(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092594
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 5/00 20060101AFI20240701BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20240701BHJP
B29D 30/06 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B60C5/00 F
B60C5/14 Z
B29D30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208642
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】松延 裕子
【テーマコード(参考)】
3D131
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
3D131AA30
3D131AA60
3D131BA07
3D131BA18
3D131BB01
3D131BC09
3D131BC51
3D131BC55
3D131CB01
3D131CB03
3D131LA28
4F215AH20
4F215VA01
4F215VA11
4F215VD22
4F215VL32
4F215VP41
4F501TA01
4F501TA11
4F501TC21
4F501TC25
4F501TE25
4F501TE30
4F501TV16
(57)【要約】
【課題】タイヤ内面に配置された吸音材を剥がしやすい構造の空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】タイヤ1は、タイヤ内面501に設けられた吸音材60と、前記タイヤ内面501と前記吸音材60を接合する接着剤71と、を備え、前記吸音材60のタイヤ幅方向の端部に、タイヤ周方向において少なくとも一部に接着剤71が配置されていない領域が設けられ、前記領域は、前記吸音材60のタイヤ幅方向の端から、前記吸音材60のタイヤ幅方向の長さの10%以上の領域を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内面に設けられた吸音材と、
前記タイヤ内面と前記吸音材を接合する接合材と、を備え、
前記吸音材のタイヤ幅方向の端部に、前記接合材が配置されていない領域が設けられ、
前記領域は、前記吸音材のタイヤ幅方向の端から、前記吸音材のタイヤ幅方向の長さの10%以上の長さの領域である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記領域は、前記吸音材のタイヤ幅方向の端から、前記吸音材のタイヤ幅方向の長さの10%以上40%以下の領域である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記接合材は、タイヤ周方向に延びる複数条で形成される、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
請求項3に記載の空気入りタイヤの製造方法であって、
前記タイヤ内面に前記接合材を吐出し、前記接合材によりタイヤ周方向と平行な環状の周回部を複数条で形成する工程と、
形成された前記接合材の前記周回部に、前記吸音材を配置する工程と、を含む、空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔質のスポンジ材等を材料とする吸音材をタイヤ内面に配置して、タイヤ内腔で生じる空洞共鳴を低減して車内騒音の低減を図った空気入りタイヤが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境保護の観点から、空気入りタイヤのリユースやリサイクルのニーズが更に高まっている。吸音材がタイヤ内面に配置されたこの種のタイヤにあっては、走行により摩耗したトレッドゴム部を新しく貼り替えるリトレッドタイヤとしてリユースする場合やタイヤパンク修理の場合に、吸音材を剥がす必要がある。
【0005】
そこで本発明は、タイヤ内面に配置された吸音材を剥がしやすい構造の空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、タイヤ内面に設けられた吸音材と、前記タイヤ内面と前記吸音材を接合する接合材と、を備え、前記吸音材のタイヤ幅方向の端部に、タイヤ周方向において少なくとも一部に前記接合材が配置されていない領域が設けられ、前記領域は、前記吸音材のタイヤ幅方向の端部から、前記吸音材のタイヤ幅方向の長さの10%以上の長さの領域を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、タイヤ内面に配置された吸音材を剥がしやすい構造の空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るタイヤにおけるタイヤ幅方向の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るタイヤの内面を示す展開図であって、吸音材と接着剤を模式的に示す図である。
【
図3】実施形態に係るタイヤの製造方法を実施する吐出装置のノズルによってタイヤ内面に接着剤を吐出する状態を模式的に示す図である。
