(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092683
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】パルス電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240701BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20240701BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240701BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/28 H
H02M3/155 W
H02M3/28 W
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208790
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 真吾
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB27
5H730BB85
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE08
5H730EE59
5H730FD01
5H730FG05
5H770CA01
5H770DA01
5H770DA44
5H770EA01
5H770HA03Z
(57)【要約】
【課題】任意のタイミングで多段階のレベルのパルス出力電圧を出力する。
【解決手段】パルス電源装置は、N個のDC-DCコンバータと、N個のインバータとを備える。N個のDC-DCコンバータは、第1直流出力端子と第2直流出力端子との間に直流電圧を発生する。N個のインバータのそれぞれは、対応するDC-DCコンバータにおける第1直流出力端子とパルス出力端子との間を短絡または切断する第1スイッチと、対応するDC-DCコンバータにおける第2直流出力端子とパルス出力端子との間を短絡または切断する第2スイッチとを含む。N個のうちの第1のDC-DCコンバータの第2直流出力端子は、基準電位に接続される。N個のうちの第n(nは、2以上、N以下の整数)のDC-DCコンバータの第1直流出力端子は、N個のうちの第(n-1)のインバータにおけるパルス出力端子に接続される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが第1直流入力端子及び第2直流入力端子で構成される直流入力部と第1直流出力端子及び第2直流出力端子で構成される直流出力部とを有し、前記第1直流入力端子と前記第2直流入力端子との間に入力した直流電圧を変圧し、前記第1直流出力端子と前記第2直流出力端子との間に変圧した直流電圧を発生させるN個(Nは2以上の整数)のDC-DCコンバータと、
それぞれがスイッチ及びパルス出力端子を有し、前記N個のDC-DCコンバータに一対一で対応して設けられるN個のインバータと
を備え、
前記N個のインバータのそれぞれは、前記N個のDC-DCコンバータのうちの対応するDC-DCコンバータにおける前記第1直流出力端子と前記パルス出力端子との間を短絡または切断する第1スイッチと、前記対応するDC-DCコンバータにおける前記第2直流出力端子と前記パルス出力端子との間を短絡または切断する第2スイッチとを含み、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチが相補的にスイッチング動作することによって、前記パルス出力端子からパルス出力電圧を出力するように構成されており、
前記N個のDC-DCコンバータのうちの第1のDC-DCコンバータの前記第2直流出力端子は、基準電位に接続され、
前記N個のDC-DCコンバータのうちの第NのDC-DCコンバータのパルス出力端子は、負荷に接続され、
前記N個のDC-DCコンバータのうちの第n(nは、2以上、N以下の整数)のDC-DCコンバータのそれぞれは、前記直流入力部と前記直流出力部との間に、電圧を変圧するための絶縁トランスを有しているとともに、前記第1直流出力端子が前記N個のインバータのうちの第(n-1)のインバータにおける前記パルス出力端子に接続されている
パルス電源装置。
【請求項2】
前記N個のインバータのそれぞれのインバータ内の前記スイッチのスイッチングタイミングを制御するパルス制御部をさらに備え、
前記N個のDC-DCコンバータのそれぞれは、スイッチング電源装置であり、
前記第nのDC-DCコンバータのそれぞれは、前記パルス制御部による前記N個のインバータのスイッチングタイミングに基づき、前記第1直流出力端子が前記基準電位となったタイミングにおける前記第2直流出力端子の電圧を検出し、検出した前記第2直流出力端子の電圧に基づき、前記第1直流出力端子と前記第2直流出力端子との間に発生する直流電圧を安定化させる
請求項1に記載のパルス電源装置。
【請求項3】
前記第1のDC-DCコンバータは、前記N個のDC-DCコンバータのうちの第2のDC-DCコンバータにおける前記第1直流出力端子と前記第2直流出力端子との間の電位差よりも絶対値が小さい直流電圧を発生させる
請求項1又は2に記載のパルス電源装置。
【請求項4】
前記第1のDC-DCコンバータは、前記N個のDC-DCコンバータのうちの第2~第N(Nは3以上の整数)のDC-DCコンバータにおける前記第1直流出力端子と前記第2直流出力端子との間の電位差の最大値よりも絶対値が小さい直流電圧を発生させる
請求項1又は2に記載のパルス電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3レベル以上の電圧を周期的に切り替えて出力するパルス電源装置として、バイポーラ方式のマルチレベルインバータ(特許文献1)が知られている。バイポーラ方式のマルチレベルインバータは、0Vを出力する短絡スイッチと、正側電圧と負側電圧とを切り替えるフルブリッジインバータとを備える。バイポーラ方式のマルチレベルインバータは、0Vと、正側電圧と、負側電圧とを周期的に切り替えることができる。しかし、バイポーラ方式のマルチレベルインバータは、正側電圧と負側電圧の絶対値が同一であり、デューティ比も50%である。このため、バイポーラ方式のマルチレベルインバータは、発生する電圧値およびデューティ比が限定されてしまっていた。
【0003】
