(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092603
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】電気設備劣化推定装置、電気設備劣化推定方法および電気設備劣化推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20240701BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01R31/00
H02J13/00 301A
H02J13/00 301J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208654
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】熊野 和也
(72)【発明者】
【氏名】衣川 英明
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】井筒 恵一郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 文聞
【テーマコード(参考)】
2G036
5G064
【Fターム(参考)】
2G036AA24
2G036BA03
2G036CA01
2G036CA08
5G064AA04
5G064AC09
5G064BA02
5G064DA05
(57)【要約】
【課題】電気設備の劣化状況を精度よく推定することが可能な電気設備劣化推定装置、電気設備劣化推定方法を提供する。
【解決手段】電気設備劣化推定装置10は、データ取得部12、過負荷運転時間検出部32、寿命損失パラメータ変更要否判断部33、寿命計算演算部34を備えている。過負荷運転時間検出部32は、データ取得部12において取得された電力情報D1と周囲温度情報D2とに基づいて電気設備が許容する定格負荷以上の負荷がかかっている状態を示す過負荷運転状態を検出する。寿命損失パラメータ変更要否判断部33は、過負荷運転時間検出部32において検出された過負荷運転状態に応じて電気設備の過去の利用状況に基づいて予め設定された電気設備の寿命損失の度合いを示す劣化率の変更の要否を判断する。寿命計算演算部34は、寿命損失パラメータ変更要否判断部33において判断された劣化率に基づいて電気設備の推定寿命を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気設備の劣化状況を推定する電気設備劣化推定装置であって、
前記電気設備に供給される負荷電流量を含む電力情報と、前記電気設備の周囲の温度を含む周囲温度情報と、を取得するデータ取得部と、
前記データ取得部において取得された前記電力情報と、前記周囲温度情報と、に基づいて前記電気設備が許容する定格負荷以上の負荷がかかっている状態を示す過負荷運転状態を検出する過負荷運転時間検出部と、
前記過負荷運転時間検出部において検出された前記過負荷運転状態に応じて、前記電気設備の過去の利用状況に基づいて予め設定された前記電気設備の寿命損失の度合いを示す劣化率の変更の要否を判断する寿命損失パラメータ変更要否判断部と、
前記寿命損失パラメータ変更要否判断部において判断された前記劣化率に基づいて、前記電気設備の推定寿命を算出する寿命計算演算部と、
を備えている電気設備劣化推定装置。
【請求項2】
前記過負荷運転時間検出部は、前記電気設備に供給される前記負荷電流量と、前記電気設備が許容する前記負荷電流量の最大量を示す最大許容負荷電流量と、に基づいて算出される前記電気設備の負荷状態を定量的に示す負荷率を参照し、前記電気設備が許容する定格負荷以下の負荷がかかっている状態を示す軽負荷運転状態における前記負荷率を超える場合に、前記電気設備の前記過負荷運転状態を検出する、
請求項1に記載の電気設備劣化推定装置。
【請求項3】
前記電気設備の正規の寿命を期待して前記過負荷運転状態にする場合と、前記電気設備の寿命が任意の割合で短縮されるものとして前記過負荷運転状態にする場合と、に応じて、前記電気設備の前記過負荷運転状態を定量的に示すパラメータを含む過負荷運転寿命計算テーブルを設定する寿命計算テーブル変更設定部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の電気設備劣化推定装置。
【請求項4】
前記電気設備が犠牲にする寿命の比率に基づいて、前記劣化率を設定する寿命損失パラメータ設定部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の電気設備劣化推定装置。
【請求項5】
前記電気設備の前記推定寿命に応じた複数の警報内容と、適用される前記警報内容を判定する閾値と、を設定する警報出力閾値設定部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の電気設備劣化推定装置。
【請求項6】
前記警報出力閾値設定部において設定された前記警報内容と、適用される前記警報内容を判定する閾値と、に応じた前記警報内容の出力の要否を判定する警報出力要否判定部を、さらに備えている、
請求項5に記載の電気設備劣化推定装置。
【請求項7】
前記警報出力要否判定部において判定された前記警報内容を出力する警報出力制御部を、さらに備えている、
請求項6に記載の電気設備劣化推定装置。
【請求項8】
前記電気設備の前記推定寿命の算出結果に基づいて、前記算出結果を示すグラフを作成するグラフ作成処理部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の電気設備劣化推定装置。
【請求項9】
前記電気設備の前記過負荷運転状態を定量的に示すパラメータを含む過負荷運転寿命計算テーブルと、前記電気設備の前記劣化率の候補を含む寿命損失パラメータテーブルと、前記電気設備が前記過負荷運転状態になった回数を年ごとに集計した過負荷運転累積回数計算テーブルと、前記電気設備の前記推定寿命に応じた複数の警報内容を含む警報出力閾値テーブルと、を保存する記憶部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の電気設備劣化推定装置。
【請求項10】
前記電気設備は、変圧器である、
請求項1または2に記載の電気設備劣化推定装置。
【請求項11】
電気設備の劣化状況を推定する電気設備劣化推定装置によって実施される電気設備劣化推定方法であって、
前記電気設備劣化推定装置のデータ取得部が、前記電気設備に供給される負荷電流量を含む電力情報と、前記電気設備の周囲の温度を含む周囲温度情報と、を取得するデータ取得ステップと、
前記電気設備劣化推定装置の過負荷運転時間検出部が、前記データ取得ステップにおいて取得された前記電力情報と、前記周囲温度情報と、に基づいて前記電気設備が許容する定格負荷以上の負荷がかかっている状態を示す過負荷運転状態を検出する過負荷運転時間検出ステップと、
前記電気設備劣化推定装置の寿命損失パラメータ変更要否判断部が、前記過負荷運転時間検出ステップにおいて検出された前記過負荷運転状態に応じて、前記電気設備の過去の利用状況に基づいて予め設定された前記電気設備の寿命損失の度合いを示す劣化率の変更の要否を判断する寿命損失パラメータ変更要否判断ステップと、
前記電気設備劣化推定装置の寿命計算演算部が、前記寿命損失パラメータ変更要否判断ステップにおいて判断された前記劣化率に基づいて、前記電気設備の推定寿命を算出する寿命計算演算ステップと、
を備えている電気設備劣化推定方法。
【請求項12】
電気設備の劣化状況を推定する電気設備劣化推定装置によって読み込まれる電気設備劣化推定プログラムであって、
