(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092697
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】発泡成形体及び食品収容トレイ
(51)【国際特許分類】
B65D 81/28 20060101AFI20240701BHJP
C08J 9/12 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B65D81/28 C
C08J9/12 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208810
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】597008131
【氏名又は名称】大同至高株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 康輝
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛士
【テーマコード(参考)】
3E067
4F074
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB01
3E067AB02
3E067AB04
3E067AB08
3E067AB09
3E067BA02A
3E067BB17A
3E067BB30A
3E067BC02A
3E067CA30
3E067GA30
3E067GD01
4F074AA64
4F074AA68
4F074BA32
4F074BA33
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA24
4F074DA34
(57)【要約】
【課題】抗菌成分を含有することなく、抗菌性を発揮することができる発泡成形体を提供すること。
【解決手段】発泡成形体は、ポリ乳酸から成形され、食品と接する接触面の表面から測定された三次元表面性状の複合パラメータの展開界面面積率(Sdr)の値が20~200%の範囲である。ポリ乳酸からなる発泡成形体から形成された青果物収容トレイ1には、複数の収容凹部11が形成され、収容凹部11は、内側面11aが半球面状に形成され、収容凹部11には食品として青果物が収容される。発泡成形体からなる青果物収容トレイ1は、Sdrの値が20~200%の範囲であり、青果物と接する境界を多く設けることができるため、抗菌成分を含有させることなく、抗菌性を発揮することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸から成形され、食品と接する接触面の表面から測定された三次元表面性状の複合パラメータの展開界面面積率(Sdr)の値が20~200%の範囲であることを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
前記発泡成形体の発泡倍率が、5~50倍であることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形体。
【請求項3】
前記発泡成形体の発泡倍率が、15~30倍であることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形体。
【請求項4】
前記接触面に、直径1~50μmの凹部が多数成形されていることを特徴とする請求項3に記載の発泡成形体。
【請求項5】
鎖延長剤を含有し、該鎖延長剤がエポキシ系鎖延長剤であることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形体。
【請求項6】
抗菌性試験((フィルム密着法)JIS Z 2801:2012(抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果))において、黄色ブドウ球菌24時間培養後に、接種直後の生菌数の90%以上が減少する抗菌性を有することを特徴とする請求項1に記載の発泡成形体。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の発泡成形体から成形され、食品の下部を収容し得る収容凹部を有し、該収容凹部は内側面が半球面状であることを特徴とする食品収容トレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、抗菌性を有する発泡成形体及び食品収容トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形体として、特許文献1には、鎖延長されたポリ乳酸を用いた発泡シートが記載されている。また、抗菌性を有する成形体として、特許文献2には、抗菌成分を含有する包装材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2013/147400号公報
