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特開2024-92641半導体装置、半導体装置の製造方法及び電子装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092641
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20240701BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/78 301B
H01L29/78 301X
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208726
(22)【出願日】2022-12-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「100GHz以上の高周波数帯通信デバイスに関する研究開発」研究開発委託契約に基づく開発項目「高出力送信を可能とする化合物系半導体技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 史朗
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直哉
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 祐介
(72)【発明者】
【氏名】中舍 安宏
(72)【発明者】
【氏名】原 直紀
(72)【発明者】
【氏名】多木 俊裕
【テーマコード(参考)】
5F102
5F140
【Fターム(参考)】
5F102FA01
5F102FA02
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GD10
5F102GJ05
5F102GJ06
5F102GL04
5F102GM04
5F102GM08
5F102GQ01
5F102GR04
5F102GR11
5F102GR12
5F102GS04
5F102GT01
5F102GT03
5F102GV05
5F102GV06
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC11
5F102HC15
5F102HC19
5F140AA25
5F140AA29
5F140BA06
5F140BB03
5F140BB06
5F140BB18
5F140BC12
5F140BD11
5F140BD14
5F140BD18
5F140BD20
5F140BE09
5F140BF01
5F140BF05
5F140BF07
5F140BG30
5F140BJ01
5F140BJ05
5F140BJ07
5F140CC02
5F140CC08
5F140CC11
5F140CE02
(57)【要約】
【課題】高出力且つ高耐圧の半導体装置を実現する。
【解決手段】半導体装置100Aは、InとGaとAsとを含有するチャネル層22と、それと積層されInとAlとAsとを含有する電子供給層23とを含む半導体層20を有する。半導体層20の面20a側に、ソース電極30及びドレイン電極40が設けられ、それらの間にゲート電極50が設けられる。半導体層20の面20a側であって、ゲート電極50のソース電極30側には、酸素空孔を有する酸化アルミニウムAl(y/x<3/2)を含み、正電荷を帯びた絶縁膜60が設けられる。絶縁膜60の一部は、ゲート絶縁膜として機能し得る。絶縁膜60により、チャネル層22の2DEG80の密度は、ゲート電極50に対してソース電極30側の方がドレイン電極40側よりも相対的に高くなる。これにより、高出力且つ高耐圧の半導体装置100Aを実現する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウムとガリウムとヒ素とを含有する第1層と、前記第1層と積層され、インジウムとアルミニウムとヒ素とを含有する第2層と、を含む半導体層と、
前記半導体層の第1面側に設けられるソース電極及びドレイン電極と、
前記半導体層の前記第1面側であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられるゲート電極と、
前記半導体層の前記第1面側であって、前記ゲート電極の前記ソース電極側に設けられ、酸素空孔を有する酸化アルミニウムを含む第1絶縁膜と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記第1絶縁膜と連続し、前記半導体層の前記第1面と、前記第1面に面する前記ゲート電極の端面との間に設けられ、酸化アルミニウムを含む第2絶縁膜を更に有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2絶縁膜の前記ドレイン電極側の端は、前記ゲート電極の前記端面における前記ドレイン電極側の端よりも、前記ソース電極側に位置する、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2絶縁膜に含まれる酸化アルミニウムの、アルミニウムに対する酸素の組成比は、前記第1絶縁膜に含まれる酸化アルミニウムの、アルミニウムに対する酸素の組成比よりも大きい、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2絶縁膜の前記ドレイン電極側の側面は、前記ドレイン電極側に向かって前記第2絶縁膜の膜厚が小さくなるように傾斜する、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2絶縁膜と連続し、前記ゲート電極の前記ドレイン電極側に設けられ、酸化アルミニウムを含む第3絶縁膜を更に有する、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体層の前記第1面側に設けられ、前記ゲート電極の前記ソース電極側に設けられる前記第1絶縁膜と、前記ゲート電極の前記ドレイン電極側とを覆い、窒化シリコンを含む第4絶縁膜を更に有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体層は、前記第1面側に、リセスと、前記リセスを挟んで対向する第1メサ及び第2メサと、を含む第3層を更に有し、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極はそれぞれ、前記第1メサ及び前記第2メサに設けられ、
前記ゲート電極は、前記リセスに、前記第1メサ及び前記第2メサから分離されて設けられる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
インジウムとガリウムとヒ素とを含有する第1層と、前記第1層と積層され、インジウムとアルミニウムとヒ素とを含有する第2層と、を含む半導体層を形成する工程と、
前記半導体層の第1面側に、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記半導体層の前記第1面側であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に、ゲート電極を形成する工程と、
前記半導体層の前記第1面側であって、前記ゲート電極の前記ソース電極側に設けられ、酸素空孔を有する酸化アルミニウムを含む第1絶縁膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項10】
インジウムとガリウムとヒ素とを含有する第1層と、前記第1層と積層され、インジウムとアルミニウムとヒ素とを含有する第2層と、を含む半導体層と、
前記半導体層の第1面側に設けられるソース電極及びドレイン電極と、
前記半導体層の前記第1面側であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられるゲート電極と、
前記半導体層の前記第1面側であって、前記ゲート電極の前記ソース電極側に設けられ、酸素空孔を有する酸化アルミニウムを含む第1絶縁膜と、
を有する半導体装置を備える電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体装置の製造方法及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の一例として、窒化ガリウム系の窒化物半導体を用いた高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor;HEMT)が知られている。このようなHEMTに関し、例えば、窒化物半導体を用いた半導体積層構造上にゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を設け、ゲート電極とソース電極との間に正に帯電した絶縁膜を設け、ゲート電極とドレイン電極との間に共有結合性の絶縁膜を設ける技術が知られている。正に帯電した絶縁膜として、アルミニウムリッチの酸化アルミニウム等を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-192410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体装置の一例として、インジウムとガリウムとヒ素とを含有する化合物半導体の層をチャネル層として用い、インジウムとアルミニウムとヒ素とを含有する化合物半導体の層を電子供給層として用いるHEMTが知られている。このHEMTでは、電子供給層が積層されるチャネル層に、二次元電子ガス(Tow Dimensional Electron Gas;2GEG)が生成される。このような化合物半導体を用いたHEMTにおいて、その高出力化のために、ソース-ドレイン間のチャネル層に生成される2DEGを全体的に高密度化して大電流化を図ると、ドレイン側に比較的強い電界が生じ、耐圧が低下してしまうことが起こり得る。
【0005】
1つの側面では、本発明は、高出力且つ高耐圧の半導体装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、インジウムとガリウムとヒ素とを含有する第1層と、前記第1層と積層され、インジウムとアルミニウムとヒ素とを含有する第2層と、を含む半導体層と、前記半導体層の第1面側に設けられるソース電極及びドレイン電極と、前記半導体層の前記第1面側であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられるゲート電極と、前記半導体層の前記第1面側であって、前記ゲート電極の前記ソース電極側に設けられ、酸素空孔を有する酸化アルミニウムを含む第1絶縁膜と、を有する半導体装置が提供される。
【0007】
また、別の態様では、上記のような半導体装置の製造方法、上記のような半導体装置を備える電子装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
1つの側面では、高出力且つ高耐圧の半導体装置を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図2】第1実施形態に係る半導体装置の別例について説明する図である。
図3】第2実施形態の第1構成例に係る半導体装置について説明する図である。
図4】第2実施形態の第1構成例に係る半導体装置の製造方法について説明する図(その1)である。
図5】第2実施形態の第1構成例に係る半導体装置の製造方法について説明する図(その2)である。
図6】第2実施形態の第1構成例に係る半導体装置の製造方法について説明する図(その3)である。
図7】第2実施形態の第2構成例に係る半導体装置について説明する図である。
図8】第2実施形態の第2構成例に係る半導体装置の製造方法について説明する図である。
図9】第2実施形態の第2構成例に係る半導体装置の製造方法について更に説明する図である。
図10】第2実施形態の第2構成例に係る半導体装置について更に説明する図である。
図11】第2実施形態の第2構成例に係る半導体装置の変形例について説明する図である。
図12】第2実施形態の第2構成例に係る半導体装置の別の変形例について説明する図である。
図13】第2実施形態の第3構成例に係る半導体装置について説明する図である。
図14】第2実施形態の第3構成例に係る半導体装置の製造方法について説明する図である。
図15】特性評価に用いた半導体装置について説明する図である。
図16】半導体装置の電流-電圧特性について説明する図(その1)である。
図17】半導体装置の電流-電圧特性について説明する図(その2)である。
図18】半導体装置の電流-電圧特性について説明する図(その3)である。
図19】半導体装置の電流-電圧特性について説明する図(その4)である。
図20】半導体装置の耐圧について説明する図である。
図21】半導体装置における絶縁膜端のドレイン側ゲート端からの距離と耐圧との関係について説明する図である。
図22】第4実施形態の第1構成例に係る半導体装置について説明する図である。
図23】第4実施形態の第2構成例に係る半導体装置について説明する図である。
図24】第5実施形態に係る半導体パッケージの一例について説明する図である。
図25】第6実施形態に係る力率改善回路の一例について説明する図である。
図26】第7実施形態に係る電源装置の一例について説明する図である。
図27】第8実施形態に係る増幅器の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。図1には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0011】