前記電気設備劣化推定装置のデータ取得部が、前記電気設備に供給される負荷電流量を含む電力情報と、前記電気設備の周囲の温度を含む周囲温度情報と、を取得するデータ取得ステップと、
前記電気設備劣化推定装置の過負荷運転時間検出部が、前記データ取得ステップにおいて取得された前記電力情報と、前記周囲温度情報と、に基づいて前記電気設備が許容する定格負荷以上の負荷がかかっている状態を示す過負荷運転状態を検出する過負荷運転時間検出ステップと、
前記電気設備劣化推定装置の寿命損失パラメータ変更要否判断部が、前記過負荷運転時間検出ステップにおいて検出された前記過負荷運転状態に応じて、前記電気設備の過去の利用状況に基づいて予め設定された前記電気設備の寿命損失の度合いを示す劣化率の変更の要否を判断する寿命損失パラメータ変更要否判断ステップと、
前記電気設備劣化推定装置の寿命計算演算部が、前記寿命損失パラメータ変更要否判断ステップにおいて判断された前記劣化率に基づいて、前記電気設備の推定寿命を算出する寿命計算演算ステップと、
を備えている電気設備劣化推定方法をコンピュータに実行させる電気設備劣化推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気設備の劣化状況を推定する電気設備劣化推定装置、電気設備劣化推定方法および電気設備劣化推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気設備に含まれる変圧器は、電力会社の高圧配電線によって供給された高電圧を、安全な低電圧にして取扱い易くする受電設備である。しかし、変圧器は、需要家設備の過負荷運転や高温な環境により寿命劣化が進む傾向がある。そこで、変圧器を含む電気設備の劣化の進行度合いの監視を行う装置が種々考案されている。
例えば、特許文献1には、容量変圧器を含めた変圧器全般について、設置場所温度と、回帰式を用いて求められた絶縁紙温度差と、から算出された勾配補正係数に基づいて、絶縁紙の重合度低下状況を算出することで、変圧器の劣化状況を連続的に表示することが可能な変圧器劣化状況表示装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の変圧器劣化状況表示装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された変圧器劣化状況表示装置では、回帰分析を用いて変圧器の重合度低下状況を連続的に示すことで、変圧器の劣化状況を把握している。
しかし、上記回帰分析は、気象庁公表データによる過去40年間の年間平均気温をもとに演算されているため、近年の急激な気温上昇を伴う温度を的確に反映することができない。
【0005】
よって、変圧器の劣化状況を推定する精度が、実態と乖離し悪化するおそれがあるため、電気設備の劣化状況の推定精度には、改善の余地がある。
そこで、本発明の課題は、電気設備の劣化状況を精度よく推定することが可能な電気設備劣化推定装置、電気設備劣化推定方法および電気設備劣化推定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る電気設備劣化推定装置は、電気設備の劣化状況を推定する電気設備劣化推定装置であって、データ取得部と、過負荷運転時間検出部と、寿命損失パラメータ変更要否判断部と、寿命計算演算部と、を備えている。データ取得部は、電気設備に供給される負荷電流量を含む電力情報と、電気設備の周囲の温度を含む周囲温度情報と、を取得する。過負荷運転時間検出部は、データ取得部において取得された電力情報と、周囲温度情報と、に基づいて、電気設備が許容する定格負荷以上の負荷がかかっている状態を示す過負荷運転状態を検出する。寿命損失パラメータ変更要否判断部は、過負荷運転時間検出部において検出された過負荷運転状態に応じて、電気設備の過去の利用状況に基づいて予め設定された電気設備の寿命損失の度合いを示す劣化率の変更の要否を判断する。寿命計算演算部は、寿命損失パラメータ変更要否判断部において判断された劣化率に基づいて、電気設備の推定寿命を算出する。
【0007】
ここでは、電気設備に供給される負荷電流量と、電気設備の周囲温度と、に基づいて、過負荷運転状態を検出し、検出された過負荷運転状態に応じて、予め設定された電気設備の寿命損失の度合いを示す劣化率の変更の要否を判断することで、電気設備の推定寿命を算出する。
ここで、電気設備には、例えば、変圧器、進相コンデンサ、リアクトル等が含まれる。
【0008】
電力情報は、例えば、電気設備に供給される負荷電流量、電流、電圧、電力、電力量等を含むデータである。
周囲温度情報は、例えば、電気設備の周囲温度を含むデータである。
過負荷運転状態は、例えば、電気設備ごとに定められた定格負荷(定格電圧や定格電流、および定格周囲温度)を上回った状態で、一定の時間使用されることを指す。
【0009】
劣化率は、電気設備の劣化の度合いを定量的に示したものであり、例えば、電気設備の利用経過年数に対して電気設備の期待寿命をプロットして寿命計算式を作成した場合の傾きを示す。
寿命計算式は、電気設備の劣化状況を関数として表したものである。
これにより、電気設備に供給される負荷電流量と、電気設備の周囲温度と、に基づいて、過負荷運転状態を検出することで、従来の回帰分析を用いた劣化状況の推定方法と比較して、精度よく電気設備の周囲環境に応じた推定寿命を算出することができる。
この結果、電気設備の劣化状況を精度よく推定することができる。
【0010】
第2の発明に係る電気設備劣化推定装置は、第1の発明に係る電気設備劣化推定装置であって、過負荷運転時間検出部は、電気設備に供給される負荷電流量と、電気設備が許容する負荷電流量の最大量を示す最大許容負荷電流量と、に基づいて算出される電気設備の負荷状態を定量的に示す負荷率を参照し、電気設備が許容する定格負荷以下の負荷がかかっている状態を示す軽負荷運転状態における負荷率を超える場合に、電気設備の過負荷運転状態を検出する。
【0011】
ここで、負荷率は、例えば、最大許容負荷電流量に対してどのくらいの負荷電流が電気設備内に流れているかを示した割合である。また、電気設備を負荷率が高い状態で長時間運転した場合に、電気設備の寿命は短縮する傾向がある。
これにより、電気設備の軽負荷運転状態を検出することなく、電気設備の過負荷運転状態を適切に検出することで、電気設備の劣化状況を推定することができる。
【0012】
第3の発明に係る電気設備劣化推定装置は、第1または第2の発明に係る電気設備劣化推定装置であって、電気設備の正規の寿命を期待して過負荷運転状態にする場合と、電気設備の寿命が任意の割合で短縮されるものとして過負荷運転状態にする場合と、に応じて、電気設備の過負荷運転状態を定量的に示すパラメータを含む過負荷運転寿命計算テーブルを設定する寿命計算テーブル変更設定部を、さらに備えている。
ここで、過負荷運転寿命計算テーブルは、電気設備が許容できる過負荷運転状態の上限の負荷率を示すデータである。
これにより、電気設備の利用年数、使用頻度、設置地域および季節等に応じて適切な劣化状況を推定することができる。
【0013】
第4の発明に係る電気設備劣化推定装置は、第1または第2の発明に係る電気設備劣化推定装置であって、電気設備が犠牲にする寿命の比率に基づいて、劣化率を設定する寿命損失パラメータ設定部を、さらに備えている。
これにより、電気設備の利用状況や周囲環境に応じた劣化率を設定することで、精度よく電気設備の劣化状況を推定することができる。
【0014】
第5の発明に係る電気設備劣化推定装置は、第1または第2の発明に係る電気設備劣化推定装置であって、電気設備の推定寿命に応じた複数の警報内容と、適用される警報内容を判定する閾値と、を設定する警報出力閾値設定部を、さらに備えている。
これにより、電気設備の劣化状況に応じて、適切な時期に電気設備の点検や修理等の措置をとることができる。
【0015】
