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特開2024-92700焼き済み包餡麺帯食品及びその製造方法
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  • 特開-焼き済み包餡麺帯食品及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092700
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】焼き済み包餡麺帯食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 35/00 20160101AFI20240701BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20240701BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L7/109 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208817
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】平江 彰伍
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆博
(72)【発明者】
【氏名】宅宮 規記夫
(72)【発明者】
【氏名】辻 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】平本 哲也
【テーマコード(参考)】
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B036LE04
4B036LF11
4B036LF12
4B036LP01
4B036LP02
4B036LP14
4B036LP17
4B046LA09
4B046LB10
4B046LC01
4B046LE11
4B046LP14
4B046LP51
4B046LP64
4B046LP69
4B046LP80
(57)【要約】
【課題】喫食前に加熱されても、皮の合わせ目が好適な食感を有し得る焼き済み包餡麺帯食品等の提供。
【解決手段】皮の合わせ目及び焼き面が形成された皮を含み、喫食前に加熱される焼き済み包餡麺帯食品であって、前記焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)皮の合わせ目部分、並びに(B)皮の合わせ目及び焼き面以外の部分の破断強度を、テクスチャーアナライザーにて25℃で測定したとき、当該(A)及び(B)の破断強度が特定の関係を満たす、包餡麺帯食品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮の合わせ目及び焼き面が形成された皮を含み、喫食前に加熱される焼き済み包餡麺帯食品であって、
前記焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)皮の合わせ目部分、並びに(B)皮の合わせ目及び焼き面以外の部分の破断強度を、テクスチャーアナライザーにて25℃で測定したとき、当該(A)及び(B)の破断強度が下式(I)の関係を満たす、包餡麺帯食品。
1.5≦(A)の破断強度/(B)の破断強度≦5.3 ・・・(I)
【請求項2】
前記(A)の破断強度が、20~120gfであり、前記(B)の破断強度が、8~25gfである、請求項1記載の包餡麺帯食品。
【請求項3】
前記焼き済み包餡麺帯食品に対し喫食前に施される加熱処理が、マイクロ波加熱、湿式加熱及び熱風加熱からなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項1又は2記載の包餡麺帯食品。
【請求項4】
前記焼き済み包餡麺帯食品が凍結している、請求項1又は2記載の包餡麺帯食品。
【請求項5】
前記包餡麺帯食品が、餃子である、請求項1又は2記載の包餡麺帯食品。
【請求項6】
皮の合わせ目及び焼き面が形成された皮を含み、喫食前に加熱される焼き済み包餡麺帯食品の製造方法であって、
前記焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)皮の合わせ目部分、並びに(B)皮の合わせ目及び焼き面以外の部分の破断強度を、テクスチャーアナライザーにて25℃で測定したとき、当該(A)及び(B)の破断強度が下式(I)の関係を満たすように、当該(A)及び/又は(B)の破断強度を調整することを含む、製造方法。
1.5≦(A)の破断強度/(B)の破断強度≦5.3 ・・・(I)
【請求項7】
前記(A)の破断強度が、20~120gfであり、前記(B)の破断強度が、8~25gfである、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記焼き済み包餡麺帯食品に対し喫食前に施される加熱処理が、マイクロ波加熱、湿式加熱及び熱風加熱からなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項6又は7記載の製造方法。
【請求項9】
前記(A)及び/又は(B)の破断強度の調整後に、前記焼き済み包餡麺帯食品に冷凍処理を施すことを含む、請求項6又は7記載の製造方法。
【請求項10】
前記包餡麺帯食品が、餃子である、請求項6又は7記載の製造方法。
【請求項11】
皮の合わせ目及び焼き面が形成された皮を含み、喫食前に加熱される焼き済み包餡麺帯食品の、皮の合わせ目の食感改善方法であって、
