(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092642
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】半導体装置、電子機器、及び車両
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20240701BHJP
H03K 17/08 20060101ALI20240701BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H02M1/00 F
H03K17/08
H03K17/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208727
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 克明
(72)【発明者】
【氏名】宅間 徹
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BB01
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM01
5H740MM02
5J055AX25
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5J055BX16
5J055CX28
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5J055EY13
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5J055FX33
5J055FX34
5J055GX07
(57)【要約】
【課題】アクティブクランプ時に出力電圧のチャタリングが発生することを防止できる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置(1B)は、第1端子(T1)と第2端子(T2)との間に接続される第1スイッチ素子(M3)と、第1スイッチ素子の第1端-第2端間電圧をクランプ電圧以下に制限するアクティブクランプ回路(ACLP1B)と、第1スイッチ素子の制御端をディスチャージするディスチャージ回路(CS1、M7、M8)と、マスク回路(M6)と、第1ダイオード(D4)と、電流経路と、を備える。アクティブクランプ回路は、第2スイッチ素子(M4)と、第2スイッチ素子の第1端-制御端間電圧をクランプするクランパ(D1、D2)と、を含む。マスク回路は、第1ダイオードのアノード電圧に応じてディスチャージ回路を非動作にする。電流経路は、第2スイッチ素子の第1端-制御端間容量を流れる電流を流す。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧が印加され負荷に接続されるように構成された第1端子と前記出力電圧より低い電圧が印加されるように構成された第2端子との間に接続されるように構成された第1スイッチ素子と、
前記第1スイッチ素子の第1端-第2端間電圧をクランプ電圧以下に制限するように構成されたアクティブクランプ回路と、
前記第1スイッチ素子の制御端をディスチャージするように構成されたディスチャージ回路と、
マスク回路と、
第1ダイオードと、
電流経路と、
を備え、
前記アクティブクランプ回路は、
第2スイッチ素子と、
前記第2スイッチ素子の第1端-制御端間電圧をクランプするように構成されたクランパと、
を含み、
前記マスク回路は、前記第1ダイオードのアノード電圧に応じて前記ディスチャージ回路を非動作にするように構成され、
前記電流経路は、前記第2スイッチ素子の第1端-制御端間容量を流れる電流を流すように構成されている、
半導体装置。
【請求項2】
前記第1ダイオードに並列接続され、前記第1ダイオードのアノード電圧に応じて制御される第3スイッチ素子をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電流経路は、前記第2スイッチ素子の第1端-制御端間容量に電流が流れたときにオンになる第4スイッチ素子を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記電流経路は、前記第1ダイオードのアノード電圧に応じて前記電流経路を遮断にするように構成された第5トランジスタを含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
