(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092616
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】塗料用樹脂組成物および塗料
(51)【国際特許分類】
C09D 133/14 20060101AFI20240701BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240701BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20240701BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D7/20
C09D163/00
C09D183/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208688
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】515096952
【氏名又は名称】日本ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】吉本 裕一
(72)【発明者】
【氏名】雲林院 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】冨田 理会
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038CH201
4J038DB001
4J038DL031
4J038KA06
4J038NA03
4J038PB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】屋外環境下でのクラックの発生が抑制され、かつ、低温環境下での初期耐水性に優れる塗膜が得られる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】塗料用樹脂組成物は、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とシロキサンオリゴマー(a2)とを含む主剤(A)およびポリエポキシド(b1)と硬化触媒(b2)とを含む硬化剤(B)を含み、(a1)は8mgKOH/g以上90mgKOH/g以下のアミン価を有し、(b1)は100g/eq以上1,500g/eq以下のエポキシ当量を有し、(a1)において、シラノール基と反応し得る反応性基が存在しないか、前記反応性基の数が、(a1)におけるアミノ基の数の11%未満であり、(b1)において、前記反応性基が存在しないか、前記反応性基の数が、(b1)におけるエポキシ基の数の10%未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤(A)および硬化剤(B)を含み、
前記主剤(A)は、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とシロキサンオリゴマー(a2)とを含み、
前記硬化剤(B)は、ポリエポキシド(b1)と硬化触媒(b2)とを含み、
前記アミノ基含有アクリル樹脂(a1)は、10mgKOH/g以上88mgKOH/g以下のアミン価を有し、
前記ポリエポキシド(b1)は、100g/eq以上1,500g/eq以下のエポキシ当量を有し、
前記アミノ基含有アクリル樹脂(a1)において、シラノール基と反応し得る反応性基が存在しないか、前記反応性基の数が、前記アミノ基含有アクリル樹脂(a1)におけるアミノ基の数の11%未満であり、
前記ポリエポキシド(b1)において、シラノール基と反応し得る前記反応性基が存在しないか、前記反応性基の数が、前記ポリエポキシド(b1)におけるエポキシ基の数の10%未満であり、
前記シロキサンオリゴマー(a2)は、下記一般式(x):
【化1】
(式中、
R
3は、各構造単位において独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、または、単結合を表わし、
R
4は、各構造単位において独立して、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~15のアラルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、または、-O-を表わし、
mは0~200の整数である。)
で表される構造単位Xと、下記一般式(y):
【化2】
(式中、
R
5およびR
6は、各繰り返し単位においてそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または、炭素数7~15のアラルキル基を表わし、
nは0~200の整数である。)
で表される構造単位Yと、
末端基として、水素原子、水酸基、炭素数1~5のアルキル基および炭素数1~5のアルコキシ基よりなる群から選択される少なくとも1つと、を有し、
m+nは、2~200であり、
前記R
4、前記R
5および前記R
6よりなる群から選択される少なくとも1つは、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~15のアラルキル基であって、前記シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に少なくとも1つの炭素数6~10のアリール基または炭素数7~15のアラルキル基を有し、
前記炭素数6~10のアリール基または前記炭素数7~15のアラルキル基である、前記R4、前記R5および前記R6の合計数の前記R4、前記R5および前記R6の基の総数に占める割合Raは、17%以上である、塗料用樹脂組成物であって、
前記塗料用樹脂組成物により形成される塗膜を、JIS K5600-7-6に準じて、宮古島にて、赤道面に向けて水平面に対して20°の角度で屋外暴露試験を1年半行った後のJIS K5659 7.21に準じた光沢保持率が、80%以上である、塗料用樹脂組成物。
【請求項2】
前記R4、前記R5および前記R6よりなる群から選択される少なくとも1つは、フェニル基であって、前記シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に少なくとも1つのフェニル基を有する、請求項1に記載の塗料用樹脂組成物。
【請求項3】
前記R4、前記R5および前記R6よりなる群から選択される、他の少なくとも1つは、炭素数1~5のアルキル基であって、前記シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に少なくとも1つの炭素数1~5のアルキル基を有する、請求項1または2に記載の塗料用樹脂組成物。
【請求項4】
前記R4、前記R5および前記R6よりなる群から選択される、他の少なくとも1つはメチル基であって、前記シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に少なくとも1つのメチル基を有する、請求項3に記載の塗料用樹脂組成物。
【請求項5】
前記反応性基は、水酸基、アルコキシ基、アルコキシシリル基およびシラノール基よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の塗料用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の塗料用樹脂組成物を含む、塗料。
【請求項7】
さらに、労働安全衛生法に規定された第3種有機溶剤を含む、請求項6に記載の塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料用樹脂組成物および塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外に設置される建造物の塗料には、耐候性が求められる。そこで、有機成分とポリシロキサン等の無機成分とが化学的に結合したハイブリッド塗膜が提案されている。ハイブリッド塗膜は、例えば、特許文献1~4に記載された塗料により形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-145268号公報
【特許文献2】特開2018-145371号公報
【特許文献3】国際公開第2019/107124号
【特許文献4】特開2020-164583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2には、ビニル重合体(a1)とポリシロキサン(a2)とが化学的に結合した樹脂組成物が開示されている。特許文献3には、(B)アクリロイルオキシ基に対してマイケル付加反応可能な1つ以上の官能基、およびアルコキシ基を有する化合物と、(C)3官能以上の脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーと、(A)上記の(B)および(C)と反応する反応性基を有するシリコーンレジンとを含む塗料組成物が開示されている。特許文献4には、ポリオルガノシロキサンと、水酸基または反応性ケイ素基を有するアクリル樹脂とを含む塗料組成物が開示されている。これらの組成物はいずれもハイブリッド塗膜を形成する。しかしながら、このようなハイブリッド塗膜は、屋外環境下においてクラックが発生し、さらには低温環境下での初期耐水性に劣る。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、屋外環境下でのクラックの発生が抑制され、かつ、低温環境下での初期耐水性に優れる塗膜が得られる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
主剤(A)および硬化剤(B)を含み、
前記主剤(A)は、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とシロキサンオリゴマー(a2)とを含み、
前記硬化剤(B)は、ポリエポキシド(b1)と硬化触媒(b2)とを含み、
前記アミノ基含有アクリル樹脂(a1)は、10mgKOH/g以上88mgKOH/g以下のアミン価を有し、
前記ポリエポキシド(b1)は、100g/eq以上1,500g/eq以下のエポキシ当量を有し、
前記アミノ基含有アクリル樹脂(a1)において、シラノール基と反応し得る反応性基が存在しないか、前記反応性基の数が、前記アミノ基含有アクリル樹脂(a1)におけるアミノ基の数の11%未満であり、
前記ポリエポキシド(b1)において、シラノール基と反応し得る前記反応性基が存在しないか、前記反応性基の数が、前記ポリエポキシド(b1)におけるエポキシ基の数の10%未満であり、
前記シロキサンオリゴマー(a2)は、下記一般式(x):
【化1】
(式中、
R
3は、各構造単位において独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、または、単結合を表わし、
R
