(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092604
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】支援装置、プラントシステム、支援プログラム及び支援方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240701BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240701BHJP
【FI】
G05B23/02 G
G05B23/02 T
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208655
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲崎▼ 英里子
(72)【発明者】
【氏名】門脇 正法
【テーマコード(参考)】
3C223
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA03
3C223BB17
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB07
3C223FF02
3C223FF03
3C223FF05
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF22
3C223FF23
3C223FF42
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH29
5L049CC03
5L049DD02
5L050CC03
5L050DD02
(57)【要約】
【課題】プラントの動作環境に応じたシミュレーションを実行可能にする。
【解決手段】
本発明の一態様に係る支援装置1は、プラント2に設置されたセンサから、特定の動作環境におけるプラント2の運転状態に関する第1プロセス情報140aを取得する第1取得部100aと、一以上の条件を含む第1条件群142aに基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラント2の運転状態に関する第2プロセス情報140bを取得する第2取得部100bと、第1プロセス情報140aと、第2プロセス情報140bとに基づいて、特定の動作環境におけるプラント2の運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群142bを推定する推定部106と、第2条件群142bに関する情報を表示する表示部112と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントに設置されたセンサから、特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関する第1プロセス情報を取得する第1取得部と、
一以上の条件を含む第1条件群に基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラントの運転状態に関する第2プロセス情報を取得する第2取得部と、
前記第1プロセス情報と、前記第2プロセス情報とに基づいて、前記特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群を推定する推定部と、
前記第2条件群に関する情報を表示する表示部と、
を備える、支援装置。
【請求項2】
前記第1条件群と少なくとも一部が異なる第3条件群に基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラントの運転状態に関する第3プロセス情報を取得する第3取得部、をさらに備え、
前記第1プロセス情報と前記第2プロセス情報との差分は、前記第1プロセス情報と前記第3プロセス情報との差分よりも小さい、請求項1に記載の支援装置。
【請求項3】
前記第1条件群の少なくとも一部の条件を選択する選択部、をさらに備え、
前記推定部は、少なくとも前記選択部が選択した条件以外の条件は、前記第1条件群と前記第2条件群とが共通すると推定する、請求項1に記載の支援装置。
【請求項4】
前記選択部は、ユーザの入力に基づいて条件を選択する、請求項3に記載の支援装置。
【請求項5】
ユーザから前記第2条件群の少なくとも一部の条件に対する変更を受け付ける受付部と、
前記変更が適用された条件群に基づいてプラントの運転状態に関するシミュレーションを実行する実行部と、をさらに備える、請求項1に記載の支援装置。
【請求項6】
前記第2条件群は、前記第1条件群とは異なる特定の条件を含み、
前記受付部は、前記特定の条件以外の条件に対する変更を受け付ける、請求項5に記載の支援装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記第1プロセス情報と、前記第2条件群に基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラントの運転状態に関する第4プロセス情報とを比較する情報を表示する、請求項1に記載の支援装置。
【請求項8】
前記第1プロセス情報は、プラントの初期動作環境から経年変化が発生したプラントの運転状態に関するプロセス情報である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の支援装置。
【請求項9】
プラントに設置されたセンサから、特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関する第1プロセス情報を取得する第1取得部と、
一以上の条件を含む第1条件群に基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラントの運転状態に関する第2プロセス情報を取得する第2取得部と、
前記第1プロセス情報と、前記第2プロセス情報とに基づいて、前記特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群を推定する推定部と、
前記第2条件群に関する情報を表示する表示部と、
を備える、プラントシステム。
【請求項10】
コンピュータを、
プラントに設置されたセンサから、特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関する第1プロセス情報を取得する第1取得手段と、
一以上の条件を含む第1条件群に基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラントの運転状態に関する第2プロセス情報を取得する第2取得手段と、
前記第1プロセス情報と、前記第2プロセス情報とに基づいて、前記特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群を推定する推定手段と、
前記第2条件群に関する情報を表示する表示手段と、
として機能させる、支援プログラム。
【請求項11】
コンピュータに、
プラントに設置されたセンサから、特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関する第1プロセス情報を取得するステップと、
一以上の条件を含む第1条件群に基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラントの運転状態に関する第2プロセス情報を取得するステップと、
前記第1プロセス情報と、前記第2プロセス情報とに基づいて、前記特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群を推定するステップと、
前記第2条件群に関する情報を表示するステップと、
を実行させる、支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支援装置、プラントシステム、支援プログラム及び支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラントのプロセスに関する情報のシミュレーションを行う発明が知られている。特許文献1には、シミュレータにより得られた仮想出力をソフトセンサに入力することで特定のデータを推定する技術が記載されている。また、特許文献2には、実測データと実際のプラント状態に基づいてシミュレータモデル式に含まれる系統特性値を学習する技術が記載されている。
【0003】
ところで、プラントの運転状態に関する設定を変更する前には、事前に設定変更による影響を見積もるために、設定変更後の状態に対応する条件によりシミュレーションを実行し、プロセスに関する情報を確認することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-121230号公報
