(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092670
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】手装着用枕
(51)【国際特許分類】
A47G 9/10 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
A47G9/10 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208775
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】522182301
【氏名又は名称】株式会社イノバエルダ
(74)【代理人】
【識別番号】100091269
【弁理士】
【氏名又は名称】半田 昌男
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 能久
【テーマコード(参考)】
3B102
【Fターム(参考)】
3B102AA02
3B102AB07
(57)【要約】
【課題】例えば列車、飛行機、自動車等で肘掛けを有する座席や椅子に座ったまま快適な睡眠をとることができる手装着用枕を提供する。
【解決手段】この手装着用枕は、使用者の頭部の一部を支える枕部10と、剛性を有する板状部材21とその板状部材21を保持する保持部22とを有し、板状部材21が使用者の手のひら側の手首の部分からその手のひらに向かってその手のひら側の指の部分までに位置するように配置される、板状部材21の上部に枕部10を着脱自在に取り付けるための枕取着部20と、枕取着部20の下部に設けられた、枕取着部20を使用者の手首に取り付けるためのベルト部30と、使用者の手の甲側の手首の部分とベルト部30との間に位置するようにベルト部30に設けられた、ベルト部30が使用者の手首に及ぼす圧力を緩和するためのクッション部40とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の手に装着して使用される手装着用枕であって、
前記使用者の頭部の一部を支える枕部と、
剛性を有する板状部材とその板状部材を保持する保持部とを有し、前記板状部材が前記使用者の手のひら側における前腕部のうち少なくとも手首の部分からその手のひらに向かって短くてもその手のひらの中央までに位置するように配置される、前記板状部材の上部に対応する前記保持部の部分に前記枕部を取り付けるための枕取着部と、
前記使用者の前腕部のうち少なくとも手首の部分に対応する前記枕取着部の部分に設けられた、前記使用者の前腕部の全部又はその一部を締め付けることにより前記枕取着部を前記使用者の前腕部の全部又はその一部に取り付けるためのベルト部と、
を具備することを特徴とする手装着用枕。
【請求項2】
前記板状部材は、前記使用者が前記枕部で頭部の一部を支えたときに、その頭部からの圧力を前記使用者の手のひらの下部を支点として前記ベルト部に伝達することを特徴とする請求項1記載の手装着用枕。
【請求項3】
前記板状部材及び前記ベルト部は、弾性を有することを特徴とする請求項1又は2記載の手装着用枕。
【請求項4】
前記使用者の手の甲側における前腕部のうち少なくとも手首の部分と前記ベルト部との間に位置するように前記ベルト部に設けられた、前記使用者が前記枕部で頭部の一部を支えたときに前記ベルト部が前記使用者の前腕部のうち少なくとも手首に及ぼす圧力を緩和するためのクッション部をさらに具備することを特徴とする請求項1又は2記載の手装着用枕。
【請求項5】
前記板状部材は、前記保持部に着脱自在に保持されていることを特徴とする請求項1又は2記載の手装着用枕。
【請求項6】
前記枕部は、前記板状部材の上部に対応する前記保持部の部分に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の手装着用枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば肘掛けを有する座席や椅子に座ったまま睡眠をとる場合に、手に装着して使用される手装着用枕に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、列車、飛行機、自動車等において首枕を使用して睡眠をとる者が増えている。この首枕は、略コ字状に形成されており、首の周りに装着して使用される。しかし、首枕はかさばり、持ち運びに不便であるという問題がある。