このようなパルス電源装置として、NPC(Neutral Point Clamped)方式のマルチレベルインバータも知られている。NPC方式のマルチレベルインバータは、スイッチと、ダイオードとを利用したNPC回路または双方向スイッチ(TタイプNPC)を利用する。NPC方式のマルチレベルインバータは、複数のDC-DCコンバータを用いて複数の直流電圧を発生させることにより、絶対値の異なる正側電圧および負側電圧を出力したり、50%以外のデューティ比で電圧を切り替えたりすることができる。しかし、NPC方式のマルチレベルインバータは、絶対値の小さい正側電圧と絶対値の大きい負側電圧を出力するような場合であっても、絶対値の小さい正側電圧をスイッチングするスイッチの耐圧を、絶対値の大きい負側電圧をスイッチングするスイッチと同様に、高くしなければならなかった。正側電圧と負側電圧との大小関係が逆であっても同様である。このため、NPC方式のマルチレベルインバータは、スイッチのコストが高くなってしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/145092号公報
【特許文献2】特許第6225418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易に且つ少ないコストで、多段階のレベルのパルス出力電圧Voutを出力することができるパルス電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るパルス電源装置は、それぞれが第1直流入力端子及び第2直流入力端子で構成される直流入力部と第1直流出力端子及び第2直流出力端子で構成される直流出力部とを有し、前記第1直流入力端子と前記第2直流入力端子との間に入力した直流電圧を変圧し、前記第1直流出力端子と前記第2直流出力端子との間に変圧した直流電圧を発生させるN個(Nは2以上の整数)のDC-DCコンバータと、それぞれが出力端子を有し、前記N個のDC-DCコンバータに一対一で対応して設けられるN個のインバータとを備え、前記N個のインバータのそれぞれは、前記N個のDC-DCコンバータのうちの対応するDC-DCコンバータにおける前記第1直流出力端子と前記パルス出力端子との間を短絡または切断する第1スイッチと、前記対応するDC-DCコンバータにおける前記第2直流出力端子と前記パルス出力端子との間を短絡または切断する第2スイッチとを含み、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチが相補的にスイッチング動作することによって、前記パルス出力端子からパルス出力電圧を出力するように構成されており、前記N個のDC-DCコンバータのうちの第1のDC-DCコンバータの前記第2直流出力端子は、基準電位に接続され、前記N個のDC-DCコンバータのうちの第NのDC-DCコンバータのパルス出力端子は、負荷に接続され、前記N個のDC-DCコンバータのうちの第n(nは、2以上、N以下)のDC-DCコンバータのそれぞれは、前記直流入力部と前記直流出力部との間に、電圧を変圧するための絶縁トランスを有しているとともに、前記第1直流出力端子が前記N個のインバータのうちの第(n-1)のインバータにおける前記パルス出力端子に接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易に且つ少ないコストで、多段階のレベルのパルス出力電圧を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るパルス電源装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のシミュレーション波形の第1例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のシミュレーション波形の第2例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のシミュレーション波形の第3例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態のシミュレーション波形の第4例を示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係るパルス電源装置の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態のシミュレーション波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、第1実施形態に係るパルス電源装置100の構成を示す。パルス電源装置100は、負荷70に複数のレベルに周期的に変化するパルス出力電圧Voutを供給する。パルス電源装置100は、負荷70のインピーダンスの変動に関わらず目標の電位に安定化されたパルス出力電圧Voutを出力する。例えば、パルス電源装置100は、プラズマ発生装置にスイッチングパルスを供給するパルス発生装置として用いられる。なお、負荷70の等価回路は、例えば、
図1に示すように、キャパシタ71と抵抗72によって表される。また、パルス出力電圧Voutのパルス周波数は、100Hz~10MHz程度である。本実施形態では、パルス出力電圧Voutのパルス周波数は400kHzである。
【0010】
パルス電源装置100は、第1のDC-DCコンバータ1-1と、第2のDC-DCコンバータ1-2と、第1のインバータ2-1と、第2のインバータ2-2と、パルス制御部3とを備える。
【0011】
第1のDC-DCコンバータ1-1および第2のDC-DCコンバータ1-2は、電力変換用のスイッチ回路よりも後段に、整流素子により電圧を整流する整流回路を少なくとも含むスイッチング電源装置である。なお、第2のDC-DCコンバータ1-2では、トランス26-2の二次側に整流回路が配置されている。
【0012】
第1のDC-DCコンバータ1-1は、第1直流入力端子T11-1と、第2直流入力端子T12-1と、第1直流出力端子T21-1と、第2直流出力端子T22-1とを備える。なお、第1直流入力端子T11-1及び第2直流入力端子T12-1によって直流入力部が構成され、第1直流出力端子T21-1及び第2直流出力端子T22-1によって直流出力部が構成される。第1直流入力端子T11-1、第2直流入力端子T12-1、第1直流出力端子T21-1および第2直流出力端子T22-1は、電極であってもよいし、配線の一部分であってもよい。他の端子も同様である。第1のDC-DCコンバータ1-1は、第1直流入力端子T11-1と第2直流入力端子T12-1との間に直流の入力電圧Vinが供給される。入力電圧Vinは、例えば電池から出力された電圧であってもよいし、交流電力を整流して平滑化した電圧であってもよい。第2直流入力端子T12-1は、基準電位(例えばグランド電位)に接続される。第1のDC-DCコンバータ1-1は、供給された入力電圧Vinを、所望の電位差V1(本実施形態では1kV)を有する電圧に変換して第1直流出力端子T21-1と第2直流出力端子T22-1との間に出力する。以降、第1直流出力端子T21-1の第2直流出力端子T22-1に対する電圧を第1直流電圧V1とする。