4は、各構造単位において独立して、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~15のアラルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、または、-O-を表わし、
mは0~200の整数である。)
で表される構造単位Xと、下記一般式(y):
【化2】
(式中、
R
5およびR
6は、各繰り返し単位においてそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または、炭素数7~15のアラルキル基を表わし、
nは0~200の整数である。)
で表される構造単位Yと、
末端基として、水素原子、水酸基、炭素数1~5のアルキル基および炭素数1~5のアルコキシ基よりなる群から選択される少なくとも1つと、を有し、
m+nは、2~200であり、
前記R
4、前記R
5および前記R
6よりなる群から選択される少なくとも1つは、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~15のアラルキル基であって、前記シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に少なくとも1つの炭素数6~10のアリール基または炭素数7~15のアラルキル基を有し、
炭素数6~10のアリール基または炭素数7~15のアラルキル基である、前記R
4、前記R
5および前記R
6の合計数の、前記R
4、前記R
5および前記R
6の総数に占める割合は、17%以上である、塗料用樹脂組成物であって、
前記塗料用樹脂組成物により形成される塗膜を、JIS K5600-7-6に準じて、宮古島にて、赤道面に向けて水平面に対して20°の角度で屋外暴露試験を1年半行った後のJIS K5659 7.21に準じた光沢保持率が、80%以上である、塗料用樹脂組成物。
[2]
前記R
4、前記R
5および前記R
6よりなる群から選択される少なくとも1つは、フェニル基であって、前記シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に少なくとも1つのフェニル基を有する、上記[1]の塗料用樹脂組成物。
[3]
前記R
4、前記R
5および前記R
6よりなる群から選択される、他の少なくとも1つは、炭素数1~5のアルキル基であって、前記シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に少なくとも1つの炭素数1~5のアルキル基を有する、上記[1]または[2]の塗料用樹脂組成物。
[4]
前記R
4、前記R
5および前記R
6よりなる群から選択される、他の少なくとも1つはメチル基あって、前記シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に少なくとも1つのメチル基を有する、上記[3]の塗料用樹脂組成物。
[5]
前記反応性基は、水酸基、アルコキシ基、アルコキシシリル基およびシラノール基よりなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]または[2]の塗料用樹脂組成物。
[6]
上記[1]または[2]の塗料用樹脂組成物を含む、塗料。
[7]
さらに、労働安全衛生法に規定された第3種有機溶剤を含む、上記[6]の塗料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、屋外環境下でのクラックの発生が抑制され、かつ、低温環境下での初期耐水性に優れる塗膜が得られる樹脂組成物、およびこれを含む塗料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ポリシロキサンから形成される塗膜は、耐候性に優れると言われている。ところが、水分および熱に長期間暴露されると、ポリシロキサンが縮合して、塗膜に不均一な収縮が発生する。ハイブリッド塗膜は、ポリシロキサンに有機成分を化学的に結合(典型的には、共有結合)して、塗膜に柔軟性を付与することにより、ポリシロキサンの縮合による塗膜の上記の収縮を緩和することを目的としている。しかし、ポリシロキサンと有機成分とを化学的に結合させると、結果的に、ポリシロキサンの水分以外に対する耐候性も、有機成分の柔軟性による収縮緩和作用も、十分に発揮されないことが判明した。以下、耐候性とは、紫外線、熱および水分に対する耐性をいう。
【0009】
本開示では、有機成分であるアミノ基含有アクリル樹脂(a1)およびポリエポキシド(b1)の双方と、無機成分であるシロキサンオリゴマー(a2)とが、反応しないか、あるいは、反応が抑制されるように構成されている。そのため、得られる塗膜において、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とポリエポキシド(b1)との反応物により形成される第1ポリマー部分と、シロキサンオリゴマー(a2)の重合物(あるいは、硬化触媒(b2)を含むシロキサンオリゴマー(a2)の重合物。以下同様。)により形成される第2ポリマー部分とは、互いに実質的に独立している。これにより、塗膜は、有機成分としての特性(例えば柔軟性)と、無機成分としての特性(例えば紫外線および熱に対する耐性)との両方を発揮することができる。
【0010】
第1ポリマー(有機成分)および第2ポリマー(無機成分)双方の機能が十分に発揮されると、第1ポリマーは、第2ポリマーの縮合に起因する収縮に追従してともに収縮することなく、塗膜中に存在できる。よって、塗膜全体の収縮が緩和されて、例えば、微小クラックの発生が抑制される。また、第2ポリマーによる紫外線および熱に対する耐性によって、例えば、チョーキングの発生が抑制される。
【0011】
さらに、本開示に係る樹脂組成物により形成される塗膜は、JIS K5600-7-6に準じて、宮古島にて、赤道面に向けて水平面に対して20°の角度で屋外暴露試験(以下、単に屋外暴露試験と称する場合がある。)を1年半行った後のJIS K5659 7.21に準じた光沢保持率が、80%以上である。上記光沢保持率は、83%以上であってよく、85%以上であってよい。
【0012】
屋外暴露試験は、例えば、外部試験機関(代表的には、一般財団法人 日本ウエザリングテストセンター(JWTC)、宮古島暴露試験場(沖縄県宮古島市))が行ってもよい。
【0013】
光沢保持率は、塗膜の表面状態の変化(例えば、表面凹凸、表面粗度の変化)を表わしている。屋外暴露試験において、塗膜は、紫外線、熱および水分(例えば、雨、雪、霜)などに曝される。この屋外暴露試験を行った後であっても、光沢保持率が80%以上であるということは、紫外線、熱および水などに曝された場合にも、表面状態の変化が極めて小さいということを意味する。通常、紫外線、熱および水分は、有機成分(第1ポリマー)を劣化させ、無機成分(第2ポリマー)の収縮を促進させる。
【0014】
屋外暴露試験において、表面状態は、例えば、第1ポリマーの劣化および/または第2ポリマーの収縮によって変化する。表面状態の変化が小さい(すなわち、屋外暴露試験後の塗膜の光沢保持率が80%以上である)ということは、換言すれば、第1ポリマーおよび第2ポリマー双方の機能が、十分に発揮されていることを示している。第1ポリマーと第2ポリマーとが互いに実質的に独立していると、屋外暴露試験後の塗膜の光沢保持率が80%以上になり易い。
【0015】
第1ポリマーの劣化および第2ポリマーの収縮は、微小クラックおよび/またはチョーキングの発生、密着性の低下、および変退色として現れる。
【0016】
有機成分とは、主鎖に炭素-炭素結合を含む成分であって、本明細書では、第1ポリマーの他、第1ポリマーの材料(すなわち、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)およびポリエポキシド(b1))を指す場合がある。無機成分とは、主鎖に炭素-炭素結合以外の結合(本明細書では、Si-O)を含む成分であって、本明細書では、第2ポリマーの他、第2ポリマーの材料(すなわち、シロキサンオリゴマー(a2))を指す場合がある。
【0017】
「第1,第2ポリマー部分が互いに実質的に独立している」とは、割合R1が0%あるいは11%未満であり、かつ、割合R2が0%あるいは10%未満である範囲で生じ得る、アミノ基含有アクリル樹脂および/またはポリエポキシドと、シロキサンオリゴマーとの結合を許容する。アミノ基含有アクリル樹脂および/またはポリエポキシドと、シロキサンオリゴマーとは、上記の許容される範囲において結合していてよく、結合していなくてよい。両者の結合は、他の化合物を介していてよく、他の化合物を介在していなくてよい。
【0018】
加えて、本開示に係る樹脂組成物において、シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に炭素数6~10のアリール基または炭素数7~15のアラルキル基を有する。そのため、シロキサンオリゴマー(a2)の極性が高くなって、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)等の有機成分との極性差が小さくなる。その結果、有機成分と無機成分とが均一に混ざり合うことができる。
【0019】
このように、塗料において有機成分と無機成分とが均一に混ざり合っていることにより、塗膜の低温環境下での初期耐水性が向上する。屋外に設置されている建造物に塗装する際、塗料は、通常、屋外環境下で数日から1週間かけて硬化する。初期耐水性とは、塗料が完全に硬化していない段階(例えば、屋外建造物に塗装してから1~2日以内)における耐水性をいう。
【0020】
塗料が硬化するまでの間、周囲の環境の温度および湿度は変化し、天候も変化し得る。例えば、雨あるいは雪が降る場合も想定される。塗料が完全に硬化していない段階で塗料に水分が接触すると、シロキサンオリゴマー(a2)の縮合が先行して起こる。そのため、塗膜において、第2ポリマーのみからなる凝集部分が形成される。その結果、第1ポリマーと第2ポリマーとが分離した状態で形成され易くなって、塗膜表面の第2ポリマーの凝集部分の表面粗度が高くなる。これにより、初期耐水性が低下する。初期耐水性の低下は、低温環境下で塗装および硬化が行われる場合に、特に生じ易い。有機成分の硬化速度が低下し易くなって、シロキサンオリゴマー(a2)の縮合との速度の差がさらに大きくなるためである。
【0021】
有機成分と無機成分とが均一に混ざり合っていることにより、シロキサンオリゴマー(a2)の縮合が先行して起こった場合であっても、その周囲には有機成分が存在しているため、そこで柔軟な第1ポリマー部分が形成される。そのため、表面粗度の増大が抑制されて、初期耐水性が向上する。
【0022】
低温環境下とは、例えば、23℃以下であり、20℃以下であってよい。低温環境下とは、0℃以上であってよく、5℃以上であってよい。
【0023】
さらに、得られる塗膜においても、第1,第2ポリマーとは、少なくとも一部で絡み合うことができる。つまり、塗膜において、第1ポリマー部分と第2ポリマー部分とは、分離することなく相溶する。これにより、第1ポリマーおよび第2ポリマー双方の機能は、さらに発揮され易い。
【0024】
[樹脂組成物]
上記の塗膜は、以下のような樹脂組成物から形成される。