また、首枕が首や肩に接触する面積は大きいので、使用時に使用者に不快感を与えてしまうことがある。一方、最近では、手や腕等に装着して使用する持ち運び可能な枕が多数提案されている。具体的に、このような枕としては、前腕及び手に装着するタイプのもの(例えば、特許文献1参照。)、前腕に取り付けるタイプのもの(例えば、特許文献2参照。)、手に取り付けるタイプのもの(例えば、特許文献3及び4参照。)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8839472号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0117939号明細書
【特許文献3】米国特許第6526612号明細書
【特許文献4】登録実用新案第3039594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば列車、飛行機、自動車等で肘掛けを有する座席や椅子に着座したまま睡眠をとる場合には、上述した従来の持ち運び可能な枕を使用しても、快適な睡眠をとることができないという問題があった。例えば、上記特許文献1や特許文献2に記載された枕を使用する場合には、頭部を腕の位置に持っていく必要がある。このため、座席や椅子に座った状態でこれらの枕を使用しようとすると、使用者は、腕を前側のテーブル等の上においてうつ伏せ寝のように体を前傾させざるを得なくなり、したがって、腰等に負担をかけることになる。また、上記特許文献3や特許文献4に記載された枕を使用する場合には、頭部を載せるクッションや枕本体が腕ではなく手の位置に取り付けられているので、使用者は前傾姿勢になることを避けることができる。しかしながら、使用者が座席や椅子に着座して肘をその座席や椅子に設けられた肘掛けに置き、手のひらに取り付けられたクッションや枕本体で頭部を支えようとすると、頭部からの圧力により手及び手首に大きな負担を与えることになる。このため、使用者が従来の持ち運び可能な枕を飛行機や自動車等の肘掛けを有する座席や椅子に座った状態で使用しても、快適な睡眠をとることは困難であった。
【0005】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、例えば列車、飛行機、自動車等で肘掛けを有する座席や椅子に座ったまま快適な睡眠をとることができる手装着用枕を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明は、使用者の手に装着して使用される手装着用枕であって、使用者の頭部の一部を支える枕部と、剛性を有する板状部材とその板状部材を保持する保持部とを有し、板状部材が使用者の手のひら側における前腕部のうち少なくとも手首の部分からその手のひらに向かって短くてもその手のひらの中央までに位置するように配置される、板状部材の上部に対応する保持部の部分に枕部を取り付けるための枕取着部と、使用者の前腕部のうち少なくとも手首の部分に対応する枕取着部の部分に設けられた、使用者の前腕部の全部又はその一部を締め付けることにより枕取着部を使用者の前腕部の全部又はその一部に取り付けるためのベルト部と、を具備することを特徴とするものである。
【0007】
このように、本発明に係る手装着用枕では、枕取着部の保持部によって剛性を有する板状部材が保持され、その板状部材が使用者の手のひら側における前腕部のうち少なくとも手首の部分からその手のひらに向かって短くてもその手のひらの中央までに位置するように枕取着部が配置されると共に、その板状部材の上部に対応する保持部の部分に枕部が取り付けられていることにより、使用者は、その手装着用枕の枕取着部に取り付けられた枕部で頭部の一部、例えば下顎、頬又は側頭部を支えて睡眠をとることができる。このとき、枕取着部の板状部材が枕部と手との間に配置されており、頭部からの圧力をその板状部材で受けることができる。具体的に、板状部材は、使用者が枕部で頭部の一部を支えたときに、その頭部からの圧力を使用者の手のひらの下部を支点としてベルト部に伝達することができる。すなわち、板状部材は、手のひらの下部(例えば手根骨)を支点とした「てこ」としての役割を果たす。このため、板状部材の上部が頭部からの圧力を受けて押されたときに、手のひらの下部が支点として働き、板状部材の下部が頭部からの圧力の方向と逆方向に移動して、その板状部材の運動エネルギーの一部をベルト部に伝達する。このように、頭部からの圧力は、支点としての手のひらの下部にかかるだけではなく、ベルト部にも分散して伝えることができるので、頭部からの圧力によって手及び、前腕部のうち少なくとも手首にかかる負荷を軽減することができる。したがって、使用者は、本発明に係る手装着用枕を使用すると、手及び、前腕部のうち少なくとも手首に大きな負担をかけることなく、快適な睡眠をとることができる。
