IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-タイヤ組立体 図1
  • 特開-タイヤ組立体 図2
  • 特開-タイヤ組立体 図3
  • 特開-タイヤ組立体 図4
  • 特開-タイヤ組立体 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092626
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】タイヤ組立体
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20240701BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20240701BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B60C19/00 B
B60C5/00 F
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208704
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100210251
【弁理士】
【氏名又は名称】大古場 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】湯川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】杉本 睦樹
(72)【発明者】
【氏名】黒田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 崇博
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 恭太
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA28
3D131BA01
3D131BC42
3D131BC43
3D131BC44
3D131CB03
3D131LA06
3D131LA08
(57)【要約】
【課題】機能部材の質量に由来する振動及び騒音が抑制されたタイヤ組立体を提供する。
【解決手段】タイヤ組立体は、タイヤと、吸音材と、機能部材とを備える。吸音材は、前記タイヤの内側に配置される。複数の機能部材は、前記タイヤの内側に配置される。前記複数の機能部材は、前記複数の機能部材全体としての質量が、前記タイヤの周方向に沿って分散するように配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤと、
前記タイヤの内側に配置される吸音材と、
前記タイヤの内側に配置される複数の機能部材と
を備え、
前記複数の機能部材は、前記複数の機能部材全体としての質量が、前記タイヤの周方向に沿って分散するように配置される、
タイヤ組立体。
【請求項2】
前記複数の機能部材は、各々、発電装置、センサ装置、二次電池、コンデンサ、アンテナ装置、発信機、プロセッサ、メモリ及び回路のいずれかである、
請求項1に記載のタイヤ組立体。
【請求項3】
前記複数の機能部材のうち少なくとも1つは、前記タイヤの内側面と前記吸音材との間に配置される、
請求項1または2に記載のタイヤ組立体。
【請求項4】
前記複数の機能部材は、前記複数の機能部材全体としての質量が、前記タイヤの周方向に沿って、等間隔に分散するように配置される、
請求項1または2に記載のタイヤ組立体。
【請求項5】
前記複数の機能部材は、前記タイヤの周方向に沿って、少なくとも4か所に分散するように配置される、
請求項4に記載のタイヤ組立体。
【請求項6】
前記タイヤの周方向に沿って、等間隔に分散するように配置された前記複数の機能部材の質量の最大値と、最小値との差は、20g以下である、
請求項4に記載のタイヤ組立体。
【請求項7】
前記吸音材は、スポンジ材から構成される、
請求項1または2に記載のタイヤ組立体。
【請求項8】
前記スポンジ材の比重は、0.005以上、0.05以下である、
請求項7に記載のタイヤ組立体。
【請求項9】
前記タイヤの中心軸から、前記タイヤの径方向外側に延びる切断面における前記吸音材の断面積は、前記タイヤが正規リムに取り付けられ、正規の空気圧である状態において、前記タイヤの内側面が画定する内部空間の断面積の3%以上、20%以下である、
請求項7に記載のタイヤ組立体。
【請求項10】
前記スポンジ材の厚みは、5mm以上、30mm以下である、