n型の半導体基板をさらに備え、前記第3スイッチ素子に直列接続され、前記第1ダイオードと逆方向の第2ダイオードをさらに備える、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2スイッチ素子の制御端電圧を分圧して前記第3スイッチ素子の第1端に供給するように構成された第1分圧回路と、
前記第1ダイオードのアノード電圧を分圧して前記第3スイッチ素子の第2端に供給するように構成された第2分圧回路と、をさらに備える、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置と、
前記負荷である誘導性負荷と、
を備える、電子機器。
【請求項8】
請求項7に記載の電子機器を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、半導体装置、電子機器、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、これまで、車載IPD[intelligent power device]などの半導体装置に関して、数多くの新技術を提案している(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車載IPDなどの半導体装置は、一般に、誘導性負荷の逆起電力を吸収するための手段として、アクティブクランプ回路を備えている。
【0005】
しかしながら、従来の半導体装置がローサイドである場合、アクティブクランプ時に出力電圧のチャタリングが発生するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書中に開示されている半導体装置は、出力電圧が印加され負荷に接続されるように構成された第1端子と前記出力電圧より低い電圧が印加されるように構成された第2端子との間に接続されるように構成された第1スイッチ素子と、前記第1スイッチ素子の第1端-第2端間電圧をクランプ電圧以下に制限するように構成されたアクティブクランプ回路と、前記第1スイッチ素子の制御端をディスチャージするように構成されたディスチャージ回路と、マスク回路と、第1ダイオードと、電流経路と、を備える。前記アクティブクランプ回路は、第2スイッチ素子と、前記第2スイッチ素子の第1端-制御端間電圧をクランプするように構成されたクランパと、を含む。前記マスク回路は、前記第1ダイオードのアノード電圧に応じて前記ディスチャージ回路を非動作にするように構成されている。前記電流経路は、前記第2スイッチ素子の第1端-制御端間容量を流れる電流を流すように構成されている。
【0007】
本明細書中に開示されている電子機器は、上記構成の半導体装置と、前記負荷である誘導性負荷と、を備える。
【0008】
本明細書中に開示されている車両は、上記構成の電子機器を備える。
【発明の効果】
【0009】
本明細書中に開示されている発明によれば、アクティブクランプ時に出力電圧のチャタリングが発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、半導体装置を備えた電子機器の比較例を示す図である。
【
図2】
図2は、入力信号、ゲート信号、イネーブル信号、出力電圧、及び出力電流の波形例を示すタイミングチャートである。
【
図3】
図3は、
図1に示された半導体装置において結合電流が流れる様子を示す図である。
【
図4】
図4は、入力信号、ゲート信号、及び出力電圧の波形例を示すタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、半導体装置を備えた電子機器の実施形態を示す図である。
【
図6】
図6は、入力信号、ゲート信号、イネーブル信号、出力電圧、吸収電流、検出電流、及び出力電流の波形例を示すタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、
図5に示された半導体装置の第1タイミングでの状態を示す図である。
【
図8】
図8は、
図5に示された半導体装置の第2タイミングでの状態を示す図である。
【
図9】
図9は、
図5に示された半導体装置の第3タイミングでの状態を示す図である。
【
図10】
図10は、
図5に示された半導体装置の第4タイミングでの状態を示す図である。
【
図11】
図11は、
図5に示された半導体装置の第5タイミングでの状態を示す図である。
【
図12】
図12は、
図5に示された半導体装置の第6タイミングでの状態を示す図である。
【
図13】
図13は、半導体装置を備えた電子機器の第1変形例を示す図である。