【0013】
なお、第1直流出力端子T21-1の電位は、第2直流出力端子T22-1の電位よりも高い。また、第1のDC-DCコンバータ1-1の第2直流出力端子T22-1は、第2直流入力端子T12-1を介して基準電位に接続される。そのため、第1のDC-DCコンバータ1-1の第1直流出力端子T21-1の基準電位に対する電圧は第1直流電圧V1と同じである。
【0014】
第2のDC-DCコンバータ1-2は、第1直流入力端子T11-2と、第2直流入力端子T12-2と、第1直流出力端子T21-2と、第2直流出力端子T22-2とを備える。第2のDC-DCコンバータ1-2は、第1直流入力端子T11-2と第2直流入力端子T12-2との間に入力電圧Vinが供給される。第2直流入力端子T12-2は、基準電位に接続される。第2のDC-DCコンバータ1-2は、供給された入力電圧Vinを、所望の電位差V2(本実施形態では10kV)を有する電圧に変換して第1直流出力端子T21-2と第2直流出力端子T22-2との間に出力する。以降、第1直流出力端子T21-2の第2直流出力端子T22-2に対する電圧を第2直流電圧V2とする。なお、第1直流出力端子T21-2の電位は、第2直流出力端子T22-2の電位よりも高い。
【0015】
また、本実施形態において、第1のDC-DCコンバータ1-1は、第2のDC-DCコンバータ1-2から発生される直流電圧よりも絶対値が小さい直流電圧を発生する。すなわち、第1のDC-DCコンバータ1-1から出力される第1直流電圧V1の絶対値は、第2のDC-DCコンバータ1-2から出力される第2直流電圧V2の絶対値よりも小さい。
【0016】
本実施形態において、第1のDC-DCコンバータ1-1は、チョッパ型のスイッチング電源装置であり、インダクタ11と、ダイオード12と、キャパシタ13と、変換スイッチ14と、電圧制御部40-1とを有する。
【0017】
インダクタ11は、一方の端子が第1直流入力端子T11-1に接続され、他方の端子がダイオード12のアノードに接続される。ダイオード12は、カソードが第1直流出力端子T21-1に接続される。キャパシタ13は、第1直流出力端子T21-1と第2直流出力端子T22-1との間に接続される。変換スイッチ14は、インダクタ11とダイオード12との間の接続点N1と、第2直流入力端子T12-1との間に設けられる。変換スイッチ14は、電圧制御部40-1による制御に応じて接続点N1と第2直流入力端子T12-1との間を短絡または切断する。変換スイッチ14は、例えば、エンハンスメント型のNチャネルのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。この場合、変換スイッチ14は、ドレインが接続点N1に接続され、ソースが第2直流入力端子T12-1に接続される。そして、変換スイッチ14は、ゲートに、電圧制御部40-1から制御信号が与えられる。
【0018】
第2直流出力端子T22-1は、第2直流入力端子T12-1と接続される。すなわち、第1のDC-DCコンバータ1-1における第2直流出力端子T22-1は、基準電位に接続される。
【0019】
電圧制御部40-1は、マイクロコントローラ等の処理回路により実現される。電圧制御部40-1は、変換スイッチ14に制御信号を与えて、変換スイッチ14を短絡状態または切断状態に交互に切り替えるスイッチング制御をする。電圧制御部40-1は、第1直流電圧V1を図略の検出器によって検出する。電圧制御部40-1は、検出した第1直流電圧V1の検出値が予め設定された目標電位となるように、変換スイッチ14におけるスイッチングのデューティ比等を制御する。これにより第1のDC-DCコンバータ1-1は、第1直流出力端子T21-1と第2直流出力端子T22-1との間に、安定化した第1直流電圧V1を発生させることができる。このような第1のDC-DCコンバータ1-1は、第1直流出力端子T21-1と第2直流出力端子T22-1との間に第1直流電圧V1の電位差を発生させ、且つ、第1直流出力端子T21-1に正極性の電圧を出力することができる。
【0020】
本実施形態において、第2のDC-DCコンバータ1-2は、絶縁型のスイッチング電源装置であり、第1直流入力端子T11-2と、第2直流入力端子T12-2と、第1直流出力端子T21-2と、第2直流出力端子T22-2と、第1一次側スイッチ21-2と、第2一次側スイッチ22-2と、第3一次側スイッチ23-2と、第4一次側スイッチ24-2と、一次側インダクタ25-2と、トランス26-2と、第1ダイオード27-2と、第2ダイオード28-2と、第3ダイオード29-2と、第4ダイオード30-2と、二次側インダクタ31-2と、キャパシタ32-2と、電圧制御部40-2とを備える。なお、第1直流入力端子T11-2及び第2直流入力端子T12-2によって直流入力部が構成され、第1直流出力端子T21-2及び第2直流出力端子T22-2によって直流出力部が構成される。第1直流入力端子T11-2、第2直流入力端子T12-2、第1直流出力端子T21-2および第2直流出力端子T22-2は、電極であってもよいし、配線の一部分であってもよい。
【0021】
第2のDC-DCコンバータ1-2の第1直流入力端子T11-2と第2直流入力端子T12-2との間には、第1のDC-DCコンバータ1-1と同様に、直流の入力電圧Vinが供給される。また、第2直流入力端子T12-2は、第1のDC-DCコンバータ1-1の第2直流入力端子T12-1と同様に、基準電位(例えばグランド電位)に接続される。
【0022】
第2のDC-DCコンバータ1-2は、概略的には、インバータ回路、トランス、整流回路および平滑回路によって構成されている。インバータ回路は、第1一次側スイッチ21-2、第2一次側スイッチ22-2、第3一次側スイッチ23-2、第4一次側スイッチ24-2、一次側インダクタ25-2およびトランス26-2の一次側コイルによって構成される。整流回路は、第1ダイオード27-2、第2ダイオード28-2、第3ダイオード29-2および第4ダイオード30-2によって構成される。平滑回路は、二次側インダクタ31-2およびキャパシタ32-2によって構成される。
【0023】
そして、第2のDC-DCコンバータ1-2は、供給された入力電圧Vinをインバータ回路で交流電圧に変換し、トランス26-2によって変圧し、整流回路および平滑回路によって直流電圧に変換する。これにより、第2のDC-DCコンバータ1-2は、第2直流出力端子T22-2を基準とした場合、第1直流出力端子T21-2に正極性の第2直流電圧V2(本実施形態では10kV)を発生させる。
【0024】
この際、第2のDC-DCコンバータ1-2は、電圧制御部40-2によって第2直流電圧V2の検出値(図略の検出器によって検出)が目標電位になるように、第1一次側スイッチ21-2、第2一次側スイッチ22-2、第3一次側スイッチ23-2および第4一次側スイッチ24-2をスイッチング制御する。これにより第2のDC-DCコンバータ1-2は、第1直流出力端子T21-2と第2直流出力端子T22-2との間に、安定化した第2直流電圧V2を発生させることができる。
