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  • 特開-偏心揺動型減速機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092591
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】偏心揺動型減速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
F16H1/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208635
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】金 鐘剛
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA11
3J027FA41
3J027FB40
3J027GB03
3J027GC03
3J027GC24
3J027GC26
3J027GD03
3J027GD08
3J027GD12
(57)【要約】
【課題】本発明の目的のひとつは、ノイズを低減してトルクまたはモーメントを検出可能な偏心揺動型減速機を提供することにある。
【解決手段】ある態様の偏心揺動型減速機100は、内歯歯車16が設けられたケーシング6を有する偏心揺動型減速機であって、ケーシング6の第1位置P1には第1歪センサ71が取り付けられ、ケーシング6の第1位置P1とは別の第2位置P2には第2歪センサ72が取り付けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯歯車が設けられたケーシングを有する偏心揺動型減速機であって、
前記ケーシングの第1位置には第1歪センサが取り付けられ、前記ケーシングの第1位置とは別の第2位置には第2歪センサが取り付けられる偏心揺動型減速機。
【請求項2】
前記第1位置と前記第2位置は、互いに軸方向位置が異なる、請求項1に記載の偏心揺動型減速機。
【請求項3】
前記第1位置と前記第2位置は、互いに前記ケーシングの径方向厚さが異なる位置である、請求項1に記載の偏心揺動型減速機。
【請求項4】
前記内歯歯車と噛み合う外歯歯車を備え、
前記第1位置は、前記内歯歯車と前記外歯歯車の噛合い位置に径方向に重なり、
前記第2位置は、前記ケーシングを支持する主軸受に径方向に重なる、請求項1に記載の偏心揺動型減速機。
【請求項5】
出力フランジを備え、
前記第2位置は、前記出力フランジを支持する主軸受に径方向に重なる、請求項4に記載の偏心揺動型減速機。
【請求項6】
前記第1位置と前記第2位置は、互いに周方向位置が重なっている、請求項1に記載の偏心揺動型減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏心揺動型減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
入力軸に入力された回転を減速して出力する減速装置が知られている。例えば、特許文献1には、入力回転軸と出力回転軸の間で入力に対する出力の回転数を減じる減速部と減速部を収容するハウジングとを備えた減速装置が開示されている。この減速装置は、動作中の負荷トルクを確実に測定するために、ハウジングの外ケースと内ケースとの間に配置された緩衝手段と、緩衝手段によりハウジング内に生じる変位量を計測する計測手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-179043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、偏心揺動型減速機について、次の新たな認識を得た。減速機を安定して使用するために、動作中の減速機のトルクやモーメントを測定することが考えられる。しかし、減速機に歪みゲージを取り付けてトルクやモーメントを検出する場合に、噛合いの影響や外ピンの影響を受けてノイズを拾ってトルクやモーメントを検出できない場合がある。特許文献1に記載の減速装置には、ノイズを低減してトルクまたはモーメントを検出する観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、ノイズを低減してトルクまたはモーメントを検出可能な偏心揺動型減速機を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の偏心揺動型減速機は、内歯歯車が設けられたケーシングを有する偏心揺動型減速機であって、ケーシングの第1位置には第1歪センサが取り付けられ、ケーシングの第1位置とは別の第2位置には第2歪センサが取り付けられる。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノイズを低減してトルクまたはモーメントを検出可能な偏心揺動型減速機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る偏心揺動型減速機の一例を概略的に示す断面図である。
