IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧 ▶ 学校法人 関西大学の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092622
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】タイヤ組立体
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/04 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
B60C23/04 110E
B60C23/04 110A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208698
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100210251
【弁理士】
【氏名又は名称】大古場 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】藤原 崇博
(72)【発明者】
【氏名】杉本 睦樹
(72)【発明者】
【氏名】黒田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 恭太
(72)【発明者】
【氏名】谷 弘詞
(57)【要約】
【課題】機能部材の有効利用が可能なタイヤ組立体を提供する。
【解決手段】タイヤ組立体は、タイヤと、固定部材と、1または複数の機能部材とを備える。タイヤは、内側面に被取付部を有する。固定部材は、前記タイヤの周方向に沿って延びる本体部と、前記被取付部に対して着脱が可能な取付部とを有する。1または複数の機能部材は、前記固定部材に固定される。前記本体部は、金属、合成樹脂、及びゴムの少なくとも1つを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側面に被取付部を有するタイヤと、
前記タイヤの周方向に沿って延びる本体部と、前記被取付部に対して着脱が可能な取付部とを有する固定部材と、
前記固定部材に固定される1または複数の機能部材と
を備え、
前記本体部は、金属、合成樹脂、及びゴムの少なくとも1つを含む、
タイヤ組立体。
【請求項2】
前記1または複数の機能部材のうち少なくとも1つは、前記本体部と前記内側面との間に配置される、
請求項1に記載のタイヤ組立体。
【請求項3】
前記本体部は、前記タイヤの全周に沿って延びるリング状に形成される、
請求項1または2に記載のタイヤ組立体。
【請求項4】
前記本体部の周長は、前記内側面の周長と等しい、
請求項3に記載のタイヤ組立体。
【請求項5】
前記機能部材を複数備え、
前記複数の機能部材は、前記複数の機能部材全体としての質量が、前記タイヤの周方向に沿って、等間隔に分散するように配置される、
請求項3に記載のタイヤ組立体。
【請求項6】
前記1または複数の機能部材は、発電装置、センサ装置、二次電池、コンデンサ、アンテナ装置、発信機、プロセッサ、メモリ及び回路のいずれかである、
請求項1または2に記載のタイヤ組立体。
【請求項7】
前記被取付部及び前記取付部は、それぞれ、面ファスナーで構成される、
請求項1または2に記載のタイヤ組立体。
【請求項8】
前記1または複数の機能部材のうち少なくとも1つは、前記面ファスナーと前記本体部との間に配置される、
請求項7に記載のタイヤ組立体。
【請求項9】
前記1または複数の機能部材のうち少なくとも1つは、第1部材と第2部材とを備える発電装置であり、
前記第1部材は、第1面を形成する第1絶縁膜を有し、
前記第2部材は、前記第1面に対向し、かつ前記第1面に接触する第2面を形成する第2絶縁膜を有し、
前記第1部材及び前記第2部材は、前記第1部材及び前記第2部材に加わる圧力に応じて前記第1面と前記第2面との真実接触面積が変化するように構成され、
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とは、前記真実接触面積が変化することにより一方が正に帯電し、他方が負に帯電するように構成される、
請求項8に記載のタイヤ組立体。
【請求項10】
前記第1部材及び前記第2部材の一方は、前記面ファスナーに固定され、
前記第1部材及び前記第2部材の他方は、前記本体部に固定される、
請求項9に記載のタイヤ組立体。
【請求項11】
前記本体部には、開口、切り欠き及びスリットの少なくとも1つが形成される、
請求項1または2に記載のタイヤ組立体。
【請求項12】
前記切り欠き及び前記スリットの少なくとも一方は、前記タイヤの周方向に交差する方向に沿って延びる、
請求項11に記載のタイヤ組立体。
【請求項13】
前記1または複数の機能部材のうち少なくとも1つは、第1部材と第2部材とを備える発電装置であり、
前記第1部材は、第1面を形成する第1絶縁膜を有し、
前記第2部材は、前記第1面に対向し、かつ前記第1面に接触する第2面を形成する第2絶縁膜を有し、
前記第1部材及び前記第2部材は、前記第1部材及び前記第2部材に加わる圧力に応じて前記第1面と前記第2面との真実接触面積が変化するように構成され、
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とは、前記真実接触面積が変化することにより一方が正に帯電し、他方が負に帯電するように構成される、
請求項5に記載のタイヤ組立体。
【請求項14】
前記本体部は、前記周方向に部分的に沿って延びる帯状の部材である、
請求項1に記載のタイヤ組立体。
【請求項15】
前記被取付部及び前記取付部は、それぞれ、面ファスナーで構成される、
請求項14に記載のタイヤ組立体。
【請求項16】
前記本体部は、前記取付部が固定され、前記タイヤの径方向外側に配置される第1本体部と、前記タイヤの径方向内側に配置される第2本体部と、を含み、
前記1または複数の機能部材は、前記第1本体部と前記第2本体部との間に配置される、
請求項15に記載のタイヤ組立体。
【請求項17】
前記周方向に沿った前記取付部の長さは、前記周方向に沿った前記第2本体部の長さよりも長い、
請求項16に記載のタイヤ組立体。
【請求項18】
前記周方向に沿った前記被取付部の長さは、前記周方向に沿った前記取付部の長さよりも長い、
