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特開2024-92671基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092671
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240701BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01L21/304 642C
H01L21/308 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208776
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110003764
【氏名又は名称】弁理士法人OMNI国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 正幸
【テーマコード(参考)】
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
5F043DD10
5F043EE35
5F043EE36
5F157AA66
5F157AB03
5F157AB13
5F157AB34
5F157AB48
5F157AB51
5F157BG75
5F157BH19
5F157CA25
5F157CE73
5F157CF22
(57)【要約】
【課題】基板の表面に形成されたパターンの倒壊を低減又は防止しながら、基板処理のスループットを向上させつつ、基板の表面に付着した液体を除去する基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法を提供する。
【解決手段】本発明の基板処理装置1は、基板Wの表面を処理する基板処理装置であって、基板Wの表面を、第1処理液を用いて薬液処理する薬液処理部31と、昇華性物質及び溶媒を含む第2処理液中に、薬液処理後の複数の基板Wを一括して浸漬させた後、溶媒を乾燥させながら複数の基板Wを一括して取り出し、基板Wの表面に昇華性物質を含む固化膜をそれぞれ形成する固化膜形成部34と、基板Wの表面に形成された固化膜を昇華させて除去する除去部35と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面を処理する基板処理装置であって、
前記基板の表面を、第1処理液を用いて薬液処理する薬液処理部と、
昇華性物質及び溶媒を含む第2処理液中に、前記薬液処理後の複数の前記基板を一括して浸漬させた後、複数の前記基板を起立姿勢で一括して取り出しながら前記溶媒を蒸発させて、前記基板の表面に前記昇華性物質を含む固化膜をそれぞれ形成する固化膜形成部と、
複数の前記基板の表面に形成された前記固化膜を、一括で昇華させて除去する除去部と、
を備える、基板処理装置。
【請求項2】
前記第2処理液は、前記固化膜形成部が有する処理槽部に貯留されており、
前記基板処理装置は、
複数の前記基板を一括して保持した状態で、複数の前記基板を前記処理槽部に対し昇降させることにより、前記第2処理液中に浸漬させ、又は前記第2処理液中から取り出しを行う昇降部を備える、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記薬液処理後の基板の表面を、リンス液を用いて第1リンス処理する第1リンス処理部と、
前記第1リンス処理後の基板の表面を、気体状又は液体状の有機化合物を用いて第2リンス処理する第2リンス処理部と、
をさらに備え、
前記固化膜形成部は、前記第2リンス処理後の基板に対し前記固化膜を形成する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1リンス処理後の複数の前記基板を、前記第2リンス処理部に一括して搬送するまでの間、保管する載置部をさらに備え、
前記載置部は、高湿度の環境下で前記基板を保管する、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の基板処理装置を備える基板処理システムであって、
前記固化膜形成部及び前記除去部が、同一のバッチ処理ユニットに設けられ、又は異なるバッチ処理ユニットにそれぞれ設けられる、基板処理システム。
【請求項6】
前記薬液処理部は、
前記固化膜形成部及び前記除去部と同一のバッチ処理ユニットに設けられ、
又は、前記固化膜形成部及び前記除去部がそれぞれ設けられるバッチ処理ユニットとは別のバッチ処理ユニットに設けられる、請求項5に記載の基板処理システム。
【請求項7】
前記薬液処理部は、枚葉処理ユニットに設けられる、請求項5に記載の基板処理システム。
【請求項8】
基板の表面を処理する基板処理方法であって、
前記基板の表面を、第1処理液を用いて薬液処理する薬液処理工程と、
昇華性物質及び溶媒を含む第2処理液中に、前記薬液処理後の複数の前記基板を一括して浸漬させた後、複数の前記基板を起立姿勢で一括して取り出しながら前記溶媒を蒸発させて、前記基板の表面に前記昇華性物質を含む固化膜をそれぞれ形成する固化膜形成工程と、
複数の前記基板の表面に形成された前記固化膜を、一括で昇華させて除去する除去工程と、
を含む、基板処理方法。
【請求項9】
前記薬液処理後の基板の表面を、リンス液を用いて第1リンス処理する第1リンス処理工程と、
前記第1リンス処理後の基板の表面を、液体状又は気体状の有機化合物を用いて第2リンス処理する第2リンス処理工程と、
をさらに含み、
前記固化膜形成工程は、前記第2リンス処理後の基板に対し前記固化膜を形成する工程である、請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記固化膜形成工程及び前記除去工程は、同一のバッチ処理ユニット内で行われ、又は異なるバッチ処理ユニットでそれぞれ行われる、請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記薬液処理工程は、
前記固化膜形成工程及び前記除去工程と同一の前記バッチ処理ユニット内で行われ、
又は、前記固化膜形成工程及び前記除去工程がそれぞれ行われるバッチ処理ユニットとは別のバッチ処理ユニットで行われる、請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記薬液処理工程は、枚葉処理ユニットで行われる、請求項10に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、3次元NAND構造等の積層体が形成された複数の基板に対し、バッチ処理により一括して昇華乾燥を行うことが可能な基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程では、ウェットエッチングや表面洗浄の過程に於いて、基板表面に処理液が供給され、その後、基板表面を乾燥させる処理が行われる。しかし、例えば基板表面にアスペクト比が大きいパターンが形成されている場合、処理液の乾燥の際、処理液のラプラス圧によりパターンに力が働き、パターンの倒壊が引き起こされる懸念がある。近年は、微細化や新材料を用いた次世代デバイスの開発に伴い、基板表面に形成されたパターンの倒壊を抑制する技術が求められている。ここで、処理液を固化させて固化膜を形成し、さらに固化膜を昇華させて除去する昇華乾燥の技術は、処理液由来のラプラス圧がパターンに作用するのを防止又は低減することができる。そのため、当該技術は、パターンの倒壊の抑制が可能な技術として有望視されている。
【0003】
基板処理に於ける昇華乾燥の技術は、基板を1枚ずつ処理する枚葉式に於いて確立されつつある(例えば、下記特許文献1)。しかし、複数の基板を一括して処理するバッチ式に於いては、十分な昇華乾燥技術が確立されていない。例えば、3次元NAND型フラッシュメモリ等の3次元NAND構造に於いては、バッチ式でのリン酸処理が必要になるが、昇華乾燥の技術を用いない場合には、パターンの倒壊が懸念される。そのため、バッチ式での昇華乾燥技術の確立が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-70873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、基板の表面に形成されたパターンの倒壊を低減又は防止しながら、基板処理のスループットを向上させつつ、基板の表面に付着した液体を除去する基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る基板処理装置は、前記の課題を解決するために、基板の表面を処理する基板処理装置であって、前記基板の表面を、第1処理液を用いて薬液処理する薬液処理部と、昇華性物質及び溶媒を含む第2処理液中に、前記薬液処理後の複数の前記基板を一括して浸漬させた後、複数の前記基板を起立姿勢で一括して取り出しながら前記溶媒を蒸発させて、前記基板の表面に前記昇華性物質を含む固化膜をそれぞれ形成する固化膜形成部と、複数の前記基板の表面に形成された前記固化膜を、一括で昇華させて除去する除去部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記の構成に於いて、前記第2処理液は、前記固化膜形成部が有する処理槽部に貯留されており、前記基板処理装置は、複数の前記基板を一括して保持した状態で、複数の前記基板を前記処理槽部に対し昇降させることにより、前記第2処理液中に浸漬させ、又は前記第2処理液中から取り出しを行う昇降部を備えることが好ましい。
