(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092627
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
G05G 1/01 20080401AFI20240701BHJP
G05G 1/04 20060101ALI20240701BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20240701BHJP
F16H 63/34 20060101ALI20240701BHJP
B60T 7/04 20060101ALI20240701BHJP
B60T 7/06 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G05G1/01 F
G05G1/04 Z
G05G1/30 E
F16H63/34
B60T7/04 C
B60T7/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208707
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】倉富 夏菜
(72)【発明者】
【氏名】梶原 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】萩山 丈士
(72)【発明者】
【氏名】越智 孝司
(72)【発明者】
【氏名】河本 創
【テーマコード(参考)】
3D124
3J067
3J070
【Fターム(参考)】
3D124AA35
3D124BB02
3D124BB15
3D124CC51
3D124DD33
3J067AA11
3J067AC42
3J067DA72
3J067FA57
3J067FB83
3J067GA14
3J070AA03
3J070AA32
3J070BA71
3J070CB01
3J070DA24
(57)【要約】
【課題】オートクルーズ機構およびブレーキ機構を効率よく配置した作業車両を提供する。
【解決手段】
無段変速装置41を操作する変速ペダル18と、車体を制動するブレーキペダル19を備えた作業車両において、ハンドルポスト20の一側方に、変速ペダル18を所定の踏込み位置で固定するクルーズ機構Cを操作するクルーズレバー83を設け、クルーズ機構Cはクルーズレバー83の下方であって車体の左右一側に設けられ、ブレーキペダル19を操作した状態で固定するパーキング機構Pをクルーズ機構Cの反対側に構成した。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無段変速装置(41)を操作する変速ペダル(18)と、車体を制動するブレーキペダル(19)を備えた作業車両において、ハンドルポスト(20)の一側方に、変速ペダル(18)を所定の踏込み位置で固定するクルーズ機構(C)を操作するクルーズレバー(83)を設け、クルーズ機構(C)はクルーズレバー(83)の下方であって車体の左右一側に設けられ、ブレーキペダル(19)を操作した状態で固定するパーキング機構(P)をクルーズ機構Cの反対側に構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
操縦席(7)を載置するマウントブラケット(92)を備え、パーキング機構(P)は、マウントブラケット(92)に設けるロック部(96)の係止片(95)とブレーキペダル(19)の踏み込みに応じて回動するペダル連動軸(76)に取り付けられたパーキングアーム(90)に設けるブレーキ固定爪(91)がかみ合うことで制動状態を保持する構成とした請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用トラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
前進方向を向いた運転手の左手方向の足元にブレーキペダル、右側下方のトランスミッションケースの側方にブレーキ機構、運転席側方のフェンダ上に構成されたオートクルーズ入切レバーを備え、ブレーキペダルを踏み込み操作するとオートクルーズ入り状態を解除する作業車両が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように構成すると、フェンダ上のオートクルーズ入切レバーでオートクルーズ入りに操作でき、ブレーキペダルを踏み込み操作するとオートクルーズ入り状態を解除できるが、上記の構成では下方のブレーキ機構やフェンダに構成されたオートクルーズ入切レバー周辺のリンク等の構成が嵩張って大きくなってしまい、特に小型車においてはスペースを圧迫していた。