請求項17に記載のタイヤ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの内部に機能部材が組み込まれたタイヤ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-088473号公報(特許文献1)は、電子装置と、発電体とが一体化したセンサ装置が内部に組み込まれたタイヤ組立体を開示する。特許文献1の発電体は、接触帯電を利用して、車両の走行に伴うタイヤの変形による機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する。このようにして得られた電力は、車両に搭載のバッテリに供給されたり、電子機器を駆動したりするのに利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-088473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、上記センサ装置は、タイヤの内側に貼り付けられたり、タイヤ自体に埋め込まれたりすることにより、タイヤと一体化してタイヤ組立体を構成する。このため、タイヤ組立体のタイヤが寿命を迎えると、発電体やセンサ装置等の機能部材もタイヤと一緒に交換しなければならず、いまだ使用可能なリソースの浪費を招いていた。
【0005】
本発明は、機能部材の有効利用が可能なタイヤ組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係るタイヤ組立体は、タイヤと、固定部材と、1または複数の機能部材とを備える。タイヤは、内側面に被取付部を有する。固定部材は、前記タイヤの周方向に沿って延びる本体部と、前記被取付部に対して着脱が可能な取付部とを有する。1または複数の機能部材は、前記固定部材に固定される。前記本体部は、金属、合成樹脂、及びゴムの少なくとも1つを含む。
【0007】
第1観点に係るタイヤ組立体によれば、タイヤの内側面に対し、機能部材が固定部材を介して着脱可能となる。このため、機能部材を含む固定部材を元のタイヤから分離して、再利用することが可能になる。
【0008】
本発明の第2観点に係るタイヤ組立体は、第1観点に係るタイヤ組立体であって、前記1または複数の機能部材のうち少なくとも1つは、前記本体部と前記内側面との間に配置される。
【0009】
本発明の第3観点に係るタイヤ組立体は、第1観点または第2観点に係るタイヤ組立体であって、前記本体部は、前記タイヤの全周に沿って延びるリング状に形成される。
【0010】
本発明の第4観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第3観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記本体部の周長は、前記内側面の周長と等しい。
【0011】
本発明の第5観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第4観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記機能部材を複数備える。前記複数の機能部材は、前記複数の機能部材全体としての質量が、前記タイヤの周方向に沿って、等間隔に分散するように配置される。
【0012】
第5観点によれば、タイヤ組立体の質量バランスが回転軸に対して対称に維持されるため、タイヤ組立体の回転時に不要な振動が加わることが抑制される。
【0013】
本発明の第6観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第5観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記1または複数の機能部材は、発電装置、センサ装置、二次電池、コンデンサ、アンテナ装置、発信機、プロセッサ、メモリ及び回路のいずれかである。
【0014】
本発明の第7観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第6観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記被取付部及び前記取付部は、それぞれ、面ファスナーで構成される。
【0015】
第7観点によれば、簡易な部材で機能部材の着脱を容易に行うことができる。
【0016】
本発明の第8観点に係るタイヤ組立体は、第7観点に係るタイヤ組立体であって、前記1または複数の機能部材のうち少なくとも1つは、前記面ファスナーと前記本体部との間に配置される。
【0017】
第8観点によれば、機能部材をタイヤにより確実に固定することができる。
【0018】
本発明の第9観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第8観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記1または複数の機能部材のうち少なくとも1つは、第1部材と第2部材とを備える発電装置である。前記第1部材は、第1面を形成する第1絶縁膜を有し、前記第2部材は、前記第1面に対向し、かつ前記第1面に接触する第2面を形成する第2絶縁膜を有し、前記第1部材及び前記第2部材は、前記第1部材及び前記第2部材に加わる圧力に応じて前記第1面と前記第2面との真実接触面積が変化するように構成され、前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とは、前記真実接触面積が変化することにより一方が正に帯電し、他方が負に帯電するように構成される。
【0019】
第9観点に係るタイヤ組立体が第8観点に係るタイヤ組立体である場合、タイヤの変形を発電装置により直接的に伝達することができ、発電装置の発電量をより大きくすることができる。タイヤの変形により発電部材の第1面と第2面とが完全に離れている時間を短縮することができ、これにより、発電装置の合計の発電量をより大きくすることができる。
【0020】
本発明の第10観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第9観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記第1部材及び前記第2部材の一方は、前記面ファスナーに固定され、前記第1部材及び前記第2部材の他方は、前記本体部に固定される。
【0021】
第10観点によれば、発電部材をタイヤにさらに確実に固定することができる。加えて、第1部材と第2部材との位置が互いにずれることを防止することができる。
【0022】
本発明の第11観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第10観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記本体部には、開口、切り欠き及びスリットの少なくとも1つが形成される。
【0023】
第11観点によれば、本体部の剛性を適宜調整することができ、本体部に必要な強度を維持しつつ、本体部をタイヤの変形に追随し易くすることができる。
【0024】