【特許文献2】特開2022-118578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2に記載された成形体は、抗菌成分が含有されているため、生体へ害を及ぼすおそれがあるという課題があった。
【0005】
本明細書の技術は、上述の点に鑑みてなされたものであり、抗菌成分を含有することなく、抗菌性を発揮することができる発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の実施形態に係る発泡成形体は、ポリ乳酸から成形され、食品と接する接触面の表面から測定された三次元表面性状の複合パラメータの展開界面面積率(Sdr)の値が20~200%の範囲であることを特徴とする。
【0007】
実施形態に係る発泡成形体によれば、食品と接する接触面が、微細な凹凸を有し、食品と接する境界を多く設けることができるため、抗菌成分を含有させることなく、抗菌性を発揮することができる。
【0008】
ここで、上記発泡成形体において、前記発泡成形体の発泡倍率が、5~50倍であるものとすることができる。
【0009】
これによれば、発泡成形体が可とう性を有しつつ強度を有するものとすることができる。
【0010】
また、上記発泡成形体において、前記発泡成形体の発泡倍率が、15~30倍であるものとすることができる。
【0011】
これによれば、発泡成形体がより可とう性を有しつつ強度を有するものとすることができる。
【0012】
また、上記発泡成形体において、前記接触面に、直径1~50μmの凹部が多数成形されているものとすることができる。
【0013】
これによれば、食品と接する境界を多く設けることができるため、抗菌成分を含有させることなく、抗菌性を発揮することができる。
【0014】
また、上記発泡成形体において、鎖延長剤を含有し、該鎖延長剤がエポキシ系鎖延長剤であるものとすることができる。
【0015】
これによれば、発泡成形体が鎖延長剤を含有することによって、発泡成形体の強度を高めつつ気泡の形成性を向上させることができ、鎖延長剤がエポキシ系鎖延長剤であることによって、抗菌性をより発揮することができる。
【0016】
また、上記発泡成形体において、抗菌性試験((フィルム密着法)JIS Z 2801:2012(抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果))において、黄色ブドウ球菌24時間培養後に、接種直後の生菌数の90%以上が減少する抗菌性を有するものとすることができる。
【0017】
これによれば、抗菌効果を発揮することができる。
【0018】
ここで、実施形態に係る食品収容トレイは、上記の発泡成形体から成形され、食品の下部を収容し得る収容凹部を有し、該収容凹部は内側面が半球面状であることを特徴とする。
【0019】
実施形態に係る食品収容トレイによれば、食品を収容する収容凹部の内側面が半球面状であるため、食品との接触面を多くすることができ、食品の荷重を分散させて収容することができ、食品と接する接触面が抗菌性を発揮することができるため、食品を傷めることなく収容することができる。
【発明の効果】
【0020】
本明細書の実施形態に係る発泡成形体によれば、抗菌成分を含有させることなく、抗菌性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本明細書の実施形態に係る発泡成形体から成形された青果物収容トレイの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本明細書の実施形態に係る発泡成形体及び食品収容トレイについて説明する。なお、本発明の範囲は、実施形態で開示される範囲に限定されるものではない。実施形態の発泡成形体は、ポリ乳酸から成形される発泡成形体であり、農産物、水産物又は食肉などの食品などの輸送や保管などに使用される緩衝材や梱包材などとして使用することができるものである。この発泡成形体は、抗菌成分を含有することなく、抗菌性を有しているため、食品などの輸送や保管などに適し、抗菌成分を含有していないため、食品などによる生体への影響を抑えることができるものである。なお、本明細書において、発泡成形体の配合量や配合比を表す際は、特に断らない限り、質量単位であり、揮発分を含む状態で表すものとする。また、配合単位を表す「%」は、特に断らない限り、「質量%」を意味するものとする。