図1に示す半導体装置1は、HEMTの一例である。半導体装置1は、半導体層2、ソース電極3、ドレイン電極4、ゲート電極5及び絶縁膜6を有する。
半導体層2は、チャネル層2a及び電子供給層2bを含む。半導体層2は更に、キャップ層2cを含む。
【0012】
チャネル層2aには、インジウム(In)とガリウム(Ga)とヒ素(As)とを含有する化合物半導体が用いられる。例えば、チャネル層2aには、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)が用いられる。このほか、チャネル層2aには、In、Ga及びAsに加えて、更に他の元素が含有された化合物半導体が用いられ得る。少なくともIn、Ga及びAsを含有する化合物半導体を「InGaAs系材料」とも言う。尚、チャネル層2aは、キャリア走行層、電子走行層等とも称される。
【0013】
例えば、図1に示すように、チャネル層2aの一方の面側に、電子供給層2bが積層される。電子供給層2bには、Inとアルミニウム(Al)とAsとを含有する化合物半導体が用いられる。例えば、電子供給層2bには、ヒ化インジウムアルミニウム(InAlAs)が用いられる。このほか、電子供給層2bには、In、Al及びAsに加えて、更に他の元素が含有された化合物半導体が用いられ得る。少なくともIn、Al及びAsを含有する化合物半導体を「InAlAs系材料」とも言う。尚、電子供給層2bは、キャリア供給層、バリア層等とも称される。
【0014】
例えば、図1に示すように、電子供給層2bの一方の面側に、キャップ層2cが積層される。キャップ層2cには、InとGaとAsとを含有する化合物半導体が用いられる。例えば、キャップ層2cには、InGaAsが用いられる。このほか、キャップ層2cには、In、Ga及びAsに加えて、更に他の元素が含有された化合物半導体が用いられ得る。キャップ層2cには、InGaAs系材料が用いられる。
【0015】
半導体層2の、電子供給層2bが積層されるチャネル層2aに、2DEG8が生成される。半導体層2において、キャップ層2cが設けられる領域(キャップ層2cのメサ)の直下には、キャップ層2cが設けられない領域(キャップ層2cのリセス)の直下よりも、高密度で2DEG8が生成される。
【0016】
半導体層2は、例えば、リン化インジウム(InP)等の所定の基板(図示せず)上に、有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;MOCVD)法等を用いて成長される。InP基板上に、InGaAs系材料を用いたチャネル層2a及びInAlAs系材料を用いた電子供給層2bを含む半導体層2が設けられた半導体装置1は、InP系HEMTとも称される。尚、半導体装置1において、半導体層2が設けられる基板は、InP基板には限定されない。
【0017】
半導体層2の一方の面2d側に、ゲート電極5、ソース電極3及びドレイン電極4が設けられる。
ソース電極3及びドレイン電極4は、半導体層2の面2d側であって、キャップ層2c上に、設けられる。ソース電極3及びドレイン電極4は、互いに分離されて位置するように、設けられる。ソース電極3及びドレイン電極4には、チタン(Ti)、白金(Pt)、金(Au)等の金属材料が用いられる。ソース電極3及びドレイン電極4は、オーミック電極として機能するように設けられる。ソース電極3及びドレイン電極4は、直下のチャネル層2aに比較的高密度の2DEG8が生成されるキャップ層2c上に設けられることで、比較的良好なオーミック接続が実現される。
【0018】
ゲート電極5は、半導体層2の面2d側であって、ソース電極3とドレイン電極4との間、即ち、ソース電極3及びドレイン電極4が設けられるキャップ層2cの間に、それらから分離されて位置するように、設けられる。ゲート電極5には、Ti、Pt、Au等の金属材料が用いられる。ゲート電極5は、例えば、半導体層2の面2d側に、ショットキー電極として機能するように設けられる。或いは、ゲート電極5は、半導体層2の面2d側に、ゲート絶縁膜(図示せず)を介して設けられ、MIS(Metal Insulator Semiconductor)型ゲート構造とされてもよい。
【0019】
半導体装置1の動作時には、例えば、ソース電極3に対してドレイン電極4が高電位となるように電圧が印加されると共に、ゲート電極5に所定の電圧が印加される。ゲート電極5に印加される電圧による電界効果により、ソース電極3とドレイン電極4との間のゲート電極5の直下を通過する2DEG8の電荷量が制御され、出力のドレイン電流の大きさが制御される。半導体装置1のように、チャネル層2aにInGaAs系材料を用い、電子供給層2bにInAlAs系材料を用いたHEMTは、高速動作性に優れ、また、低雑音である。そのため、このようなHEMTは、例えば、増幅器や信号処理回路等に利用される。このようなHEMTは、マイクロ波やミリ波の周波数帯域で用いられる増幅器のほか、テラヘルツ波の周波数帯域で用いられる増幅器、或いは、光通信における信号処理回路等に好適である。
【0020】
半導体装置1では、例えば、図1に示すように、ゲート電極5、ソース電極3及びドレイン電極4が設けられる半導体層2の面2d側であって、ゲート電極5のソース電極3側に、絶縁膜6が設けられる。絶縁膜6は、酸素空孔を有する酸化アルミニウムを含む。酸素空孔を有する酸化アルミニウムは、酸化アルミニウムを組成式Alで表した時、Alに対するOの組成比y/xが、3/2よりも小さくなる。酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜6は、正電荷を帯びる。半導体装置1では、このような酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含み、正電荷を帯びた絶縁膜6が、半導体層2の面2d側であって、ゲート電極5のソース電極3側に、設けられる。
【0021】
尚、半導体装置1において、半導体層2のチャネル層2aを「第1層」、電子供給層2bを「第2層」とも言う。半導体装置1において、半導体層2の面2dを「第1面」とも言う。半導体装置1において、絶縁膜6を「第1絶縁膜」とも言う。
【0022】
半導体装置1では、ゲート電極5、ソース電極3及びドレイン電極4が設けられる半導体層2の面2d側であって、ゲート電極5のソース電極3側に、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含み、正電荷を帯びた絶縁膜6が設けられる。半導体装置1では、このような正電荷を帯びた絶縁膜6が設けられることで、ゲート電極5とソース電極3との間の直下(図1の領域AR1)における2DEG8の密度が増加する。即ち、絶縁膜6の正の固定電荷により、ゲート電極5とソース電極3との間の直下におけるチャネル層2aと電子供給層2bとの接合部の伝導帯が押し下げられる。その結果、ゲート電極5とソース電極3との間の直下における2DEG8の密度が増加する。
【0023】
半導体装置1では、絶縁膜6により、ゲート電極5とソース電極3との間の直下(図1の領域AR1)における2DEG8の密度が、ゲート電極5とドレイン電極4との間の直下(図1の領域AR2)における2DEG8の密度に対し、相対的に高くなるとも言える。或いは、半導体装置1では、絶縁膜6により、ゲート電極5とドレイン電極4との間の直下における2DEG8の密度が、ゲート電極5とソース電極3との間の直下における2DEG8の密度に対し、相対的に低くなるとも言える。
【0024】
半導体装置1では、絶縁膜6によってゲート電極5とソース電極3との間の直下における2DEG8の密度が増加することで、ゲート電極5とソース電極3との間のチャネル層2aが低抵抗化される。よって、ドレイン電極4とソース電極3との間のチャネル層2aが低抵抗化される。これにより、半導体装置1が大電流化、高出力化される。
【0025】
更に、半導体装置1では、ゲート電極5とドレイン電極4との間の直下における2DEG8の密度の増加が抑えられることで、ゲート電極5とドレイン電極4との間の半導体層2に生じる電界が抑えられる。更に、ゲート電極5の、半導体層2の面2dに面する端面5aにおける、ドレイン電極4側の端5b(「ドレイン側ゲート端5b」とも言う)での電界集中が抑えられる。これにより、半導体装置1の耐圧の低下が抑えられる。
【0026】
ゲート電極5、ソース電極3及びドレイン電極4が設けられる半導体層2の面2d側であって、ゲート電極5のソース電極3側に、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜6が設けられることで、高出力且つ高耐圧の半導体装置1が実現される。
【0027】
図2は第1実施形態に係る半導体装置の別例について説明する図である。図2(A)、図2(B)及び図2(C)にはそれぞれ、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0028】
図2(A)に示す半導体装置1Aは、第1部位6a及び第2部位6bを有する絶縁膜6が設けられた構成を有する。第1部位6aは、ゲート電極5のソース電極3側に設けられる。第2部位6bは、第1部位6aと連続し、半導体層2の面2dとゲート電極5の端面5aとの間に設けられる。第2部位6bは、ドレイン電極4側の端6baが、ドレイン側ゲート端5bよりも、ソース電極3側に位置する。半導体装置1Aは、絶縁膜6の一部である第2部位6bが、ソース電極3側から、半導体層2の面2dとゲート電極5の端面5aとの間であってドレイン側ゲート端5bに達しない位置まで延びた構成を有する。
【0029】
尚、半導体装置1Aにおいて、半導体層2のチャネル層2aを「第1層」、電子供給層2bを「第2層」とも言う。半導体装置1Aにおいて、半導体層2の面2dを「第1面」とも言う。半導体装置1Aにおいて、絶縁膜6のうち、第1部位6aを「第1絶縁膜」とも言い、第2部位6bを「第2絶縁膜」とも言う。
【0030】
半導体装置1Aでは、半導体層2の面2dとゲート電極5の端面5aとの間に介在される絶縁膜6の第2部位6bが、ゲート絶縁膜として機能する。これにより、半導体装置1Aでは、ゲートリーク電流の発生が抑えられる。
【0031】
半導体装置1Aでは、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜6の第1部位6a及び第2部位6bにより、それらの直下における2DEG8の密度が増加する。これにより、半導体装置1Aが大電流化、高出力化される。
【0032】
半導体装置1Aでは、ゲート電極5とソース電極3との間の直下における2DEG8の密度に比べて、ゲート電極5とドレイン電極4との間の直下における2DEG8の密度が相対的に低くなる。そのため、ゲート電極5とドレイン電極4との間の半導体層2に生じる電界が抑えられる。更に、半導体装置1Aでは、絶縁膜6の第2部位6bの端6baがドレイン側ゲート端5bに達しない。そのため、第2部位6bが酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む場合でも、ドレイン側ゲート端5bの直下における2DEG8の密度の増加が抑えられ、ドレイン側ゲート端5bにおける電界集中が抑えられる。これにより、半導体装置1Aの耐圧の低下が抑えられる。
【0033】
上記のような第1部位6a及び第2部位6bを有する絶縁膜6が用いられ、高出力且つ高耐圧の半導体装置1Aが実現される。
尚、半導体装置1Aにおいて、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜6の第2部位6bを、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む構成とすると、その酸素空孔が電子トラップのサイトとなり得る。第2部位6bの酸素空孔が電子トラップのサイトとなると、それに起因した閾値電圧シフト等、半導体装置1Aの特性変動を招き得る。このような点に鑑み、半導体装置1Aでは、ゲート絶縁膜として機能する第2部位6bの酸素空孔を、ゲート電極5のソース電極3側に設けられる第1部位6aの酸素空孔よりも、低減するようにしてもよい。例えば、絶縁膜6の第1部位6a及び第2部位6bのうち、第2部位6bを選択的に酸化し、第2部位6bの酸素空孔を第1部位6aの酸素空孔よりも低減する。
【0034】
このように半導体装置1Aの絶縁膜6は、比較的酸素空孔の多い第1部位6aと、比較的酸素空孔の少ない又は酸素空孔の無い第2部位6bとを含む構成とされてもよい。即ち、半導体装置1Aでは、第2部位6bのAlのAlに対するOの組成比y/xが、第1部位6aのAlのAlに対するOの組成比y/xよりも大きい絶縁膜6が設けられてもよい。これにより、第2部位6bでの電子トラップに起因した半導体装置1Aの特性変動を抑えることが可能になる。
【0035】
更に、半導体装置1Aでは、絶縁膜6の第2部位6bを、比較的酸素空孔の少ない又は酸素空孔の無い第2部位6bとすると、ドレイン側ゲート端5bの直下における2DEG8の密度の増加がより効果的に抑えられる。これにより、ドレイン側ゲート端5bにおける電界集中がより効果的に抑えられ、半導体装置1Aの耐圧の低下がより効果的に抑えられる。
【0036】
また、図2(B)に示す半導体装置1Bは、第1部位6a及び第2部位6bを有する絶縁膜6の、その第2部位6bのドレイン電極4側の端6baが、ドレイン側ゲート端5bに位置する構成を有する。
【0037】
尚、半導体装置1Bにおいて、半導体層2のチャネル層2aを「第1層」、電子供給層2bを「第2層」とも言う。半導体装置1Bにおいて、半導体層2の面2dを「第1面」とも言う。半導体装置1Bにおいて、絶縁膜6のうち、第1部位6aを「第1絶縁膜」とも言い、第2部位6bを「第2絶縁膜」とも言う。
【0038】