本発明の第12観点に係るタイヤ組立体は、第11観点に係るタイヤ組立体であって、前記切り欠き及び前記スリットの少なくとも一方は、前記タイヤの周方向に交差する方向に沿って延びる。
【0025】
本発明の第13観点に係るタイヤ組立体は、第5観点に係るタイヤ組立体であって、前記1または複数の機能部材のうち少なくとも1つは、第1部材と第2部材とを備える発電装置である。前記第1部材は、第1面を形成する第1絶縁膜を有し、前記第2部材は、前記第1面に対向し、かつ前記第1面に接触する第2面を形成する第2絶縁膜を有し、前記第1部材及び前記第2部材は、前記第1部材及び前記第2部材に加わる圧力に応じて前記第1面と前記第2面との真実接触面積が変化するように構成され、前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とは、前記真実接触面積が変化することにより一方が正に帯電し、他方が負に帯電するように構成される。
【0026】
本発明の第14観点に係るタイヤ組立体は、第1観点に係るタイヤ組立体であって、前記本体部は、前記周方向に部分的に沿って延びる帯状の部材である。
【0027】
本発明の第15観点に係るタイヤ組立体は、第14観点に係るタイヤ組立体であって、前記被取付部及び前記取付部は、それぞれ、面ファスナーで構成される。
【0028】
本発明の第16観点に係るタイヤ組立体は、第15観点に係るタイヤ組立体であって、前記本体部は、前記取付部が固定され、前記タイヤの径方向外側に配置される第1本体部と、前記タイヤの径方向内側に配置される第2本体部と、を含み、前記1または複数の機能部材は、前記第1本体部と前記第2本体部との間に配置される。
【0029】
本発明の第17観点に係るタイヤ組立体は、第16観点に係るタイヤ組立体であって、前記周方向に沿った前記取付部の長さは、前記周方向に沿った前記第2本体部の長さよりも長い。
【0030】
本発明の第18観点に係るタイヤ組立体は、第17観点に係るタイヤ組立体であって、前記周方向に沿った前記被取付部の長さは、前記周方向に沿った前記取付部の長さよりも長い。
【0031】
第18観点によれば、固定部材の着脱が容易である。また、固定部材の軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、機能部材の有効利用が可能なタイヤ組立体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】一実施形態に係るタイヤ組立体の全体構成を示す斜視図。
図2】タイヤの縦断面図。
図3】一実施形態に係る固定部材の全体構成を示す斜視図。
図4】一実施形態に係る本体部の展開図。
図5】発電装置の一例を示す図。
図6】変形例に係るタイヤ組立体の縦断面図。
図7A】変形例に係る本体部の要部拡大図。
図7B】変形例に係る本体部の要部拡大図。
図7C】変形例に係る本体部の要部拡大図。
図7D】変形例に係る本体部の要部拡大図。
図8A】変形例に係る本体部の平面図。
図8B】変形例に係る本体部の平面図。
図8C】変形例に係る本体部の平面図。
図9A】変形例に係るタイヤ組立体の側方断面図。
図9B】変形例に係るタイヤ組立体の展開図。
図10】実施例に係る固定部材の模式図。
図11】実験結果を示すグラフ。
図12A】実験結果を示すグラフ。
図12B】実験結果を示すグラフ。
図13】実験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るタイヤ組立体について説明する。
【0035】
<1.全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ組立体1の全体構成を示す斜視図である。タイヤ組立体1は、センシング機能、発電機能または信号発信機能等の付加機能を有するタイヤ製品であり、各種の車両の車輪に装着され、路面上を回転するように構成される。図1に示すように、タイヤ組立体1は、タイヤ2と、固定部材4と、機能部材3A~3Hとを備える。固定部材4は、タイヤの周方向に沿って延びており、タイヤ2の内側面20に対し、着脱可能に固定することができる。機能部材3A~3Hは、各々、固定部材4に固定されており、このうちの少なくとも1つは、内側面20と固定部材4の外周面40aとの間に配置される。以下、各部材について説明する。
【0036】
<2.各部材の構成>
[タイヤ]
図2は、タイヤ2の縦断面図(タイヤ組立体1の径方向に沿った断面の断面図)である。タイヤ2は、加硫ゴム等から構成され、弾性を有する。タイヤ2の種類及び構造は特に限定されないが、本実施形態のタイヤ2は、図2に示すように、トレッド部200、サイドウォール部201、ショルダ部202及びビード部203を有する。トレッド部200は、タイヤ組立体1の側周面を画定する部分であり、路面と接触して摩擦を生じることで車両を前進させる。サイドウォール部201は、路面からの衝撃を吸収すべく屈曲して撓みを生じる。ショルダ部202は、トレッド部200及びサイドウォール部201に連続する部分である。ビード部203は、ホイールリムに固定される部分であり、図示しないビードワイヤを内蔵する。タイヤ2は、タイヤ2の内部空間を画定する内側面20をさらに有する。以下、内側面20のうち、トレッド部200の裏側に相当する環状の面を、他の部分と区別して内側面20aと称することがある。
【0037】
タイヤ2は、内側面20aに、固定部材4が取り付けられるための被取付部を有する。本実施形態では、被取付部はタイヤ2の周方向に沿って延びる面ファスナー21で構成される。面ファスナー21は、内側面20aにおいて、後述する固定部材4の面ファスナー41に対応する位置に固定されており、これにより、固定部材4を内側面20aに対して着脱可能に固定することができる。本実施形態では、面ファスナー21は、タイヤ2の全周に沿うように内側面21aに固定される。
【0038】
面ファスナー21及び面ファスナー41としては、面的に着脱が可能なファスナーであれば特に限定されず、例えば一方がフック状に起毛し、他方がループ状に起毛したもの、あるいは双方がフック状の起毛とループ状の起毛とを両方備えるもの、その他の形状で結合するもの等であってよい。ただし、タイヤ2の内側の環境を考慮して、面ファスナー21及び面ファスナー41を構成する材料は、耐熱性を有することが好ましい。面ファスナー21の内側面20aへの取付方法は、接着剤による方法や粘着剤による方法等、特に限定されない。
【0039】
[固定部材]
