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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092685
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】座屈拘束ブレース
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
E04B1/58 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208794
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勇紀
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 仁
(72)【発明者】
【氏名】平田 茂良
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓一
(72)【発明者】
【氏名】森 貴久
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA33
2E125AB17
(57)【要約】
【課題】重量を可及的に低減することで製作性とハンドリング性に優れ、さらには耐久性の高い座屈拘束ブレースを提供すること。
【解決手段】座屈拘束ブレース60は、鋼製で板状の芯材10と、芯材10を包囲するようにして芯材10の長手方向に亘って間欠的に配設されている、複数の筒状もしくは角筒状で鋼製の拘束材30とを有し、拘束材30の内面のうち、少なくとも拘束材30の両端側にはそれぞれ、芯材10の短手方向の両端を挟んでいる一対の第1挟持材40Aが二対接合されており、芯材10が拘束材30によって拘束される拘束区間と、芯材10が拘束材30によって拘束されない無拘束区間とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製で板状の芯材と、
前記芯材を包囲するようにして該芯材の長手方向に亘って間欠的に配設されている、複数の筒状もしくは角筒状で鋼製の拘束材とを有し、
前記拘束材の内面のうち、少なくとも該拘束材の両端側にはそれぞれ、前記芯材の短手方向の両端を挟んでいる一対の第1挟持材が二対接合されており、
前記芯材が前記拘束材によって拘束される拘束区間と、該芯材が該拘束材によって拘束されない無拘束区間とを備えていることを特徴とする、座屈拘束ブレース。
【請求項2】
前記芯材と前記第1挟持材が、隙間を備えた状態で対向していることを特徴とする、請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項3】
前記拘束材と前記第1挟持材の長さが同じであり、
前記拘束材の内面に対して、前記第1挟持材の両端側が溶接接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項4】
前記芯材の一対の広幅面に対して、該広幅面に直交する方向に延びる鋼製のリブが接合されて、該芯材と該一対のリブにより断面十字状を呈していることを特徴とする、請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項5】
前記リブが、前記拘束材の内面もしくは内面の近傍まで延びていることを特徴とする、請求項4に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項6】
前記拘束材の内面のうち、少なくとも該拘束材の両端側にはそれぞれ、前記リブの短手方向の端部を挟む一対の第2挟持材が接合されていることを特徴とする、請求項5に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項7】
前記リブと前記第2挟持材が、隙間を備えた状態で対向していることを特徴とする、請求項6に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項8】
前記拘束材と前記第2挟持材の長さが同じであり、
前記拘束材の内面に対して、前記第2挟持材の両端側が溶接接合されていることを特徴とする、請求項6に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項9】