【0005】
本発明は、オートクルーズ機構およびブレーキ機構を効率よく配置した作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、無段変速装置41を操作する変速ペダル18と、車体を制動するブレーキペダル19を備えた作業車両において、ハンドルポスト20の一側方に、変速ペダル18を所定の踏込み位置で固定するクルーズ機構Cを操作するクルーズレバー83を設け、クルーズ機構Cはクルーズレバー83の下方であって車体の左右一側に設けられ、ブレーキペダル19を操作した状態で固定するパーキング機構Pをクルーズ機構Cの反対側に構成した。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、操縦席7を載置するマウントブラケット92を備え、パーキング機構Pは、マウントブラケット92に設けるロック部96の係止片95とブレーキペダル19の踏み込みに応じて回動するペダル連動軸76に取り付けられたパーキングアーム90に設けるブレーキ固定爪91がかみ合うことで制動状態を保持する構成とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、ハンドルポスト20を挟んで、クルーズ機構とパーキング機構を左右に振り分けて配置することができ各機構が肥大化することなく、効率よく配置することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によると、請求項1に記載の効果に加え、重量物で操縦席7を支持するマウントブラケット90は高剛性に構成される部材であるので、これにロック部96を固定することで安定して強固に制動状態を保持できる。振動を吸収するマウントを介した操縦席7側でなく、マウントブラケット90にロック部96を設けることでこのロック部96はパーキングアーム90やブレーキ固定爪91と同様にエンジン振動に対して同調し易く、かみ合いのズレが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るトラクタの左側面図である。
【
図3】同上トラクタの動力伝達装置の動力伝動線図である。
【
図4】同上トラクタの静油圧式の無段変速装置の構成および動作状態を示す概要図である。
【
図5】同上トラクタのブレーキペダルと連携機構を示す斜視図である。
【
図6】同上トラクタのクルーズ機構とパーキング機構を示す側面図である。
【
図8】同上トラクタのパーキング機構及びその周辺の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1および
図2には、本発明の実施形態に係る作業車両の一例であるトラクタ1が示されている。
【0013】
このトラクタ1は、図示しない支持フレーム等に、エンジン3、動力伝達装置4、左右一対の前輪5および後輪6、操縦席7等の機器が搭載又は設けられた走行車体2を備えている。このうちエンジン3は、開閉可能に設けられたボンネットカバー11で覆われている。動力伝達装置4は、ミッションケース40内に配置される静油圧式の無段変速装置(HST:Hydraulic Static Transmission)41、副変速装置51等により構成されている。
【0014】
また、トラクタ1は、エンジン3の回転動力が動力伝達装置4等を経由して左右の前輪5と左右の後輪6に伝達されて駆動する四輪駆動(4WD)と左右の後輪6に伝達されて駆動する二輪駆動(2WD)との駆動方式が切り替え可能であり、そのいずれかの駆動方式で走行する。
【0015】
さらに、トラクタ1は、走行車体2の後部に、ロワリンク29等の取付け部分を介してロータリ耕うん機等の図示しない作業機を装着することにより所望の作業を行うことが可能である。走行車体2の後部には、装着した作業機にエンジン3の回転動力を出力するためのPTO軸59が設けられている。
【0016】
操縦席7は、運転者が座る座席部7aと運転者が乗るときや運転時に足を置くステップ床部7bとを有している。
【0017】
