいて、軸方向一方側(図3では左側)に向かって一定径箇所及び縮径箇所の少なくとも一方からなる形状である場合、第1挿通孔88aの形成予定箇所を軸方向他方側(図3では右側)から切削するのみで第1挿通孔88aを形成できる。言い換えると、第1挿通孔88aの形成予定箇所を軸方向一方側から切削する必要がない。よって、第1挿通孔88aの切削作業を容易化できるようになる。
【0040】
(第2実施形態)以降の実施形態において、第1実施形態で説明した構成要素のうち、以下において説明していない構成要素は、第1実施形態と同じ内容が適用される。図4を参照する。第2実施形態の駆動ユニット18は、補助駆動装置34側からシール部材104側に向けて第1空間100内を通ろうとする異物を捕捉する異物捕捉構造120を備える。本実施形態の異物捕捉構造120は、第2アダプタ88の第1挿通孔88aの内周面及び補助出力軸48の外周面に設けられる。本実施形態の異物捕捉構造120は、ラビリンス構造である。ラビリンス構造は、軸方向に向かって突条部120aと溝部120bを繰り返す形状である。この突条部120aと溝部120bのそれぞれは補助出力軸48の周方向に向かって延びている。本実施形態の突条部と溝部のそれぞれは周方向全周に連続している。
【0041】
(D)このような異物捕捉構造120によりシール部材104側に向けて第1空間100内を通ろうとする異物を捕捉できる。ひいては、シール部材104の接触相手となる回転軸(ここでは被接続軸150)とシール部材104の間での異物の噛み込みを抑制できる。また、異物捕捉構造120により、シール部材104の接触相手となる回転軸(ここでは被接続軸150)とシール部材104との間を経由して第2空間102から漏れた流動体の外部空間106への漏れを抑制できる。特に、異物捕捉構造120としてラビリンス構造を採用することで、第1空間100内を通ろうとする異物を効果的に捕捉できるようになる。
【0042】
(E)このような異物を捕捉する観点から、異物捕捉構造120は、第2アダプタ88の第1挿通孔88aに少なくとも設けられるとよい。第2アダプタ88は外部支持部材に回転不能に支持される。このように回転しない第2アダプタ88に異物捕捉構造120を設けることで、回転する補助出力軸48に異物捕捉構造120を設ける場合より、異物を効果的に捕捉できるようになる。また、異物捕捉構造120を設けるにあたり、被接続装置152(ここでは減速装置36)への加工が不要であり、第2アダプタ88に加工するだけで済むため、その実現を容易にすることができる。
【0043】
異物捕捉構造120は、第1空間100を形成する箇所にあればよく、その具体的な位置は特に限定されない。例えば、異物捕捉構造120は、第2アダプタ88の第1挿通孔88aのみに設けられていてもよいし、補助出力軸48の外周面のみに設けられていてもよい。この他にも、異物捕捉構造120は、被接続軸150の外周面に設けられていてもよい。また、異物捕捉構造120の具体例はラビリンス構造に限定されない。この異物捕捉構造120は、例えば、第2アダプタ88の第1挿通孔88a又は補助出力軸48のいずれかに設けられる突条部及び溝部の一方のみによって構成されてもよい。この他にも、本実施形態の駆動ユニット18は、前述した(A)、(B)で説明した構成要素(図示せず)を備え、それらの説明に対応する効果を得られる。
【0044】
(第3実施形態)図5を参照する。被接続装置152の構成部品130には被接続軸150(第2入力軸50B)が挿通される第2挿通孔130aが形成される。ここでの構成部品130とは、本実施形態では第2キャリヤ72Bである。この構成部品130は、言及している被接続装置152における補助駆動装置34側の端面部を構成する。この構成部品130は、外部支持部材に回転不能に支持される支持体58の一部となる。この構成部品130には、第2アダプタ88により補助駆動装置34が相対移動可能に連結される。
【0045】
本実施形態のシール部材104は、第1実施形態の第1アダプタ46の第1挿通孔88aに替えて、構成部品130の第2挿通孔130a内に配置される。第2挿通孔130aには、軸方向においてシール部材104に対して補助駆動装置34とは反対側に段部130bが形成される。シール部材104は段部130bと接触することにより軸方向に位置決めされる。
【0046】