図3は、本実施形態に係る固定部材4の全体構成を示す斜視図である。固定部材4は、後述する機能部材をタイヤ2に対して着脱可能にするための部材であり、本体部40と、取付部とを有する。本体部40は、タイヤ2の周方向に沿って延びる部分であり、例えば上記周方向に沿う長手方向と、長手方向に直交する幅方向とを有する、薄肉の帯状の部材で構成することができる。本体部40は、タイヤ2の周方向に部分的に沿って延びてもよく、全周に沿って延びてもよい。本実施形態の本体部40は、タイヤ2の全周に沿って延び、長手方向の両端が連結されたリング状に形成される。本体部40の外周面40aの周長L1は、内側面20aの周長をL2とすると、0.98×L2以上、1.02×L2以下であることが好ましく、0.99×L2以上、1.01×L2以下であることがより好ましく、L2と等しい(L2の±0.5%以内である)ことがさらに好ましい。
【0040】
本体部40には、固定部材4として必要な強度を維持できる範囲で、開口、切り欠き及びスリットの少なくとも1つが形成されることが好ましい。開口及び切り欠きは、本体部40を構成する部材の一部を切り出すことによって形成することができ、スリットは、本体部40の周縁から内側に向かって切り込みを入れることにより形成することができる。開口、切り欠き及びスリットは、このうち2種類以上が本体部40に形成されてもよい。本体部40に開口、切り欠き及びスリットの少なくとも1つが形成されると、その周辺において本体部40の剛性が低下する。これにより、本体部40は、タイヤ2の空気圧による変形や、衝撃による変形に追随し易くなる。また、特に、開口や切り欠きが形成された場合、本体部40の厚み方向の表面積が増加し、放熱性能が向上する。このため、タイヤ組立体1の走行により生じる熱等により本体部40の温度が過度に上昇し、機能部材3A~3Hの機能に影響を及ぼすことが抑制される。
【0041】
図4は、本実施形態に係る本体部40の展開図である。この例では、本体部40の幅方向に沿って延び、タイヤ2の周方向に交差するように延びる切り欠き400が、長手方向に沿って一定間隔を空けながら、幅方向に互い違いに形成される(符号は、代表的なものにのみ付している)。図4に示すように、切り欠き400の幅方向中心C1により近い方の角は、丸み(アール:R)を有することが好ましい。角に丸みがない場合、タイヤ2の変形から本体部40も変形を受けると、角に応力が集中し、角付近が破損し易くなってしまう。角に丸みをつけることで、応力の集中が緩和され、本体部40が破損しにくくなる。しかし、後述するように、切り欠き400の形状等は適宜変更することができる(図7A~7D参照)。切り欠き400が形成される位置、数及び間隔、ならびに切り欠き400のサイズ及び形状は、特に限定されず、本体部40の剛性、放熱性及び機能部材との配置等を考慮して、適宜変更することができる。上記のことは、本体部40に開口やスリットが形成される場合にも同様に当てはまる。
【0042】
再び図3を参照する。本体部40の外周面40aには、少なくとも1つの機能部材が固定され、これにより、固定部材4がタイヤ2に取り付けられると、少なくとも1つの機能部材が内側面20aと固定部材4との間に位置決めされ、固定される。図3では、参考のために、本実施形態に係る機能部材3A~3Hが固定される位置がそれぞれ破線で示されている。本実施形態では、外周面40aに、複数の機能部材3A~3Hがタイヤ2の周方向に沿って等間隔で配置されるように固定される。複数の機能部材3A~3Hをこのように配置する理由については、後述する。なお、機能部材3A~3Hは、本体部40に対して分離不能に固定されていてもよい。
【0043】
本体部40を構成する材料は特に限定されないが、例えば金属、合成樹脂及びゴムの少なくとも1つを含む材料とすることができる。ただし、合成樹脂及びゴムについては、これらを発泡させたスポンジ材や、これらからなる繊維状の部材を集積して構成される3次元構造体を除くものとする。金属としては、例えばステンレス鋼(SUS)、炭素鋼、アルミニウム、銅、真鍮、鉄及びその他の合金等が挙げられる。これらの金属は、ばね用途材であってもよい。合成樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエンジニアプラスチック、及び繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:FRP)等が挙げられる。
【0044】
本体部40がステンレス鋼で構成される場合、本体部40の厚みは0.3mm以下であることが好ましく、0.25mm以下であることがより好ましい。一方、本体部40が合成樹脂で構成される場合、本体部40の厚みは、0.5mm以上、3mm以下であることが好ましい。
【0045】
取付部は、被取付部に対して着脱が可能な部位であり、本実施形態では、上述した通り、面ファスナー21と結合が可能な面ファスナー41で構成される。面ファスナー41は、本実施形態では外周面40aの全周にわたって延びるように本体部40に固定される。これにより、固定部材4をタイヤ2に取り付ける際に、面ファスナー41と面ファスナー21との位置合わせをする必要がなく、取り付けがより容易になる。また、外周面40aと面ファスナー41との間に機能部材の少なくとも1つが挟まれるようにこれらを配置すると、機能部材を固定部材4に対してより強固に固定することができる。
【0046】
本体部40がリング状である場合、取付部を含む固定部材4の質量は、タイヤ組立体1の走行性能を維持可能な程度に収めることが好ましく、タイヤ2のサイズや本体部40を構成する材料にもよるが、例えば、500g以下であることが好ましい。
【0047】
[機能部材]
タイヤ組立体1は、固定部材4に固定された1または複数の機能部材を備える。本実施形態のタイヤ組立体1は、8つの機能部材3A~3Hを備えるが、機能部材の数は特に限定されない。機能部材は、少なくとも1つが本体部40と内側面20aとの間に配置されていればよく、本実施形態では、7つの機能部材3A~3Gが後述する発電装置3であり、本体部40と内側面20aとの間に配置され、1つの機能部材3Hが後述する回路であり、本体部40の内周面に配置される。機能部材3A~3Gは、各々、外周面40aと、面ファスナー41の結合面の裏面との少なくとも一方に固定される。機能部材3A~3Hの固定方法は、接着剤による方法、粘着テープによる方法等、特に限定されない。
【0048】
機能部材3A~3Hの各々は、発電装置、センサ装置、二次電池、コンデンサ、アンテナ装置、発信機、プロセッサ、メモリ及び回路のいずれかであってよい。つまり、機能部材3A~3Hは、同じ種類の2以上の機能部材を含んでもよく、上述した種類の機能部材を全て含んでいなくてもよい。以下、各機能部材について説明する。
【0049】
発電装置は、タイヤ2の変形を利用して発電を行うものであれば特に限定されず、圧電素子を利用した装置や、接触帯電を利用して発電を行う装置等であってよい。接触帯電を利用して発電を行う装置としては、絶縁性の材料から形成される第1面と、第1面とは異なる絶縁性の材料から形成される第2面とを有し、第1面と第2面との真実接触面積の変化により電位差が発生する発電装置3が挙げられる。タイヤ組立体1は、このような発電装置3を少なくとも1つ備えることが好ましい。発電装置3の詳細については、後述する。
