(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092597
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ケーソン基礎の撤去方法
(51)【国際特許分類】
E02D 23/00 20060101AFI20240701BHJP
E02D 9/02 20060101ALI20240701BHJP
E02D 9/04 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
E02D23/00 Z
E02D9/02
E02D9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208645
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 和雄
(72)【発明者】
【氏名】小縄 桜子
(72)【発明者】
【氏名】服部 慶太
(72)【発明者】
【氏名】浅香 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】山本 武典
(72)【発明者】
【氏名】澤田 泰希
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】中山 浩司
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA15
2D050DA03
(57)【要約】
【課題】ケーソン基礎を確実かつ容易に撤去することができるケーソン基礎の撤去方法を提供する。
【解決手段】水底地盤Gに設けられた既設のケーソン基礎12を撤去する方法であって、ケーソン基礎12の周囲を取り囲むように水底地盤G内から水面WL上にかけて筒状部材22を配置する工程と、ケーソン基礎12内の水を排水し、筒状部材22に沿ってケーソン基礎12を浮上させる工程と、浮上したケーソン基礎2の上側部分を水面WL上で解体して撤去する工程とを有するようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下水位面以深または水底地盤に設けられた既設のケーソン基礎を撤去する方法であって、
前記ケーソン基礎の周囲を取り囲むように前記地下水位面または水底地盤内から水面上にかけて筒状部材を配置する工程と、前記ケーソン基礎内の水を排水し、前記筒状部材に沿って前記ケーソン基礎を浮上させる工程とを有することを特徴とするケーソン基礎の撤去方法。
【請求項2】
浮上した前記ケーソン基礎の上側部分を水面上で解体して撤去する工程とを有することを特徴とする請求項1に記載のケーソン基礎の撤去方法。
【請求項3】
浮上した前記ケーソン基礎の上側部分をワイヤーソーで切断し、切断した部分を撤去することを特徴とする請求項2に記載のケーソン基礎の撤去方法。
【請求項4】
浮上した前記ケーソン基礎と前記筒状部材を接続し、前記ケーソン基礎の重量の少なくとも一部を前記筒状部材に一時的に支持させる工程を有することを特徴とする請求項2または3に記載のケーソン基礎の撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば河川内に設置されたケーソン基礎の撤去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、戦後の高度成長期に施工された高速道路などの老朽化を受けたリニューアル工事が全国で行われている。その中で、景観復元の観点から都市河川を跨いで架設された高速道路の地下トンネル化が計画されている地点もある。河川内に設置された橋脚のケーソン基礎は、近隣に建設予定の高速道路トンネルと干渉するおそれがあり、最近では、ケーソン基礎の撤去を含む工事案件が多くなっている。既設のケーソン基礎を撤去する従来の方法としては、例えば、特許文献1に示すものが知られている。
【0003】
図3は、河床地盤Gに沈設されたケーソン基礎の一般的な撤去手順を示したものである。
図3(1)に示すように、まず、ケーソン基礎1の直上の橋脚2の周囲に仮設構台または台船3を設置し、橋脚2を解体して撤去する。次に、