【
図14】
図1は、MOS電界効果トランジスタの断面構造を示す図である。
【
図15】
図15は、半導体装置を備えた電子機器の第2変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、MOS(Metal Oxide Semiconductor)電界効果トランジスタとは、ゲートの構造が、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」の少なくとも3層からなるトランジスタをいう。つまり、MOS電界効果トランジスタのゲートの構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0012】
まず、本開示に係る実施形態について説明する前に、比較例について説明する。比較例との比較において、本開示に係る実施形態の有利な効果等が明らかになる。
【0013】
<比較例>
図1は、半導体装置を備えた電子機器の比較例を示す図である。本構成例の電子機器10Aは、半導体装置1Aと、誘導性負荷であるインダクタL1と、直流電源VS1及びVS2と、を備える。
【0014】
半導体装置1Aは、インダクタL1とグラウンド電圧との間を導通/遮断するローサイドスイッチIC(IPDの一種)である。
【0015】
半導体装置1Aは、装置外部との電気的な接続を確立するための手段として、端子T1~T4を備える。端子T1は、インダクタL1の第1端に接続される。インダクタL1の第2端は、直流電源VS1の正極に接続される。端子T1には、出力電圧VOUTが印加される。端子T2には、出力電圧VOUTより低いグラウンド電圧が印加される。端子T3は、入力信号INを受け取る。端子T4は、直流電源VS2の正極に接続される。直流電源VS1及びVS2の各負極には、グラウンド電圧が印加される。直流電源VS1は電圧VCCを出力する。直流電源VS2は電圧VDDを出力する。電圧VCCと電圧VDDとは、互いに同じ値の電圧であってもよく、互いに異なる値の電圧であってもよい。
【0016】
半導体装置1Aは、ロジック回路LGC1と、抵抗R1及びR2と、MOS電界効果トランジスタM1~M3と、アクティブクランプ回路ACLP1Aと、MOS電界効果トランジスタM6~M8と、電流源CS1と、を備える。
【0017】
ロジック回路LGC1は、端子T2及びT4に接続される。ロジック回路LGC1は、端子T3に接続されており、入力信号INに基づきロジック処理を実行する。
【0018】
抵抗R1の第1端は、端子T4に接続される。抵抗R1の第2端は、PチャネルのMOS電界効果トランジスタM1のソース及びバックゲートに接続される。
【0019】
MOS電界効果トランジスタM1のドレインは、NチャネルのMOS電界効果トランジスタM2のドレインと、抵抗R2の第1端と、NチャネルのMOS電界効果トランジスタM8のドレインと、に接続される。MOS電界効果トランジスタM2のソース及びバックゲートは、端子T2に接続される。抵抗R2の第2端は、MOS電界効果トランジスタM2のゲートに接続される。
【0020】
ロジック回路LGC1は、入力信号INがHIGHレベルであるときに、MOS電界効果トランジスタM1のゲートに供給するゲート信号G1をLOWレベルにし、MOS電界効果トランジスタM2のゲートに供給するゲート信号G2をLOWレベルにする。ロジック回路LGC1が、MOS電界効果トランジスタM1のゲートに供給するゲート信号G1をLOWレベルにし、MOS電界効果トランジスタM2のゲートに供給するゲート信号G2をLOWレベルにすると、MOS電界効果トランジスタM1がオンになり、MOS電界効果トランジスタM2がオフになる。MOS電界効果トランジスタM1がオンであってMOS電界効果トランジスタM2がオフであるとき、MOS電界効果トランジスタM2のゲートに供給されるゲート信号GATEはHIGHレベル(≒電圧VDD)になる。
【0021】
一方、ロジック回路LGC1は、入力信号INがLOWレベルであるときに、MOS電界効果トランジスタM1のゲートに供給するゲート信号G1をHIGHレベルにし、MOS電界効果トランジスタM2のゲートに供給するゲート信号G2をHIGHレベルにする。ロジック回路LGC1が、MOS電界効果トランジスタM1のゲートに供給するゲート信号G1をHIGHレベルにし、MOS電界効果トランジスタM2のゲートに供給するゲート信号G2をHIGHレベルにすると、MOS電界効果トランジスタM1がオフになり、MOS電界効果トランジスタM2がオンになる。MOS電界効果トランジスタM8がオフであってMOS電界効果トランジスタM3がオンであるとき、MOS電界効果トランジスタM2のゲートに供給されるゲート信号GATEはLOWレベル(≒グラウンド電圧)になる。