【0008】
前記の構成に於いては、前記薬液処理後の基板の表面を、リンス液を用いて第1リンス処理する第1リンス処理部と、前記第1リンス処理後の基板の表面を、気体状又は液体状の有機化合物を用いて第2リンス処理する第2リンス処理部と、をさらに備え、前記固化膜形成部は、前記第2リンス処理後の基板に対し前記固化膜を形成することが好ましい。
【0009】
前記の構成に於いては、前記第1リンス処理後の複数の前記基板を、前記第2リンス処理部に一括して搬送するまでの間、保管する載置部をさらに備え、前記載置部は、高湿度の環境下で前記基板を保管することが好ましい。
【0010】
また本発明に係る基板処理システムは、前記の課題を解決するために、前記基板処理装置を備える基板処理システムであって、前記固化膜形成部及び前記除去部が、同一のバッチ処理ユニットに設けられ、又は異なるバッチ処理ユニットにそれぞれ設けられることを特徴とする。
【0011】
前記の構成に於いて、前記薬液処理部は、前記固化膜形成部及び前記除去部と同一のバッチ処理ユニットに設けられ、又は、前記固化膜形成部及び前記除去部がそれぞれ設けられるバッチ処理ユニットとは別のバッチ処理ユニットに設けられてもよい。
【0012】
また前記の構成に於いて、前記薬液処理部は、枚葉処理ユニットに設けられてもよい。
【0013】
本発明に係る基板処理方法は、前記の課題を解決するために、基板の表面を処理する基板処理方法であって、前記基板の表面を、第1処理液を用いて薬液処理する薬液処理工程と、昇華性物質及び溶媒を含む第2処理液中に、前記薬液処理後の複数の前記基板を一括して浸漬させた後、複数の前記基板を起立姿勢で一括して取り出しながら前記溶媒を蒸発させて、前記基板の表面に前記昇華性物質を含む固化膜をそれぞれ形成する固化膜形成工程と、複数の前記基板の表面に形成された前記固化膜を、一括で昇華させて除去する除去工程と、を含む、ことを特徴とする。
【0014】
前記の構成に於いては、前記薬液処理後の基板の表面を、リンス液を用いて第1リンス処理する第1リンス処理工程と、前記第1リンス処理後の基板の表面を、液体状又は気体状の有機化合物を用いて第2リンス処理する第2リンス処理工程と、をさらに含み、前記固化膜形成工程は、前記第2リンス処理後の基板に対し前記固化膜を形成する工程であることが好ましい。
【0015】
前記固化膜形成工程及び前記除去工程は、同一のバッチ処理ユニット内で行われ、又は異なるバッチ処理ユニットでそれぞれ行われてもよい。
【0016】
前記の構成に於いて、前記薬液処理工程は、前記固化膜形成工程及び前記除去工程と同一の前記バッチ処理ユニット内で行われ、又は、前記固化膜形成工程及び前記除去工程がそれぞれ行われるバッチ処理ユニットとは別のバッチ処理ユニットで行われてもよい。
【0017】
前記の構成に於いて、前記薬液処理工程は、枚葉処理ユニットで行われてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、薬液処理が施された複数の基板に対して、一括して固化膜を形成した後、一括して固化膜を昇華させ除去する。そのため本発明は、従来と比べ、スループットを向上させた基板処理を行うことができる。
【0019】
特に、固化膜の形成に於いては、昇華性物質と溶媒とを含む第2処理液中に、複数の基板を一括して浸漬させるので、各基板の表面に存在する第1処理液を短時間で除去し、第2処理液に置換することができる。さらに、複数の基板を第2処理液中から一括して引き上げ、引き上げと同時に溶媒を蒸発させて昇華性物質を析出させ、基板の表面に、昇華性物質を含む固化膜を極めて短時間で形成させるので、固化膜の形成に起因して生じる応力が、基板表面に設けられたパターンに作用するのを低減することができる。また、起立姿勢で基板の引き上げを行うため、析出した昇華性物質の結晶成長が3次元ではなく面内で進行するようにできる。その結果、結晶粒界の発生に起因した膜欠陥が固化膜に生じることも防止できる。すなわち、第2処理液からの引き上げと同時に固化膜を形成させる方法であると、基板処理のスループットを向上させるだけでなく、基板の表面のパターンの倒壊も抑制又は低減することができる。
【0020】
従って、本発明によれば、基板の表面に設けられたパターンの倒壊を低減又は防止しながら、基板処理のスループットを向上させつつ、基板の表面に付着した第1処理液を除去できる基板処理装置、基板処理システム及び基板処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
図2】第1実施形態に於ける基板処理システムのリフターの概略構成を表す側面図である。
図3】第1実施形態に係る基板処理システムに於いて、薬液処理ユニットの処理槽の概略を表す断面図である。
図4】第1実施形態に係る基板処理方法の全体的な流れを示すフローチャートである。
図5図5(a)は第1実施形態の基板処理システムに於いて、処理槽の上方で、リフターとバッチ処理部用搬送部との間での基板群の受け渡しの様子を表す概略図であり、同図(b)は、基板W群をリン酸溶液中に浸漬させる様子を表す断面図である。
図6】第1実施形態に係る基板処理方法の固化膜形成工程に於いて、第2処理液から引き上げられた基板の表面に固化膜が形成される様子を模式的に表す説明図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る基板処理システムの枚葉処理ユニットの概略を表す説明図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
図10】本発明の第3実施形態の基板処理システムに於ける固化膜形成・除去ユニットの概略構成を示す断面図である。
図11】本発明の第3実施形態の基板処理システムに於ける他の固化膜形成・除去ユニットの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
<基板処理システム>
本発明の第1実施形態に係る基板処理システムについて、図面を参照しながら以下に説明する。
【0023】
本実施形態に係る基板処理システムは、例えば、各種の基板の処理に用いることができる。ここで「基板」とは、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の各種基板をいう。本実施形態の基板処理システムは、例えば、表面に3次元NAND構造等の3次元構造が形成された基板等の処理に好適である。
【0024】
本実施形態の基板処理システムは、図1に示すように、基板Wの表面を処理する基板処理装置1を備える。基板処理装置1は、収容部10と、複数の基板Wを一括処理する処理部20と、基板処理装置1の各部を制御する制御ユニット(制御部)30とを備える。図1は、第1実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す平面図である。尚、図1に於いては、図示したものの方向関係を明確にするために、適宜XYZ直交座標軸を表示する。同図に於いて、XY平面は水平面を表し、Z方向は鉛直上向きを表す。
【0025】
収容部10には、複数の基板W(以下、「基板W群」という場合がある。)を収納する密閉型の収納器11が載置される。また、収容部10と処理部20との間には隔壁12が設けられている。さらに、隔壁12には、収容部10から処理部20への基板W群の搬送を可能にする通過口にシャッター部材13が設けられている。収納器11は、その内部に、基板Wを1枚毎に支持する支持部(図示しない)を多段に備えている。これにより、収納器11は、水平姿勢の複数の基板W群を、相互に所定の間隔を空けて収納することができる。また、収納器11は、基板W群の取り出しを可能にする開口部に、外部雰囲気と遮断するための蓋が着脱自在に設けられている。尚、本明細書に於いて「水平姿勢」とは、基板Wの表面(主面、パターン形成面)が水平方向に沿った状態の姿勢を意味する。