【0023】
実施形態に係る発泡成形体は、ポリ乳酸ペレットを溶融させて発泡させることによって成形する。ポリ乳酸の発泡は、ポリ乳酸に発泡剤を混入させ、発泡剤が混入されたポリ乳酸の温度や外圧などの状態を変化させることによって発泡させる。また、ポリ乳酸ペレットには鎖延長剤を含有させることができる。
【0024】
ポリ乳酸ペレットとは、原材料としてのバイオマス(主として植物から得られるデンプン)を糖化後、発酵させて乳酸とし、乳酸を重合させて重合体(ポリ乳酸ペレット)としたものである。ポリ乳酸は、枯渇する恐れのある石油由来の原材料を使用していなく、かつ、原材料としてのバイオマスが育成時に多量の二酸化炭素を吸収しているため、地球環境にやさしいものである。また、ポリ乳酸は、生分解性高分子化合物であるため、たとえば、不本意ながら、実施形態に係る発泡成形体が自然環境下に破棄された場合であっても、微生物によって分解されるため、環境に対する影響を極力抑えることができるものである。
【0025】
実施形態では、ポリ乳酸ペレットは、市販品を使用することができる。ポリ乳酸ペレットの市販品として、Luminy L105、L130、L175、LX530、LX575、LX175、LX930、LX975(TotalEnergies CorbionTotalEnergies Corbion(オランダ、タイ)製)、REVODE 110、190、290(Zhejian Hisun Biomaterials(浙江海正生物材料)(中国)製)などを使用することができる。また、ポリ乳酸ペレットの市販品は、NatureWorks(アメリカ)、Anhui Fengyuan Biomaterials(安徽豊原生物材料)(中国)、weforyou groupweforyou group(オーストリア、中国)、Shenzhen Guanhua Weiye(深セン光華偉業)(中国)、Jiujiang Keyuan Biomaterial(科院生物)(中国)、Jilin COFCO Biomaterials(中糧生物科技)(中国)、Henan TechnologyHenan Jindan Lactic Acid Technology(中国)、Synbra bvSynbra Technology bv(オランダ)、Feterro(ベルギー)などでも取り扱われている。
【0026】
発泡剤は、ポリ乳酸に混入させて、発泡剤が混入されたポリ乳酸の温度や外圧などの状態を変化させることによって、ポリ乳酸を発泡させる薬剤である。発泡剤として、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、水などの空気中の成分、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガス、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンなどの飽和鎖状炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、又はこれらの組み合わせなどを使用することができる。別の実施形態として、発泡剤は、不活性な、窒素、二酸化炭素、希ガス又はこれらの組み合わせとすることができ、さらに別の実施形態として、入手が容易な、窒素、二酸化炭素又はこれらの組み合わせとすることができる。なお、発泡剤は、ポリ乳酸への混入の際に、超臨界状態とすることができる。発泡剤を超臨界状態とすることによって、発泡剤の誘電率が低くなり、ポリ乳酸に細かい気泡として混入させることができるためである。
【0027】