【0022】
MOS電界効果トランジスタM2はNチャネルのパワーMISFET[metal insulator semiconductor field effect transistor]である。MOS電界効果トランジスタM2のドレインは、端子T1に接続される。MOS電界効果トランジスタM2のソース及びバックゲートは、端子T2に接続される。
【0023】
アクティブクランプ回路ACLP1Aは、端子T1と端子T2との間に現れる端子間電圧をクランプ電圧以下に制限する。アクティブクランプ回路ACLP1Aは、MOS電界効果トランジスタM4と、ツェナーダイオードD1と、ダイオードD2と、抵抗R3と、ツェナーダイオードD3と、MOS電界効果トランジスタM4及びM5と、を含む。MOS電界効果トランジスタM4及びM5はNチャネルのMOS電界効果トランジスタである。また、MOS電界効果トランジスタM5は他のトランジスタとは異なりデプレッション型のトランジスタである。なお、MOS電界効果トランジスタM5の代わりに、電流源が用いられてもよい。
【0024】
ツェナーダイオードD1のカソード及びMOS電界効果トランジスタM4のドレインは、端子T1と、MOS電界効果トランジスタM3のドレインと、に接続される。ツェナーダイオードD1のアノードは、ダイオードD2のアノードに接続される。ダイオードD2のカソードは、抵抗R3の第1端と、MOS電界効果トランジスタM4のゲートと、に接続される。抵抗R3の第2端は、ツェナーダイオードD3のカソードと、MOS電界効果トランジスタM5のドレインと、ロジック回路LGC1と、に接続される。ツェナーダイオードD3のアノード及びMOS電界効果トランジスタM5のソース、バックゲート、及びゲートは端子T2に接続される。ツェナーダイオードD1及びダイオードD2は、MOS電界効果トランジスタM4のドレイン-ゲート間電圧をクランプするクランパである。なお、MOS電界効果トランジスタM4のドレイン-ゲート間電圧をクランプするクランパは、ツェナーダイオードD1及びダイオードD2の直列回路以外の構成であってもよい。例えば、ツェナーダイオードD1の代わりに、複数のツェナーダイオードによって構成される直列回路が用いられてもよい。
【0025】
ロジック回路LGC1は、アクティブクランプ回路ACLP1Aが動作中であるとき、すなわちツェナーダイオードD3のカソード電圧であるイネーブル信号CLAMP_ENがHIGHレベルであるとき、NチャネルのMOS電界効果トランジスタM6のゲートに供給するゲート信号G3をLOWレベルにする。一方、ロジック回路LGC1は、アクティブクランプ回路ACLP1Aが動作中でないとき、すなわちツェナーダイオードD3のカソード電圧であるイネーブル信号CLAMP_ENがLOWレベルであるとき、MOS電界効果トランジスタM6のゲートに供給するゲート信号G3をHIGHレベルにする。ロジック回路LGC1及びMOS電界効果トランジスタM6を含むマスク回路は、イネーブル信号CLAMP_ENひいてはMOS電界効果トランジスタM4のゲートに供給されるゲート信号HV_GATEに応じて後述するディスチャージ回路を非動作にする。具体的には、ロジック回路LGC1及びMOS電界効果トランジスタM6を含むマスク回路は、イネーブル信号CLAMP_ENがHIGHレベルであるときに、後述するディスチャージ回路を非動作にする。MOS電界効果トランジスタM6のソース及びバックゲートは端子T2に接続される。
【0026】
電流源CS1と、NチャネルのMOS電界効果トランジスタM7及びM8を含むディスチャージ回路は、MOS電界効果トランジスタM3のゲートをディスチャージする。電流源CS1の第1端は、端子T4に接続される。電流源CS1の第2端は、MOS電界効果トランジスタM6のドレインと、MOS電界効果トランジスタM7のドレイン及びゲートと、MOS電界効果トランジスタM8のゲートと、に接続される。MOS電界効果トランジスタM7及びM8の各ソース及び各バックゲートは端子T2に接続される。
【0027】
MOS電界効果トランジスタM3がオフであるとき、出力電圧VOUTが、クランパによって規定されるクランプ電圧以上になると、ゲート信号HV_GATE及びイネーブル信号CLAMP_ENがHIGHレベルになる。イネーブル信号CLAMP_ENがHIGHレベルになると、MOS電界効果トランジスタM6がオンになり、MOS電界効果トランジスタM7及びM8がオフになって上述したようにディスチャージ回路が非動作になる。