図2図1の情報処理部の一例を概略的に示すブロック図である。
図3】情報処理部の別例を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0012】
[実施形態]
図1図2図3を参照して、実施形態に係る偏心揺動型減速機100(以下、単に「減速機100」と表記することがある)の全体構成を説明する。図1は、減速機100を概略的に示す側面視の断面図である。実施形態の減速機100は、内歯歯車と噛み合う外歯歯車を揺動させることで、内歯歯車および外歯歯車の一方の自転を生じさせ、その生じた自転成分を出力部材から被駆動部材に出力する偏心揺動型減速機である。
【0013】
図1の例では、減速機100は、クランク軸が内歯歯車の軸心からオフセットした位置に配置されるいわゆる振り分け型の偏心揺動型減速機である。減速機100は、クランク軸20と、外歯歯車14、15と、内歯歯車16と、キャリヤ35、36と、ケーシング6と、主軸受26、27と、クランク軸軸受39、40と、入力歯車56とを主に備える。
【0014】
以下、内歯歯車16の中心軸線Laに沿った方向を「軸方向」といい、その中心軸線Laを中心とする円の円周方向、半径方向をそれぞれ「周方向」、「径方向」とする。また、以下、便宜的に、軸方向の一方側(図中右側)を入力側といい、他方側(図中左側)を反入力側という。
【0015】
また、ケーシング6の第1位置P1には第1歪センサ71が取り付けられ、ケーシング6の第1位置P1とは別の第2位置P2には第1歪センサ71と第2歪センサ72が取り
付けられる。第1歪センサ71と第2歪センサ72は、同一種類のセンサであってもよいし、異なる種類のセンサであってもよい。第1歪センサ71および第2歪センサ72は、取り付けられた位置におけるケーシング6の歪みの大きさに応じた信号S1、S2を情報処理部73に提供する。情報処理部73は、信号S1、S2に基づいて、減速機100に加わるモーメントと、減速機100で伝達されるトルクとを算出して出力する。第1歪センサ71および第2歪センサ72の配置については後述する。
【0016】
例えば、算出したモーメントは、主軸受26、27の寿命予測に用いることができる。また、算出したトルクは、クランク軸軸受39、40や外歯歯車14、15の歯面の寿命予測に用いることができる。つまり、これらは減速機100の寿命予測に用いることができる。予め、シミュレーション等によりモーメントと主軸受26、27の寿命の相関関係を求めておき、この相関関係と算出されたモーメントとを用いてこの寿命を予測(推定)することができる。また、予め、シミュレーション等によりトルクとクランク軸軸受39、40の寿命や、外歯歯車14、15の歯面の寿命の相関関係を求めておき、この相関関係と算出されたトルクとを用いてこれらの寿命を予測(推定)することができる。これらの寿命予測(推定)は、CPU等を含む情報処理手段(不図示)によって実現できる。
【0017】
減速機100の各部の構成を説明する。キャリヤ35、36は、外歯歯車14、15の反入力側の側部に配置される第1キャリヤ35と、外歯歯車14、15の入力側の側部に配置される第2キャリヤ36とを含む。ケーシング6は、減速機100を包囲する筒状を有し、内周面に内歯歯車16が設けられる。ケーシング6は、主軸受26、27の外周側を支持する。ケーシング6は、反入力側から入力側に向かって順に、第2外周部62と、第1外周部61と、第3外周部63とを含む。
【0018】
主軸受26、27は、外歯歯車14、15の反入力側の側部に配置される第1主軸受26と、外歯歯車14、15の入力側の側部に配置される第2主軸受27とを含む。主軸受26、27は、ケーシング6を支持する。この例の主軸受26、27は、アンギュラころ軸受であるが、これに限定されない。キャリヤ35、36は、主軸受26、27を介してケーシング6に回転自在に支持される。
【0019】