前記第1挟持材と前記第2挟持材が、丸鋼、異形棒鋼、鋼製の丸パイプのいずれか一種であることを特徴とする、請求項1又は6に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項10】
前記芯材のうち、前記無拘束区間における前記拘束区間との境界位置に、前記拘束材の前記長手方向へのずれを防止するずれ止めが取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座屈拘束ブレースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物架構(柱・梁架構、屋根架構等)を形成するブレースとして、座屈防止措置が講じられた座屈拘束ブレースが適用されている。座屈拘束ブレースとしては、鋼製の芯材の周囲を鋼板のみで補剛した形態、鋼製の芯材の周囲をRC(Reinforced Concrete:鉄筋コンクリート)で補剛した形態、鋼製の芯材の周囲を鋼材とモルタルで被覆した形態など、多様な補剛形態が存在する。
【0003】
ここで、特許文献1には、芯材と、芯材の両面に沿って配置した一対の拘束材とを有する座屈拘束ブレースが提案されている。この座屈拘束ブレースでは、一対の拘束材のそれぞれが、芯材側に開口している溝形鋼と、この溝形鋼の内部に充填されたモルタルもしくはコンクリートとを備えている。
【0004】
芯材における拘束材の両端から長手方向に延出して建物の躯体に接合される一対の継手板には、芯材の弱軸方向を向く両面に突出する板状のリブが設けられており、このリブの高さは、拘束材よりも高く設定されている。また、拘束材の両端には、モルタルもしくはコンクリートと溝形鋼とに渡ってリブ挿入スリットが設けられ、このリブ挿入スリットにリブの長手方向の一部が挿入されて、溝形鋼の表面から突出している。さらに、両面のリブにおける芯材長手方向中央側の端部の形状は、それぞれ中央側に向かって継手板部からの高さが次第に低くなるテーパ状であり、両面のリブでV字状の端部形状を成し、リブ挿入スリットの芯材長手方向中央側の端部の形状は、リブの端部形状と同様にV字状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6184691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の座屈拘束ブレースによれば、芯材の弱軸が面外方向を向くように設置されている場合の面外変形に対する剛性を高めることができ、さらには、必要に応じて拘束材の厚さを薄くすることができる。しかしながら、溝形鋼の内部にモルタルもしくはコンクリートが充填されることによって拘束材が形成されていることから、座屈拘束ブレースの重量が重くなり、現場における施工性や建物架構に対する影響が懸念される。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、重量を可及的に低減することで製作性とハンドリング性に優れ、さらには耐久性の高い座屈拘束ブレースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による座屈拘束ブレースの一態様は、
鋼製で板状の芯材と、
前記芯材を包囲するようにして該芯材の長手方向に亘って間欠的に配設されている、複数の筒状もしくは角筒状で鋼製の拘束材とを有し、
前記拘束材の内面のうち、少なくとも該拘束材の両端側にはそれぞれ、前記芯材の短手方向の両端を挟んでいる一対の第1挟持材が二対接合されており、
前記芯材が前記拘束材によって拘束される拘束区間と、該芯材が該拘束材によって拘束されない無拘束区間とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、板状の芯材を包囲するようにして芯材の長手方向に亘って間欠的に配設されている、複数の筒状もしくは角筒状で鋼製の拘束材を有することにより、芯材の長手方向の複数箇所を、拘束材の内面に接合されている一対の第1挟持材にて挟持することができる。これに対して、例えば、芯材の全域に筒状の拘束材が配設され、この拘束材の内面に芯材の端部を挟むようにして一対の挟持材が接合される場合では、拘束材の内面における両端近傍のみでしか挟持材の端部を接合することができず、従って挟持材の中央領域を拘束材の内面に接合できないことによって、芯材が座屈変形した際に生じる複数の変形の山を挟持材にて効果的に押さえる(押さえ付ける)ことができなくなる。
【0010】