図3(2)に示すように、仮設構台または台船3上に設置した全周回転掘削機4により、ケーシング5を回転圧入させながら先端のビット6でケーソン基礎1の外壁1Aを削孔し、ケーシング5内の鉄筋コンクリートをチゼルハンマー7により砕きながらハンマーグラブ8で破砕物を撤去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来のケーソン基礎の撤去方法では、仮設構台または台船3上からの撤去作業のため地中が見えず、万一コンクリート残骸が地中に残っても確認できないため、確実性に乏しいという問題があった。また、削孔中のケーシングがケーソン基礎の鉄筋コンクリート躯体に取り囲まれることから、大深度ケーソンになるほどケーシングによる削孔が困難になるという問題があった。このため、ケーソン基礎を確実かつ容易に撤去することができる技術が求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ケーソン基礎を確実かつ容易に撤去することができるケーソン基礎の撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るケーソン基礎の撤去方法は、地下水位面以深または水底地盤に設けられた既設のケーソン基礎を撤去する方法であって、前記ケーソン基礎の周囲を取り囲むように前記地下水位面または水底地盤内から水面上にかけて筒状部材を配置する工程と、前記ケーソン基礎内の水を排水し、前記筒状部材に沿って前記ケーソン基礎を浮上させる工程とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他のケーソン基礎の撤去方法は、上述した発明において、浮上した前記ケーソン基礎の上側部分を水面上で解体して撤去する工程とを有することを特徴とする
【0009】
また、本発明に係る他のケーソン基礎の撤去方法は、上述した発明において、浮上した前記ケーソン基礎の上側部分をワイヤーソーで切断し、切断した部分を撤去することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他のケーソン基礎の撤去方法は、上述した発明において、浮上した前記ケーソン基礎と前記筒状部材を接続し、前記ケーソン基礎の重量の少なくとも一部を前記筒状部材に一時的に支持させる工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るケーソン基礎の撤去方法によれば、地下水位面以深または水底地盤に設けられた既設のケーソン基礎を撤去する方法であって、前記ケーソン基礎の周囲を取り囲むように前記地下水位面または水底地盤内から水面上にかけて筒状部材を配置する工程と、前記ケーソン基礎内の水を排水し、前記筒状部材に沿って前記ケーソン基礎を浮上させる工程とを有するので、ケーソン基礎を地下水位面以深または水底地盤から容易に浮上させることができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る他のケーソン基礎の撤去方法によれば、浮上した前記ケーソン基礎の上側部分を水面上で解体して撤去する工程とを有するので、ケーソン基礎を確実かつ容易に撤去することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る他のケーソン基礎の撤去方法によれば、浮上した前記ケーソン基礎の上側部分をワイヤーソーで切断し、切断した部分を撤去するので、解体撤去作業を容易に行うことができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他のケーソン基礎の撤去方法によれば、浮上した前記ケーソン基礎と前記筒状部材を接続し、前記ケーソン基礎の重量の少なくとも一部を前記筒状部材に一時的に支持させる工程を有するので、浮力が不足する場合などに、ケーソン基礎を水面付近に容易に仮固定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係るケーソン基礎の撤去方法の実施の形態を示す前半の手順図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るケーソン基礎の撤去方法の実施の形態を示す後半の手順図である。
【
図3】
図3は、従来のケーソン基礎の撤去手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るケーソン基礎の撤去方法の実施の形態について、河床地盤(水底地盤)に設けられた既設のケーソン基礎の撤去工事に適用する場合を例にとり、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。本発明の水底地盤の例としては、例えば、海底地盤、河床地盤、湖底地盤などが挙げられる。また、水の例としては、例えば、海水、河川水、湖沼水などが挙げられる。