クランク軸軸受39、40は、クランク軸20とキャリヤ35、36との間に配置され、キャリヤ35、36に対してクランク軸20を回転自在に支持する。この例のクランク軸軸受39、40は、円すいころ軸受であるが、これに限定されない。
【0020】
クランク軸20は、内歯歯車16の中心軸線Laからオフセットした位置に3つ配設される。クランク軸20の回転中心線を符号Lbで示す。3つのクランク軸20は、周方向に等間隔に配置される。図1では一つのクランク軸20のみを示す。クランク軸20は、外歯歯車14、15を揺動させるために、クランク軸20の回転中心線Lbに対して偏心する複数の偏心部24、25を有する。この例のクランク軸20は、互いに偏心位相が180°ずれた2個の偏心部24、25を有する。
【0021】
クランク軸20は、クランク軸軸受39、40を介して第1キャリヤ35および第2キャリヤ36に支持される。反入力側のクランク軸軸受39は、外歯歯車14、15の反入力側の側部において、クランク軸20と、第1キャリヤ35との間に設けられる。入力側のクランク軸軸受40は、外歯歯車14、15の入力側の側部において、クランク軸20と、第2キャリヤ36との間に設けられる。
【0022】
入力歯車56は、各クランク軸20の入力側端部に設けられる。図1では一つの入力歯車56のみを示す。入力歯車56は、モータ軸54のモータピニオン55と噛み合い、入力歯車56にモータ軸54の回転が入力される。
【0023】
外歯歯車14、15は、偏心ころ19を介して偏心部24、25に対応して設けられ、それぞれ周方向に等間隔で配置された3つの内ピン孔41、42と、3つの揺動孔45、46と、を有する。各内ピン孔41、42には、内ピン48が挿通される。各揺動孔45、46には、クランク軸20の偏心部24、25が挿通され、揺動孔45、46と偏心部24、25との間には複数の偏心ころ19が介在する。外歯歯車14、15の外周に形成された外歯が内歯歯車16と接触しつつ移動することによって外歯歯車14、15が揺動可能に構成される。
【0024】
内歯歯車16は、ケーシング6の内周部に一体化された内歯歯車本体18と、内歯歯車本体18に形成されたピン溝に配置された外ピン17とを有している。外ピン17は、内歯歯車16の内歯を構成し、外歯歯車14、15の外歯と噛み合う。外ピン17の数は、外歯歯車14、15の外歯数よりもわずかだけ(この例では1だけ)多い。
【0025】
内ピン48は、第1キャリヤ35から軸方向に延び、ボルトB1によって第2キャリヤ36に固定される。内ピン48は、外歯歯車14、15の内ピン孔41、42に隙間を有した状態で挿通される。
【0026】
第1キャリヤ35とケーシング6の一方は、被駆動部材(不図示)に回転動力を出力する出力部材となり、他方は減速機100を支持するための外部部材(不図示)に固定される被固定部材となる。
【0027】
減速機100の減速動作を説明する。モータ軸54のモータピニオン55を介して入力歯車56に回転動力が振り分けられ、3つの入力歯車56が同じ位相で回転する。3つの入力歯車56が回転すると、クランク軸20の偏心部24、25がクランク軸20を通る回転中心線周りに回転し、その偏心部24、25により外歯歯車14、15が揺動する。外歯歯車14、15が揺動すると、外歯歯車14、15と内歯歯車16の外ピン17の噛合位置が順次ずれる。この結果、クランク軸20が一回転する毎に、外歯歯車14、15の歯数と内歯歯車16の外ピン17の数との差に相当する分、外歯歯車14、15および内歯歯車16の一方の自転が発生する。実施形態では、外歯歯車14、15が自転し、外歯歯車14、15の自転成分と同期して自転する第1キャリヤ35から減速回転が出力される。第1キャリヤ35が回転することによって、第1キャリヤ35に連結される被駆動部材が回転駆動される。
【0028】
第1歪センサ71および第2歪センサ72を説明する。上述したように、ケーシング6の第1位置P1には第1歪センサ71が取り付けられ、ケーシング6の第1位置P1とは別の第2位置P2には第2歪センサ72が取り付けられる。第1歪センサ71および第2歪センサ72は、取り付けられた位置P1、P2におけるケーシング6の歪みを検出し、当該歪みの大きさに応じた信号S1、S2を情報処理部73に提供する。
【0029】
第1位置P1と第2歪センサ72は同一種類のセンサであってもよい。ここで同一種類の歪センサとは、同一の歪みを検出した場合に、その検出結果として実質的に同一のレベルまたは、このレベルに比例的なレベルの信号を提供できるという意味であり、製造者や型番等が異なっていてもよい。第1歪センサ71および第2歪センサ72は、応力により被検出物が微少に伸縮変形する変形量である歪みを電気信号として検出可能な歪ゲージであってもよい。
