(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092631
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
C12C 5/02 20060101AFI20240701BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20240701BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C12C5/02
A23L2/56
A23L2/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208712
(22)【出願日】2022-12-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 雄大
【テーマコード(参考)】
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LC14
4B117LK04
4B117LK06
4B117LK09
4B117LL01
4B117LP10
4B128CP16
4B128CP22
4B128CP39
(57)【要約】
【課題】 ビールテイスト飲料について穀物感を改善できる新規な技術を提供する。
【解決手段】 9-デセン酸と、オイゲノールとを含有し、前記9-デセン酸の含有量が100~2000ppbであり、前記オイゲノールの含有量が1~5000ppbであるビールテイスト飲料。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
9-デセン酸と、
オイゲノールとを含有し、
前記9-デセン酸の含有量が100~2000ppbであり、前記オイゲノールの含有量が1~5000ppbであるビールテイスト飲料。
【請求項2】
前記9-デセン酸の含有量に対する前記オイゲノールの含有量の比率(オイゲノール含有量/9-デセン酸含有量)が、0.002以上である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
前記9-デセン酸の含有量に対する前記オイゲノールの含有量の比率(オイゲノール含有量/9-デセン酸含有量)が、50以下である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
アルコール濃度が6体積%以下である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
発酵飲料である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項6】
非発酵飲料である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項7】
麦芽使用比率が50w/v%未満である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項8】
原料として麦芽を含有しない、請求項7に記載のビールテイスト飲料。
【請求項9】
糖質含有量が1.5g/100ml以下である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項10】
9-デセン酸と、オイゲノールとを含有するビールテイスト飲料の穀物感改善剤。
【請求項11】
ビールテイスト飲料の製造方法であって、
当該ビールテイスト飲料の製造工程において9-デセン酸とオイゲノールとを、ビールテイスト飲料における前記9-デセン酸の含有量が100~2000ppbであり、前記オイゲノールの含有量が1~5000ppbであるように含有させることを含む、前記製造方法。
【請求項12】
ビールテイスト飲料の穀物感を改善する方法であって、
当該ビールテイスト飲料の製造工程において9-デセン酸とオイゲノールとを、ビールテイスト飲料における前記9-デセン酸の含有量が100~2000ppbであり、前記オイゲノールの含有量が1~5000ppbであるように含有させることを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、消費者の多様化した好みに応じて様々なビールテイスト飲料が開発、提供されてきている(例えば特許文献1)。特に香味の点でも、従来のビールテイスト飲料の香味と異なる、新規な味感や風味をもったビールテイスト飲料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ビールテイスト飲料について穀物感を改善できる新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、穀物感が改善されたビールテイスト飲料を構成することを着想した。
ここで穀物感とはビールテイスト飲料を飲んだときに得られる穀物を想起させる味や香りの感覚であり、具体的には、本明細書でいうところの穀物感とは、後述の飲む前および飲んだ直後に感じられる穀物感および穀物様の余韻に関する。
本明細書において穀物感の改善とは、飲む前および飲んだ直後に感じられる穀物感がより好ましく感じられるようになるとともに、穀物様の余韻がより強く感じられることを意味する。
【0006】