【0008】
また、この場合、板状部材としては、剛性とともに弾性を有するものを用い、ベルト部としても弾性を有するものを用いることが望ましい。これにより、板状部材に板バネのような弾性機能を持たせることができ、その板状部材の弾性力を使用者の頭部に伝えることができるとともに、ベルト部にゴムのような弾性機能を持たせることができ、そのベルト部の弾性力を板状部材を介して使用者の頭部に伝えることができる。このため、枕部そのものに反発性(弾性)を与える必要性が低減し、枕部としては、例えば柔らかさを重視した構造のもの等、簡易な構造のものを用いることができる。
【0009】
また、本発明に係る手装着用枕は、使用者の手の甲側における前腕部のうち少なくとも手首の部分とベルト部との間に位置するようにベルト部に設けられたクッション部をさらに具備することが望ましい。これにより、枕部が頭部の一部を支え、頭部の重みが板状部材の上部にかかったときに、板状部材の下部がベルト部を引っ張ることによりベルト部が使用者の前腕部のうち少なくとも手首に及ぼす圧力をクッション部で緩和することができる。
【0010】
更に、本発明に係る手装着用枕では、板状部材は、保持部に着脱自在に保持されていることが望ましい。板状部材が保持部に着脱自在に保持されていることにより、本発明に係る手装着用枕が汚れた場合、板状部材を保持部から取り外せば、枕部、板状部材以外の枕取着部、ベルト部を洗濯機等で洗濯可能である。
【0011】
また、本発明に係る手装着用枕では、枕部は、板状部材の上部に対応する保持部の部分に着脱自在に取り付けられていることが望ましい。これにより、本発明に係る手装着用枕を使用しないときには、枕部を枕取着部から取り外して、手装着用枕を分解することにより、容易に持ち運ぶことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る手装着用枕は、使用者の頭部の一部を支える枕部と、剛性を有する板状部材とその板状部材を保持する保持部とを有し、板状部材が使用者の手のひら側における前腕部のうち少なくとも手首の部分からその手のひらに向かって短くてもその手のひらの中央までに位置するように配置される、板状部材の上部に対応する保持部の部分に枕部を取り付けるための枕取着部と、使用者の前腕部のうち少なくとも手首の部分に対応する枕取着部の部分に設けられた、使用者の前腕部の全部又はその一部を締め付けることにより枕取着部を使用者の前腕部の全部又はその一部に取り付けるためのベルト部とを具備する。これにより、使用者は、本発明に係る手装着用枕の枕取着部に取り付けられた枕部で頭部の一部、例えば下顎、頬又は側頭部を支えて睡眠をとるときに、頭部からの圧力を枕取着部の板状部材で受けることができる。このため、頭部からの圧力によって手及び、前腕部のうち少なくとも手首にかかる負荷を軽減することができる。したがって、使用者は、本発明に係る手装着用枕を使用すると、手及び、前腕部のうち少なくとも手首に大きな負担をかけることなく、快適な睡眠をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1Aは本発明の一実施形態である手装着用枕の概略表面図、
図1Bはその手装着用枕の概略裏面図である。
【
図2】
図2Aは本実施形態の手装着用枕における枕部の概略斜視図、
図2Bはその枕部の概略底面図である。
【
図3】
図3Aは本実施形態の手装着用枕における枕取着部及びベルト部の概略表面図、
図3Bはその枕取着部及びベルト部の概略裏面図である。
【
図4】
図4Aは本実施形態の手装着用枕における板状部材の概略平面図、
図4Bはその板状部材の概略側面図である。
【
図5】
図5は本実施形態の手装着用枕におけるクッション部の概略斜視図である。
【
図6】
図6は本実施形態の手装着用枕を使用者の手に装着した状態を示す図である。
【
図7】
図7は本実施形態の手装着用枕の使用状況を説明するための図である。
【
図8】
図8Aは変形例である板状部材の概略平面図、
図8Bはその板状部材の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための形態について説明する。