第6の発明に係る電気設備劣化推定装置は、第5の発明に係る電気設備劣化推定装置であって、警報出力閾値設定部において設定された警報内容と、適用される警報内容を判定する閾値と、に応じた警報内容の出力の要否を判定する警報出力要否判定部を、さらに備えている。
これにより、電気設備の寿命が近づく度に適切な点検や修理等の措置をとることができる。
【0016】
第7の発明に係る電気設備劣化推定装置は、第6の発明に係る電気設備劣化推定装置であって、警報出力要否判定部において判定された警報内容を出力する警報出力制御部を、さらに備えている。
これにより、警報出力制御部は、電気設備の劣化状況に応じて適切な警報内容を出力することができる。
【0017】
第8の発明に係る電気設備劣化推定装置は、第1または第2の発明に係る電気設備劣化推定装置であって、電気設備の推定寿命の算出結果に基づいて、算出結果を示すグラフを作成するグラフ作成処理部を、さらに備えている。
これにより、作成されたグラフから電気設備を設置した時期から長期間にわたる電気設備の劣化状況を精度よく把握することができる。
【0018】
第9の発明に係る電気設備劣化推定装置は、第1または第2の発明に係る電気設備劣化推定装置であって、電気設備の過負荷運転状態を定量的に示すパラメータを含む過負荷運転寿命計算テーブルと、電気設備の劣化率の候補を含む寿命損失パラメータテーブルと、電気設備が過負荷運転状態になった回数を年ごとに集計した過負荷運転累積回数計算テーブルと、電気設備の推定寿命に応じた複数の警報内容を含む警報出力閾値テーブルと、を保存する記憶部を、さらに備えている。
これにより、電気設備劣化推定装置内に設けられた記憶部に保存された各種データを用いて、電気設備の劣化状況を精度よく推定することができる。
【0019】
第10の発明に係る電気設備劣化推定装置は、第1または第2の発明に係る電気設備劣化推定装置であって、電気設備は、変圧器である。
ここで、変圧器は、例えば、キュービクル式高圧受電設備であり、各種施設に自家用電気工作物の一つとして設置されている。また、キュービクル式高圧受電設備は、高圧で受電した電気を低圧に変圧する機能と、施設内の負荷設備に電気を供給する機能とを有する。
これにより、電気設備劣化推定装置は、変圧器の劣化状況を精度よく推定することができる。
【0020】
第11の発明に係る電気設備劣化推定方法は、電気設備の劣化状況を推定する電気設備劣化推定装置によって実施される電気設備劣化推定方法であって、データ取得ステップと、過負荷運転時間検出ステップと、寿命損失パラメータ変更要否判断ステップと、寿命計算演算ステップと、を備えている。データ取得ステップは、電気設備劣化推定装置のデータ取得部が、電気設備に供給される負荷電力量を含む電力情報と、電気設備の周囲の温度を含む周囲温度情報と、を取得する。過負荷運転時間検出ステップは、電気設備劣化推定装置の過負荷運転時間検出部が、データ取得ステップにおいて取得された電力情報と、周囲温度情報と、に基づいて、電気設備が許容する定格負荷以上の負荷がかかっている状態を示す過負荷運転状態を検出する。寿命損失パラメータ変更要否判断ステップは、電気設備劣化推定装置の寿命損失パラメータ変更要否判断部が、過負荷運転時間検出ステップにおいて検出された過負荷運転状態に応じて、電気設備の過去の利用状況に基づいてあらかじめ設定された電気設備の寿命損失の度合いを示す劣化率の変更の要否を判断する。寿命計算演算ステップは、電気設備劣化推定装置の寿命計算演算部が、寿命損失パラメータ変更要否判断ステップにおいて判断された劣化率に基づいて、電気設備の推定寿命を算出する。
【0021】
ここでは、電気設備に供給される負荷電流量と、電気設備の周囲温度と、に基づいて、過負荷運転状態を検出し、検出された過負荷運転状態に応じて、予め設定された電気設備の寿命損失の度合いを示す劣化率の変更の要否を判断することで、電気設備の推定寿命を算出する。
ここで、電気設備には、例えば、変圧器、進相コンデンサ、リアクトル等が含まれる。
【0022】
電力情報は、例えば、電気設備に供給される負荷電流量、電流、電圧、電力、電力量等を含むデータである。
周囲温度情報は、例えば、電気設備の周囲温度を含むデータである。
過負荷運転状態は、例えば、電気設備ごとに定められた定格負荷(定格電圧や定格電流、および定格周囲温度)を上回った状態で、一定の時間使用されることを指す。
【0023】
劣化率は、電気設備の劣化の度合いを定量的に示したものであり、例えば、電気設備の利用経過年数に対して電気設備の期待寿命をプロットして寿命計算式を作成した場合の傾きを示す。
寿命計算式は、電気設備の劣化状況を関数として表したものである。
これにより、電気設備に供給される負荷電流量と、電気設備の周囲温度と、に基づいて、過負荷運転状態を検出することで、従来の回帰分析を用いた劣化状況の推定方法と比較して、精度よく電気設備の周囲環境に応じた推定寿命を算出することができる。
この結果、電気設備の劣化状況を精度よく推定することができる。
【0024】
第12の発明に係る電気設備劣化推定プログラムは、電気設備の劣化状況を推定する電気設備劣化推定装置によって実施される電気設備劣化推定プログラムであって、データ取得ステップと、過負荷運転時間検出ステップと、寿命損失パラメータ変更要否判断ステップと、寿命計算演算ステップと、を備えている。データ取得ステップは、電気設備劣化推定装置のデータ取得部が、電気設備に供給される負荷電力量を含む電力情報と、電気設備の周囲の温度を含む周囲温度情報と、を取得する。過負荷運転時間検出ステップは、電気設備劣化推定装置の過負荷運転時間検出部が、データ取得ステップにおいて取得された電力情報と、周囲温度情報と、に基づいて、電気設備が許容する定格負荷以上の負荷がかかっている状態を示す過負荷運転状態を検出する。寿命損失パラメータ変更要否判断ステップは、電気設備劣化推定装置の寿命損失パラメータ変更要否判断部が、過負荷運転時間検出ステップにおいて検出された過負荷運転状態に応じて、電気設備の過去の利用状況に基づいてあらかじめ設定された電気設備の寿命損失の度合いを示す劣化率の変更の要否を判断する。寿命計算演算ステップは、電気設備劣化推定装置の寿命計算演算部が、寿命損失パラメータ変更要否判断ステップにおいて判断された劣化率に基づいて、電気設備の推定寿命を算出する。
【0025】
ここでは、電気設備に供給される負荷電流量と、電気設備の周囲温度と、に基づいて、過負荷運転状態を検出し、検出された過負荷運転状態に応じて、予め設定された電気設備の寿命損失の度合いを示す劣化率の変更の要否を判断することで、電気設備の推定寿命を算出する。
ここで、電気設備には、例えば、変圧器、進相コンデンサ、リアクトル等が含まれる。
【0026】
電力情報は、例えば、電気設備に供給される負荷電流量、電流、電圧、電力、電力量等を含むデータである。
周囲温度情報は、例えば、電気設備の周囲温度を含むデータである。
過負荷運転状態は、例えば、電気設備ごとに定められた定格負荷(定格電圧や定格電流、および定格周囲温度)を上回った状態で、一定の時間使用されることを指す。
【0027】
劣化率は、電気設備の劣化の度合いを定量的に示したものであり、例えば、電気設備の利用経過年数に対して電気設備の期待寿命をプロットして寿命計算式を作成した場合の傾きを示す。
寿命計算式は、電気設備の劣化状況を関数として表したものである。
【0028】
これにより、電気設備に供給される負荷電流量と、電気設備の周囲温度と、に基づいて、過負荷運転状態を検出することで、従来の回帰分析を用いた劣化状況の推定方法と比較して、精度よく電気設備の周囲環境に応じた推定寿命を算出することができる。
この結果、電気設備の劣化状況を精度よく推定することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る電気設備劣化推定装置によれば、電気設備の劣化状況を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電気設備劣化推定装置の構成を示す制御ブロック図。