【特許文献2】特開2010-79465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シミュレーションは、プラントの動作環境に応じた条件に基づいて実行する必要がある。例えば、プラントに経年変化(経年劣化を含む)が生じている場合、プラントの運転員がプラントの設置直後の環境等に対応する条件に基づいてシミュレーションを実行しても、正確なシミュレーションの結果を得ることはできない。すなわち、プラント運転員はプラントの動作環境に応じたシミュレーションが実行できない。また、プラントの経年変化等の影響は予測することが難しく、プラントの運転員が手動によりシミュレーションの実行条件に反映することが困難である場合が多い。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、プラントの動作環境に応じたシミュレーションを実行可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る支援装置は、プラントに設置されたセンサから、特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関する第1プロセス情報を取得する第1取得部と、一以上の条件を含む第1条件群に基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラントの運転状態に関する第2プロセス情報を取得する第2取得部と、第1プロセス情報と、第2プロセス情報とに基づいて、特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群を推定する推定部と、第2条件群に関する情報を表示する表示部と、を備える。
【0008】
本発明の他の一態様に係るプラントシステムは、プラントに設置されたセンサから、特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関する第1プロセス情報を取得する第1取得部と、一以上の条件を含む第1条件群に基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラントの運転状態に関する第2プロセス情報を取得する第2取得部と、第1プロセス情報と、第2プロセス情報とに基づいて、特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群を推定する推定部と、第2条件群に関する情報を表示する表示部と、を備える。
【0009】
本発明の他の一態様に係る支援プログラムは、コンピュータを、プラントに設置されたセンサから、特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関する第1プロセス情報を取得する第1取得手段と、一以上の条件を含む第1条件群に基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラントの運転状態に関する第2プロセス情報を取得する第2取得手段と、第1プロセス情報と、第2プロセス情報とに基づいて、特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群を推定する推定手段と、第2条件群に関する情報を表示する表示手段と、として機能させる。
【0010】
本発明の他の一態様に係る支援方法は、コンピュータに、プラントに設置されたセンサから、特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関する第1プロセス情報を取得するステップと、一以上の条件を含む第1条件群に基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラントの運転状態に関する第2プロセス情報を取得するステップと、第1プロセス情報と、第2プロセス情報とに基づいて、特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群を推定するステップと、第2条件群に関する情報を表示するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、プラントの動作環境に応じたシミュレーションを実行可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の概要を説明するための図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る支援装置の機能ブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る支援装置のハードウェア構成図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る支援装置の動作の概要を説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る支援装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態に係るプロセス情報の一例を説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る条件群の一例を説明するための図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る推定対象情報の一例を説明するための図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るプロセス情報の一例を説明するための図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るプロセス情報の差分を説明するための図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るプロセス情報の一例を説明するための図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る条件群の一例を説明するための図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るプロセス情報の差分を説明するための図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る支援装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図15】本発明の一実施形態に係る条件群の一例を説明するための図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る条件群の一例を説明するための図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係る条件群の一例を説明するための図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係る支援装置の表示画面の一例を説明するための図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係る支援装置の表示画面の一例を説明するための図である。
【
図20】本発明の一実施形態に係る条件群の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態(以下では、本実施形態という)について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0014】
本発明において、「部」や「手段」、「装置」、「システム」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」や「手段」、「装置」、「システム」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や「手段」、「装置」、「システム」が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置、ソフトウェアにより実現されても、2つ以上の「部」や「手段」、「装置」、「システム」の機能が1つの物理的手段や装置、ソフトウェアにより実現されてもよい。
【0015】
<1.本実施形態の概要>
図1を参照して、本発明に係る一実施形態の概要について説明する。プラント2は、初期動作環境(例えば、プラント2の設置直後の動作環境)から経年変化、設備の改修及びプラントを動作させる者による動作環境の変更等により特定の動作環境になっている。プラント2に設置されたセンサは、プラント2内の複数のプロセスのそれぞれにおいて複数の物理量を測定する。センサが測定する物理量は、例えば、温度、圧力、電流、電圧、質量、速度、回転速度等である。プラント2から取得される第1プロセス情報140aは、センサが測定する物理量に関する情報を含む。第1プロセス情報140aは実測データ又は測定データということもできる。支援装置1は、第1取得部100aにより、第1プロセス情報140aを取得する。
【0016】
支援装置1は、プラント2の動作環境に関する一以上の条件を含む条件群を入力することにより、プラント2の運転状態に関するシミュレーションを実行することができる実行部102を備える。第2プロセス情報140bは、実行部102に対して第1条件群142aを入力することにより生成されるシミュレーションの結果である。第2プロセス情報140bは、シミュレーションデータということもできる。第1条件群142aは、例えば、プラント2の特定の動作環境におけるシミュレーションを再現するための候補となる条件群である。支援装置1は、第2取得部100bにより、第2プロセス情報140bを取得する。
【0017】
第2プロセス情報140bは、必ずしも第1プロセス情報140aと一致しない。第1条件群142aは、プラント2の特定の動作環境を反映したものではない場合があるからである。一方で、第1条件群142aがプラント2の特定の動作環境を十分に反映したものである場合には、第2プロセス情報140bと第1プロセス情報140aはほぼ一致する。
【0018】