【0050】
タイヤ組立体1が、別の機能部材として二次電池やコンデンサを備える場合、発電装置に生じた電気は、二次電池やコンデンサに蓄えられてもよい。また、タイヤ組立体1が、別の機能部材としてセンサ装置、アンテナ、発信機、プロセッサ、またはメモリ等の電子機器を備える場合、発電装置に生じた電気は、これらの電子機器に適宜供給されてもよい。なお、発電装置は、タイヤ2の回転に連動して発電を行う。このため、発電装置に生じる電位差の変化を検出することで、タイヤの回転速度、摩耗状態、路面の状態及び接地状態の少なくとも1つを監視するためのセンサとして利用することもできる。
【0051】
センサ装置は、タイヤ1組立体内部のセンシングデータを取得するものであれば特に限定されず、例えば空気圧センサ、温度センサ、速度センサ、加速度センサ、回転速度センサ、回転角度センサ等であってよい。センサ装置がタイヤ2と固定部材4との間に配置される場合、センサ装置が固定部材4の内側に配置される場合と比較して、より正確なセンシングデータの取得が可能になる。タイヤ組立体1が、別の機能部材としてプロセッサを備える場合、センサ装置により取得されたセンシングデータは、プロセッサにより加工され、加工データとされてもよい。また、タイヤ組立体1が、別の機能部材としてメモリを備える場合、センサ装置により取得されたセンシングデータやその加工データは、メモリに保存されてもよい。さらに、タイヤ組立体1が、別の機能部材としてアンテナを備える場合、センサ装置により取得されたセンシングデータや、これの加工データは、当該アンテナを介して、車載装置等、タイヤ組立体1の外部の装置に送信されてもよい。
【0052】
プロセッサは、プログラムの実行、データの演算、変換、加工及び送受信、ならびに他の機能部材の動作の制御等を行うものであれば特に限定されず、ハードウェアとしては、例えば演算装置、レジスタ及び周辺回路等を備えるICチップとして構成される。プロセッサは、上述した加工データの生成やデータ送信の他、例えば発電装置に生じた電気の振り分け、アンテナを介した外部装置からのデータ受信等を行ってもよい。
【0053】
メモリは、データ保存領域を有するものであれば特に限定されず、ハードウェアとしては、例えばフラッシュメモリチップとして構成される。メモリは、不揮発性で書き換え可能なメモリであってもよく、プログラム等が格納された書き換え不可能なメモリであってもよく、データを一時保存するための揮発性のメモリであってもよい。
【0054】
二次電池は、充電を行うことにより繰り返し使用することができる電池であれば特に限定されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウム電池、アルカリ蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、全固体電池等であってよい。二次電池は、上記電子機器に電気を供給するのに使用することができる。
【0055】
コンデンサは、特に限定されず、どのようなものでも使用することができる。コンデンサは、必要に応じて発電装置に生じた電気を貯めたり、上記電子機器に電気を供給する他、電圧を一定に維持したり、ノイズを低減させるのに用いられてもよい。
【0056】
アンテナ装置は、電波を送受信するものであれば特に限定されず、どのようなものでも使用することができる。アンテナ装置は、電波と電流とを相互に変換するアンテナそのものの他、タイヤ組立体1とタイヤ組立体1の外部装置との間に無線通信を確立するための通信装置を含んでもよい。
【0057】
発信機は、電波を発信するものであれば特に限定されない。発信機は、例えば、BLUETOOTH(登録商標)発信機や、GPS等の衛星測位システムから取得した位置情報を外部装置に向けて発信する位置情報発信機等であってもよい。
【0058】
回路は、他の機能部材を動作させるための回路や、他の機能部材同士を連携して動作させるための回路であってよく、その構成は特に限定されない。上記発電装置を、タイヤの回転速度、摩耗状態、路面の状態及び接地状態の少なくとも1つを監視するためのセンサとして利用する場合、回路は、発電装置の時系列の電圧、電流または発電量を計測するための計測回路であってもよい。
【0059】
機能部材3A~3Hの少なくとも一部は、リード線等(不図示)を用いて、互いに電気的に接続されてもよい。ただし、タイヤ組立体1の振動及び騒音を抑制する観点からは、用いるリード線等の質量は、機能部材3A~3Hの各々の質量に対して充分に小さいことが好ましい。
【0060】
[接触帯電を利用した発電装置]
図5は、本実施形態に係る発電装置3の構成を示す断面図である。図5に示すように、発電装置3は、第1部材31と、第2部材32とを備え、各部材がこの順に積層した構成を有する。本実施形態の発電装置3は、平面視において矩形状を有するが、発電装置3の形状はこれに限定されない。
【0061】
第1部材31は、第1基材312と、第1電極311と、第1絶縁膜310とを有する。これらの各要素は、平面視において矩形状を有し、発電装置3の外側から内側に向かってこの順に積層している。第1基材312は、外力を受けて変形できるように、可撓性を有する材料や粘弾性を有する材料、例えば、樹脂またはエラストマーから構成されている。第1基材312の、第1電極311に接触する側の表面には多数の凹凸が形成されている。これにより、第1電極311を介して第1絶縁膜310が形成する第1面3100に、第1基材312の凹凸に対応した凹凸が再現されるようになっている。
【0062】
第1基材312の凹凸の構成は、特に限定されない。例えば、凹凸は第1基材312の面方向にわたって規則正しく形成されていてもよいし、ある程度ランダムに形成されていてもよい。また、凹凸の断面形状も特に限定されない。
【0063】
第1電極311は、第1絶縁膜310に生じた電荷を発電装置3の外部に取り出すための部分であり、第1面3100の裏面において、第1絶縁膜310と接触するように配置されている。第1電極311は、導電性を有する材料から構成することができ、このような材料の例としては、Ag、Cu等の導電膜、及び導電布等が挙げられる。導電布の構成は特に限定されないが、高分子材料から構成される有機繊維布地に金属メッキを施したもの、高分子材料から構成される繊維に金属繊維を混ぜたもの等であってよい。第1電極311は可撓性を有し、第1基材312の変形に追従して変形することができる。また、第1電極311は、第1絶縁膜310と接触する面において、第1基材312の凹凸に対応した凹凸を再現している。
【0064】