【0028】
したがって、アクティブクランプ回路ACLP1AがインダクタL1の逆起電力を吸収する期間P1(
図2参照)が終わるまで、MOS電界効果トランジスタM3がハーフオンになる。なお、
図2は、半導体装置1Aにおける、入力信号IN、ゲート信号GATE、イネーブル信号CLAMP_EN、ゲート信号HV_GATE、出力電圧VOUT、及び端子T1を流れる出力電流IOUTの波形例を示すタイミングチャートである。
【0029】
半導体装置1Aが高速スルーレート製品である場合、ディスチャージ回路によるディスチャージ電流(MOS電界効果トランジスタM8のドレイン電流)は、半導体装置1Aが非高速スルーレート製品である場合と比較して大きくなるように設計される。これにより、MOS電界効果トランジスタM3がオンからオフに切り替わる際の出力電圧VOUTのスルーレートが大きくなる。つまり、MOS電界効果トランジスタM3がオンからオフに切り替わる際の出力電圧VOUTの変化が急峻になる。
【0030】
しかしながら、出力電圧VOUTの変化が急峻になると、MOS電界効果トランジスタM4のドレイン-ゲート間の容量結合が強くなる。その結果、
図3に示すように結合電流Icpが流れて、イネーブル信号CLAMP_ENが上昇する。イネーブル信号CLAMP_ENがロジック回路LGC1のレベル判定閾値以上になると、マスク回路によってディスチャージ回路が非動作になってしまう。
【0031】
ディスチャージ回路が非動作になると、出力電圧VOUTの変化が停まり、MOS電界効果トランジスタM4のドレイン-ゲート間の容量結合が解除される。その結果、ディスチャージ回路の動作が再開され、出力電圧VOUTの変化が再び急峻になり、MOS電界効果トランジスタM4のドレイン-ゲート間の容量結合が再び強くなる。
【0032】
上記のような動作が繰り返されることによって、
図4に示すように出力電圧VOUTにチャタリングが発生してしまう。なお、
図4は、半導体装置1Aにおける、入力信号IN、ゲート信号GATE、ゲート信号HV_GATE、及び出力電圧VOUTの波形例を示すタイミングチャートである。
【0033】
<実施形態>
図5は、半導体装置を備えた電子機器の実施形態を示す図である。本実施形態の電子機器10Bは、半導体装置1Bと、インダクタL1と、直流電源VS1及びVS2と、を備える。
【0034】
半導体装置1Bは、上述した半導体装置1Aと同様に、インダクタL1とグラウンド電圧との間を導通/遮断するローサイドスイッチIC(IPDの一種)である。半導体装置1Bは、半導体装置1Aが抱える上記の課題を解決することができる半導体装置である。
【0035】
半導体装置1Bは、半導体装置1Aからアクティブクランプ回路ACLP1Aが取り除かれ、アクティブクランプ回路ACLP1Aの代わりにアクティブクランプ回路ACLP1Bが設けられた構成である。
【0036】
アクティブクランプ回路ACLP1Bは、アクティブクランプ回路ACLP1AにダイオードD4、MOS電界効果トランジスタM9~M11、及びインバータINV1が追加された構成である。MOS電界効果トランジスタM10及びM11は、MOS電界効果トランジスタM4のドレイン-ゲート間容量を流れる電流を流す電流経路LN1に設けられる。
【0037】
ダイオードD4のアノード、PチャネルのMOS電界効果トランジスタM9のドレイン、及びPチャネルのMOS電界効果トランジスタM10のゲートは、ダイオードD2のアノード及び抵抗R3の第1端に接続される。ダイオードD4のカソード並びにMOS電界効果トランジスタM9のソース及びバックゲートは、MOS電界効果トランジスタM4のゲート並びにMOS電界効果トランジスタM10のソース及びバックゲートに接続される。
【0038】
MOS電界効果トランジスタM10のドレインは、NチャネルのMOS電界効果トランジスタM11のドレインに接続される。MOS電界効果トランジスタM11のソース及びバックゲートは端子T2に接続される。
【0039】
インバータINV1の入力端は、抵抗R3の第2端、ツェナーダイオードD3のカソード、及びMOS電界効果トランジスタM5のドレインに接続される。インバータINV1の出力端は、MOS電界効果トランジスタM9及びM11の各ゲートに接続される。
【0040】
図6は、半導体装置1Bにおける、入力信号IN、ゲート信号GATE、イネーブル信号CLAMP_EN、ゲート信号HV_GATE、出力電圧VOUT、電流経路LN1を流れる吸収電流Iabs、抵抗R3を流れる検出電流Idet、出力電流IOUTの波形例を示すタイミングチャートである。
【0041】
ここで、