【
図4】実施形態に係るタイヤの製造方法を好適に実施し得る吐出装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ1のタイヤ幅方向の断面図である。
【0010】
タイヤ1は、例えば乗用車用のタイヤである。タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっている。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
【0011】
なお、
図1の断面図は、タイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態のタイヤ幅方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。なお、規定リムとは、タイヤサイズに対応してJATMAに定められた標準となるリムを指す。また、規定内圧とは、例えばタイヤが乗用車用である場合には180kPaである。
【0012】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、
図1の断面図における紙面左右方向である。
図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、
図1においては、紙面中央側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、
図1においては、紙面左側及び右側である。
【0013】
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、
図1における紙面上下方向である。
図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、
図1においては、紙面下側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、
図1においては、紙面上側である。
【0014】
図1に示されるように、タイヤ1は、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード10と、一対のビード10の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20間に配置されたトレッド30と、一対のビード10の間に配置されたカーカスプライ40と、カーカスプライ40のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー50と、を備えている。
【0015】
ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11のタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、チェーハー13と、リムストリップゴム14と、を備えている。
【0016】
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状の部材であり、空気が充填されたタイヤ1をリムに固定する役目を果たす部材である。
【0017】
ビードフィラー12は、タイヤ径方向外側に延びるにしたがって先細り形状となっているゴム部材である。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性及び安定性を確保するために設けられている部材である。ビードフィラー12は、例えば周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。
【0018】
チェーハー13は、ビードコア11周りに設けられたカーカスプライ40のタイヤ径方向内側に設けられている。
【0019】
リムストリップゴム14は、チェーハー13及びカーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14は、タイヤ1が装着されるリムと接触する部材である。
【0020】
サイドウォール20は、カーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム21を含む。サイドウォールゴム21は、タイヤ1の外壁面を構成する。サイドウォールゴム21は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0021】
トレッド30は、無端状のベルト31及びキャッププライ32と、トレッドゴム33と、を備えている。
【0022】
ベルト31は、カーカスプライ40のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ32は、ベルト31のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0023】
ベルト31は、トレッド30を補強する部材である。本実施形態のベルト31は、内側のベルト311と外側のベルト312とを備えた2層構造である。内側のベルト311及び外側のベルト312は、いずれも複数のスチールコード等のコードがゴムで覆われた構造を有している。なお、ベルト31は2層構造に限らず、1層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0024】