支援装置1は、第1プロセス情報140aと、第2プロセス情報140bとに基づいて、第2条件群142bを推定する。第2条件群142bは、実行部102に入力することにより、プラント2の特定の動作環境(例えば、経年変化が発生した動作環境等)を再現するシミュレーションを実行するための一以上の条件である。支援装置1は、第1プロセス情報140aと第2プロセス情報140bとの差分が十分に小さくなる第1条件群142aが、第2条件群142bであると推定する。第2条件群142bを推定する具体的な方法については後述する。
【0019】
本実施形態によれば、プラント2の特定の動作環境を再現した高精度なシミュレーションを実行することができる。本実施形態によれば、当該特定の動作環境を反映した第2条件群142bを推定することができるからである。
【0020】
また、本実施形態によれば、第2条件群142bを高精度で推定することができる。支援装置1は、第1プロセス情報140a(例えば、実測データ等)だけではなく、第2プロセス情報140b(例えば、シミュレーションデータ等)を用いて第2条件群142bを推定するからである。すなわち、実測データを用いて、シミュレーションデータを用いなかった場合には、プラント2の正常な動作環境を反映した条件群を推定できるとは限らない。具体的には、実測データが、プラント2が正常に動作していない状態(例えば、運転開始直後の不安定な状態及びプラント2内のいずれかの箇所に異常が発生している状態等)において測定されたものである場合、当該実測データに基づいて推定した条件群は、正常に動作していない状態を反映したものになる。このような条件群を推定したとしても、正常に動作しているプラント2のシミュレーションを行うためには用いることができない。
【0021】
シミュレーションを実行することにより、支援装置1は、プラント2に経年変化等が生じていたとしても、ある程度の精度で(少なくとも、実測データがプラント2が正常に動作している間に測定されたものであるか否かを判定できる程度の精度で)プラント2の運転状態を予測することができる。すなわち、支援装置1は、第2プロセス情報140b(シミュレーションデータに相当)と大きく乖離した第1プロセス情報140a(実測データに相当)はプラント2が正常に動作していない状態において測定されたものであると判断することができるため、誤ってプラント2が正常に動作していない状態を反映した条件群が推定されることを防ぐことができる。
【0022】
なお、プラント2が正常に動作しているか否かを実測データのみから判断することは困難である。そのため、所定のトリガー(例えば、プラント2の運転開始からの時間経過等)を契機に実測データを測定し、これに基づいてシミュレーションのための条件群を推定したとしても、実測データがプラント2の正常な動作におけるものであることが保証されない以上、推定された条件群がプラント2の正常な動作を反映した条件群であることを判断することは困難である。
【0023】
<2.本実施形態に係るシステムの構成>
図2を参照して、本実施形態に係るシステムの構成について説明する。本実施形態に係るシステムは、プラント2、DCS(Distributed Control System)4、支援装置1及び通信ネットワーク3を含む。
【0024】
-プラント2-
プラント2は、工業活動における素材及び資源の生産及び加工を行う施設である。プラント2は、例えば、化学物質を扱う化学プラント、エネルギーの生産等を行うエネルギープラント、各種素材を加工する産業プラント及び廃棄物の処理を行う環境プラント等である。本実施形態に係る支援装置1は、どのような種類のプラントに対しても利用可能である。
【0025】
プラント2は、複数のプロセスを含む。プロセスは、プラント2において同種の媒体が流れる一連の移動する経路である。プロセスは、例えば、気体(空気、水蒸気、燃焼性のガス及び排気ガス等を含む)のプロセス、液体(水、液体燃料、液状の化学物質等を含む)のプロセス及び固体(ペレット、固体の化学物質等を含む)のプロセス等である。本実施形態に係る支援装置1は、プラント2にどのようなプロセスがあっても利用可能である。
【0026】
プラント2は、複数の部位を含む。部位は、プラント2においてプロセスが通過する装置又は設備である。部位は、例えば、火炉、セパレータ、物質の供給装置、物質の貯蔵装置、排気設備及び排液設備等である。本実施形態に係る支援装置1は、プラント2にどのような部位があっても利用可能である。
【0027】
プラント2の各部位には、複数のセンサが設置されている。センサは、当該部位を通過するプロセスに応じた物理量を測定する電子機器である。センサは、例えば、気温センサ、温度センサ、圧力センサ、気圧センサ、電流センサ、電圧センサ、質量センサ、速度センサ、回転速度センサ、振動センサ、位置センサ及び加速度センサ等を含む。本実施形態に係る支援装置1は、プラント2にどのようなセンサがあっても利用可能である。
【0028】
―DCS4―
DCS4は、プラント2の制御を行うための装置である。プラント2の運転員(ユーザともいう)は、DCS4を操作することによりプラント2の動作を制御することができる。また、DCS4は、プラント2に設置されたセンサから各種情報を取得する。DCS4は、プラント2の内部に設置された装置であってもよく、プラント2の外部に設置され、プラント2が通信ネットワーク3を経由して接続するものであってもよい。
【0029】
-支援装置1-
支援装置1は、プラントの動作環境に応じたシミュレーションを実行することを支援するための装置である。支援装置1は、制御部10、記憶部14及びDCS4と通信するためのネットワークインターフェース部18を備え、互いにバスを介して電気的に接続されている。
【0030】
[制御部10]
制御部10は、各種プログラムを実行することにより、取得部100、実行部102、計算部104、推定部106、選択部108、受付部110、入力部114及び出力部116として機能する。
【0031】
[取得部100]
取得部100は、第1取得部100a、第2取得部100b及び第3取得部100cとして機能する。
【0032】
第1取得部100aは、プラントに設置されたセンサから特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関する第1プロセス情報140aを取得する。第1プロセス情報140aは、プロセスに応じた物理量に関する情報(以下では、プロセス値という)を含む。第1プロセス情報140aに含まれるプロセス値は、プラントに設置されたセンサの測定データに基づくものである。すなわち、第1プロセス情報140aは、実測データということもできる。なお、第1プロセス情報140aに含まれるプロセス値は、センサによって取得した後に加工されていない、いわゆる生データであってもよく、生データを所定の方法により加工した(例えば、統計的演算処理を施した)データであってもよい。第1プロセス情報140aは、後述するプロセス情報DB140に記憶される。
【0033】
第2取得部100bは、一以上の条件を含む第1条件群142aに基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラント2の運転状態に関する第2プロセス情報140bを取得する。第2プロセス情報140bも第1プロセス情報140aと同様にプロセス値を含むが、第2プロセス情報140bに含まれるプロセス値は、例えば実行部102によるシミュレーションの結果に基づくものである。すなわち、第2プロセス情報140bは、シミュレーションデータということもできる。また、第1条件群142aは、第2条件群142bの候補であるため、候補条件群ということもできる。第2プロセス情報140bは、後述するプロセス情報DB140に記憶される。
【0034】
第3取得部100cは、第1条件群142aと少なくとも一部が異なる第3条件群142cに基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラント2の運転状態に関する第3プロセス情報140cを取得する。第3プロセス情報140cに含まれるプロセス値は、例えば実行部102によるシミュレーションの結果に基づくものである。また、第3条件群142cは、第2条件群142bを推定するための基準となる条件群である。第3条件群142cは、基準条件群ということもできる。第3プロセス情報140cは、後述するプロセス情報DB140に記憶される。
【0035】
なお、本実施形態において、第2取得部100b及び第3取得部100cは、実行部102によるシミュレーションの結果に基づいてプロセス情報を取得するものとして説明するが、これに限られない。第2取得部100b及び第3取得部100cは、例えば、支援装置1とは異なるシミュレーション装置からプロセス情報を取得してもよい。
【0036】
なお、本実施形態において、情報を取得することは、情報を制御部10において取り扱うことができる状態にすることを含む。すなわち、情報を取得することは、他の機能部又は他の装置から情報を取得することに限られない。
【0037】
[実行部102]
実行部102は、一以上の条件を含む条件群を入力することで、プラントの運転状態に関するプロセス情報を計算するためのシミュレーションを実行する。シミュレーションは、条件群と、プラントに応じた数理モデル(物理モデル及び化学モデル等を含む)とに基づいて実行される。本実施形態では、上述した第2取得部100b及び第3取得部100cは、実行部102が実行するシミュレーションの結果から、それぞれ第2プロセス情報140b及び第3プロセス情報140cを取得する。なお、入力となる条件群に関する情報は、後述するシミュレーション条件情報DB142から読み出す。
【0038】