前記焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)皮の合わせ目部分、並びに(B)皮の合わせ目及び焼き面以外の部分の破断強度を、テクスチャーアナライザーにて25℃で測定したとき、当該(A)及び(B)の破断強度が下式(I)の関係を満たすように、当該(A)及び/又は(B)の破断強度を調整することを含む、方法。
1.5≦(A)の破断強度/(B)の破断強度≦5.3 ・・・(I)
【請求項12】
前記(A)の破断強度が、20~120gfであり、前記(B)の破断強度が、8~25gfである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記焼き済み包餡麺帯食品に対し喫食前に施される加熱処理が、マイクロ波加熱、湿式加熱及び熱風加熱からなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
前記(A)及び/又は(B)の破断強度の調整後に、前記焼き済み包餡麺帯食品に冷凍処理を施すことを含む、請求項11又は12記載の方法。
【請求項15】
前記包餡麺帯食品が、餃子である、請求項11又は12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き済み包餡麺帯食品及びその製造方法に関し、詳細には、皮の合わせ目の食感が改善された焼き済み包餡麺帯食品及びその製造方法に関する。また、本発明は、焼き済み包餡麺帯食品の、皮の合わせ目の食感改善方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、焼き餃子等の、焼成加熱が施された包餡麺帯食品(焼き済み包餡麺帯食品)を凍結した冷凍食品が上市されている。当該冷凍食品は、消費者が家庭において電子レンジ等で加熱解凍するだけで、焼き済み包餡麺帯食品(焼き餃子等)を喫食でき、調理の手間がかからないため広く普及するに至っている。
【0003】
しかし、焼き済み包餡麺帯食品を凍結した冷凍食品は、製造時に(工場等において)焼成加熱が施され、更に家庭で喫食される際にも電子レンジ等で加熱解凍されるため、加熱解凍後に皮の合わせ目(餃子等では一般に「耳」とも称される)が乾燥しやすく、そのような焼き済み包餡麺帯食品は喫食の際、皮の合わせ目の食感が硬くなり、皮の合わせ目が口に残るという問題があった。
【0004】
一方、冷凍した後電子レンジ解凍を行った場合でも耳部の柔らかい食感を有する焼き餃子を製造するために、成形後の餃子の底面を温水に接触させて吸水させた後、蒸し工程及び焼き工程において一定条件にて水ないし温水を噴霧することによって餃子の皮に充分に吸水させ、その後餃子を積載した金属コンベアを適切な昇温温度と到達温度にて焼きを行うことが提案されている(特許文献1)。また、電子レンジ調理後に麺帯の周縁部が硬くなりにくい包餡麺帯食品を提供するために、包餡麺帯食品の麺帯にアセチル化リン酸架橋澱粉及びヒドロキシプロピル化澱粉を配合することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-24018号公報
【特許文献2】国際公開第2017/131167号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の焼き餃子及び引用文献2に記載の包餡麺帯食品はいずれも優れた製品であるが、一般に皮の合わせ目を軟らかくした包餡麺帯食品は、皮の合わせ目の食感が弱くなって感じられにくくなり、かえって食感全体の好ましさが低下する場合もあった。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目が好適な食感を有し得る焼き済み包餡麺帯食品(好ましくは、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ、かつ、皮の合わせ目の食感がしっかりと感じられ得る焼き済み包餡麺帯食品)及びその製造方法、並びに、焼き済み包餡麺帯食品の、皮の合わせ目の食感改善方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述の課題を解決するべく鋭意検討した結果、焼き済み包餡麺帯食品における皮の合わせ目の口残りは、皮の合わせ目部分と、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分とにおいて、食感のコントラストが生じることによって発生することを知見した。当該知見に基づいて本発明者らは検討を重ね、皮の合わせ目部分、並びに、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分の破断強度が、特定の関係を満たす焼き済み包餡麺帯食品は、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられることを見出した。また、当該焼き済み包餡麺帯食品は、皮の合わせ目の食感が、口残りしない程度に、しっかりと感じられることも見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて更に検討を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
[1]皮の合わせ目及び焼き面が形成された皮を含み、喫食前に加熱される焼き済み包餡麺帯食品であって、
前記焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)皮の合わせ目部分、並びに(B)皮の合わせ目及び焼き面以外の部分の破断強度を、テクスチャーアナライザーにて25℃で測定したとき、当該(A)及び(B)の破断強度が下式(I)の関係を満たす、包餡麺帯食品。