(F)サイズ等の異なる複数種の補助駆動装置34がある場合、複数種の補助駆動装置34のそれぞれに対応する第2アダプタ88を用いて、その補助駆動装置34を共通の被接続装置152に連結できる。ここで、本実施形態のシール部材104は、被接続装置152の構成部品130に形成される第2挿通孔130a内に配置されている。よって、第2アダプタ88にシール部材104を組み込まずに済ませることができる。ひいては、複数種の補助駆動装置34に対応する個別のアダプタ88毎にシール部材104のための専用の設計を不要にすることができる。また、被接続装置152を第2アダプタ88から分離した状態にあるとき、被接続装置152の第2挿通孔130aと被接続軸150との間にシール部材104を配置した状態で保管できる。よって、被接続装置152を第2アダプタ88から分離した状態にあるときに、被接続装置152の内部空間からの流動体の漏れをシール部材104により防止でき、良好な保管性となる。
【0047】
この他にも、第3実施形態の駆動ユニット18は、前述した(A)で説明した構成要素を備え、その説明に対応する効果を得られる。
【0048】
(第4実施形態)図6を参照する。第1実施形態のシール部材104は、シール部材104よりも被接続装置152側において第2アダプタ88の第1挿通孔88aに設けられた段部88bにより位置決めされる例を説明した。これに替えて、第4実施形態のシール部材104は、シール部材104よりも補助駆動装置34側において第1挿通孔88aに設けられた段部88bにより位置決めされる。本実施形態の駆動ユニット18も、前述した(A)、(B)で説明した構成要素を備え、それらの説明に対応する効果を得られる。このような構成のもとでも、前述したような、段部88bから第2アダプタ88の軸方向一方側(ここでは補助駆動装置34側)の端面部88dまでの軸方向範囲において、軸方向一方側に向かって一定径箇所と縮径箇所との少なくとも一方からなる形状を第1挿通孔88aに採用してもよい。この場合、図6の例では、例えば、この第1挿通孔88aの軸方向範囲の内径を段部88bの内径と同じにしつつ、その軸方向範囲の部分と干渉しないように補助出力軸48の内径を小さくするとよい。
【0049】
(第5実施形態)図7を参照する。第1実施形態では、減速装置36の軸方向両側に主駆動装置32と補助駆動装置34が配置されていた。本実施形態では、主駆動装置32の軸方向両側に減速装置36と補助駆動装置34が配置されている。主駆動装置32の主出力軸42は、主駆動装置32の第1装置本体44を軸方向に貫通する。減速装置36は、主駆動装置32の軸方向の一端側に配置される。補助駆動装置34は、主駆動装置32の軸方向の他端側に配置される。なお、本実施形態の減速装置36は、第1実施形態の第2入力軸50Bを備えていない。
【0050】
本実施形態では主出力軸42は、接続機構38により補助出力軸48が接続される被接続軸150となる。被接続軸150及び補助出力軸48は、第1実施形態と同様、それらのうちの一方(ここでは補助出力軸48)を他方に近接する軸方向に移動させることにより互いに接続可能である。これを実現するうえで、被接続軸150及び補助出力軸48の一方(ここでは主出力軸42)にテーパ軸部84が設けられ、それらの他方(ここでは補助出力軸48)にテーパ穴部86が形成される。主駆動装置32は、減速装置36又は主駆動装置32のうちの被接続軸150を備える被接続装置152となる。本実施形態の接続機構38も、補助駆動装置34を被接続装置152に近接する軸方向に移動させることで、被接続軸150及び補助出力軸48を接続可能である。
【0051】
第1実施形態の接続機構38の第2アダプタ88は、被接続装置152となる減速装置36と補助駆動装置34を相対移動可能に連結した。本実施形態の第2アダプタ88は、減速装置36に替えて、被接続装置152となる主駆動装置32と補助駆動装置34を相対移動可能に連結する。本実施形態の第2アダプタ88は、外部支持部材に回転不能に支持される主駆動装置32の第1装置本体44に固定される。第2アダプタ88は、ガイド機構94によって補助駆動装置34を移動可能に支持しており、それにより補助駆動装置34を軸方向に移動可能に被接続装置152に連結する。
【0052】