ポリ乳酸に対する発泡剤の混入量は、3~20質量%とすることができる。ポリ乳酸から形成される発泡成形体が可とう性を有しつつ強度を有するものとすることができるためである。ポリ乳酸に対する発泡剤の混入量が3質量%未満である場合には、ポリ乳酸から形成される発泡成形体は、発泡倍率が低く、可とう性を有しないものとなるおそれがある。一方、混入量が20質量%を超えると、ポリ乳酸から形成される発泡成形体は、発泡倍率が高く、強度を有しないものとなるおそれがある。なお、この場合の発泡成形体の発泡倍率は、5~50倍となる。別の実施形態として、ポリ乳酸に対する発泡剤の混入量と発泡倍率は、それぞれ、4~15質量%、10~40倍とすることができ、さらに別の実施形態として、それぞれ、5~10質量%、15~30倍とすることができる。
【0028】
鎖延長剤とは、重合体(ポリ乳酸)に添加した際に重合体の分子量を増加させることができる化合物であり、発泡成形体を形成するポリ乳酸を高分子量化(分子鎖の延長)させて、発泡成形体の強度を高めつつ、気泡の形成性を向上させるものである。鎖延長剤は、その種類として制限されることはないが、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル及び1,6―へキサンジオールジグリシジルエーテルなどからなる群より選ばれるエポキシ系鎖延長剤、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びトリイソシアネートなどからなる群より選ばれるイソシアネート系鎖延長剤、アクリル系鎖延長剤、無水マレイン系鎖延長剤及びこれら化合物を含むコポリマーなどを使用することができる。別の実施形態として、鎖延長剤は、エポキシ系鎖延長剤とすることができる。
【0029】
鎖延長剤は、重合体(ポリ乳酸)に対して0.01~10質量%含有させることができる。重合体の分子量を増加させ、発泡成形体の強度を高めつつ、気泡の成形性を向上させることができるためである。鎖延長剤の含量が0.01質量%未満である場合は、発泡成形体の強度を高めることができないおそれがあり、10質量%を超える場合は、発泡成形体の生分解性が劣るおそれがある。別の実施形態として、発泡成形体に対する鎖延長剤の含有量は、0.1~1質量%とすることができる。
【0030】
次に、実施形態に係る発泡成形体の製造方法について述べる。発泡成形体の製造方法は、ポリ乳酸ペレットを溶融させる溶融工程、溶融させたポリ乳酸に発泡剤を溶解させる溶解工程、発泡剤が溶解されたポリ乳酸を加圧する加圧工程、加圧後に減圧して発泡させる発泡工程、発砲後の発泡成形体を所定の形状に成形する成形工程の順に工程を経て製造される。
【0031】
溶融工程は、ポリ乳酸ペレットと必要により鎖延長剤とを加熱させて溶融させる工程である。溶融は、ポリ乳酸の融点(150~180℃)より高温になるように加熱し、加圧工程まで加熱を継続させる。
【0032】
溶解工程は、溶融させたポリ乳酸に発泡剤を溶解させる工程である。溶解工程では、スクリュ押出成形機によって、溶融させたポリ乳酸に発泡剤を混入させて溶解させる。
【0033】
加圧工程は、スクリュ押出成形機によって、発泡剤が溶解されたポリ乳酸を加圧する工程である。発泡剤が混入されたポリ乳酸が加圧され、発泡剤の臨界温度と臨界圧を超えることにより、発泡剤は超臨界状態となる。発泡剤が超臨界状態になることによって、発泡剤の誘電率が低くなり、発泡剤は、ポリ乳酸に細かい気泡として無数混入することができ、成形後の発泡成形体の気泡を微細なもの(直径1~50μm)とすることができる。
【0034】
発泡工程は、加圧工程で加圧したポリ乳酸を常圧に減圧させて発泡させる工程である。ポリ乳酸は、減圧させられることにより、ポリ乳酸に溶解された発泡剤が膨張し、ポリ乳酸に無数の気泡が形成され、発泡体とすることができる。
【0035】
発泡後の成形体(発泡成形体)シートの厚みは、0.5~5.0mmとすることができる。シートの強度を十分なものとすることができるためである。発泡成形体シートの厚みが0.5mm未満である場合には、シートの強度が不足して、シートが破れやすいものとなるおそれがある。一方、5.0mmを超えると、シートの強度が過剰なものとなり、不経済となるおそれがある。別の実施形態として、発泡成形体シートの厚みは1.0~4.0mmとすることができ、さらに別の実施形態として、1.5~3.0mmとすることができる。
【0036】
成形工程は、発砲後の発泡成形体を型枠などによって所定の形状に成形する工程である。発泡成形体を形成するポリ乳酸は、熱可塑性であるため、加熱され型成形されることによって、所定の形状に成形することができる。
【0037】
ポリ乳酸からなる発泡成形体から加工される形状として、