また、実行部102は、後述する推定部106により推定した第2条件群142bに基づいてシミュレーションを実行する。取得部100は、当該シミュレーションの結果から、第4プロセス情報140dを取得する。第4プロセス情報140dは、第2条件群142bがいかにプラント2の特定の動作環境を再現した条件群であるかを確認する際に用いられる情報である。第4プロセス情報140dは、後述するプロセス情報DB140に記憶される。
【0039】
また、実行部102は、後述する推定部106により推定した第2条件群142bの少なくとも一部の条件を変更した条件群に基づいてシミュレーションを実行する。第2条件群142bのうち、変更する条件の選択は、後述する受付部110によりユーザから受け付けたものであってもよい。シミュレーションの結果として計算されたプロセス情報は、後述するプロセス情報DB140に記憶される。
【0040】
[計算部104]
計算部104は、推定部106による推定を行うために、複数のプロセス情報同士の差分を計算する。プロセス情報同士の差分は、典型的には、プロセス情報に含まれる一以上の項目のそれぞれに関連付けられたプロセス値の差分である。差分は、プロセス情報又はプロセス値の種類に応じた数学的な処理により算出される。差分は、例えば、プロセス値同士の減算、除算、加算又は乗算の結果であってもよく、プロセス値同士の比率、大小、距離、内積、外積又は同異等であってもよい。計算部104は、後述するプロセス情報DB140から計算に用いるためのプロセス情報を読み出す。計算部104が計算した差分に関する情報は、後述する差分情報DB146に記憶される。
【0041】
本実施形態において、プロセス値の差分はプロセス値の比率であるとする。具体的には、プロセス値xとプロセス値yの比率は、プロセス値xからプロセス値yを減算した値の絶対値を、プロセス値xで除算することにより計算するものとする。例えば、プロセス値xが「150℃」であり、プロセス値yが「165℃」である場合、その比率は|150℃―165℃|/150℃より、0.1(すなわち、10%)である。
【0042】
[推定部106]
推定部106は、第1プロセス情報140aと、第2プロセス情報140bとに基づいて、特定の動作環境におけるプラント2の運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群142bを推定する。推定部106は、典型的には、第1プロセス情報140aと、第2プロセス情報140bとの差分に基づいて第2条件群142bを推定する。具体的には、推定部106は、第1プロセス情報140aと、第2プロセス情報140bとの差分が十分に小さい場合、第1条件群142aが第2条件群142bであると推定する。より具体的には、第1プロセス情報140aと第2プロセス情報140bとの差分より、第1プロセス情報140aと第3プロセス情報140cとの差分が小さい場合、第1条件群142aが第2条件群142bであると推定してもよい。すなわち、推定部106は、第2プロセス情報140bが他のシミュレーションデータと比較して正確に実測データを再現している場合、当該第2プロセス情報140bに対応する条件群である第1条件群142aが第2条件群142bであると推定する。推定部106は、複数の条件群のシミュレーションの結果(第2プロセス情報140b及び第3プロセス情報140cに相当)を比較することにより、特定の動作環境におけるプラント2の実測データ(第1プロセス情報140aに相当)をより正確に再現するようなシミュレーションを実行するための条件群を推定するということもできる。推定部106は、後述する差分情報DB146からプロセス情報の差分に関する情報を読み出す。第2条件群142bに関する情報は、後述するシミュレーション条件情報DB142に記憶される。
【0043】
本実施形態においては、条件群は、複数の条件と、それぞれの条件に対応する設定値とが関連付けられたものであるとする。条件群を推定することは、典型的には、当該条件群に含まれる一以上の条件のそれぞれに対応する設定値を推定することである。同様に、条件を推定することは、典型的には、当該条件に対応する設定値を推定することである。
【0044】
また、推定部106は、少なくとも後述する選択部108が選択した条件以外の条件は、第1条件群142aと第2条件群142bとが共通すると推定してもよい。共通すると推定することは、例えば、第1条件群142aが条件a、条件b、・・・、条件zである場合において、選択部108が条件a及び条件bを選択したとき、推定部106が条件c、条件d、・・・条件zについては第1条件群142aと第2条件群142bとが共通すると推定することである。この例において、第2条件群142bの条件c、条件d、・・・、条件zは、実質的な計算を伴うことなく第1条件群142aから単純にコピーしたものである。すなわち、推定することは、実質的な計算を伴わないものを含む。
【0045】
また、条件群同士で特定の条件が共通することは、典型的には、当該特定の条件に対応する設定値が同一であることである。また、条件群同士で特定の条件が異なることは、典型的には、当該特定の条件に対応する設定値が異なることである。例えば、第1条件群142aは条件a及び条件bのそれぞれに対して設定値a1及び設定値b1が関連付けられており、第2条件群142bは条件a及び条件bのそれぞれに対して設定値a1及び設定値b2が関連付けられている場合、第1条件群142a及び第2条件群142bは条件aが共通し、条件bが異なるということができる。
【0046】
また、推定部106は、後述する完了条件情報DB144に記憶された完了条件情報を参照しながら、当該完了条件情報を満たす第2条件群142bが推定されるまで繰り返し推定を行ってもよい。すなわち、推定部106は、完了条件を満たすか否かを判定する判定部としても機能するということができる。
【0047】
推定することは、出力することと言い換えることもでき、推定部106は、第2条件群142bを出力する出力部であるということもできる。また、推定することは、第2条件群142bに含まれる条件の少なくとも一部を推定するものであってもよい。
【0048】
以下では、「推定の対象となる条件」とは、第1条件群142aと第2条件群142bとが共通であるとは推定されない条件(すなわち、推定部106が実質的な計算を行うことにより推定する必要がある条件)のことをいう。また、「特定の条件を推定の対象とする」とは、当該特定の条件については第1条件群142aと第2条件群142bとで共通であるとは推定しない(すなわち、推定部106が当該特定の条件を推定するために実質的な計算を伴う)ことをいう。推定の対象となる条件は、典型的には、初期動作環境と特定の動作環境との間で変わってしまった要素に対応する条件である。
【0049】
また、以下では、「推定の対象とならない条件」とは、第1条件群142aと第2条件群142bとが共通すると推定される条件(すなわち、推定部106が実質的な計算を行うことにより推定する必要がない条件)のことをいう。また、「特定の条件を推定の対象としない」とは、当該特定の条件については第1条件群142aと第2条件群142bとで共通であると推定する(すなわち、推定部106が当該特定の条件を推定するために実質的な計算を行わない)ことをいう。推定の対象とならない条件は、典型的には、初期動作環境と特定の動作環境との間で変わらない要素に対応する条件である。
【0050】
[選択部108]
選択部108は、第1条件群142aの少なくとも一部の条件を選択する。本実施形態において、選択された条件は、推定部106による推定の対象となる。選択部108は、ユーザの入力に基づいて条件を選択してもよく、ユーザからの入力によらず選択部108が所定のルールに基づいて自律的に条件を選択してもよい。条件の選択に関する情報は、後述する推定対象情報DB143から読み出す。
【0051】
なお、本実施形態においては、選択された条件が推定部106による推定の対象となるが、選択された条件が推定の対象とならず、選択された条件以外の条件が推定の対象となってもよい。
【0052】
[受付部110]
受付部110は、ユーザから第2条件群142bの少なくとも一部の条件に対する変更を受け付ける。これに対して、実行部102は、変更が適用された条件群に基づいてプラント2の運転状態に関するシミュレーションを実行する。すなわち。受付部110は、推定結果である条件群に対してさらに変更を加えたシミュレーションを実行するための操作をユーザから受け付ける。受付部110は、後述する入力I/F304を機能させることにより入力を受け付ける。受付部110は、受け付けた変更を後述するシミュレーション条件情報DB142に反映する。
【0053】
また、第2条件群142bが第1条件群142aとは異なる特定の条件を含む場合、受付部110は、当該特定の条件以外の条件に対する変更を受け付けるものであってもよい。例えば、第1条件群142aは条件a、条件b及び条件cのそれぞれに対して設定値a1、設定値b1及び設定値c1が関連付けられており、第2条件群142bは条件a、条件b及び条件cのそれぞれに対して設定値a1、設定値b1及び設定値c2が関連付けられている場合、受付部110は、条件c(特定の条件に相当)以外の条件(すなわち、条件a及び条件b)に対する変更を受け付けてもよい。
【0054】
なお、本実施形態において、条件に対する変更は、条件に関連付けられた設定値に対する変更を含む。すなわち、受付部110は、例えば、第2条件群142bに含まれる条件cに関連付けられた設定値c1を、設定値c4に変更するような操作を受け付けてもよい。
【0055】
[表示部112]