請求項7に記載のタイヤ組立体。
【請求項11】
前記スポンジ材は、クロロプレンゴムスポンジ、エチレンプロピレンゴムスポンジ、ニトリルゴムスポンジ、エーテル系ポリウレタンスポンジ、エステル系ポリウレタンスポンジ、及びポリエチレンスポンジからなる群から選択される、
請求項7に記載のタイヤ組立体。
【請求項12】
前記複数の機能部材の各々の質量は、20g以下である、
請求項1または2に記載のタイヤ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能部材が組み込まれたタイヤ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-108536号公報(特許文献1)は、タイヤの回転による発電効率が向上可能な発電装置及び発電装置を備えたタイヤを開示する。このタイヤは、内側に発電装置を備える。発電装置は、タイヤの内周面に固定される固定側ユニットと、固定側ユニットに対して振動可能に設けられる可動側ユニットとで構成される。固定側ユニットは、導電性コイルを備える。可動側ユニットは、ばねで吊られたマグネットを備える。タイヤの回転により、マグネットが導電性コイルに対して振動すると、誘電起電力が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-108536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、タイヤの内部に何らかの機能部材を組み込まれたタイヤ組立体では、タイヤの周方向に沿った質量分布の対称性が崩れ、偏りが生じやすい。このような質量分布の偏りがあると、1次のラジアル・フォースバリエーションによりタイヤ組立体の回転時に不要な振動が生じ、車両の乗り心地に悪影響を及ぼすおそれがある。これに対応するための方法としては、例えば複数個の機能部材を、タイヤの周方向に沿って分散して配置する方法が挙げられる。しかし、これらの方法を単に採用するだけでは、高次のラジアル・フォースバリエーションにより空洞共鳴音が励起され、騒音が発生し易くなる問題があった。
【0005】
本発明は、内部に機能部材が組み込まれたタイヤ組立体であって、機能部材の質量に由来する振動及び騒音が抑制されたタイヤ組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係るタイヤ組立体は、タイヤと、吸音材と、機能部材とを備える。吸音材は、前記タイヤの内側に配置される。複数の機能部材は、前記タイヤの内側面と、前記吸音材との間に配置される。前記複数の機能部材は、前記複数の機能部材全体としての質量が、前記タイヤの周方向に沿って分散するように配置される。
【0007】
本発明の第2観点に係るタイヤ組立体は、第1観点に係るタイヤ組立体であって、前記複数の機能部材は、各々、発電装置、センサ装置、二次電池、コンデンサ、アンテナ装置、発信機、プロセッサ、メモリ及び回路のいずれかである。
【0008】
本発明の第3観点に係るタイヤ組立体は、第1観点または第2観点に係るタイヤ組立体であって、前記複数の機能部材のうち少なくとも1つは、前記タイヤの内側面と前記吸音材との間に配置される。
【0009】
本発明の第4観点に係るタイヤ組立体は、第1観点または第2観点に係るタイヤ組立体であって、前記複数の機能部材は、前記複数の機能部材全体としての質量が、前記タイヤの周方向に沿って、等間隔に分散するように配置される。
【0010】
本発明の第5観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第4観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記複数の機能部材は、前記タイヤの周方向に沿って、少なくとも4か所に分散するように配置される。
【0011】
本発明の第6観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第5観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記タイヤの周方向に沿って、等間隔に分散するように配置された前記複数の機能部材の質量の最大値と、最小値との差は、20g以下である。
【0012】
本発明の第7観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第6観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記吸音材は、スポンジ材から構成される。