【
図2】
図1の電気設備劣化推定装置に含まれる寿命計算演算部における推定寿命の算出に用いられる経過年数に対する期待寿命の関数の一例を示すグラフ。
【
図3】
図1の電気設備劣化推定装置に含まれる寿命計算テーブル変更設定部によって設定される過負荷運転状態の上限の負荷率を示す過負荷運転寿命計算テーブルの一例を示す図。
【
図4】
図1の電気設備劣化推定装置に含まれる寿命計算テーブル変更設定部によって設定される正規寿命を期待する場合の過負荷運転状態の上限の負荷率を示す過負荷運転寿命計算テーブルの一例を示す図。
【
図5】
図1の電気設備劣化推定装置に含まれる寿命計算テーブル変更設定部によって設定される寿命を犠牲にする場合の過負荷運転状態の上限の負荷率を示す過負荷運転寿命計算テーブルの一例を示す図。
【
図6】
図1の電気設備劣化推定装置に含まれる寿命損失パラメータ変更要否判断部によって変更の要否が判断される劣化率を含む寿命損失パラメータテーブルの一例を示す図。
【
図7】
図1の電気設備劣化推定装置に含まれる寿命計算演算部によって用いられる経過年数に対する過負荷運転状態の累積回数を含む過負荷運転累積回数計算テーブルの一例を示す図。
【
図8】
図1の電気設備劣化推定装置に含まれる警報出力要否判定部によって警報の要否が判断される警報内容を含む警報出力閾値テーブルの一例を示す図。
【
図9】
図1の電気設備劣化推定装置に含まれる寿命計算演算部によって演算される経過年数に対する期待寿命の関数のうち、劣化率(傾き)が異なる関数の一例を示すグラフ。
【
図10】
図1の電気設備劣化推定装置に含まれる寿命計算演算部によって演算される経過年数に対する期待寿命の関数のうち、劣化率(傾き)が経過年数に伴い変化した場合の関数の一例を示すグラフ。
【
図11】
図1の電気設備劣化推定装置に含まれる過負荷運転時間検出部が過負荷運転状態を検出するための運転時間に対する負荷率の関係の一例を示す図。
【
図12】
図1の電気設備劣化推定装置に含まれる過負荷運転時間検出部が過負荷運転状態を検出するための運転時間に対する周囲温度の関係の一例を示す図。
【
図13】
図1の電気設備劣化推定装置によって実施される電気設備劣化推定方法の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一実施形態に係る電気設備劣化推定装置10および電気設備劣化推定方法について、
図1~
図13を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態では、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
また、出願人は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0032】
(1)電気設備劣化推定装置10の構成
本実施形態に係る電気設備劣化推定装置10は、変圧器等の電気設備に供給される負荷電流量と、変圧器(電気設備)の周囲温度と、に基づいて過負荷運転状態を検出し、検出された過負荷運転状態に応じて、予め設定された変圧器(電気設備)の寿命損失の度合いを示す劣化率の変更の要否を判断することで、変圧器(電気設備)の推定寿命を算出する。
【0033】
また、本実施形態の電気設備劣化推定装置10は、
図1に示すように、電源部11と、データ取得部12と、演算処理部13と、記憶部14と、設定部15と、グラフ作成処理部16と、グラフ表示部17と、制御部18と、警報メール送信部19と、を備えている。
電力情報D1は、例えば、変圧器に供給される負荷電流量、電流、電圧、電力、電力量等を含むデータである。
【0034】
周囲温度情報D2は、例えば、変圧器の周囲温度を含むデータである。
過負荷運転状態は、変圧器毎に定められた定格負荷(定格電圧や定格電流、および定格周囲温度)を上回った状態で、一定の時間使用されることを指す。
劣化率は、変圧器の劣化の度合いを定量的に示したものであり、例えば、変圧器の利用経過年数に対して変圧器の期待寿命をプロットして寿命計算式を作成した場合の傾きを示す。
【0035】
寿命計算式は、変圧器の劣化状況を関数として表したものである。
ここで、
図2のグラフは、例えば、横軸を変圧器の利用経過時間tとし、縦軸を変圧器の期待寿命Yとしてプロットされた寿命計算式F1を示す。このとき、寿命計算式F1は、下記関係式(1)に基づいてプロットされる。
Y=a×t
n+Yt
0・・・・・(1)
すなわち、劣化率は、上記関係式(1)に基づいて算出される変圧器の利用経過時間t
0からt
nにおける変圧器の期待寿命Yを表した寿命計算式F1の傾きaを意味する。また、寿命計算式F1の傾きaは、変圧器の年間の寿命損失の度合いを示す。
【0036】
そして、電気設備劣化推定装置10は、
図1に示すように、データ送信装置2と接続されている。
データ送信装置2は、例えば、キーボード、タッチパネル、センサ接続用通信エッジ端末等であって、電力量センサ3から受け付けた電力情報D1と、温度センサ4から受け付けた周囲温度情報D2と、を電気設備劣化推定装置10内のデータ取得部12に送信する。
【0037】
電力量センサ3は、例えば、変圧器等が消費する電力を測定する計測装置であって、電気設備劣化推定装置10の外部に設けられている。また、電力量センサ3は、変圧器に供給される負荷電流量等を測定し、測定結果である電力情報D1をデータ送信装置2に送信する。
温度センサ4は、例えば、変圧器等の周辺の温度を測定する計測装置であって、電気設備劣化推定装置10の外部に設けられている。また、温度センサ4は、変圧器の周囲温度を測定し、測定結果である周囲温度情報D2をデータ送信装置2に送信する。
【0038】
電源部11は、電気設備劣化推定装置10内の各構成部に電力を供給することで、電気設備劣化推定装置10内の各構成部を駆動させる。
データ取得部12は、データ送信装置2から入力された変圧器に供給される負荷電流量を含む電力情報D1と、変圧器の周囲の温度を含む周囲温度情報D2とを取得する。
演算処理部13は、データ取得部12から取得した電力情報D1と、周囲温度情報D2と、に基づいて、推定寿命を算出する。また、演算処理部13は、運転時間計測部31と、過負荷運転時間検出部32と、寿命損失パラメータ変更要否判断部33と、寿命計算演算部34と、を有している。
【0039】
記憶部14は、変圧器の過負荷運転状態を定量的に示すパラメータを含む過負荷運転寿命計算テーブルD3と、変圧器の劣化率の候補を含む寿命損失パラメータテーブルD4と、変圧器が過負荷運転状態になった回数を年ごとに集計した過負荷運転累積回数計算テーブルD5と、変圧器の推定寿命に応じた複数の警報内容を含む警報出力閾値テーブルD6とを保存する。
【0040】
ここでは、過負荷運転寿命計算テーブルD3は、変圧器が許容できる過負荷運転状態の上限の負荷率を示すデータである。また、過負荷運転寿命計算テーブルD3は、後述する寿命計算テーブル変更設定部51によって設定され、記憶部14に保存される。
ここで、
図3に示す過負荷運転寿命計算テーブルD3は、変圧器の寿命を正規寿命に対してX%犠牲にして変圧器を過負荷運転する場合における、過負荷運転寿命計算テーブルD3である。ここでは、
図3に示す過負荷運転寿命計算テーブルD3は、例えば、過負荷以前の軽負荷に対する負荷率と、等価周囲温度と、過負荷時間と、上記条件に対応した過負荷運転状態の上限の負荷率が示されている。このとき、例えば、変圧器の軽負荷運転状態が100%であるという前提で、当該変圧器が過負荷運転状態になった時の周囲温度が40℃、過負荷運転状態が4時間であった場合に、過負荷運転状態の上限の負荷率は、σ34である。