第1絶縁膜310は、絶縁体で構成されたフィルムであり、可撓性を有する。本実施形態では、第1絶縁膜310の第1電極311と反対側の面が第1面3100に相当する。第1面3100には、第1基材312によって、第1基材312の凹凸に対応する凹凸が形成されている。第1面3100は、後述する第2絶縁膜320が形成する第2面3200と対面し、第2面3200と接触している。第1絶縁膜310は、発電装置3に加わる圧力により、第1面3100と第2面3200との実質的な接触面積である真実接触面積が変化すると、第2絶縁膜320とは逆の極性に帯電する。すなわち、第2絶縁膜320が正に帯電する場合、第1絶縁膜310は負に帯電する。また、第2絶縁膜320が負に帯電する場合、第1絶縁膜310は正に帯電する。
【0065】
第1面3100の十点平均粗さは、100μm以上2mm以下であることが好ましい。なお、十点平均粗さの測定方法はJIS B 0601:2001に従う。
【0066】
なお、第1面3100と第2面3200とが「接触する」という場合、第1面3100と第2面3200とが部分的に接触していればよく、第1面3100と第2面3200とが接触していない部分が存在していてもよいものとする。本実施形態の発電装置3は、第1面3100と第2面3200とがともに矩形状を有し、全体的に重なるように構成される。つまり、本実施形態の発電装置3では、第1絶縁膜310の片面と第2絶縁膜320の片面とが全面的に接触する。
【0067】
第2部材32は、第2基材322と、第2電極321と、第2絶縁膜320とを有する。第2部材32の各要素は、平面視において矩形状を有し、発電装置3の外側から内側に向かってこの順に積層している。第2基材322及び第2電極321の構成は、第1基材312及び第1電極311とそれぞれ共通であるため、再度の説明は省略する。
【0068】
第2絶縁膜320は、第1絶縁膜310とは異なる絶縁体で構成されたフィルムであり、可撓性を有する。本実施形態では、第2絶縁膜320の第2電極321と反対側の面が、第2面3200に相当する。第2面3200には、第2基材322によって、第2基材322の凹凸に対応する凹凸が形成されている。第2面3200は、第1絶縁膜310が形成する第1面3100と対面し、第1面3100と接触している。第2絶縁膜210は、発電装置3に加わる圧力により、上記真実接触面積が変化すると、第1絶縁膜310とは逆の極性に帯電する。
【0069】
第2面3200の十点平均粗さは、100μm以上2mm以下であることが好ましい。なお、十点平均粗さの測定方法はJIS B 0601:2001に従う。
【0070】
第1絶縁膜310及び第2絶縁膜320を構成する材料は、例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、パーフルオロポリエーテル、ポリメチルメタクリレート、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリイソブチレン、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリクロロプレン、天然ゴム、ポリアクリロニトリル、ポリジフェノールカーボネート、塩化ポリエーテル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン及び六フッ化プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、及びその他のフッ化炭素有機物を主成分とする材料からなる群から選択することができる。発電装置3の起電力を大きくするという観点では、上述した群のうち、帯電列上でより離れた材料のペアを選択することが好ましい。
【0071】
発電装置3の発電量を向上させる観点からは、発電装置3を内側面20aと本体部40との間に配置することが好ましいが、外周面40aと面ファスナー41との間に配置することがより好ましい。これにより、第1部材31に対する第2部材32の面方向の位置ずれを防止することができるとともに、第1部材31を第2部材32に押し付ける方向の力を加えることができ、効率的な発電を促進することができる。タイヤ組立体1における発電装置3の向きは特に限定されず、第1部材31が径方向外側に配置され、第2部材が径方向内側に配置されてもよいし、第1部材31が径方向内側に配置され、第2部材が径方向外側に配置されてもよい。つまり、発電装置3の第1部材31が外周面40aに固定され、第2部材32が面ファスナー41の裏面に固定されてもよいし、第1部材31が面ファスナー41の裏面に固定され、第2部材32が外周面40aに固定されてもよい。
【0072】
<3.機能部材の配置>
タイヤの内側に機能部材を設けることにより、タイヤの周方向に沿った質量バランスが大きく崩れると、タイヤの回転に伴って不要な振動が生じ、車両の快適な走行が阻害されることがある。この振動には、1次のラジアル・フォースバリエーション(RFV)が主として寄与している。タイヤ組立体1では、ラジアル・フォースバリエーションに起因する振動を抑制するため、機能部材の全体としての質量が、タイヤ2の周方向に沿ってできる限り等間隔に、そしてできる限り均等に分散するように機能部材が配置されることが好ましい。このため、本実施形態では、機能部材3A~3Hは、各々の重心が、タイヤ2の中心軸A1を基準として、タイヤ2の周方向に45度間隔となるように配置される(説明の便宜上、図1では、機能部材3A~3Hの重心の位置を黒点で示す)。ただし、中心軸A1を基準とした間隔には、±10度以内の誤差があってもよい。つまり、複数の機能部材の質量がタイヤの周方向に沿って「等間隔に分散する」とは、各々の機能部材の重心が均等な角度で間隔を空けて配置される場合のみならず、±10度以内の誤差を含んだ間隔で配置される場合も含まれる。
【0073】
加えて、機能部材の全体としての質量をできる限り均等に分散するためには、分散配置される機能部材の各々の質量の差を、できる限り小さくすることが好ましい。さらに、ラジアル・フォースバリエーションの高次の成分に起因するタイヤ組立体1の振動を抑制するためには、機能部材の各々の質量自体も小さいことが好ましい。具体的には、機能部材の各々の質量は、40g以下であることが好ましく、30g以下であることがより好ましく、20g以下であることがさらに好ましい。
【0074】
<4.特徴>
本実施形態のタイヤ組立体1では、機能部材3A~3Hが固定部材4を介してタイヤ2に着脱可能に取り付けられる。これにより、タイヤ2の交換が必要となった場合にも固定部材4及び機能部材3A~3Hを新しいタイヤ2に再利用することができ、リソースの有効活用を図ることができる。
【0075】