【0030】
情報処理部73は、信号S1、S2に基づいて、減速機100に加わるモーメント(以下、単に「モーメント」という)と、減速機100で伝達されるトルク(以下、単に「トルク」という)とを算出して出力する。
【0031】
信号S1、S2は、時間の経過とともにプラスとマイナスに変化する交流信号であり、モーメントに基づく成分Mと、トルクに基づく成分Tと、モーメント成分およびトルク成分以外の不要なノイズ成分である成分Nを含む。情報処理部73は、信号S1、S2に基づいて、成分Mと、成分Tとを算出して出力する。
【0032】
情報処理部73を説明する。図2は、情報処理部73の一例を概略的に示すブロック図である。第1歪センサ71と第2歪センサ72の配置を工夫することにより、成分Nは信号S1、S2に略均等に含まれ、成分Tは信号S1に多く含まれ、信号S2には少なく含まれ、成分Mは信号S2と信号S1に多く含まれるようにすることができる。この場合、信号S1、S2、成分M、成分Tおよび成分Nにより連立方程式が成立する。予めこの方程式の各係数A1、B1、A2、B2を求めておき、この方程式に信号S1、S2を入力することにより、成分Nの影響が低減された成分M、成分Tを算出できる。例えば、方程式の各係数A1、B1、A2、B2は、減速機100に所定のモーメントを加えながら、所定のトルクを伝達させた状態の信号S1、S2を取得することにより求めることができる。情報処理部73は、信号S1、S2に基づいて成分M、成分Tを算出するためにCPUやメモリを備える。
【0033】
情報処理部73の別例を説明する。図3は、情報処理部73の別例を概略的に示すブロック図である。別例では、情報処理部73は、信号S1、S2から成分M、成分Tを(算出)推定するために、学習モデルEを用いることができる。学習モデルEは、予め取得された参照用の信号S1、S2とこれに対応するモーメントとトルクの実測データとをもとに機械学習により生成されるAIモデルである。学習モデルEを用いることにより、データ処理の高速化に有利であり、高い精度を得やすい。学習モデルEは、入力された信号S1、S2に基づいて、これに対応する成分M、成分Tを提供する。学習モデルEは、公知の機械学習手法を用いて生成できる。学習モデルEは、同種の他の減速機ついて過去に収集されたモーメントとトルクの実測データをもとに生成されてもよいし、対象の減速機100について収集されたモーメントとトルクの実測データによって生成されてもよい。
【0034】
図1を参照して、第1歪センサ71および第2歪センサ72の配置を説明する。上述したように、ケーシング6は、反入力側から入力側に向かって順に、第2外周部62と、第1外周部61と、第3外周部63とを含む。ケーシング6の第1外周部61に対応する部分の径方向厚さは、ケーシング6の第2外周部62および第3外周部63に対応する部分の径方向厚さよりも厚い。
【0035】
第1歪センサ71と第2歪センサ72は、互いに離れて取り付けられる方が、信号S1、S2の互いの差が大きくなり、位置の違いによるモーメントとトルクのそれぞれの影響度合を変化させた信号を得ることができる。そこで、実施形態では、第1位置P1と第2位置P2とは軸方向位置が異なる。この場合、軸方向位置が異なるので、各センサによってトルクの受けやすさとモーメントの受けやすさが変化するため、各センサの検出する歪みに対するトルクの受けやすさとモーメントの受けやすさが異なり、信号S1、S2のそれぞれに含まれる成分M、成分Tの大きさが異なる。この結果、信号S1、S2と成分M、成分Tの関係を予め計測しておくことで成分M、成分Tの精度を向上できる。実施形態では、第1位置P1は、第1外周部61に設けられ、第2位置P2は、第2外周部62に設けられている。また、実施形態では、第1位置P1と第2位置P2とは、ケーシング6の互いに異径の位置であるが、これに限定されず、第1位置P1と第2位置P2とは、ケーシング6の互いに同径の位置であってもよい。
【0036】
第1歪センサ71と第2歪センサ72は、互いに剛性が異なる位置に取り付けられる方が、剛性の違いによるモーメントの影響度合を変化させた信号を得ることができる。そこで、実施形態では、第1位置P1と第2位置P2とは、ケーシング6の径方向厚さが互いに異なる位置である。この場合、第1位置P1は、第2位置P2よりもケーシング6の径方向厚さが厚く剛性が高いので、第1歪センサ71は、モーメントの影響を殆ど受けない信号S1を出力できる。