本発明者は、鋭意研究の結果、ビールテイスト飲料において、9-デセン酸とオイゲノールとを所定の含有量で含有させることにより穀物感を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
9-デセン酸と、
オイゲノールとを含有し、
前記9-デセン酸の含有量が100~2000ppbであり、前記オイゲノールの含有量が1~5000ppbであるビールテイスト飲料。
[2]
前記9-デセン酸の含有量に対する前記オイゲノールの含有量の比率(オイゲノール含有量/9-デセン酸含有量)が、0.002以上である、[1]に記載のビールテイスト飲料。
[3]
前記9-デセン酸の含有量に対する前記オイゲノールの含有量の比率(オイゲノール含有量/9-デセン酸含有量)が、50以下である、[1]または[2]に記載のビールテイスト飲料。
[4]
アルコール濃度が6体積%以下である、[1]から[3]のいずれか一つに記載のビールテイスト飲料。
[5]
発酵飲料である、[1]から[4]のいずれか一つに記載のビールテイスト飲料。
[6]
非発酵飲料である、[1]から[4]のいずれか一つに記載のビールテイスト飲料。
[7]
麦芽使用比率が50w/v%未満である、[1]から[6]のいずれか一つに記載のビールテイスト飲料。
[8]
原料として麦芽を含有しない、[7]に記載のビールテイスト飲料。
[9]
糖質含有量が1.5g/100ml以下である、[1]から[8]のいずれか一つに記載のビールテイスト飲料。
[10]
9-デセン酸と、オイゲノールとを含有するビールテイスト飲料の穀物感改善剤。
[11]
ビールテイスト飲料の製造方法であって、
当該ビールテイスト飲料の製造工程において9-デセン酸とオイゲノールとを、ビールテイスト飲料における前記9-デセン酸の含有量が100~2000ppbであり、前記オイゲノールの含有量が1~5000ppbであるように含有させることを含む、前記製造方法。
[12]
ビールテイスト飲料の穀物感を改善する方法であって、
当該ビールテイスト飲料の製造工程において9-デセン酸とオイゲノールとを、ビールテイスト飲料における前記9-デセン酸の含有量が100~2000ppbであり、前記オイゲノールの含有量が1~5000ppbであるように含有させることを含む、前記方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ビールテイスト飲料について穀物感を改善できる新規な技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の1つの実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態は、ビールテイスト飲料に関する。本実施形態のビールテイスト飲料は、9-デセン酸と、オイゲノールとを含有し、9-デセン酸の含有量が100~2000ppbであり、オイゲノールの含有量が1~5000ppbである。
【0010】
本明細書において、ビールテイスト飲料とは、炭酸ガスによる発泡性を有し、ビールと同様又は同類の香味を有するアルコール飲料およびノンアルコール飲料を意味する。なお、ビールテイスト飲料に該当するか否かは、酒税法上の分類、使用原料やその使用量にとらわれるものではない。
【0011】
本実施形態のビールテイスト飲料は、例えばエタノールなどのアルコールを含有するアルコール飲料であってもよい。また、アルコール濃度が1体積%未満である所謂酒税法上の非酒類とすることもできる(本明細書においては、アルコール濃度が1体積%以下である場合について、以下、ノンアルコールとも称する)。
一方で、飲む前および飲んだ直後に感じられる穀物感をより好ましいと感じられるようになり且つ穀物様の余韻がより感じられ易くなる観点から、アルコール濃度6体積%以下が好ましい。
【0012】
9-デセン酸は直鎖脂肪酸の一種であり、14436-32-9とのCAS番号が付与されている不飽和脂肪酸の一種である。
オイゲノールは97-53-0とのCAS番号が付与されているフェニルプロパノイドの一種である。
9-デセン酸の含有量に対するオイゲノールの含有量の比率(オイゲノール含有量/9-デセン酸含有量)は、おいしさの観点から、0.002以上が好ましい。
9-デセン酸の含有量に対するオイゲノールの含有量の比率(オイゲノール含有量/9-デセン酸含有量)は、おいしさの観点から、50以下が好ましい。
また、おいしさの観点から、オイゲノール含有量/9-デセン酸含有量が0.002以上50以下であり、且つ9-デセン酸の含有量が1000ppb以下および/またはオイゲノールの含有量が3000ppb以下であることがより好ましい。
【0013】
以下の説明においては、ビールテイスト飲料の一例として、発酵ビールテイスト飲料を例に挙げて説明する。
当該発酵ビールテイスト飲料について、9-デセン酸の含有量が100~2000ppbであり、オイゲノールの含有量が1~5000ppbとなるように含有される以外は特に限定されず、例えばこれらの点を除いて常法により製造された発酵ビールテイスト飲料とすることができる。
発酵ビールテイスト飲料のアルコール濃度は限定されず、1.0体積%以上のアルコール飲料であってもよく、1.0体積%未満のノンアルコール飲料であってもよい。具体的には、ビール、発泡酒、ノンアルコールビール等が挙げられる。