【0026】
処理部20は、基板移載ロボット21と、基板W群の姿勢変換を可能にする姿勢変換部22と、姿勢変換部22との間で基板W群を一括して受け渡しするプッシャー23と、基板W群を一括して処理するバッチ処理部25と、プッシャー23及びバッチ処理部25との間で一括して基板W群の受け渡しを行うバッチ処理部用搬送部24とを備える。
【0027】
基板移載ロボット21は、収容部10の通過口に対向する位置に設けられる。また、基板移載ロボット21は、昇降・旋回・前後の移動が可能な多関節アーム21aを備える。多関節アーム21aは、その先端部に基板Wを保持する「U」の字状の保持アームを多段に備える。これにより、基板移載ロボット21は、保持アームを用いて収納器11から基板W群を一括して取り出し、又は収納することができる。尚、基板移載ロボット21は、基板Wを一枚ずつ取り出し、又は収納することもできる。
【0028】
姿勢変換部22は、基板移載ロボット21に対向する位置に設けられている。姿勢変換部22は、基板移載ロボット21から水平姿勢の状態の基板W群を受け取り、これらを起立姿勢に変えてプッシャー23に受け渡すことができる。尚、本明細書に於いて「起立姿勢」とは、基板Wの表面(主面、パターン形成面)が水平面に対し略鉛直方向に沿った状態の姿勢を意味し、垂直姿勢の場合も含む。
【0029】
プッシャー23は、基板移載ロボット21とは反対側の位置に、姿勢変換部22に対向して設けられる。プッシャー23は、姿勢変換部22とバッチ処理部用搬送部24との間で基板W群の受け渡しを行う。プッシャー23は、昇降(Z方向)移動及び水平(Y方向)移動することができる。また、プッシャー23の上部には、基板W群を起立姿勢の状態で保持する保持具(図示しない)が設けられている。
【0030】
バッチ処理部用搬送部24は、姿勢変換部22とは反対側の位置(待機位置)に於いて、プッシャー23に対向して設けられる。バッチ処理部用搬送部24は、プッシャー23に向かって水平方向に延在する一対の保持ロッド24aと、駆動部24bとを備える。一対の保持ロッド24aには、保持ロッド24aの延在方向に複数の溝部が配列して設けられている。また、各溝部は、保持ロッド24aの延在方向に直角となる方向に延在しており、基板Wを起立した姿勢で嵌合可能となっている。これにより、一対の保持ロッド24aは、基板W群を起立させた姿勢で下方側から当接して支持することができる。その結果、バッチ処理部用搬送部24は、基板W群を一括して保持することが可能となっている。駆動部24bは、バッチ処理部用搬送部24を昇降移動させることができる。これにより、バッチ処理部用搬送部24は、待機位置に於いて、プッシャー23との間で基板W群の受け渡しを一括して行うことができる。さらに駆動部24bは、バッチ処理部用搬送部24を、バッチ処理部25に沿ったX方向に移動させることも可能にする。これにより、バッチ処理部用搬送部24は、基板W群をバッチ処理部25に搬送することができる。さらにバッチ処理部用搬送部24は、バッチ処理部25に備えられたリフター26(昇降部。詳細については、後述する。)との間でも基板W群の受け渡しを行う。
【0031】
バッチ処理部25は、リフター26と、リン酸処理(薬液処理)ユニット(薬液処理部)31と、第1リンス処理ユニット(第1リンス処理部)32と、第2リンス処理ユニット(第2リンス処理部)33と、固化膜形成ユニット(固化膜形成部)34と、除去ユニット(除去部)35とを備えており、多槽バッチ式による処理を可能にしている。バッチ処理部25に於いて、各ユニットは、矢印Xで示す方向に順次配置されている。
【0032】
リフター26は、リン酸処理ユニット31、第1リンス処理ユニット32、第2リンス処理ユニット33及び固化膜形成ユニット34の間をX方向に移動可能に構成される。リフター26は、図2に示すように、平板状の背板部26aと、複数本(3本)の保持棒26bと、昇降機構(図示しない)とを備える。背板部26aは立設しており、その下端部では保持棒26bが背板部26aに対し直角となるように一方向にそれぞれ延在している。保持棒26bには、その延在方向に複数の溝部26cが配列して設けられている。また、複数の溝部26cは、相互に離隔して等間隔に配列している。さらに、各溝部26cは、保持棒26bの延在方向に直角となる方向に延在しており、複数の基板Wを起立した姿勢で嵌合可能となっている。これにより、保持棒26bは、基板W群を起立させた姿勢で下方側から当接して支持し、一括して保持することが可能となっている。尚、保持棒26bの本数は複数であれば、特に限定されない。また、保持棒26bに設けられる溝部26cの数についても特に限定されず、保持させたい基板Wの数に応じて適宜設定すればよい。また、昇降機構は、リフター26を、図1に示すZ方向に上昇又は下降させることができる。これにより、基板W群を一括して保持した状態のリフター26を、バッチ処理部25の各処理槽内部に移動させ、又は取り出すことができる。尚、図2は、本実施形態の基板処理システムに於けるリフター26の概略構成を表す側面図である。
【0033】
リン酸処理ユニット31は、基板W群に対して、リン酸溶液(第1処理液)を用いて一括してリン酸処理を施すバッチ処理ユニットである。基板W群にリン酸処理を施すことにより、基板W群の表面に所定のパターニングを形成するエッチングを可能にする。リン酸処理ユニット31は、リン酸溶液を貯留することが可能な処理槽31aを備える。処理槽31aは、図3に示すように、リン酸溶液を処理槽31a内に供給する注入管31bと、リン酸溶液を貯留する内槽31cと、内槽31cの上部開口の周縁部に設けられた外槽31dとを備える。注入管31bは、処理槽31aの底部に設けられており、リン酸溶液の内槽31cへのアップフロー供給を可能にしている。また、外槽31dは、内槽31cからオーバーフローしたリン酸溶液の回収を可能にしている。第1処理液としてはリン酸溶液の他、公知の種々の薬液を用いることができる。尚、図3は、本実施形態の基板処理システムに於いて、リン酸処理ユニット31の処理槽の概略を表す断面図である。
【0034】
第1リンス処理ユニット32は、基板W群に対して、リンス液を用いて一括して第1リンス処理を施すバッチ処理ユニットである。第1リンス処理を施すことにより、基板W群の表面に付着しているリン酸溶液を除去することができる。第1リンス処理ユニット32は、リンス液を貯留することが可能な処理槽32aを備える。処理槽32aは、リン酸処理ユニット31の処理槽31aと同様の構成を有する。すなわち、処理槽32aは、底部に設けられ、リンス液を供給する注入管と、リンス液を貯留する内槽と、内槽の上部開口の周縁部に設けられ、溢れ出たリンス液を回収する外槽とを備える。尚、リンス液としては特に限定されず、例えば、脱イオン水(DIW:Deionized Water)等が挙げられる。
【0035】
第2リンス処理ユニット33は、液体状の有機化合物をリンス剤として用いて、基板W群に対し一括して第2リンス処理を施すバッチ処理ユニットである。第2リンス処理を施すことにより、各基板W群の表面に付着しているリンス液を有機化合物に置換し、当該リンス液を除去することができる。その結果、固化膜形成ユニット34にリンス液が持ち込まれるのを防止することができる。第2リンス処理ユニット33は、液体状の有機化合物を貯留することが可能な処理槽33aを備える。処理槽33aは、リン酸処理ユニット31の処理槽31aと同様の構成を有する。すなわち、処理槽33aは、底部に設けられ、液体状の有機化合物を供給する注入管と、液体状の有機化合物を貯留する内槽と、内槽の上部開口の周縁部に設けられ、溢れ出た液体状の有機化合物を回収する外槽とを備える。尚、有機化合物としては特に限定されず、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)等が挙げられる。
【0036】
また第2リンス処理ユニット33は、リンス剤として気体状の有機化合物を用いて第2リンス処理を施す構成としてもよい。気体状の有機化合物を各基板W群の表面に接触させることによっても、各基板W群の表面に付着しているリンス液を有機化合物に置換し、当該リンス液を除去する。この場合、気体状の有機化合物を第2リンス処理ユニット33のチャンバ内に供給する手段としては、例えば、リンス剤である気体状の有機化合物を貯留するリンス剤貯留部、配管及びバルブを備えたリンス剤供給部が挙げられる(何れも図示しない)。リンス剤貯留部は、配管を介してチャンバと管路接続されている。また、バルブは配管に介挿される。リンス剤貯留部には、貯留される気体状の有機化合物の温度を調整するリンス剤温度調整部と、チャンバ内に気体状の有機化合物を圧送するための加圧部が設けられていてもよい。リンス剤温度調整部は、貯留されている気体状の有機化合物を加熱又は冷却して温度調整を行う。リンス剤温度調整部としては特に限定されず、例えば、ペルチェ素子、温度調整した水を通した配管等、公知の温度調整機構を用いることができる。また、加圧部としては、例えば、ポンプ等が挙げられる。尚、気体状の有機化合物の圧送は、気体状の有機化合物をリンス剤貯留部内に圧縮貯留することによっても実現することができる。また、第2リンス処理ユニット33は、外部雰囲気と遮断する密閉性を備えることが好ましい。さらに、第2リンス処理ユニット33は、処理槽33aを省略することができる。