図6を参照して、半導体装置1Bの動作について説明する。
【0042】
入力信号INがHIGHレベルからLOWレベルから切り替わった後であって且つ出力電圧VOUTが上昇する前である第1タイミングTM1では、出力電圧VOUTがLOWレベルであるため、インバータINV1の入力端及びMOS電界効果トランジスタM9のゲートにLOWレベルの信号が供給され、インバータINV1からMOS電界効果トランジスタM9及びM11の各ゲートにHIGHレベルの信号が供給される。したがって、第1タイミングTM1では、
図7に示すように、MOS電界効果トランジスタM9がオフになり、MOS電界効果トランジスタM10がオフになり、MOS電界効果トランジスタM11がオンになる。
【0043】
第1タイミングTM1では、吸収電流Iabs、検出電流Idetともに零である。
【0044】
出力電圧VOUTの急峻な変化によってMOS電界効果トランジスタM4のドレイン-ゲート間の容量結合が強くなる第2タイミングTM2では、
図8に示すように結合電流Icpが流れる。
【0045】
MOS電界効果トランジスタM4のドレイン-ゲート間の容量が結合電流Icpによってチャージされることで、MOS電界効果トランジスタM4のゲート信号(ゲート電圧)HV_GATEが上昇する。これにより、ダイオードD4のカソードに印加される電圧HV_GATEがダイオードD4のアノードに印加される電圧PRE_HV_GATEより高くなるので、結合電流Icpは抵抗R3側に流れない。
【0046】
そして、ダイオードD4の両端電位差VzがMOS電界効果トランジスタM10の閾値電圧を超えると、
図8に示すようにMOS電界効果トランジスタM10がオンになる。その結果、結合電流Icpは、電流経路LN1に吸収されて吸収電流Iabsとなって端子T2に向かって流れる。
【0047】
出力電圧VOUTがクランパによって規定されるクランプ電圧以上になる第3タイミングTM3では、
図9に示すようにツェナーダイオードD1及びダイオードD2を含むクランパに電流が流れ、ダイオードD4のアノードに印加される電圧PRE_HV_GATE及びロジック回路LGC1に供給される電圧(イネーブル信号)CLAMP_ENが上昇する。
【0048】
さらに電圧(イネーブル信号)CLAMP_ENが上昇して電圧(イネーブル信号)CLAMP_ENがHIGHレベルになる第4タイミングTM4では、MOS電界効果トランジスタM9及びM11の各ゲートに供給される電圧がLOWレベルになるため、
図10に示すようにMOS電界効果トランジスタM9がオンになり、MOS電界効果トランジスタM11がオフになる。MOS電界効果トランジスタM9がオンになることで、MOS電界効果トランジスタM10がオフになる。
【0049】
MOS電界効果トランジスタM9がオンになることで、MOS電界効果トランジスタM4のゲートをディスチャージする経路が確保される。また、MOS電界効果トランジスタM9がオフになることで、電流経路LN1が遮断され、吸収電流Iabsが零になる。電圧(イネーブル信号)CLAMP_ENがHIGHレベルになるため、ロジック回路LGC1及びMOS電界効果トランジスタM6を含むマスク回路は、電圧(イネーブル信号)CLAMP_ENひいてはダイオードD4のアノード電圧に応じてディスチャージ回路を非動作にする。ディスチャージ回路が非動作になると、出力電圧VOUTの変化が停まり、MOS電界効果トランジスタM4のドレイン-ゲート間の容量結合が解除される。
【0050】
第4タイミングTM4におけるアクティブクランプ回路ACLP1Bは、
図1で示されているアクティブクランプ回路ACLP1Aと等価である。
【0051】
MOS電界効果トランジスタM9を含む経路によってMOS電界効果トランジスタM4のゲートがチャージされてMOS電界効果トランジスタM4がオンになる第5タイミングTM5では、
図11に示すようにMOS電界効果トランジスタM3のゲートをチャージする電流Icrgが流れる。
【0052】
そして、出力電圧VOUTが安定している第6タイミングTM6では、電圧PRE_HV_GATEが安定しているため、
図12に示すようにMOS電界効果トランジスタM9のソース-ドレイン間に電流が流れない。
【0053】
アクティブクランプ回路ACLP1Bでは、ロジック回路LGC1に供給される電圧(イネーブル信号)CLAMP_ENがMOS電界効果トランジスタM4のドレイン-ゲート間の容量結合の影響を受けて上昇することはない。したがって、半導体装置1Bは、アクティブクランプ時に出力電圧VOUTのチャタリングが発生することを防止できる。
【0054】