本開示に係る樹脂組成物は、主剤(A)および硬化剤(B)を含む。主剤(A)は、有機成分としてアミノ基含有アクリル樹脂(a1)を含み、無機成分としてシロキサンオリゴマー(a2)を含む。硬化剤(B)は、ポリエポキシド(b1)と硬化触媒(b2)とを含む。
【0025】
アミノ基含有アクリル樹脂(a1)は、ポリエポキシド(b1)と反応して架橋することで、第1ポリマーを形成する。アミノ基含有アクリル樹脂(a1)において、シラノール基と反応し得る反応性基(以下、第1反応性基と称する。)が存在しないか、あるいは、第1反応性基の数が、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)におけるアミノ基の数の11%未満である。そのため、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とシロキサンオリゴマー(a2)とは、反応しないか、あるいは、反応し難い。
【0026】
シロキサンオリゴマー(a2)は、自己縮合してシロキサン結合を形成することにより架橋して、第2ポリマーを形成する。一方、シロキサンオリゴマー(a2)は、後述するように、アミノ基と反応する基(典型的にはエポキシ基)およびエポキシ基と反応する基(典型的にはアミノ基)を有さないため、上記の有機成分と反応しない。
【0027】
ポリエポキシド(b1)は、上記の通り、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)と反応して架橋することで、第1ポリマーを形成する。ポリエポキシド(b1)において、第1反応性基が存在しないか、あるいは、第1反応性基の数が、ポリエポキシド(b1)におけるエポキシ基の数の10%未満であるため、ポリエポキシド(b1)は、シロキサンオリゴマー(a2)と反応しないか、あるいは、反応し難い。
【0028】
硬化触媒(b2)は、シロキサンオリゴマー(a2)の縮合反応、および、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とポリエポキシド(b1)との反応を促進する。さらに、硬化触媒(b2)が有機金属化合物の場合、有機金属化合物の中心金属は、第2ポリマーに組み込まれて、固定化される。これにより、有機金属化合物の触媒作用が低下して、安定化する。そのため、屋外暴露時におけるシロキサンオリゴマー(a2)の縮合反応がさらに抑制される。
【0029】
(アミノ基含有アクリル樹脂(a1))
アミノ基含有アクリル樹脂(a1)は、有機成分の1つであって、1以上のアミノ基を含有する。アミノ基含有アクリル樹脂(a1)は、ポリエポキシド(b1)と反応して、第1ポリマーを形成する。
【0030】
アミノ基含有アクリル樹脂(a1)において、シラノール基と反応し得る反応性基(第1反応性基)が存在しないか、あるいは、第1反応性基の数が、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)におけるアミノ基の数の11%未満である。このように、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)における第1反応性基の存在量が少ないことにより、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とシロキサンオリゴマー(a2)とは、反応しないか、あるいは、反応し難い。
【0031】
第1反応性基としては、水酸基、アルコキシ基、アルコキシシリル基およびシラノール基よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0032】
アミノ基含有アクリル樹脂(a1)におけるアミノ基の数に対する、第1反応性基の数の割合R1は、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)の構造式から求めることができる。構造式における第1反応性基の数をアミノ基の数で除して、100を乗じた値が、割合R1である。
【0033】
割合R1は、アミノ基含有アクリル樹脂の成分分析等により得られる、アミノ基および第1反応性基の数から算出してもよい。アミノ基の数は、アミノ基含有アクリル樹脂の1H-NMR測定により得られるスペクトルのピーク積分値比、あるいは、アミノ基含有アクリル樹脂のアミン価を測定することにより求められる。第1反応性基としての水酸基の数は、アミノ基含有アクリル樹脂の水酸基価を測定することにより求められる。アルコキシ基の数は、アミノ基含有アクリル樹脂の1H-NMR測定により得られるスペクトルのピーク積分値比から求められる。シラノール基およびアルコキシシリル基の数は、アミノ基含有アクリル樹脂の1H-NMRあるいは29Si-NMR測定により得られるスペクトルのピーク積分値比、もしくは、ICP発光分光分析法により得られるSi濃度から求められる。
【0034】
アミン価は、ASTM D2073に準じ、以下の方法で求めることができる。
(1)200ml三角フラスコに、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)を500mg精秤する。
(2)テトラヒドロフラン(THF)約50mlを加え、均一に溶解する。
(3)指示薬(メチルバイオレット溶液)を5~6滴加え、均一に攪拌する。
(4)0.2N塩酸-エタノール溶液で滴定していき、明緑色となった点を終点とする。
(上記(3)および(4)は電位差滴定に置き換えてもよい。)
【0035】
割合R1は、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)の合成に使用される原料モノマーの質量割合および分子量から、下記式で求めてもよい。下記式において、WR11、WR12・・・は、第1反応性基を含有するモノマーのそれぞれの配合量(g)を表わし、n11、n12・・・は、当該モノマー1分子中の第1反応性基の数であり、MR11、MR12は、当該モノマーのそれぞれの分子量を表わす。WA11、WA12・・・は、アミノ基を含有するモノマーのそれぞれの配合量(g)を表わし、m11、m12・・・は、当該モノマー1分子中のアミノ基の数であり、MA11、MA12・・・は、当該モノマーのそれぞれの分子量を表わす。
【0036】
割合R1は、10%以下であってよく、5%以下であってよく、2%以下であってよく、0%であってよい。
【0037】
アミノ基含有アクリル樹脂(a1)は、8mgKOH/g以上90mgKOH/g以下のアミン価を有する。アミン価が8mgKOH/g以上であることにより、ポリエポキシド(b1)との架橋点が増えて、得られる塗膜の耐水性および耐候性が向上する。アミン価が90mgKOH/g以下であることにより、過度な架橋が抑制されて、柔軟性の低下が抑制される。アミノ基含有アクリル樹脂(a1)のアミン価は、10mgKOH/g以上であってよく、12mgKOH/g以上であってよい。アミノ基含有アクリル樹脂(a1)のアミン価は、89mgKOH/g以下であってよく、36mgKOH/g以下であってよい。
【0038】
アミノ基含有アクリル樹脂(a1)の重量平均分子量Mwは、例えば、5,000以上200,000以下である。アミノ基含有アクリル樹脂(a1)のMwが5,000以上であることにより、第1ポリマーの紫外線による分解が抑制され易い。アミノ基含有アクリル樹脂(a1)のMwが200,000以下であることにより、塗膜の柔軟性の低下が抑制され易い。アミノ基含有アクリル樹脂(a1)のMwは、10,000以上であってよく、20,000以上であってよく、25,000以上であってよい。アミノ基含有アクリル樹脂(a1)のMwは、100,000以下であってよく、70,000以下であってよく、50,000以下であってよい。
【0039】
アミノ基含有アクリル樹脂(a1)は、重合体として、シロキサンオリゴマー(a2)と混合される。樹脂組成物は、2種以上のアミノ基含有アクリル樹脂(a1)を含んでいてよい。2種以上のアミノ基含有アクリル樹脂(a1)は、それぞれが重合体として、シロキサンオリゴマー(a2)と混合される。2種以上のアミノ基含有アクリル樹脂(a1)は、2種以上の重合体の混合物として、シロキサンオリゴマー(a2)と混合されてよい。
【0040】
アミノ基含有アクリル樹脂(a1)の、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)、シロキサンオリゴマー(a2)およびポリエポキシド(b1)の合計の固形分量に占める質量割合は、例えば、10質量%以上80質量%以下である。アミノ基含有アクリル樹脂(a1)の上記質量割合が10質量%以上であることにより、第1ポリマーの特性が発揮され易くなる。アミノ基含有アクリル樹脂(a1)の上記質量割合が80質量%以下であることにより、第2ポリマーの特性が発揮され易くなる。アミノ基含有アクリル樹脂(a1)の上記質量割合は、20質量%以上であってよく、30質量%以上であってよく、40質量%以上であってよく、50質量%以上であってよい。アミノ基含有アクリル樹脂(a1)の上記質量割合は、77質量%以下であってよく、73質量%以下であってよく、70質量%以下であってよい。
【0041】
アミノ基は、一級であってよく、二級であってよく、三級であってよい。アミノ基含有アクリル樹脂(a1)は、1分子中に少なくとも1つの第三級アミノ基を有していてよい。これにより、有機成分の架橋密度が高くなって、耐候性がより向上する。第三級アミノ基の数は、2つ以上であってよく、3つ以上であってよい。
【0042】
アミノ基含有アクリル樹脂(a1)は、通常、アミノ基含有重合性モノマー(m1)、および、当該アミノ基含有重合性モノマー(m1)と共重合可能なその他の重合性モノマー(m2)を含む原料モノマーの共重合体である。第三級アミノ基を含有する重合性モノマーを用いると、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)に1以上の第三級アミノ基を導入することができる。
【0043】
アミノ基含有重合性モノマー(m1)は、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(DMAEMA)、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートおよびN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの第三級アミノ基含有モノマー;N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの第二級アミノ基含有モノマーよりなる群から選択される少なくとも1つであってよい。「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を含む概念である。
【0044】