【0037】
固化膜形成ユニット34は、基板W群の表面にそれぞれ一括して、昇華性物質を含む固化膜を形成するバッチ処理ユニットである。固化膜の形成は、第2処理液中に浸漬された基板W群を第2処理液から取り出す際、第2処理液の溶媒を乾燥させながら行う(詳細については、後述する。)。固化膜を形成することにより、各基板W群の表面に付着している有機化合物を第2処理液に置換し、当該有機化合物を除去することができる。固化膜形成ユニット34は、第2処理液を貯留することが可能な処理槽(処理槽部)34aを備える。処理槽34aは、リン酸処理ユニット31の処理槽31aと同様の構成を有する。すなわち、処理槽34aは、底部に設けられ、第2処理液を供給する注入管と、第2処理液を貯留する内槽と、内槽の上部開口の周縁部に設けられ、溢れ出た第2処理液を回収する外槽とを備える。
【0038】
第2処理液は、昇華性物質と溶媒とを少なくとも含む。昇華性物質は、第2処理液に於いて溶媒に溶解していることが好ましい。第2処理液は、基板Wの表面に存在する有機化合物を除去するための乾燥処理に於いて、当該乾燥処理を補助する機能を果たす。尚、本明細書に於いて「昇華性」とは、単体、化合物若しくは混合物が液体を経ずに固体から気体、又は気体から固体へと相転移する特性を有することを意味し、「昇華性物質」とはそのような昇華性を有する物質を意味する。
【0039】
昇華性物質としては、t-Butanol、樟脳、ナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノンオキシム、ピナコリンオキシム、4-tert-ブチルフェノール等が挙げられる。また、溶媒としては、昇華性物質が溶解性を示すものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、IPA、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、アセトン、ベンゼン、t-Butanol、トルエン、エタノール、メタノール等が挙げられる。これらの溶媒のうち、本実施形態に於いては、IPA等の蒸気圧が高い溶媒が好ましい。
【0040】
処理槽34aには、貯留される第2処理液の温度を調整する第2処理液温度調整部が設けられていてもよい。第2処理液温度調整部は、貯留される第2処理液を加熱して温度調整を行う。第2処理液温度調整部としては特に限定されず、例えば、ペルチェ素子、温度調整した水を通した配管等、公知の温度調整機構を用いることができる。
【0041】
除去ユニット35は、固化膜形成ユニット34で形成された固化膜を昇華させて除去するバッチ処理ユニットである。固化膜を昇華させることにより、基板Wの表面に形成されたパターンの倒壊を抑制又は低減しながら除去することができる。
【0042】
除去ユニット35は、除去ユニット35のチャンバ35a内を、例えば、真空状態に減圧するための減圧部を備えることができる。チャンバ35a内を真空状態にすることにより、昇華性物質を含む固化膜を昇華させて除去することができる。減圧部としては、例えば、排気ポンプ、配管及びバルブを備えるものが挙げられる。排気ポンプは配管を介してチャンバ35aと管路接続されており、例えば、公知のポンプを用いることができる。また、バルブは配管に介挿される。制御ユニット30の動作指令により、排気ポンプが駆動され、かつバルブが開栓されると、チャンバ35a内に存在する気体を、配管を介してチャンバ35aの外側に排気することができる。
【0043】
また除去ユニット35は、チャンバ35a内に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給部を備えてもよい。チャンバ35a内を不活性ガスの雰囲気とすることにより、昇華性物質を含む固化膜を昇華させて除去することができる。不活性ガス供給部としては、例えば、不活性ガスを貯留する不活性ガス貯留部、配管及びバルブを備えるものが挙げられる。不活性ガス貯留部は、配管を介してチャンバ35aと管路接続されている。また、バルブは配管に介挿される。不活性ガス貯留部には、貯留される不活性ガスの温度を調整する不活性ガス温度調整部と、チャンバ35a内に不活性ガスを圧送するための加圧部が設けられていてもよい。不活性ガス温度調整部は、貯留されている不活性ガスを加熱又は冷却して温度調整を行う。不活性ガス温度調整部としては特に限定されず、例えば、ペルチェ素子、温度調整した水を通した配管等、公知の温度調整機構を用いることができる。不活性ガスの温度は特に限定されないが、通常は、0℃以上100℃以下の範囲内に設定することができる。不活性ガスの温度を0℃以上にすることにより、チャンバ35aの内部に存在する水蒸気が凝固して基板W群の表面に付着等するのを防止し、基板W群に対し悪影響が生じるのを防止することができる。また、加圧部としては、例えば、ポンプ等が挙げられる。尚、不活性ガスの圧送は、不活性ガスを気体貯留部内に圧縮貯留することによっても実現することができる。
【0044】
不活性ガスとしては、昇華性物質に対して活性を示さない気体であれば特に限定されない。不活性ガスとしては、より具体的には、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、空気(窒素ガス濃度80%、酸素ガス濃度20%の気体)及びこれらの気体を混合させた混合気体等が挙げられる。
【0045】
制御ユニット30は、基板処理装置1の各部と電気的に接続しており、各部の動作を制御する。制御ユニット30は、例えば、演算処理部と、メモリとを有するコンピュータにより構成される。演算処理部としては、各種演算処理を行うCPUを用いる。また、メモリは、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM及び制御用ソフトウェアやデータ等を記憶しておく磁気ディスクを備える。磁気ディスクには、基板Wに応じた基板処理条件(レシピ)が予め格納されている。CPUは基板処理プログラムをRAMに読み出し、その内容に従ってCPUが基板処理装置1の各部を制御する。
【0046】
<基板処理方法>
次に、本実施形態の基板処理システムを用いた基板処理方法について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0047】
本実施形態の基板処理方法は、基板W群が収容部10から処理部20に搬送された後、図4に示すように、リン酸処理(薬液処理)工程S1と、第1リンス処理工程S2と、第2リンス処理工程S3と、固化膜形成工程S4と、除去工程S5とを少なくとも行う。図4は、第1実施形態に係る基板処理方法の全体的な流れの一例を示すフローチャートである。
【0048】
先ず、収容部10から処理部20への基板W群の搬送を行う。すなわち、複数の基板W群を水平姿勢で収納した収納器11が収容部10に於ける通過口に対向する位置に配置されると、通過口を閉塞しているシャッター部材13が開けられ、基板移載ロボット21の多関節アーム21aが収納器11内に前進移動して、収納器11内の基板W群を一括して取り出す。
【0049】
次に、基板移載ロボット21は、取り出した基板W群を水平姿勢のまま姿勢変換部22に一括して受け渡す。姿勢変換部22が、水平姿勢にある基板W群を受け取ると、当該基板W群を起立姿勢に変換する。続いて、下降位置にあるプッシャー23を上昇させることにより、プッシャー23は姿勢変換部22から基板W群を一括して受け取る。
【0050】
基板W群を一括して受け取ったプッシャー23は、一対の保持ロッド24aにより基板W群が下方側から当接して支持されるように、一括して基板W群をバッチ処理部用搬送部24に受け渡す。基板W群を受け取ったバッチ処理部用搬送部24は、バッチ処理部25に於けるリン酸処理ユニット31等が配列されている方向に沿って水平移動(矢印Xで示す方向)する。
【0051】
バッチ処理部用搬送部24が基板W群をリン酸処理ユニット31に搬送してくると、リフター26は、図5(a)に示すように、処理槽31aから上昇し、処理槽31aの上方でバッチ処理部用搬送部24から起立姿勢の基板W群を受け取る。バッチ処理部用搬送部24から基板W群を受け取る前のリフター26は、下降位置で待機しているのが好ましい。例えば、リフター26は、処理槽31aに貯留されている第1処理液中に浸漬された状態で待機させることができる。尚、図5(a)は、処理槽31aの上方に於いて、リフター26とバッチ処理部用搬送部24との間で基板W群の受け渡しを行う様子を表す概略図である。