【0025】
また、第2のDC-DCコンバータ1-2は、トランス26-2を用いて昇圧するので、例えば、絶対値が10kV以上の高電圧を発生させることが容易である。そのため、高電圧が用いられる用途に好適に用いることができる。
【0026】
以下、第2のDC-DCコンバータ1-2の具体的な構成を説明する。第1一次側スイッチ21-2および第2一次側スイッチ22-2は、第1直流入力端子T11-2と第2直流入力端子T12-2との間に直列に接続される。第3一次側スイッチ23-2および第4一次側スイッチ24-2は、第1直流入力端子T11-2と第2直流入力端子T12-2との間に直列に接続される。なお、第1一次側スイッチ21-2と第2一次側スイッチ22-2との接続点を接続点N2-2とし、第3一次側スイッチ23-2と第4一次側スイッチ24-2との接続点を接続点N3-2とする。
【0027】
第1一次側スイッチ21-2、第2一次側スイッチ22-2、第3一次側スイッチ23-2および第4一次側スイッチ24-2は、例えば、エンハンスメント型のNチャネルのMOSFETである。この場合、第1一次側スイッチ21-2のドレインが第1直流入力端子T11-2に接続される。第2一次側スイッチ22-2のドレインが第1一次側スイッチ21-2のソースに接続される。第2一次側スイッチ22-2のソースは、第2直流入力端子T12-2に接続される。また、第3一次側スイッチ23-2のドレインが第1直流入力端子T11-2に接続される。第4一次側スイッチ24-2のドレインが第3一次側スイッチ23-2のソースに接続される。第4一次側スイッチ24-2のソースは、第2直流入力端子T12-2に接続される。これらのスイッチのゲートには、電圧制御部40-2から制御信号が与えられる。この際、第1一次側スイッチ21-2と第2一次側スイッチ22-2とは、相補的にスイッチング動作を行うように制御される。また、第3一次側スイッチ23-2と第4一次側スイッチ24-2とは、相補的にスイッチング動作を行うように制御される。
【0028】
一次側インダクタ25-2は、接続点N2-2とトランス26-2の一次側コイルの一方の端子との間に接続される。なお、この一次側インダクタ25-2は、第1一次側スイッチ21-2、第2一次側スイッチ22-2、第3一次側スイッチ23-2および第4一次側スイッチ24-2の制御方法によっては必要でない場合がある。例えば、位相シフト制御を行う場合には、一次側インダクタ25-2を備えている方が望ましいが、位相シフト制御を行わない場合には、省略可能である。
【0029】
トランス26-2は、直流入力部と直流出力部との間の絶縁を行いつつ、変圧を行うために用いられる。このトランス26-2の一次側コイルの一方の端子は、一次側インダクタ25-2に接続され、トランス26-2の一次側コイルの他方の端子は、接続点N3-2に接続される。トランス26-2の二次側コイルは、4つのダイオード(第1ダイオード27-2、第2ダイオード28-2、第3ダイオード29-2及び第4ダイオード30-2)によって構成されるダイオードブリッジに接続されている。
【0030】
第1ダイオード27-2と第2ダイオード28-2とは、第1ダイオード27-2のアノードに第2ダイオード28-2のカソードが接続されるように直列接続される。第1ダイオード27-2と第2ダイオード28-2との接続点を接続点N4-2とする。また、第3ダイオード29-2と第4ダイオード30-2とは、第3ダイオード29-2のアノードに第4ダイオード30-2のカソードが接続されるように直列接続される。第3ダイオード29-2と第4ダイオード30-2との接続点を接続点N5-2とする。
【0031】
トランス26-2の二次側コイルの一方の端子は、接続点N4-2に接続され、トランス26-2の二次側コイルの他方の端子は、接続点N5-2に接続される。また、第1ダイオード27-2のカソードと第3ダイオード29-2のカソードとが接続点N6-2で接続され、第2ダイオード28-2のアノードと第4ダイオード30-2のアノードとが接続点N7-2で接続される。
【0032】
二次側インダクタ31-2は、一方の端子が接続点N6-2に接続され、他方の端子が第1直流出力端子T21-2に接続される。キャパシタ32-2は、第1直流出力端子T21-2と第2直流出力端子T22-2との間に接続される。また、第2のDC-DCコンバータ1-2における第1直流出力端子T21-2は、後述する第1のインバータ2-1のパルス出力端子T3-1に接続される。
【0033】
電圧制御部40-2は、マイクロコントローラ等の処理回路により実現される。電圧制御部40-2は、第1のDC-DCコンバータ1-1の電圧制御部40-1と共通回路により実現されてもよい。
【0034】
電圧制御部40-2は、第1直流出力端子T21-2が基準電位となったタイミングにおける第2直流出力端子T22-2の電圧を検出することにより、第1直流出力端子T21-2と第2直流出力端子T22-2との間に発生する第2直流電圧V2を検出する。電圧制御部40-2は、検出した第2直流電圧V2が予め設定された目標電位となるように、インバータ回路を構成する4つのスイッチにおけるスイッチングのデューティ比等を制御する。
【0035】
上記のように、第2のDC-DCコンバータ1-2の直流入力部と直流出力部との間にはトランス26-2が備わっているので、トランス26-2の一次側と二次側とが絶縁されている。そのため、第2のDC-DCコンバータ1-2における第1直流出力端子T21-2が第1のインバータ2-1のパルス出力端子T3-1に接続されていない場合、第1直流出力端子T21-2の電位は確定しておらず、直流的にフローティング状態となる。
【0036】
しかし、第2のDC-DCコンバータ1-2における第1直流出力端子T21-2は、後述する第1のインバータ2-1のパルス出力端子T3-1に接続され、第1のインバータ2-1のスイッチングによって基準電位に接続される期間が発生する。従って、第2のDC-DCコンバータ1-2は、第1直流出力端子T21-2が基準電位となったタイミングにおける第2直流出力端子T22-2の電圧を検出することができる。
【0037】
このような第2のDC-DCコンバータ1-2は、第1直流出力端子T21-2と第2直流出力端子T22-2との間に、安定化した第2直流電圧V2(本実施形態では10kV)の電位差を発生させることができる。
【0038】