他の重合性モノマー(m2)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性モノマー;N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシ基含有重合性モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等の含窒素重合性モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性モノマー;N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメトキシ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノアルコキシ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有重合性モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性モノマーが挙げられる。他の重合性モノマー(m2)は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0045】
原料モノマーとして、さらに、第1反応性基を有する重合性モノマーを使用してよい。ただし、第1反応性基を含有する重合性モノマーは、上記の割合R1が11%未満になるように用いられる。
【0046】
第1反応性基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性モノマー;(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ-ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等のその他の水酸基含有重合性モノマー;ジメチルビニルシラノール、メチルフェニルビニルシラノール等のシラノール基含有重合性モノマーが挙げられる。第1反応性基を有するモノマーは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0047】
(ポリエポキシド(b1))
ポリエポキシド(b1)は、有機成分の1つであって、1分子中に少なくとも2つのエポキシ基(オキシラン環)を有する。ポリエポキシド(b1)は、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)と反応して、第1ポリマーを形成する。
【0048】
ポリエポキシド(b1)において、上記のシラノール基と反応し得る第1反応性基が存在しないか、あるいは、第1反応性基の数が、ポリエポキシド(b1)におけるエポキシ基の数の10%未満である。このように、ポリエポキシド(b1)における第1反応性基の存在量が少ないことにより、ポリエポキシド(b1)とシロキサンオリゴマー(a2)とは、反応しないか、あるいは、反応し難い。
【0049】
ポリエポキシド(b1)におけるエポキシ基の数に対する、第1反応性基の数の割合R2は、ポリエポキシド(b1)の構造式から求めることができる。構造式における第1反応性基の数をエポキシ基の数で除して、100を乗じた値が、割合R2である。
【0050】
割合R2は、ポリエポキシドの成分分析等により得られる、エポキシ基および第1反応性基の数から算出してもよい。エポキシ基の数は、ポリエポキシドの1H-NMR測定により得られるスペクトルのピーク積分値比、あるいは、ポリエポキシドのエポキシ当量を測定することにより求められる。第1反応性基の数は、上記と同様にして得られる。エポキシ当量は、例えば、JIS K 7236:2001に準拠して求められる。
【0051】
割合R2は、ポリエポキシド(b1)の合成に使用される原料モノマーの質量割合および分子量から、下記式で求めてもよい。下記式において、WR21、WR22・・・は、第1反応性基を含有するモノマーのそれぞれの配合量(g)を表わし、n21、n22・・・は、当該モノマー1分子中の第1反応性基の数であり、MR21、MR22は、当該モノマーのそれぞれの分子量を表わす。WE11、WE12・・・は、エポキシ基を含有するモノマーのそれぞれの配合量(g)を表わし、m21、m22・・・は、当該モノマー1分子中のエポキシ基の数であり、ME11、ME12・・・は、当該モノマーのそれぞれの分子量を表わす。
【0052】
割合R2は、9.5%以下であってよく、5%以下であってよく、2%以下であってよく、0%であってよい。
【0053】
ポリエポキシド(b1)は、100g/eq以上1,500g/eq以下のエポキシ当量を有する。エポキシ当量が100g/eq以上であることにより、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)との架橋点が増えて、得られる塗膜の耐水性および耐候性が向上する。エポキシ当量が1,500g/eq以下であることにより、過度な架橋が抑制されて、柔軟性の低下が抑制される。ポリエポキシド(b1)のエポキシ当量は、120g/eq以上であってよく、130g/eq以上であってよい。ポリエポキシド(b1)のエポキシ当量は、1,450g/eq以下であってよく、500g/eq以下であってよく、400g/eq以下であってよい。
【0054】
ポリエポキシド(b1)の重量平均分子量Mwは、例えば、200以上100,000以下である。ポリエポキシド(b1)のMwが200以上であることにより、第1ポリマーの紫外線による分解が抑制され易い。ポリエポキシド(b1)のMwが100,000以下であることにより、塗膜の柔軟性の低下が抑制され易い。ポリエポキシド(b1)のMwは、250以上であってよい。ポリエポキシド(b1)のMwは、50,000以下であってよく、30,000以下であってよい。
【0055】
ポリエポキシド(b1)の、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)、シロキサンオリゴマー(a2)およびポリエポキシド(b1)の合計の固形分量に占める質量割合は、例えば、0.8質量%以上80質量%以下である。ポリエポキシド(b1)の上記質量割合が0.8質量%以上であることにより、第1ポリマーの特性が発揮され易くなる。ポリエポキシド(b1)の上記質量割合が80質量%以下であることにより、第2ポリマーの特性が発揮され易くなる。ポリエポキシド(b1)の上記質量割合は、1.0質量%以上であってよい。ポリエポキシド(b1)の上記質量割合は、60質量%以下であってよく、40質量%以下であってよく、20質量%以下であってよく、18質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。
【0056】
ポリエポキシド(b1)は、1分子中に少なくとも1つのグリシジル基を有していてよい。ポリエポキシド(b1)の1分子中のグリシジル基の数は、2以上であってよい。ポリエポキシド(b1)の1分子中のすべてのエポキシ基が、グリシジル基であってよい。
【0057】
ポリエポキシド(b1)としては、例えば、グリシジル基含有アクリル樹脂、グリシジルエーテル型のポリエポキシド、グリシジルエステル型のポリエポキシド、グリシジルアミン型のポリエポキシド、脂環型のポリエポキシドが挙げられる。なかでも、柔軟性および耐候性の点で、グリシジル基含有アクリル樹脂であってよく、グリシジルエーテル型ポリエポキシドであってよい。
【0058】
グリシジル基含有アクリル樹脂は、エポキシ基含有重合性モノマー、および、当該エポキシ基含有重合性モノマーと共重合可能なその他の重合性モノマーを含む原料モノマーの共重合体である。エポキシ基含有重合性モノマーの具体例は、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)の原料モノマーの1つとして挙げられている。エポキシ基含有重合性モノマーは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。その他の重合性モノマーの具体例としては、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)の原料モノマーのうち、エポキシ基含有重合性モノマー以外が挙げられる。その他の重合性モノマーは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。ただし、第1反応性基を含有する重合性モノマーは、上記の割合R2が10%未満になるように用いられる。
【0059】
グリシジルエーテル型のポリエポキシドとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0060】
グリシジルエステル型のポリエポキシドとしては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、へキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル-p-オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル-グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルが挙げられる。
【0061】
グリシジルアミン型のポリエポキシドとしては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’-ジグリシジル誘導体、p-アミノフェノールのN,N,O-トリグリシジル誘導体、m-アミノフェノールのN,N,O-トリグリシジル誘導体が挙げられる。
【0062】
脂環型のポリエポキシドとしては、例えば、3,4-エポキシシクロへキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシシクロヘキサノン-メタ-ジオキサン、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルが挙げられる。
【0063】
樹脂組成物は、2種以上のポリエポキシド(b1)を含んでいてよい。
【0064】
(シロキサンオリゴマー(a2))
シロキサンオリゴマー(a2)は、無機成分であって、自己縮合して、第2ポリマーを形成する。
【0065】
シロキサンオリゴマー(a2)は、下記一般式(x):
【化3】
(式中、
R
3は、各構造単位において独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、または、単結合を表わし、
R
4は、各構造単位において独立して、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~15のアラルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、または、-O-を表わし、
mは0~200の整数である。)
で表される構造単位Xと、下記一般式(y):
【化4】
(式中、
R
5およびR
6は、各繰り返し単位においてそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または、炭素数7~15のアラルキル基を表わし、
nは0~200の整数である。)
で表される構造単位Yと、