図2(B)に示すような半導体装置1Bによっても、上記半導体装置1Aと同様に、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜6の第1部位6a及び第2部位6bにより、高出力及び高耐圧が実現される。
【0039】
半導体装置1Bでは、第2部位6bのドレイン電極4側の端6baが、比較的電界集中が生じ易いドレイン側ゲート端5bに位置する。そのため、半導体装置1Bにおいて、第2部位6bの酸素空孔を第1部位6aの酸素空孔よりも低減すると、ドレイン側ゲート端5bの直下における2DEG8の密度の増加が抑えられる。これにより、ドレイン側ゲート端5bにおける電界集中が抑えられ、電界集中による耐圧の低下が抑えられる。尚、半導体装置1Bにおいて、第2部位6bの酸素空孔を第1部位6aの酸素空孔よりも低減すると、ゲート絶縁膜として機能する第2部位6bでの電子トラップも抑えられる。
【0040】
また、図2(C)に示す半導体装置1Cは、第1部位6a及び第2部位6b、更に第3部位6cを有する絶縁膜6が設けられた構成を有する。第1部位6aは、ゲート電極5のソース電極3側に設けられる。第2部位6bは、第1部位6aと連続し、半導体層2の面2dとゲート電極5の端面5aとの間に設けられる。第3部位6cは、第2部位6bと連続し、ゲート電極5のドレイン電極4側に、ゲート電極5からドレイン電極4及びそれが設けられるキャップ層2cに達しない位置まで、設けられる。
【0041】
尚、半導体装置1Cにおいて、半導体層2のチャネル層2aを「第1層」、電子供給層2bを「第2層」とも言う。半導体装置1Cにおいて、半導体層2の面2dを「第1面」とも言う。半導体装置1Cにおいて、絶縁膜6のうち、第1部位6aを「第1絶縁膜」とも言い、第2部位6bを「第2絶縁膜」とも言い、第3部位6cを「第3絶縁膜」とも言う。
【0042】
半導体装置1Cでは、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜6の第1部位6a、第2部位6b及び第3部位6cにより、それらの直下における2DEG8の密度が増加する。これにより、半導体装置1Cが大電流化、高出力化される。
【0043】
半導体装置1Cでは、ゲート電極5のドレイン電極4側に、ゲート電極5からドレイン電極4及びそれが設けられるキャップ層2cに達しない位置まで、絶縁膜6の第3部位6cが設けられる。そのため、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜6が、ゲート電極5とドレイン電極4との間の全体に設けられる場合に比べて、ゲート電極5とドレイン電極4との間の直下における2DEG8の密度の増加が抑えられる。これにより、ゲート電極5とドレイン電極4との間の半導体層2に生じる電界が抑えられ、半導体装置1Cの耐圧の低下が抑えられる。
【0044】
図2(C)に示すような半導体装置1Cによっても、第1部位6a、第2部位6b及び第3部位6cを有する絶縁膜6により、高出力及び高耐圧が実現される。
半導体装置1Cにおいて、半導体層2とゲート電極5との間に介在される第2部位6bの酸素空孔を、第1部位6aの酸素空孔よりも低減すると、ゲート絶縁膜として機能する第2部位6bでの電子トラップが抑えられ、更に、耐圧の低下が抑えられる。半導体装置1Cにおいて、ゲート電極5のドレイン電極4側に設けられる第3部位6cの酸素空孔を、第1部位6aの酸素空孔よりも低減すると、ゲート電極5とドレイン電極4との間の直下における2DEG8の密度の増加が抑えられ、耐圧の低下が抑えられる。半導体装置1Cにおいて、第2部位6b及び第3部位6cの酸素空孔を共に、第1部位6aの酸素空孔よりも低減することもできる。
【0045】
尚、上記半導体装置1(図1)、半導体装置1A(図2(A))、半導体装置1B(図2(B))及び半導体装置1C(図2(C))において、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜6は、膜厚が大きくなるほどその正電荷の影響が大きくなり得る。
【0046】
そこで、半導体装置1A(図2(A))及び半導体装置1B(図2(B))では、絶縁膜6について、その第2部位6bのドレイン電極4側の側面を、ドレイン電極4側に向かって膜厚が小さくなるように傾斜させてもよい。半導体装置1C(図2(C))では、絶縁膜6について、その第3部位6cのドレイン電極4側の側面を、ドレイン電極4側に向かって膜厚が小さくなるように傾斜させてもよい。このようにすることで、絶縁膜6が酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む場合の、その正電荷の影響を、第2部位6b又は第3部位6cの傾斜側面の直下では低減し、2DEG8の密度の増加を抑え、耐圧の低下を抑えることができる。
【0047】
このほか、半導体装置1A(図2(A))、半導体装置1B(図2(B))及び半導体装置1C(図2(C))では、絶縁膜6の第2部位6bの膜厚を、第1部位6aの膜厚よりも小さくしてもよい。半導体装置1C(図2(C))では、絶縁膜6の第3部位6cの膜厚を、第1部位6aの膜厚よりも小さくしてもよい。このようにすることで、絶縁膜6が酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む場合の、その正電荷の影響を、膜厚を小さくした第2部位6b又は第3部位6cの直下では低減し、2DEG8の密度の増加を抑え、耐圧の低下を抑えることができる。第2部位6bの膜厚を、第1部位6aの膜厚よりも小さくする場合には、第1部位6aを2DEG8の密度の増加に有効な膜厚とし、第2部位6bをゲート絶縁膜として有効に機能する膜厚に設定することができる。
【0048】
また、上記半導体装置1(図1)、半導体装置1A(図2(A))、半導体装置1B(図2(B))及び半導体装置1C(図2(C))において、ゲート電極5は、ドレイン電極4よりもソース電極3の方に近付けて配置された、いわゆる非対称配置とされてもよい。このような非対称配置が採用されることで、半導体装置1、1A、1B、1Cを更に高耐圧化することができる。
【0049】
また、上記半導体装置1、1A、1B、1Cでは、チャネル層2aとその上に積層された電子供給層2bとを含む半導体層2が用いられ、その半導体層2の電子供給層2b側に、ゲート電極5、ソース電極3、ドレイン電極4及び絶縁膜6が設けられる。このほか、半導体層として、電子供給層2b上にチャネル層2aが積層されたものが用いられてもよく、そのような半導体層のチャネル層2a側に、ゲート電極5、ソース電極3、ドレイン電極4及び絶縁膜6が設けられてもよい。このような構成を採用した半導体装置によっても、上記半導体装置1、1A、1B、1Cについて述べたのと同様の効果を得ることができる。
【0050】
[第2実施形態]
ここでは、半導体装置の構成例を、第2実施形態として説明する。
まず、第2実施形態に係る半導体装置の第1構成例について説明する。
【0051】
図3は第2実施形態の第1構成例に係る半導体装置について説明する図である。図3には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
図3に示す半導体装置100は、HEMTの一例である。半導体装置100は、基板10、半導体層20、ソース電極30、ドレイン電極40、ゲート電極50、絶縁膜60及び保護膜70を有する。
【0052】
基板10には、例えば、InP基板が用いられる。基板10上に、半導体層20が設けられる。半導体層20は、MOCVD法等を用いて、基板10上に成長される。
半導体層20は、バッファ層21、チャネル層22、電子供給層23、エッチング停止層24及びキャップ層25を含む。バッファ層21には、例えば、InAlAsが用いられる。チャネル層22には、例えば、InGaAsが用いられる。電子供給層23には、例えば、InAlAsが用いられる。エッチング停止層24には、例えば、InP又はリン化インジウムガリウム(InGaP)が用いられる。キャップ層25には、例えば、InGaAsが用いられる。基板10上に、バッファ層21、チャネル層22、電子供給層23、エッチング停止層24及びキャップ層25が順次積層される。
【0053】
チャネル層22の厚さは、例えば、9nm程度から25nm程度の範囲に設定される。電子供給層23の厚さは、例えば、9nm程度から25nm程度の範囲に設定される。エッチング停止層24の厚さは、例えば、4nm程度から6nm程度の範囲に設定される。キャップ層25の厚さは、例えば、30nm程度から50nm程度の範囲に設定される。例えば、電子供給層23及びキャップ層25にはそれぞれ、シリコン(Si)等の不純物が所定の領域に所定の濃度でドーピングされる。
【0054】
半導体層20の、電子供給層23が積層されるチャネル層22に、2DEG80が生成される。キャップ層25は、エッチング停止層24に通じるリセス25cと、リセス25cを挟んで対向する第1メサ25a及び第2メサ25bを含む。半導体層20において、第1メサ25a及び第2メサ25bの直下には、リセス25cの直下よりも、高密度で2DEG80が生成される。リセス25cの幅が調整されることで、リセス25cの直下における2DEG80の密度が、リセス25cに設けられるゲート電極50の電界によって制御可能な2DEG80の密度に調整される。エッチング停止層24は、電子供給層23と第1メサ25a及び第2メサ25bとの間並びにリセス25cの底に、設けられる。
【0055】
尚、半導体装置100において、半導体層20のチャネル層22を「第1層」、電子供給層23を「第2層」、キャップ層25を「第3層」、エッチング停止層24を「第4層」とも言う。半導体装置100において、半導体層20の基板10とは反対側の面20aを「第1面」とも言い、半導体層20の基板10側の面20bを「第2面」とも言う。
【0056】
ソース電極30及びドレイン電極40は、半導体層20の面20a側であって、キャップ層25上に、設けられる。ソース電極30は、キャップ層25の第1メサ25aに設けられる。ドレイン電極40は、キャップ層25の第2メサ25bに設けられる。ソース電極30及びドレイン電極40は、キャップ層25のリセス25cを挟んで対向する位置に、互いに分離されて、設けられる。ソース電極30及びドレイン電極40には、Ti、Pt、Au等の金属材料が用いられる。ソース電極30及びドレイン電極40は、オーミック電極として機能するように設けられる。ソース電極30及びドレイン電極40はそれぞれ、直下のチャネル層22に比較的高密度の2DEG80が生成される第1メサ25a及び第2メサ25bに設けられることで、比較的良好なオーミック接続が実現される。
【0057】
ゲート電極50は、半導体層20の面20a側であって、ソース電極30とドレイン電極40との間のキャップ層25のリセス25cに、設けられる。ゲート電極50は、ソース電極30及びそれが設けられる第1メサ25a、並びに、ドレイン電極40及びそれが設けられる第2メサ25bから分離されて、設けられる。ゲート電極50には、Ti、Pt、Au等の金属材料が用いられる。ゲート電極50は、例えば、断面T字形状となるように設けられる。ゲート電極50は、例えば、ショットキー電極として機能するように設けられる。例えば、ゲート電極50は、半導体層20の面20aと面する端面51(下端面)が、エッチング停止層24と接するように、設けられる。或いは、ゲート電極50は、半導体層20の面20a側に、ゲート絶縁膜(図示せず)を介して設けられ、MIS型ゲート構造とされてもよい。
【0058】
絶縁膜60は、ゲート電極50、ソース電極30及びドレイン電極40が設けられる半導体層20の面20a側であって、ゲート電極50のソース電極30側に、設けられる。絶縁膜60は、ゲート電極50のソース電極30側における、キャップ層25のリセス25c及び第1メサ25a並びにソース電極30を覆う。絶縁膜60は、ゲート電極50のソース電極30側のうち、少なくとも、ゲート電極50と第1メサ25aとの間のリセス25cの底(そこに露出するエッチング停止層24)を覆う。絶縁膜60は、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む。酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜60は、正電荷を帯びる。半導体装置100では、ゲート電極50のソース電極30側に、正電荷を帯びた絶縁膜60が設けられることで、リセス25cにおけるゲート電極50と第1メサ25aとの間の直下における2DEG80の密度が増加する。
【0059】
尚、半導体装置100において、ゲート電極50のソース電極30側に設けられる絶縁膜60を「第1絶縁膜」とも言う。
保護膜70は、ゲート電極50、ソース電極30及びドレイン電極40が設けられる半導体層20の面20a側であって、ゲート電極50のソース電極30側及びドレイン電極40側に、設けられる。エッチング停止層24に通じるように保護膜70に設けられた開口部71に、ゲート電極50が設けられる。保護膜70は、ゲート電極50のソース電極30側に設けられる絶縁膜60を覆う。保護膜70は、ゲート電極50のドレイン電極40側における、キャップ層25のリセス25c及び第2メサ25b並びにドレイン電極40を覆う。保護膜70は、パッシベーション膜とも称される。保護膜70には、疎水性の膜が用いられる。例えば、保護膜70には、窒化シリコン(SiN)を含む絶縁膜が用いられる。半導体装置100では、保護膜70により、ゲート電極50のソース電極30側に設けられる絶縁膜60、及び、ゲート電極50のドレイン電極40側の半導体層20への、水分の吸着、浸入が抑えられる。これにより、水分の吸着、浸入に起因した、半導体装置100の特性変動が抑えられる。