図1Aは本発明の一実施形態である手装着用枕の概略表面図、
図1Bはその手装着用枕の概略裏面図である。ここで、手装着用枕の表側とは、その手装着用枕を手に装着したときに手のひらと接する側をいう。尚、一般に、「手」には、肩から先の部分という広義の意味と、手首を含まず、手首から先の部分という狭義の意味とがある。本明細書では、「手」を狭義の意味で使用することにする。また、本明細書において「前腕部」とは、腕のうち肱から手首までの部分を意味する。
【0015】
本実施形態の手装着用枕は、例えば使用者が列車、飛行機、自動車等で肘掛けを有する座席や椅子に座ったまま睡眠をとる場合に、使用者の手(及び手首)に装着して使用されるものである。この手装着用枕は、
図1に示すように、枕部10と、枕取着部20と、ベルト部30と、クッション部40とを備える。本実施形態では、手装着用枕を右手に装着する場合について説明する。
【0016】
枕部10は、使用者の頭部の一部を支えるものであり、枕取着部20の上部に取り付けられる。
図2Aは本実施形態の手装着用枕における枕部10の概略斜視図、
図2Bはその枕部10の概略底面図である。例えば、この枕部10を上から見たときの形状は略長方形であり、その長辺の長さは約200mm、短辺の長さは約80mmである。また、枕部10の高さは約30mmである。枕部10は、通常、弾性又は緩衝性を有する材料を用いて作製されている。特に、枕部10の材料としては軽量な材料を用いることが望ましい。例えば、枕部10の材料として、ウレタンを用いることができる。さらに、
図2Bに示すように、枕部10の底面には、枕取着部20を挿入するためのポケット11が形成されている。
【0017】
枕取着部20は、枕部10を着脱自在に取り付けるためのものである。また、この枕取着部20は、手首が手のひら側に可動するのを規制する役割をも果たす。
図3Aは本実施形態の手装着用枕における枕取着部20及びベルト部30の概略表面図、
図3Bはその枕取着部20及びベルト部30の概略裏面図である。
図3に示すように、上から見たときの枕取着部20の形状は略長方形状である。例えば、枕取着部20の長さは約190mm、その幅は約60mmである。この枕取着部20は、使用者の手のひら側の手首の部分からその手のひらに向かってその手に配置される。使用者の指の部分に対応する枕取着部20の上部を、枕部10のポケット11内に挿入することにより、枕部10が枕取着部20に着脱自在に取り付けられる。
【0018】
また、枕取着部20は、
図1及び
図3に示すように、剛性を有する板状部材21と、その板状部材21を内部に保持する保持部22とを有する。保持部22は、通気性及び伸縮性(又は柔軟性)を有する材料で作製されている。保持部22の内部は、板状部材21を挿入して保持するためのポケットになっている。具体的に、使用者の手のひらが接する側である保持部22の表面側にポケットが設けられており、板状部材21はそのポケットに挿入される。このように、本実施形態では、板状部材21は、保持部22の表面側に着脱自在に保持されている。
図1及び
図3では、保持部22のポケットに収容された板状部材21を波線で示している。尚、ポケットは、保持部22の裏面側に設けることも可能である。
【0019】
図4Aは本実施形態の手装着用枕における板状部材21の概略平面図、
図4Bはその板状部材21の概略側面図である。
図4Aに示すように、上から見たときの板状部材21の形状は細長い略長方形状であり、例えば、その板状部材11の長さは約165mm、その幅は約50mmである。また、板状部材21を側面から見ると、その板状部材21は、
図4Bに示すように、略直線状に形成されている。ここで、板状部材21は、保持部22のポケットに収容される。板状部材21としては、ある程度の剛性を有するものを用いている。具体的に、板状部材21としては、例えばステンレス、アルミニウム、硬質プラスチック、木材、ゴム、樹脂、又は、エラストマー等の材料で作製されたものを用いることができる。特に、本実施形態の手装着用枕では、板状部材21として、剛性とともに弾性をも有するものを用いている。このため、板状部材21がある程度の弾性を有するように、その板状部材21の材料を選定するとともに、板状部材21の厚さ等のサイズを決定している。剛性ととともに弾性を有する板状部材21の例としては、ステンレス製の板バネを挙げることができる。本実施形態の手装着用枕を使用者の手に装着するときには、板状部材21は、使用者の手のひら側の手首の部分からその手のひらに向かってその手のひら側の指(例えば、人差し指、中指、薬指)の部分までに位置することになる。そして、板状部材21の上部に対応する保持部22の部分に、枕部10が取り付けられる。ここで、板状部材21の上部とは、使用者の手首側ではなく、指の側に位置する部分をいう。