【0014】
発酵ビールテイスト飲料の製造工程の一例を以下に示す。
一般的な発酵ビールテイスト飲料は、仕込(発酵原料液調製)、発酵、貯酒、濾過の工程で製造することができる。
まず、仕込工程として、穀物原料および糖質原料からなる群から選択される1種以上の原料(発酵原料)から発酵原料液を調製する。穀物原料としては、例えば、大麦や小麦、これらの麦芽等の麦類、米、トウモロコシ、大豆等の豆類、イモ類等が挙げられ、これらはシロップ、エキス、粉砕物等の形態であってもよい。また、糖質原料としては、液糖などの糖類が挙げられる。
具体的には、まず、穀物原料と糖質原料の少なくともいずれかと原料水とを含む混合物を調製して加温し、穀物原料等の澱粉質を糖化させる。当該混合物には、穀物原料等と水以外の副原料を加えてもよい。当該副原料としては、例えば、食物繊維、酵母エキス、甘味料、果汁、苦味料、着色料、香草、香料等が挙げられる。また、必要に応じて、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ等の糖化酵素やプロテアーゼ等の酵素剤を添加することができる。
【0015】
糖化処理は、穀物原料等由来の酵素や、別途添加した酵素を利用して行う。糖化処理時の温度や時間は、用いた穀物原料等の種類、発酵原料全体に占める穀物原料の割合、添加した酵素の種類や混合物の量、目的とする発酵ビールテイスト飲料の品質等を考慮して、適宜調整される。例えば、糖化処理は、穀物原料等を含む混合物を35~70℃で20~90分間保持する等、常法により行うことができる。
【0016】
糖化処理後に得られた糖液に煮沸することにより、煮汁(糖液の煮沸物)を調製する。糖液は、煮沸処理前に濾過し、得られた濾液を煮沸処理することが好ましい。また、この糖液の濾液の替わりに、麦芽エキスに温水を加えたものを用い、これを煮沸してもよい。煮沸方法及びその条件は、適宜決定することができる。
【0017】
煮沸処理前または煮沸処理中にホップを添加することにより、ビールテイスト飲料にホップ香と苦味を付与することができる。本明細書でいうところのホップには、乾燥ホップ、凍結ホップ、凍結乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスが含まれ、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品も含まれる概念である。
また、煮沸処理前または煮沸処理中に香草等を適宜添加することにより、所望の香味を有する発酵ビールテイスト飲料を製造するようにしてもよい。香草等の添加量、添加態様(例えば数回に分けて添加するなど)および煮沸条件は、適宜決定することができる。
【0018】
仕込工程後、発酵工程前に、調製された煮汁から、沈殿により生じたタンパク質等の粕を除去することが好ましい。粕の除去は、いずれの固液分離処理で行ってもよいが、一般的にはワールプールと呼ばれる槽を用いて沈殿物を除去する。この際の煮汁の温度は、15℃以上であればよく、一般的には50~90℃程度で行われる。粕を除去した後の煮汁(濾液)は、熱交換器により適切な発酵温度まで冷却する。この粕を除去した後の煮汁が、発酵原料液となる。
【0019】
次いで、発酵工程として、冷却した発酵原料液に酵母を接種して、発酵を行う。冷却した発酵原料液は、そのまま発酵工程に供してもよく、所望のエキス濃度に調整した後に発酵工程に供してもよい。発酵に用いる酵母は特に限定されるものではなく、通常、酒類の製造に用いられる酵母の中から適宜選択して用いることができる。上面発酵酵母であってもよく、下面発酵酵母であってもよいが、大型醸造設備への適用が容易であることから、下面発酵酵母であることが好ましい。
【0020】
さらに、貯酒工程として、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、濾過工程として、熟成後の発酵液を濾過することにより、酵母及び当該温度域で不溶なタンパク質等を除去して、発酵ビールテイスト飲料を得ることができる。当該濾過処理は、酵母を濾過除去可能な手法であればよく、例えば、珪藻土濾過、平均孔径が0.4~0.6μm程度のフィルターによるフィルター濾過等が挙げられる。また、所望のアルコール濃度とするために、濾過前又は濾過後に適量の加水を行って希釈してもよい。なお、本実施形態に係わる発酵ビールテイスト飲料においては当該濾過工程を省略する場合もある。
【0021】
その他、酵母による発酵工程以降の工程において、例えばアルコール含有蒸留液と混和することにより、酒税法におけるリキュール類に相当する発酵ビールテイスト飲料を製造することもできる。アルコール含有蒸留液の添加は、アルコール濃度の調整のための加水前であってもよく、加水後であってもよい。添加するアルコール含有蒸留液は、より好ましい麦感を有する発酵ビールテイスト飲料を製造し得ることから、麦スピリッツが好ましい。
得られた発酵ビールテイスト飲料は、通常、充填工程によりびん、缶、樽などの容器に容器詰めされる。
【0022】
本実施形態のビールテイスト飲料において9-デセン酸およびオイゲノールを含み、9-デセン酸の含有量が100~2000ppbであり、オイゲノールの含有量が1~5000ppbである状態とするための処理については特に限定されず、例えば製造工程のいずれかの段階で9-デセン酸およびオイゲノールが添加または生成されればよい。例えば、得られた発酵ビールテイスト飲料への9-デセン酸およびオイゲノールの添加が例示できる。