上述したように第2のDC-DCコンバータ1-2の第1直流出力端子T21-2は、第2のDC-DCコンバータ1-2の回路内部において直流的にフローティング状態となっている。また、第1直流出力端子T21-2は、第1のインバータ2-1のパルス出力端子T3-1に接続されているので、第1直流出力端子T21-2の電位は、パルス出力端子T3-1の電位と同じ電位になる。また、第2直流出力端子T22-2の電位は、第1直流出力端子T21-2の電位から第2直流電圧V2を減算した電位となる。
【0039】
後述するように、本実施形態の場合、パルス出力端子T3-1の電位は、1kVまたは0V(グランド電位)であるので、第1直流出力端子T21-2の電位も1kVまたは0Vになる。そのため、第2直流出力端子T22-2の電位は、-9kVまたは-10kVになる。したがって、本実施形態に係るパルス電源装置100は、最大4レベルのパルス出力電圧Voutを出力することができる。
【0040】
第1のインバータ2-1は、第1のDC-DCコンバータ1-1に対応して設けられる。第2のインバータ2-2は、第2のDC-DCコンバータ1-2に対応して設けられる。
【0041】
第1のインバータ2-1は、パルス出力端子T3-1と、第1スイッチ51-1と、第2スイッチ52-1とを有する。第1のインバータ2-1におけるパルス出力端子T3-1は、第2のDC-DCコンバータ1-2の第1直流出力端子T21-2に接続される。
【0042】
第1スイッチ51-1は、パルス制御部3からの第1ハイ制御信号S11に応じて、第1のDC-DCコンバータ1-1における第1直流出力端子T21-1とパルス出力端子T3-1との間を短絡または切断する。第1スイッチ51-1は、例えば、エンハンスメント型のNチャネルのMOSFETである。この場合、第1スイッチ51-1は、ドレインが第1直流出力端子T21-1に接続され、ソースがパルス出力端子T3-1に接続される。第1スイッチ51-1は、ゲートに、第1ハイ制御信号S11が与えられる。
【0043】
第2スイッチ52-1は、パルス制御部3からの第1ロー制御信号S12に応じて、第1のDC-DCコンバータ1-1における第2直流出力端子T22-1と、パルス出力端子T3-1との間を短絡または切断する。第2スイッチ52-1は、例えば、エンハンスメント型のNチャネルのMOSFETである。この場合、第2スイッチ52-1は、ドレインがパルス出力端子T3-1に接続され、ソースが第2直流出力端子T22-1に接続される。第2スイッチ52-1は、ゲートに、第1ロー制御信号S12が与えられる。
【0044】
第1のインバータ2-1における第1スイッチ51-1および第2スイッチ52-1は、相補的にスイッチング動作をする。すなわち、第1スイッチ51-1が短絡状態である場合、第2スイッチ52-1は、切断状態である。第1スイッチ51-1が切断状態である場合、第2スイッチ52-1は、短絡状態である。
【0045】
その結果、第1のインバータ2-1のパルス出力端子T3-1の電位は、第1スイッチ51-1が短絡状態のときに第1直流電圧V1と同じ電位になり、第2スイッチ52-1が短絡状態のときに基準電位となる。そのため、第1のインバータ2-1のパルス出力端子T3-1から出力される電圧(以下、第1パルス出力電圧)は、第1スイッチ51-1および第2スイッチ52-1のスイッチング動作によって周期的に変化する。また、第1のインバータ2-1のパルス出力端子T3-1の電位は確定する。そのため、第2のDC-DCコンバータ1-2における第1直流出力端子T21-2の電位も確定する。
【0046】
第2のインバータ2-2は、パルス出力端子T3-2と、第1スイッチ51-2と、第2スイッチ52-2とを有する。第2のインバータ2-2におけるパルス出力端子T3-2は、負荷70に接続される。
【0047】
第1スイッチ51-2は、パルス制御部3からの第2ハイ制御信号S21に応じて、第2のDC-DCコンバータ1-2における第1直流出力端子T21-2とパルス出力端子T3-2との間を短絡または切断する。第1スイッチ51-2は、例えば、エンハンスメント型のNチャネルのMOSFETである。この場合、第1スイッチ51-2は、ドレインが第1直流出力端子T21-2に接続され、ソースがパルス出力端子T3-2に接続される。第1スイッチ51-2は、ゲートに、第2ハイ制御信号S21が与えられる。
【0048】
第2スイッチ52-2は、パルス制御部3からの第2ロー制御信号S22に応じて、第2のDC-DCコンバータ1-2における第2直流出力端子T22-2と、パルス出力端子T3-2との間を短絡または切断する。第2スイッチ52-2は、例えば、エンハンスメント型のNチャネルのMOSFETである。この場合、第2スイッチ52-2は、ドレインがパルス出力端子T3-2に接続され、ソースが第2直流出力端子T22-2に接続される。第2スイッチ52-2は、ゲートに、第2ロー制御信号S22が与えられる。
【0049】
第2のインバータ2-2における第1スイッチ51-2および第2スイッチ52-2は、相補的にスイッチング動作をする。すなわち、第1スイッチ51-2が短絡状態である場合、第2スイッチ52-2は、切断状態である。第1スイッチ51-2が切断状態である場合、第2スイッチ52-2は、短絡状態である。
【0050】
その結果、第2のインバータ2-2のパルス出力端子T3-2の電位は、第1スイッチ51-2が短絡状態のときに第1直流出力端子T21-2と同じ電位になり、第2スイッチ52-1が短絡状態のときに第2直流出力端子T22-2と同じ電位となる。そのため、第2のインバータ2-2のパルス出力端子T3-2から出力される電圧(以下、第2パルス出力電圧)は、第1スイッチ51-2および第2スイッチ52-2のスイッチング動作によって周期的に変化する。この第2パルス出力電圧がパルス出力電圧Voutとして負荷70に向けて出力される。
【0051】
なお、本実施形態では、第2のDC-DCコンバータ1-2における第1直流出力端子T21-2と第2直流出力端子T22-2との間の電位差は10kVなので、第1スイッチ51-2の両端および第2スイッチ52-2の両端には、10kVの電位差が生じる場合がある。そのため、複数のスイッチを直列接続することにより、電位差を分担負担してもよい。例えば、第1スイッチ51-2および第2スイッチ52-2は、それぞれ5個のスイッチを直列接続した構成にしてもよい。もちろん、第1スイッチ51-2および第2スイッチ52-2だけでなく、他のスイッチも同様に複数のスイッチを直列接続した構成にしてもよい。
【0052】
パルス制御部3は、マイクロコントローラ等の処理回路により実現される。パルス制御部3は、第1のDC-DCコンバータ1-1の電圧制御部40-1および第2のDC-DCコンバータ1-2の電圧制御部40-2と共通回路により実現されてもよい。
【0053】
パルス制御部3は、第1のインバータ2-1および第2のインバータ2-2のスイッチングを制御する。パルス制御部3は、第1ハイ制御信号S11および第1ロー制御信号S12を第1のインバータ2-1に与え、第2ハイ制御信号S21および第2ロー制御信号S22を第2のインバータ2-2に与える。