【0052】
基板W群を受け取ると、リフター26は基板W群を保持しながら処理槽31a内に下降し、図5(b)に示すように、起立姿勢の基板W群をリン酸溶液中に浸漬させる。これにより、基板W群を一括してリン酸処理する(リン酸処理工程S1)。尚、図5(b)は、基板W群をリン酸溶液中に浸漬させる様子を表す断面図である。
【0053】
次に、リン酸処理後の基板W群に対し、第1リンス処理を行う(第1リンス処理工程S2)。具体的には、リフター26が処理槽31aからZ方向に上昇した後、第1リンス処理ユニット32まで水平移動する。さらに、リフター26は処理槽32a内に下降し、起立姿勢の基板W群をリンス液中に浸漬させる。これにより、基板W群に対し一括して第1リンス処理を施し、基板W群の表面に残存するリン酸溶液を除去する。
【0054】
続いて、第1リンス処理後の基板W群に対し、第2リンス処理を行う(第2リンス処理工程S3)。具体的には、リフター26が処理槽32aからZ方向に上昇した後、第2リンス処理ユニット33まで水平移動する。さらに、リフター26は処理槽33a内に下降し、起立姿勢の基板W群を液体状の有機化合物中に浸漬させる。これにより、基板W群に対し一括して第2リンス処理を施し、基板W群の表面に残存するリンス液を除去する。その結果、固化膜形成ユニット34の処理槽34a内にリンス液が混入するのを防止することができる。
【0055】
尚、第2リンス工程S3に於いて、気体状の有機化合物をリンス剤に用いる場合には、リフター26を第2リンス処理ユニット33のチャンバ内に移動させた後、前述のリンス剤供給部を用いて、第2リンス処理ユニット33内に気体状の有機化合物を供給する。これにより、基板W群に対し、気体状の有機化合物を一括して接触させ、基板W群の表面に残存するリンス液を除去する。
【0056】
次に、第2リンス処理後の基板W群に対し、固化膜の形成を行う(固化膜形成工程S4)。具体的には、リフター26が処理槽33aからZ方向に上昇した後、固化膜形成ユニット34まで水平移動する。さらに、リフター26は処理槽34a内に下降し、起立姿勢の基板W群を第2処理液中に浸漬させる。浸漬後、リフター26が処理槽34aから上昇し、基板W群を第2処理液中から一括して引き上げる。固化膜は、基板W群の引き上げの際に形成される。すなわち、例えば、第2処理液に含まれる溶媒として、蒸気圧が高いものを用いた場合、図6に示すように、基板Wを第2処理液37から引き上げると、基板Wの表面では、それと同時に第2処理液37に含まれる溶媒が蒸発する。そのため、基板Wの表面には、溶媒の蒸発により昇華性物質38等の溶質が析出する結果、昇華性物質38を含む固化膜36が形成される。また、蒸気圧が高くない溶媒を用いる場合でも、処理槽34aに貯留される第2処理液37を、第2処理液温度調整部により高温状態にすることで、基板Wの引き上げと同時に溶媒を蒸発させて昇華性物質38を析出させ、固化膜36を形成させることができる。尚、図6は、第2処理液37から引き上げられた基板Wの表面に固化膜36が形成される様子を模式的に表す説明図である。
【0057】
このように、基板Wを起立姿勢にして、その引き上げと同時に基板Wの表面に固化膜36を形成する方法であると、析出する昇華性物質38を面内で結晶成長させることにより固化膜36の形成が可能になる。すなわち、析出した昇華性物質38が3次元で結晶成長するのを防止できるため、結晶粒界の発生に起因した膜欠陥の発生を防止し、パターンの倒壊の発生を低減又は防止することができる。また、第2処理液37からの引き上げと同時に基板Wの表面に固化膜36を形成する方法であると、固化膜36の形成に起因して生じる応力が、基板W表面のパターンに加えられる時間を極力短くすることができる。その結果、パターンの倒壊の発生を一層低減又は防止することができる。さらに、本実施形態の固化膜36の形成は、基板W群を一括して第2処理液37中に浸漬させるので、基板Wの表面に残存する液体状の有機化合物を、複数の基板W群に対して一括して第2処理液37に置換させることができる。特に、3次元NAND構造等の3次元構造が形成された基板に於いては、基板の表面に対し垂直な方向に形成されるトレンチと、このトレンチから水平方向に広がるO-N(酸化膜-窒化膜)構造に於いて、有機化合物の置換に著しい時間を要する。このため、複数の基板W群を枚葉処理により一枚ずつ処理する場合には、長時間を要することとなる。しかし、本実施形態の固化膜36の形成方法であると、複数の基板Wを一括して第2処理液37中に浸漬させるため、そのような3次元構造が形成された基板Wに対しても、複数の基板W群に対して一括して極めて短時間で第2処理液37に置換することができる。このため、複数の基板W群を枚葉処理により一枚ずつ処理する場合と比較して、極めて短時間で処理を行うことができる。さらに、枚葉式により第1処理液を第2処理液37に置換させる場合と比較して、第2処理液37の使用量も低減することができる。
【0058】
続いて、基板W群の表面に形成された固化膜36を昇華させて、固化膜36の除去を行う(除去工程S5)。すなわち、バッチ処理部用搬送部24は、処理槽34aから引き上げられた基板W群をリフター26から受け取り、除去ユニット35のチャンバ35a内に搬送される。基板W群がチャンバ35a内に搬送されると、減圧部がチャンバ35a内を減圧して真空状態にする。これにより、基板W群の表面にそれぞれ形成された固化膜36が昇華し、基板W群から一括して除去することができる。尚、固化膜36の昇華による除去は、チャンバ35a内に不活性ガスを供給することによっても可能である。この場合、前述の不活性ガス供給部がチャンバ35a内に不活性ガスを供給することにより、固化膜36の昇華を行う。
【0059】
尚、基板W群をバッチ処理部用搬送部24に受け渡したリフター26はリン酸処理ユニット31の処理槽31aに戻る。一方、除去ユニット35で固化膜36が除去された基板W群は、バッチ処理部用搬送部24により待機位置にまで搬送される。
【0060】
待機位置に搬送された基板W群は、前述の基板W群の搬入時とは逆に、バッチ処理部用搬送部24からプッシャー23に受け渡される。さらに、プッシャー23に受け渡された基板W群は、姿勢変換部22に受け渡された後、起立姿勢から水平姿勢に姿勢変換される。その後、水平姿勢に変換された基板W群は、基板移載ロボット21によって収納器11に戻される。以上により、本実施形態の基板処理方法が終了する。
【0061】
<変形例>
本実施形態に於いては、バッチ処理部25に於いて、それぞれの処理毎に処理槽を設けた多槽バッチ式の場合を例にして説明した。但し、本発明はこのような態様に限定されるものではない。本発明は、例えば、1つの処理槽のみを用いて、リン酸処理工程S1、第1リンス処理工程S2、第2リンス処理工程S3及び固化膜形成工程S4の全ての工程を行う単槽バッチ式により基板処理を行ってもよい。この場合、基板処理装置及びそれを含む基板処理システムの省スペース化及び小型化を図ることができる。
【0062】
単槽バッチ式による基板処理の場合、それぞれの工程での処理が終了する毎に、処理槽内の液体の入れ替えを行う。例えば、リン酸処理を行う場合には、処理槽の注入管から処理槽内にリン酸溶液をアップフロー供給して、基板W群の一括処理を行う。続いて、第1リンス処理を行う場合には、処理槽内のリン酸溶液を排出管から排出させた後、処理槽内に注入管からリンス液をアップフロー供給して、第1リンス処理を行う。このように、各処理毎にアップフロー供給と排出を繰り返し行って、単槽バッチ式による基板処理を行ってもよい。
【0063】
(第2実施形態)
本発明に係る第2実施形態について、以下に説明する。
本実施形態は、第1実施形態と比較して、リン酸処理(薬液処理)工程S1及び第1リンス処理工程S2を枚葉処理で行い、第2リンス処理工程S3、固化膜形成工程S4及び除去工程S5をバッチ処理で行う点が主として異なる。このような構成によっても、本実施形態では、基板の表面に形成されたパターンの倒壊を低減又は防止しながら、基板処理のスループットを向上させつつ、基板の表面に付着した液体を除去することができる。
【0064】
<基板処理システム>
先ず、本発明の第2実施形態に係る基板処理システムについて、図面を参照しながら以下に説明する。尚、本実施形態に係る基板処理システムに於いて、第1実施形態に係る基板処理システムと同一の構成を有するものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