【0013】
本発明の第8観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第7観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記スポンジ材の比重は、0.005以上、0.05以下である。
【0014】
本発明の第9観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第8観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記タイヤの中心軸から、前記タイヤの径方向外側に延びる切断面における前記吸音材の断面積は、前記タイヤが正規リムに取り付けられ、正規の空気圧である状態において、前記タイヤの内側面が画定する内部空間の断面積の3%以上、20%以下である。
【0015】
「正規リム」は、タイヤが依拠する規格により、タイヤの分類ごとに定められるホイールのリムである。例えば、タイヤがJATMAに依拠していれば、JATMAの「標準リム」が正規リムであり、ETRTOまたはTRAに依拠していれば、「Measuring Rim」が上述の正規リムである。また、「正規の空気圧」は、タイヤが依拠する規格により、タイヤの分類ごとに定められる空気圧である。例えば、タイヤがJATMAに依拠していれば、「最高空気圧」が正規の空気圧であり、ETRTOに依拠していれば「INFLATION PRESSURE」が正規の空気圧であり、TRAに依拠していれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値が正規の空気圧である。なお、タイヤが乗用車用である場合、180kPaを正規の空気圧とする。また、タイヤがExtra LoadまたはReinforcedである場合、220kPaを正規の空気圧とする。
【0016】
本発明の第10観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第9観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記スポンジ材の厚みは、5mm以上、30mm以下である。
【0017】
本発明の第11観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第10観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記スポンジ材は、クロロプレンゴムスポンジ、エチレンプロピレンゴムスポンジ、ニトリルゴムスポンジ、エーテル系ポリウレタンスポンジ、エステル系ポリウレタンスポンジ、及びポリエチレンスポンジからなる群から選択される。
【0018】
本発明の第12観点に係るタイヤ組立体は、第1観点から第11観点のいずれかに係るタイヤ組立体であって、前記複数の機能部材の各々の質量は、20g以下である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、機能部材が組み込まれたタイヤ組立体であって、機能部材の質量に由来する振動及び騒音が抑制されたタイヤ組立体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係るタイヤ組立体の全体構成を示す斜視図。
図2】タイヤ組立体の縦断面図。
図3】一実施形態に係る吸音材の全体構成を示す斜視図。
図4】タイヤ組立体の切断面を説明する図。
図5】変形例に係るタイヤ組立体の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るタイヤ組立体について説明する。
【0022】
<1.全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ組立体1の全体構成を示す斜視図であり、図2は、タイヤ組立体1の縦断面図(タイヤ組立体1の径方向に沿った断面の断面図)である。タイヤ組立体1は、センシング機能、発電機能または信号発信機能等の付加機能を有するタイヤ製品であり、各種の車両の車輪に装着され、路面上を回転するように構成される。図1に示すように、タイヤ組立体1は、タイヤ2と、吸音材4と、複数の機能部材3A~3Hとを備える。吸音材4は、タイヤ2の内側面20に固定される。複数の機能部材3A~3Hは、各々、内側面20と吸音材4の外周面40aとの間、あるいは吸音材4の内周面40b側に配置される。以下、各部材について説明する。
【0023】