本実施形態のタイヤ組立体1では、その中で比較的大きな質量割合を占める固定部材4がリング状に構成されるため、タイヤ2の質量バランスを崩しにくく、タイヤ2の内部に機能部材3A~3Hを配置したことによる振動を抑制することができる。これに加え、タイヤ2の取付部もリング状に構成されることにより、振動がより抑制されるとともに、タイヤ2への取り付けや、機能部材の数の調整が容易となる。さらに、被取付部及び取付部が軽量な面ファスナーで構成されることでも、質量バランスに悪影響を及ぼしにくくなっている。また、本実施形態のタイヤ組立体1では、複数の機能部材3A~3Hが、タイヤ2の周方向に沿って等間隔に配置され、複数の機能部材3A~3H全体の質量がタイヤ2の周方向に沿って均等に分散する(概ね均等に分散する場合を含む)ように配置される。これにより、タイヤ2に機能部材を設けたことにより生じる質量アンバランスが緩和され、タイヤ組立体1に不要な振動が生じることが抑制される。
【0076】
本実施形態のタイヤ組立体1では、外周面40aと、面ファスナー41との間に機能部材3A~3Gが収容される。これにより、機能部材3A~3Gが固定部材4により確実に固定され、固定部材4から脱落しにくくなる。また、機能部材3A~3Gを発電装置3としたため、発電装置3の第1部材31と第2部材32とが完全に離間しても、第1面3100を第2面3200に対して押し付ける方向の力が働き易い。このため、第1部材31と第2部材32とが完全に離間する時間を少なくでき、発電装置3の発電量を向上させることができる。
【0077】
本実施形態のタイヤ組立体1では、固定部材4の本体部40に切り欠き400が形成される。これにより、本体部40の剛性を調整することが容易となり、タイヤ2の変形に対する追従性を向上させることができる。また、放熱性能も向上させることができ、タイヤ組立体1の走行熱等により機能部材3A~3Hに好ましくない影響が及ぶことを抑制することができる。
【0078】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0079】
(1)機能部材3A~3Hは、各々の重心がタイヤ2の周方向に沿って等間隔に分散するように配置されていれば良く、図6に示すように、タイヤ2の幅方向(中心軸A1に平行な方向)に沿った各々の重心の位置は、互いに異なっていてもよい。また、機能部材の数や、機能の組み合わせは、適宜変更することができる。
【0080】
(2)タイヤ2の被取付部と、固定部材4の取付部とは、それぞれ面ファスナー21及び面ファスナー41以外のもので構成されてもよい。例えば、被取付部と取付部とは、磁石のペア、磁石と磁性体とのペア、及びスナップボタンのペア等で構成することができる。また別の例では、内側面20から内部空間へと向かって突出する1または複数の突出部で被取付部を構成し、1または複数の突出部と対応する1または複数の貫通孔で取付部を構成し、貫通孔の各々に対応する突出部を貫通させ、固定部材4をタイヤ2に固定するように構成してもよい。さらに別の例では、内側面20からタイヤ2の内部に窪んだ複数の凹部で被取付部を構成し、外周面40aから径方向外方に突出し、複数の凹部に嵌まり込む形状の突出部で取付部を構成し、各突出部を各凹部に嵌め込むことにより固定部材4をタイヤ2に固定するように構成してもよい。さらに、被取付部及び取付部の一方が、剥がした後に再度貼付が可能な粘着テープで構成され、他方が粘着テープが貼付される面で構成されてもよい。また、面ファスナー41は、リング状に連続していなくてもよく、途切れながら本体部40に固定されていてもよい。同様に、面ファスナー21は、リング状に連続していなくてもよく、途切れながら内側面21aに固定されていてもよい。この場合、面ファスナー21は、2つ以上が、タイヤ2の周方向に沿って、等間隔に分散するように配置されることが好ましい。
【0081】
(3)開口、切り欠き及びスリットの形成は、省略してもよい。また、上述したように、開口、切り欠き及びスリットの数、サイズ、形状、間隔及び位置は、適宜設定することができる。例えば、切り欠き400は、図7A~7Dに示すような形状(矩形、楔形、台形、U字形)であってもよく、図4の例のように、先端が幅方向中心C1まで達していなくてもよい。さらに、図8A~8Cに示すように、機能部材3A~3Hに対応する位置(破線で示す位置)で、本体部40の剛性を調整すべく、切り欠き400の形状、サイズ及び間隔を変更したり、切り欠き400の形成を省略したりしてもよい。さらに、切り欠き400は、幅方向に沿って延びていなくてもよく、長手方向(タイヤ2の周方向)に交差する方向に沿って延びていればよい。このことは、本体部40にスリットを形成する場合も同様である。
【0082】
(4)固定部材(本体部)は、リング状に形成されていなくてもよく、タイヤ2の周方向に部分的に沿って延びる帯状の部材として形成されていてもよい。つまり、本体部は、リングを適当な長さで分割した形状を有していてもよい。この場合、タイヤ組立体1は、1または複数の固定部材を備えてもよい。また、このような固定部材には、複数の機能部材が固定されていてもよいし、1つの機能部材が固定されていてもよい。
【0083】
(5)図9Aは、1つの変形例に係るタイヤ組立体1Bの側方断面図であり、図9Bは、タイヤ組立体1Bの展開図である。タイヤ組立体1Bでは、固定部材4Bの本体部40Bが、1または複数の機能部材を挟み込んで保持するように構成される。より具体的には、本体部40Bは、タイヤ2の径方向外側に配置される帯状の第1本体部42と、タイヤ2の径方向内側に配置される帯状の第2本体部43とを含む。図9A及び9Bの例では、第1本体部42と第2本体部43とは、中央部に空間が形成されるように、周縁部において少なくとも部分的に固定される。空間の中には、1つの発電装置3が、第1本体部42と第2本体部43との間に挟み込まれるように配置される。発電装置3は、第1本体部42及び第2本体部43の少なくとも一方側に固定されてもよい。第1本体部42及び第2本体部43は、それぞれ、上記実施形態の本体部40と同様の材料で構成することができるが、固定部材4Bの軽量化及び加工容易性の観点からは、ともに合成樹脂で構成されることが好ましい。また、第1本体部42の片面には、取付部として、帯状の面ファスナー41が、第1本体部42の片面全体にわたるように固定される。一方、タイヤ2側には、上記実施形態と同様、被取付部として面ファスナー41と結合が可能な面ファスナー21が、被取付部として取り付けられる。図9A及び9Bの例では、面ファスナー21は、帯状であり、タイヤ2の周方向に部分的に沿って延びている。
【0084】
上記構成において、タイヤ2の周方向に沿った面ファスナー21の長さL3は、タイヤ2の周方向に沿った面ファスナー41の長さL4よりも長いことが好ましい。さらに、上記構成において、長さL4は、タイヤ2の周方向に沿った第2本体部43の長さL5よりも長いことが好ましい(ただし、図9Aでは発電装置3の厚みが誇張されている)。言い換えると、L5<L4<L3であることが好ましい。この構成によれば、面ファスナー21に対して固定部材4Bを着脱する作業を容易にしつつ、固定部材4Bの軽量化を図り易くなる。しかし、長さL3~L5の大小関係はこれに限定されず、例えばL3=L4=L5、L5<L4=L3、及びL5=L4<L3であってもよい。なお、機能部材は、発電装置3以外の機能部材であってもよい。