【0060】
尚、半導体装置100において、ゲート電極50のソース電極30側に設けられる絶縁膜60とゲート電極50のドレイン電極40側とを覆う保護膜70を「第4絶縁膜」とも言う。
【0061】
半導体装置100では、ゲート電極50、ソース電極30及びドレイン電極40が設けられる半導体層20の面20a側であって、ゲート電極50のソース電極30側に、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含み、正電荷を帯びた絶縁膜60が設けられる。半導体装置100では、このような正電荷を帯びた絶縁膜60が設けられることで、ゲート電極50と第1メサ25aとの間の直下における2DEG80の密度が増加する。即ち、絶縁膜60の正の固定電荷により、ゲート電極50と第1メサ25aとの間の直下におけるチャネル層22と電子供給層23との接合部の伝導帯が押し下げられる。その結果、ゲート電極50と第1メサ25aとの間の直下における2DEG80の密度が増加する。
【0062】
半導体装置100では、絶縁膜60によってゲート電極50と第1メサ25aとの間の直下における2DEG80の密度が増加することで、ゲート電極50とソース電極30との間のチャネル層22が低抵抗化される。よって、ドレイン電極40とソース電極30との間のチャネル層22が低抵抗化される。これにより、半導体装置100が大電流化、高出力化される。
【0063】
更に、半導体装置100では、ゲート電極50のドレイン電極40側には、絶縁膜60が設けられない。よって、半導体装置100では、ゲート電極50と第2メサ25bとの間の直下における2DEG80の密度の増加が抑えられる。そのため、ゲート電極50とドレイン電極40との間の半導体層20に生じる電界が抑えられる。更に、ゲート電極50の端面51におけるドレイン電極40側の端52(「ドレイン側ゲート端52」とも言う)での電界集中が抑えられる。これにより、半導体装置100の耐圧の低下が抑えられる。
【0064】
ゲート電極50、ソース電極30及びドレイン電極40が設けられる半導体層20の面20a側であって、ゲート電極50のソース電極30側に、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜60が設けられることで、高出力且つ高耐圧の半導体装置100が実現される。
【0065】
続いて、上記のような半導体装置100の製造方法について説明する。
図4から図6は第2実施形態の第1構成例に係る半導体装置の製造方法について説明する図である。図4(A)、図4(B)、図5(A)、図5(B)、図6(A)及び図6(B)にはそれぞれ、半導体装置製造工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0066】
はじめに、図4(A)に示すような基板10及び半導体層20が準備される。まず、基板10として、例えば、InP基板が準備される。準備された基板10上に、例えば、MOCVD法を用いて、半導体層20のバッファ層21、チャネル層22、電子供給層23、エッチング停止層24及びキャップ層25が順次形成される。例えば、InAlAsのバッファ層21、InGaAsのチャネル層22、InAlAsの電子供給層23、InP又はInGaPのエッチング停止層24、及び、InGaAsのキャップ層25が、順次形成される。
【0067】
半導体層20の形成後には、例えば、次のようにして素子分離領域(図示せず)の形成が行われる。まず、素子分離領域を形成する領域を開口したレジストマスク(図示せず)がキャップ層25上に形成される。このレジストマスクをマスクとして、例えば、リン酸及び過酸化水素水の混合液が用いられ、キャップ層25がエッチングされる。このエッチングは、エッチング停止層24で停止する。次いで、例えば、塩酸が用いられ、エッチング停止層24がエッチングされる。このエッチングは、電子供給層23で停止する。その後、例えば、リン酸及び過酸化水素水の混合液が用いられ、電子供給層23及びチャネル層22がエッチングされる。このようにして素子分離領域が形成される。素子分離領域の形成後、レジストマスクは除去される。
【0068】
素子分離領域で画定される素子領域の半導体層20に対し、図4(B)に示すように、ソース電極30及びドレイン電極40が形成される。ソース電極30及びドレイン電極40の形成の際は、ソース電極30及びドレイン電極40を形成する領域を開口したレジストマスク(図示せず)がキャップ層25上に形成される。このレジストマスクの形成に続き、Ti、Pt及びAuが順次蒸着法を用いて形成される。そして、レジストマスクがその上に形成されたTi、Pt及びAuと共に除去される。例えば、このようなリフトオフ法を用いて、キャップ層25上にソース電極30及びドレイン電極40が形成される。
【0069】
ソース電極30及びドレイン電極40の形成後、図5(A)に示すように、キャップ層25にリセス25cが形成される。リセス25cは、キャップ層25の、ソース電極30とドレイン電極40との間の領域に形成される。リセス25cの形成の際は、リセス25cを形成する領域を開口したレジストマスク(図示せず)がキャップ層25上に形成される。このレジストマスクの形成には、例えば、電子ビームリソグラフィ技術が用いられる。形成されたレジストマスクをマスクとして、例えば、リン酸及び過酸化水素水の混合液が用いられ、キャップ層25がエッチングされる。このエッチングは、エッチング停止層24で停止する。このような方法を用いて、キャップ層25にリセス25cが形成される。
【0070】
リセス25cの形成により、キャップ層25の第1メサ25a及び第2メサ25bが形成される。第1メサ25aと第2メサ25bとの間のリセス25cの幅が調整され、リセス25cの直下のチャネル層22に生成される2DEG80の密度が調整される。
【0071】
キャップ層25のリセス25c、第1メサ25a及び第2メサ25bの形成後、図5(B)に示すように、半導体層20の面20a側に、半導体層20の一部及びソース電極30を覆う絶縁膜60が形成される。
【0072】
絶縁膜60の形成の際は、まず、半導体層20並びにソース電極30及びドレイン電極40を覆うように、絶縁膜60の絶縁材料が形成される。絶縁膜60の絶縁材料として、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)が形成される。このような絶縁材料が、例えば、原子層堆積(Atomic Layer Deposition;ALD)法を用いて、半導体層20並びにソース電極30及びドレイン電極40を覆うように形成される。
【0073】
絶縁膜60の絶縁材料の形成にALD法を用いる場合には、Al原料及びO原料の各供給量が調整され、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)が形成される。また、ALD法又は他の方法(CVD法等)を用いて形成されたAl(x、yは任意)を、水素等の還元性ガスを用いて還元することで、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を形成することもできる。
【0074】
絶縁膜60の絶縁材料の膜厚は、限定されるものではない。例えば、絶縁材料の膜厚は、1nmから10nmの範囲に設定される。絶縁材料、即ち、当該絶縁材料から形成される絶縁膜60の膜厚を大きくするほど、絶縁膜60の正電荷の影響(その直下の2DEG80の密度を増加する効果)が大きくなり得る。
【0075】
このようにして半導体層20並びにソース電極30及びドレイン電極40を覆うように形成された絶縁材料のうち、ゲート電極50を形成する領域53及び当該領域53からドレイン電極40側の絶縁材料が選択的に除去される。その際は、例えばフォトリソグラフィ技術を用いて、領域53及び当該領域53からドレイン電極40側を開口したレジストマスク(図示せず)が形成される。このレジストマスクをマスクとして、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(Tetra-Methyl-Ammonium Hydroxide;TMAH)等のアルカリ系薬液を用いて、領域53及び当該領域53からドレイン電極40側に形成された絶縁材料がウェットエッチングされる。これにより、半導体層20の領域53からソース電極30側及びソース電極30を覆う、図5(B)に示すような絶縁膜60が形成される。
【0076】
尚、このようなウェットエッチングによって形成される絶縁膜60は、その側面60aが、ドレイン電極40側に向かって膜厚が小さくなるように傾斜してもよい。
絶縁膜60の形成後、図6(A)に示すように、半導体層20に形成された絶縁膜60、絶縁膜60から露出する半導体層20及びドレイン電極40を覆うように、保護膜70が形成される。例えば、SiNの保護膜70が形成される。保護膜70は、例えば、プラズマCVD法を用いて形成される。保護膜70の膜厚は、例えば、2nmから500nmの範囲に設定される。保護膜70の形成には、プラズマCVD法のほか、ALD法、スパッタ法等が用いられてもよい。
【0077】
保護膜70の形成後、図6(B)に示すように、保護膜70に開口部71が形成される。保護膜70の開口部71は、キャップ層25のリセス25c内の、ゲート電極50を形成する領域53に、形成される。開口部71の形成の際は、領域53を開口したレジストマスク(図示せず)が形成される。このレジストマスクをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングが行われ、エッチング停止層24に通じる開口部71が形成される。
【0078】
保護膜70の開口部71の形成後、上記図3に示したように、ゲート電極50が形成される。ゲート電極50の形成の際は、ゲート電極50を形成する領域53、即ち、保護膜70の開口部71を開口したレジストマスク(図示せず)が保護膜70上に形成される。このレジストマスクの形成には、例えば、電子ビームリソグラフィ技術が用いられる。レジストマスクとして、例えば、多層レジストマスクが形成される。レジストマスクの形成に続き、Ti、Pt及びAuが順次蒸着法を用いて形成される。そして、レジストマスクがその上に形成されたTi、Pt及びAuと共に除去される。例えば、このようなリフトオフ法を用いて、ゲート電極50が形成される。ゲート電極50の形成により、上記図3に示したような半導体装置100が製造される。
【0079】
尚、ゲート電極50の形成後には、更にパッシベーション膜及び配線等が形成されてよい。
ここでは、基板10としてInP基板を用いる例を示すが、基板10には、InP基板に限らず、各種基板を用いることもできる。例えば、InP系化合物半導体基板のほか、GaAs基板等のGaAs系化合物半導体基板を用いることもできる。用いる基板10の種類に基づき、基板10とチャネル層22との間に形成されるバッファ層21の材料及び構造が適宜調整される。即ち、チャネル層22が成長可能なバッファ層21が基板10上に形成される。
【0080】
次に、第2実施形態に係る半導体装置の第2構成例について説明する。
図7は第2実施形態の第2構成例に係る半導体装置について説明する図である。図7には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0081】
図7に示す半導体装置100Aは、HEMTの一例である。半導体装置100Aは、ゲート電極50のソース電極30側に設けられる第1部位61と、半導体層20の面20aとゲート電極50の端面51との間に設けられる第2部位62とを有する絶縁膜60が設けられた構成を有する。第2部位62は、第1部位61と連続する。第2部位62は、ドレイン電極40側の端62aが、ドレイン側ゲート端52よりも、ソース電極30側に位置する。半導体装置100Aは、絶縁膜60の一部である第2部位62が、ソース電極30側から、半導体層20の面20aとゲート電極50の端面51との間であってドレイン側ゲート端52に達しない位置まで延びた構成を有する。半導体装置100Aは、絶縁膜60の端62aが、ドレイン側ゲート端52よりも内側に食い込んだ位置にあるとも言える。例えば、絶縁膜60として、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含むものが設けられる。
【0082】
尚、半導体装置100Aにおいて、半導体層20のチャネル層22を「第1層」、電子供給層23を「第2層」、キャップ層25を「第3層」、エッチング停止層24を「第4層」とも言う。半導体装置100Aにおいて、半導体層20の基板10とは反対側の面20aを「第1面」とも言い、半導体層20の基板10側の面20bを「第2面」とも言う。半導体装置100Aにおいて、絶縁膜60のうち、ゲート電極50のソース電極30側に設けられる第1部位61を「第1絶縁膜」とも言う。半導体装置100Aにおいて、絶縁膜60のうち、半導体層20の面20aとゲート電極50の端面51との間に設けられる第2部位62を「第2絶縁膜」とも言う。
【0083】
半導体装置100Aでは、絶縁膜60の第2部位62が、ゲート絶縁膜として機能する。これにより、半導体装置100Aでは、ゲートリーク電流の発生が抑えられる。
半導体装置100Aでは、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜60の第1部位61及び第2部位62により、ゲート電極50と第1メサ25aとの間の直下及びゲート電極50の一部の直下における2DEG80の密度が増加する。これにより、半導体装置100Aが大電流化、高出力化される。
【0084】