<2.各部の構成>
[タイヤ]
タイヤ2は、加硫ゴム等から構成され、弾性を有する。タイヤ2の種類及び構造は特に限定されないが、本実施形態のタイヤ2は、図2に示すように、トレッド部200、サイドウォール部201、ショルダ部202及びビード部203を有する。トレッド部200は、タイヤ組立体1の側周面を画定する部分であり、路面と接触して摩擦を生じることで車両を前進させる。サイドウォール部201は、路面からの衝撃を吸収すべく屈曲して撓みを生じる。ショルダ部202は、トレッド部200及びサイドウォール部201に連続する部分である。ビード部203は、ホイールリムに固定される部分であり、図示しないビードワイヤを内蔵する。タイヤ2は、タイヤ2の内部空間を画定する内側面20をさらに有する。以下、内側面20のうち、トレッド部200の裏側に相当する環状の面を、他の部分と区別して内側面20aと称することがある。
【0024】
[吸音材]
図3は、本実施形態に係る吸音材4の全体構成を示す斜視図である。吸音材4は、タイヤ組立体1の回転に伴い、タイヤ2の内部空間で生じる空洞共鳴音を吸収し、低減するための部材である。本実施形態では、吸音材4は、環状に構成され、内側面20aの全周にわたるように内側面20に固定される。すなわち、吸音材4の外周面40aの周長は、内側面20aの周長と概ね等しい。吸音材4の形状は特に限定されず、吸音材4は、例えば周方向または幅方向に沿って厚みが変化する断面形状を有してもよい。また例えば、吸音材4は、後述する機能部材3A~3Hの厚みを吸収すべく、機能部材3A~3Hに対応する箇所が、他の部分よりも薄肉に形成されてもよい。
【0025】
吸音材4は、本実施形態では、スポンジ材から構成される。スポンジ材は、クッション性を有する多孔構造体であれば特に限定されず、例えば、ゴムまたは合成樹脂の発泡体、あるいは、繊維状の部材を集積して構成される3次元構造体等であってよい。ゴムの発泡体としては、クロロプレンゴム(CR)スポンジ、エチレンプロピレンゴム(EPR、EPDMR)スポンジ、及びニトリルゴム(NBR)スポンジが好ましく、合成樹脂の発泡体としては、エーテル系ポリウレタンスポンジ、エステル系ポリウレタンスポンジ、及びポリエチレンスポンジが好ましい。これらのスポンジ材は、単泡構造であってもよいし、連泡構造であってもよいし、単泡及び連泡が混在する構造であってもよい。
【0026】
吸音材4の比重は、0.005以上、0.05以下であることが好ましい。また、外力が加えられておらず、圧縮されていない非圧縮状態での吸音材4の厚みは、5mm以上、30mm以下であることが好ましい。なお、吸音材4の厚みが一定でない場合は、吸音材4の全体の厚みが5mm以上、30mm以下であることが好ましい。さらに、タイヤ2の中心軸A1から、タイヤ2の径方向外側に延びるタイヤ組立体1の切断面P1(図4参照)における吸音材4の断面積は、タイヤ2が正規リム(を有するホイール)に取り付けられ、正規の空気圧である場合において、内側面20が画定する内部空間の断面積に対し、3%以上、20%以下であることが好ましい。
【0027】
吸音材4のタイヤ2への固定方法は特に限定されない。吸音材4は、接着剤または粘着剤を介して内側面20に固定されてもよい。また、タイヤ2には内側面20から内部空間へと向かって突出する1または複数の突出部を形成し、吸音材4には1または複数の突出部と対応する1または複数の貫通孔を形成し、貫通孔の各々に、対応する突出部を貫通させることで、吸音材4をタイヤ2に固定してもよい。さらに、互いに結合が可能な固定部材を内側面20と吸音材4の外周面とのそれぞれに設け、これらを結合させることにより吸音材4をタイヤ2に固定してもよい。固定部材の例としては、面ファスナーのペア、磁石のペア、磁石と磁性体とのペア、及びスナップボタンのペア等が挙げられる。なお、吸音材4は、内側面20に対し分離不能にタイヤ2に固定されてもよく、内側面20に対し分離可能にタイヤ2に固定されてもよい。
【0028】
[機能部材]
複数の機能部材は、タイヤ2の周方向に沿って分散するように、互いに間隔を空けて配置される。本実施形態のタイヤ組立体1は、8つの機能部材3A~3Hを備えるが、機能部材の数は特に限定されない。上述のように、機能部材3A~3Hは、各々、内側面20aと外周面40aとの間、あるいは吸音材4の内周面40b側に配置される。複数の機能部材のうち少なくとも1つは、内側面20aと外周面40aとの間に配置されることが好ましい。本実施形態では、機能部材3A~3Gが内側面20aと外周面40aとの間に配置され、機能部材3Hが内周面40b上に配置される。機能部材3A~3Gの各々は、内側面20上に固定されてもよいし、吸音材4の外周面40a上に固定されてもよいし、内側面20上と外周面40a上の両方に固定されてもよい。機能部材3A~3Hの各々は、発電装置、センサ装置、二次電池、コンデンサ、アンテナ装置、発信機、プロセッサ、メモリ及び回路のいずれかであってよい。つまり、タイヤ組立体1が備える複数の機能部材は、同じ種類の2以上の機能部材を含んでもよく、上述した種類の機能部材を全て含んでいなくてもよい。