【0041】
なお、
図3に示す過負荷運転寿命計算テーブルD3に示される値(α、β、γ、σ)は、電気設備劣化推定装置10の使用者によって任意に設定されてよい。
また、
図4に示す過負荷運転寿命計算テーブルD3は、変圧器の寿命を犠牲にすることなく、正規の寿命を期待して変圧器を過負荷運転する場合における、過負荷運転寿命計算テーブルD3である。このとき、例えば、過負荷以前の変圧器の軽負荷運転状態が100%であるという前提で、当該変圧器が過負荷運転状態になった時の周囲温度が40℃、過負荷運転状態が4時間であった場合に、過負荷運転状態の上限の負荷率は範囲外である。すなわち、変圧器の寿命を犠牲にすることなく、正規の寿命を期待して変圧器を過負荷運転する場合の変圧器が許容できる過負荷運転状態の上限の負荷率を超えている状態を示す。
【0042】
さらに、
図5に示す過負荷運転寿命計算テーブルD3は、変圧器の寿命を正規寿命に対して1%犠牲にして1年間に1回だけ変圧器を過負荷運転する場合における、過負荷運転寿命計算テーブルD3である。このとき、例えば、過負荷以前の変圧器の軽負荷運転状態が100%であるという前提で、当該変圧器が過負荷運転状態になった時の周囲温度が40℃、過負荷運転状態が4時間であった場合に、過負荷運転状態の上限の負荷率は、117%である。すなわち、変圧器の寿命を正規寿命に対して1%犠牲にして変圧器を過負荷運転する場合の変圧器が許容できる過負荷運転状態の上限の負荷率を超えていない状態を示す。
【0043】
寿命損失パラメータテーブルD4は、変圧器の寿命損失を意味する変圧器の劣化の度合いを定量的に示した劣化率を含むデータである。また、寿命損失パラメータテーブルD4は、後述する寿命損失パラメータ設定部52によって設定され、記憶部14に保存される。
ここで、寿命損失パラメータテーブルD4は、
図6に示すように、例えば、関係式(1)に基づいてプロットされる寿命計算式の傾き(劣化率)の候補を示す。このとき、寿命計算式の傾き(劣化率)は、基準とする寿命計算式の傾きSと、犠牲にする寿命の比率Xと、を用いて下記関係式に基づいて算出される。
【0044】
a=-S-X・・・・・(2)
このとき、上記関係式(2)に基づいて算出されるパターン1における値は、a=-3となっており、劣化率が-3%であることを意味する。また、パターン2における値は、a=-4となっており、劣化率が-4%であることを意味する。
過負荷運転累積回数計算テーブルD5は、変圧器が過負荷運転状態になった回数を年ごとに集計したデータである。
【0045】
ここで、過負荷運転累積回数計算テーブルD5は、
図7に示すように、例えば、経過年数は変圧器の利用年数、過負荷運転年間件数は1年間で変圧器が過負荷運転状態になった回数を示す。また、過負荷運転累積回数は、1年に1回でも過負荷運転状態が検出された場合に1件追加される。さらに、過負荷運転累積回数計算テーブルD5は、2年目には変圧器が過負荷運転状態にならず、過負荷運転累積回数に変化がないことを示している。このとき、最下行のN年目は、過負荷運転年間件数がK件、過負荷運転累積回数がR回であることを示している。
【0046】
警報出力閾値テーブルD6は、変圧器の推定寿命に応じた複数の警報内容を含むデータである。また、警報出力閾値テーブルD6は、後述する警報出力閾値設定部53によって設定され、記憶部14に保存される。
ここで、警報出力閾値テーブルD6は、
図8に示すように、例えば、警報レベル1は変圧器の正規寿命に対する推定寿命が20%となった時に出力される「変圧器の更新計画策定要」という警報内容である。
【0047】
警報レベル2は変圧器の正規寿命に対する推定寿命が10%となった時に出力される「変圧器の更新手配・工事日設定要」という警報内容である。
警報レベル3は変圧器の正規寿命に対する推定寿命が5%となった時に出力される「直ちに変圧器の停止・緊急点検要」という警報内容である。
なお、記憶部14は、データ取得部12が取得した電力情報D1と、周囲温度情報D2とが保存されてもよい。
【0048】
これにより、電気設備劣化推定装置10内に設けられた記憶部14に保存された各種データを用いて、変圧器の劣化状況を精度よく推定することができる。
設定部15は、過負荷運転寿命計算テーブルD3、寿命損失パラメータテーブルD4に含まれる劣化率、警報出力閾値テーブルD6に含まれる警告内容、を設定する。また、設定部15は、寿命計算テーブル変更設定部51と、寿命損失パラメータ設定部52と、警報出力閾値設定部53と、を有している。
【0049】
グラフ作成処理部16は、変圧器の推定寿命の算出結果に基づいて、算出結果を示すグラフを作成する。
具体的には、グラフ作成処理部16は、警報出力閾値設定部53によって算出された推定寿命の算出結果に基づいて、寿命計算式が含まれるグラフを作成する。
ここで、グラフ作成処理部16は、
図9に示すように、例えば、関係式(1)に基づいて、横軸を変圧器の利用経過時間tとし、縦軸を変圧器の期待寿命Yとして、寿命計算式F2および寿命計算式F3をプロットする。このとき、寿命計算式F2は、例えば、
図6に示されるパターン1のa=-3として傾きを設定した場合の寿命計算式ある。また、寿命計算式F3は、例えば、
図6に示されるパターン2のa=-4として傾きを設定した場合の寿命計算式である。
【0050】
すなわち、各変圧器を設置した時期が同じである場合に、寿命計算式F3は寿命計算式F2と比較してaの値が小さく傾きが急勾配となるため、寿命計算式F3で示される変圧器の推定寿命は短くなる。
また、グラフ作成処理部16は、
図9に示すように、例えば、変圧器の交換時期を知らせる警報の閾値をプロットしてもよい。
【0051】
さらに、グラフ作成処理部16は、
図10に示すように、例えば、関係式(1)に基づいて、横軸を変圧器の利用経過時間tとし、縦軸を変圧器の期待寿命Yとして、寿命計算式F4および寿命計算式F5をプロットする。このとき、寿命計算式F4は、最初に変圧器を設置した時期から10年目まではa=-3として傾きが設定されている。つまり、関係式(1)に基づいて計算すると、寿命計算式F4の10年目の正規寿命に対する推定寿命は、10×-3%+100%=70%となる。
【0052】
また、寿命計算式F5は、最初に変圧器を設置した時期から11年目まではa=-4として傾きが設定されている。つまり、関係式(1)に基づいて計算すると、寿命計算式F5の11年目の正規寿命に対する推定寿命は、11×-4%+100%=56%となる。
ここで、グラフ作成処理部16は、例えば、寿命損失パラメータ変更要否判断部33によって10年目を境に傾きaを変更する必要があると判断された場合、10年目以前は寿命計算式F4をプロットし、10年目以後は寿命計算式F5をプロットする。また、グラフ作成処理部16は、例えば、再度、寿命損失パラメータ変更要否判断部33によって、11年目を境に傾きaを変更する必要があると判断された場合、上記同様に、変更された寿命計算式(寿命計算式F4または寿命計算式F5)をプロットする。このとき、変更された傾きaを再度変更する場合とは、例えば、同じ負荷率での運転状態であっても、周囲温度が低下することで、異なる条件を適用した過負荷運転状態の上限の負荷率が抽出された場合等が想定される。
【0053】
これにより、グラフ作成処理部16によって作成されたグラフから変圧器を設置した時期から長期間にわたる変圧器の劣化状況を精度よく把握することができる。
グラフ表示部17は、例えば、グラフ作成処理部16によって作成されたグラフを電気保安業者等が所有するPC(Personal Computer)に表示する。
制御部18は、警報出力閾値設定部53によって設定された警報内容に基づいて、推定寿命に応じた警報を出力する。また、制御部18は、警報出力要否判定部81と、警報出力制御部82と、を有している。
【0054】