末端基として、水素原子、水酸基、炭素数1~5のアルキル基および炭素数1~5のアルコキシ基よりなる群から選択される少なくとも1つと、を有する。
【0066】
m+nは、2~200の整数である。m+nが2以上であることにより、第2ポリマーの無機成分としての特性が発揮される。m+nが200以下であることにより、第2ポリマーの分子量が過度に大きくなることが抑制されて、第1ポリマーと混ざり易くなり、相溶性が向上する。m+nは、3以上であってよく、5以上であってよい。m+nは、150以下であってよく、60以下であってよく、20以下であってよく、15以下であってよい。
【0067】
m+nは、シロキサンオリゴマー(a2)の重量平均分子量と、構造単位X,Yを構成する比率およびこれらの分子量とにより求められる。重量平均分子量は、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定できる。構造単位X,Yを構成する比率およびこれらの分子量は、処方、あるいは29Si-NMR測定により得られるスペクトルのピーク積分値等から算出できる。
【0068】
R4、R5およびR6よりなる群から選択される少なくとも1つは、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~15のアラルキル基である。そして、シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に少なくとも1つの炭素数6~10のアリール基または炭素数7~15のアラルキル基を有する。これにより、シロキサンオリゴマー(a2)の極性が高くなって、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)およびポリエポキシド(b1)との極性差が小さくなる。これにより、樹脂組成物において有機成分と無機成分とがよく混ざり合う。
【0069】
R4、R5およびR6よりなる群から選択される少なくとも1つは、炭素数6~10のアリール基であってよく、炭素数6~8のアリール基であってよく、フェニル基であってよい。そして、シロキサンオリゴマー(a2)が、側鎖に少なくとも1つの炭素数6~10のアリール基を有していてよく、少なくとも1つの炭素数6~8のアリール基を有していてよく、少なくとも1つのフェニル基を有していてよい。
【0070】
炭素数6~10のアリール基または炭素数7~15のアラルキル基である、R4、R5およびR6の合計数の、R4、R5およびR6の基の総数に占める割合Raは、17%以上である。これにより、得られる第2ポリマーの第1ポリマーに対する相溶性がより向上する。割合Raは、18%以上であってよく、19%以上であってよい。割合Raは、100%であってよく、80%以下であってよく、70%以下であってよい。
【0071】
割合Raは、シロキサンオリゴマー(a2)の合成に使用される原料モノマーの処方、IR、もしくは、1H-NMR測定の結果から、下記式で求められる。
Ra=100×(炭素数6~10のアリール基または炭素数7~15のアラルキル基である、R4、R5およびR6の合計数)/(R4、R5およびR6の基の総数)
R4、R5およびR6の基の数は、1H-NMR測定により得られる各置換基に相当するピーク比から算出することができる。
【0072】
R4、R5およびR6よりなる群から選択される他の少なくとも1つは、炭素数1~5のアルキル基であってよい。そして、シロキサンオリゴマー(a2)が、側鎖に少なくとも1つの炭素数1~5のアルキル基を有していてよい。すなわち、シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に少なくとも1つの炭素数6~10のアリール基、または、炭素数7~15のアラルキル基と、炭素数1~5のアルキル基とを有していてよい。これにより、第2ポリマーの第1ポリマーとの相溶性および常温での硬化性を容易に調整できる。
【0073】
R4、R5およびR6よりなる群から選択される他の少なくとも1つは、炭素数1~3のアルキル基であってよく、エチル基またはメチル基であってよく、メチル基であってよい。そして、シロキサンオリゴマー(a2)が、側鎖に少なくとも1つの炭素数1~3のアルキル基を有していてよく、少なくとも1つのメチル基を有していてよい。
【0074】
炭素数1~5のアルキル基である、R4、R5およびR6の合計数の、R4、R5およびR6の基の総数に占める割合Rbは、0%であってよい。割合Rbは、0%超であってよく、20%以上であってよく、30%以上であってよい。これにより、第2ポリマーの硬化性がより向上する。割合Rbは、83%以下であってよく、81%以下であってよい。
【0075】
割合Rbは、100-Ra(%)であって、100×(炭素数1~5のアルキル基である、R4、R5およびR6の合計数)/(R4、R5およびR6の基の総数)である。
【0076】
シロキサンオリゴマー(a2)は、上記の一般式(x)および(y)から理解されるように、エポキシ基と反応する第2反応性基(典型的にはアミノ基)およびアミノ基と反応する第3反応性基(典型的にはエポキシ基)を有さない。そのため、シロキサンオリゴマー(a2)と、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)およびポリエポキシド(b1)との反応は、一層抑制される。第2反応性基としては、例えば、アミノ基、カルボキシ基が挙げられる。第3反応性基としては、例えば、エポキシ基、ハロゲン基が挙げられる。
【0077】
樹脂組成物は、2種以上のシロキサンオリゴマー(a2)を含んでいてよい。この場合、m+nは、2種以上のシロキサンオリゴマーの混合物の平均値として算出される。
【0078】
m≧1であるとき、シロキサンオリゴマー(a2)は少なくとも構造単位Xを有する。構造単位XにおいてR3が単結合の場合、シロキサンオリゴマー(a2)は、分岐した3次元構造を有している。この場合、R3に結合している酸素原子は、他の構造単位XのSi原子に結合している。
【0079】
m≧1であるとき、シロキサンオリゴマー(a2)は少なくとも構造単位Xを有する。構造単位XにおいてR4が-O-の場合、シロキサンオリゴマー(a2)は、分岐した3次元構造を有している。この場合、R4の酸素原子は、他の構造単位XのSi原子に結合している。
【0080】
n≧1であるとき、シロキサンオリゴマー(a2)は少なくとも構造単位Yを有する。n≧1であって、m=0の場合、シロキサンオリゴマー(a2)は、直鎖状の構造を有している。
【0081】
末端にない構造単位Xにおいて、R3が単結合であり、かつR4が-O-の場合、Si原子の4つの結合手は、それぞれ酸素原子に結合し得る。このようなSi原子を、4官能性であるという。m≧1であるとき、シロキサンオリゴマー(a2)は、4官能性のSi原子を有する構造単位(以下、Q単位と称する場合がある。)を含み得る。Q単位を含むシロキサンオリゴマー(a2)は、4つのアルコキシ基(例えば、炭素数1~5)と結合したSi原子を有するシラン化合物を原料モノマーの1つとして用いて、得られる。
【0082】
末端にない構造単位Xにおいて、R3が単結合であるか、あるいは、R4が-O-の場合、Si原子の結合手のうち3つが、それぞれ酸素原子に結合し得る。このようなSi原子を、3官能性であるという。m≧1であるとき、シロキサンオリゴマー(a2)は、3官能性のSi原子を有する構造単位(以下、T単位と称する場合がある。)を含み得る。T単位を含むシロキサンオリゴマー(a2)は、3つのアルコキシ基(例えば、炭素数1~5)と結合したSi原子を有するシラン化合物を原料モノマーの1つとして用いて、得られる。
【0083】
末端にない構造単位Yにおいて、Si原子の結合手のうち2つが、それぞれ酸素原子に結合し得る。このようなSi原子を、2官能性であるという。n≧1であるとき、シロキサンオリゴマー(a2)は、2官能性のSi原子を有する構造単位(以下、D単位と称する場合がある。)を含み得る。D単位を含むシロキサンオリゴマー(a2)は、2つのアルコキシ基(例えば、炭素数1~5)と結合したSi原子を有するシラン化合物を原料モノマーの1つとして用いて、得られる。
【0084】
末端にある構造単位Yにおいて、Si原子の結合手のうち1つが、酸素原子に結合し得る。このようなSi原子を、単官能性であるという。n≧1であるとき、シロキサンオリゴマー(a2)は、単官能性のSi原子を有する構造単位(以下、M単位と称する場合がある。)を含み得る。M単位におけるSi原子には、末端基として炭素数1~5のアルキル基が結合している。
【0085】
シロキサンオリゴマー(a2)の、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)、シロキサンオリゴマー(a2)およびポリエポキシド(b1)の合計の固形分量に占める質量割合は、例えば、10質量%以上90質量%以下である。シロキサンオリゴマー(a2)の上記質量割合が10質量%以上であることにより、第2ポリマーの特性が発揮され易くなる。シロキサンオリゴマー(a2)の上記質量割合が90質量%以下であることにより、第1ポリマーの特性が発揮され易くなる。シロキサンオリゴマー(a2)の上記質量割合は、15質量%以上であってよく、20質量%以上であってよく、25質量%以上であってよい。シロキサンオリゴマー(a2)の上記質量割合は、70質量%以下であってよく、50質量%以下であってよく、40質量%以下であってよい。
【0086】
(硬化触媒(b2))
硬化触媒(b2)は、シロキサンオリゴマー(a2)の縮合反応、および、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とポリエポキシド(b1)との反応を促進する。
【0087】
硬化触媒(b2)としては、例えば、有機金属化合物、脂肪族アミン、アミン触媒、カルボン酸の金属(例えば、鉛、スズ、亜鉛)錯体、およびホウ酸化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0088】
有機金属化合物としては、例えば、ジアセチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジアセチル錫ジオクトエート、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート等の有機錫化合物;アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリ-n-ブトキシド、アルミニウムトリス(アセトアセテートエチル)、アルミニウムジイソプロポキシ(アセトアセテートエチル)、アルミニウムアセチルアセトナート等の有機アルミニウム化合物;チタニウムテトラ(モノエチルエトキシド)、チタニウムテトラ(モノエチルエトキシド)、チタニウムテトラ(モノブチルエトキシド)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、テトラノルマルブチルチタネート等の有機チタン化合物;ジルコニウムテトラ(モノメチルエトキシド)、ジルコニウムテトラ(モノエチルエトキシド)、ジルコニウムテトラ(モノブチルエトキシド)、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)等の有機ジルコニウム化合物;ナフテン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物が挙げられる。