本態様では、例えば複数の拘束区間の両端部において挟持材が拘束材の内面に接合(例えば溶接接合)されることから、結果として、芯材の長手方向に亘って配設されている複数の拘束区間の両端部に対応する位置にて、挟持材を拘束材に接合することができる。そのため、芯材の長手方向の全域のうち、特に座屈変形が顕著な中央領域における変形の山を、拘束材に接合されている挟持材にて押さえることが可能になる。このように、座屈変形した芯材の山が挟持材に押さえられること、言い換えれば、芯材の座屈変形の際の山が挟持材に直接当接することにより、座屈変形の際に芯材に生じている軸力は、直接当接する挟持材に流れ、挟持材を介してその周囲にある拘束材に流れる(芯材から間接的に拘束材に流れる)ことになるため、拘束材への軸力の伝達を緩和することができる。このことにより、座屈変形した芯材の山が拘束材に直接当接して軸力が直接拘束材に流れる場合における、拘束材の損傷や破損を抑制することが可能になり、耐久性が高く、拘束材による芯材の座屈拘束効果の高い座屈拘束ブレースを形成することができる。
【0011】
さらに、芯材と拘束材の間へのモルタルやコンクリートの充填が不要であることから重量が軽減され、製作性とハンドリング性に優れた座屈拘束ブレースとなる。
【0012】
ここで、「一対の第1挟持材が芯材の短手方向の両端を挟んでいる」とは、芯材の短手方向の2つの端部のそれぞれの例えば上下位置もしくは左右位置に、一対の第1挟持材が配設されていることを意味している。また、一対の第1挟持材が、芯材の一対の広幅面からそれぞれ離れた位置にある形態と、芯材の一対の広幅面に接触している形態があるが、芯材の座屈変形を拘束しない(芯材の座屈変形を許容して地震時のエネルギー吸収性を発揮させる)観点から、前者の形態が望ましい。
【0013】
例えば、芯材が平鋼により形成され、第1挟持材が拘束区間の長さを有している形態では、各拘束区間において、平鋼の短手方向の両端にそれぞれ一対の第1挟持材が配設されることから、合計4つの第1挟持材が拘束材の内面に接合されることになる。また、その他、第1挟持材が拘束区間の長さよりも短い短尺な部材である場合は、拘束材の内面の両端にそれぞれ4つの第1挟持材が接合されることから、合計8つの第1挟持材が拘束材の内面に接合されることになる。
【0014】
ここで、筒状の拘束材は、例えば鋼管により形成され、角筒状の拘束材は、例えば角形鋼管により形成される。
【0015】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様は、
前記芯材と前記第1挟持材が、隙間を備えた状態で対向していることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、芯材と第1挟持材が隙間を備えた状態で対向していることにより、芯材の座屈拘束が第1挟持材にて拘束されることを抑制でき、芯材の座屈変形による地震時のエネルギー吸収性に優れた座屈拘束ブレースを形成できる。ここで、隙間として、1mm乃至数mm程度を設定できる。
【0017】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様は、
前記拘束材と前記第1挟持材の長さが同じであり、
前記拘束材の内面に対して、前記第1挟持材の両端側が溶接接合されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、拘束材と長さが同じである第1挟持材の両端側が拘束材の内面に溶接接合されていることにより、拘束区間の全域において生じ得る芯材の座屈変形の際の複数の山の全てを第1挟持材にて押さえることができるため、第1挟持材に対して芯材の軸力を効果的に伝達することができ、芯材から拘束材へ軸力が直接伝達されることを抑制する効果をより一層高めることができる。さらに、拘束区間があることで、その両端側から拘束材の内面と第1挟持材とを容易に溶接することができる。
【0019】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様は、
前記芯材の一対の広幅面に対して、該広幅面に直交する方向に延びる鋼製のリブが接合されて、該芯材と該一対のリブにより断面十字状を呈していることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、芯材の一対の広幅面に鋼製のリブが接合されて、芯材と一対のリブにより断面十字状を呈していることにより、より一層剛性の高い座屈拘束ブレースとなる。