1.5≦(A)の破断強度/(B)の破断強度≦5.3 ・・・(I)
[2]前記(A)の破断強度が、20~120gfであり、前記(B)の破断強度が、8~25gfである、[1]記載の包餡麺帯食品。
[3]前記焼き済み包餡麺帯食品に対し喫食前に施される加熱処理が、マイクロ波加熱、湿式加熱及び熱風加熱からなる群より選択される少なくとも一つを含む、[1]又は[2]記載の包餡麺帯食品。
[4]前記焼き済み包餡麺帯食品が凍結している、[1]~[3]のいずれか一つに記載の包餡麺帯食品。
[5]前記包餡麺帯食品が、餃子である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の包餡麺帯食品。
[6]皮の合わせ目及び焼き面が形成された皮を含み、喫食前に加熱される焼き済み包餡麺帯食品の製造方法であって、
前記焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)皮の合わせ目部分、並びに(B)皮の合わせ目及び焼き面以外の部分の破断強度を、テクスチャーアナライザーにて25℃で測定したとき、当該(A)及び(B)の破断強度が下式(I)の関係を満たすように、当該(A)及び/又は(B)の破断強度を調整することを含む、製造方法。
1.5≦(A)の破断強度/(B)の破断強度≦5.3 ・・・(I)
[7]前記(A)の破断強度が、20~120gfであり、前記(B)の破断強度が、8~25gfである、[6]記載の製造方法。
[8]前記焼き済み包餡麺帯食品に対し喫食前に施される加熱処理が、マイクロ波加熱、湿式加熱及び熱風加熱からなる群より選択される少なくとも一つを含む、[6]又は[7]記載の製造方法。
[9]前記(A)及び/又は(B)の破断強度の調整後に、前記焼き済み包餡麺帯食品に冷凍処理を施すことを含む、[6]~[8]のいずれか一つに記載の製造方法。
[10]前記包餡麺帯食品が、餃子である、[6]~[9]のいずれか一つに記載の製造方法。
[11]皮の合わせ目及び焼き面が形成された皮を含み、喫食前に加熱される焼き済み包餡麺帯食品の、皮の合わせ目の食感改善方法であって、
前記焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)皮の合わせ目部分、並びに(B)皮の合わせ目及び焼き面以外の部分の破断強度を、テクスチャーアナライザーにて25℃で測定したとき、当該(A)及び(B)の破断強度が下式(I)の関係を満たすように、当該(A)及び/又は(B)の破断強度を調整することを含む、方法。
1.5≦(A)の破断強度/(B)の破断強度≦5.3 ・・・(I)
[12]前記(A)の破断強度が、20~120gfであり、前記(B)の破断強度が、8~25gfである、[11]記載の方法。
[13]前記焼き済み包餡麺帯食品に対し喫食前に施される加熱処理が、マイクロ波加熱、湿式加熱及び熱風加熱からなる群より選択される少なくとも一つを含む、[11]又は[12]記載の方法。
[14]前記(A)及び/又は(B)の破断強度の調整後に、前記焼き済み包餡麺帯食品に冷凍処理を施すことを含む、[11]~[13]のいずれか一つに記載の方法。
[15]前記包餡麺帯食品が、餃子である、[11]~[14]のいずれか一つに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目が好適な食感を有し得る焼き済み包餡麺帯食品が提供される。本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ得る。また、本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、皮の合わせ目の食感がしっかりと感じられ得る。本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、好ましくは、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ、かつ、皮の合わせ目の食感がしっかりと感じられ得る。
また、本発明によれば、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目が好適な食感を有し得る焼き済み包餡麺帯食品の製造方法が提供される。本発明の製造方法によって得られる焼き済み包餡麺帯食品は、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ得る。また、本発明の製造方法によって得られる焼き済み包餡麺帯食品は、皮の合わせ目の食感がしっかりと感じられ得る。本発明の製造方法によって得られる焼き済み包餡麺帯食品は、好ましくは、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ、かつ、皮の合わせ目の食感がしっかりと感じられ得る。
また、本発明によれば、焼き済み包餡麺帯食品の、皮の合わせ目の食感改善方法が提供される。本発明の方法が用いられた焼き済み包餡麺帯食品は、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ得る。また、本発明の方法が用いられた焼き済み包餡麺帯食品は、皮の合わせ目の食感がしっかりと感じられ得る。本発明の方法が用いられた焼き済み包餡麺帯食品は、好ましくは、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ、かつ、皮の合わせ目の食感がしっかりと感じられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例において測定した試験区1~22の焼き済み冷凍餃子の破断強度を、横軸を(B)の破断強度とし、縦軸を(A)の破断強度としてプロットしたグラフである。各マーカー上の数字は、試験区番号を示す。2本の破線は、それぞれ傾き((A)の破断強度/(B)の破断強度)が1.5及び5.3である直線を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によって提供される、焼き済み包餡麺帯食品及びその製造方法について以下に説明する。