【0089】
脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1-メチルピペリジン、1-メチルピロリジンが挙げられる。
【0090】
アミン触媒としては、例えば、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、4-(1-ピペリジル)ピリジン、N-メチルイミダゾール、N,N-ジメチルアニリンが挙げられる。
【0091】
ホウ酸化合物としては、例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸トリ(4-クロロフェニル)、ホウ酸トリヘキサフルオロイソプロピル等のホウ酸エステルが挙げられる。
【0092】
硬化触媒(b2)は、有機金属化合物であってよい。有機金属化合物は、シロキサンオリゴマー(a2)の縮合反応を促進するとともに、その中心金属が第2ポリマーに組み込まれて、固定化される。これにより、有機金属化合物の触媒作用が低下して、安定化する。そのため、屋外暴露時におけるシロキサンオリゴマー(a2)の縮合反応がさらに抑制される。
【0093】
硬化触媒(b2)の、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)、シロキサンオリゴマー(a2)およびポリエポキシド(b1)の合計の固形分量に対する質量割合は、0.1質量%以上30質量%以下であってよい。硬化触媒(b2)の上記質量割合は、0.5質量%以上であってよく、1質量%以上であってよい。硬化触媒(b2)の上記質量割合は、10質量%以下であってよく、8質量%以下であってよい。
【0094】
アミノ基含有アクリル樹脂(a1)、シロキサンオリゴマー(a2)およびポリエポキシド(b1)の重量平均分子量Mwは、GPC(例えば、東ソー株式会社製、製品名:HLC-8220GPC、カラム、東ソー株式会社製、製品名:TSK―GEL SUPER HZM―H、TSK―GEL SUPER HZ3000、TSK―GEL SUPER HZ2000)を用い、溶媒にテトラヒドロフラン、または、クロロホルムを用いて測定し、ポリスチレン換算で求めることができる。
【0095】
[塗料]
本開示は、上記の樹脂組成物を含む塗料を包含する。本開示の塗料によれば、屋外環境下でのクラックの発生が抑制され、かつ、低温環境下での初期耐水性に優れる塗膜が得られる。そのため、本開示の塗料は、主に屋外において使用あるいは設置される被塗物の塗装に適している。このような被塗物としては、例えば、橋梁、建築物、タンク、プラント、塔、道路、トンネル、船舶、車両、屋根が挙げられる。被塗物の材質は、例えば、金属(例えば、鋼板などの鋼、亜鉛めっき、ステンレス、アルミニウム)、窯業系材料(例えば、コンクリート、モルタル、スレート、スレート)、プラスチック、ビニルシート、紙、木材、ガラスが挙げられる。
【0096】
(有機溶剤)
塗料は、労働安全衛生法に規定された第3種有機溶剤を含んでよい。第3種有機溶剤は、弱溶剤とも称され、一般的に溶解力が小さい。第3種有機溶剤によって、塗料は所望の粘度に調整される。塗料の固形分濃度は、用途、塗装方法等に応じて適宜設定される。
【0097】
第3種有機溶剤としては、ガソリン、コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む)、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレピン油、ミネラルスピリット(ミネナルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリット、ミネラルターペンを含む)が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0098】
塗料は、第3種有機溶剤以外の有機溶剤を含んでいてよい。他の有機溶剤としては、例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン等の炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノーn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノーt一ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジオキサンなどのエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、アセト酢酸メチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;アセトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール等のアルコール系溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0099】
(顔料)
塗料は、顔料を含んでいてよい。顔料としては、例えば、着色顔料、防錆顔料、体質顔料が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0100】
(添加剤)
塗料は、必要に応じて種々の添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、粘度調整剤、酸化防止剤、消泡剤、表面調整剤、ピンホール防止剤、シランカップリング剤、顔料分散剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0101】
<第2化合物>
1分子中に第1反応性基および第2反応性基の双方を含む第2化合物は、樹脂組成物および塗料に含まれないか、その含有量は少ないことが望ましい。第2化合物の、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)、シロキサンオリゴマー(a2)およびポリエポキシド(b1)の合計の固形分量に対する質量割合は、1質量%以下であってよく、0.8質量%以下であってよく、0.5質量%以下であってよく、0質量%であってよい。
【0102】
第2化合物としては、例えば、アミノ基含有シランカップリング剤、カルボキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。
【0103】
アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とポリエポキシド(b1)との反応性への影響が少ない点で、第2化合物が有する第2反応性基の数は、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)におけるアミノ基の数の11%未満であってよい。
【0104】
アミノ基含有アクリル樹脂(a1)におけるアミノ基の数に対する、第2化合物が有する第2反応性基の数の割合R3は、割合R1と同様に求められる。
【0105】
割合R3を、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)の合成に使用される原料モノマーの質量割合および分子量を用いて求める場合は、下記式が参照できる。下記式において、WR31、WR32・・・は、第2化合物のそれぞれの配合量(g)を表わし、n31、n32・・・は、第2化合物1分子中の第2反応性基の数であり、MR31、MR32は、第2化合物のそれぞれの分子量を表わす。WA11、WA12・・・、m11、m12・・・、MA11、MA12・・・は、割合R1を求める式と同じである。
【0106】
<第3化合物>
1分子中に第1反応性基および第3反応性基の双方を含む第3化合物は、樹脂組成物および塗料に含まれないか、その含有量は少ないことが望ましい。第3化合物の、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)、シロキサンオリゴマー(a2)およびポリエポキシド(b1)の合計の固形分量に対する質量割合は、1質量%以下であってよく、0.8質量%以下であってよく、0.5質量%以下であってよく、0質量%であってよい。
【0107】
第3化合物としては、例えば、エポキシ含有シランカップリング剤、ハロゲン含有シランカップリング剤が挙げられる。
【0108】
アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とポリエポキシド(b1)との反応性への影響が少ない点で、第3化合物が有する第3反応性基の数は、ポリエポキシド(b1)におけるエポキシ基の数の10%未満であってよい。
【0109】
ポリエポキシド(b1)におけるエポキシ基の数に対する、第3化合物が有する第3反応性基の数の割合R4は、割合R1と同様に求められる。
【0110】
割合R4を、ポリエポキシド(b1)の合成に使用される原料モノマーの質量割合および分子量を用いて求める場合は、下記式が参照できる。下記式において、WR41、WR42・・・は、第3化合物のそれぞれの配合量(g)を表わし、n41、n42・・・は、第3化合物1分子中の第3反応性基の数であり、MR41、MR42は、第3化合物のそれぞれの分子量を表わす。WE11、WE12・・・、m21、m22・・・、ME11、ME12・・・は、割合R2を求める式と同じである。
【0111】
<第4化合物>
樹脂組成物および塗料は、第1、第2、第3反応性基のいずもれを含まず、かつ、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)、シロキサンオリゴマー(a2)およびポリエポキシド(b1)以外の、第4化合物を含んでいてよい。樹脂組成物および塗料は、第4化合物を含まなくてよい。
【0112】
第4化合物の、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)、シロキサンオリゴマー(a2)およびポリエポキシド(b1)の合計の固形分量に対する質量割合は、30質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよく、0質量%であってよい。
【0113】
第4化合物としては、例えば、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。
【0114】
(塗料の調製方法)
本開示に係る塗料は、当業者において通常行われる手法によって調製することができる。主剤(A)は、上記のアミノ基含有アクリル樹脂(a1)およびシロキサンオリゴマー(a2)と、必要に応じて他の成分とを混合して調製される。硬化剤(B)は、別途、少なくとも上記のポリエポキシド(b1)および硬化触媒(b2)と、必要に応じて他の成分とを混合して調製される。塗料は、主剤(A)および硬化剤(B)と、必要に応じて他の成分とを混合して調製される。混合には、例えば、ペイントシェーカー、ミキサー等の通常用いられる混合装置が用いられる。