【0017】
本実施の形態に係るケーソン基礎の撤去方法は、ケーソン基礎の周囲を取り囲むように河床地盤内から水面上にかけて鋼製仮締切(筒状部材)を配置する工程と、ケーソン基礎内の水を排水し、鋼製仮締切に沿ってケーソン基礎を浮上させる工程と、浮上したケーソン基礎の上側部分を水面上で解体して撤去する工程とを有する。これらの工程は、
図1および
図2に示されるステップS1~S7の手順で構成される。各ステップの具体的な作業内容について以下に説明する。
【0018】
まず、
図1(1)の基礎撤去前の状態では、高架橋の上部桁が先行して撤去され、橋脚10とこれを支持するケーソン基礎12が河床地盤Gに残置された状態となっている。ケーソン基礎12は、有底筒状の躯体14と、躯体14に取り囲まれる中空部16と、中空部16の上面を塞ぐ頂版18とを有する。中空部16の内部は、水で満たされている。ケーソン基礎12の底面には、コンクリートで充填された作業室跡20がある。
【0019】
図1(2)のステップS1において、鋼製仮締切22をケーソン基礎12の外側の河床地盤Gに圧入する。鋼製仮締切22は、筒体を上下方向および周方向に複数に分割した弧状断面の鋼製パネルを筒状に組み立てて構成される筒状部材である。鋼製仮締切22の断面形状は、ケーソン基礎12の断面形状より若干大きい。鋼製仮締切22は、河床地盤Gの上面から所定深さまで圧入されるため、深さ方向に複数段連結して圧入される。最下段の鋼製仮締切22は下端に圧入刃を備える。鋼製仮締切22を河床地盤G中に圧入するための手段として、本実施の形態では、河床地盤G中に設置された反力アンカー24を用いる。鋼製仮締切22の河床地盤G中への圧入は、鋼製仮締切22の上端に圧入桁30を外側に張り出して設置し、圧入桁30上に圧入ジャッキを設置し、圧入ジャッキと反力アンカー24を連結して行う。
【0020】
より具体的には、反力アンカー24をケーソン基礎12の刃口先端26よりも深い位置の河床地盤G内に先行して圧入、設置しておく。反力アンカー24は、鋼製仮締切22の圧入予定位置よりも外側に配置する。一方、橋脚10の周囲で鋼製パネルを環状に組み立てて最下段となる短尺の鋼製仮締切22を構築し、河床地盤Gの上に配置する。この鋼製仮締切22の上に圧入桁30、圧入ジャッキを設置し、圧入ジャッキと反力アンカー24に接続してあるワイヤー28とを連結し、反力アンカー24から反力をとって、圧入ジャッキにより鋼製仮締切22をケーソン基礎12の外側の河床地盤G中に圧入する。
【0021】
圧入桁30、圧入ジャッキを撤去し、次の鋼製仮締切22を組み立て、最下段の鋼製仮締切22の上部に二段目の鋼製仮締切22を連結する。この二段目の鋼製仮締切22の上に圧入桁30、圧入ジャッキを設置し、最下段の鋼製仮締切22と二段目の鋼製仮締切22を河床地盤G中に圧入する。これらの作業工程を所定の深度まで繰り返すことにより、最下段の鋼製仮締切22の圧入刃をケーソン基礎12の刃口先端26よりも深い位置まで圧入する。最上段の鋼製仮締切22の上端は、水面WL上に残す。こうすることで、ケーソン基礎12の周囲を筒状の鋼製仮締切22で締め切る。鋼製仮締切22とケーソン基礎12の躯体14との隙間は、30~50cm程度を想定している。この隙間の土砂は、鋼製仮締切22の圧入と平行して隙間の上方等からジェット水を噴射することで除去する。
【0022】
図1(3)のステップS2において、鋼製仮締切22の内側の水位が頂版18の上面まで低下するように鋼製仮締切22の内側を水中ポンプ等で排水する。これにより、ドライな作業空間を形成する。その後、鋼製仮締切22の内側に足場32を組立設置して、橋脚10を斫り撤去する。なお、鋼製仮締切22の圧入完了後、反力アンカー24は除去する。
【0023】
図1(4)のステップS3において、橋脚10の撤去後、頂版18を斫り撤去する。その後、ケーソン基礎12の中空部16内に水中ポンプ34を設置する。鋼製仮締切22とケーソン基礎12の躯体14の隙間の土砂を、ケーソン基礎12の刃口先端26までジェット水などで除去する。
【0024】