操縦席7の前方には、走行車体2の支持フレームに設けられたハンドルポスト20に支持され前輪5を操舵するステアリングハンドル12が設けられている。ステアリングハンドル12の前方には、運転者に対して操縦に関する情報(走行速度、動作状態など)を表示する表示パネル13が設けられている。
【0018】
ハンドルポスト20の上端部でステアリングハンドル12の下方の左端部には、前進走行と後進走行のいずれかに切り替える際に操作する前後進切替えレバー14が設けられている。
【0019】
また、ハンドルポスト20の上部でステアリングハンドル12の下方の他端部には、エンジン3の回転数を変更するアクセルレバー15が設けられている。アクセルレバー15は、アクセル操作具の一例であり、作業走行時に使用される。
【0020】
操縦席7のステップ床部7bには、そのハンドルポスト20よりも右側の部分に、アクセルペダル16、HSTペダル18等が設けられ、左側の部分にブレーキペダル19等が設けられている。
【0021】
アクセルペダル16は、アクセル操作具の一例であり、その踏み込み量に応じてエンジン回転数、ひいては走行車体2の車速を上昇させる際に操作される踏み込み式ペダルである。このアクセルペダル16は、基本的に路上走行時に使用される。
【0022】
変速ペダル(以下、HSTペダル)18は、変速操作具の一例であり、その踏み込み方向およびその量に応じて上記HSTからなる無段変速装置41から出力する回転動力の回転方向および回転速度(回転数)、ひいては走行車体2の走行方向(前進又は後進)の変更および車速の調整を行う際に操作するシーソー型の踏み込み式ペダルである。このHSTペダル18は、主に作業走行時に使用される。
【0023】
HSTペダル18は、そのペダル全体をほぼ水平の状態に保つようにすることにより停止状態にすることができる停止操作位置と、そのペダル全体を停止操作位置から前方に傾けるよう踏み込むことにより前進時の車速を増減操作することができる前進操作域と、そのペダル全体を停止操作位置から後方に傾けるよう踏み込むことにより後進時の車速を増減操作することができる後進操作域を有している。
【0024】
操縦席7の前進方向に対する左側には、副変速レバー21、PTOクラッチレバー22、主変速レバー23等が設けられている。
【0025】
副変速レバー21は、副変速装置51を伝動させる回転動力の回転速度を例えば低速、中速、高速のいずれかの変速段(車速域)を選択する際に操作するレバーである。この変速段のうち低速および中速は圃場内で作業を行う際に圃場内を走行する場合に適した車速域であり、高速は圃場間等を移動する際に路上走行する場合に適した車速域である。PTOクラッチレバー22は、PTO軸59への駆動伝達の断続を行う際に操作するレバーである。主変速レバー23は、変速操作具の他の例であり、無段変速装置41のトラニオン軸47を操作して変速を行うレバーである。
【0026】
操縦席7の前進方向に対する右側には、
図2に示されるように、作業機昇降用のポジションレバー24、調整パネル25等が設けられている。
【0027】
ポジションレバー24は、作業機の昇降時における高さを調整する操作レバーである。調整パネル25は、トラクタ1の動作の一部について必要な調整の設定を行うダイヤル、スイッチ等が配置された部分である。
【0028】
動力伝達装置4は、
図3に示されるように、まず、エンジン3の出力軸の回転動力が、メインクラッチ31を介してミッションケース40の入力軸32に伝達されて増速ギア33a,33bで増速された後、無段変速装置41の入力軸42に伝達されるよう構成されている。メインクラッチ31は、クラッチペダルの踏み込み操作の有無によって作動する。
【0029】
無段変速装置41は、上記HSTが適用されており、油圧ポンプ43と油圧モータ44を組み合わせて一体にした装置である。
【0030】
油圧ポンプ43は、可変容量型の油圧ポンプであり、入力軸42を通して入力されるエンジン3の回転動力により作動し、ポンプ内における斜板45の傾斜角度を変えることで油圧モータ44に送る作動油の吐出状態(向きおよび流量(ゼロを含む))を調整する。油圧モータ44は、例えば固定容量型の油圧モータであり、油圧ポンプ43から吐出される作動油の状態に応じてモータ出力軸44aを所定の回転方向および回転速度(回転数)で回転させる。
【0031】
そして、動力伝達装置4では、