【0115】
(塗装方法)
塗料の塗装方法は、被塗物の形状等に応じて、適宜選択される。塗装方法としては、例えば、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装、流し塗りが挙げられる。
【0116】
[塗膜]
本開示の樹脂組成物または塗料から得られる塗膜は、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とポリエポキシド(b1)との反応物により形成される第1ポリマー部分と、シロキサンオリゴマー(a2)の重合物(あるいは、硬化触媒(b2)を含むシロキサンオリゴマー(a2)の重合物。以下同様。)により形成され、かつ第1ポリマー部分から独立した第2ポリマー部分と、を備える。第1ポリマー部分の少なくとも一部と、第2ポリマー部分の少なくとも一部とは絡み合っている。
【0117】
第1ポリマー部分は、有機成分であって、上記の第1ポリマーにより形成される。第2ポリマー部分は、無機成分であって、上記の第2ポリマーにより形成される。塗膜は、JIS K5600-7-6に準じて、宮古島にて、赤道面に向けて水平面に対して20°の角度で屋外暴露試験を1年半行った後のJIS K5659 7.21に準じた光沢保持率が、80%以上である。さらに、第1,第2ポリマー部分は、互いに実質的に独立している。そのため、塗膜は、有機成分としての特性(例えば柔軟性)と、無機成分としての特性(例えば紫外線および熱に対する耐性)との両方を発揮することができる。これにより、屋外環境下でのクラックの発生が抑制される。
【0118】
アミノ基含有アクリル樹脂、シロキサンオリゴマーおよびポリエポキシドを含む樹脂組成物(すなわち、本開示の塗料用樹脂組成物)において、アミノ基含有アクリル樹脂における割合R1が0%あるいは11%未満であり、かつ、ポリエポキシドにおける割合R2が0%あるいは10%未満であるとき、アミノ基含有アクリル樹脂およびポリエポキシドと、シロキサンオリゴマーとは反応しないか、あるいは、反応し難い。よって、塗膜において、第1,第2ポリマー部分は、互いに実質的に独立した状態で存在する。
【0119】
一方、第1,第2ポリマー部分は互いに実質的に独立しているものの、同じ系内で形成される。さらに、シロキサンオリゴマー(a2)が、側鎖に少なくとも1つの炭素数6~10のアリール基または炭素数7~15のアラルキル基を有する。そのため、2つのポリマー部分同士は少なくとも一部で絡み合っており、第1ポリマー部分と第2ポリマー部分とは、分離することなく相溶している。よって、低温環境下での優れた初期耐水性が得られる。2つのポリマー部分同士は、例えば網目状に絡まっている。形成される網目構造は、セミ相互侵入高分子網目であり得、相互侵入高分子網目であり得る。
【0120】
国際純正応用化学連合(IUPAC)高分子命名法委員会による高分子科学の基本的術語の用語集(日本語訳)によれば、「セミ相互侵入高分子網目[semi-interpenetrating polymer network(SIPN)]」は、「1個または複数の網目(定義 1.58 参照)および1個または複数の線状(定義 1.32 参照)または枝分かれポリマー(定義 1.33 参照)からなるポリマー(定義 2.2 参照)で、線状または枝分かれ高分子の少なくとも数本が網目の少なくとも1個に分子スケール貫通しているものをいう」。「(注)原理的には、構成している線状または枝分かれポリマーが化学結合を切ることなく構成高分子網目から分離することが出来るので、相互侵入高分子網目とは区別される。すなわち、セミ相互侵入高分子網目はポリマーブレンドである。」
【0121】
同様に、「相互侵入高分子網目 [interpenetrating polymer network(IPN)]」は、「2個以上の網目(定義 1.58 参照)が少なくとも分子スケールで部分的に織り混ざっており、互いに共有結合でつながっているわけではないが化学結合を切ることなしに分けることのできないポリマー(定義 2.2 参照)をいう」。「(注)前もって形成された2個以上の高分子網目の混合物はIPNではない。」
【0122】
第1ポリマー部分と第2ポリマー部分とが相溶していることは、例えば、塗膜のTg、塗膜の損失正接(tanδ)のピーク数、あるいは、塗膜表面の透過電子顕微鏡(TEM)の画像によって、確認できる。(方法1)塗膜のTgが、第1ポリマーのみで形成された塗膜のTg1と第2ポリマーのみで形成された塗膜のTg2の間の値であり、かつ、tanδのピーク数が1つであるとき、あるいは、(方法2)TEM画像において海島構造が確認されないとき、第1ポリマー部分と第2ポリマー部分とは相溶しているとみなすことができる。第1ポリマー部分と第2ポリマー部分との相溶性は、上記の2つの方法のうちの少なくとも1つで確認すればよい。
【0123】
tanδは、JIS-K7244-4:1999の引張振動-非共振法に準拠して測定される。測定は、昇温速度2℃/分、周波数8Hzの条件で行われる。tanδは、動的粘弾性測定装置(例えば、株式会社ユービーエム製、商品名:Rheogel E-4000)により測定できる。
【0124】
Tgの指標としてtanδを用いる。横軸が温度、縦軸がtanδであるグラフにおいて、tanδがピークになった温度を、Tgとみなす。
【0125】
塗膜の厚さは、被塗物の種類、使用環境等に応じて、適宜設定される。塗膜の乾燥厚さは、例えば、20μm以上1,000μm以下である。
【0126】
一態様において、本開示に係る塗料用樹脂組成物により形成される塗膜は、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とポリエポキシド(b1)との反応物により形成される第1ポリマー部分と、有機金属化合物を含む硬化触媒(b2)の存在下で重合されたシロキサンオリゴマー(a2)の重合物により形成され、かつ第1ポリマー部分から独立した第2ポリマー部分と、を備え、第1ポリマー部分の少なくとも一部と、第2ポリマー部分の少なくとも一部とが絡み合っており、第2ポリマー部分は、有機金属化合物由来の金属を含む。
【実施例0127】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例により何ら制限されるものではない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り質量基準による。
【0128】
[アミノ基含有アクリル樹脂(a1)Ac1の合成例]
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器および滴下装置を備えた反応容器に第3種有機溶剤(Aソルベント(商品名)、ENEOS社製)35部を仕込み、窒素ガスを通気しながら、115℃まで昇温した。別途、表1に示す原料モノマーを混合して、モノマー混合液を調製した。また、t-ブチルパ-オキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤)1.5部とAソルベント18部とを混合して、開始剤混合液を調製した。上記の反応容器内に、上記のモノマー混合液および開始剤混合液を並行して、3時間かけて滴下した。定法により反応を行った後、Aソルベントにて樹脂固形分を65%に調整した。このようにして、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)Ac1を得た。
【0129】
表1におけるモノマーの詳細は、以下の通りである。
・DMAEMA:N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
・MMA:メチルメタクリレート
・NBA:ノルマルブチルメタクリレート
・IBMA:イソブチルメタクリレート
・EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
【0130】
【0131】
[ポリエポキシド(b1)Ep2の合成例]
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にAソルベント94部を仕込み、窒素ガスを通気しながら、攪拌下、130℃まで昇温した。別途、表2に示す原料モノマーを混合して、モノマー混合液を調製した。また、t-ブチルパ-オキシ-2-エチルヘキサノエート6.16部とAソルベント7部とを混合して、開始剤混合液を調製した。上記の反応容器内に、上記のモノマー混合液および開始剤混合液を並行して、3時間かけて滴下した。定法により反応を行った後、Aソルベントにて固形分を50%に調整した。このようにして、ポリエポキシド(b1)Ep2を得た。
【0132】
表2におけるモノマーの詳細は、以下の通りである。
・EMA:エチルメタクリレート
・HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
・EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート
・GMA:グリシジルメタクリレート
・NBA:n-ブチルアクリレート
【0133】
【0134】
[シロキサンオリゴマー(a2)S1~S6の合成例]
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器および滴下装置を備えた反応容器に、表3に示すシラン化合物と、メタノール10部とを加え混合した。その後、上記の反応容器に、表3に示す量のイオン交換水と硫酸0.78部とを混合したものを1時間かけて滴下しながら、65℃まで昇温した。65℃に維持したまま、4.5時間反応を行った。反応終了後、減圧(100Torr)下で脱溶剤して、シロキサンオリゴマー(a2)S1~S6を得た。
【0135】
m+nは、シロキサンオリゴマー(a2)の重量平均分子量Mw、および、シラン化合物1~4の仕込み量から求めた。
【0136】
表2におけるシラン化合物の詳細は、以下の通りである。
・シラン化合物1:メチルトリメトキシシラン
・シラン化合物2:ジメチルジメトキシシラン
・シラン化合物3:フェニルトリメトキシシラン
・シラン化合物4:ジフェニルジメトキシシラン
【0137】
【0138】
[実施例1]
下記のようにして調製した主剤および硬化剤を混合して、塗料を得た。
【0139】
(1)主剤の調製
アミノ基含有アクリル樹脂(a1)Ac1を31.11部の半量、酸化チタン(商品名:CR-95、石原産業株式会社製、顔料)33.42部、およびAソルベント20.31部をブリキ容器に仕込み、約30分間攪拌した。この内容物を分散用ベッセルに移し、ガラスビーズを適量仕込んだ後、サンドグラインドミルにて2000rpmで約1時間混合した。ガラスビーズを除去した後、得られた白色分散ペーストに、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)Ac1の残量、およびシロキサンオリゴマー(a2)S3を10.65部添加して、15分混合した。このようにして、主剤を得た。