警報メール送信部19は、例えば、警報出力制御部82によって出力された警報内容が含まれる電子メールを電気設備劣化推定装置10の使用者が利用するスマートフォン等に送信する。
運転時間計測部31は、データ取得部12から取得した電力情報D1と周囲温度情報D2に基づいて、変圧器の運転時間を計測する。
【0055】
ここで、変圧器は、
図11に示すように、例えば、計測開始時間から10時までは負荷率が100%の状態で運転しており、10時から14時の間は負荷率が115%の状態で運転しており、14時以降は負荷率が100%の状態で運転している。
ここで、負荷率は、例えば、最大許容負荷電流量に対してどのくらいの負荷電流が変圧器内に流れているかを示した割合である。また、変圧器を負荷率が高い状態で長時間運転した場合に、変圧器の寿命は短縮する傾向がある。
【0056】
また、変圧器は、
図12に示すように、例えば、計測開始時間から10時までは周囲温度が40℃以下の環境下で運転しており、10時から14時の間は周囲温度が40℃から45℃の環境下で運転しており、14時以降は周囲温度が45℃から徐々に低下する環境下で運転している。
このように、運転時間計測部31は、電力情報D1に基づいて、負荷率に対応する変圧器の運転時間を計測する。また、運転時間計測部31は、周囲温度情報D2に基づいて、周囲温度に対応する変圧器の運転時間を計測する。
【0057】
過負荷運転時間検出部32は、変圧器に供給される負荷電流量と、変圧器が許容する負荷電流量の最大量を示す最大許容負荷電流量と、に基づいて算出される変圧器の負荷状態を定量的に示す負荷率を参照して、変圧器の過負荷運転状態を検出する。このとき、過負荷運転時間検出部32は、変圧器が許容する定格負荷以下の負荷がかかっている状態を示す軽負荷運転状態における負荷率を超える場合に、変圧器の過負荷運転状態を検出する。
【0058】
ここでは、過負荷運転時間検出部32は、運転時間計測部31によって計測された負荷率に対応する変圧器の運転時間と、周囲温度に対応する運転時間と、に基づいて、変圧器が許容する定格負荷以上の負荷がかかっている状態を示す過負荷運転状態を検出する。
このとき、寿命損失パラメータ変更要否判断部33は、過負荷運転時間検出部32の情報に基づき、以前の軽負荷状態と現在の高負荷状態を把握した後、過負荷運転寿命計算テーブルD3で定義する周囲温度(等価周囲温度)に該当する状態で、定格以上の負荷率による運転状態、すなわち定格以上の負荷率、周囲温度、運転時間の3つの条件が完全に一致する運転状態の変化を検出したときに、過負荷運転状態にあると判断する。
図11に示すように、例えば、過負荷運転時間検出部32は、運転時間計測部31によって計測された運転時間のうち、変圧器が100%の軽負荷率から115%の高負荷率に変化した状態を検出する。
【0059】
さらに、過負荷運転時間検出部32は、
図12に示すように、例えば、変圧器の過負荷運転状態である10時から14時の間の変圧器の周囲温度に基づいて、寿命計算テーブル変更設定部51によって設定される過負荷運転寿命計算テーブルD3に対応する過負荷運転状態の上限の負荷率を抽出する。
これにより、変圧器の軽負荷運転状態を検出することなく、変圧器の過負荷運転状態を適切に検出することで、変圧器の劣化状況を推定することができる。
【0060】
寿命計算テーブル変更設定部51は、変圧器の正規の寿命を期待して過負荷運転状態にする場合と、変圧器の寿命が任意の割合で短縮されるものとして過負荷運転状態にする場合と、に応じて変圧器の過負荷運転状態を定量的に示すパラメータを含む過負荷運転寿命計算テーブルD3を設定する。また、設定された過負荷運転寿命計算テーブルD3は、記憶部14に保存される。
【0061】
ここでは、寿命計算テーブル変更設定部51は、変圧器が正規寿命に対して寿命をX%短縮するものとして任意の回数だけ過負荷運転をする場合に、
図3に示す過負荷運転寿命計算テーブルD3を設定する。また、寿命計算テーブル変更設定部51は、変圧器が正規寿命を期待しながら1日に1回だけ過負荷運転をする場合に、
図4に示す過負荷運転寿命計算テーブルD3を設定する。さらに、寿命計算テーブル変更設定部51は、変圧器が正規寿命に対して寿命を1%短縮するものとして1年に1回だけ過負荷運転をする場合に、
図5に示す過負荷運転寿命計算テーブルD3を設定する。
【0062】
これにより、変圧器の利用年数、使用頻度、設置地域および季節等に応じて適切な劣化状況を推定することができる。
寿命損失パラメータ変更要否判断部33は、過負荷運転時間検出部32において検出された過負荷運転状態(もしくは軽負荷運転状態)に応じて、変圧器の過去の利用状況に基づいて予め設定された変圧器の寿命損失の度合いを示す劣化率の変更の要否を判断する。
【0063】
ここでは、過負荷運転時間検出部32は、運転時間計測部31によって計測された負荷率に対応する変圧器の運転時間と、周囲温度に対応する運転時間と、に基づいて、変圧器が許容する定格負荷以上の負荷がかかっている状態を示す過負荷運転状態を検出する。
また、寿命損失パラメータ変更要否判断部33は、過負荷運転時間検出部32の情報に基づき以前の軽負荷状態と現在の高負荷状態を把握した後、過負荷運転寿命計算テーブルD3を参照し、定格以上の負荷率による運転状態、周囲温度、運転時間の3つの条件完全一致となる変化(もしくは3つの条件不一致となる変化)を検出したときに、軽負荷状態から過負荷運転状態変化した判断する。(もしくは、過負荷状態から定格未満の負荷状態の軽負荷状態に変化したと判断する。)
この判断の後に、寿命損失パラメータ変更要否判断部33は、過負荷運転累積回数計算テーブルD5を参照し、寿命計算式の傾き、すなわち寿命損失パラメータである劣化率の変更要否判断を行う。
【0064】
ここで、寿命損失パラメータ変更要否判断部33は、
図11および
図12に示すように、例えば、通常時の負荷率が100%、過負荷運転時の負荷率が115%、変圧器の過負荷運転時間が4時間、当該時間の周囲温度が40℃~45℃である場合に、
図5に示す過負荷運転寿命計算テーブルD3には117%とされているため過負荷運転条件に完全に一致していると認識し、軽負荷運転状態から過負荷状態へ運転状態の変化を判断する。この運転状態変化の判断の後に、寿命損失パラメータ変更要否判断部33は、過負荷運転累積回数計算テーブルD5で定義する過負荷運転年間検出回数と、過負荷運転累積回数と、を参照し、寿命計算式の傾き、すなわち変圧器の寿命の変化要否を判断する。
【0065】
このとき、寿命損失パラメータ変更要否判断部33は、予め設定された劣化率がパターン1に含まれる劣化率-3%(寿命計算式の傾きa=-3)であった場合に、パターン2に含まれる劣化率-4%(寿命計算式の傾きa=-4)に変更すると判断する。
また、寿命損失パラメータ変更要否判断部33は、例えば、過負荷運転状態が検出されず、通常時の負荷率が50%、周囲温度が50℃である場合に、
図5に示す過負荷運転寿命計算テーブルD3には該当する上限の負荷率が含まれないため、劣化率を変更しないと判断する。
【0066】
さらに、寿命損失パラメータ変更要否判断部33は、例えば、通常時の負荷率が100%、過負荷運転時の負荷率が115%、変圧器の過負荷運転時間が4時間、当該時間の周囲温度が40℃である場合に、
図4に示す過負荷運転寿命計算テーブルD3には該当する上限の負荷率が含まれないため、劣化率を変更しないと判断する。
寿命損失パラメータ設定部52は、変圧器が犠牲にする寿命の比率に基づいて、劣化率を設定する。
【0067】
ここでは、寿命損失パラメータ設定部52は、
図6に示すように、例えば、パターンごとに劣化率(寿命計算式の傾きa)を設定する。また、設定された劣化率を含む寿命損失パラメータテーブルD4は、記憶部14に保存される。