【0021】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記リブが、前記拘束材の内面もしくは内面の近傍まで延びていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、リブが拘束材の内面もしくは内面の近傍まで延びていることにより、例えばリブが短くて拘束材の内面から離れている形態に比べて、剛性の高い座屈拘束ブレースを形成できる。
【0023】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記拘束材の内面のうち、少なくとも該拘束材の両端側にはそれぞれ、前記リブの短手方向の端部を挟む一対の第2挟持材が接合されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、リブが拘束材の内面もしくは内面の近傍まで延びていることを前提として、リブの短手方向の端部を挟む一対の第2挟持材が拘束材の内面に接合されていることにより、リブが座屈変形した際に生じる複数の変形の山を第2挟持材にて効果的に押さえることが可能になる。
【0025】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記リブと前記第2挟持材が、隙間を備えた状態で対向していることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、リブと第2挟持材が隙間を備えた状態で対向していることにより、リブの座屈拘束が第2挟持材にて拘束されることを抑制でき、リブの座屈変形による地震時のエネルギー吸収性に優れた座屈拘束ブレースを形成できる。ここで、隙間としては、第1挟持材と芯材の間の隙間と同様に、1mm乃至数mm程度を設定できる。
【0027】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記拘束材と前記第2挟持材の長さが同じであり、
前記拘束材の内面に対して、前記第2挟持材の両端側が溶接接合されていることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、拘束材と長さが同じである第2挟持材の両端側が拘束材の内面に溶接接合されていることにより、拘束区間の全域において生じ得るリブの座屈変形の際の複数の山の全てを第2挟持材にて押さえることができるため、第2挟持材に対してリブの軸力を効果的に伝達することができ、リブから拘束材へ軸力が直接伝達されることを抑制する効果をより一層高めることができる。さらに、拘束区間があることで、その両端側から拘束材の内面と第2挟持材とを容易に溶接することができる。
【0029】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記第1挟持材と前記第2挟持材が、丸鋼、異形棒鋼、鋼製の丸パイプのいずれか一種であることを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、第1挟持材と第2挟持材が、丸鋼、異形棒鋼、鋼製の丸パイプのいずれか一種であることにより、芯材やリブが座屈変形した際の山と挟持材が点接触することになり、例えば芯材等と挟持材が面接触する場合と比べて接触面積を小さくできる。このことにより、芯材等と挟持材の間に生じ得る摺動摩擦力を低減でき、摺動摩擦力に起因する挟持材の破損を抑制できる。
【0031】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様は、
前記芯材のうち、前記無拘束区間における前記拘束区間との境界位置に、前記拘束材の前記長手方向へのずれを防止するずれ止めが取り付けられていることを特徴とする。
【0032】
本態様によれば、芯材の無拘束区間における拘束区間との境界位置に、拘束材の長手方向へのずれを防止するずれ止めが取り付けられていることにより、芯材と第1挟持材の間に隙間がある形態であっても、芯材の拘束区間に対して拘束材をずれることなく位置合わせできる。
【発明の効果】
【0033】
以上の説明から理解できるように、本発明の座屈拘束ブレースによれば、重量を可及的に低減することで製作性とハンドリング性に優れ、さらには耐久性の高い座屈拘束ブレースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例の平面図である。
図2図1のII方向から見た座屈拘束ブレースの一部の斜視図である。
図3図2のIII-III矢視図であって、拘束材の途中で切断した縦断面図である。