以上の駆動ユニット18全体の動作を説明する。故障検出センサ40によって主駆動装置32の故障が検出されていない場合の動作は第1実施形態と同様である。一方、主駆動装置32の故障が故障検出センサ40によって検出された場合、制御装置による制御に従って、接続機構38によって被接続軸150(主出力軸42)と補助出力軸48が接続される。この後、補助駆動装置34が主駆動源又は補助駆動源の電力を受けて作動すると、補助駆動装置34の補助出力軸48とともに主出力軸42が回転し、それに伴い減速装置36の第1入力軸50Aが回転する。第1入力軸50Aに入力された回転は、減速装置36の減速機構54によって減速され、出力回転体56から外部に出力される。
【0053】
ここで、シール部材104により封止される第2空間102は、第1実施形態の減速装置36の内部空間に替えて、被接続装置152となる主駆動装置32の内部空間となる。この主駆動装置32の内部空間は、主駆動装置32のロータ及びステータを収容する。本実施形態のシール部材104は、補助出力軸48と被接続軸150のうち、接続機構38によって移動させられる補助出力軸48には接触せず、接続機構38によって移動させられない被接続軸150(主出力軸42)に接触している。よって、前述した(A)と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態のシール部材104も第2アダプタ88に形成される第1挿通孔88a内に配置される。よって、前述した(B)と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態の第1挿通孔88aも、段部88bから第2アダプタ88の軸方向一方側の端面部88dまでの軸方向範囲において、軸方向一方側に向かって一定径箇所と縮径箇所の少なくとも一方からなる形状である。よって、前述した(C)と同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、接続機構38により補助出力軸48と被接続軸150を接続する場合、(F)と同様の効果を得るうえで、減速装置36の構成部品130に替えて、被接続装置152となる主駆動装置32の構成部品130に第2挿通孔130aを形成し、その第2挿通孔130aにシール部材104を配置すればよい。この主駆動装置32の構成部品130とは、例えば、第1装置本体44である。この他にも、接続機構38により補助出力軸48と被接続軸150を接続する場合、前述した(D)、(E)と同様の構成を採用してもよい。
【0055】
(第6実施形態)図8を参照する。本実施形態の駆動ユニット18は、第1実施形態と比べて、被接続軸150(第2入力軸50B)及び補助出力軸48のテーパ軸部84及びテーパ穴部86において相違する。詳しくは、第1実施形態においては被接続軸150と補助出力軸48のうち、接続機構38により移動させられない被接続軸150にテーパ軸部84が形成され、それらのうち接続機構38により移動させられる補助出力軸48にテーパ穴部86が形成された。これに対して、本実施形態においては、接続機構38により移動させられる補助出力軸48にテーパ軸部84が形成され、接続機構38により移動させられない被接続軸150にテーパ軸部84が嵌合されるテーパ穴部86が形成される。なお、シール部材104は、テーパ軸部84及びテーパ穴部86と径方向に重なる位置に配置される。
【0056】
(G)これにより、補助出力軸48と被接続軸150を接続するうえで、図2の実施形態のように、接続機構38により移動させられない被接続軸150の外周面上を、接続機構38により移動させられる補助出力軸48を摺動させずに済む。よって、被接続軸150と補助出力軸48を接続するうえで、その被接続軸150の外周面に接触するシール部材104と補助出力軸48が干渉する事態を確実に回避できる。
【0057】
次に、ここまで説明した各構成要素の変形形態を説明する。
【0058】
駆動ユニット18の用途は電動パワーステアリング装置10に限定されない。駆動ユニット18は、例えば、産業機械(工作機械、建設機械等)、ロボット(産業用ロボット、サービスロボット等)、輸送機器(コンベア、車両等)に適用されてもよい。車両に適用される場合、電動パワーステアリング装置以外の車輪駆動装置等に適用されてもよい。
【0059】
減速装置36の種類の具体例は特に限定されない。減速装置36は、例えば、偏心揺動型減速装置、撓み噛合い型減速装置、単純遊星減速装置、直交軸減速装置、平行軸減速装置等の各種減速装置を採用してもよい。また、減速装置36は、トラクションドライブを採用してもよい。