本実施形態の基板処理システムは、基板Wの表面を処理する基板処理装置2を備える。基板処理装置2は、図7に示すように、収容部10と、基板Wを一枚ずつ処理することが可能な第1処理部40と、基板Wを搬送する基板搬送部50と、複数の基板Wを一括して処理することが可能な第2処理部60と、基板処理装置2の各部を制御する制御ユニット30とを備える。ここで、第1処理部40は、収容部10と第2処理部60との間に配置される。また、基板搬送部50は、収容部10と第2処理部60との間であって、第1処理部40と対向する位置に配置される。尚、図7は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す平面図である。同図に於いては、図示したものの方向関係を明確にするために、適宜XYZ直交座標軸を表示する。同図に於いて、XY平面は水平面を表し、Z方向は鉛直上向きを表す。
【0066】
第1処理部40は、基板Wをリン酸処理及び第1リンス処理する枚葉処理部41と、枚葉処理部41での処理前の基板Wを載置する処理前基板載置部48aと、枚葉処理部41での処理後の基板Wを載置する処理後基板載置部48bとを備える。
【0067】
枚葉処理部41は、2つの枚葉処理ユニット42a、42bと、処理前基板載置部48a及び処理後基板載置部48bとの間で、基板Wを1枚ずつ搬送する枚葉処理部用搬送部44とを備える。
【0068】
枚葉処理ユニット42a、42bは、リン酸溶液(第1処理液)を用いて、基板Wに対し1枚ずつリン酸処理を施す。基板Wにリン酸処理を施すことにより、基板Wの表面に所定のパターニングを形成するエッチングを可能にする。また枚葉処理ユニット42a、42bは、リンス液を用いて、基板Wに対し1枚ずつ第1リンス処理も施す。第1リンス処理を施すことにより、基板Wの表面に付着しているリン酸溶液を除去することができる。
【0069】
枚葉処理ユニット42a、42bは、図8に示すように、基板Wを保持する基板保持部71と、基板Wの表面にリン酸溶液を供給するリン酸溶液供給部72と、リン酸溶液を捕集する飛散防止カップ73と、後述のアームを独立に旋回駆動させる旋回駆動部74と、基板Wの表面にリンス液を供給するリンス液供給部75とを少なくとも備える。図8は、本実施形態の基板処理システムに於ける枚葉処理ユニット42a、42bの概略を表す説明図である。
【0070】
基板保持部71は基板Wを保持する手段であり、基板Wの表面を上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させる。基板保持部71は、回転駆動部71aと、スピンベース71bと、チャックピン71cとを少なくとも備える。
【0071】
回転駆動部71aは、制御ユニット30の動作指令によりZ方向に沿った軸Jlまわりに回転する。回転駆動部71aは、公知のベルト、モータ及び回転軸により構成される。
【0072】
スピンベース71bは、回転駆動部71aに連結されている。スピンベース71bは、基板Wよりも若干大きな平面サイズを有している。スピンベース71bの周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持する複数個のチャックピン71cが立設されている。チャックピン71cの設置数は特に限定されないが、円形状の基板Wを確実に保持するために、少なくとも3個以上設けることが好ましい。
【0073】
基板保持部71に於いて、回転駆動部71aが軸Jlまわりに回転すると、これに伴いスピンベース71bの上方でチャックピン71cにより保持される基板Wを、スピンベース71bと共に軸Jlまわりに回転させることができる。
【0074】
リン酸溶液供給部72は、図8に示すように、ノズル72aと、アーム72bと、旋回軸72cと、配管72dと、リン酸溶液貯留部(図示しない。)とを少なくとも備える。
【0075】
ノズル72aは、水平に延設されたアーム72bの先端部に取り付けられており、スピンベース71bの上方に配置される。アーム72bの後端部は、Z方向に延設された旋回軸72cにより軸J2まわりに回転自在に支持され、旋回軸72cはチャンバ内に固設される。旋回軸72cを介して、アーム72bは旋回駆動部74と連結される。旋回駆動部74は、制御ユニット30と電気的に接続し、制御ユニット30からの動作指令によりアーム72bを軸J2まわりに回動させる。アーム72bの回動に伴って、ノズル72aも移動する。
【0076】
ノズル72aは、通常は基板Wの周縁部より外側であって、飛散防止カップ73よりも外側の待避位置に配置される。アーム72bが制御ユニット30の動作指令により回動すると、ノズル72aは、基板Wの表面の中央部(軸J1又はその近傍)の上方位置に配置することができる。
【0077】
飛散防止カップ73は、スピンベース71bを取り囲むように設けられる。飛散防止カップ73は昇降駆動機構(図示しない。)に接続され、鉛直方向に昇降可能となっている。基板Wの表面にリン酸溶液を供給する際には、飛散防止カップ73が昇降駆動機構によって図8に示すような所定位置に位置決めされ、チャックピン71cにより保持された基板Wを側方位置から取り囲む。これにより、基板Wやスピンベース71bから飛散するリン酸処理液を捕集することができる。
【0078】
リンス液供給部75は、図8に示すように、ノズル75aと、アーム75bと、旋回軸75cと、配管75dと、リンス液貯留部(図示しない。)とを少なくとも備える。
【0079】
ノズル75aは、水平に延設されたアーム75bの先端部に取り付けられており、スピンベース71bの上方に配置される。アーム75bの後端部は、Z方向に延設された旋回軸75cにより軸J3まわりに回転自在に支持され、旋回軸75cはチャンバ内に固設される。旋回軸75cを介して、アーム75bは旋回駆動部74と連結される。旋回駆動部74は、制御ユニット30と電気的に接続し、制御ユニット30からの動作指令によりアーム75bを軸J3まわりに回動させる。アーム75bの回動に伴って、ノズル75aも移動する。
【0080】
ノズル75aは、通常は基板Wの周縁部より外側であって、飛散防止カップ73よりも外側の待避位置に配置される。アーム75bが制御ユニット30の動作指令により回動すると、ノズル75aは、基板Wの表面の中央部(軸J1又はその近傍)の上方位置に配置することができる。
【0081】
尚、本実施形態では、枚葉処理部41に2つの枚葉処理ユニット42a、42bが設けられている場合を例にして説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、枚葉処理部41に設けられる枚葉処理ユニットは1つであってもよい。また、本実施形態では、枚葉処理ユニット42a、42bのそれぞれが、リン酸溶液供給部72及びリンス液供給部75を備える場合を例にして説明したが、枚葉処理ユニット42aをリン酸処理ユニットとし、枚葉処理ユニット42bを第1リンス処理ユニットとして構成してもよい。この場合、リン酸処理ユニットとしての枚葉処理ユニット42aでは、リンス液供給部75を省略することができる。また、第1リンス処理ユニットとしての枚葉処理ユニット42bでは、リン酸溶液供給部72を省略することができる。
【0082】
枚葉処理部用搬送部44は、枚葉処理ユニット42a、42bと、処理前基板載置部48a及び処理後基板載置部48bとの間で、基板Wを1枚ずつ搬送する。枚葉処理部用搬送部44は、より具体的には、図7に示すように、昇降可能な可動ベース45と、可動ベース45上に設けられた一対の多関節ロボット46、47とを備える。多関節ロボット46、47は、それぞれ独立して駆動する。多関節ロボット46の先端には、「U」の字状の形状を有し、単一の基板Wを保持することが可能な上下一対の保持アーム46aが設けられている。また、多関節ロボット47の先端にも、保持アーム46aと同様の構成を有する保持アーム47aが設けられている。保持アーム46a、47aは、相互に独立して進退移動及び旋回移動を行うことができる。また、各保持アーム46a、47aは、相互に同期して昇降移動を行うことができる。
【0083】
処理前基板載置部48a及び処理後基板載置部48bは、複数の基板Wを水平姿勢の状態で載置することができる。また、処理前基板載置部48a及び処理後基板載置部48bは、複数の基板Wを、相互に離間した状態で、垂直方向に配列するように支持することができる。処理前基板載置部48aには、リン酸処理及び第1リンス処理が施される前の基板W群が載置される。その一方、処理後基板載置部48bには、リン酸処理及び第1リンス処理が行われた後の基板W群が載置される。処理後基板載置部48bは、その内部を高湿度環境下に保持することが可能な密閉容器として構成されるのが好ましい。これにより、第1リンス処理後の所定の枚数の基板Wが、枚葉処理部用搬送部44により搬送されるまでの間、待機している基板Wの表面からリンス液が蒸発して乾燥するのを防止することができる。その結果、基板Wの表面でのパターンの倒壊の発生を一層抑制することができる。尚、処理後基板載置部48b内の湿度は、基板Wの表面からリンス液が蒸発しない程度であれば、特に限定されない。