図4】座屈拘束ブレースが圧縮力を受け、芯材が座屈変形している際の第1挟持材の作用を説明する図である。
図5図3に対応する図であって、実施形態に係る座屈拘束ブレースの変形例を示す図である。
図6図3に対応する図であって、実施形態に係る座屈拘束ブレースの他の変形例を示す図である。
図7図3に対応する図であって、実施形態に係る座屈拘束ブレースのさらに他の変形例を示す図である。
図8図3に対応する図であって、実施形態に係る座屈拘束ブレースのさらに他の変形例を示す図である。
図9図2に対応する図であって、実施形態に係る座屈拘束ブレースのさらに他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施形態に係る座屈拘束ブレースについて、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0036】
[実施形態に係る座屈拘束ブレース]
図1乃至図9を参照して、実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例の平面図であり、図2は、図1のII方向から見た座屈拘束ブレースの一部の斜視図であり、図3は、図2のIII-III矢視図であって、拘束材の途中で切断した縦断面図である。また、図4は、座屈拘束ブレースが圧縮力を受け、芯材が座屈変形している際の第1挟持材の作用を説明する図である。
【0037】
座屈拘束ブレース60は、鋼製で板状の芯材10と、芯材10を包囲するようにして芯材10の長手方向に亘って間欠的に配設されている、複数(図示例は3つ)の筒状で鋼製の拘束材30とを有する。
【0038】
座屈拘束ブレース60は、芯材10が拘束材30によって拘束される拘束区間(長さt1)と、芯材10が拘束材30によって拘束されない無拘束区間(長さt2)とを備えている。さらに、芯材10の両端側には、座屈拘束ブレース60が不図示の架構に組み込まれた際に、架構を構成する梁と柱の隅角部にあるガセットプレートにボルト接合されるように、芯材10の両側に一対の拡幅片15が溶接接合され、芯材10と拡幅片15の双方に開設されているボルト孔10a,15aとガセットプレートに開設されているボルト孔に対して所定本数のボルトが挿通されるようになっている。
【0039】
芯材10は、SN材(建築構造用圧延鋼材)や、LYP材(極低降伏点鋼材)等の降伏点の低い鋼材にて形成されており、これらの材料からなる芯材10を適用することにより、芯材10の降伏による地震エネルギー吸収性が良好になる。
【0040】
一方、拘束材30は、鋼管により形成されており、鋼管の直径(内径)と芯材10の短手方向の幅が同程度となるように双方の寸法が設定され、従って芯材10の端部は拘束材30の内面32に接触するか、もしくはその近傍に位置している。ここで、拘束材30は、鋼管以外にも、角形鋼管等により形成されて角筒状を呈していてもよい。
【0041】
図2図3に明りょうに示すように、芯材10の一対の広幅面11の中央には、芯材10の長手方向に沿うように一対の鋼製のリブ20が溶接接合されている。
【0042】
より具体的には、一対のリブ20は芯材10に対してその短手方向の幅の中央位置に接合されており、リブ20の端部も芯材10と同様に拘束材30の内面32に接触するか、もしくはその近傍に位置している。
【0043】
図1に示すように、一対のリブ20の両端にも、芯材10と同様に拡幅片25が溶接接合されており、架構を構成する上記ガセットプレートに溶接接合されている不図示のフィンスチフナにボルト接合されるように、リブ20に開設されている不図示のボルト孔及び拡幅片25に開設されているボルト孔25aと、フィンスチフナに開設されているボルト孔に対して、所定本数のボルトが挿通されるようになっている。
【0044】
このように、架構の隅角部からはガセットプレートと一対のフィンスチフナによる断面十字状のブラケットが面内に張り出し、これに対して、座屈拘束ブレース60の端部にある、芯材10と拡幅片15,及びリブ20と拡幅片25による断面十字状の接合部が強固にボルト接合されることになる。
【0045】
拘束材30の内面32のうち、拘束材30の短手方向の両端側にはそれぞれ、芯材10の両端を挟んでいる一対の第1挟持材40Aが二対接合されている。
【0046】
より具体的には、図2図3に示すように、芯材10の短手方向の両端においてそれぞれ、芯材10の広幅面11から幅t3の隙間G1を介して一対の第1挟持材40Aが配設され、拘束材30の内面32の端部31側に溶接接合(溶接部50を介して接合)されている。