【0054】
パルス制御部3は、第1のインバータ2-1に含まれる第1スイッチ51-1および第2スイッチ52-1を相補的にスイッチングさせれば、デューティ比およびスイッチング周期をどのように制御してもよい。第2のインバータ2-2に対しても同様である。パルス制御部3は、第1のインバータ2-1のデューティ比およびスイッチング周期と、第2のインバータ2-2のデューティ比およびスイッチング周期を互いに相関無く制御してもよい。
【0055】
上述したように第2のDC-DCコンバータ1-2の第1直流出力端子T21-2は、第2のDC-DCコンバータ1-2の回路内部において直流的にフローティング状態となっている。しかし、第2のDC-DCコンバータ1-2の第1直流出力端子T21-2は、第1のインバータ2-1のパルス出力端子T3-1に接続されている。さらに、第1のDC-DCコンバータ1-1の第2直流出力端子T22-1は、基準電位に接続されている。従って、第2のDC-DCコンバータ1-2の第1直流出力端子T21-2は、第1のインバータ2-1の第2スイッチ52-1が短絡状態の場合に、基準電位となる。このため、第2のDC-DCコンバータ1-2の電圧制御部40-2は、第1のインバータ2-1のスイッチングタイミングに基づき、第1直流出力端子T21-2が基準電位となったタイミングにおける第2直流出力端子T22-2の電圧を検出することができる。例えば、第2のDC-DCコンバータ1-2の電圧制御部40-2は、第1ロー制御信号S12のタイミングに基づき、第1直流出力端子T21-2が基準電位となったタイミングにおける第2直流出力端子T22-2の電圧を検出することができる。これにより、第2のDC-DCコンバータ1-2は、第1直流出力端子T21-2と第2直流出力端子T22-2との間に安定化した第2直流電圧V2を発生させることができる。
【0056】
上記のようにパルス電源装置100を構成すれば、第1直流電圧V1の電位差、第2直流電圧V2の電位差、スイッチングタイミングを調整することによって、任意のタイミングで多段階のレベルのパルス出力電圧Voutを出力することができる。
【0057】
さらに、上述したように第2のDC-DCコンバータ1-2の第1直流出力端子T21-2は、第2のDC-DCコンバータ1-2の回路内部において直流的にフローティング状態となっている。そのため、第1のインバータ2-1のパルス出力端子T3-1の電位は、高電位である第2のDC-DCコンバータ1-2の第2直流出力端子T22-2の電位の影響を受けない。
【0058】
そのため、第1のインバータ2-1に含まれる第1スイッチ51-1および第2スイッチ52-1の耐圧に影響するのは、第1直流出力端子T21-2と第2直流出力端子T22-2との間の電位差(第1直流電圧V1)である。
【0059】
したがって、第2直流電圧V2の絶対値が、第1直流電圧V1の絶対値と比較して大きい場合であっても、第1のインバータ2-1に含まれる第1スイッチ51-1および第2スイッチ52-1を、第1直流電圧V1をスイッチングできる程度の耐圧の素子により実現することができる。これにより、パルス電源装置100は、簡易に且つ少ないコストで、任意のタイミングで多段階のレベルのパルス出力電圧Voutを出力することができる。
【0060】
図2は、第1実施形態に係るパルス電源装置100のシミュレーション波形の第1例を示す。(A)は、第1ハイ制御信号S
11の波形の一例を示す。(B)は、第1ロー制御信号S
12の波形の一例を示す。(C)は、第2ハイ制御信号S
21の波形の一例を示す。(D)は、第2ロー制御信号S
22の波形の一例を示す。
【0061】
なお、本実施形態では、第1ハイ制御信号S11、第1ロー制御信号S12、第2ハイ制御信号S21および第2ロー制御信号S22の1周期の時間は、2.5μ秒である。そのため、パルス出力電圧Voutのパルス周波数は400kHzになる。
【0062】
(E)は、第1のインバータ2-1が仮に負荷70に直接接続されている場合、第1のインバータ2-1から出力される第1パルス出力電圧を示す。
図2の場合、第1パルス出力電圧は、第1ハイ制御信号S
11がH論理の場合に第1直流電圧V
1(1kV)となり、第1ロー制御信号S
12がH論理の場合に0Vとなる。
【0063】
(F)は、第2のインバータ2-2が仮に負荷70に直接接続されている場合、すなわち、第2のDC-DCコンバータ1-2の第1直流出力端子T21-2が、第1のインバータ2-1のパルス出力端子T3-1と接続されておらず、且つ、第2のDC-DCコンバータ1-2の第1直流出力端子T21-2が基準電位に接続されていると仮定した場合の第2パルス出力電圧を示す。すなわち、第2のインバータ2-2のパルス出力端子T3-2の電位を示す。
図2の場合、第2パルス出力電圧は、第2ハイ制御信号S
21がH論理の場合に0Vとなり、第2ロー制御信号S
22がH論理の場合に-10kVとなる。
【0064】
(G)は、パルス出力電圧Voutを示す。パルス電源装置100は、(E)に示す第1パルス出力電圧と、(F)に示す第2パルス出力電圧とを加算したパルス出力電圧Voutを出力する。
図2の場合、パルス電源装置100は、(G)に示すように、0V、1kV、0V、-10kVを繰り返すパルス出力電圧Voutを出力することができる。このように、パルス電源装置100は、第1直流電圧V
1、第2直流電圧V
2並びに第1のインバータ2-1および第2のインバータ2-2のスイッチングタイミングを制御することにより、任意のタイミングで多段階のレベルのパルス出力電圧Voutを出力することができる。
【0065】
図3は、第1実施形態に係るパルス電源装置100のシミュレーション波形の第2例を示す。
図3の(A)~(F)は、
図2の(A)~(F)と同一の信号および電圧を示す。
図3の場合、パルス電源装置100は、(G)に示すように、0V、-10kV、-9kVを繰り返すパルス出力電圧Voutを出力することができる。
【0066】
図4は、第1実施形態に係るパルス電源装置100のシミュレーション波形の第3例を示す。
図4の(A)~(F)は、
図2の(A)~(F)と同一の信号および電圧を示す。
図4の場合、パルス電源装置100は、(G)に示すように、+1kV、0V、-10kV、-9kVを繰り返すパルス出力電圧Voutを出力することができる。
【0067】
図5は、第1実施形態に係るパルス電源装置100のシミュレーション波形の第4例を示す。
図5の(A)~(F)は、
図2の(A)~(F)と同一の信号および電圧を示す。
図5の場合、パルス電源装置100は、(G)に示すように、+1kV、0V、-9kV、-10kVを繰り返すパルス出力電圧Voutを出力することができる。このようにパルス電源装置100は、任意のタイミングで多段階のレベルのパルス出力電圧Voutを出力することができる。
【0068】