【0020】
ベルト部30は、
図1及び
図3に示すように、使用者の手首の部分に対応する枕取着部20の下部に設けられている。ここでは、ベルト部30を保持部22と一体的に構成している。具体的に、ベルト部30は、
図3Aに示すように、枕取着部20の下部から左方向に延びている。例えば、ベルト部30の長さは約300mm、その幅は約70mmである。一方、
図3Aに示すように、ベルト部30の表側であってその先端部には、フックタイプの面ファスナー31が縫い付けられている。そして、
図3Bに示すように、ベルト部30の裏側であって先端部以外の所定部分には、ループタイプの面ファスナー32が縫い付けられている。ベルト部30は、それを用いて使用者の手首を締め付けることにより、枕取着部20を使用者の手及び手首に取り付ける役割を果たす。また、本実施形態では、ベルト部30として弾性(伸縮性)を有するものを用いている。例えば、ベルト部30としては、ポリプロピレン、ポリウレタン、シリコンゴム等の材料で作製されたものを用いることができる。
【0021】
クッション部40は、
図1に示すように、ベルト部30に設けられる。
図5は本実施形態の手装着用枕におけるクッション部40の概略斜視図である。
図5に示すように、このクッション部40は環状に形成されている。クッション部40は、その環状部分の中にベルト部30に通すことにより、ベルト部30に着脱自在に取り付けられる。クッション部40の材料としては、一般的なクッションに使われるものであればどのようなものでもよいが、ここでは、ウレタンを用いている。クッション部40は、本実施形態の手装着用枕の使用時に使用者の手の甲側の手首の部分とベルト部30との間に配置されて、ベルト部30が使用者の手首に及ぼす圧力を緩和する役割を果たす。
【0022】
次に、本実施形態の手装着用枕の装着手順について説明する。最初に、使用者は、本実施形態の手装着用枕を組み立てる。具体的に、使用者は、枕部10及びクッション部40をそれぞれ、枕取着部20及びベルト部30に取り付ける。すなわち、使用者は、枕取着部20の上部を枕部10のポケット11に挿入することにより、枕部10を枕取着部20の上部に取り付ける。また、使用者は、クッション部40の環状部分をベルト部30に通すことにより、クッション部40をベルト部30に取り付ける。こうして、本実施形態の手装着用枕の組み立てが完了すると、
図1に示す手装着用枕が得られる。
【0023】
その後、使用者は、本実施形態の手装着用枕を自分の右手に装着する。具体的に、使用者は、枕部10(板状部材21の上部)が枕取着部20を介して手のひら側の指の部分に位置するように、手及び手首を枕取着部20の上に配置する。このとき、板状部材21の下部は使用者の手のひら側の手首の部分に位置することになる。次に、使用者は、ベルト部30を手首に巻いてしっかりと締め付けた後、そのベルト部30の先端部の面ファスナー31を面ファスナー32と連結する。このとき、使用者は、クッション部40が手の甲側の手首の部分とベルト部30との間に位置するように、すなわち、手首がクッション部40と枕取着部20の下部とによって挟まれるように、クッション部40の位置を調整する。こうして、ベルト部30が使用者の手首に取り付けられると、本実施形態の手装着用枕を使用者の手(及び手首)に装着する作業が完了する。
図6に本実施形態の手装着用枕を使用者の手に装着した状態を示す。
【0024】
次に、本実施形態の手装着用枕の使用例について説明する。
図7は本実施形態の手装着用枕の使用状況を説明するための図である。ここでは、
図7の例に示すように、使用者が肘掛けを有する座席や椅子に着座して本実施形態の手装着用枕を使用する場合を考える。
【0025】