【0084】
基板搬送部50は、図7に示す水平方向(矢印Xで示す方向)への移動を可能にする搬送機構51を備える。また、基板搬送部50は、基板W群を搬送することが可能な多関節ロボット52を備える。多関節ロボット52の先端には、基板W群を水平姿勢の状態で一括して載置することが可能な搬送アームを備える。さらに、基板搬送部50は、収容部10から第2処理部60まで敷設された螺子軸53a及びガイド軸53bを備える。螺子軸53a及びガイド軸53bは、基板搬送部50の移動経路として機能する。
【0085】
第2処理部60は、姿勢変換部22と、プッシャー23と、プッシャー23との間で基板W群の受け渡しを行い、一括して基板W群を保持するバッチ処理部用搬送部24と、基板W群を一括して処理するバッチ処理部25’とを備える。
【0086】
バッチ処理部25’は、リフター26と、第2リンス処理ユニット33と、固化膜形成ユニット34と、除去ユニット35とを備える。バッチ処理部25’に於いて、第2リンス処理ユニット33、固化膜形成ユニット34及び除去ユニット35は、水平方向(矢印Xで示す方向)に順次配置される。
【0087】
<基板処理方法>
次に、本実施形態の基板処理システムを用いた基板処理方法について、図面を参照しながら以下に説明する。尚、本実施形態の基板処理方法に於いて、第1実施形態に係る基板処理方法と同様の工程については、その詳細な説明を省略する。
【0088】
本実施形態の基板処理方法は、基板W群が、基板搬送部50を介して収容部10から第1処理部40に搬送された後、リン酸処理(薬液処理)工程S1と、第1リンス処理工程S2とを行う。さらに、第1リンス処理後の基板W群が、基板搬送部50を介して第1処理部40から第2処理部60に搬送された後、第2リンス処理工程S3と、固化膜形成工程S4と、除去工程S5とを行う。
【0089】
先ず、収容部10から第1処理部40への基板W群の搬送を行う。すなわち、複数の基板W群を水平姿勢で収納した収納器11が収容部10に於ける通過口に対向する位置に配置されると、通過口を閉塞しているシャッター部材13が開けられ、基板搬送部50が、通過口を介して基板W群を一括して取り出す。続いて、基板搬送部50は、基板W群を一括して処理前基板載置部48aに渡す。
【0090】
次に、枚葉処理部用搬送部44の保持アーム46aが、処理前基板載置部48aから一枚の基板Wを取り出し、枚葉処理ユニット42a(又は42b)に搬送する。枚葉処理ユニット42aに搬送された基板Wは、基板保持部71により保持される。具体的には、搬入された基板Wがチャックピン71cにより水平姿勢で保持され、さらに回転駆動部71aの駆動によりスピンベース71bが回転すると、基板Wもスピンベース71bと共に回転する。さらに、制御ユニット30が旋回駆動部74へ動作指令を行い、ノズル72aを基板Wの表面中央部へ位置決めする。そして、制御ユニット30の動作指令により、配管72d及びノズル72aを介してリン酸溶液貯留部から基板Wの表面にリン酸溶液を供給する。基板Wの表面に供給されたリン酸溶液は、基板Wが回転することにより生ずる遠心力により、基板Wの表面中央付近から基板Wの周縁部に向かって流動し、基板Wの表面の全面に拡散する。これにより、基板Wの表面にリン酸処理が施される。リン酸処理が終了すると、制御ユニット30の動作指令によりリン酸溶液の供給が停止される。また、制御ユニット30が旋回駆動部74に動作指令を行い、ノズル72aを待機位置に位置決めする。
【0091】
次に、制御ユニット30が旋回駆動部74へ動作指令を行い、ノズル75aを基板Wの表面中央部へ位置決めする。そして、制御ユニット30の動作指令によりリンス液貯留部から配管75d及びノズル75aを介して、基板Wの表面にリンス液を供給する。基板Wの表面に供給されたリンス液は、基板Wが回転することにより生ずる遠心力により、基板Wの表面中央付近から基板Wの周縁部に向かって流動し、基板Wの表面の全面に拡散する。これにより、基板Wの表面に付着していたリン酸溶液がリンス液の供給によって除去され、基板Wの表面の全面がリンス液で覆われる。第1リンス処理が終了すると、制御ユニット30の動作指令によりリンス液の供給が停止される。また、制御ユニット30が旋回駆動部74に動作指令を行い、ノズル75aを待機位置に位置決めする。
【0092】
枚葉処理部41でのリン酸処理及び第1リンス処理が終了すると、枚葉処理部用搬送部44の保持アーム47aが、処理後の基板Wを、枚葉処理ユニット42aから処理後基板載置部48bに搬送する。処理後基板載置部48bでは、所定枚数の処理後の基板W群が揃うまで、高湿度環境下に於いて水平姿勢の状態で載置される。処理後基板載置部48bに所定枚数の処理後の基板W群が揃うと、基板搬送部50は処理後基板載置部48bから一括して、水平姿勢の状態の基板W群を取り出す。さらに、基板搬送部50は、第2処理部60の姿勢変換部22に、水平姿勢にある基板W群を一括して渡す。
【0093】
基板W群が姿勢変換部22に受け渡されると、その後は第1実施形態の場合と同様にして、第2リンス処理工程S3、固化膜形成工程S4及び除去工程S5がバッチ処理部25’で順次行われる。さらに、固化膜が除去された基板W群は、バッチ処理部用搬送部24により待機位置にまで搬送された後、前述の基板W群の搬入時とは逆に、バッチ処理部用搬送部24からプッシャー23に受け渡される。さらに、プッシャー23に受け渡された基板W群は、姿勢変換部22に受け渡された後、起立姿勢から水平姿勢に姿勢変換される。その後、水平姿勢に変換された基板W群は、基板搬送部50によって収納器11に戻される。以上により、本実施形態の基板処理方法が終了する。
【0094】
(第3実施形態)
本発明に係る第3実施形態について、以下に説明する。
本実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態と比較して、固化膜形成工程S4及び除去工程S5を同一のバッチ処理ユニット内で行う点が異なる。このような構成を採用することで、本実施形態では基板処理装置及びそれを含む基板処理システムの省スペース化及び小型化を図ることができる。また、このような構成によっても、本実施形態では、基板の表面に形成されたパターンの倒壊を低減又は防止しながら、基板処理のスループットを向上させつつ、基板の表面に付着した液体を除去することができる。
【0095】
<基板処理システム>
先ず、本発明の第3実施形態に係る基板処理システムについて、図面を参照しながら以下に説明する。尚、本実施形態に係る基板処理システムに於いて、第1実施形態及び第2実施形態に係る基板処理システムと同一の構成を有するものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0096】
本実施形態の基板処理システムは、基板Wの表面を処理する基板処理装置3を備える。基板処理装置3は、図9に示すように、収容部10と、複数の基板Wを一括処理する処理部20’と、基板処理装置3の各部を制御する制御ユニット30とを備える。図9は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す平面図である。尚、図9に於いては、図示したものの方向関係を明確にするために、適宜XYZ直交座標軸を表示する。同図に於いて、XY平面は水平面を表し、Z方向は鉛直上向きを表す。
【0097】
処理部20’は、基板移載ロボット21と、基板W群の姿勢変換を可能にする姿勢変換部22と、姿勢変換部22との間で基板W群を一括して受け渡しするプッシャー23と、プッシャー23との間で基板W群の受け渡しを行い、一括して基板W群を保持するバッチ処理部用搬送部24と、基板W群を一括して処理するバッチ処理部25”とを備える。
【0098】
バッチ処理部25”は、リフター26と、リン酸処理(薬液処理)ユニット31と、第1リンス処理ユニット32と、第2リンス処理ユニット33と、固化膜形成・除去ユニット80とを備えており、多槽バッチ式による処理を可能にしている。バッチ処理部25”に於いて、各ユニットは、矢印Xで示す方向に順次配置されている。
【0099】