キャッププライ32は、ベルト31とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ32は、例えばポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有している。キャッププライ32を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0025】
トレッドゴム33は、キャッププライ32のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム33は、走行時に路面と接地する踏面331を構成する部材である。トレッドゴム33の踏面331には、例えば複数の溝で構成されるトレッドパターン34が設けられている。トレッドパターン34は、タイヤ幅方向に並ぶ複数の主溝341を有している。複数の主溝341のそれぞれは、タイヤ周方向に沿って延びている。
【0026】
カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。カーカスプライ40は、一対のビード10間を、一対のサイドウォール20及びトレッド30を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となる不図示の複数のカーカスコードを含んでいる。複数のカーカスコードは、例えばタイヤ幅方向に延びており、タイヤ周方向に並んで配列されている。そのカーカスコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のカーカスコードがゴムにより被覆されて、カーカスプライ40が構成されている。
【0027】
カーカスプライ40は、一方のビードコア11から他方のビードコア11に延び、トレッド30とビード10との間に延在するプライ本体部401と、プライ本体部401からビードコア11で折り返される一対の屈曲部402と、屈曲部402のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対の折り返し部403と、を有する。プライ本体部401、屈曲部402及び折り返し部403は、ビードフィラー12及びビードコア11を囲んでいる。ビードフィラー12よりもタイヤ径方向外側の部分の折り返し部403は、プライ本体部401に重ね合わされている。
【0028】
本実施形態のカーカスプライ40は1層構造であるが、カーカスプライ40は1層構造に限らず、2層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0029】
上述したビード10のチェーハー13は、屈曲部402を含むカーカスプライ40のタイヤ径方向内側の端部を取り囲むように設けられている。また、リムストリップゴム14は、チェーハー13及びカーカスプライ40の折り返し部403の、タイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側の端部は、上述したサイドウォールゴム21で覆われている。
【0030】
インナーライナー50は、カーカスプライ40のプライ本体部401の内面及び一対のビード10のチェーハー13の内面を覆っている。インナーライナー50は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。インナーライナー50の内面は、一対のビード10間のタイヤ内面501を構成する。
【0031】
図1に示されるように、本実施形態に係るタイヤ1は、吸音材60と、接着剤71と、をさらに備えている。
【0032】
吸音材60は、タイヤ内面501に接合されている。実施形態の吸音材60は、発泡材料で形成された多数の気孔を備えたスポンジであり、例えばポリウレタンフォーム等の発泡樹脂が好ましく用いられる。吸音材60は、トレッド30におけるタイヤ内面501に、接合材である接着剤71によって貼り付けられている。実施形態の吸音材60は、タイヤ赤道面S1を対称中心面として左右対称の状態に配置されている。
【0033】
吸音材60は、少なくとも1つの部材でタイヤ内面501に環状に設けられる。吸音材60は、タイヤ周方向に分割する2つ以上の部材で環状に構成してもよい。吸音材60は、走行中においてタイヤ1の内腔に生じる各種の音を吸収してノイズを低減する。
【0034】
吸音材60は、タイヤ1における重量バランスの観点から、密度60kg/m3以下のものが好ましく、密度40kg/m3以下のものがより好ましい。また、吸音材60は、耐久性の観点から、引っ張り強さが30kPa以上、引き裂き強度が2.0N/cm以上(JIS K 6400-5:2012)のものが好ましい。
【0035】
吸音材60の寸法は、タイヤ1の寸法等に応じて選択されるが、例えば、幅すなわちタイヤ内面501に貼り付けられた状態でのタイヤ幅方向の長さは、80mm以上110mm以下、厚みすなわちタイヤ径方向の寸法は、20mm程度が好適とされる。
【0036】
図2は、第1実施形態に係るタイヤ1の内面の一部を示す展開図であって、吸音材60と接着剤71を模式的に示す図である。
図2においては、矢印Xでタイヤ幅方向を示し、矢印Zでタイヤ周方向を示している。
【0037】
図2に示されるように、接着剤71は、インナーライナー50のタイヤ内面501に対して、タイヤ周方向に沿って周回されながら吐出された複数条の接着剤71により形成されている。複数の接着剤71は、タイヤ幅方向に間隔をおいて並列配置されている。