使用者は、まず、本実施形態の手装着用枕を装着した手の側の肘を、座席又は椅子の肘掛けにおく。次に、使用者は、その手装着用枕の枕取着部20に取り付けられた枕部10で頭部の一部、例えば下顎、頬又は側頭部を支える。このとき、枕取着部20の内部には剛性を有する板状部材21が保持されており、その板状部材21が枕部10と手との間に配置されていることにより、頭部からの圧力を板状部材21で受けることができる。具体的に、板状部材21は、使用者が枕部10で頭部の一部を支えたときに、その頭部からの圧力を使用者の手のひらの下部を支点としてベルト部30に伝達することができる。すなわち、板状部材21は、手のひらの下部(例えば手根骨)を支点とした「てこ」としての役割を果たす。このため、板状部材21の上部が頭部からの圧力を受けて押されたときに、手のひらの下部が支点として働き、板状部材21の下部が頭部からの圧力の方向と逆方向に移動して、その板状部材21の運動エネルギーの一部をベルト部30に伝達する。このように、頭部からの圧力は、支点としての手のひらの下部にかかるだけではなく、ベルト部30にも分散して伝えることができるので、頭部からの圧力によって手及び手首にかかる負荷を軽減することができる。また、クッション部40が、使用者の手の甲側の手首の部分とベルト部30との間に位置していることにより、枕部10が頭部の一部を支え、頭部の重みが板状部材21の上部にかかったときに、板状部材21の下部がベルト部30を引っ張ることによりベルト部30が使用者の手首に及ぼす圧力をクッション部40で緩和することができる。したがって、使用者は、本実施形態の手装着用枕を用いると、手及び手首に大きな負担をかけることなく、快適な睡眠をとることができる。
【0026】
ここでは、使用者が肘掛けを有する座席や椅子に着座して本実施形態の手装着用枕を使用する場合を説明しているが、本実施形態の手装着用枕の適用例はその場合に限られない。例えば、使用者が机に向かって椅子に着座し、その机の上に本実施形態の手装着用枕を装着した手の側の肘を置いてその手装着用枕を使用する場合でも、使用者は、手及び手首に大きな負担をかけることなく、快適な睡眠をとることができる。
【0027】
また、本実施形態では、枕取着部20の板状部材21としてある程度弾性を有するものを用いているので、頭部の重みが板状部材21の上部にかかったときに、その板状部材21の上部が力点、手の最下部の骨(手根骨)が支点、ベルト部30(又は板状部材21の下端部)が作用点として働き、板状部材21が板バネのような弾性機能を果たす。このため、この板状部材21の弾性力を使用者の頭部に伝えることができる。また、ベルト部30としても弾性(伸縮性)を有するものを用いているので、ベルト部30にゴムのような弾性機能を持たせることができ、そのベルト部30の弾性力を板状部材21を介して使用者の頭部に伝えることができる。したがって、枕部10そのものに反発性(弾性)を与える必要性が低減し、枕部10としては、例えば柔らかさを重視した構造のもの等、簡易な構造のものを用いることができる。
【0028】
尚、板状部材21としては、上述した長さよりもさらに長いもの、例えば、板状部材21の上端が使用者の指先を越えたところに位置するような長さを有するものを用いることができる。このような長い板状部材21を有する手装着用枕を使用しても、使用者の手及び手首には大きな負担がかかることはない。特に、この場合には、指先を越えたところにも板状部材21及び枕部10が存在しているので、使用者は、肘掛けを有する座席や椅子に座った状態で睡眠をとるときに、頸部を大きく湾曲させたり、頭部の位置を大きく下げたりすることなく、その枕部10で頭部の一部を支えることができる。このように使用者は睡眠時に不自然な姿勢をとる必要がなくなる点でも、快適な睡眠をとることができる。
【0029】
本実施形態の手装着用枕は、使用者の頭部の一部を支える枕部と、剛性を有する板状部材とその板状部材を内部に保持する保持部とを有し、板状部材が使用者の手のひら側の手首の部分からその手のひらに向かってその手のひら側の指の部分までに位置するように配置される、板状部材の上部に対応する保持部の部分に枕部を着脱自在に取り付けるための枕取着部と、使用者の手首の部分に対応する枕取着部の下部に設けられた、使用者の手首を締め付けることにより枕取着部を使用者の手首に取り付けるためのベルト部とを具備する。これにより、使用者は、本実施形態の手装着用枕を用いてその枕取着部に取り付けられた枕部で頭部の一部、例えば下顎、頬又は側頭部を支えて睡眠をとるときに、枕取着部の板状部材が枕部と手との間に配置されており、頭部からの圧力をその板状部材で受けることができる。このため、頭部からの圧力によって手及び手首にかかる負荷を軽減することができる。したがって、使用者は、本実施形態の手装着用枕を使用すると、手及び手首に大きな負担をかけることなく、快適な睡眠をとることができる。
【0030】