図3に示されるように、無段変速装置41における油圧モータ44のモータ出力軸44aの回転動力が、副変速装置51を経てから駆動出力軸34を通して出力された後に後輪デフギア装置35を介して左右の後輪6に伝達される。
【0032】
また、動力伝達装置4では、接続ギアを含む駆動切替え装置36が四輪駆動の側に切り替えられると、副変速装置51から駆動出力軸34を通して出力される回転動力が、駆動切替え装置36を経て前輪中継軸37に伝達された後に前輪増速装置38と前輪デフギア装置39を介して左右の前輪5にも伝達される。前輪5は、前輪増速装置38が作動して増速処理されるときだけ後輪6よりも増速した回転動力が伝達されるが、それ以外は後輪6と同じ回転速度の回転動力が伝達される。
【0033】
さらに、動力伝達装置4は、
図3に示されるように、無段変速装置41における油圧ポンプ43に入力軸42と同様に回転するポンプ出力軸43aが設けられている。これにより、動力伝達装置4では、そのポンプ出力軸43aの回転動力が、PTO正逆クラッチ56を経てPTO中継軸57へ伝達された後にPTO変速装置58を経てPTO軸59に伝達される。
【0034】
無段変速装置41では、油圧ポンプ43における斜板45が前進出力位置、中立位置、
および後進出力位置のいずれかの位置に切り替えられる。
【0035】
無段変速装置41は、斜板45が前進出力位置に切り替えられると、油圧モータ44が前進させる方向にかつ傾斜角度に応じた回転速度で回転する動力をモータ出力軸44aから出力し、また斜板45が後進出力位置に切り替えられると、油圧モータ44が後進させる方向にかつ傾斜角度に応じた回転速度で回転する動力をモータ出力軸44aから出力する。一方、無段変速装置41は、斜板45が中立位置に切り替えられると、油圧モータ44がモータ出力軸44aを回転させることがなく動力も出力しない。
【0036】
また、無段変速装置41は、
図4に示されるように、油圧ポンプ43における斜板45の傾斜角度を調整するよう回動するトラニオン軸47を有している。トラニオン軸47は、軸回動機構60の作動により動くトラニオンアーム48を介して回動させられる。
【0037】
軸回動機構60は、駆動源となる油圧シリンダ機構61と、油圧シリンダ機構61の動力をトラニオンアーム48に伝達させるリンク機構65とを有している。
【0038】
油圧シリンダ機構61は、複動型の油圧シリンダ62と、その油圧シリンダ62を作動させる制御弁63とで構成されている。
【0039】
リンク機構65は、油圧シリンダ機構61における油圧シリンダ62のピストンロッド62aの先端部に一端部が接続されるとともに第1固定軸66aに回動可能に支持された第1揺動アーム67と、トラニオンアーム48の後端部に一端部が接続されるとともに第2固定軸66bに回動可能に支持された第2揺動アーム68と、第1揺動アーム67の他端部と第2揺動アーム68の他端部との間を回動自在に連結する連結アーム69とで構成されている。
【0040】
制御弁63は、図示しないシリンダ用の油圧ポンプから送られる作動油を複動型のシリンダ部62bの一端および他端に所要のタイミングで供給し、これによりピストンロッド62aを伸長又は短縮させる。制御弁63としては、作動油の供給動作を制御する一対のソレノイド63a,63bを備えた電磁式油圧比例弁が適用されており、一方のソレノイド63aを伸長用として作動させ、他方のソレノイド63bを短縮用として作動させるようになっている。
図4中の符合64は、制御弁63とシリンダ部62bの一端および他端との間をそれぞれ接続する送油管を示す。
【0041】
この軸回動機構60は、制御弁63の作動油の供給動作により油圧シリンダ機構61のピストンロッド61aを
図4に示される中立位置に相当する位置から矢印D1で示す方向に伸長させた場合、その伸長するピストンロッド61aの力がリンク機構62を介してトラニオンアーム48に伝達され、このときのトラニオンアーム48がトラニオン軸47を矢印E1で示す方向に回動させるよう作動する。この場合は、油圧ポンプ43における斜板45が前進出力位置の側に傾斜するよう動かされる。
【0042】
また、軸回動機構60は、制御弁63の作動油の供給動作により油圧シリンダ機構61のピストンロッド61aを中立位置に相当する位置から矢印D2で示す方向に短縮させた場合、その短縮するピストンロッド61aの力がリンク機構62を介してトラニオンアーム48に伝達され、このときのトラニオンアーム48がトラニオン軸47を矢印E2で示す方向に回動させるよう作動する。この場合は、油圧ポンプ43における斜板45が後進出力位置の側に傾斜するよう動かされる。