具体的には、例えば、得られた発酵ビールテイスト飲料を容器に充填する前に9-デセン酸:100~2000ppb、オイゲノール:1~5000ppbとなるように9-デセン酸およびオイゲノールを添加するなどすればよい。
9-デセン酸、オイゲノールは、化合物単独で添加されてもよいほか、組成物の態様で飲料中に添加されるようにしてもよく、特に限定されない。
【0023】
なお、飲料中における9-デセン酸およびオイゲノールの含有量は、使用される原材料などから算出することができるほか、例えば以下の方法により得ることができる。
【0024】
9-デセン酸の含有量については、Journal of the Science of Food and Agriculture (2020),100 (1),38 -に記載のGC/MSを用いた方法により測定できる。
【0025】
また、オイゲノールの含有量については、ガスクロマトグラフィー質量分析計(Agilent Technologies社製)を用いての以下の方法で測定できる。
使用機器:6890N/5975B inertXL
カラム(DB―WAX φ0.25mm×30m、膜厚0.25μm)
移動ガス:ヘリウム1mL/min
温度:試料注入口220°C、カラム80°C(1min保持)→10°C/min昇温→200°C(10min保持)
イオン源温度:230°C
イオン化法:EI
設定質量数:m/z 164,149(オイゲノール)
m/z 132,131(ケイヒアルデヒド)
m/z 71,81(メントール)
サンプル調製:試料を1から2g秤量し、水で20mLに希釈した後、ジエチルエーテル20mLと塩化ナトリウム8gを加え、振とうし静置する。そのジエチルエーテル層
を回収し、測定に供する。
【0026】
以上、本実施形態によれば、ビールテイスト飲料について穀物感を改善できる新規な技術を提供することができる。
なお、本発明はこの態様に限定されるものではない。
例えば、本実施形態においては、ビールテイスト飲料として発酵ビールテイスト飲料を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、本発明のビールテイスト飲料は、非発酵ビールテイスト飲料であってもよい。
非発酵ビールテイスト飲料とは、発酵を経ずに製造されるビールテイスト飲料を意味する。非発酵ビールテイスト飲料は、例えば、麦芽エキスなどの穀物エキス、酸味料、甘味料等の原料を混合し、得られた調合液に炭酸ガスを導入することにより製造される。
【0027】
非発酵ビールテイスト飲料は、アルコール飲料であってもよく、ノンアルコール飲料であってもよい。
非発酵ビールテイスト飲料として、具体的には、発泡酒、ローアルコール発泡性飲料、ノンアルコールビール等のビールテイスト飲料が挙げられる。その他、発酵工程を経ずに製造された飲料を、アルコール含有蒸留液及び炭酸ガスと混和して得られたリキュール類であってもよい。アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、スピリッツ等の一般に蒸留酒に分類されるものを用いることができる。
【0028】
非発酵ビールテイスト飲料についても9-デセン酸およびオイゲノールを含み、9-デセン酸の含有量が100~2000ppbであり、オイゲノールの含有量が1~5000ppbである状態とするための処理については特に限定されず、製造工程のいずれかの段階で9-デセン酸、オイゲノールが添加されるなどすればよい。例えば、得られた非発酵ビールテイスト飲料を容器に充填する前に9-デセン酸、オイゲノールを非発酵ビールテイスト飲料に混合するなどすればよい。
【0029】
また、本発明に係わるビールテイスト飲料においては、穀類、とりわけ麦芽や大麦などの麦類を原料とすることができるほか、麦芽等を原料としないものであってもよい。
麦芽を使用する場合、その使用比率は、飲む前および飲んだ直後に感じられる穀物感をより好ましいと感じられるようになり且つ穀物様の余韻がより感じられ易くなる観点から、50質量%以下であることが好ましく、麦芽を原料として使用していないことがより好ましい。麦芽使用比率とは、水を除く全原料に対する麦芽の割合(w/v%)である。麦芽使用比率は平成30年4月1日が施工日の酒税法および酒類行政関係法令等解釈通達に従って計算し、得ることができる。
【0030】
また、本発明に係わるビールテイスト飲料においては、糖質含有量が1.5g/100ml以下であってもよい。本明細書における糖質とは、食品の栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)に基づく糖質をいう。具体的には、糖質は、食品から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、水分及びアルコール分を除いたものをいう。また、食品中の糖質の量は、当該食品の重量から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、水分及びアルコール分の量を控除することにより算定される。タンパク質、脂質、灰分、水分の量は、栄養表示基準に掲げる方法により測定する。アルコール分の量は、水分量とともに測定することができる。具体的には、タンパク質の量は改良デュマ法による全窒素(タンパク質)の定量法で測定し、脂質の量はエーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、ゲルベル法、酸分解法又はレーゼゴットリーブ法で測定し、灰分の量は酢酸マグネシウム添加灰化法、直接灰化法又は硫酸添加灰化法で測定し、水分及びアルコール分の量はカールフィッシャー法、乾燥助剤法、減圧加熱乾燥法、常圧加熱乾燥法又はプラスチックフィルム法で測定する。