【0029】
発電装置は、タイヤ2の変形を利用して発電を行うものであれば特に限定されず、圧電素子を利用した装置、接触帯電を利用して発電を行う装置等であってよい。接触帯電を利用して発電を行う装置としては、例えば、絶縁性の材料から形成される第1面と、第1面とは異なる絶縁性の材料から形成される第2面とを有し、第1面と第2面との真実接触面積の変化により電位差が発生する装置等が挙げられる。なお、発電装置は、タイヤ2の回転に連動して発電を行う。このため、発電装置に生じる電位差の変化を検出することで、タイヤの回転速度、摩耗状態、路面の状態及び接地状態の少なくとも1つを監視するためのセンサとして利用することもできる。タイヤ組立体1が、別の機能部材として二次電池やコンデンサを備える場合、発電装置に生じた電気は、二次電池やコンデンサに蓄えられてもよい。また、タイヤ組立体1が、別の機能部材としてセンサ装置、アンテナ、発信機、プロセッサ、またはメモリ等の電子機器を備える場合、発電装置に生じた電気は、これらの電子機器に適宜供給されてもよい。
【0030】
センサ装置は、タイヤ1組立体内部のセンシングデータを取得するものであれば特に限定されず、例えば空気圧センサ、温度センサ、速度センサ、加速度センサ、回転速度センサ、回転角度センサ等であってよい。タイヤ組立体1が、別の機能部材としてプロセッサを備える場合、センサ装置により取得されたセンシングデータは、プロセッサにより加工され、加工データとされてもよい。また、タイヤ組立体1が、別の機能部材としてメモリを備える場合、センサ装置により取得されたセンシングデータやその加工データは、メモリに保存されてもよい。さらに、タイヤ組立体1が、別の機能部材としてアンテナを備える場合、センサ装置により取得されたセンシングデータや、これの加工データは、当該アンテナを介して、車載装置等、タイヤ組立体1の外部の装置に送信されてもよい。
【0031】
プロセッサは、プログラムの実行、データの演算、変換、加工及び送受信、ならびに他の機能部材の動作の制御等を行うものであれば特に限定されず、ハードウェアとしては、例えば演算装置、レジスタ及び周辺回路等を備えるICチップとして構成される。プロセッサは、上述した加工データの生成やデータ送信の他、例えば発電装置に生じた電気の振り分け、アンテナを介した外部装置からのデータ受信等を行ってもよい。
【0032】
メモリは、データ保存領域を有するものであれば特に限定されず、ハードウェアとしては、例えばフラッシュメモリチップとして構成される。メモリは、不揮発性で書き換え可能なメモリであってもよく、プログラム等が格納された書き換え不可能なメモリであってもよく、データを一時保存するための揮発性のメモリであってもよい。
【0033】
二次電池は、充電を行うことにより繰り返し使用することができる電池であれば特に限定されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウム電池、アルカリ蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、全固体電池等であってよい。二次電池は、上記電子機器に電気を供給するのに使用することができる。
【0034】
コンデンサは、特に限定されず、どのようなものでも使用することができる。コンデンサは、必要に応じて発電装置に生じた電気を貯めたり、上記電子機器に電気を供給する他、電圧を一定に維持したり、ノイズを低減させるのに用いられてもよい。
【0035】
アンテナ装置は、電波を送受信するものであれば特に限定されず、どのようなものでも使用することができる。アンテナ装置は、電波と電流とを相互に変換するアンテナそのものの他、タイヤ組立体1とタイヤ組立体1の外部装置との間に無線通信を確立するための通信装置を含んでもよい。
【0036】
発信機は、電波を発信するものであれば特に限定されない。発信機は、例えば、BLUETOOTH(登録商標)発信機や、GPS等の衛星測位システムから取得した位置情報を外部装置に向けて発信する位置情報発信機等であってもよい。