図1に示す青果物収容トレイ1がある。青果物収容トレイ1は、外形が略矩形のトレイであり、平面に、それぞれが均等に離れて配置された複数の収容凹部11が形成される。収容凹部11は、内側面11aが半球面状に形成され、収容凹部11には図示しない桃、リンゴ、イチゴ又はトマトなどの青果物が収容される。青果物収容トレイ1は発泡成形体であるため、クッション性を有し、青果物は、クッション性によって保護され、青果物の荷重を分散させて収容することができるため、傷みが生じるのが抑制される。また、収容凹部11の内側面11aには、凹んだ通風路11bが設けられ、青果物から発せられるエチレンガスなどが滞留しないように構成されている。
【0038】
発泡成形体の表面は、加圧工程において、超臨界状態の発泡剤がポリ乳酸に細かい気泡として無数混入し、発泡工程において、発泡剤が膨張し、発泡倍率が15~30倍の場合、直径1~50μmの微細な気泡が無数形成される。表面に形成される気泡の大きさは、例えば、発泡剤が窒素と二酸化炭素の組み合わせの場合、窒素と二酸化炭素の比率を変えることにより、調整することができる。具体的には、窒素:二酸化炭素=5:5~1:9であることによって、表面に直径1~50μmの微細な気泡を形成することができる。窒素:二酸化炭素=5:5より窒素が多い場合には、表面に形成される気泡の大きさはより細かいものとなる。一方、窒素:二酸化炭素=1:9より二酸化炭素が多い場合には、表面に形成される気泡の大きさはより大きいものとなる。別の実施形態として、窒素:二酸化炭素=4:6~2:8とすることができる。表面に、直径1~50μmの微細な気泡が無数形成されることによって、発泡成形体の食品と接する接触面の表面から測定された三次元表面性状の複合パラメータの展開界面面積率(Sdr)の値は、20~200%の範囲とすることができ、抗菌成分を含有させることなく、抗菌性を発揮することができる。Sdrが20%未満である場合には、食品と接する境界を多く設けることができないため、抗菌性を十分に発揮することができないおそれがある。一方、Sdrが200%を超えると、発泡成形体の表面強度が劣るおそれがある。別の実施形態として、Sdrの値は30~150%の範囲とすることができ、さらに別の実施形態として、Sdrの値は40~100%の範囲とすることができる。
【0039】
発泡成形体は、食品と接する接触面が微細な凹凸を有し、食品と接する境界を多く設けることができるため、抗菌成分を含有させることなく、抗菌性を発揮することができる。発泡成形体は、食品と接する境界が多く設けられることによって、境界の乳酸のヒドロキシ基とカルボキシ基とが接する食品の水分との間で電荷の受け渡しが生じ、境界が多いため多くの電荷が移動し、抗菌性を発揮するものと推測される。また、発泡成形体は、鎖延長剤としてエポキシ系鎖延長剤を含有することにより、エポキシの負に帯電するグリシジル基が電荷を受け渡す媒体となり、界面の電荷の移動を促進し、抗菌性をより発揮するものと推測される。
【実施例0040】
実施例の発泡成形体(PLA発泡シート(発泡ユーミィシート))の製造条件を表2に記載する。比較例には、比較例1:石油系非発泡シート(PPシート)、比較例2:PLA非発泡シート(オイシート)、比較例3:石油系発泡シート(PSシート)を使用した。
【0041】
【0042】
実施例の発泡成形体は、発泡倍率を約20倍とするものである。発泡剤の窒素と二酸化炭素は、加圧工程において、180℃の溶融温度が維持され、40Paに加圧されているため、超臨界状態となり、誘電率が低くなり、ポリ乳酸に微細な気泡として無数混入し、発泡成形体(PLA発泡シート)は、発泡工程において、発泡剤の膨張により、直径1~50μmの微細な気泡が無数形成されたものである。
【0043】
実施例では、抗菌性試験を実施し、表面積の増加割合を示す展開界面面積率(Sdr)を測定し、その評価を行った。
【0044】
<抗菌性試験>
抗菌性試験の試験結果を
図2と以下に記載する。抗菌性試験は、一般財団法人日本繊維製品品質技術センター(QTEC)神戸試験センター(神戸市中央区下山手通5-7-3)が実施した。
【0045】
抗菌性試験(フィルム密着法)JIS Z 2801:2012(抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果)
試験菌種:黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus NBRC 12732
大腸菌 Escherichia coli NBRC 3972