これにより、変圧器の利用状況や周囲環境に応じた劣化率を設定することで、精度よく変圧器の劣化状況を推定することができる。
【0068】
寿命計算演算部34は、寿命損失パラメータ変更要否判断部33において判断された劣化率に基づいて、変圧器の推定寿命を算出する。
ここでは、寿命計算演算部34は、関係式(1)のaに、寿命損失パラメータ変更要否判断部33において判断された劣化率を代入し、また、関係式(1)のtに変圧器の利用経過時間を代入することで、経過時間ごとの推定寿命を算出する。また、グラフ作成処理部16において関係式(1)を用いて寿命計算式がプロットされた場合に、当該寿命計算式が変圧器の利用経過時間を示す横軸と交差する点が推定寿命となる。
【0069】
このとき、寿命計算演算部34は、変圧器が過負荷運転状態になった回数を把握しているため、年ごとの変圧器が過負荷運転状態になった回数を示す過負荷運転累積回数計算テーブルD5を作成し、記憶部14に保存してもよい。
これにより、グラフ作成処理部16は、例えば、寿命計算演算部34によって算出された変圧器の推定寿命の算出結果に基づいて、
図9~10に示すような寿命計算式が含まれるグラフを作成することができる。
【0070】
警報出力閾値設定部53は、変圧器の推定寿命に応じた複数の警報内容と、適用される警報内容を判定する閾値とを設定する。
ここで、閾値は正規寿命に対する推定寿命の割合である。
ここでは、警報出力閾値設定部53は、
図8に示すように、例えば、正規寿命に対する推定寿命が5%、10%、20%となった時に出力される警報内容を設定する。また、設定された警報内容を含む警報出力閾値テーブルD6は、記憶部14に保存される。
【0071】
なお、当該閾値は、例えば、25%、50%、75%のように、電気設備劣化推定装置10の使用者によって任意に定められてもよい。
これにより、変圧器の劣化状況に応じて、適切な時期に変圧器の点検や修理等の措置をとることができる。
警報出力要否判定部81は、警報出力閾値設定部53において設定された警報内容と、適用される警報内容を判定する閾値と、に応じた警報内容の出力の要否を判定する。
【0072】
ここでは、警報出力要否判定部81は、警報出力閾値設定部53によって警報内容が設定され、記憶部14に保存された警報出力閾値テーブルD6に基づいて、推定寿命に応じた警報内容の出力の要否を判定する。
これにより、変圧器の寿命が近づく度に適切な点検や修理等の措置をとることができる。
警報出力制御部82は、警報出力要否判定部81において判定された警報内容を出力する。
これにより、警報出力制御部82は、変圧器の劣化状況に応じて適切な警報内容を出力することができる。
【0073】
<電気設備劣化推定方法>
本実施形態の電気設備劣化推定装置10は、
図13に示すフローチャートに従って、電気設備劣化推定方法を実行する。また、
図13に示すフローチャートは、電気設備劣化推定方法を実行するための事前準備としてステップS1からステップS4までは各種テーブルの設定を行い、その後ステップS5からステップS18で電気設備劣化推定方法を実行する。
【0074】
すなわち、本実施形態の電気設備劣化推定方法では、
図13に示すように、ステップS1において、寿命計算テーブル変更設定部51が、変圧器の過負荷運転状態を定量的に示すパラメータを含む過負荷運転寿命計算テーブルD3を設定する。
次に、ステップS2では、寿命損失パラメータ設定部52が、寿命計算式の傾きである劣化率が含まれる寿命損失パラメータテーブルD4を設定する。
【0075】
次に、ステップS3では、記憶部14が、予め設定された年間の過負荷運転件数および累積の検出回数を含む過負荷運転累積回数計算テーブルD5を保存する。
このとき、例えば、寿命計算演算部34が、変圧器が過負荷運転状態になった回数を把握しているため、過負荷運転累積回数計算テーブルD5を作成し、記憶部14に保存してもよい。
【0076】
次に、ステップS4では、警報出力閾値設定部53が、寿命推定に伴い警報を出力するための警報出力閾値テーブルD6を設定する。
次に、ステップS5では、データ取得部12が、電力量センサ3において計測された電力情報D1と、温度センサ4において計測された周囲温度情報D2とをデータ送信装置2を介して取得する。
【0077】
次に、ステップS6では、ステップS5において取得された電力情報D1および周囲温度情報D2をもとに、運転時間計測部31が、変圧器の運転時間を計測する。
次に、ステップS7では、過負荷運転時間検出部32が、寿命計算テーブル変更設定部51によって設定された過負荷運転寿命計算テーブルD3を参照する。
次に、ステップS8では、過負荷運転時間検出部32が、ステップS5において取得された電力情報D1、周囲温度情報D2、およびステップS6において計測された運転時間を、ステップS7において参照された過負荷運転寿命計算テーブルD3に含まれる各種項目(過負荷以前の軽負荷、等価周囲温度、運転時間)と照合し、運転条件の変化、すなわち軽負荷運転から過負荷運転の変化、もしくは過負荷運転から軽負荷運転の変化のいずれかに該当するかについて判定を行う。
【0078】
ここで、運転状態の変化に該当すると判定された場合には、ステップS9に進み、運転状態の変化に該当しないと判定された場合には、ステップS5へ戻ってデータ取得を継続する。
次に、ステップS9では、ステップS8において運転条件の変化に該当すると判定されたため、3つの条件、すなわち、定格負荷以上条件、周囲温度条件、運転時間が過負荷運転条件に完全一致するか否か、もしくは条件不一致かについて、
図1に示す寿命損失パラメータ変更要否判断部33が判定を行う。
【0079】
ここで、上記条件に完全に一致すると判定された場合には、ステップS10に進み、上記条件に不一致と判定された場合には、ステップS12に進む。
次に、ステップS10では、ステップS9において上記条件が完全に一致すると判定されたため、寿命損失パラメータ変更要否判断部33が、条件が完全に一致する過負荷運転が過去1年間に何回検出されたか、また経過年数あたり何件検出されたかについて過負荷運転累積回数計算テーブルD5を参照する。
【0080】
次に、ステップS11では、ステップS9において判定された条件が完全に一致する過負荷運転がステップS10において過去1年間に何回検出されたか、また経過年数あたり何件検出されたかについて過負荷運転累積回数計算テーブルD5が参照された後、寿命損失パラメータ変更要否判断部33が、変圧器の劣化状況を関数として表す寿命計算式に過負荷条件の劣化率の変更を適用して、ステップS12へ進むとともに、ステップS5へ戻って、再び、電力情報および周囲温度情報を取得する。
【0081】
次に、ステップS12では、ステップS9において上記条件が不一致であると判定されたため、寿命損失パラメータ変更要否判断部33が、条件が完全に一致する過負荷運転が過去1年間に何回検出されたか、また経過年数あたり何件検出されたかについて過負荷運転累積回数計算テーブルD5を参照する。
次に、ステップS13では、寿命損失パラメータ変更要否判断部33が、ステップS9において判定された条件が不一致となる過負荷運転が検出された時期が前回判定時期より1年以上経過しているか否かを判定する。
【0082】
ここで、条件が不一致となる過負荷運転が検出された時期が前回判定時期から1年以上経過している場合には、ステップS14へ進み、条件が不一致となる過負荷運転が検出された時期が前回判定時期より1年未満である場合は、ステップS5へ戻ってデータ取得を継続する。
次に、ステップS14では、ステップS13において条件が不一致となる過負荷運転が検出された時期が前回判定時期から1年以上経過していると判定されたため、寿命損失パラメータ変更要否判断部33が、寿命計算式の傾き(劣化率)を基準劣化率へもどす変更を適用した後、ステップS5へ戻って、再び、電力情報および周囲温度情報を取得する。
【0083】