表示部112は、第1条件群142aと、第2条件群142bとの比較に関する比較情報を表示する。比較情報は、第1プロセス情報140aと、第2条件群142bに基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラント2の運転状態に関する第4プロセス情報140dとを比較する情報を含む。表示部112は、後述する表示装置310を機能させることにより比較情報を表示する。表示部112は、後述するシミュレーション条件情報DB142及びプロセス情報DB140から情報を読み出す。
【0056】
[入力部114]
入力部114は、後述するデータI/F306、通信I/F308及び入力I/F304に接続された機器を動作させることにより、支援装置1に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部114は、例えば、ユーザからの操作情報、動画情報、画像情報、テキスト情報、音声情報及び位置情報等の入力を受け付ける。
【0057】
[出力部116]
出力部116は、後述するデータI/F306、通信I/F308に接続された機器及び表示装置310を動作させることにより、支援装置1から各種情報を出力する。出力部116は、例えば、動画情報、画像情報、テキスト情報及び音声情報等を出力する。
【0058】
[記憶部14]
記憶部14は、プロセス情報DB140、シミュレーション条件情報DB142、推定対象情報DB143、完了条件情報DB144及び差分情報DB146を記憶する。
【0059】
[プロセス情報DB140]
プロセス情報DB140は、プロセス情報を記憶する。プロセス情報は、第1プロセス情報140a、第2プロセス情報140b、第3プロセス情報140c及び第4プロセス情報140dを含む。本実施形態において、プロセス情報は、センサの種類及び当該センサが設置された部位等に対応する一以上の項目と、それぞれの項目に対して関連付けられたプロセス値とを含む。また、本実施形態では、第1プロセス情報140a、第2プロセス情報140b、第3プロセス情報140c及び第4プロセス情報140dは、いずれも項目が共通するものとする。
【0060】
第1プロセス情報140aに含まれるプロセス値は、プラント2に設置されたセンサにより測定された実測データである。第1プロセス情報140aは、例えば、「部位Aの左側面の温度センサ」という項目、「部位Aの右側面の温度センサ」という項目及び「部位Aの気圧センサ」という項目のそれぞれに対して「150℃」、「160℃」及び「2000Pa」というプロセス値が関連付けられた情報である。なお、部位Aはプラント2の任意の部位である。
【0061】
第2プロセス情報140bに含まれるプロセス値は、第1条件群142aに基づいて取得されたシミュレーションデータである。第2プロセス情報140bは、例えば、「部位Aの左側面の温度センサ」という項目、「部位Aの右側面の温度センサ」という項目及び「部位Aの気圧センサ」という項目のそれぞれに対して「150℃」、「176℃」及び「2200Pa」というプロセス値が関連付けられた情報である。
【0062】
第3プロセス情報140cは、第3条件群142cに基づいて取得されたシミュレーションデータである。第3プロセス情報140cは、例えば、「部位Aの左側面の温度センサ」という項目、「部位Aの右側面の温度センサ」という項目及び「部位Aの気圧センサ」という項目のそれぞれに対して「165℃」、「192℃」及び「2400Pa」というプロセス値が関連付けられた情報である。
【0063】
プロセス情報同士の差分は、計算部104により計算することができる。上述の例における第1プロセス情報140aと第2プロセス情報140bとの差分は、例えば、「部位Aの左側面の温度センサ」という項目について同一であり(いずれも150℃)、「部位Aの右側面の温度センサ」という項目について10%異なり(160℃に対して176℃)、「部位Aの気圧センサ」という項目について10%異なる(2000Paに対して2200Pa)。また、上述の例における第1プロセス情報140aと第3プロセス情報140cとの差分は、例えば、「部位Aの左側面の温度センサ」という項目について10%異なり(150℃に対して165℃)、「部位Aの右側面の温度センサ」という項目について20%異なり(160℃に対して192℃)、「部位Aの気圧センサ」という項目について20%異なる(2000Paに対して2400Pa)。なお、この例では比率に基づいて差分を計算したが、差分の計算方法はこれに限られない。
【0064】
[シミュレーション条件情報DB142]
シミュレーション条件情報DB142は、条件群に関する情報を記憶する。条件群に関する情報は、第1条件群142a、第2条件群142b及び第3条件群142cを含む。上述したとおり、本実施形態において、条件群は、複数の条件と、それぞれの条件に対応する設定値とが関連付けられたものであるとする。
【0065】
条件とは、プラント2の運転状態を予測する際に考慮する要素である。条件は、シミュレーションを実行するためのパラメータということもできる。条件は、例えば、プラント2の動作に用いる燃料の種類及びプラント2の給水量等を含む。
【0066】
設定値とは、条件の具体的な内容である。プラント2の動作に用いる燃料の種類という条件に対する設定値は、例えば、重油、ペレット、石炭及び木材等である。プラント2の給水量という条件に対する設定値は、例えば、100L/秒等である。
【0067】
条件群に関する情報は、プラント2の設置当初からシミュレーション条件情報DB142に記憶されたもののほか、プラント2の運転員が手動により入力したもの、他の外部機器から通信ネットワーク3を介して取得したもの及び所定のルールに基づいて支援装置1が自動的に生成したもの等であってもよい。また、プラント2の運転員は、典型的には支援装置1を操作することにより、条件群に関する情報(特に、設定値)を変更することができる。
【0068】
[推定対象情報DB143]
推定対象情報DB143は、条件の選択に関する情報である推定対象情報143aを記憶する。推定対象情報143aは、第2条件群142bの条件のうち、推定の対象となる条件と、推定の対象とならない条件とに関する情報を含む。推定対象情報143aの具体例については、
図8を参照して後述する。
【0069】
推定対象情報143aは、プラント2の設置当初から推定対象情報DB143に記憶されたもののほか、プラント2の運転員が手動により入力したもの、他の外部機器から通信ネットワーク3を介して取得したもの及び所定のルールに基づいて支援装置1が自動的に生成したもの等であってもよい。また、プラント2の運転員は、典型的には支援装置1を操作することにより、推定対象情報143aを変更することができる。
【0070】
上述した選択部108は推定対象情報143aに基づいて推定の対象となる条件を選択するため、プラント2の運転員が手動により推定対象情報143aを入力する場合、選択部108はユーザの入力に基づいて条件を選択するということもできる。
【0071】
[完了条件情報DB144]
完了条件情報DB144は、完了条件情報を記憶する。完了条件情報は、推定部106による第2条件群142bの推定が完了したと判定するための条件(以下では、完了条件という)に関する情報である。完了条件は、典型的には、プラント2の特定の動作環境を十分に再現するシミュレーションを実行するための条件群が発見されたと判断するための条件である。すなわち、推定部106は、完了条件を満たすような条件群を探索し、完了条件を満たす条件群が第2条件群142bであると推定してもよい。
【0072】
完了条件情報は、プラント2の設置当初から完了条件情報DB144に記憶されたもののほか、プラント2の運転員が手動により入力したもの、他の外部機器から通信ネットワーク3を介して取得したもの及び所定のルールに基づいて支援装置1が自動的に生成したもの等であってもよい。また、プラント2の運転員は、典型的には支援装置1を操作することにより、完了条件情報を変更することができる。
【0073】
[差分情報DB146]
差分情報DB146は、計算部104により計算された差分情報を記憶する。差分情報は、差分を計算したプロセス情報に含まれる複数の項目と、それぞれの項目に関連付けられた差分とを含む。例えば、第1プロセス情報140aが「部位Aの左側面の温度センサ」という項目、「部位Aの右側面の温度センサ」という項目及び「部位Aの気圧センサ」という項目のそれぞれに対して「150℃」、「160℃」及び「2000Pa」というプロセス値が関連付けられた情報であり、第2プロセス情報140bは、上記と同様の項目のそれぞれに対して「150℃」、「176℃」及び「2200Pa」というプロセス値が関連付けられた情報である場合において、第1プロセス情報140aと第2プロセス情報140bとの差分情報は、「部位Aの左側面の温度センサ」という項目、「部位Aの右側面の温度センサ」という項目及び「部位Aの気圧センサ」という項目のそれぞれに対して「0%」、「10%」及び「10%」という差分(この場合、比率)が関連付けられたものである。
【0074】
-通信ネットワーク3-
通信ネットワーク3は、DCS4と支援装置1とが通信可能なように構成されたネットワークである。通信ネットワーク3を経由する通信は、典型的には、TCP/IPの各種プロトコルにより実現されるものである。
【0075】
<3.支援装置1のハードウェア構成>
図3を参照して、上述してきた支援装置1をコンピュータ30により実現する場合のハードウェア構成の一例を説明する。なお、それぞれの装置の機能は、複数台の装置に分けて実現することもできる。
【0076】
図3に示すように、コンピュータ30は、プロセッサ300と、記憶装置302と、入力I/F304と、データI/F306と、通信I/F308、及び表示装置310を含む。
【0077】