【0060】
偏心揺動型減速装置の種類の具体例として、出力回転体56の回転中心から径方向にオフセットした位置に複数のクランク軸62(第1入力軸50A)が配置される振り分けタイプを説明した。これに限定されず、出力回転体56の回転中心上にクランク軸(第1入力軸50A)が配置されるセンタークランクタイプでもよい。撓み噛合い型減速装置の種類の具体例は特に限定されず、筒型、カップ型、シルクハット型のいずれでもよい。
【0061】
被接続軸150は、第1実施形態等では第2入力軸50B、第5実施形態では主出力軸42である例を説明したが、第1入力軸50Aであってもよい。つまり、被接続軸150は、主出力軸42、第1入力軸50A又は第2入力軸50Bのうちの何れかであればよい。被接続軸150が主出力軸42又は第1入力軸50Aとなる場合、駆動ユニット18は、第5実施形態のように、第2入力軸50Bを備えていなくともよい。
【0062】
接続機構38は、被接続軸150と補助出力軸48のうちの補助出力軸48のみを移動させることにより両者を接続する例を説明した。これに替えて、接続機構38は、被接続軸150と補助出力軸48のうちの被接続軸150のみを移動させることにより両者を接続してもよい。この場合、(A)の効果との関係では、シール部材104は、接続機構38により軸方向に移動させられる被接続軸150ではなく、接続機構38によって移動させられない補助出力軸48に接触していればよい。この場合、シール部材104は、例えば、第2アダプタ88の第1挿通孔88aと補助出力軸48との間に配置され、接続機構38によって移動させられない。この場合、第2アダプタ88は、後述のように補助駆動装置34の第2装置本体50に固定されており、接続機構38によって移動させられない。つまり、接続機構38は、シール部材104及びシール部材104が配置される配置部材(第2アダプタ88等)を移動させないまま、被接続軸150及び補助出力軸48の一方のみを移動させることで両者を接続することになる。また、この場合、(G)の効果との関係では、被接続軸150と補助出力軸48のうちの接続機構38により移動させられる被接続軸150にテーパ軸部84を形成し、接続機構38により移動させられない補助出力軸48にテーパ穴部86を形成すればよい。
【0063】
接続機構38は、被接続軸150と補助出力軸48のうちの一方の軸のみを軸方向に移動させるうえで、補助駆動装置34と被接続装置152のうち、その一方の軸を備える一方の装置(以下、移動装置という)を他方の装置(以下、支持装置という)に近接する軸方向に移動させればよい。第1実施形態では、接続機構38により補助出力軸48のみを軸方向に移動させるうえで、移動装置は、その補助出力軸48を備える補助駆動装置34となり、支持装置は、被接続装置152となる例を説明したことになる。これに替えて、接続機構38により被接続軸150のみを移動させるうえでは、移動装置は、その被接続軸150を備える被接続装置152となり、支持装置は、補助駆動装置34となる。この場合、前述した各実施形態における接続機構38に関する説明事項について、被接続装置152に関する文言を補助駆動装置34に置き換え、補助駆動装置34に関する文言を被接続装置152に置き換えて捉えればよい。例えば、第2アダプタ88は、支持装置となる補助駆動装置34に固定されたうえで、ガイド機構94によって移動装置となる被接続装置152を移動可能に支持することで、その被接続装置152を軸方向に相対移動可能に補助駆動装置34に連結してもよいということである。
【0064】
接続機構38は、被接続軸150と補助出力軸48のうちの一方のみを移動させることにより被接続軸150と補助出力軸48を接続できればよく、そのための具体例は特に限定されない。例えば、補助駆動装置34と被接続装置152のうちの前述した移動装置のみを支持装置に近接させる軸方向に移動させるにあたって、第1ボルトの締め付けにより移動装置を移動させてもよい。この第1ボルトは、例えば、補助駆動装置34と被接続装置152のうちの支持装置にねじ込まれ、その締め付けにより第1ボルトの頭部が移動装置を移動させる。この場合、制御装置による制御に従う駆動源により第1ボルトを回転駆動することで第1ボルトを締め付けるとよい。この場合、被接続軸150と補助出力軸48が接続された状態にあるときに、第1ボルトにより支持装置に移動装置が固定されてもよい。この場合、被接続軸150と補助出力軸48が接続された状態にあるときに移動装置と支持装置をインロー嵌合させ、それらの接続が解除されたときにインロー嵌合を解除してもよい。また、被接続軸150と補助出力軸48の接続が解除された状態にあるとき、支持装置からの移動装置の分離を防止するための第2ボルトにより、支持装置に対して移動装置を保持してもよい。