【0037】
回路は、他の機能部材を動作させるための回路や、他の機能部材同士を連携して動作させるための回路であってよく、その構成は特に限定されない。
【0038】
タイヤ2の周方向に沿って分散して配置された機能部材3A~3Hの少なくとも一部は、リード線等(不図示)を用いて、互いに電気的に接続されてもよい。ただし、タイヤ組立体1の振動及び騒音を抑制する観点からは、用いるリード線等の質量は、機能部材3A~3Hの各々の質量に対して充分に小さいことが好ましい。機能部材3A~3Hの各々の質量の好ましい範囲については、後述する。
【0039】
<3.機能部材の配置>
タイヤの内側に機能部材を設けることにより、タイヤの周方向に沿った質量バランスが大きく崩れると、タイヤの回転に伴って不要な振動が生じ、車両の快適な走行が阻害されることがある。この振動には、1次のラジアル・フォースバリエーション(RFV)が主として寄与している。タイヤ組立体1では、ラジアル・フォースバリエーションに起因する振動を抑制するため、機能部材の全体としての質量が、タイヤ2の周方向に沿ってできる限り等間隔に、そしてできる限り均等に分散するように機能部材が配置されることが好ましい。このため、本実施形態では、機能部材3A~3Hは、各々の重心が、タイヤ2の中心軸A1を基準として、タイヤ2の周方向に45度間隔となるように配置される(説明の便宜上、図面では、機能部材3A~3Hの重心の位置を黒点で示す)。ただし、中心軸A1を基準とした間隔には、±10度以内の誤差があってもよい。つまり、複数の機能部材の質量がタイヤの周方向に沿って「等間隔に分散する」とは、各々の機能部材の重心が均等な角度で間隔を空けて配置される場合のみならず、±10度以内の誤差を含んだ間隔で配置される場合も含まれる。
【0040】
加えて、機能部材の全体としての質量をできる限り均等に分散するためには、分散配置される機能部材の各々の質量の差を、できる限り小さくすることが好ましい。より具体的には、機能部材の各々の質量のうち、最大値と最小値との差を20g以下とすることが好ましい。機能部材の質量差を上記上限以下とすることで、機能部材に起因する質量のアンバランスを、タイヤ組立体1がホイールに取り付けられた後の調整で好ましい程度までキャンセルすることができる。一方、機能部材の質量差が上記上限を超えると、タイヤ組立体1をホイールに取り付けた後にカウンターウエイトで質量バランスを調整しても、分散配置される機能部材の各々の質量の差によってラジアル・フォースバリエーションが大きくなり、振動による影響が大きくなるため、乗り心地の悪化に繋がる。
【0041】
加えて、ラジアル・フォースバリエーションの高次の成分に起因するタイヤ組立体1の振動を抑制するためには、機能部材の各々の質量自体も小さいことが好ましい。具体的には、機能部材の各々の質量は、20g以下であることが好ましい。機能部材の各々の質量が20gを超えると、タイヤ組立体1をホイールに取り付けた後にカウンターウエイトで質量バランスを調整しても、機能部材の質量によってラジアル・フォースバリエーションが大きくなり、振動による影響が大きくなるため、乗り心地の悪化に繋がる。
【0042】
タイヤ2の周方向に沿って複数の機能部材の質量を分散する数(タイヤ2の周方向に沿って複数の機能部材を配置する箇所の数)は、特に限定されないが、4以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、12以下であることが好ましい。すなわち、複数の機能部材は、タイヤ2の周方向に沿って、少なくとも4か所に分散されることが好ましい。
【0043】
機能部材に起因する質量のアンバランスは、上述したように、タイヤ組立体1がホイールに取り付けられた後に、カウンターウエイト等で調整することができる。しかし、タイヤ組立体1の回転中に、機能部材が配置される箇所が路面と接触するときに質量アンバランス(振動)が生じ、それが加振力としてタイヤ組立体1から車両へと伝わる。この加振力は、タイヤ組立体1の回転速度の二乗に比例して増加する。タイヤ2の周方向に沿って機能部材を配置する箇所が増えると、タイヤ組立体1が1回転する間に質量アンバランスとなる回数が増え、車両に加振力が加わる加振周波数が高くなる一方、加振周波数が車両の共振周波数と一致するタイヤ組立体1の回転速度は減少する。つまり、機能部材を配置する箇所がn箇所になると、加振周波数が車両の共振周波数と一致するタイヤ組立体1の回転速度は1/n倍になる。加振周波数と共振周波数とが一致すると、車両の振動は大きくなるが、通常、両者が近づくだけでも車両の振動は大きくなる。