プロセッサ300は、記憶装置302に記憶されているプログラムを実行することによりコンピュータ30における様々な処理を制御する。例えば、支援装置1の制御部10が備える各機能部等は、記憶装置302に記憶されたプログラムを、プロセッサ300が実行することにより実現可能である。
【0078】
記憶装置302は、例えばRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。RAMは、プロセッサ300によって実行されるプログラムのプログラムコードや、プログラムの実行時に必要となるデータを一時的に記憶する。
【0079】
記憶装置302は、他にも、例えばハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体である。記憶装置302は、オペレーティングシステムや、上記各構成を実現するための各種プログラムを記憶する。当該各種プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。この他、記憶装置302は、事業者情報等の各種情報を登録するテーブルと、当該テーブルを管理するDBを記憶することも可能である。このようなプログラムやデータは、必要に応じて記憶装置302にロードされることにより、プロセッサ300から参照される。
【0080】
入力I/F304は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。入力I/F304の具体例としては、カメラ、ボタン、マイク、キーボード、マウス、タッチパネル、各種センサ、ウェアラブル・デバイスなどが挙げられる。入力I/F304は、例えばUSB(Universal Serial Bus)などのインタフェースを介してコンピュータ30に接続されてもよい。
【0081】
データI/F306は、コンピュータ30の外部からデータを入力するためのデバイスである。データI/F306の具体例としては、各種記憶媒体に記憶されているデータを読み取るためのドライブ装置などがある。データI/F306は、コンピュータ30の外部に設けられることも考えられる。その場合、データI/F306は、例えばUSBなどのインタフェースを介してコンピュータ30へと接続される。
【0082】
通信I/F308は、コンピュータ30の外部の装置と有線または無線により、通信ネットワーク3を介したデータ通信を行うためのデバイスである。通信I/F308は、コンピュータ30の外部に設けられることも考えられる。その場合、通信I/F308は、例えばUSBなどのインタフェースを介してコンピュータ30に接続される。
【0083】
表示装置310は、各種情報を表示するためのデバイスである。表示装置310の具体例としては、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、ウェアラブル・デバイスのディスプレイなどが挙げられる。表示装置310は、コンピュータ30の外部に設けられてもよい。その場合、表示装置310は、例えばディスプレイケーブルなどを介してコンピュータ30に接続される。また、入力I/F304としてタッチパネルが採用される場合には、表示装置310は、入力I/F304と一体化して構成することが可能である。
【0084】
また、上記実施の形態で記載された支援装置1が備える構成要素は、記憶装置302に格納されたプログラムがプロセッサ300によって実行されることで、定められた処理が他のハードウェアと協働して実現されるものとする。また、言い換えれば、これらの構成要素は、ソフトウェアまたはファームウェアとしても、それと対応するハードウェアとしても想定され、その双方の概念において、「機能」、「手段」、「部」、「処理回路」、「ユニット」、または「モジュール」などとも記載され、またそれぞれに読み替えることができる。
【0085】
<4.支援装置1の動作の概要>
図4を参照して、支援装置1の動作の概要を説明する。支援装置1は、第1取得部100aにより、プラント2から第1プロセス情報140aを取得する(S1)。
【0086】
次に、支援装置1は、第2取得部100bにより、第1条件群142a(候補条件群ということもできる)に基づいて算出されたシミュレーションデータである第2プロセス情報140bを取得する(S2)。
【0087】
次に、支援装置1は、第3取得部100cにより、第3条件群142c(基準条件群ということもできる)に基づいて算出されたシミュレーションデータである第3プロセス情報140cを取得する(S3)。
【0088】
次に、支援装置1は、計算部104により、第1プロセス情報140a及び第2プロセス情報140bの差分と、第1プロセス情報140a及び第3プロセス情報140cの差分とを計算する(S4)。
【0089】
次に、支援装置1は、推定部106により、これらの差分に基づいて第2条件群142bを推定する。例えば、第1プロセス情報140aと第2プロセス情報140bとの差分が、第1プロセス情報140aと第3プロセス情報140cとの差分よりが小さい場合には、第1条件群142aが第2条件群142bであると推定する。第3条件群142cと比較して、第1条件群142aのほうがプラント2の特定の動作環境をより正確に再現できているからである。
【0090】
<5.支援装置1の動作の詳細>
図5-
図17を参照して、支援装置1の動作の詳細を説明する。
図5は、支援装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【0091】
まず、第1取得部100aは、第1プロセス情報140aを取得する(S10)。
図6は、本実施形態における第1プロセス情報140aの一例を示す図である。第1プロセス情報140aは、項目α、項目β及び項目γを含み、それぞれの項目に対してプロセス値α1、プロセス値β1及びプロセス値γ1というプロセス値が関連付けられている。項目及びプロセス値は、プラント2の種類及びプロセスの種類等に応じて適切なものであってもよい。
【0092】
次に、選択部108は、推定対象情報143aを参照して、第1条件群142aの少なくとも一部の条件を選択する(S12)。
図7は、本実施形態における第1条件群142aの一例を示す図である。第1条件群142aは、条件a、条件b、条件c、条件d、・・・、条件zを含み、それぞれの条件に対して設定値a1、設定値b1、設定値c1、設定値d1、・・・、設定値z1という設定値が関連付けられている。
図8は、本実施形態における推定対象情報143aの一例を示す図である。推定対象情報143aは、条件a、条件b、条件c、条件d、・・・、条件zを含み、条件a及び条件bに対しては「対象」、その他の条件に対しては「非対象」が関連付けられている。すなわち、選択部108は、第1条件群142aのうち条件a及び条件bを選択し、条件a及び条件bが本実施形態における推定の対象となる。
【0093】
選択部108が条件を選択することにより、少ない演算量で第2条件群142bを推定することができる。一般的に、プラント2が特定の動作環境になったとしても、当該特定の動作環境を再現するシミュレーションを実行するためには第1条件群142aの一部の条件を推定し直すだけで足りるからである。例えば、初期動作環境からプラント2の燃料の種類を変更した場合には、燃料の種類に対応する条件を推定の対象とすれば足り、その他の条件については推定の対象としなくてもよい。
【0094】
次に、第2取得部100bは、第2プロセス情報140bを取得する(S14)。
図9は、本実施形態における第2プロセス情報140bの一例を示す図である。第2プロセス情報140bは項目α、項目β及び項目γを含み、それぞれの項目に対してプロセス値α2、プロセス値β2及びプロセス値γ2というプロセス値が関連付けられている。
【0095】
次に、計算部104は、第1プロセス情報140a及び第2プロセス情報140bの差分を計算する(S16)。
図10は、第1プロセス情報140a及び第2プロセス情報140bの差分情報146aの一例を示す図である。差分情報146aは、項目α、項目β及び項目γを含み、それぞれの項目に対して差分α12、差分β12及び差分γ12が関連付けられている。なお、差分α12、差分β12及び差分γ12は、それぞれプロセス値α1とプロセス値α2、プロセス値β1とプロセス値β2及びプロセス値γ1とプロセス値γ2に基づいて計算された差分である。関数fは、2つのプロセス値に基づいて差分を算出する関数を表す。関数fは、2つのプロセス値の、例えば比率を算出する関数である。
【0096】
次に、第3取得部100cは、第3プロセス情報140cを取得する。
図11は、本実施形態における第3プロセス情報140cの一例を示す図である。第3プロセス情報140cは、項目α、項目β及び項目γを含み、それぞれの項目に対してプロセス値α3、プロセス値β3及びプロセス値γ3というプロセス値が関連付けられている。
【0097】
また、第3プロセス情報140cは、第3条件群142cに基づいて実行されたシミュレーションの結果である。
図12は、本実施形態における第3条件群142cの一例を示す図である。第3条件群142cは、条件a、条件b、条件c、条件d、・・・、条件zを含み、それぞれの条件に対して設定値a3、設定値b3、設定値c1、設定値d1、・・・、設定値z1という設定値が関連付けられている。
【0098】
第3条件群142cは、第2条件群142bを推定するための基準となる条件群であるところ、
図8で示した推定対象情報143aによると条件a及び条件bが推定の対象となる(すなわち、条件c、・・・、条件zについては、第1条件群142aと第2条件群142bとは共通する)ため、第3条件群142cについても条件c、・・・、条件zに関しては第1条件群142aと共通するとしてもよい。
【0099】