また、本実施形態の手装着用枕では、板状部材として、剛性とともに弾性(反発性)を有するものを用い、ベルト部としても弾性(伸縮性)を有するものを用いたことにより、板状部材に板バネのような弾性機能を持たせることができ、その板状部材の弾性力(反発力)を使用者の頭部に伝えることができるとともに、ベルト部にゴムのような弾性機能を持たせることができ、そのベルト部の弾性力を板状部材を介して使用者の頭部に伝えることができる。このため、枕部そのものに反発性(弾性)を与える必要性が低減し、枕部としては、例えば柔らかさを重視した構造のもの等、簡易な構造のものを用いることができる。特に、板状部材として、反発性(弾性)の異なる複数の種類のものを予め用意しておくことにより、使用者は、板状部材を選択して、その板状部材から頭部に自分に適した反発力を付与することができる。尚、板状部材及びベルト部のうちいずれか一方だけに弾性(反発性、伸縮性)機能を持たせるようにしてもよい。この場合であっても、使用者の頭部にはその弾性力を十分伝えることが可能である。
【0031】
更に、本実施形態の手装着用枕は、使用者の手の甲側の手首の部分とベルト部との間に位置するようにベルト部に設けられた、ベルト部が使用者の手首に及ぼす圧力を緩和するためのクッション部をも具備している。これにより、枕部が頭部の一部を支え、頭部の重みが板状部材の上部にかかったときに、板状部材の下部がベルト部を引っ張ることによりベルト部が使用者の手首に及ぼす圧力をクッション部で緩和することができる。
【0032】
また、本実施形態の手装着用枕では、板状部材は、使用者の手のひらが接する側である保持部の表面側に着脱自在に保持されている。板状部材が保持部の表面側に保持されていることにより、手装着用枕の使用時に第三者が見ることができる保持部の裏面側にさまざまなデザインを施すことができる。また、板状部材が保持部に着脱自在に保持されていることにより、本実施形態の手装着用枕が汚れた場合、板状部材を保持部から取り外せば、枕部、板状部材以外の枕取着部、ベルト部を洗濯機等で洗濯可能である。
【0033】
また、本実施形態の手装着用枕では、枕部は、使用者の手のひら側の指の部分に対応する枕取着部の上部に着脱自在に取り付けられている。このため、本実施形態の手装着用枕を使用しないときには、使用者は、枕部を枕取着部から取り外して、手装着用枕を分解することにより、容易に持ち運ぶことができる。
【0034】
更に、本実施形態の手装着用枕では、枕部として底面積が広いものを用いることが可能である。この場合、頭部と枕部との接触面積を広くとることができ、頭部が枕部から受ける圧力を小さくすることができるので、使用者は、本実施形態の手装着用枕の使用時に心地よさをより強く感じることができる。
【0035】
尚、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【0036】
例えば、上記の実施形態では、本発明の手装着用枕を右手に装着する場合について説明したが、勿論、本発明の手装着用枕は左手に装着してもよい。
【0037】
上記の実施形態では、枕部として、上から見たときの形状が略長方形であり、その長辺の長さが約200mm、短辺の長さが約80mm、そして、その高さが約30mmであるものを用いた場合について説明したが、枕部としては、さまざまな形状・サイズを有するものを用いることができる。例えば、上から見たときの形状が正方形、円形、瓢箪形等であるような枕部を用いてもよい。
【0038】
また、上記の実施形態では、枕取着部の上部を枕部のポケットに挿入することにより、枕部を枕取着部に着脱自在に取り付ける場合について説明したが、例えばスナップボタン又は面ファスナー等を用いて、枕部を枕取着部に着脱自在に取り付けるようにしてもよい。
【0039】
更に、上記の実施形態では、ベルト部と枕取着部の保持部とが一体的に構成されている場合について説明したが、ベルト部を保持部に着脱自在に取り付けるようにしてもよい。
【0040】
また、上記の実施形態では、枕部が使用者の手のひら側の指の部分に対応する枕取着部の上部に着脱自在に取り付けられている場合について説明したが、枕部を枕取着部の保持部と一体的に構成するようにしてもよい。
【0041】
また、上記の実施形態では、クッション部として環状に形成されたものを用い、クッション部の環状部分をベルト部に通すことにより、クッション部をベルト部に着脱自在に取り付ける場合について説明したが、例えばスナップボタン又は面ファスナー等を用いて、クッション部をベルト部に着脱自在に取り付けるようにしてもよい。
【0042】