【0044】
以上のことにより、機能部材を配置する箇所が増えると、タイヤ組立体1の回転速度が小さい(つまり、加振力が小さい)ときに、加振周波数と共振周波数とが一致するので、車両に伝達される振動は小さくなる。このように、ラジアル・フォースバリエーションを抑制する効果は、機能部材を配置する箇所が4以上でより顕著となる。しかしながら、機能部材を配置する箇所が多くなればなるほど、機能部材同士を接続する配線構造が複雑になり、加工の手間が増える。また、本発明者らの検討によれば、機能部材を配置する箇所が10を超えると、ラジアル・フォースバリエーションを抑制する効果が頭打ちとなる傾向がある。つまり、機能部材を配置する箇所が10を超えると、車両が共振するときの走行速度が十分に低くなるため、車両が通常走行する速度における車両の振動は、機能部材を配置する箇所をこれ以上増やしてもほとんど変わらなくなる。従って、複数の機能部材の質量を分散する数は、機能部材同士を接続する加工の手間、構造の複雑化の程度及びRFVの抑制効果の兼ね合いを考慮して定められることが好ましい。
【0045】
なお、複数の機能部材の全体としての質量を、タイヤ2の周方向に沿ってできる限り等間隔に、均等に分散したとしても、複数の機能部材を配置したことにより、ラジアル・フォースバリエーションの高次の成分に起因する空洞共鳴音は増加し得る。空洞共鳴音は、タイヤ組立体1を装着した車両が路面を走行する際に、タイヤ組立体1が路面から受ける衝撃によりタイヤ組立体1の内部の空気が振動し、共鳴することで発生するノイズである。空洞共鳴音は、タイヤ2のサイズや機能部材の数にもよるが、車両が時速30km~80km程度で走行する際に主として発生する。また、本発明者らの検討によれば、機能部材を配置する箇所が7以上になると、空洞共鳴音が増加する。しかし、タイヤ組立体1は、吸音材4を備えることにより、複数の機能部材に起因する空洞共鳴音を低減することができる。
【0046】
複数の機能部材のうち、いずれを吸音材4の外周面40a側に配置し、いずれを内周面40b側に配置するかは、配線の都合、機能部品の質量や性質、ならびに吸音材4の厚みや硬さ等によって適宜選択することができる。例えば、吸音材4のスポンジ材が比較的硬い場合や、スポンジ材自体が比較的柔らかくても厚みが比較的大きい場合は、吸音材4を内側面20に確実に取り付ける観点から、機能部材を内周面40b側に配置し得る。吸音材4のスポンジ材が比較的硬い、または比較的厚い場合は、接着剤または粘着剤を介してタイヤの内側面20に吸音材4を確実に貼り付けるのが比較的困難となり得るためである。スポンジ材の厚みは、20mm以上であれば比較的大きいと言ってよく、20mm未満であれば比較的小さいと言ってよい。スポンジ材の硬さは、ASKER C硬度が30°以上であれば比較的硬いと言ってよく、ASKER C硬度が30°未満である場合は比較的柔らかいと言ってよい。さらに、柔軟性のある連泡タイプのスポンジ材は、比較的柔らかいと言ってよい。また、振動の影響を受けやすいコンデンサは、振動の影響を抑制する観点から、内周面40b側に配置し得る。一方、機能部材を内周面40b側に配置すると、走行時の振動により機能部材の質量が吸音材4に負荷を加えるおそれがあるため、機能部材を外周面40a側に配置する方が好ましい場合もある。機能部材が外周面40aとタイヤ2の内側面20aとの間に配置される場合は、剛性の高いタイヤ2に対して機能部材をより確実に固定することができるため、振動や空洞共鳴音の発生を抑制することができる。また、センサは、タイヤ2の内側面20aに固定される方が、より正確な情報を取得できる。
【0047】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0048】
(1)複数の機能部材は、各々の重心がタイヤ2の周方向に沿って等間隔に分散するように配置されていれば良く、図5に示すように、タイヤ2の幅方向(中心軸A1に平行な方向)に沿った各々の重心の位置は、互いに異なっていてもよい。
【0049】
(2)タイヤ組立体1は、機能部材により、車両に搭載される車載装置や、ラップトップパソコン、スマートフォン、携帯電話、タブレット等のポータブルな情報処理端末とともに、タイヤ2や車両の状態をモニタリングするためのシステムを構成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 タイヤ組立体
2 タイヤ
3A~3H 複数の機能部材
4 吸音材
20,20a 内側面
40a 外周面
図1
図2
図3
図4
図5