固化膜形成・除去ユニット80は、基板W群の表面にそれぞれ一括して、昇華性物質を含む固化膜を形成し、その後、固化膜を昇華させて除去するバッチ処理ユニットである。図10は、本実施形態の基板処理システムに於ける固化膜形成・除去ユニット80の概略構成を示す断面図である。固化膜の形成は、第1及び第2実施形態の場合と同様、第2処理液中に浸漬された基板W群を第2処理液から取り出す際、第2処理液の溶媒を乾燥させながら行う。固化膜形成・除去ユニット80は、具体的には、図10に示すように、第2処理液を貯留することが可能な処理槽34aと、気体供給部81と、排気部82と、チャンバ83とを備える。
【0100】
処理槽34aは、第1実施形態の場合と同様、底部に設けられ、第2処理液を供給する注入管34bと、第2処理液を貯留する内槽34cと、内槽の上部開口の周縁部に設けられ、溢れ出た第2処理液を回収する外槽34dとを備える。
【0101】
気体供給部81は、チャンバ83内に不活性ガス又は気体状の有機化合物(以下、「不活性ガス等」という。)を供給することができる。チャンバ83内を不活性ガス等の雰囲気とすることにより、昇華性物質を含む固化膜を昇華させて除去することができる。気体供給部81としては、例えば、不活性ガス等を貯留する気体貯留部、配管及びバルブを備えるものが挙げられる。気体貯留部は、配管を介してチャンバ83と管路接続されている。また、バルブは配管に介挿される。気体貯留部には、貯留される不活性ガス等の温度を調整する気体温度調整部と、チャンバ83内に不活性ガス等を圧送するための加圧部が設けられていてもよい。気体温度調整部は、貯留されている不活性ガス等を加熱又は冷却して温度調整を行う。気体温度調整部としては特に限定されず、例えば、ペルチェ素子、温度調整した水を通した配管等、公知の温度調整機構を用いることができる。不活性ガス等の温度は特に限定されないが、通常は、0℃以上100℃以下の範囲内に設定することができる。不活性ガス等の温度を0℃以上にすることにより、チャンバ83の内部に存在する水蒸気が凝固して基板W群の表面に付着等するのを防止し、基板W群に対し悪影響が生じるのを防止することができる。また、加圧部としては、例えば、ポンプ等が挙げられる。尚、不活性ガス等の圧送は、不活性ガス等を気体貯留部内に圧縮貯留することによっても実現することができる。
【0102】
不活性ガスとしては、第1実施形態の不活性ガス供給部で供給される不活性ガスと同様のものを用いることができる。また、気体状の有機化合物としては、昇華性物質に対して活性を示さない気体であれば特に限定されない。気体状の有機化合物としては、より具体的には、IPA等が挙げられる。
【0103】
排気部82は、固化膜形成・除去ユニット80のチャンバ83内を、例えば、真空状態に減圧することができる。チャンバ83内を真空状態にすることにより、昇華性物質を含む固化膜を昇華させて除去することができる。排気部82としては、例えば、排気ポンプ、配管及びバルブを備えるものが挙げられる。排気ポンプは配管を介してチャンバ83と管路接続されており、例えば、公知のポンプを用いることができる。また、バルブは配管に介挿される。制御ユニット30の動作指令により、排気ポンプが駆動され、かつバルブが開栓されると、チャンバ83内に存在する気体を、配管を介してチャンバ83の外側に排気することができる。
【0104】
尚、固化膜形成・除去ユニット80に於いては、気体供給部81及び排気部82の少なくとも何れか一方が設けられていればよい。
【0105】
また本実施形態に於いては、固化膜形成・除去ユニット80に代えて、図11に示すような固化膜形成・除去ユニット80’を用いてもよい。同図に示す固化膜形成・除去ユニット80’は、処理槽34aと、昇華部85と、排気部82と、チャンバ83とを備える。図11は、本実施形態の基板処理システムに於ける固化膜形成・除去ユニット80’の概略構成を示す断面図である。
【0106】
昇華部85は、チャンバ83の上部に設けられる。昇華部85とチャンバ83との間には、基板W群の搬送を可能にする通過口が設けられている。さらに、この通過口はシャッター部材84により閉鎖することが可能となっており、これにより昇華部85は外部雰囲気と遮断する密閉性を有している。
【0107】
昇華部85の内部には前述の気体供給部81が設けられており、これにより昇華部85の内部を不活性ガス又は気体状の有機化合物の雰囲気にすることができる。その結果、昇華部85内に於いて、基板W群の表面に形成された固化膜を一括して昇華させ除去することができる。
【0108】
<基板処理方法>
次に、本実施形態の基板処理システムを用いた基板処理方法について、図面を参照しながら以下に説明する。尚、本実施形態の基板処理方法に於いて、収容部10から処理部20’への基板W群の搬入、リン酸処理工程S1、第1リンス処理工程S2及び第2リンス処理工程S3は、第1実施形態の場合と同様であるため、これらの詳細な説明は省略する。
【0109】
固化膜形成工程S4及び除去工程S5を、固化膜形成・除去ユニット80を用いて実施する場合、第2リンス処理ユニット33で第2リンス処理が施された基板W群は、制御ユニット30の動作指令により、リフター26によって固化膜形成・除去ユニット80まで搬送される。さらに、リフター26は処理槽34a内に下降し、起立姿勢の基板W群を第2処理液中に浸漬させる。浸漬後、リフター26が処理槽34aから上昇し、基板W群を第2処理液中から一括して引き上げる。固化膜は、基板W群の引き上げの際に形成される。
【0110】
続いて、基板W群の表面に形成された固化膜を昇華させて、固化膜の除去を行う(除去工程S5)。固化膜の除去は、基板W群がリフター26により処理槽34aから引き上げられた状態で、気体供給部81からチャンバ83内に、不活性ガス又は気体状の有機化合物が供給されることにより行われる。これにより、基板W群の表面にそれぞれ形成された固化膜が昇華し、基板W群から一括して除去される。
【0111】
尚、除去工程S5は、排気部82を用いても行うことができる。すなわち、基板W群がリフター26により処理槽34aから引き上げられた状態で、排気部82がチャンバ83内を減圧して真空状態にする。これにより、基板W群の表面にそれぞれ形成された固化膜が昇華し、基板W群から一括して除去することができる。
【0112】
除去工程S5の終了後、リフター26は基板W群をバッチ処理部用搬送部24に受け渡す。さらに、基板W群は、バッチ処理部用搬送部24により待機位置まで搬送された後、第1実施形態でも述べた通り、搬入時とは逆に、バッチ処理部用搬送部24からプッシャー23を介して姿勢変換部22に受け渡される。さらに、姿勢変換部22で、起立姿勢から水平姿勢に一括して姿勢変換された後、基板移載ロボット21によって収納器11に戻される。これにより、本実施形態の基板処理方法が終了する。
【0113】
また、固化膜形成・除去ユニット80’を用いて、固化膜形成工程S4及び除去工程S5を実施する場合、第2リンス処理が施された基板W群は、リフター26が処理槽34a内に下降することにより、起立姿勢の基板W群を第2処理液中に浸漬させた後、リフター26が処理槽34aから上昇することにより、基板W群を第2処理液中から一括して引き上げ、固化膜を形成する。さらに、制御ユニット30の動作指令によりシャッター部材84が開けられると、リフター26は起立姿勢の基板W群を昇華部85内に搬送する。基板W群が搬送され、シャッター部材84により通過口が閉塞されると、気体供給部81は、制御ユニット30からの動作指令により、昇華部85内に不活性ガス又は気体状の有機化合物を供給する。これにより、基板W群の表面にそれぞれ形成された固化膜を昇華させ、基板Wから一括して除去することができる。
【0114】
除去工程S5が終了すると、前述と同様、基板W群は収納器11まで搬送され、これにより本実施形態の基板処理方法は終了する。
【符号の説明】
【0115】
1~3…基板処理装置、10…収容部、11…収納器、20,60…処理部、21…基板移載ロボット、22…姿勢変換部、23…プッシャー、24…バッチ処理部用搬送部、25,25’,25”…バッチ処理部、26…リフター、30…制御ユニット、31…リン酸処理ユニット(薬液処理部)、32…第1リンス処理ユニット(第1リンス処理部)、33…第2リンス処理ユニット(第2リンス処理部)、34…固化膜形成ユニット(固化膜形成部)、35…除去ユニット(除去部)、36…固化膜、37…第2処理液、40…処理部、41…枚葉処理部、42a,42b…枚葉処理ユニット、44…第1処理部用搬送部、48a…処理前基板載置部、48b…処理後基板載置部、50…基板搬送部、71…基板保持部、72…リン酸溶液供給部、75…リンス液供給部、80,80’…固化膜形成・除去ユニット、81…気体供給部、82…排気部、83…チャンバ、85…昇華部、W…基板
図1
図2
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図5
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図10
図11