図6は、第2実施形態に係るパルス電源装置200の構成を負荷70とともに示す。第2実施形態に係るパルス電源装置200は、第1実施形態に係るパルス電源装置100と略同一の機能および構成を有し、パルス電源装置100が備える回路と略同一の回路を含む。第1実施形態に係るパルス電源装置100が備える回路と同一の回路については、同一の符号を付けて詳細な説明を省略する。
【0069】
第2実施形態に係るパルス電源装置200は、N個(Nは2以上の整数)のDC-DCコンバータ1と、N個のインバータ2と、パルス制御部3とを備える。
【0070】
N個のDC-DCコンバータ1のそれぞれは、電力変換用のスイッチ回路よりも後段に、整流素子により電圧を整流する整流回路を含むスイッチング電源装置である。N個のDC-DCコンバータ1は、第1のDC-DCコンバータ1-1から、第NのDC-DCコンバータ1-Nにより構成される。第1のDC-DCコンバータ1-1および第2のDC-DCコンバータ1-2は、第1実施形態と同一構成である。
【0071】
また、本実施形態において、第nのDC-DCコンバータ1-n(nは、3以上、N以下の整数)は、第2のDC-DCコンバータ1-2と同じ構成の絶縁型のスイッチング電源装置であるが、それぞれのDC-DCコンバータ1における中継端子T21-nと中継端子T22-nとの間の電位差は、それぞれのDC-DCコンバータ1で異なってもよい。なお、第2実施形態の説明においては、n番目の第1直流入力端子を第1直流入力端子T11-n、n番目の第2直流入力端子を第2直流入力端子T12-n、n番目の第1直流出力端子を第1直流出力端子T21-nおよびn番目の第2直流出力端子を第2直流出力端子T22-nとしている。
【0072】
第nのDC-DCコンバータ1-nは、第1直流入力端子T11-nと、第2直流入力端子T12-nと、第1直流出力端子T21-nと、第2直流出力端子T22-nとを備える。第nのDC-DCコンバータ1-nは、第1直流入力端子T11-nと第2直流入力端子T12-nとの間に入力電圧Vinが供給される。第2直流入力端子T12-nは、基準電位に接続される。第nのDC-DCコンバータ1-nは、供給された入力電圧Vinを、所望の電位差Vnを有する電圧に変換して第1直流出力端子T21-nと第2直流出力端子T22-nとの間に出力する。以降、第1直流出力端子T21-nの第2直流出力端子T22-n対する電圧を第n直流電圧Vnとする。なお、第1直流出力端子T21-nの電位は、第2直流出力端子T22-nの電位よりも高い。
【0073】
また、第nのDC-DCコンバータ1-nの第1直流出力端子T21-nは、第nのDC-DCコンバータ1-nの回路内部において直流的にフローティング状態となっている。また、第1直流出力端子T21-nは、第(n-1)のインバータ2-(n-1)のパルス出力端子T3-(n-1)に接続されているので、第1直流出力端子T21-nの電位は、パルス出力端子T3-(n-1)の電位と同じ電位になる。また、第2直流出力端子T22-nの電位は、第1直流出力端子T21-nの電位から第n直流電圧Vnを減算した電位となる。
【0074】
また、本実施形態において、第2のDC-DCコンバータ1-2~第NのDC-DCコンバータ1-Nまでのいずれかで発生される直流電圧(第1直流電圧V1~第N直流電圧VN)の絶対値は、第1のDC-DCコンバータ1-1から発生される第1直流電圧V1の絶対値よりも大きい。
【0075】
N個のインバータ2は、N個のDC-DCコンバータ1に一対一で対応して設けられる。N個のインバータ2は、第1のインバータ2-1から第Nのインバータ2-Nにより構成される。N個のインバータ2のうち第1のインバータ2-1は、第1のDC-DCコンバータ1-1に対応する。N個のインバータ2のうち第nのインバータ2-nは、第nのDC-DCコンバータ1-nに対応する。第1のインバータ2-1および第2のインバータ2-2は、第1実施形態と同一である。ただし、負荷70は、第Nのインバータ2-Nのパルス出力端子T3-Nに接続されている。
【0076】
第nのインバータ2-nは、パルス出力端子T3-nと、第1スイッチ51-nと、第2スイッチ52-nとを有する。
【0077】
N個のインバータ2のうちの第mのインバータ2-m(mは、2以上、N-1以下)のパルス出力端子T3-mは、第(m+1)のDC-DCコンバータ1-(m+1)の第1直流出力端子T21-(m+1)に接続される。すなわち、第nのDC-DCコンバータ1-nの第1直流出力端子T21-nは、N個のインバータ2のうちの第(n-1)のインバータ2-(n-1)におけるパルス出力端子T3-(n-1)に接続される。第Nのインバータ2-Nのパルス出力端子T3-Nは、負荷70に接続される。
【0078】
第1スイッチ51-nは、パルス制御部3からの第nハイ制御信号Sn1に応じて、第nのDC-DCコンバータ1-nにおける第1直流出力端子T21-nとパルス出力端子T3-nとの間を短絡または切断する。第1スイッチ51-nは、例えば、エンハンスメント型のNチャネルのMOSFETである。この場合、第1スイッチ51-nは、ドレインが第1直流出力端子T21-nに接続され、ソースがパルス出力端子T3-nに接続される。第1スイッチ51-nは、ゲートに、第nハイ制御信号Sn1が与えられる。
【0079】
第2スイッチ52-nは、パルス制御部3からの第nロー制御信号Sn2に応じて、第nのDC-DCコンバータ1-nにおける第2直流出力端子T22-nと、パルス出力端子T3-nとの間を短絡または切断する。第2スイッチ52-nは、例えば、エンハンスメント型のNチャネルのMOSFETである。この場合、第2スイッチ52-nは、ドレインがパルス出力端子T3-nに接続され、ソースが第2直流出力端子T22-nに接続される。第2スイッチ52-nは、ゲートに、第nロー制御信号Sn2が与えられる。第nのインバータ2-nにおける第1スイッチ51-nおよび第2スイッチ52-nは、相補的にスイッチング動作をする。
【0080】
パルス制御部3は、N個のインバータ2のそれぞれのスイッチングを制御する。パルス制御部3は、第1ハイ制御信号S11および第1ロー制御信号S12を第1のインバータ2-1に与える。パルス制御部3は、第nハイ制御信号Sn1および第nロー制御信号Sn2を第nのインバータ2-nに与える。
【0081】
パルス制御部3は、第1のインバータ2-1に含まれる第1スイッチ51-1および第2スイッチ52-1を相補的にスイッチングさせれば、デューティ比およびスイッチング周期をどのように制御してもよい。第nのインバータ2-nに対しても同様である。パルス制御部3は、N個のインバータ2のそれぞれのスイッチングのデューティ比およびスイッチング周期を互いに相関無く制御してもよい。
【0082】