【実施例0085】
以下では、発明者らが行った実験及びその結果を示す。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0086】
<実験1>
内側面の全周に耐熱性の面ファスナーが貼り付けられたタイヤ(内側面の全周1600mm)と、固定部材と、第1部材と第2部材とを備える発電装置3Iとを備えるタイヤ組立体(実施例1~3)を準備した。タイヤは実施例1及び2で共通とし、固定部材の本体部40Iの全周を、実施例1ではタイヤの内側面の全周に対して約0.6%長く(1610mm)、実施例2ではタイヤの内側面の全周に対し約1.25%短く(1580mm)構成した。実施例3のタイヤ組立体では、タイヤを実施例1及び2よりも径の小さいタイヤとし、固定部材の本体部40Iの全周を、タイヤの内側面の全周と概ね等しく構成した。つまり、実施例1及び3のタイヤ組立体では、固定部材がタイヤの内側面の全周にわたり隙間なく取り付けられた。一方、実施例2のタイヤ組立体では、固定部材がタイヤの内側面に対して遊びを残した状態で取り付けられた。
【0087】
固定部材は、実施例1~3のいずれも、ポリプロピレン製のリング状の本体部40Iと、外周面に概ね等間隔で固定された3つの耐熱性の面ファスナー41Iを有していた。本体部40Iには、図4に示すような多数の切り欠きが形成された。固定部材の質量はいずれも200g以下であった。また、発電装置3Iの1個当たりの質量は、10g以下であった。図10に示すように、面ファスナー41Iと外周面との間に発電装置3Iを1つ固定し、タイヤの周方向に沿って、3つの発電装置3Iが概ね等間隔に配置されるようにした。3つの発電装置3Iは、図示しないリード線により、外部の電圧計測装置に接続された。実施例1~3に係るタイヤ組立体をそれぞれホイールに取り付け、空気圧を250kPaとしてドラム式の実験装置に組み込み、輪荷重2kNを加え、時速10km/h~50km/h相当で回転させた。
【0088】
<結果1>
タイヤ組立体の回転速度(km/h)に対する発電装置3Iの合計の出力電力(μW)をプロットしたグラフは、図11のようになった。図11から分かるように、低速領域(10km/h~30km/h)では、実施例2のタイヤ組立体の出力電力が最も大きかった。しかしながら、車両が通常走行する速度領域(40km/h~50km/h)では、実施例1及び3のタイヤ組立体の出力電力がより大きくなった。このことから、タイヤ組立体を車両に装着する場合は、固定部材の周長をタイヤ内側面の周長と等しくする方が、発電量向上の点でより有利であることが確認された。
【0089】
<実験2>
実施例4に係るタイヤ組立体と、比較例1に係るタイヤ組立体とを用意した。実施例4に係るタイヤ組立体は、タイヤと、リング状の固定部材(発泡ポリプロピレン、質量200g)と、1つの発電装置3Iとを備えていた。このタイヤの内側面の全周と、固定部材の外周面の全周とには、それぞれ耐熱性の面ファスナーが取り付けられ、これらを結合させることにより、固定部材をタイヤに固定した。発電装置3Iは、固定部材の外周面と、固定部材の面ファスナーとの間に取り付けられた。比較例1に係るタイヤ組立体は、タイヤと、タイヤ修理用のパッチから作成した発電装置3I固定用のカバー(マルニ工業社製パッチ、MB-05を部分的に切り落とし、質量を約60gとしたもの)と、1つの発電装置3Iとを備えていた。タイヤは、実施例4と共通のタイヤであるが、面ファスナーの代わりに内側面の1か所にパッチを取り付け、パッチと内側面との間に発電装置3Iを収容した。実施例4及び比較例1に係るタイヤ組立体をそれぞれホイールに取り付け、空気圧を250kPaとして、ドラム径が異なる2種類のドラム式の実験装置に組み込み、輪荷重を加えて回転させたときの発電装置3Iの出力電力(μW)を計測した。ドラム式の実験装置のドラム径は300mmまたは500mmであり、輪荷重は1kNまたは2kN、回転速度は時速30km/h~100km/h相当または時速10km/h~50km/h相当とした。
【0090】
<結果2>
ドラム径500mm、輪荷重2kN、時速10km/h~50km/h相当の条件と、ドラム径300mm、輪荷重1kN、時速30km/h~100km/h相当の条件とでタイヤ組立体の回転速度(km/h)に対する発電装置3Iの出力電力(μW)をプロットしたグラフは、それぞれ、図12A及び12Bのようになった。図12A及び12Bから分かるように、いずれの条件においても、実施例4に係るタイヤ組立体の方が、比較例1に係るタイヤ組立体と比較して、殆どの回転速度において出力電力(μW)が向上することが確認された。これは、固定部材をリング状としたことにより、発電装置3Iに、第1面を第2面に対して押し付ける力がより働くようになったからであると考えられる。
【0091】
<実験3>
タイヤと、固定部材と、7つの発電装置3Iと1つの計測回路とを備え、これらが図1のように配置されたタイヤ組立体を準備し、実施例5に係るタイヤ組立体とした。このタイヤ組立体をホイールに取り付け、空気圧を250kPaとしてドラム式の実験装置に組み込み、輪荷重2kNを加え、時速50km/h相当で回転させ、各発電装置3Iの合計出力電力(μW)を計測した。次に、図1の機能部材3F~3Gに相当する位置の2つの発電装置3Iを取り除き、発電装置3Iを5つにし、実施例6に係るタイヤ組立体として、同様の計測を行った。さらに、図1の機能部材3D~3Eに相当する位置の2つの発電装置3Iを取り除き、発電装置3Iを3つにし、実施例7に係るタイヤ組立体として、同様の計測を行った。最後に、図1の機能部材3B~3Cに相当する位置の2つの発電装置3Iを取り除き、発電装置3Iを1つにし、実施例8に係るタイヤ組立体として、同様の計測を行った。
【0092】
<結果3>
発電装置3Iの数(個)に対する合計の出力電力を、実施例8の出力電力を1としてプロットしたグラフは、図13のようになった。図13から、発電装置3Iの数に比例してタイヤ組立体としての出力電力が増加することが確認された。
【符号の説明】
【0093】
1,1B タイヤ組立体
2 タイヤ
3,3I 発電装置
3A~3H 機能部材
4,4B 固定部材
20,20a 内側面
21 面ファスナー
31 第1部材
32 第2部材
40,40B,40I 本体部
40a 外周面
41 面ファスナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13