半導体装置100Aでは、ゲート電極50と第1メサ25aとの間の直下における2DEG80の密度に比べて、ゲート電極50と第2メサ25bとの間の直下における2DEG80の密度が、相対的に低くなる。そのため、ゲート電極50とドレイン電極40との間の半導体層20に生じる電界が抑えられる。更に、半導体装置100Aでは、絶縁膜60の第2部位62の端62aがドレイン側ゲート端52に達しない。そのため、第2部位62が酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む場合でも、ドレイン側ゲート端52の直下における2DEG80の密度の増加が抑えられ、ドレイン側ゲート端52における電界集中が抑えられる。これにより、半導体装置100Aの耐圧の低下が抑えられる。
【0085】
尚、後述のように、絶縁膜60の第2部位62は、第1部位61よりも酸素空孔の少ない又は酸素空孔の無い構成にすることもできる。
上記のような第1部位61及び第2部位62を有する絶縁膜60が用いられ、高出力且つ高耐圧の半導体装置100Aが実現される。
【0086】
続いて、上記のような半導体装置100Aの製造方法について説明する。
図8は第2実施形態の第2構成例に係る半導体装置の製造方法について説明する図である。図8(A)及び図8(B)にはそれぞれ、半導体装置製造工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0087】
上記図7に示したような半導体装置100Aの製造では、上記図4(A)、図4(B)及び図5(A)に示した工程の後、図8(A)に示すような領域に絶縁膜60が形成される。即ち、ゲート電極50を形成する領域53のソース電極30側に第1部位61が形成され、領域53の一部に第2部位62が形成されるように、絶縁膜60が形成される。このような絶縁膜60が、上記図5(B)について述べた方法の例に従って、形成される。これにより、半導体層20の領域53からソース電極30側及びソース電極30を覆う第1部位61と、領域53の一部を覆う第2部位62とを含む、図8(A)に示すような絶縁膜60が形成される。例えば、絶縁膜60として、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含むものが形成される。絶縁膜60の膜厚は、例えば、1nmから10nmの範囲に設定される。第2部位62をゲート絶縁膜として機能させる絶縁膜60では、その膜厚が、例えば、1nmから5nmの範囲に設定される。一例として、絶縁膜60の膜厚は、2nmに設定される。
【0088】
絶縁膜60の形成後、図8(A)に示すように、半導体層20に形成された絶縁膜60、絶縁膜60から露出する半導体層20及びドレイン電極40を覆うように、保護膜70が形成される。例えば、保護膜70として、SiNを含むものが形成される。保護膜70には、図8(B)に示すように、ゲート電極50を形成する領域53に、開口部71が形成される。保護膜70及びその開口部71は、上記図6(A)及び図6(B)について述べた方法の例に従って、形成される。開口部71の形成により、領域53には、絶縁膜60の第2部位62が露出する。そして、絶縁膜60の第2部位62が露出する領域53に、ゲート電極50が形成される。これにより、上記図7に示したような半導体装置100Aが製造される。
【0089】
尚、ゲート電極50の形成後には、更にパッシベーション膜及び配線等が形成されてよい。
図9は第2実施形態の第2構成例に係る半導体装置の製造方法について更に説明する図である。図9には、半導体装置製造工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0090】
半導体装置100Aにおいて、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜60の第2部位62を、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む構成とすると、その酸素空孔が電子トラップのサイトとなり得る。
【0091】
そこで、上記図8(B)に示したような保護膜70の開口部71の形成後、ゲート電極50の形成前に、図9に示すように、開口部71から露出する絶縁膜60の第2部位62を酸化し、酸素空孔を低減するようにしてもよい。例えば、開口部71から露出する第2部位62を、水蒸気を用いて酸化する。この時、絶縁膜60の第1部位61は、保護膜70で覆われるため、酸化が抑えられる。このような第2部位62の選択的な酸化により、ゲート絶縁膜として機能する第2部位62の酸素空孔が、ゲート電極50のソース電極30側に設けられる第1部位61の酸素空孔よりも、低減される。
【0092】
このように半導体装置100Aの絶縁膜60は、比較的酸素空孔の多い第1部位61と、比較的酸素空孔の少ない又は酸素空孔の無い第2部位62とを含む構成とされてもよい。即ち、半導体装置100Aでは、第2部位62のAlのAlに対するOの組成比y/xが、第1部位61のAlのAlに対するOの組成比y/xよりも大きい絶縁膜60が設けられてもよい。これにより、第2部位62での電子トラップを抑えることが可能になり、電子トラップに起因した閾値電圧シフト等の半導体装置100Aの特性変動を抑えることが可能になる。
【0093】
更に、半導体装置100Aでは、絶縁膜60の第2部位62を、比較的酸素空孔の少ない又は酸素空孔の無い第2部位62とすると、その正電荷の影響が抑えられ、ゲート電極50の直下における2DEG80の密度の増加が抑えられる。そして、ドレイン側ゲート端52の直下における2DEG80の密度の増加が、比較的酸素空孔の多い第2部位62とした場合に比べて、より効果的に抑えられる。これにより、ドレイン側ゲート端52における電界集中がより効果的に抑えられ、半導体装置100Aの耐圧の低下がより効果的に抑えられる。
【0094】
図10は第2実施形態の第2構成例に係る半導体装置について更に説明する図である。図10には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
図10に示す半導体装置100Bは、HEMTの一例である。半導体装置100Bは、第1部位61及び第2部位62を有する絶縁膜60の、その第2部位62のドレイン電極40側の端62aが、ドレイン側ゲート端52に位置する構成を有する。半導体装置100Bの製造では、上記図8(A)及び図8(B)等について述べた半導体装置100Aの製造方法において、ゲート電極50を形成する領域53の全体に第2部位62が形成されるように、絶縁膜60が形成される。半導体装置100Bは、このように絶縁膜60が形成される点を除き、上記半導体装置100Aと同様に製造することができる。
【0095】
尚、半導体装置100Bにおいて、半導体層20のチャネル層22を「第1層」、電子供給層23を「第2層」、キャップ層25を「第3層」、エッチング停止層24を「第4層」とも言う。半導体装置100Bにおいて、半導体層20の基板10とは反対側の面20aを「第1面」とも言い、半導体層20の基板10側の面20bを「第2面」とも言う。半導体装置100Bにおいて、絶縁膜60のうち、ゲート電極50のソース電極30側に設けられる第1部位61を「第1絶縁膜」とも言う。半導体装置100Bにおいて、絶縁膜60のうち、半導体層20の面20aとゲート電極50の端面51との間に設けられる第2部位62を「第2絶縁膜」とも言う。
【0096】
この図10に示すような半導体装置100Bによっても、上記半導体装置100Aと同様に、第1部位61及び第2部位62を有する絶縁膜60により、高出力及び高耐圧が実現される。
【0097】
半導体装置100Bでは、第2部位62のドレイン電極40側の端62aが、比較的電界集中が生じ易いドレイン側ゲート端52に位置する。そのため、半導体装置100Bにおいて、例えば、上記図9に示したような第2部位62を酸化する方法を用いて、第2部位62の酸素空孔を第1部位61の酸素空孔よりも低減するようにしてもよい。端62aがドレイン側ゲート端52に位置する第2部位62の酸素空孔を第1部位61の酸素空孔よりも低減すると、その正電荷の影響が抑えられ、ドレイン側ゲート端52の直下における2DEG80の密度の増加が抑えられる。これにより、ドレイン側ゲート端52における電界集中が抑えられ、電界集中による半導体装置100Bの耐圧の低下が抑えられる。半導体装置100Bにおいて、第2部位62の酸素空孔を第1部位61の酸素空孔よりも低減すると、ゲート絶縁膜として機能する第2部位62での電子トラップも抑えられる。
【0098】
ところで、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜60は、膜厚が大きくなるほどその正電荷の影響が大きくなり得る。そこで、次の図11及び図12に示すような構成を採用することもできる。
【0099】
図11は第2実施形態の第2構成例に係る半導体装置の変形例について説明する図である。図11(A)には、半導体装置製造工程の一例の要部断面図を模式的に示している。図11(B)には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0100】
上記図8(A)(及び図5(B))について述べた方法の例に従って絶縁膜60を形成する際には、図11(A)に示すような第2部位62を有する絶縁膜60が形成されてもよい。即ち、図11(A)に示すように、ゲート電極50を形成する領域53に形成される第2部位62の、そのドレイン電極40側の側面62bを、ドレイン電極40側に向かって第2部位62の膜厚が小さくなるように傾斜させてもよい。
【0101】
前述のように、絶縁膜60の形成では、まず、半導体層20の面20a側に、半導体層20並びにソース電極30及びドレイン電極40を覆うように、ALD法を用いて絶縁膜60の絶縁材料が形成される。そして、薬液を用いて当該絶縁材料の一部がウェットエッチングされ、図11(A)に示すような第1部位61及び第2部位62を有する絶縁膜60が形成される。このウェットエッチングの際の条件、例えば、薬液の種類、浸漬温度、浸漬時間等を調整することで、側面62bを傾斜させた第2部位62を得ることができる。
【0102】
このような第2部位62を有する絶縁膜60の形成後、上記図8(A)及び図8(B)に示した工程の例に従って、保護膜70及び開口部71が形成される。そして、その開口部71の形成により露出した第2部位62上に、ゲート電極50が形成される。これにより、図11(B)に示すような半導体装置100C(HEMTの一例)が得られる。
【0103】
尚、半導体装置100Cにおいて、半導体層20のチャネル層22を「第1層」、電子供給層23を「第2層」、キャップ層25を「第3層」、エッチング停止層24を「第4層」とも言う。半導体装置100Cにおいて、半導体層20の基板10とは反対側の面20aを「第1面」とも言い、半導体層20の基板10側の面20bを「第2面」とも言う。半導体装置100Cにおいて、絶縁膜60のうち、ゲート電極50のソース電極30側に設けられる第1部位61を「第1絶縁膜」とも言う。半導体装置100Cにおいて、絶縁膜60のうち、半導体層20の面20aとゲート電極50の端面51との間に設けられる第2部位62を「第2絶縁膜」とも言う。
【0104】
図11(B)に示す半導体装置100Cでは、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜60の第2部位62が、その傾斜した側面62bにより、ドレイン電極40側に向かって膜厚が小さくなる。そのため、第2部位62が酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む場合でも、その正電荷の影響が、傾斜した側面62bの直下では弱められる。従って、傾斜した側面62bの直下における2DEG80の密度の増加が抑えられる。これにより、半導体装置100Cの耐圧の低下が抑えられる。
【0105】
尚、半導体装置100Cにおいて、絶縁膜60の、側面62bを傾斜させた第2部位62(図11(A))を、上記図9に示した工程の例に従い、保護膜70の開口部71の形成後であってゲート電極50の形成前に、酸化することもできる。これにより、ゲート電極50の直下における2DEG80の密度の増加が抑えられ、また、第2部位62での電子トラップが抑えられる。
【0106】
この図11の例に従い、上記図7に示した半導体装置100A、即ち、絶縁膜60の第2部位62の端62aがドレイン側ゲート端52に達しない半導体装置100Aにおいても同様に、第2部位62の側面62bを傾斜させてもよい。
【0107】
図12は第2実施形態の第2構成例に係る半導体装置の別の変形例について説明する図である。図12には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
図12に示す半導体装置100Dは、HEMTの一例である。半導体装置100Dは、第1部位61及び第2部位62を有する絶縁膜60の、その第2部位62の膜厚を、第1部位61の膜厚よりも小さくした構成を有する。
【0108】
半導体装置100Dは、例えば、次のような方法を用いて製造される。即ち、上記図8(A)に示した工程の例に従って、絶縁膜60及び保護膜70が形成される。次いで、上記図8(B)に示した工程の例に従って、開口部71が形成される。そして、開口部71が形成された保護膜70をマスクとして、第2部位62の一部が除去され、薄化される。そして、開口部71の形成により露出した、薄化された第2部位62上に、ゲート電極50が形成される。例えば、このような方法が用いられ、図12に示すような半導体装置100Dが得られる。
【0109】