【0065】
各実施形態の第2アダプタ88は、被接続装置152となる減速装置36の支持体58又は主駆動装置32の第1装置本体44に固定されることで、外部支持部材に回転不能に支持される例を説明した。この他にも、第2アダプタ88は、外部支持部材に直接固定されていてもよいし、外部支持部材に固定される補助駆動装置34の第2装置本体50に固定されてもよい。いずれの場合も、第2アダプタ88を外部支持部材に回転不能に支持させることができる。
【0066】
また、第2アダプタ88は、外部支持部材に固定される補助駆動装置34の第2装置本体50に固定される場合、第2アダプタ88は、ガイド機構94によって被接続装置152を移動可能に支持し、それにより被接続装置152を軸方向に移動可能に補助駆動装置34に連結してもよい。これは、接続機構38によって、被接続軸150及び補助出力軸48のうちの被接続軸150のみを移動させる場合を想定している。この場合、電磁接続機構90、機械接続機構92は、第1実施形態において補助駆動装置34に設けられていた要素を、外部支持部材に回転不能に支持される被接続装置152の構成部品(減速装置36の支持体58、主駆動装置32の第1装置本体44)に設ければよい。
【0067】
減速装置36が第1入力軸50Aと第2入力軸50Bを備える場合、第2入力軸50Bには主出力軸42が連結されていなくともよい。この場合、補助出力軸48から第2入力軸50Bに入力された入力回転を減速機構54に直接に伝達することで減速してもよい。
【0068】
このように第2入力軸50Bに入力された入力回転を減速機構54に伝達するうえで、第2入力軸50Bは、減速機構54に直接伝達してもよいし、第1実施形態のように、第2入力軸50Bと連結される第1入力軸50Aを介して減速機構54に伝達してもよい。また、後者のように入力回転を伝達可能に第1入力軸50Aに連結するうえで、第2入力軸50Bは、第1実施形態のように、主出力軸42を介して第1入力軸50Aに連結されてもよいし、主出力軸42を介さずに第1入力軸50Aに連結されてもよい。
【0069】
以上の実施形態及び変形形態は例示である。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形形態の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形形態の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0070】
以上の構成要素の任意の組み合わせも有効である。例えば、実施形態に対して他の実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形形態に対して実施形態及び他の変形形態の任意の説明事項を組み合わせてもよい。実施形態において単数部材により構成された構成要素は複数部材で構成されてもよい。同様に、実施形態において複数部材により構成された構成要素は単数部材で構成されてもよい。例えば、主出力軸42、補助出力軸48、第2入力軸50Bは複数部材により構成されてもよい。この場合に、第2入力軸50B及び主出力軸42は、軸本体と軸本体に嵌め込まれるスリーブとにより構成し、スリーブにシール部材104が接触していてもよい。
【符号の説明】
【0071】
18…駆動ユニット、32…主駆動装置、34…補助駆動装置、36…減速装置、38…接続機構、42…主出力軸、48…補助出力軸、50A…第1入力軸、50B…第2入力軸、88…アダプタ、88a…第1挿通孔、88b…段部、88d…端面部、100…第1空間、102…第2空間、104…シール部材、120…異物捕捉構造、130…構成部品、130a…第2挿通孔、150…被接続軸、152…被接続装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8