次に、計算部104は、第1プロセス情報140a及び第3プロセス情報140cの差分を計算する(S20)。
図13は、第1プロセス情報140a及び第3プロセス情報140cの差分情報146bの一例を示す図である。差分情報146bは、項目α、項目β及び項目γを含み、それぞれの項目に対して差分α13、差分β13及び差分γ13が関連付けられている。なお、差分α13、差分β13及び差分γ13は、それぞれプロセス値α1とプロセス値α3、プロセス値β1とプロセス値β3及びプロセス値γ1とプロセス値γ3に基づいて計算された差分である。
【0100】
次に、推定部106は、第2条件群142bの推定を開始する。まず、推定部106は、差分情報146a及び差分情報146bに基づいて、完了条件が満たされているか否かを判定する(S22)。
図14は、完了条件の一例を示すとともにS22の詳細を説明するためのフローチャートである。すなわち、
図14のS220-S228は、いずれもS22に含まれる。
【0101】
まず、推定部106は、差分情報146aに含まれる差分α12は、差分情報146bに含まれる差分α13より小さいか否かを判定する(S220)。
【0102】
差分α12が差分α13より小さい場合(S220 YES)、推定部106は、差分情報146aに含まれる差分β12は、差分情報146bに含まれる差分β13より小さいか否かを判定する(S222)。
【0103】
差分β12が差分β13より小さい場合(S222 YES)、推定部106は、差分情報146aに含まれる差分γ12は、差分情報146bに含まれる差分γ13より小さいか否かを判定する(S224)。
【0104】
差分γ12が差分γ13より小さい場合(S224 YES)、推定部106は、完了条件が満たされていると判定する(S226)。一方で、差分α12が差分α13より大きい場合(S220 NO)、差分β12が差分β13より大きい場合(S222 NO)又は差分γ12が差分γ13より大きい場合(S224 NO)、推定部106は、完了条件が満たされていないと判定する(S228)。
【0105】
まとめると、S22においては、第3条件群142cに基づくシミュレーションデータと比較して、第1条件群142aに基づくシミュレーションデータが、すべてのプロセス値において実測データをより正確に再現している場合に、完了条件が満たされていると判定する。一方で、第3条件群142cに基づくシミュレーションデータと比較して、第1条件群142aに基づくシミュレーションデータが、いずれかのプロセス値において実測データと離れている場合に、完了条件が満たされていないと判定する。
【0106】
完了条件が満たされていないと判定された場合(S22 NO)、実行部102は、第1条件群142aの少なくとも一部の条件を変更した新たな第1条件群142aによりシミュレーションを実行する(S26)。
図15は、本実施形態における新たな第1条件群142aの一例を示す図である。新たな第1条件群142aは、条件a、条件b、条件c、条件d、・・・、条件zを含み、それぞれの条件に対して設定値a1+Δa1、設定値b1+Δb1、設定値c1、設定値d1、・・・、設定値z1という設定値が関連付けられている。条件c、・・・、条件zについては推定対象の条件ではないため(
図8参照)、条件を変更しない。Δa1及びΔb1は、条件a及び条件bの設定値を変更する際のステップ幅であり、プラント2の運転員が手動で設定してもよく、支援装置1が所定のルールに基づいて自律的に設定したものであってもよい。
【0107】
第2取得部100bは、当該シミュレーションの結果に基づいて再び第2プロセス情報140bを取得する(S14)。このように、支援装置1は、完了条件が満たされるような条件群を発見するまで、繰り返しS14-S22及びS26の処理を実行してもよい。
【0108】
完了条件が満たされていると判定された場合(S22 YES)、推定部106は、第1条件群142aが第2条件群142bであると推定する(S24)。
図16は、完了条件が満たされていないと判定されることなく(すなわち、S26が実行されることなく)、第1条件群142aが第2条件群142bであると推定された場合における第2条件群142bの一例である。第2条件群142bは、第1条件群142aと同様(
図12参照)、条件a、条件b、条件c、条件d、・・・、条件zを含み、それぞれの条件に対して設定値a1、設定値b1、設定値c1、設定値d1、・・・、設定値z1という設定値が関連付けられている。
【0109】
他にも、
図17は、n回(nは自然数)完了条件が満たされていないと判定された後に(すなわち、S26がn回実行された後に)第1条件群142aが第2条件群142bであると推定された場合における第2条件群142bの一例である。第2条件群142bは、第2条件群142bは、条件a、条件b、条件c、条件d、・・・、条件zを含み、それぞれの条件に対して設定値a1+n×Δa1、設定値b1+n×Δb1、設定値c1、設定値d1、・・・、設定値z1という設定値が関連付けられた条件群となる。
【0110】
以上をまとめると、支援装置1は、プラント2に設置されたセンサから、特定の動作環境におけるプラントの運転状態に関する第1プロセス情報140aを取得する第1取得部100aと、一以上の条件を含む第1条件群142aに基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラントの運転状態に関する第2プロセス情報140bを取得する第2取得部100bと、第1プロセス情報140aと、第2プロセス情報140bとに基づいて、特定の動作環境におけるプラント2の運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群142bを推定する推定部106と、を備える。
【0111】
<6.支援装置1の表示画面等>
図18―
図20を参照して、支援装置1の表示画面の一例と、第2条件群142bに対して変更を加えた条件群に基づいてシミュレーションを実行する方法について説明する。なお、
図18-
図20を用いた説明において、第2条件群142bは、条件a、条件b、条件c、条件d、・・・、条件zを含み、それぞれの条件に対して設定値a1+n×Δa1、設定値b1+n×Δb1、設定値c1、設定値d1、・・・、設定値z1という設定値が関連付けられた条件群であるとする(
図17参照)。
【0112】
図18は、支援装置1の表示部112による表示画面の一例である。
図18の表示画面は、条件群表示領域148a、プロセス値比較情報148b、シミュレーション開始ボタン404、推定対象変更ボタン406及び完了条件変更ボタン408を含む。また、プロセス値比較情報148bは、第1プロセス情報140a及び第4プロセス情報140dを含む。第4プロセス情報140dは、第2条件群142bに基づくシミュレーションにより計算されるプロセス情報である。
【0113】
推定対象変更ボタン406は、プラント2の運転員の操作に基づいて推定対象情報143aを変更するためのボタンである。推定対象情報143aの変更とは、典型的には、いずれかの条件に関連付けられた推定対象を「対象」から「非対象」又は「非対象」から「対象」に切り替えることである。推定対象変更ボタン406を押下することによって、推定対象情報143aを変更するための表示画面に遷移してもよい(図示しない)。支援装置1は、プラント2の運転員により推定対象情報143aが変更されたとき、変更後の推定対象情報143aを用いて第2条件群142bを推定しなおしてもよい。
【0114】
上述した選択部108は、推定対象情報143aを参照して推定の対象となる条件を選択するため、推定対象変更ボタン406の操作があった場合には、選択部108はプラント2の運転員の入力に基づいて条件を選択するということもできる。
【0115】
完了条件変更ボタン408は、プラント2の運転員の操作に基づいて完了条件を変更するためのボタンである。完了条件を変更することとは、
図14で説明したS220-S224の少なくとも一部を変更することに相当する。完了条件変更ボタン408を押下することによって、完了条件を変更するための表示画面に遷移してもよい(図示しない)。支援装置1は、プラント2の運転員により完了条件が変更されたとき、変更後の完了条件を用いて第2条件群142bを推定しなおしてもよい。
【0116】
プラント2の運転員は、条件群表示領域148aにより、第2条件群142bを確認することができる。これにより、プラント2の運転員にとって明らかに直感に反する第2条件群142bが推定されていないことを確かめるとともに、後述するように新たなシミュレーションを行うために用いる第2条件群142bの内容を確認することができる。
【0117】
プラント2の運転員は、プロセス値比較情報148bにより、推定された第2条件群142bがたしかに特定の動作環境を再現しているか否かを確認することができる。第1プロセス情報140aと、第4プロセス情報140dとの間で、例えば、想定以上の乖離が生じているプロセス値があった場合には、十分な精度で第2条件群142bが推定できていないと判断することができる。このような場合には、プラント2の運転員は、推定対象変更ボタン406又は完了条件変更ボタン408を押下し、第2条件群142bの推定に関する設定を変更することで、より高い精度で第2条件群142bを推定しなおすことができる。
【0118】
シミュレーション開始ボタン404は、第2条件群142bに基づいて、新たなシミュレーションを開始するためのボタンである。
図19は、シミュレーション開始ボタン404を押下することにより遷移することができる表示画面の一例である。
図19の表示画面は、変更内容リスト410及びシミュレーション実行ボタン412を含む。
【0119】