次に、ステップS15では、ステップS11もしくはステップS14において寿命損失パラメータ変更要否判断部33によって寿命計算式に過負荷条件の劣化率の変更が適用された結果に基づいて、寿命計算演算部34が、変圧器の推定寿命を算出する。
次に、ステップS16では、グラフ作成処理部16が、ステップS15において寿命計算演算部34が算出した算出結果に基づいて、寿命計算式をグラフにプロットする。また、グラフ表示部17が、グラフ作成処理部16によって作成されたグラフをPC等に表示する。
【0084】
次に、ステップS17では、警報出力要否判定部81が、例えば、警報出力閾値設定部53によって設定された変圧器の正規寿命に対する推定寿命に対応する警報内容の出力の要否を判定する。ここで、警報内容を出力する場合は、ステップS18に移行する。
次に、ステップS18では、警報出力要否判定部81によって警報内容を出力すると判定されたため、警報メール送信部19が、警報出力制御部82が出力した警報内容を電気設備劣化推定装置10の使用者が利用するスマートフォン等に送信する。
【0085】
<主な特徴>
本実施形態の電気設備劣化推定装置10は、以上のように、データ取得部12と、過負荷運転時間検出部32と、寿命損失パラメータ変更要否判断部33と、寿命計算演算部34と、を備えている。データ取得部12は、電気設備に供給される負荷電流量を含む電力情報D1と、電気設備の周囲の温度を含む周囲温度情報D2と、を取得する。過負荷運転時間検出部32は、データ取得部12において取得された電力情報D1と、周囲温度情報D2と、に基づいて、電気設備が許容する定格負荷以上の負荷がかかっている状態を示す過負荷運転状態を検出する。寿命損失パラメータ変更要否判断部33は、過負荷運転時間検出部32において検出された過負荷運転状態に応じて、電気設備の過去の利用状況に基づいて予め設定された電気設備の寿命損失の度合いを示す劣化率の変更の要否を判断する。寿命計算演算部34は、寿命損失パラメータ変更要否判断部33において判断された劣化率に基づいて、電気設備の推定寿命を算出する。
【0086】
これにより、電気設備に供給される負荷電流量と、電気設備の周囲温度と、に基づいて、過負荷運転状態を検出することで、従来の回帰分析を用いた劣化状況の推定方法と比較して、精度よく電気設備の周囲環境に応じた推定寿命を算出することができる。
この結果、電気設備の劣化状況を精度よく推定することができる。
【0087】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、電気設備劣化推定装置および電気設備劣化推定方法として、本発明を実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上述した電気設備劣化推定方法をコンピュータに実行させる電気設備劣化推定プログラムとして本発明を実現してもよい。
【0088】
この電気設備劣化推定プログラムは、電気設備劣化推定装置に搭載されたメモリ(記憶部)に保存されており、CPUがメモリに保存された電気設備劣化推定プログラムを読み込んで、ハードウェアに各ステップを実行させる。より具体的には、CPUが電気設備劣化推定プログラムを読み込んで、上述したデータ取得ステップと、過負荷運転時間検出ステップと、寿命損失パラメータ変更要否判断ステップと、寿命計算演算ステップと、を実行することで、上記と同様の効果を得ることができる。
また、本発明は、電気設備劣化推定装置のプログラムを保存した記録媒体として実現されてもよい。
【0089】
(B)
上記実施形態では、寿命損失パラメータ設定部52は、基準とする寿命計算式の傾きと、犠牲にする寿命の比率とに基づいて、寿命損失パラメータテーブルD4に含まれる劣化率を設定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0090】
例えば、寿命損失パラメータ設定部は、上述した項目に加えて、さらに任意の項目に基づいて、劣化率を設定してもよい。
この場合でも、例えば、傾きが基準より急勾配や緩勾配となった寿命計算式を用いて、利用状況に応じた推定寿命を算出することができる。
【0091】
(C)
上記実施形態では、警報内容の出力の要否を判定する警報出力要否判定部81が、電気設備劣化推定装置10内に設けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、警報内容の出力の要否を判定しなくても、警報出力閾値設定部によって定められた推定寿命に到達した時点で、警報出力制御部によって強制的に警報が出力される構成としてもよい。つまり、本発明の電気設備劣化推定装置は、警報出力要否判定部を備えていない構成であってもよい。
【0092】
(D)
上記実施形態では、警報出力要否判定部81において判定された警報内容を出力する警報出力制御部82が、電気設備劣化推定装置10内に設けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、警報が出力されなくても、変圧器の使用状況や経過年数等からおおよその劣化状況を把握することができる場合には、本発明の電気設備劣化推定装置は、警報出力制御部を備えていない構成であってもよい。
【0093】
(E)
上記実施形態では、グラフ作成処理部16が電気設備劣化推定装置10内に設けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、電気設備劣化推定装置の使用者は、作成されたグラフを見なくても、寿命計算演算部の計算結果に基づいて、電気設備のおおよその劣化状況を推定することができる。このため、本発明の電気設備劣化推定装置は、グラフ作成処理部を備えていない構成であってもよい。
【0094】
(F)
上記実施形態では、記憶部14が電気設備劣化推定装置10内に設けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、記憶部は、電気設備劣化推定装置の外部に設けられたサーバ等に設けられてもよい。つまり、本発明の電気設備劣化推定装置は、外部の記憶装置等から必要なデータを取得することができる構成であれば、記憶部を備えていない構成であってもよい。
【0095】
(G)
上記実施形態では、劣化状況を推定する対象となる電気設備として、変圧器を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、劣化状況を推定する対象となる電気設備としては、変圧器以外に、進相コンデンサ、リアクトル等の他の電気設備であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の電気設備劣化推定装置は、電気設備の劣化状況を精度よく推定することができるという効果を奏することから、電気設備の劣化状況を推定する各種装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
2 データ送信装置
3 電力量センサ
4 温度センサ
10 電気設備劣化推定装置
11 電源部
12 データ取得部
13 演算処理部
14 記憶部
15 設定部
16 グラフ作成処理部
17 グラフ表示部
18 制御部
19 警報メール送信部
31 運転時間計測部
32 過負荷運転時間検出部
33 寿命損失パラメータ変更要否判断部
34 寿命計算演算部
51 寿命計算テーブル変更設定部
52 寿命損失パラメータ設定部
53 警報出力閾値設定部
81 警報出力要否判定部
82 警報出力制御部
D1 電力情報
D2 周囲温度情報
D3 過負荷運転寿命計算テーブル
D4 寿命損失パラメータテーブル
D5 過負荷運転累積回数計算テーブル
D6 警報出力閾値テーブル
F1 寿命計算式
F2 寿命計算式
F3 寿命計算式
F4 寿命計算式
F5 寿命計算式