尚、半導体装置100Dにおいて、半導体層20のチャネル層22を「第1層」、電子供給層23を「第2層」、キャップ層25を「第3層」、エッチング停止層24を「第4層」とも言う。半導体装置100Dにおいて、半導体層20の基板10とは反対側の面20aを「第1面」とも言い、半導体層20の基板10側の面20bを「第2面」とも言う。半導体装置100Dにおいて、絶縁膜60のうち、ゲート電極50のソース電極30側に設けられる第1部位61を「第1絶縁膜」とも言う。半導体装置100Dにおいて、絶縁膜60のうち、半導体層20の面20aとゲート電極50の端面51との間に設けられる第2部位62を「第2絶縁膜」とも言う。
【0110】
図12に示す半導体装置100Dでは、絶縁膜60の第2部位62の膜厚が、第1部位61の膜厚よりも小さくなる。そのため、第2部位62が酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む場合でも、その正電荷の影響が、ゲート電極50の直下では弱められる。従って、ゲート電極50の直下における2DEG80の密度の増加が抑えられる。これにより、半導体装置100Dの耐圧の低下が抑えられる。
【0111】
半導体装置100Dにおいて、絶縁膜60の膜厚は、例えば、1nmから10nmの範囲に設定される。第2部位62は、それがゲート絶縁膜として有効に機能する膜厚、即ち、ゲート電極50の電界をチャネル層22に印加可能であってゲートリーク電流を抑制可能な膜厚に、設定される。第2部位62の膜厚は、1nmから5nmの範囲に設定されることが好ましく、一例として、2nmに設定される。第1部位61の膜厚は、第2部位62の膜厚よりも大きければよい。第1部位61の膜厚を大きくするほど、それが帯びる正電荷量の増加、及びその影響による2DEG80の密度の増加が期待される。
【0112】
尚、半導体装置100Dにおいて、絶縁膜60の、比較的膜厚を小さくした第2部位62を、上記図9に示した工程の例に従い、保護膜70の開口部71の形成後であってゲート電極50の形成前に、酸化することもできる。これにより、ゲート電極50の直下における2DEG80の密度の増加がより効果的に抑えられる。更に、第2部位62での電子トラップも抑えられる。
【0113】
この図12の例に従い、上記図7に示した半導体装置100A、即ち、絶縁膜60の第2部位62の端62aがドレイン側ゲート端52に達しない半導体装置100Aにおいても同様に、第2部位62の膜厚を第1部位61の膜厚よりも小さくしてもよい。
【0114】
次に、第2実施形態に係る半導体装置の第3構成例について説明する。
図13は第2実施形態の第3構成例に係る半導体装置について説明する図である。図13には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0115】
図13に示す半導体装置100Eは、HEMTの一例である。半導体装置100Eは、第1部位61及び第2部位62、更に第3部位63を有する絶縁膜60が設けられた構成を有する。第1部位61は、ゲート電極50のソース電極30側に設けられる。第2部位62は、第1部位61と連続し、半導体層20の面20aとゲート電極50の端面51との間に設けられる。第3部位63は、第2部位62と連続し、ゲート電極50のドレイン電極40側に設けられる。例えば、第3部位63は、ゲート電極50から、ドレイン電極40が設けられるキャップ層25の第2メサ25bに達しない位置まで、設けられる。例えば、第3部位63は、そのドレイン電極40側の端63aが、ゲート電極50から、ゲート電極50と第2メサ25bとの間の距離の半分までの領域に位置するように、設けられる。例えば、絶縁膜60として、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含むものが設けられる。
【0116】
尚、半導体装置100Eにおいて、半導体層20のチャネル層22を「第1層」、電子供給層23を「第2層」、キャップ層25を「第3層」、エッチング停止層24を「第4層」とも言う。半導体装置100Eにおいて、半導体層20の基板10とは反対側の面20aを「第1面」とも言い、半導体層20の基板10側の面20bを「第2面」とも言う。半導体装置100Eにおいて、絶縁膜60のうち、ゲート電極50のソース電極30側に設けられる第1部位61を「第1絶縁膜」とも言う。半導体装置100Eにおいて、絶縁膜60のうち、半導体層20の面20aとゲート電極50の端面51との間に設けられる第2部位62を「第2絶縁膜」とも言う。半導体装置100Eにおいて、絶縁膜60のうち、ゲート電極50のドレイン電極40側に設けられる第3部位を「第3絶縁膜」とも言う。
【0117】
半導体装置100Eでは、ゲート電極50のドレイン電極40側に、第2メサ25bに達しない位置まで、絶縁膜60の第3部位63が設けられる。そのため、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜60が、ゲート電極50から第2メサ25bまで設けられる場合に比べて、ゲート電極50と第2メサ25bとの間の直下における2DEG80の密度の増加が抑えられる。これにより、ゲート電極50とドレイン電極40との間の半導体層20に生じる電界が抑えられ、半導体装置100Eの耐圧の低下が抑えられる。半導体装置100Eでは、リセス25cにおいて、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜60により、その直下における2DEG80の密度が増加する。これにより、半導体装置100Eが大電流化、高出力化される。
【0118】
上記のような第1部位61、第2部位62及び第3部位63を有する絶縁膜60が用いられ、高出力且つ高耐圧の半導体装置100Eが実現される。
続いて、上記のような半導体装置100Eの製造方法について説明する。
【0119】
図14は第2実施形態の第3構成例に係る半導体装置の製造方法について説明する図である。図14(A)及び図14(B)にはそれぞれ、半導体装置製造工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0120】
上記図13に示したような半導体装置100Eの製造では、上記図4(A)、図4(B)及び図5(A)に示した工程の後、図14(A)に示すような領域に絶縁膜60が形成される。即ち、ゲート電極50を形成する領域53のソース電極30側に第1部位61が形成され、領域53に第2部位62が形成され、領域53のドレイン電極40側に第3部位63が形成されるように、絶縁膜60が形成される。このような絶縁膜60が、上記図5(B)について述べた方法の例に従って、形成される。これにより、領域53からソース電極30側及びソース電極30を覆う第1部位61と、領域53を覆う第2部位62と、領域53からドレイン電極40側の一部を覆う第3部位63とを含む、図14(A)に示すような絶縁膜60が形成される。例えば、絶縁膜60として、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含むものが形成される。絶縁膜60の膜厚は、例えば、1nmから10nmの範囲に設定される。第2部位62をゲート絶縁膜として機能させる絶縁膜60では、その膜厚が、例えば、1nmから5nmの範囲に設定される。一例として、絶縁膜60の膜厚は、2nmに設定される。
【0121】
絶縁膜60の形成後、図14(A)に示すように、半導体層20に形成された絶縁膜60、絶縁膜60から露出する半導体層20及びドレイン電極40を覆うように、保護膜70が形成される。例えば、保護膜70として、SiNを含むものが形成される。保護膜70には、図14(B)に示すように、ゲート電極50を形成する領域53に、開口部71が形成される。保護膜70及びその開口部71は、上記図6(A)及び図6(B)について述べた方法に例に従って、形成される。開口部71の形成により、領域53には、絶縁膜60の第2部位62が露出する。そして、絶縁膜60の第2部位62が露出する領域53に、ゲート電極50が形成される。これにより、上記図13に示したような半導体装置100Eが製造される。
【0122】
尚、ゲート電極50の形成後には、更にパッシベーション膜及び配線等が形成され得る。
半導体装置100Eにおいて、例えば、上記図9に示したような第2部位62を酸化する方法を用いて、第2部位62の酸素空孔を第1部位61の酸素空孔よりも低減することもできる。これにより、ゲート絶縁膜として機能する第2部位62での電子トラップが抑えられると共に、第2部位62の直下における2DEG80の密度の増加が抑えられる。また、半導体装置100Eでは、例えば、第2部位62と共に第3部位63も保護膜70から露出させて酸化し、第3部位63の酸素空孔を第1部位61の酸素空孔よりも低減することもできる。これにより、第3部位63の直下における2DEG80の密度の増加が抑えられ、ゲート電極50と第2メサ25bとの間の直下における2DEG80の密度の増加が抑えられ、耐圧の低下が抑えられる。第3部位63の酸素空孔を第1部位61の酸素空孔よりも低減する場合、第3部位63は、ゲート電極50から第2メサ25bまで設けられてもよく、或いは、ゲート電極50からドレイン電極40まで、更にはドレイン電極40を覆うように、設けられてもよい。
【0123】
半導体装置100Eにおいて、上記図12の例に従い、絶縁膜60の第2部位62の膜厚を、第1部位61の膜厚よりも小さくしてもよい。また、半導体装置100Eにおいては、絶縁膜60の第3部位63の膜厚を、第1部位61の膜厚よりも小さくしてもよく、絶縁膜60の第2部位62及び第3部位63の膜厚を共に、第1部位61の膜厚よりも小さくしてもよい。このようにすることで、絶縁膜60が酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む場合でも、その正電荷の影響を、膜厚を小さくした第2部位62又は第3部位63で低減し、2DEG80の密度の増加を抑え、耐圧の低下を抑えることもできる。
【0124】
半導体装置100Eにおいて、絶縁膜60の第3部位63は、そのドレイン電極40側の側面(端63a)が傾斜していてもよい。
以上述べた半導体装置100、100A、100B、100C、100D、100Eにおいて、ゲート電極50は、ソース電極30側の第1メサ25aとの間の距離よりも、ドレイン電極40側の第2メサ25bとの間の距離の方が大きくなるような非対称配置とされてもよい。このような非対称配置が採用されることで、半導体装置100、100A、100B、100C、100D、100Eが更に高耐圧化される。
【0125】
[第3実施形態]
ここでは、半導体装置の特性評価の結果を、第3実施形態として説明する。
図15は特性評価に用いた半導体装置について説明する図である。図15(A)及び図15(B)にはそれぞれ、半導体装置の構成例の要部断面図を模式的に示している。
【0126】
特性評価には、図15(A)に示すような半導体装置110、及び、図15(B)に示すような半導体装置120を用いた。以下では、半導体装置110を「実施例」、半導体装置120を「比較例」とも言う。
【0127】
図15(A)に示すように、半導体装置110では、ゲート電極50のゲート長はLgと定義される。半導体装置110では更に、ゲート電極50とキャップ層25の第1メサ25a(ソース電極30側)との間の距離はLrsと定義され、ゲート電極50とキャップ層25の第2メサ25b(ドレイン電極40側)との間の距離はLrdと定義される。
【0128】
実施例の半導体装置110では、ドレイン側ゲート端52の位置を0とし、ドレイン側ゲート端52からソース電極30側を負、ドレイン電極40側を正とする。実施例の半導体装置110では、絶縁膜60の端60b(絶縁膜端)のドレイン側ゲート端52からの距離Leを、-10nmとした。比較例の半導体装置120は、半導体層20の面20a側が全体的に絶縁膜60で覆われ、絶縁膜60上にゲート電極50が設けられる構成とした。
【0129】
実施例の半導体装置110において、ゲート電極50とソース電極30との間のシート抵抗は203Ω/□、ゲート電極50とドレイン電極40との間のシート抵抗は259Ω/□である。一方、比較例の半導体装置120において、ゲート電極50とソース電極30との間のシート抵抗は203Ω/□、ゲート電極50とドレイン電極40との間のシート抵抗は203Ω/□である。
【0130】
このような半導体装置110及び半導体装置120を用い、電流-電圧特性の評価を行った。
図16から図19は半導体装置の電流-電圧特性について説明する図である。
【0131】
図16(A)及び図16(B)にはそれぞれ、実施例の半導体装置110及び比較例の半導体装置120の、ドレイン-ソース間電圧Vds[V]とドレイン電流Id[mA/mm]との関係を示している。図17(A)及び図17(B)にはそれぞれ、実施例の半導体装置110及び比較例の半導体装置120の、ゲート-ソース間電圧Vgs[V]とドレイン電流Id[mA/mm]及び相互コンダクタンスgm[mS/mm]との関係を示している。図18(A)及び図18(B)にはそれぞれ、実施例の半導体装置110及び比較例の半導体装置120の、ゲート-ソース間電圧Vgs[V]とドレイン電流Id[mA/mm]及びゲート電流Ig[A/mm]との関係を示している。図19(A)及び図19(B)にはそれぞれ、実施例の半導体装置110及び比較例の半導体装置120の、ゲート電圧Vg[V]とゲート電流Ig[A/mm]との関係を示している。
【0132】
図16(A)及び図16(B)より、実施例の半導体装置110及び比較例の半導体装置120の間で、ドレイン-ソース間電圧Vdsとドレイン電流Idとの関係について、大きな差は認められなかった。実施例の半導体装置110及び比較例の半導体装置120について、オン抵抗Ronはいずれも0.25Ωmmと見積もられた。