プラント2の運転員は、変更内容リスト410により、第2条件群142bに対して適用する変更内容を選択することができる。受付部110は、第2条件群142bの少なくとも一部の条件に対する変更を受け付ける。この際、受付部110は、第1条件群142aと第2条件群142bとで異なる条件以外の条件に対する変更を受け付けるものであってもよい。具体的には、第1条件群142aと第2条件群142bとでは、条件a及び条件bが異なる(
図7及び
図17参照)。すなわち、受付部110は、それ以外の条件c、・・・、条件zに対する変更を受け付けてもよい。
【0120】
プラント2の運転員は、プルダウンアイコン414及びスクロールバー416を操作することにより、第2条件群142bに対して適用する変更内容を選択することができる。具体的には、プラント2の運転員は、プルダウンアイコン414を押下することにより、設定値の候補をプルダウン形式で表示し、変更後の設定値を選択することができる。また、プラント2の運転員は、スクロールバー416を操作することにより、条件e以降の条件を変更内容リスト410に表示することができる。
【0121】
本実施形態においては、プラント2の運転員は、第2条件群142bにおいて条件cを変更するものとする。具体的には、条件cに関連付けられた設定値を設定値c1から設定値c4に変更するものとする。
図20は、第2条件群142bに対して当該変更が適用された条件群の一例を示す図である。当該条件群は、条件a、条件b、条件c、条件d、・・・、条件zを含み、それぞれの条件に対して設定値a1+n×Δa1、設定値b1+n×Δb1、設定値c4、設定値d1、・・・、設定値z1という設定値が関連付けられている。
【0122】
シミュレーション実行ボタン412は、変更内容リスト410により変更が適用された条件群に基づいて、プラントの運転状態に関するシミュレーションを実行するためのボタンである。
【0123】
これにより、プラント2の運転員は、特定の動作環境に対してさらに追加で変更を加えた動作環境におけるシミュレーションを実行することができる。具体的には、
図17に示した第2条件群142bは、プラント2の特定の動作環境を再現するシミュレーションを実行することができる条件群であり、これに対して、
図20に示した条件群は当該特定の動作環境からさらに動作環境を変更した場合のシミュレーションを実行することができる条件群である。例えば、プラント2の運転員が燃料の種類の変更による影響をシミュレーションにより確認したい場合であって、プラント2に経年変化が発生している場合は、当該経年変化の影響を考慮しないまま燃料の種類を変更したシミュレーションを実行しても、高い精度のシミュレーションの結果は得られない。これに対して、事前に経年変化の影響を考慮したシミュレーションの条件群(
図17の第2条件群142bに相当)を推定し、その上で燃料の種類を変更することにより(
図20の条件群に相当)、高い精度のシミュレーションを実行することができる。
【0124】
<7.発明の実施の態様>
上記実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。さらに、当業者であれば、以下に述べる各要素を均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であり、かかる実施の形態も本発明の範囲に含まれる。例えば、上記実施形態の他にも、以下の実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0125】
[付記1]
本発明の一態様に係る支援装置1は、プラント2に設置されたセンサから、特定の動作環境におけるプラント2の運転状態に関する第1プロセス情報140aを取得する第1取得部100aと、一以上の条件を含む第1条件群142aに基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラント2の運転状態に関する第2プロセス情報140bを取得する第2取得部100bと、第1プロセス情報140aと、第2プロセス情報140bとに基づいて、特定の動作環境におけるプラント2の運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群142bを推定する推定部106と、第2条件群142bに関する情報を表示する表示部112と、を備える。
【0126】
[付記2]
上記付記1において、支援装置1は、第1条件群142aと少なくとも一部が異なる第3条件群142cに基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラント2の運転状態に関する第3プロセス情報140cを取得する第3取得部100c、をさらに備え、第1プロセス情報140aと第2プロセス情報140bとの差分は、第1プロセス情報140aと第3プロセス情報140cとの差分よりも小さくてもよい。
【0127】
[付記3]
上記付記1または付記2において、支援装置1は、第1条件群142aの少なくとも一部の条件を選択する選択部108、をさらに備え、推定部106は、少なくとも選択部108が選択した条件以外の条件は、第1条件群142aと第2条件群142bとが共通すると推定してもよい。
【0128】
[付記4]
上記付記3において、選択部108は、ユーザの入力に基づいて条件を選択してもよい。
【0129】
[付記5]
上記付記1から上記付記4のいずれかにおいて、支援装置1は、ユーザから第2条件群142bの少なくとも一部の条件に対する変更を受け付ける受付部110と、変更が適用された条件群に基づいてプラント2の運転状態に関するシミュレーションを実行する実行部102と、をさらに備えてもよい。
【0130】
[付記6]
上記付記5において、第2条件群142bは、第1条件群142aとは異なる特定の条件を含み、受付部110は、特定の条件以外の条件に対する変更を受け付けてもよい。
【0131】
[付記7]
上記付記1から上記付記6のいずれかにおいて、比較情報は、第1プロセス情報140aと、第2条件群142bに基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラント2の運転状態に関する第4プロセス情報とを比較する情報(プロセス値比較情報148b)を含んでもよい。
【0132】
[付記8]
上記付記1から上記付記7のいずれかにおいて、第1プロセス情報140aは、プラント2の初期動作環境から経年変化が発生したプラント2の運転状態に関するプロセス情報であってもよい。
【0133】
[付記9]
本実施形態の他の一態様に係るプラントシステムは、プラント2に設置されたセンサから、特定の動作環境におけるプラント2の運転状態に関する第1プロセス情報140aを取得する第1取得部100aと、一以上の条件を含む第1条件群142aに基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラント2の運転状態に関する第2プロセス情報140bを取得する第2取得部100bと、第1プロセス情報140aと、第2プロセス情報140bとに基づいて、特定の動作環境におけるプラント2の運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群142bを推定する推定部106と、第2条件群142bに関する情報を表示する表示部112と、を備える。
【0134】
[付記10]
本実施形態の他の一態様に係る支援プログラムは、コンピュータを、
プラント2に設置されたセンサから、特定の動作環境におけるプラント2の運転状態に関する第1プロセス情報140aを取得する第1取得手段(第1取得部100aに相当)と、一以上の条件を含む第1条件群142aに基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラント2の運転状態に関する第2プロセス情報140bを取得する第2取得手段(第2取得部100bに相当)と、第1プロセス情報140aと、第2プロセス情報140bとに基づいて、特定の動作環境におけるプラント2の運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群142bを推定する推定手段(推定部106に相当)と、第2条件群142bに関する情報を表示する表示手段(表示部112に相当)と、として機能させる。
【0135】
[付記11]
本実施形態の他の一態様に係る支援方法は、コンピュータに、プラント2に設置されたセンサから、特定の動作環境におけるプラント2の運転状態に関する第1プロセス情報140aを取得するステップ(S10)と、一以上の条件を含む第1条件群142aに基づくシミュレーションにより計算されるとともにプラント2の運転状態に関する第2プロセス情報140bを取得するステップ(S14)と、第1プロセス情報140aと、第2プロセス情報140bとに基づいて、特定の動作環境におけるプラント2の運転状態に関するシミュレーションを実行するための一以上の条件を含む第2条件群142bを推定するステップ(S22-S24)と、第2条件群142bに関する情報を表示するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0136】
1…支援装置、2…プラント、4…DCS、30…コンピュータ、100…取得部、100a…第1取得部、100b…第2取得部、100c…第3取得部、102…実行部、104…計算部、106…推定部、108…選択部、110…受付部、112…表示部、140a…第1プロセス情報、140b…第2プロセス情報、140c…第3プロセス情報、142a…第1条件群、142b…第2条件群、142c…第3条件群