【0038】
吸音材60をタイヤ内面501に接着させる接着剤71は、本実施形態では、接着剤71は4条である。4条の接着剤71は、タイヤ赤道面S1を中心として左右に2つずつ、均等に配置されてタイヤ内面501に吐出される。なお、接着剤71の条数は4つに限定されず、吸音材60の幅や求められる接着強度等によって適宜な条数とされるが、例えば、2条以上10条以下程度が好ましい。また、1条の接着剤71は、吸音材60が接着された硬化後の状態で、その幅(タイヤ幅方向の寸法)は、3mm以上10mm以下程度が好ましく、その高さ(タイヤ径方向の寸法)は、同様に3mm以上10mm以下程度が好ましいが、これらに限定されない。
【0039】
本実施形態においては、
図2に示すように、接着剤71が配置されていない領域は、吸音材60の幅をW1(mm)とした場合、吸音材60の端からタイヤ幅方向内側にW2(mm)の長さの領域である。W2は、吸音材60の幅W1に対して、W2=W1×Aの関係である。Aは10%以上であることが好ましい。さらに、Aは10%以上40%以下であることがより好ましい。
【0040】
本実施形態においては、接着剤71が配置されていない領域は、吸音材60のタイヤ幅方向の端の両側に設けられる。なお、接着剤71が配置されていない領域は、吸音材60のタイヤ幅方向の端の片側に設けられてもよい。
【0041】
接着剤71としては、吸音材60をタイヤ内面501に接着できれば特に限定されないが、ゴム用、あるいはタイヤ用の接着剤が好適に用いられる。吸音材60をタイヤ内面501に接着する接着剤71は、接着強度や耐久性の観点から、引張強さが1.5MPa以上のものが好ましい。この場合の引張強さは、「JIS K 6251:2017」に基づく試験方法により測定した値である。
【0042】
なお、接着剤71は、タイヤ1が加硫成形された状態でタイヤ内面501に残るタイヤ内面用離型剤を除去してから、タイヤ内面501に吐出され、タイヤ内面501に対して複数条形成され、タイヤ幅方向に間隔をおいて並列配置される。
【0043】
なお、吸音材60をタイヤ内面501に接合する接合材としては、接着剤71を用いる代わりに、両面粘着テープを用いてもよい。
【0044】
図3は、実施形態に係るタイヤの製造方法を実施する吐出装置のノズル131によってタイヤ内面501に接着剤71を吐出する状態を模式的に示す図である。
図3においては、タイヤ1の幅方向断面が示され、タイヤ幅方向X、タイヤ径方向Y、タイヤ周方向Zがそれぞれ示されている。
図3において、符号Gは、タイヤ1の回転軸線である。
【0045】
図3に示されるように、周回部72は、接着剤71がタイヤ周方向と平行にインナーライナー50のタイヤ内面501に吐出されて形成されている。接着剤71がインナーライナー50のタイヤ内面501に1周して吐出されることにより、帯状の1つの周回部72が形成される。
【0046】
このように、接着剤71をタイヤ内面501に吐出するにあたって、タイヤ周方向に平行な周回部72をタイヤ幅方向に順次形成していく吐出方法を、以下においてステップ吐出という場合がある。
【0047】
接着剤71をステップ吐出するには、
図3に示されるように、ノズル131をタイヤ幅方向の所定の位置に移動させた後、ノズル131から連続的にタイヤ1の内面であるインナーライナー50のタイヤ内面501に接着剤71を吐出させながら、かつ、タイヤ1を軸周りに回転させながら、ノズル131のタイヤ幅方向への移動を停止した状態でタイヤ1を回転させることにより、タイヤ幅方向一端側の最初の周回部72を吐出する。最初の周回部72が形成された後に、接着剤71はノズル131からの吐出が停止される。ノズル131から接着剤71の吐出が停止した状態で、ノズル131をタイヤ幅方向の所定の位置に移動させ、その後、ノズル131から連続的にタイヤ1の内面であるインナーライナー50のタイヤ内面501に接着剤71を吐出させながら、かつ、タイヤ1を軸周りに回転させながら、ノズル131のタイヤ幅方向への移動を停止した状態でタイヤ1を回転させることにより、次の周回部72が形成される。これらの動作を繰り返すことで、ステップ吐出を行うことができる。
【0048】
図3に示されるようにして接着剤71をタイヤ1の内面にステップ吐出するにあたっては、
図4に示される接着剤吐出装置100を用いることができる。
【0049】
図4は接着剤吐出装置100の概略構成を示しており、当該接着剤吐出装置100は、タイヤ回転機構110と、ノズルスライド機構120と、接着剤吐出機構130と、制御部140と、を備えている。
【0050】
タイヤ回転機構110は、タイヤ1を、
図3に示されるように軸周りに回転させる機構である。
ノズルスライド機構120は、タイヤ回転機構110にセットされたタイヤ1に対してノズル131をタイヤ幅方向に移動させる機構である。
【0051】
接着剤吐出機構130は、上記ノズル131と、ノズル131が先端に取り付けられた押出機(不図示)と、を有する。ノズル131は、タイヤ回転機構110にセットされたタイヤ1の内側に挿入される。接着剤吐出機構130は、上記押出機から押し出された接着剤71を、ノズル131の先端からタイヤ1の内面に吐出する。
【0052】
制御部140には、接着剤71を介してタイヤ内面501に接合される吸音材60の配置情報が入力される。制御部140は、入力された吸音材60の配置情報に基づいて、タイヤ回転機構110、ノズルスライド機構120および接着剤吐出機構130のそれぞれの動作を制御する。