【0043】
さらに、無段変速装置41は、
図4に示されるように、斜板45を回動させるトラニオン軸47とトラニオンアーム48を中立の位置に保持する中立保持機構49が設けられている。
【0044】
中立保持機構49は、トラニオン軸47を支持軸として一体になって回動するとともに中立位置に戻るように構成されたカムプレート49aと、そのカムプレート49aの窪んだ形状からなる周縁カム部に弾性的な付勢を受けて押し付けられるローラ49bを有している。この中立保持機構49に対してトラニオン軸47は、その一端が、カムプレート49aの一部に回動可能に連結された構造になっている。
【0045】
無段変速装置41では、軸回動機構60が作動しないときは、中立保持機構49の作用によりトラニオンアーム48が中立の位置に保持され(
図4参照)、これにより斜板45も中立位置に戻されるようになっている。
【0046】
無段変速装置41においては、変速操作具、すなわち主変速レバー23の操作量が図外主変速位置センサで検出されるか又はHSTペダル18の踏み込み方向や量が図外HSTペダル位置センサで検出されると、その検出値に応じて軸回動機構60における制御弁63のソレノイド63a,63bに供給する駆動用電流値がそれぞれ制御される。これにより、無段変速装置41では、トラニオンアーム48を介してトラニオン軸47が所要の方向に踏み込み量に応じた所要の角度だけ回動させられる。
【0047】
この結果、無段変速装置41では、トラニオン軸47の回動に連動して油圧ポンプ43における斜板45の傾斜角度が任意に変更されて油圧ポンプ43から油圧モータ44に吐出される作動油の向きや流量が調整されるので、油圧モータ44からモータ出力軸44aを通して所要の方向に回転してかつ所要の回転速度(回転数)に無段状に変更された回転動力が出力される。
【0048】
前記動力伝達装置4において、無段変速装置41における油圧モータ44のモータ出力軸44aの回転動力が、副変速装置51を経てから駆動出力軸34を通して出力された後に後輪デフギア装置35を介して左右の後輪6に伝達される。
【0049】
そして、後輪デフギア装置35の左右デフ出力軸70L,70Rの各端部に左右ブレーキ機構71L,71Rを備えている。左右デフ出力軸70L,70Rと前記左右の後輪6L,6Rを支持する後車軸72L,72Rとの間に、平ギヤの組合せによる最終減速機構73L,73Rを構成している。
【0050】
前記左右ブレーキ機構71L,71Rの構成及び連動構成について説明する。
図5に示すように、左右ブレーキ機構71L,71Rは共通の構成であるから、適宜に左側を意味する符号L及び右側を意味する符号Rを省略して説明する。ブレーキ機構71は、デフ出力軸70に嵌合し軸方向に摺動自在なブレーキディスク、一対のブレーキカムディスク、回転カム板とボールからなるカム機構等を備える公知の構成である。そして、カム機構によって押し広げられる状態でブレーキディスクを固定壁部に押し付けることによりデフ出力軸70を制動できる構成である。
【0051】
前記デフ出力軸70及び後車軸72を支持するとともにこれらを覆う車軸ケース(図示せず)を前記ミッションケース40に連結している。左右車軸ケースには、前記ブレーキ機構71L,71Rの前記カム機構を連動するブレーキアーム74L,74Rを水平軸芯回りに回動自在のブレーキ作動軸75の左右端部に設けている。
【0052】
前記ブレーキ機構71L,71Rを作動するブレーキペダル19は水平軸芯回りに回動自在に設けられる。詳細には、操縦席7のステップ床部7bの下方において、ペダル連動軸76を設ける。該ペダル連動軸76の左側部にブレーキペダル19の基部側ボス19aを貫通し連動可能に設ける。ペダル連動軸76の左右端部には左ペダルアーム77Lと右ペダルアーム77Rを設ける。そして、左ペダルアーム77Lと左側のブレーキアーム74Lを左ブレーキロッド78L,左ブレーキリンク79Lを介して連結し、右ペダルアーム77Rと右側のブレーキアーム74Rを右ブレーキロッド78R,右ブレーキリンク79Rを介して連結している。したがって、ブレーキペダル19を踏み込むと、左右ブレーキロッド78L,78R及び左右ブレーキリンク79L,79Rは連動し、左右のブレーキアーム74L,74Rを同時に作動しブレーキ機構71L,71R共に制動状態とする。
【0053】