更に、上記の実施形態では、枕取着部の板状部材として、側面から見たときの形状が略直線状であるものを用いた場合について説明した。しかしながら、枕部として柔軟性に加えて十分な弾性を有するものを用い、板状部材に弾性を持たせる必要性がない場合にあっては、板状部材としては、
図4に示す形状と異なる形状のものを用いるようにしてもよい。
図8に本発明の手装着用枕において用いられる板状部材の変形例を示す。すなわち、
図8Aは変形例である板状部材の概略平面図、
図8Bはその板状部材の概略側面図である。
図8に示す例では、板状部材21aは、側面から見たときの形状が略S字状に湾曲した形状となっている。これにより、手装着用枕の使用時に板状部材が手のひらの形状にフィットするので、使用者は本発明の手装着用枕を違和感なく手に装着することができる。
【0043】
上記の実施形態では、枕取着部を使用者の手に配置する際、板状部材が使用者の手のひら側の手首の部分からその手のひらに向かってその手のひら側の指の部分までに位置する場合について説明したが、板状部材は、使用者の手のひら側の手首の部分からその手のひらに向かって短くてもその手のひらの中央までに位置していればよい。例えば、板状部材の上端は、使用者の手のひらの中央、その手の指(例えば、人差し指、中指)の付根、又は、使用者の指先を越えたところに位置していてもよい。
【0044】
上記の実施形態では、ベルト部が使用者の手首を締め付けることにより、手装着用枕を手及び手首に装着する場合について説明したが、例えば、板状部材が使用者の手のひら側における前腕部の中間部分からその手のひらに向かって短くてもその手のひらの中央までに位置するように枕取着部を配置し、枕取着部の下部に設けられたベルト部で使用者の前腕部の一部を締め付けることにより、手装着用枕を手、手首及び前腕部に装着するようにしてもよい。また、板状部材の下端は、前腕部の中間部分に限らず、前腕部の肘に近い部分等、前腕部のどのような部分に位置していてもよく、ベルト部は、前腕部の一部に限らず、前腕部の全体を締め付けるものであってもよい。一般に、本発明に係る手装着用枕は、使用者の頭部の一部を支える枕部と、剛性を有する板状部材とその板状部材を保持する保持部とを有し、板状部材が使用者の手のひら側における前腕部のうち少なくとも手首の部分からその手のひらに向かって短くてもその手のひらの中央までに位置するように配置される、板状部材の上部に対応する保持部の部分に枕部を取り付けるための枕取着部と、使用者の前腕部のうち少なくとも手首の部分に対応する枕取着部の部分に設けられた、使用者の前腕部の全部又はその一部を締め付けることにより枕取着部を使用者の前腕部の全部又はその一部に取り付けるためのベルト部とを具備するものであればよい。このような手装着用枕でも、上記の実施形態のものと同様に、使用者が枕部で頭部の一部を支えて睡眠をとるときに、頭部からの圧力をその板状部材で受けることができ、頭部からの圧力によって手、手首及び前腕部にかかる負荷を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明に係る手装着用枕は、使用者の頭部の一部を支える枕部と、剛性を有する板状部材とその板状部材を保持する保持部とを有し、板状部材が使用者の手のひら側における前腕部のうち少なくとも手首の部分からその手のひらに向かって短くてもその手のひらの中央までに位置するように配置される、板状部材の上部に対応する保持部の部分に枕部を取り付けるための枕取着部と、使用者の前腕部のうち少なくとも手首の部分に対応する枕取着部の部分に設けられた、使用者の前腕部の全部又はその一部を締め付けることにより枕取着部を使用者の前腕部の全部又はその一部に取り付けるためのベルト部とを具備する。これにより、使用者は、本発明に係る手装着用枕の枕取着部に取り付けられた枕部で頭部の一部、例えば下顎、頬又は側頭部を支えて睡眠をとるときに、頭部からの圧力を枕取着部の板状部材で受けることができ、頭部からの圧力によって手及び、前腕部のうち少なくとも手首にかかる負荷を軽減することができる。したがって、使用者は、本発明に係る手装着用枕を使用すると、手及び、前腕部のうち少なくとも手首に大きな負担をかけることなく、快適な睡眠をとることができる。それゆえ、本発明は、例えば列車、飛行機、自動車等で肘掛けを有する座席や椅子に腰掛けたまま睡眠をとる場合に使用するのに好適である。
【符号の説明】
【0046】
10 枕部
11 ポケット
20 枕取着部
21,21a 板状部材
22 保持部
30 ベルト部
31,32 面ファスナー
40 クッション部