ここで、第1のインバータ2-1のパルス出力端子T3-1の電位は、第1スイッチ51-1が短絡状態であっても、第2スイッチ52-1が短絡状態であっても確定する。そのため、第2のDC-DCコンバータ1-2の第1直流出力端子T21-2の電位も確定する。そのため、第2のインバータ2-2のパルス出力端子T3-2の電位も確定する。同様に、第nのDC-DCコンバータ1-nの第1直流出力端子T21-nの電位も確定する。また、第nのインバータ2-nのパルス出力端子T3-nの電位も確定する。したがって、第Nのインバータ2-Nのパルス出力端子T3-Nの電位も確定する。
【0083】
従って、第nのDC-DCコンバータ1-nの第1直流出力端子T21-nは、第1のインバータ2-1の第2スイッチ52-1が短絡状態であり、且つ、第2のインバータ2-2~第(n-1)のインバータ2-(n-1)までの全ての第1スイッチ51-2~51-(n-1)が短絡状態である場合に、基準電位となる。このため、第nのDC-DCコンバータ1-nは、第1のインバータ2-1から第(n-1)のインバータ2-(n-1)のスイッチングタイミングに基づき、第1直流出力端子T21-nが基準電位となったタイミングにおける第2直流出力端子T22-nの電圧を検出することができる。これにより、第nのDC-DCコンバータ1-nは、第1直流出力端子T21-nと第2直流出力端子T22-nとの間に安定化した第n直流電圧Vnを発生させることができる。
【0084】
上記のようにパルス電源装置200を構成すれば、第1直流電圧V1~第N直流電圧VNおよびスイッチングタイミングを調整することによって、任意のタイミングで多段階のレベルのパルス出力電圧Voutを出力することができる。
【0085】
また、第nのDC-DCコンバータ1-nの第1直流出力端子T21-n(nは、2以上、N以下)は、第nのDC-DCコンバータ1-nの回路内部において直流的にフローティング状態となっている。
【0086】
そのため、第nのDC-DCコンバータ1-nで発生する第n直流電圧Vnが大きな電圧(例えば、10kV程度)であっても、対応するインバータ以外のインバータに含まれる第1スイッチ51および第2スイッチ52の耐圧に影響を及ぼさない。すなわち、第nのインバータ2-nに含まれる第1スイッチ51-nおよび第2スイッチ52-nの耐圧は、対応する第nのDC-DCコンバータ1-nの第1直流出力端子T21-nと第2直流出力端子T22-nとの間の電位差(第n直流電圧Vn)に応じて定めることができる。
【0087】
例えば、N=3の場合で、第1のDC-DCコンバータ1-1の第1直流電圧V1が1kV、第2のDC-DCコンバータ1-2の第2直流電圧V2が10kV、第3のDC-DCコンバータ1-3の第3直流電圧V3であれば、第2直流電圧V2が最大値の10kVとなり、第1直流電圧V1および第3直流電圧V3の1kVよりも絶対値が大きい。しかし、第2直流電圧V2は、第1のインバータ2-1に含まれる第1スイッチ51-1および第2スイッチ52-1、第3のインバータ2-3に含まれる第1スイッチ51-3および第2スイッチ52-3の耐圧に影響を及ぼさない。
【0088】
したがって、一番大きな第n直流電圧Vnに合わせてスイッチの耐圧を高める必要はなく、各インバータ2に含まれるスイッチは、対応するDC-DCコンバータ1の第1直流出力端子T21と第2直流出力端子T22との間の電位差に応じて、スイッチングできる程度の耐圧の素子により実現することができる。これにより、パルス電源装置200は、簡易に且つ少ないコストで、パルス出力電圧Voutを出力することができる。
【0089】
図7は、第2実施形態に係るパルス電源装置200のシミュレーション波形を示す。
図7は、N=3の場合を示す。(A)は、第1ハイ制御信号S
11の波形の一例を示す。(B)は、第2ハイ制御信号S
21の波形の一例を示す。(C)は、第3ハイ制御信号S
31の波形の一例を示す。
【0090】
(D)は、第1のインバータ2-1が仮に負荷70に直接接続されている場合に、第1のインバータ2-1から出力される第1パルス出力電圧を示す。
図7の場合、第1パルス出力電圧は、第1ハイ制御信号S
11がH論理の場合に第1直流電圧V
1(1kV)となり、第1ロー制御信号S
12がH論理の場合に0Vとなる。
【0091】
(E)は、第2のインバータ2-2が仮に負荷70に直接接続されている場合、すなわち、第2のDC-DCコンバータ1-2の第1直流出力端子T21-2が、第1のインバータ2-1のパルス出力端子T3-1と接続されておらず、且つ、第2のDC-DCコンバータ1-2の第1直流出力端子T21-2が基準電位に接続されていると仮定した場合の第2パルス出力電圧を示す。すなわち、第2のインバータ2-2のパルス出力端子T3-2の電位を示す。
図7の場合、第2パルス出力電圧は、第2ハイ制御信号S
21がH論理の場合に0Vとなり、第2ロー制御信号S
22がH論理の場合に、-10kVとなる。
【0092】
(F)は、第3のインバータ2-3が仮に負荷70に直接接続されている場合、すなわち、第3のDC-DCコンバータ1-3の第1直流出力端子T21-3が、第2のインバータ2-2のパルス出力端子T3-2と接続されておらず、且つ、第3のDC-DCコンバータ1-3の第1直流出力端子T21-3が基準電位に接続されていると仮定した場合の第3パルス出力電圧を示す。すなわち、第3のインバータ2-3のパルス出力端子T3-3の電位を示す。
図7の場合、第3パルス出力電圧は、第3ハイ制御信号S
31がH論理の場合に0Vとなり、第3ロー制御信号S
32がH論理の場合に第3直流電圧V
3(-1kV)となる。
【0093】
(G)は、パルス出力電圧Voutを示す。パルス電源装置200は、(D)に示す第1パルス出力電圧と、(E)に示す第2パルス出力電圧と、(F)に示す第3パルス出力電圧とを加算したパルス出力電圧Voutを出力する。
図7の場合、パルス電源装置200は、(G)に示すように、0V、1kV、0V、-10kV、-11kV、-10kVを繰り返すパルス出力電圧Voutを出力することができる。このように、パルス電源装置200は、第1直流電圧V
1、第2直流電圧V
2、第3直流電圧V
3、並びに、第1のインバータ2-1~第3のインバータ2-3のスイッチングタイミングを制御することにより、任意のタイミングで多段階のレベルのパルス出力電圧Voutを出力することができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0095】
100 パルス電源装置、200 パルス電源装置、70 負荷、1-1 第1のDC-DCコンバータ、1-2 第2のDC-DCコンバータ、1-n 第nのDC-DCコンバータ、2-1 第1のインバータ、2-2 第2のインバータ、2-n 第nのインバータ、3 パルス制御部、T11-1 第1直流入力端子、T12-1 第2直流入力端子、T12-n 第n直流入力端子、T21-1 第1直流出力端子、T22-1 第2直流出力端子、T22-n 第n直流出力端子