【0140】
(2)硬化剤の調製
ポリエポキシド(b1)Ep1(商品名:エポライト70P、共栄社化学株式会社、グリシジルエーテル型、エポキシ当量142、重量平均分子量284、割合R2:0%)0.47部、ジブチル錫ジラウレート(硬化触媒(b2))2.5部、およびAソルベント4.1部をブリキ容器に仕込み、ディスパーで約15分間混合した。このようにして、硬化剤を得た。
【0141】
[実施例2-4、比較例1]
各成分の配合量を表4に示すように変えたこと以外、実施例1と同様にして、主剤および硬化剤をそれぞれ調製し、塗料を得た。
【0142】
[実施例5]
酸化チタンを配合しなかったこと以外、実施例3と同様にして、主剤および硬化剤をそれぞれ調製し、塗料を得た。主剤の調製において、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)Ac1を68.18部、シロキサンオリゴマー(a2)S5を23.35部、ブリキ容器に仕込み、約30分間攪拌した。
【0143】
[参考例1]
シロキサンオリゴマー(a2)S2を用いたこと以外、実施例1と同様にして、主剤および硬化剤をそれぞれ調製し、塗料を得た。
【0144】
[参考例2]
シロキサンオリゴマー(a2)S2を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、主剤および硬化剤をそれぞれ調製し、塗料を得た。
【0145】
[評価]
得られた塗料を用いて試験板を作製し、下記の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0146】
(i)屋外暴露試験後の光沢保持率
(試験板Aの作製)
塗料を、アルミ処理板(A1050P アロジン#1200、150mm×70mm×0.8mm)に、ドクターブレード(塗布厚10mil)で塗装し、23℃50RH%の条件下で7日間養生して、試験板Aを得た。
【0147】
実施例、比較例および参考例の塗料を用いた塗膜のJIS K5600-4-7に準じて測定された初期60度鏡面光沢度は、70~85であった。
【0148】
(光沢保持率)
試験板Aを、JIS K5600-7-6に準じて、宮古島にて、南面(赤道面)に向けて水平面に対して20°の角度で、1年半架設した。その後、JIS K5659 7.21に準じて、塗膜の光沢保持率を評価した。
【0149】
(ii)屋外暴露試験後の微小クラック抑制
上記の屋外暴露試験後の試験板Aにおける塗膜の表面を目視により観察し、下記に従って評価した。
良:微小クラックの発生は見られない
不良:微小クラックの発生が見られる
【0150】
(iii)初期耐水性
(試験板B1の作製)
塗料を、ガラス板に3MILドクターブレードで塗装し、23℃、50RH%の条件下で1日間養生して試験板B1を作成した。
【0151】
(試験板B2の作製)
塗料を、ガラス板に3MILドクターブレードで塗装し、5℃、80RH%の条件下で1日間養生して試験板B2を作成した。
【0152】
(初期耐水試験(常温))
得られた試験板B1を、23℃、50RH%で1日間水道水へ浸漬し、次いで1日間乾燥した。乾燥後の試験板B1を目視にて評価した。
最良:浸漬跡(白化、膨れ)が残っていない
良:浸漬跡がわずかに残っている
不良:浸漬跡が残っている
最不良:浸漬跡が著しく残っている
【0153】
(初期耐水試験(低温))
得られた試験板B2を、5℃、80RH%で1日間水道水へ浸漬し、次いで1日間乾燥した。乾燥後の試験板B2を目視にて上記と同様に評価した。この条件は、冬季の雨あるいは霜が降っている環境下で、塗料を硬化させる場合を想定している。
【0154】
(iv)tanδ、Tg
上記の試験板Aと同様に作成された試験板を用いた。試験板から塗膜を剥離し、JIS-K7244-4:1999の引張振動-非共振法に準拠して、動的粘弾性測定装置(株式会社ユービーエム製、商品名:Rheogel E-4000)を用いて、tanδおよびTg測定した。測定条件は、昇温速度2℃/分、周波数8Hzであった。
【0155】
測定は、実施例5の塗料を用いて作製された試験板を用いて行った。アミノ基含有アクリル樹脂(a1)Ac1とポリエポキシド(b1)Ep1とから得られる第1ポリマーのTgは、40℃であった。実施例5で調整されたシロキサンオリゴマー(a2)S5から得られる第2ポリマーのTgは、73℃±2℃であった。
良:tanδのピークが1つであり、Tgが45℃から65℃の間にある
不良:tanδのピークが2つであるか、tanδのピークが1つだが、Tgが40±2℃の間にある
【0156】
【0157】
実施例1~5の塗膜はいずれも、低温環境下(5℃)での初期耐水性に優れていた。これは、実施例1~5のシロキサンオリゴマー(a2)の割合Raが高く、塗料において、有機成分と無機成分とがよく混ざり合っていたためと考えられる。このことは、例えば実施例5の塗膜において、tanδのピークが1つであり、Tgが第1ポリマーと第2ポリマーとの間の範囲(49℃)にあったことから理解できる。さらに、実施例1~5の塗膜はいずれも、屋外暴露試験においてクラックの発生が抑制されていた。これは、屋外暴露試験後の塗膜の光沢保持率が80%以上であることからわかるように、第1ポリマーおよび第2ポリマー双方の機能が、十分に発揮されたためと考えられる。
【0158】
比較例1の塗膜は、屋外暴露試験において微小クラックが発生し、さらに、23℃での初期耐水性に劣っていた。これは、ポリエポキシド(b1)Ep2の第1反応性基の割合が高く、シロキサンオリゴマー(a2)と反応してしまったことにより、有機成分による柔軟性が発揮できなかったためと考えられる。比較例1は、特に低温環境下での初期耐水性が低かった。割合Raが0のため、塗料において、有機成分と無機成分が均一に混ざり合うことができずに第1ポリマー部分と第2ポリマー部分とが分離してしまったためと考えられる。
【0159】
参考例1および2の塗膜はいずれも、クラックの発生が抑制されており、23℃での初期耐水性に優れていたものの、低温環境下での初期耐水性が実施例に比べて十分ではなかった。参考例の塗料は、低温環境下以外での塗装に適している。
【0160】
本発明は下記態様を包含する。
[1]
主剤(A)および硬化剤(B)を含み、
前記主剤(A)は、アミノ基含有アクリル樹脂(a1)とシロキサンオリゴマー(a2)とを含み、
前記硬化剤(B)は、ポリエポキシド(b1)と硬化触媒(b2)とを含み、
前記アミノ基含有アクリル樹脂(a1)は、10mgKOH/g以上88mgKOH/g以下のアミン価を有し、
前記ポリエポキシド(b1)は、100g/eq以上1,500g/eq以下のエポキシ当量を有し、
前記アミノ基含有アクリル樹脂(a1)において、シラノール基と反応し得る反応性基が存在しないか、前記反応性基の数が、前記アミノ基含有アクリル樹脂(a1)におけるアミノ基の数の11%未満であり、
前記ポリエポキシド(b1)において、シラノール基と反応し得る前記反応性基が存在しないか、前記反応性基の数が、前記ポリエポキシド(b1)におけるエポキシ基の数の10%未満であり、
前記シロキサンオリゴマー(a2)は、下記一般式(x):
【化5】
(式中、
R
3は、各構造単位において独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、または、単結合を表わし、
R
4は、各構造単位において独立して、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~15のアラルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、または、-O-を表わし、
mは0~200の整数である。)
で表される構造単位Xと、下記一般式(y):
【化6】
(式中、
R
5およびR
6は、各繰り返し単位においてそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または、炭素数7~15のアラルキル基を表わし、
nは0~200の整数である。)
で表される構造単位Yと、
末端基として、水素原子、水酸基、炭素数1~5のアルキル基および炭素数1~5のアルコキシ基よりなる群から選択される少なくとも1つと、を有し、
m+nは、2~200であり、
前記R
4、前記R
5および前記R
6よりなる群から選択される少なくとも1つは、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~15のアラルキル基であって、前記シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に少なくとも1つの炭素数6~10のアリール基または炭素数7~15のアラルキル基を有し、
炭素数6~10のアリール基または炭素数7~15のアラルキル基である、前記R
4、前記R
5および前記R
6の合計数の、前記R
4、前記R
5および前記R
6の総数に占める割合は、17%以上である、塗料用樹脂組成物であって、
前記塗料用樹脂組成物により形成される塗膜を、JIS K5600-7-6に準じて、宮古島にて、赤道面に向けて水平面に対して20°の角度で屋外暴露試験を1年半行った後のJIS K5659 7.21に準じた光沢保持率が、80%以上である、塗料用樹脂組成物。
[2]
前記R
4、前記R
5および前記R
6よりなる群から選択される少なくとも1つは、フェニル基であって、前記シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に少なくとも1つのフェニル基を有する、上記[1]の塗料用樹脂組成物。
[3]
前記R
4、前記R
5および前記R
6よりなる群から選択される、他の少なくとも1つは、炭素数1~5のアルキル基であって、前記シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に少なくとも1つの炭素数1~5のアルキル基を有する、上記[1]または[2]の塗料用樹脂組成物。
[4]
前記R
4、前記R
5および前記R
6よりなる群から選択される、他の少なくとも1つはメチル基あって、前記シロキサンオリゴマー(a2)は、側鎖に少なくとも1つのメチル基を有する、上記[3]の塗料用樹脂組成物。
[5]
前記反応性基は、水酸基、アルコキシ基、アルコキシシリル基およびシラノール基よりなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]~[4]のいずれかの塗料用樹脂組成物。
[6]
上記[1]~[5]のいずれかの塗料用樹脂組成物を含む、塗料。
[7]
さらに、労働安全衛生法に規定された第3種有機溶剤を含む、上記[6]の塗料。
本発明に係る塗料によれば、屋外環境下でのクラックの発生が抑制され、かつ、低温環境下での初期耐水性に優れる塗膜が提供される。本発明に係る塗料は、主に屋外において使用あるいは設置される被塗物の塗装に適している。
前記反応性基は、水酸基、アルコキシ基、アルコキシシリル基およびシラノール基よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の塗料用樹脂組成物。