【0047】
ここで、図2図3に示す第1挟持材40Aは、丸鋼もしくは異形棒鋼により形成されている。また、隙間G1の幅t3は、1mm乃至数mm程度に設定されており、芯材10に軸力(圧縮力)が作用した際の座屈変形を許容する(座屈変形を拘束しない)幅となっている。
【0048】
一方、拘束材30の内面32のうち、リブ20の端部側にも、リブ20の端部を挟んでいる一対の第2挟持材40Bが接合されている。
【0049】
より具体的には、図2図3に示すように、リブ20の端部において、リブ20の広幅面21から幅t4の隙間G2を介して一対の第2挟持材40Bが配設され、拘束材30の内面32の端部31側に溶接接合(溶接部50を介して接合)されている。
【0050】
第2挟持材40Bも丸鋼もしくは異形棒鋼により形成されている。また、隙間G2の幅t4も、1mm乃至数mm程度に設定されており、リブ20に軸力が作用した際の座屈変形を許容する幅となっている。
【0051】
第1挟持材40Aと第2挟持材40Bの長さは、いずれも拘束材30の長手方向の長さと同じであり、従って拘束区間の長さt1に設定されている。
【0052】
このように、芯材10の短手方向の両端が隙間G1を備えた状態で一対の第1挟持材40Aにて挟まれていることにより、芯材10の長手方向に亘って配設されている複数の拘束区間の両端部に対応する位置にて、第1挟持材40Aを拘束材30の内面32に溶接接合することができる。さらには、拘束材30の内部における所定位置(左右にある一対の第1挟持材40Aにて挟まれた位置)に芯材10を配設することができる。
【0053】
図4に示すように、芯材10に軸力N(圧縮力)が作用してX1方向に座屈変形した際には、座屈変形の際の山10'が第1挟持材40Aに押さえられることになる。言い換えれば、芯材10の座屈変形の際の山10'が、第1挟持材40Aに直接当接することになる。このことにより、座屈変形の際に芯材10に生じている軸力N(圧縮力)は、直接当接する第1挟持材40AへX2方向に流れ、第1挟持材40Aを介してその周囲にある拘束材30へX3方向に流れる(芯材10から間接的に拘束材30に流れる)ことになるため、拘束材30への軸力Nの伝達を抑制することができる。
【0054】
また、芯材10の長手方向において複数の拘束材30が間欠的に配設されていることにより、芯材10の長手方向の全域のうち、特に座屈変形が顕著な中央領域における座屈変形の際の山10'を、拘束材40に接合されている第1挟持材40Aにて押さえることが可能になる。
【0055】
例えば、芯材の全域に筒状の拘束材が配設され、この拘束材の内面に芯材の端部を挟むようにして一対の挟持材が接合される形態では、拘束材の内面における両端近傍のみでしか挟持材の端部を接合することができず、挟持材の中央領域を拘束材の内面に接合することができない。そのため、芯材の中央領域における座屈変形の際の山を、挟持材にて十分に押し付けることができなくなるため、芯材の軸力が拘束材に作用し易くなり、拘束材の破損の可能性が高くなる。
【0056】
座屈拘束ブレース60によれば、座屈変形の際の山10'が拘束材30に直接当接して軸力が直接拘束材30に流れる場合における、拘束材30の損傷や破損を抑制することが可能になり、耐久性が高く、拘束材30による芯材10の座屈拘束効果の高い座屈拘束ブレース60の形成に繋がる。
【0057】
さらに、芯材10と第1挟持材40Aが隙間G1を備えた状態で対向していることにより、芯材10の座屈拘束が第1挟持材40Aにて拘束されることを抑制でき、芯材10の座屈変形による地震時のエネルギー吸収性に優れた座屈拘束ブレース60を形成できる。
【0058】
以上のことは、リブ20の端部を隙間G2を介して一対の第2挟持材40Bが挟んでいる構成に関しても妥当するものであり、一対の第2挟持材40Bによって同様の効果が奏されることになる。
【0059】
また、無拘束区間では芯材10とリブ20の周囲に拘束材30が存在しないことから、拘束区間よりも長さを短くして芯材10等の座屈耐力を高めることが望ましい。尚、座屈長さは、細長比と芯材10及びリブ20の断面二次半径の積により算定されること、芯材10とリブ20がその長手方向に均一な断面を有することから無拘束区間と拘束区間で芯材10とリブ20の断面二次半径が同一であることより、無拘束区間の長さを相対的に短くし、細長比を相対的に小さくすることによって、拘束材のない無拘束区間における芯材10とリブ20の座屈を生じ難くできる。
【0060】