菌液調整溶液:1/500NB培地
試験菌液接種量:0.4ml
試験片の清浄化:試験片の全面を純度99%以上のエタノールを吸収させた局法ガーゼで軽く拭いた後、十分に乾燥させた。
試験菌液の生菌数:黄色ブドウ球菌:5.0×105(個/mL)
大腸菌:5.8×105(個/mL)
【0046】
試験結果
黄色ブドウ球菌(生菌数対数平均値 接種直後 → 24時間培養後)
比較例1:石油系非発泡シート 4.01 → 4.76
比較例2:PLA非発泡シート 4.01 → 3.46
比較例3:石油系発泡シート 4.03 → 4.81
実施例1:PLA発泡シート 4.03 → <-0.20
大腸菌(生菌数対数平均値 接種直後 → 24時間培養後)
比較例1:石油系非発泡シート 4.05 → 5.99
比較例2:PLA非発泡シート 4.05 → 5.85
比較例3:石油系発泡シート 4.04 → 6.02
実施例1:PLA発泡シート 4.04 → 3.05
【0047】
比較例2のPLA非発泡シートは、黄色ブドウ球菌について、70%の生菌数の減少が確認でき、大腸菌については、逆に、生菌数の増加が確認できた。これに対して、実施例1のPLA発泡シートは、黄色ブドウ球菌について、99.99%以上の生菌数の減少が確認でき、殺菌効果に近い抗菌効果が確認でき、大腸菌について、90%以上の生菌数の減少が確認できた。実施例1のPLA発泡シートは、食品と接する接触面が微細な凹凸を有し、食品と接する境界を多く設けることができるため、抗菌成分を含有させることなく、抗菌性を発揮することができた。なお、比較例1の石油系非発泡シートと比較例3の石油系発泡シートは、黄色ブドウ球菌及び大腸菌ともに、生菌数の増加が確認できた。
【0048】
<展開界面面積率(Sdr)>
展開界面面積率(Sdr)JIS B 0681-2:2018(製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:三次元-第2部:用語,定義及び表面性状パラメータ)(ISO 25178-2:2012)
表面積の増加割合を示す展開界面面積率(Sdr)は、形状測定レーザマイクロスコープVK-X210/200(測定部:VK-X210 コントローラ部:VK-X200)(株式会社キーエンス製)を使用して、対物レンズ:50倍を用いて測定した。
【0049】
試験結果
比較例1:石油系非発泡シート(PPシート) 0.0001
実施例1:(PLA発泡シート(発泡ユーミィシート表)) 0.2523
実施例1:(PLA発泡シート(発泡ユーミィシート裏)) 0.7624
実施例1は、表面と裏面とで展開界面面積率(Sdr)の値が異なり、表面が25.23%、裏面が76.24%であった。実施例1は、比較例1と比べて、表面積の増加割合が著しく高いことが確認できた。展開界面面積率(Sdr)の値が20~200%の範囲にあることによって、ポリ乳酸から形成された発泡成形体は、食品と接する境界を多く設けることができるため、抗菌成分を含有させることなく、抗菌性を発揮することができる。
【0050】
以上のように構成された実施形態の発泡成形体から把握されるその他の技術的思想について、以下に記載する。
【0051】
実施形態に係る発泡成形体は、ポリ乳酸から成形され、食品と接する接触面に、直径1~50μmの凹部が多数成形されているものとすることができる。
【0052】
これによれば、食品と接する接触面が、微細な凹凸を有し、食品と接する境界を多く設けることができるため、抗菌成分を含有させることなく、抗菌性を発揮することができる。
【0053】
実施形態に係る発泡成形体の製造方法は、ポリ乳酸ペレットを溶融させる溶融工程、溶融させた該ポリ乳酸に発泡剤を溶解させる溶解工程、該発泡剤が溶解された該ポリ乳酸を加圧する加圧工程、加圧後に該ポリ乳酸を減圧させて発泡させる発泡工程を有する発泡成形体の製造方法であって、
該発泡剤が窒素と二酸化炭素の組み合わせであるものとすることができる。
【0054】
これによれば、発泡成形体は、食品と接する接触面が微細な凹凸を有し、食品と接する境界を多く設けることができるため、抗菌成分を含有させることなく、抗菌性を発揮することができる。
【0055】
また、上記の発泡成形体の製造方法において、前記発泡剤が、ポリ乳酸への混入の際に、超臨界状態であるものとすることができる。
【0056】
これによれば、ポリ乳酸からなる発泡成形体に、微細な気泡を無数形成させることができる。