図2(1)のステップS4において、ケーソン基礎12の中空部16内の水を水中ポンプ34で徐々に排水し、ケーソン基礎12を浮遊させる。一方、水面WL上に仮設構台または台船等36で重機の足場を設ける。この際、浮上したケーソン基礎12の体積に応じた水などの液体を隙間に注入し、仮締切りした面の水圧をバランスさせることでボイリング等を発生を抑止してもよい。また、ケーソン基礎12下面と地盤Gとの付着を減少させる目的でケーソン基礎12下面付近において、ジャット水を噴射させてもよい。
【0025】
図2(2)のステップS5において、浮遊したケーソン基礎12の上側部分を水面WL上でワイヤーソーで切断して解体し、切断した塊をクレーン38で撤去する。浮遊したケーソン基礎12の乾舷Hは、ケーソン基礎12内の排水量で調整する。
【0026】
図2(3)のステップS6において、上記のステップS5を繰返しながら、ケーソン基礎12を徐々に撤去する。浮力が不足した段階から、ケーソン基礎12と鋼製仮締切22の間にかんざし40を設けてケーソン基礎12の重量の一部を鋼製仮締切22に作用させる。
【0027】
図2(4)のステップS7において、ケーソン基礎12の撤去完了後、鋼製仮締切22の内側を砂等の埋戻し材42で埋戻しながら、鋼製仮締切22を引抜き撤去する。
【0028】
本実施の形態によれば、水面WL上で間近に確認しながらケーソン基礎12を切断するため、従来のように地中にコンクリート残骸を残すことなく確実に撤去作業を行うことができる。また、鋼製仮締切22を用いるため、撤去作業中のケーソン基礎12の外周地盤の崩壊を防止することができる。したがって、本実施の形態によれば、ケーソン基礎12を確実かつ容易に撤去することができる。
【0029】
なお、上記の実施の形態においては、河床地盤G(水底地盤)に設けられた既設のケーソン基礎12を撤去する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、陸上地盤内などの地下水位面以深に設けられた既設のケーソン基礎を撤去する際に適用してもよい。この場合、ケーソン基礎の周囲を取り囲むように地下水位面以深から地下水位面上にかけて鋼製仮締切(筒状部材)を配置し、その後、ケーソン基礎内の水を排水して、鋼製仮締切に沿ってケーソン基礎を浮上させ、上記の実施の形態と同様の手順でケーソン基礎を撤去してもよい。
【0030】
以上説明したように、本発明に係るケーソン基礎の撤去方法によれば、地下水位面以深または水底地盤に設けられた既設のケーソン基礎を撤去する方法であって、前記ケーソン基礎の周囲を取り囲むように前記地下水位面または水底地盤内から水面上にかけて筒状部材を配置する工程と、前記ケーソン基礎内の水を排水し、前記筒状部材に沿って前記ケーソン基礎を浮上させる工程とを有するので、ケーソン基礎を地下水位面以深または水底地盤から容易に浮上させることができる。
【0031】
また、本発明に係る他のケーソン基礎の撤去方法によれば、浮上した前記ケーソン基礎の上側部分を水面上で解体して撤去する工程とを有するので、ケーソン基礎を確実かつ容易に撤去することができる。
【0032】
また、本発明に係る他のケーソン基礎の撤去方法によれば、浮上した前記ケーソン基礎の上側部分をワイヤーソーで切断し、切断した部分を撤去するので、解体撤去作業を容易に行うことができる。
【0033】
また、本発明に係る他のケーソン基礎の撤去方法によれば、浮上した前記ケーソン基礎と前記筒状部材を接続し、前記ケーソン基礎の重量の少なくとも一部を前記筒状部材に一時的に支持させる工程を有するので、浮力が不足する場合などに、ケーソン基礎を水面付近に容易に仮固定することができる。
【0034】
なお、2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施の形態に係るケーソン基礎の撤去方法は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「12.つくる責任 つかう責任」の目標などの達成に貢献し得る。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明に係るケーソン基礎の撤去方法は、水底下に設置された既設ケーソン基礎の撤去作業に有用であり、特に、ケーソン基礎を確実かつ容易に撤去するのに適している。
【符号の説明】
【0036】
10 橋脚
12 ケーソン基礎
14 躯体
16 中空部
18 頂版
20 作業室跡
22 鋼製仮締切(筒状部材)
24 反力アンカー
26 刃口先端
28 ワイヤー
30 圧入桁
32 足場
34 水中ポンプ
36 仮設構台または台船等
38 クレーン
40 かんざし
42 埋戻し材
G 河床地盤(水底地盤)
WL 水面