【0133】
図17(A)及び図17(B)より、実施例の半導体装置110及び比較例の半導体装置120の間で、ゲート-ソース間電圧Vgsとドレイン電流Id及び相互コンダクタンスgmとの関係について、大きな差は認められなかった。実施例の半導体装置110について、相互コンダクタンスgmの最大値gmmaxは2487mS/mmと見積もられた。比較例の半導体装置120について、相互コンダクタンスgmの最大値gmmaxは2439mS/mmと見積もられた。
【0134】
図18(A)及び図18(B)より、実施例の半導体装置110では、オフ状態でドレイン電流Idの流れが停止しているのに対し、比較例の半導体装置120では、オフ状態でドレイン電流Idが流れてしまっており、ドレインリーク電流の発生が認められた。
【0135】
図19(A)及び図19(B)より、実施例の半導体装置110(フラットバンド電圧Vf=0.30V)及び比較例の半導体装置120(Vf=0.31V)の間で、ゲート電圧Vgとゲート電流Igとの関係について、大きな差は認められなかった。
【0136】
これらの電流-電圧特性の結果から、実施例の半導体装置110では、比較例の半導体装置120に比べて、ドレイン電流Id及び相互コンダクタンスgmをほぼ維持したまま、ドレインリーク電流の発生を抑えることができるということが確認された。
【0137】
図20は半導体装置の耐圧について説明する図である。
図20(A)には、実施例の半導体装置110及び比較例の半導体装置120の、ドレイン電圧Vd[V]とドレイン電流Id[mA/mm]との関係を、線形(リニア)スケールで示している。図20(B)には、実施例の半導体装置110及び比較例の半導体装置120の、ドレイン電圧Vd[V]とドレイン電流Id[mA/mm]との関係を、対数(ログ)スケールで示している。
【0138】
図20(A)及び図20(B)より、比較例の半導体装置120の耐圧は1.6Vとなった。これに対し、実施例の半導体装置110の耐圧は2.2Vとなった。実施例の半導体装置110では、比較例の半導体装置120に比べて、大幅に耐圧が向上することが確認された。
【0139】
図21は半導体装置における絶縁膜端のドレイン側ゲート端からの距離と耐圧との関係について説明する図である。
図21には、実施例の半導体装置110(図15)について、ゲート電極50とキャップ層25の第2メサ25bとの間の距離Lrd[nm]、及び、絶縁膜60の端60bのドレイン側ゲート端52からの距離Le[nm]を変化させた場合の、耐圧[V]のシミュレーション結果を示している。尚、ドレイン側ゲート端52の位置が、図21の横軸における0nmに相当し、ドレイン側ゲート端52からソース電極30側が図21の横軸における負となり、ドレイン電極40側が図21の横軸における正となる。
【0140】
図21より、ゲート電極50と第2メサ25bとの間の距離Lrdが70nm、170nm、270nmと大きくなるのに伴い、耐圧が高くなることが確認された。これは、ゲート電極50のドレイン電極40側において、距離Lrdが大きくなるほど、チャネル層22の、第2メサ25bで覆われる領域、即ち、2DEG80が高密度で生成される領域が、狭まるためである。換言すれば、距離Lrdが大きくなるほど、ゲート電極50とドレイン電極40との間の直下の、比較的2DEG80が低密度となる領域が広がるためである。
【0141】
図21より、距離Lrdを70nm、170nm、270nmとしたいずれにおいても、次のような傾向が認められた。即ち、絶縁膜60の端60bがドレイン側ゲート端52に位置する場合(0nm)に対し、端60bがドレイン側ゲート端52からドレイン電極40側に延びるにつれて、耐圧が低くなる傾向が認められた。これは、絶縁膜60の端60bがドレイン電極40側に延びるほど、絶縁膜60の正電荷によって2DEG80の密度が増加する領域が広がるためである。
【0142】
更に、図21より、距離Lrdを70nm、170nm、270nmとしたいずれにおいても、次のような傾向が認められた。即ち、絶縁膜60の端60bがドレイン側ゲート端52に位置する場合(0nm)に対し、端60bがドレイン側ゲート端52よりもソース電極30側に食い込んで位置すると、耐圧が高くなる傾向が認められた。これは、比較的電界集中が生じ易いドレイン側ゲート端52に絶縁膜60が存在せず、ドレイン側ゲート端52の直下における2DEG80の密度の増加が抑えられるためである。
【0143】
図21より、更に次のようなことが言える。即ち、絶縁膜60の端60bをドレイン電極40側からドレイン側ゲート端52に近付けた場合の耐圧増加傾向(正から0nm側の傾き)よりも、ドレイン側ゲート端52からソース電極30側に食い込ませた場合の耐圧増加傾向(0nmから負側の傾き)の方が高くなる。このことから、絶縁膜60の端60bをドレイン電極40側からドレイン側ゲート端52に近付ける場合よりも、ドレイン側ゲート端52からソース電極30側に食い込ませる場合の方が、耐圧の向上に効果的であると言うことができる。
【0144】
[第4実施形態]
ここでは、半導体装置の更に別の構成例を、第4実施形態として説明する。
図22は第4実施形態の第1構成例に係る半導体装置について説明する図である。図22には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0145】
図22に示す半導体装置100Fは、HEMTの一例である。半導体装置100Fは、バッファ層21とチャネル層22との間に設けられた電子供給層26を更に含む半導体層20を有する。半導体装置100Fでは、半導体層20における下層側の電子供給層26と上層側の電子供給層23との間に、チャネル層22が設けられる。
【0146】
電子供給層26には、例えば、InAlAsが用いられる。電子供給層26の厚さは、例えば、2nm程度から25nm程度の範囲に設定される。例えば、電子供給層26には、Si等の不純物が所定の領域に所定の濃度でドーピングされる。基板10上に、例えば、MOCVD法を用いて、バッファ層21、電子供給層26、チャネル層22、電子供給層23、エッチング停止層24及びキャップ層25が順次積層され、電子供給層26を含む半導体層20が形成される。電子供給層26と電子供給層23との間に設けられるチャネル層22に2DEG80が生成される。
【0147】
バッファ層21上の電子供給層26は、例えば、デルタドーピング(原子層ドーピング)等の不純物の導入により形成することができる。不純物として、例えば、Siを2×1012cm-2程度ドーピングする。不純物は、バッファ層21と電子供給層26との界面にシート状にドーピングされる。そのドーピング界面は、電子供給層26の表面に対して3nmから5nm程度の深さとされる。この場合、電子供給層26のドーピング界面よりも表面側の部分を、スペーサ層とみなすこともできる。
【0148】
基板10上の半導体層20として、この図22に示すような電子供給層26を含むものが用いられてもよい。電子供給層26を含む半導体層20が用いられた半導体装置100Fでも、上記第2実施形態で述べたような絶縁膜60が設けられることで、高出力及び高耐圧が実現される。
【0149】
半導体装置100Fにおいて、ゲート電極50は、ドレイン電極40側の第2メサ25bよりも、ソース電極30側の第1メサ25aの方に近付けた、非対称配置とされてもよい。
【0150】
この図22に示すような電子供給層26を含む半導体層20は、上記第2実施形態で述べた半導体装置100、100A、100B、100C、100D、100E等のいずれにも採用することができる。
【0151】
図23は第4実施形態の第2構成例に係る半導体装置について説明する図である。図23には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
図23に示す半導体装置100Gは、HEMTの一例である。半導体装置100Gは、基板10上に、バッファ層21、電子供給層26、チャネル層22、エッチング停止層24及びキャップ層25が順次積層された半導体層20を有する。電子供給層26上のチャネル層22に2DEG80が生成される。例えば、MOCVD法を用いて、各層が順次積層され、図23に示すような半導体層20が形成される。
【0152】
このように基板10上の半導体層20には、チャネル層22下に電子供給層26を有し、チャネル層22上に電子供給層23を有しないものが用いられてもよい。このような半導体層20が用いられた半導体装置100Gでも、上記第2実施形態で述べたような絶縁膜60が設けられることで、高出力及び高耐圧が実現される。
【0153】
半導体装置100Gにおいて、ゲート電極50は、ドレイン電極40側の第2メサ25bよりも、ソース電極30側の第1メサ25aの方に近付けた、非対称配置とされてもよい。
【0154】
この図23に示すような積層構造を有する半導体層20は、上記第2実施形態で述べた半導体装置100、100A、100B、100C、100D、100E等のいずれにも採用することができる。
【0155】
以上、第1から第4実施形態について説明した。
以上述べた半導体装置1、1A、1B、1C(「1、1A-1C」とも記す)等及び半導体装置100、100A、100B、100C、100D、100E、100F、100G(「100、100A-100G」とも記す)等は、各種電子装置に適用することができる。一例として、上記のような構成を有する半導体装置を、半導体パッケージ、力率改善回路、電源装置及び増幅器に適用する場合について、以下に説明する。
【0156】
[第5実施形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、半導体パッケージへの適用例を、第5実施形態として説明する。
【0157】
図24は第5実施形態に係る半導体パッケージの一例について説明する図である。図24には、半導体パッケージの一例の要部平面図を模式的に示している。
図24に示す半導体パッケージ200は、ディスクリートパッケージの一例である。半導体パッケージ200は、例えば、上記第2実施形態で述べたような半導体装置100A(図7)、半導体装置100Aが搭載されたリードフレーム210、及びそれらを封止する樹脂220を含む。
【0158】
半導体装置100Aは、例えば、リードフレーム210のダイパッド210a上にダイアタッチ材等(図示せず)を用いて搭載される。半導体装置100Aには、上記ゲート電極50と接続されたパッド50a、ソース電極30と接続されたパッド30a、及びドレイン電極40と接続されたパッド40aが設けられる。パッド50a、パッド30a及びパッド40aはそれぞれ、Au、Al等のワイヤ230を用いてリードフレーム210のゲートリード211、ソースリード212及びドレインリード213に接続される。ゲートリード211、ソースリード212及びドレインリード213の各一部が露出するように、リードフレーム210とそれに搭載された半導体装置100A及びそれらを接続するワイヤ230が、樹脂220で封止される。
【0159】
半導体装置100Aの、ゲート電極50と接続されたパッド50a及びドレイン電極40と接続されたパッド40aが設けられる面とは反対側の面に、ソース電極30と接続された外部接続用電極が設けられてもよい。当該外部接続用電極を、ソースリード212に繋がるダイパッド210aに、半田等の導電性接合材を用いて接続してもよい。
【0160】
例えば、上記第2実施形態で述べたような半導体装置100Aが用いられ、このような構成を有する半導体パッケージ200が得られる。
上記のように、半導体装置100Aでは、ゲート電極50、ソース電極30及びドレイン電極40が設けられる半導体層20の面20a側であって、ゲート電極50のソース電極30側に、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜60が設けられる。これにより、チャネル層22の2DEG80の密度は、ゲート電極50に対してソース電極30側の方がドレイン電極40側よりも相対的に高くなる。ソース電極30側の2DEG80の密度が増加され、ドレイン電極40側の電界が抑えられて、高出力且つ高耐圧の半導体装置100Aが実現される。このような半導体装置100Aが用いられ、高性能の半導体パッケージ200が実現される。
【0161】
ここでは、半導体装置100Aを例にしたが、他の半導体装置1、1A-1C等及び半導体装置100、100B-100G等を用いて同様に半導体パッケージを得ることが可能である。
【0162】
[第6実施形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、力率改善回路への適用例を、第6実施形態として説明する。
【0163】
図25は第6実施形態に係る力率改善回路の一例について説明する図である。図25には、力率改善回路の一例の等価回路図を示している。
図25に示す力率改善(Power Factor Correction;PFC)回路300は、スイッチ素子310、ダイオード320、チョークコイル330、コンデンサ340、コンデンサ350、ダイオードブリッジ360及び交流電源370(AC)を含む。
【0164】
PFC回路300において、スイッチ素子310のドレイン電極と、ダイオード320のアノード端子及びチョークコイル330の一端子とが接続される。スイッチ素子310のソース電極と、コンデンサ340の一端子及びコンデンサ350の一端子とが接続される。コンデンサ340の他端子とチョークコイル330の他端子とが接続される。コンデンサ350の他端子とダイオード320のカソード端子とが接続される。また、スイッチ素子310のゲート電極には、ゲートドライバが接続される。コンデンサ340の両端子間には、ダイオードブリッジ360を介して交流電源370が接続され、コンデンサ350の両端子間から直流電源(DC)が取り出される。