一例として、拘束区間の長さt1を1m程度とし、無拘束区間の長さt2を0.5m程度として、全体の長さが5m乃至7m程度の座屈拘束ブレース60を製作できる。
【0061】
座屈拘束ブレース60の製作においては、まず、各拘束材30の内面32に対して、一対の第1挟持材40Aを二対配設し、一対の第2挟持材40Bを二対配設して、拘束材30の両端から手の届く範囲において隅肉溶接等を行うことにより、溶接部50を介して各挟持材を溶接接合する。
【0062】
次に、一対のリブ20が溶接接合されている芯材10を、各一対の第1挟持材40Aと一対の第2挟持材40Bの間に挿入するようにして複数(図示例は3つ)の拘束材30を芯材10とリブ20の周囲に挿入していく。
【0063】
次に、各拘束材30を芯材10における3つの拘束区間に位置合わせした後、芯材10の狭幅面12のうち、無拘束区間における拘束区間との境界位置に、拘束材30の長手方向へのずれを防止する、ずれ止め18を溶接接合する。
【0064】
さらに、芯材10とリブ20の両端部にそれぞれ、拡幅片15,25を溶接接合することにより、ずれ止め18と拡幅片15,25にて各拘束材30の長手方向へのずれが防止された座屈拘束ブレース60が製作される。
【0065】
座屈拘束ブレース60によれば、芯材10と拘束材30の間へのモルタルやコンクリートの充填が不要であることから、全体の重量が軽減され、製作性とハンドリング性に優れた座屈拘束ブレースとなる。
【0066】
次に、図5乃至図9を参照して、座屈拘束ブレース60の変形例について説明する。
【0067】
図5に示す例は、リブ20の端部を挟む第2挟持材40B(図3参照)を省略している形態である。
【0068】
芯材10に対して一対のリブ20が接合されていることにより、リブ20のない座屈拘束ブレースに比べて剛性は高められる。その上で、圧縮力が作用した際の座屈変形は芯材10に顕著に生じ、リブ20はあくまでも芯材10の補強部材であるとの設計思想の下では、リブ20の座屈変形を考慮する必要がなくなるため、リブ20からの軸力を押さえる第2挟持材40Bを不要にできる。
【0069】
一方、図6に示す例は、長さの短い一対のリブ20Aを備えている形態である。座屈拘束ブレースに要求される剛性に応じて、リブ20Aの長さを図3,5等に示すリブ20のように拘束材30の内面32までの長さとする必要のない場合には、可及的に短いリブ20Aを適用することにより、座屈拘束ブレースの剛性を高めつつ、製作コストを低減できて好ましい。
【0070】
一方、図7に示す例は、リブを不要とし、芯材10のみが拘束材30の内部に配置されている形態である。芯材10の剛性と複数の拘束材30のみによって所望の性能を満足する場合には、リブを省略することで製作コストをさらに低減することができる。
【0071】
ここで、リブが存在しない形態では、リブが存在する形態に比べて、無拘束区間の長さt2をより短くすることによって、無拘束区間における芯材10の座屈を生じ難くするのが望ましい。
【0072】
一方、図8に示す例は、鋼製の丸パイプにより形成される、第1挟持材40Eと第2挟持材40Fが適用されている形態である。丸鋼や異形棒鋼に比べて相対的に大径になるものの、中空構造であることから座屈拘束ブレースの軽量化に寄与しながら、芯材10やリブ20の座屈変形の際の山を押さえる効果を奏することができる。
【0073】
さらに、図9に示す例は、拘束区間の長さよりも短い、短尺の第1挟持材40Cと第2挟持材40Dが適用されている形態である。この形態では、拘束材30の両端部31側にそれぞれ4本ずつの第1挟持材40Cと第2挟持材40Dが溶接部50を介して接合されることになる。
【0074】
その他、図示を省略するが、図5乃至7,及び図9の変形例において、図8に示す鋼製の丸パイプが挟持材に適用されてもよい。
【0075】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0076】
10:芯材
10':座屈変形の際の山
10a:ボルト孔
11:広幅面
12:狭幅面
15:拡幅片
15a:ボルト孔
18:ずれ止め
20,20A:リブ
21:広幅面
25:拡幅片
25a:ボルト孔
30:拘束材
31:端部
32:内面
40A,40C,40E:第1挟持材
40B,40D,40F:第2挟持材
50:溶接部
60:座屈拘束ブレース
G1,G2:隙間
N:軸力(圧縮力)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9