【0053】
本実施形態において、上記吸音材60の配置情報は、吸音材60を示す座標と、接着剤71が吐出されるインナーライナー50のタイヤ内面501の周方向長さと、接着剤71が配置されない領域の座標と、を含む。このような吸音材60の配置情報は、例えばタイヤ設計時のCADデータに基づいて得ることができる。
なお、吸音材60の配置情報の取得方法はこれらに限定されず、他の適宜な方法を採用してよい。
【0054】
吸音材60の配置情報が入力される制御部140は、その吸音材60の配置情報を把握して、タイヤ回転機構110、ノズルスライド機構120および接着剤吐出機構130の動作を制御する。
【0055】
制御部140は、吸音材60の配置情報のタイヤ幅方向に関する座標に基づいて、接着剤71が配置されない領域を設けるための所定の位置に接着剤71が吐出されるように、ノズルスライド機構120によるノズル131のタイヤ幅方向へのスライド動作を制御する。また、制御部140は、インナーライナー50のタイヤ内面501の周方向長さに基づいて、タイヤ周方向に延びる周回部72がタイヤ内面501の全周にわたって吐出されるように制御する。1つの周回部72は、接着剤71が1周吐出されることにより形成される。
【0056】
本実施形態のタイヤ1の製造方法は、タイヤ内面501に接着剤71を吐出し、接着剤71によりタイヤ周方向と平行な環状の周回部72を複数条で形成する工程と、形成された接着剤71の周回部72に、吸音材60を配置する工程と、を含む。
周回部72には、少なくとも1つのシート状の吸音材60がリング状に巻かれて配置される。なお、吸音材60は、2つ以上の吸音材60がリング状につながる状態に配置されて構成されてもよい。
【0057】
上述した本実施形態に係るタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0058】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、タイヤ内面501に設けられた吸音材60と、前記タイヤ内面501と前記吸音材60を接合する接着剤71と、を備え、前記吸音材60のタイヤ幅方向の端部に、接着剤71が配置されていない領域が設けられ、前記領域は、前記吸音材60のタイヤ幅方向の端部から、前記吸音材60のタイヤ幅方向の長さの10%以上の領域を備える。
【0059】
これにより、吸音材60のタイヤ幅方向の端部の、接着剤71が配置されていない領域に、治具や人の指を差し込むことで、接着剤71が配置されていない領域を起点にして、吸音材60が剥がしやすくなる。
【0060】
(2)前記領域は、前記吸音材60のタイヤ幅方向の端から、前記吸音材60のタイヤ幅方向の長さの10%以上40%以下の領域を備える、(1)に記載の空気入りタイヤ。
【0061】
これにより、吸音材60のタイヤ幅方向の端部の、接着剤71が配置されていない領域を十分確保でき、より容易に治具や人の指を差し込むことができる。したがって、接着剤71が配置されていない領域を起点にして、吸音材60をさらに剥がしやすくなる。また、タイヤ1の接地、非接地時における幅方向の変形に伴い、吸音材60が繰り返し変形することで、吸音材60の故障が発生する可能性がある。そのような場合でも、接着剤71を本規定の範囲内に備えることにより、タイヤ1の内面からの吸音材60剥がれ等の故障を効果的に抑えることができる。
【0062】
(3)前記接着剤71は、タイヤ周方向に延びる複数条で形成される、(1)または(2)に記載の空気入りタイヤ。
【0063】
これにより、タイヤ内面501の接着剤塗布領域に接着剤71を全面塗布して吸音材60を接合する場合と比べ、複数条の接着剤71にすることにより塗布面積を減らすことができる。接着剤71の塗布面積を減らすことにより、吸音材60を剥がしやすくなる。また、複数条の接着剤71により吸音材60を接合することにより、タイヤ1が使用される状況において、吸音材60はタイヤ内面501への十分な接着強度を確保することができる。
【0064】
(4)タイヤ内面501に接着剤71を吐出し、接着剤71によりタイヤ周方向と平行な環状の周回部72を複数条で形成する工程と、形成された接着剤71の周回部72に、吸音材60を配置する工程と、を含む、(1)から(3)に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【0065】
これにより、(1)から(3)に記載の空気入りタイヤを容易に製造することができる。
【0066】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
例えば、吸音材60をタイヤ内面501に接着させる接着剤71は、タイヤ周方向の全周のうち不連続に配置されている複数条の態様となってもよい。これにより、塗布される接着剤71の使用量を減らすことで、コスト削減に対して効果的となる。
【0067】
また、接着剤71をノズル131から吐出して複数の周回部72を形成する場合、ノズル131をタイヤ幅方向に移動させる代わりに、タイヤ1をタイヤ幅方向に移動させてもよく、タイヤ1およびノズル131の双方をタイヤ幅方向に移動させてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 タイヤ(空気入りタイヤ)
60 吸音材
71 接着剤(接合材)
501 タイヤ内面