<第1変形例>
図13は、半導体装置を備えた電子機器の第1変形例を示す図である。第1変形例の電子機器10Cは、半導体装置1Cと、インダクタL1と、直流電源VS1及びVS2と、を備える。
【0055】
半導体装置1Cは、上述した半導体装置1Bと同様に、インダクタL1とグラウンド電圧との間を導通/遮断するローサイドスイッチIC(IPDの一種)である。
【0056】
半導体装置1Cは、半導体装置1Bからアクティブクランプ回路ACLP1Bが取り除かれ、アクティブクランプ回路ACLP1Bの代わりにアクティブクランプ回路ACLP1Cが設けられた構成である。
【0057】
アクティブクランプ回路ACLP1Cは、アクティブクランプ回路ACLP1BにダイオードD5が追加された構成である。ダイオードD5は、ダイオードD4と逆方向に配置される。つまり、ダイオードD5のカソードはダイオードD4のアノードに接続され、ダイオードD5のアノードはMOS電界効果トランジスタM9を介してダイオードD4のカソードに接続される。
【0058】
また、半導体装置1Cは、n型の半導体基板SUB1(
図14参照)を備える。
図14に示すように、n型の半導体基板SUB1に形成されるMOS電界効果トランジスタM9は、寄生ダイオードPD1と、寄生NPNトランジスタPM1と、寄生PNPトランジスタPM2と、を含む。したがって、上述した実施形態のようにダイオードD5が設けられない構成では、第5タイミングTM5(
図5参照)において、寄生ダイオードPD1に電流が流れることで、寄生PNPトランジスタPM1がオンになるおそれがあり、寄生PNPトランジスタPM1及び寄生NPNトランジスタPM2によって構成される寄生サイリスタもオンになるおそれがある。
【0059】
また、半導体装置1CのようにダイオードD5が設けられる構成であれば、MOS電界効果トランジスタM9の寄生素子がオンすることを防止することができる。
【0060】
なお、半導体装置1Cでは、MOS電界効果トランジスタM9のゲートチャージはダイオードD4を介して行うことができ、MOS電界効果トランジスタM9のゲートディスチャージはMOS電界効果トランジスタM9及びダイオードD5を介して行うことができる。
【0061】
<第2変形例>
図15は、半導体装置を備えた電子機器の第2変形例を示す図である。第2変形例の電子機器10Dは、半導体装置1Dと、インダクタL1と、直流電源VS1及びVS2と、を備える。
【0062】
半導体装置1Dは、上述した半導体装置1Bと同様に、インダクタL1とグラウンド電圧との間を導通/遮断するローサイドスイッチIC(IPDの一種)である。
【0063】
半導体装置1Dは、半導体装置1Bからアクティブクランプ回路ACLP1Bが取り除かれ、アクティブクランプ回路ACLP1Bの代わりにアクティブクランプ回路ACLP1Dが設けられた構成である。
【0064】
アクティブクランプ回路ACLP1Dは、アクティブクランプ回路ACLP1Bに分割回路DIV1及びDIV2が追加された構成である。
【0065】
分割回路DIV1は、抵抗R4、抵抗R5、ツェナーダイオードD6、及びダイオードD7の直列回路である。抵抗R4の第1端は、ダイオードD4のアノードに接続される。抵抗R4の第2端は、MOS電界効果トランジスタM9のドレイン、MOS電界効果トランジスタM10のゲート、及び抵抗R5の第1端に接続される。抵抗R5の第2端は、ツェナーダイオードD6のカソードに接続される。ツェナーダイオードD6のアノードは、ダイオードD7のアノードに接続される。ダイオードD7のカソードは、端子T2に接続される。
【0066】
分割回路DIV2は、抵抗R6、抵抗R7、ツェナーダイオードD8、及びダイオードD9の直列回路である。抵抗R6の第1端は、ダイオードD4のカソードに接続される。抵抗R6の第2端は、MOS電界効果トランジスタM9及びM10の各ソース及び各バックゲートと、抵抗R7の第1端に接続される。抵抗R7の第2端は、ツェナーダイオードD8のカソードに接続される。ツェナーダイオードD8のアノードは、ダイオードD9のアノードに接続される。ダイオードD9のカソードは、端子T2に接続される。
【0067】
分割回路DIV1及びDIV2によって、ゲート信号HV_GATEがMOS電界効果トランジスタM9~M11の耐圧を超える場合でもMOS電界効果トランジスタM9~M11を適切に保護することができる。
【0068】
<車両への適用>
図16は、車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、バッテリから電力供給を受けて動作する種々の電子機器を搭載している。