【0165】
例えば、このような構成を有するPFC回路300のスイッチ素子310に、上記半導体装置1、1A-1C等及び半導体装置100、100A-100G等が用いられる。
上記のように、半導体装置1、1A-1C等及び半導体装置100、100A-100G等では、ゲート電極50、ソース電極30及びドレイン電極40が設けられる半導体層20の面20a側であって、ゲート電極50のソース電極30側に、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜60が設けられる。これにより、チャネル層22の2DEG80の密度は、ゲート電極50に対してソース電極30側の方がドレイン電極40側よりも相対的に高くなる。ソース電極30側の2DEG80の密度が増加され、ドレイン電極40側の電界が抑えられて、高出力且つ高耐圧の半導体装置1、1A-1C等及び半導体装置100、100A-100G等が実現される。このような半導体装置1、1A-1C等及び半導体装置100、100A-100G等が用いられ、高性能のPFC回路300が実現される。
【0166】
[第7実施形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、電源装置への適用例を、第7実施形態として説明する。
【0167】
図26は第7実施形態に係る電源装置の一例について説明する図である。図26には、電源装置の一例の等価回路図を示している。
図26に示す電源装置400は、一次側回路410及び二次側回路420、並びに一次側回路410と二次側回路420との間に設けられるトランス430を含む。
【0168】
一次側回路410には、上記第6実施形態で述べたようなPFC回路300、及びPFC回路300のコンデンサ350の両端子間に接続されたインバータ回路、例えば、フルブリッジインバータ回路440が含まれる。フルブリッジインバータ回路440には、複数、ここでは一例として4つのスイッチ素子441、スイッチ素子442、スイッチ素子443及びスイッチ素子444が含まれる。
【0169】
二次側回路420には、複数、ここでは一例として3つのスイッチ素子421、スイッチ素子422及びスイッチ素子423が含まれる。
例えば、このような構成を有する電源装置400の、一次側回路410に含まれるPFC回路300のスイッチ素子310、及びフルブリッジインバータ回路440のスイッチ素子441-444に、上記半導体装置1、1A-1C等及び半導体装置100、100A-100G等が用いられる。例えば、電源装置400の、二次側回路420のスイッチ素子421、422、423には、Siを用いた通常のMIS型電界効果トランジスタが用いられる。
【0170】
上記のように、半導体装置1、1A-1C等及び半導体装置100、100A-100G等では、ゲート電極50、ソース電極30及びドレイン電極40が設けられる半導体層20の面20a側であって、ゲート電極50のソース電極30側に、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜60が設けられる。これにより、チャネル層22の2DEG80の密度は、ゲート電極50に対してソース電極30側の方がドレイン電極40側よりも相対的に高くなる。ソース電極30側の2DEG80の密度が増加され、ドレイン電極40側の電界が抑えられて、高出力且つ高耐圧の半導体装置1、1A-1C等及び半導体装置100、100A-100G等が実現される。このような半導体装置1、1A-1C等及び半導体装置100、100A-100G等が用いられ、高性能の電源装置400が実現される。
【0171】
[第8実施形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、増幅器への適用例を、第8実施形態として説明する。
【0172】
図27は第8実施形態に係る増幅器の一例について説明する図である。図27には、増幅器の一例の等価回路図を示している。
図27に示す増幅器500は、デジタルプレディストーション回路510、ミキサー520、ミキサー530及びパワーアンプ540を含む。
【0173】
デジタルプレディストーション回路510は、入力信号の非線形歪みを補償する。ミキサー520は、非線形歪みが補償された入力信号SIと交流信号とをミキシングする。パワーアンプ540は、入力信号SIが交流信号とミキシングされた信号を増幅する。増幅器500では、例えば、スイッチの切り替えにより、出力信号SOをミキサー530で交流信号とミキシングしてデジタルプレディストーション回路510に送出することができる。増幅器500は、高周波増幅器、高出力増幅器として使用することができる。
【0174】
このような構成を有する増幅器500のパワーアンプ540に、上記半導体装置1、1A-1C等及び半導体装置100、100A-100G等が用いられる。
上記のように、半導体装置1、1A-1C等及び半導体装置100、100A-100G等では、ゲート電極50、ソース電極30及びドレイン電極40が設けられる半導体層20の面20a側であって、ゲート電極50のソース電極30側に、酸素空孔を有するAl(y/x<3/2)を含む絶縁膜60が設けられる。これにより、チャネル層22の2DEG80の密度は、ゲート電極50に対してソース電極30側の方がドレイン電極40側よりも相対的に高くなる。ソース電極30側の2DEG80の密度が増加され、ドレイン電極40側の電界が抑えられて、高出力且つ高耐圧の半導体装置1、1A-1C等及び半導体装置100、100A-100G等が実現される。このような半導体装置1、1A-1C等及び半導体装置100、100A-100G等が用いられ、高性能の増幅器500が実現される。
【0175】
上記半導体装置1、1A-1C等及び半導体装置100、100A-100G等を適用した各種電子装置(上記第5から第8実施形態で述べた半導体パッケージ200、PFC回路300、電源装置400及び増幅器500等)は、各種電子機器又は電子装置に搭載することができる。例えば、コンピュータ(パーソナルコンピュータ、スーパーコンピュータ、サーバ等)、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、センサ、カメラ、オーディオ機器、測定装置、検査装置、製造装置、送信器、受信器、レーダー装置といった、各種電子機器又は電子装置に搭載することが可能である。
【0176】
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) インジウムとガリウムとヒ素とを含有する第1層と、前記第1層と積層され、インジウムとアルミニウムとヒ素とを含有する第2層と、を含む半導体層と、
前記半導体層の第1面側に設けられるソース電極及びドレイン電極と、
前記半導体層の前記第1面側であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられるゲート電極と、
前記半導体層の前記第1面側であって、前記ゲート電極の前記ソース電極側に設けられ、酸素空孔を有する酸化アルミニウムを含む第1絶縁膜と、
を有する半導体装置。
【0177】
(付記2) 前記第1絶縁膜と連続し、前記半導体層の前記第1面と、前記第1面に面する前記ゲート電極の端面との間に設けられ、酸化アルミニウムを含む第2絶縁膜を更に有する、付記1に記載の半導体装置。
【0178】
(付記3) 前記第2絶縁膜の前記ドレイン電極側の端は、前記ゲート電極の前記端面における前記ドレイン電極側の端よりも、前記ソース電極側に位置する、付記2に記載の半導体装置。
【0179】
(付記4) 前記第2絶縁膜の前記ドレイン電極側の端は、前記ゲート電極の前記端面における前記ドレイン電極側の端に位置する、付記2に記載の半導体装置。
(付記5) 前記第2絶縁膜に含まれる酸化アルミニウムの、アルミニウムに対する酸素の組成比は、前記第1絶縁膜に含まれる酸化アルミニウムの、アルミニウムに対する酸素の組成比よりも大きい、付記2に記載の半導体装置。
【0180】
(付記6) 前記第2絶縁膜の前記ドレイン電極側の側面は、前記ドレイン電極側に向かって前記第2絶縁膜の膜厚が小さくなるように傾斜する、付記2に記載の半導体装置。
(付記7) 前記第2絶縁膜の膜厚は、前記第1絶縁膜の膜厚よりも小さい、付記2に記載の半導体装置。
【0181】
(付記8) 前記第2絶縁膜と連続し、前記ゲート電極の前記ドレイン電極側に設けられ、酸化アルミニウムを含む第3絶縁膜を更に有する、付記2に記載の半導体装置。
(付記9) 前記半導体層の前記第1面側に設けられ、前記ゲート電極の前記ソース電極側に設けられる前記第1絶縁膜と、前記ゲート電極の前記ドレイン電極側とを覆い、窒化シリコンを含む第4絶縁膜を更に有する、付記1に記載の半導体装置。
【0182】
(付記10) 前記半導体層は、前記第1面側に、リセスと、前記リセスを挟んで対向する第1メサ及び第2メサと、を含む第3層を更に有し、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極はそれぞれ、前記第1メサ及び前記第2メサに設けられ、
前記ゲート電極は、前記リセスに、前記第1メサ及び前記第2メサから分離されて設けられる、付記1に記載の半導体装置。
【0183】
(付記11) 前記第1絶縁膜は、前記リセス内の前記ゲート電極と前記第1メサとの間を覆う、付記10に記載の半導体装置。
(付記12) 前記半導体層は、前記リセスの底に設けられる第4層を更に有する、付記10に記載の半導体装置。
【0184】
(付記13) 前記半導体層の前記第1面側とは反対の第2面側に設けられ、インジウムとリンとを含有する基板を更に有する、付記1に記載の半導体装置。
(付記14) 前記半導体層は、前記第1層及び前記第2層のうち、前記第2層が前記第1面側に設けられる、付記1に記載の半導体装置。
【0185】
(付記15) インジウムとガリウムとヒ素とを含有する第1層と、前記第1層と積層され、インジウムとアルミニウムとヒ素とを含有する第2層と、を含む半導体層を形成する工程と、
前記半導体層の第1面側に、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記半導体層の前記第1面側であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に、ゲート電極を形成する工程と、
前記半導体層の前記第1面側であって、前記ゲート電極の前記ソース電極側に設けられ、酸素空孔を有する酸化アルミニウムを含む第1絶縁膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【0186】
(付記16) 前記第1絶縁膜と連続し、前記半導体層の前記第1面と、前記第1面に面する前記ゲート電極の端面との間に設けられ、酸化アルミニウムを含む第2絶縁膜を形成する工程を更に有する、付記15に記載の半導体装置の製造方法。
【0187】
(付記17) 前記第2絶縁膜を形成する工程は、前記第2絶縁膜に含まれる酸化アルミニウムを酸化する工程を含む、付記16に記載の半導体装置の製造方法。
(付記18) 前記第2絶縁膜と連続し、前記ゲート電極の前記ドレイン電極側に設けられ、酸化アルミニウムを含む第3絶縁膜を形成する工程を更に有する、付記16に記載の半導体装置の製造方法。
【0188】
(付記19) インジウムとガリウムとヒ素とを含有する第1層と、前記第1層と積層され、インジウムとアルミニウムとヒ素とを含有する第2層と、を含む半導体層と、
前記半導体層の第1面側に設けられるソース電極及びドレイン電極と、
前記半導体層の前記第1面側であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられるゲート電極と、
前記半導体層の前記第1面側であって、前記ゲート電極の前記ソース電極側に設けられ、酸素空孔を有する酸化アルミニウムを含む第1絶縁膜と、
を有する半導体装置を備える電子装置。
【符号の説明】
【0189】
1、1A、1B、1C、100、100A、100B、100C、100D、100E、100F、100G、110、120 半導体装置
2、20 半導体層
2a、22 チャネル層
2b、23、26 電子供給層
2c、25 キャップ層
2d、20a、20b 面
3、30 ソース電極
4、40 ドレイン電極
5、50 ゲート電極
5a、51 端面
5b、52 ドレイン側ゲート端
6、60 絶縁膜
6a、61 第1部位
6b、62 第2部位
6ba、60b、62a、63a 端
6c、63 第3部位
8、80 2DEG
10 基板
21 バッファ層
24 エッチング停止層
25a 第1メサ
25b 第2メサ
25c リセス
30a、40a、50a パッド
53 領域
60a、62b 側面
70保護膜
71 開口部
200 半導体パッケージ
210 リードフレーム
210a ダイパッド
211 ゲートリード
212 ソースリード
213 ドレインリード
220 樹脂
230 ワイヤ
300 PFC回路
310、421、422、423、441、442、443、444 スイッチ素子
320 ダイオード
330 チョークコイル
340、350 コンデンサ
360 ダイオードブリッジ
370 交流電源
400 電源装置
410 一次側回路
420 二次側回路
430 トランス
440 フルブリッジインバータ回路
500 増幅器
510 デジタルプレディストーション回路
520、530 ミキサー
540 パワーアンプ
AR1、AR2 領域
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