ビールテイスト飲料の糖質含有量は、例えば公知の方法によって調整することができ、具体的には、製造工程における酵素(特に多糖分解酵素)の添加量、原料の種類及び使用量等を調整することによって所望の糖質含有量とすることができる。
【0031】
また、本実施形態に係る飲料はビールテイスト飲料でありホップ香を有するが、原料としてホップを含有する態様だけでなく、ホップ香料を原料として含むビールテイスト飲料であってもよい。ホップ香料とは、例えば、ホップに含まれている香味成分であるリナロール、フムレンエポキシド、シトロネロール、エステル類等を主要成分として含有し、添加によりホップ香を付与できる香料をいう。ホップ香料としては、例えば、市販されている各種ホップ香料を適宜使用することができる。
【実施例0032】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0033】
[試験1]
市販のビールテイスト飲料(麦芽比率70%の発酵飲料、アルコール度数:5%、糖質3.0g/ml、20℃におけるガス圧:2.3kg/cm2)をベース液1(サンプル1-0)とした。
ベース液1に対して、9-デセン酸とオイゲノールを添加し、表1~3に示す実施例、比較例のビールテイスト飲料を調製した。
作成した各ビールテイスト飲料につき、「飲む前および飲んだ直後に感じられる穀物感の好ましさ」、「穀物感の余韻の強さ」、「おいしさ」を5段階で評価した。
具体的には、「飲む前および飲んだ直後に感じられる穀物感の好ましさ」は最も好ましい場合を5点、最も好ましくない場合を1点、「穀物様の余韻の強さ」は最も強い場合を5点、最も弱い場合を1点、「おいしさ」はビールテイスト飲料としてのおいしさの評価が最も高い場合を5点、最も低い場合を1点とした。
無添加品であるサンプル1-0(比較例、コントロール)に対し、飲む前および飲んだ直後に感じられる穀物感の好ましさおよび穀物様の余韻の強さの両方について評価が向上している場合に穀物感の改善が認められるとした。
官能評価は、ビール類専門パネル3名が実施例、比較例の各ビールテイスト飲料を試飲し、各項目について3名の合意で採点した。
ここで「飲む前および飲んだ直後に感じられる穀物感」とは、ビールテイスト飲料を飲むにあたって比較的早期に得られる、穀物を想起させる味や香りの感覚である。飲む前および飲んだ直後に感じられる穀物感は、例えば、ローストしたモルトを想起させるカラッとした(湿り気がないか、または少ない)香ばしさ、とも表現できる。
また、「穀物様の余韻」とは、飲用後に残る(飲用後に口の中や鼻で感じられる)穀物を想起させる味や香りの感覚である。穀物様の余韻は、例えば、モルトを想起させる柔らかな(刺激がないか、または少ない)甘さを伴う味や香り、とも表現できる。
なおベース液として使用した市販のビールテイスト飲料は、9-デセン酸は150ppb、オイゲノールは0.65ppb含有していた。
結果を表1から3に示す。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
9-デセン酸と、オイゲノールとを含有し、9-デセン酸の含有量が100~2000ppbであり、オイゲノールの含有量が1~5000ppbである実施例のビールテイスト飲料は、比較例のビールテイスト飲料と比較して穀物感が改善していた。
【0038】
[試験2]
ビールテイスト飲料(麦芽不使用の非発酵飲料、アルコール度数:0%、糖質0g/ml、20℃におけるガス圧:2.3kg/cm2)をベース液2(サンプル4-1)とした。
ベース液2に対して、9-デセン酸とオイゲノールを添加し、表4に示す実施例、比較例のビールテイスト飲料を調製して試験1と同様に官能評価試験を実施した。
なおベース液として使用したビールテイスト飲料は、9-デセン酸、オイゲノールともに非含有であった。
結果を表4に示す。
【0039】
【0040】
アルコール度数:0%、麦芽不使用の非発酵飲料であるビールテイスト飲料の場合も、9-デセン酸と、オイゲノールとを含有し、9-デセン酸の含有量が100~2000ppbであり、オイゲノールの含有量が1~5000ppbである実施例のビールテイスト飲料は、比較例のビールテイスト飲料と比較して穀物感が改善していた。
前記9-デセン酸の含有量に対する前記オイゲノールの含有量の比率(オイゲノール含有量/9-デセン酸含有量)が、0.002以上である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
前記9-デセン酸の含有量に対する前記オイゲノールの含有量の比率(オイゲノール含有量/9-デセン酸含有量)が、50以下である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。