【0069】
車両Xには、エンジン車のほか、電動車(BEV[battery electric vehicle]、HEV[hybrid electric vehicle]、PHEV/PHV(plug-in hybrid electric vehicle/plug-in hybrid vehicle]、又は、FCEV/FCV(fuel cell electric vehicle/fuel cell vehicle]などのxEV)も含まれる。
【0070】
車両Xは、例えば先に説明した電子機器10B~10Dの少なくとも一つを搭載することができる。
【0071】
<その他>
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。これまでに説明してきた各種の実施形態は、矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。
【0072】
<付記>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0073】
本開示の半導体装置(1B、1C、1D)は、出力電圧が印加され負荷(L1)に接続されるように構成された第1端子(T1)と前記出力電圧より低い電圧が印加されるように構成された第2端子(T2)との間に接続されるように構成された第1スイッチ素子(M3)と、前記第1スイッチ素子の第1端-第2端間電圧をクランプ電圧以下に制限するように構成されたアクティブクランプ回路(ACLP1B、ACLP1C、ACLP1D)と、前記第1スイッチ素子の制御端をディスチャージするように構成されたディスチャージ回路(CS1、M7、M8)と、マスク回路(LGC1、M6)と、第1ダイオード(D4)と、電流経路(LN1)と、を備え、前記アクティブクランプ回路は、第2スイッチ素子(M4)と、前記第2スイッチ素子の第1端-制御端間電圧をクランプするように構成されたクランパ(D1、D2)と、を含み、前記マスク回路は、前記第1ダイオードのアノード電圧に応じて前記ディスチャージ回路を非動作にするように構成され、前記電流経路は、前記第2スイッチ素子の第1端-制御端間容量を流れる電流を流すように構成されている構成(第1の構成)である。
【0074】
上記第1の構成の半導体装置において、前記第1ダイオードに並列接続され、前記第1ダイオードのアノード電圧に応じて制御される第3スイッチ素子(M9)をさらに備える構成(第2の構成)であってもよい。
【0075】
上記第1又は第2の構成の半導体装置において、前記電流経路は、前記第2スイッチ素子の第1端-制御端間容量に電流が流れたときにオンになる第4スイッチ素子(M10)を含む構成(第3の構成)であってもよい。
【0076】
上記第1~第3いずれかの構成の半導体装置において、前記電流経路は、前記第1ダイオードのアノード電圧に応じて前記電流経路を遮断にするように構成された第5トランジスタ(M11)を含む構成(第4の構成)であってもよい。
【0077】
上記第2~第4いずれかの構成の半導体装置において、n型の半導体基板(SUB1)をさらに備え、前記第3スイッチ素子に直列接続され、前記第1ダイオードと逆方向の第2ダイオードをさらに備える構成(第5の構成)であってもよい。
【0078】
上記第2~第5いずれかの構成の半導体装置において、前記第2スイッチ素子の制御端電圧を分圧して前記第3スイッチ素子の第1端に供給するように構成された第1分圧回路と、前記第1ダイオードのアノード電圧を分圧して前記第3スイッチ素子の第2端に供給するように構成された第2分圧回路と、をさらに備える構成(第6の構成)であってもよい。
【0079】
本開示の電子機器(10B、10C、10D)は、上記第1~第6いずれかの構成である半導体装置と、前記負荷である誘導性負荷と、を備える構成(第7の構成)である。
【0080】
本開示の車両(X)は、上記第7の構成である電子機器を備える構成(第8の構成)である。
【符号の説明】
【0081】
1A~1D 半導体装置
10A~10D 電子機器
ACLP1A~ACLP1D アクティブクランプ回路
CS1 電流源
D1、D3、D6、D8 ツェナーダイオード
D2、D4、D5、D7、D9 ダイオード
DIV1、DIV2 分圧回路
INV1 インバータ
L1 インダクタ
LGC1 ロジック回路
M1~M11 MOS電界効果トランジスタ
PD1 寄生ダイオード
PM1 寄生PNPトランジスタ
PM2 寄生NPNトランジスタ
R1~R7 抵抗
SUB1 n型の半導体基板
T1~T4 端子
VS1、VS2 直流電源
X 車両