次いで、前記HSTペダル18を前進操作域への踏み込み状態を維持またはHSTペダル18維持状態を解除するクルーズ機構Cについて説明する。すなわち、HSTペダル18を回動自在に支持するペダル支持軸80の一方側の端部(図例では左側)にクルーズ固定爪81に係合し得る係合爪82を設け、クルーズ固定爪81との係合によってペダル支持軸80を所定踏込み姿勢でロックできるようになっている。この係合爪82は、ハンドルポスト20の左側に設けた上下操作可能なクルーズレバー83の上方操作に連動して、連係ロッド84や回動ブラケット85を介してクルーズ固定爪81に押圧される構成である。なおクルーズレバー83を下方操作すると、係合爪82はクルーズ固定爪81から離反しペダル支持軸80及びHSTペダル18の規制を解除できる。
【0054】
また、前記ブレーキペダル19のペダル連動軸76の一端部(図例では左側)には、解除ロッド85を備え、ブレーキペダル19の踏込み操作でペダル連動軸76の回動に連動して解除ロッド86を作動し、解除ロッド86が前記クルーズレバー83に連動する回動ブラケット85の回動支点軸87周りに回動する当接片88に当接して押圧することによってクルーズ固定爪81を回動し係合爪82から離反すべく作動する構成としている。
【0055】
したがって、HSTペダル18のペダル支持軸80端部のクルーズ固定爪81、クルーズレバー83、係合爪82等によってクルーズ固定機構C1とされる。そしてブレーキペダル19のペダル連動軸76側には解除ロッド86、当接片88等からなるクルーズ解除機構C2が構成されるものである。クルーズ機構Cはクルーズ固定機構C1、クルーズ解除機構C2、クルーズレバー83等による。
【0056】
図6において、ハンドルポスト20のフレーム部20aにステアリングハンドル12の連動軸12aを支架し立設している。そして、このフレーム部20aの一側部(図例では左側)に前記クルーズレバー83を支持している。また、
図6、
図7においては、HSTペダル18は、前進ペダル18fと後進ペダル18rの2ペダル方式としているが、前記の前後進を1ペダルで行うHSTペダル18においても同様にクルーズ機構C、すなわちクルーズ固定機構C1やクルーズ解除機構C2を構成できる。
【0057】
図8において、ブレーキペダル19及びペダル連動軸76を回動規制するパーキング機構Pについて説明する。すなわち、前記ペダル連動軸76のブレーキペダル19の基部側ボス19a配置側とは反対側である右側部に、パーキング機構Pを構成するもので、ペダル連動軸76の右側端部に前方に延出してパーキングアーム90を設け、そのアーム90先端にはブレーキ固定爪91を設けている。一方車体側のマウントブラケット92側にはマウントブラケット92の下面に沿うコ型ブラケット93を装着しこのコ型ブラケット93に水平姿勢に設けた横支持軸94とこの軸94周りに揺動可能な係止片95とからなるロック部96を設け、パーキングレバー97操作でブレーキペダル19踏込み時にブレーキ固定爪91に係止片95を係合することによってブレーキ制動状態を維持するパーキング機構Cを構成する。なおパーキングブレーキ解除もパーキングレバー97操作による。98はマウントブラケット92に備えたマウントゴムで操縦席やキャビン仕様の操縦席を防振的に支持できる構成である。
【0058】
なお、重量物で操縦席7を支持するマウントブラケット90は高剛性に構成される部材であるので、これにロック部96を固定することで安定して強固に制動状態を保持できる。振動を吸収するマウントゴムを介した操縦席7側でなく、マウントブラケット90側にロック部96を設けることでこのロック部96はパーキングアーム90やブレーキ固定爪91と同様にエンジン振動を受けつつも相互に同調し易く、かみ合いのズレが生じにくい。
【0059】
以上のように、ハンドルポスト20を挟んで、クルーズ固定機構及びクルーズ解除機構はブレーキペダル19を配置する左側に配置し、パーキング機構は右側に配置することができる。したがって、クルーズ機構Cとパーキング機構Pを左右に振り分けて配置することができる。
【符号の説明】
【0060】
7 操縦席
18 HSTペダル(変速ペダル)
19 ブレーキペダル
20 ハンドルポスト
76 ペダル連動軸
83 クルーズレバー
90 パーキングアーム
91 ブレーキ固定爪
92 マウントブラケット
95 係止片
96 ロック部
C クルーズ機構
P パーキング機構