【0037】
一例として、第1位置P1は、内歯歯車16と外歯歯車14、15の噛合い位置に径方向に重なり、第2位置P2は、ケーシング6を支持する主軸受26、27に径方向に重なるように配置されてもよい。図1に、内歯歯車16と外歯歯車14、15の噛合い位置の範囲の一例を符号Kで示し、主軸受26、27の範囲の一例を符号J1、J2で示す。第1位置P1は、噛合い位置の範囲Kに径方向に重なり、第2位置P2は、第1主軸受26の範囲J1に径方向に重なる。第1位置P1の第1歪センサ71は、噛合い位置に重なる位置に取り付けられるため、第1位置P1における歪みは、内歯歯車16と外歯歯車14、15の噛合いの影響が大きい。内歯歯車16と外歯歯車14、15の噛合いの影響による歪みは、即ち殆ど伝達トルクの影響による歪みであり、第1歪センサ71は、伝達トルクに基づく成分Tを相対的に多く含む信号S1を出力できる。
【0038】
また、主軸受26、27には、出力フランジ37に被駆動部材からのモーメントが加わるため、主軸受26、27に径方向に重なる第2位置P2における歪みは、モーメントの影響によるものと、伝達トルクの影響によるものの両方の影響を含む。このため、第2歪センサ72は、モーメントに基づく成分Mと伝達トルクに基づく成分Tそれぞれを多く含む信号S2を出力できる。
【0039】
実施形態では、第1キャリヤ35は、減速機100の出力回転を被駆動部材に伝達する出力フランジ37として機能し、第2位置P2は、出力フランジ37を支持する第1主軸受26に径方向に重なる。この場合、相手部材が出力フランジ37側とは反対側に設けられるため、組付け性に影響しにくい。
【0040】
第1位置P1と第2位置P2におけるトルクやモーメントの影響による歪みの位相は、揃っていることが望ましい。そこで、実施形態では、第1位置P1と第2位置P2とは、互いに周方向位置が重なっている。つまり、第1位置P1と第2位置P2とは、周方向に同位相の位置であり、図1の例では、軸方向で入力側から見たときに中心軸線Laを中心とするクロックポジションで同一時刻の位置である。この場合、トルクやモーメントの影響による歪みの位相が揃い易いので、成分M、成分Tの算出が容易になり、算出精度を向上できる。また、取付位置が周方向に重なる場合、第1歪センサ71と第2歪センサ72を減速機100の一方向から取り付けできるので作業性が向上する。
【0041】
上記のように構成された偏心揺動型減速機100の特徴を説明する。偏心揺動型減速機100は、内歯歯車16が設けられたケーシング6を有する偏心揺動型減速機であって、ケーシング6の第1位置P1には第1歪センサ71が取り付けられ、ケーシング6の第1位置P1とは別の第2位置P2には第2歪センサ72が取り付けられる。
【0042】
この構成によれば、互いに異なる位置に設けられた第1歪センサ71と第2歪センサ72の信号に基づいて、ノイズの影響を低減してモーメントとトルクを検出可能な偏心揺動型減速機を提供できる。
【0043】
以上が、実施形態の説明である。
【0044】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0045】
(変形例)
以下、変形例を説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0046】
実施形態の説明では、減速機100が内歯歯車16の軸心からオフセットした位置に複数のクランク軸20が配置されるいわゆる振り分けタイプの偏心揺動型減速機である例を示したが、本発明はこれに限定されず、各種の減速機構を採用できる。例えば、減速機は、内歯歯車の軸心位置にクランク軸が配置されるいわゆるセンタークランクタイプの偏心揺動型減速機であってもよい。
【0047】
実施形態の説明では、減速機100が、外歯歯車14を2枚備える例を示したが、本発明はこれに限定されない。減速機は、1枚または3枚以上の外歯歯車を備えてもよい。
【0048】
これらの各変形例は、実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0049】
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0050】
P1 第1位置、 P2 第2位置、 6 ケーシング、 14、15 外歯歯車、 16 内歯歯車、 26、27 主軸受、 37 出力フランジ、 71 第1歪センサ、 72 第2歪センサ、 100 偏心揺動型減速機。
図1
図2
図3