【0013】
本発明において「包餡麺帯食品」とは、餡(一般に「中具」又は「フィリング」等ともいう)と、当該餡の一部又は全部を包む(被覆する)麺帯(一般に「皮」又は「麺皮」等ともいう)とを含む食品をいう。本明細書において、包餡麺帯食品に含まれる「餡」及び「麺帯」を、それぞれ「中具」及び「皮」と称する場合がある。ここで、中具及び皮を「含む」食品とは、換言すると、中具及び皮を「少なくとも有する」食品と言い得る。包餡麺帯食品において、中具を被覆する(包む)皮の枚数は、1枚であってよく、又は2枚以上であってもよい。包餡麺帯食品の具体例としては、餃子、ワンタン、包子、ラビオリ、春巻き、焼売、小籠包等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明において「焼き済み包餡麺帯食品」とは、焼成加熱を含む加熱処理が施された包餡麺帯食品をいう。一方、焼き済みでない包餡麺帯食品、換言すると、焼成加熱を含む加熱処理が施される前の包餡麺帯食品(より詳細には、中具となる具材を皮で被覆して製造された後に、加熱処理が未だ施されていない包餡麺帯食品)を、本発明において「生包餡麺帯食品」と称する場合がある。本明細書中の「包餡麺帯食品」という記載は、焼き済み包餡麺帯食品及び生包餡麺帯食品を総称するものであり、特に断りのない限りこれらの両方又はいずれか一方を意味する。
【0015】
焼き済み包餡麺帯食品を得るために生包餡麺帯食品に対して施される加熱処理は、焼成加熱のみであってよく、又は、焼成加熱に加えて、それ以外の加熱処理(例、湿式加熱、マイクロ波加熱、熱風加熱、赤外線加熱等)を含んでもよい。すなわち、本発明における焼き済み包餡麺帯食品は、少なくとも焼成加熱が施された包餡麺帯食品と言え、「焼成加熱のみを施された包餡麺帯食品」の他、「焼成加熱とそれ以外の加熱処理(例、湿式加熱、マイクロ波加熱、熱風加熱、赤外線加熱等)とが施された包餡麺帯食品」も包含する概念である。
【0016】
本発明において「焼成加熱」とは、包餡麺帯食品を、焼き器(例、フライパン、鉄板、ホットプレート、餃子焼き機等)に接触させて加熱する処理をいう。包餡麺帯食品と焼き器は、包餡麺帯食品の表面に付着させ得る食品素材(例、バッター等)を介して接触してもよい。
本発明において「湿式加熱」とは、熱媒体に水(熱水)又は水蒸気を利用して包餡麺帯食品を加熱する処理をいう。湿式加熱のうち、熱媒体に水(熱水)を利用し、包餡麺帯食品を熱水中で加熱する処理を「ボイル加熱」といい(「茹で加熱」ともいう)、熱媒体に水蒸気を利用し、包餡麺帯食品を水蒸気雰囲気中で加熱する処理を「蒸し加熱」という(「スチーム加熱」ともいう)。
本発明において「マイクロ波加熱」(「電子レンジ加熱」ともいう)とは、包餡麺帯食品にマイクロ波を照射して加熱する処理をいう。
本発明において「熱風加熱」とは、包餡麺帯食品に熱風を吹き付けて加熱する処理をいう。
本発明において「赤外線加熱」(「オーブン加熱」ともいう)とは、包餡麺帯食品に赤外線を照射して加熱する処理をいう。
【0017】
焼き済み包餡麺帯食品を得るために生包餡麺帯食品に対して施される加熱処理が、焼成加熱に加えて、それ以外の加熱処理(例、湿式加熱、マイクロ波加熱、熱風加熱、赤外線加熱等)を含む場合、各加熱処理が生包餡麺帯食品に施される順序は特に制限されない。生包餡麺帯食品に対し、焼成加熱に加えて、蒸し加熱が施される場合を例に挙げて説明すると、生包餡麺帯食品にまず焼成加熱が施され、次いで蒸し加熱が施されてよく、逆に、生包餡麺帯食品にまず蒸し加熱が施され、次いで焼成加熱が施されてもよい。あるいは、いわゆる「蒸し焼き」のように、焼成加熱及び蒸し加熱が同時に生包餡麺帯食品に施されてもよい。
【0018】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品の皮は、皮の合わせ目が形成されているもの(換言すると、皮の合わせ目を有するもの)である。本発明において「皮の合わせ目」は、皮同士が接合することによって形成され、包餡麺帯食品の一種である餃子等では、一般に「耳」又は「耳部」とも称される。皮の合わせ目は、一態様として、1枚の皮における2つの部分(端部等)が接合することによって形成されるものであってよく、又は2枚以上の皮が接合することによって形成されるものであってもよい。皮の合わせ目は、一態様として、皮で被覆されている中具が外部にはみ出たり、こぼれ出たりすることを防ぐために中具の周囲に形成され得る。皮の合わせ目は、一般に、ヒダ(皮の一部が折り込まれて形成された重なり部分)を有する場合があるが、本発明における皮の合わせ目は、ヒダの有無を問わず、すなわち、ヒダを有するものであってよく又はヒダを有しないものであってもよい。
【0019】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品の皮は、焼き面が形成されているもの(換言すると、焼き面を有するもの)である。本発明において「焼き面」とは、皮の表面のうち、焼成加熱の際に焼き器に接して加熱された箇所をいい、包餡麺帯食品の一種である餃子等では「底面」等と称される場合がある。焼き面は、一般に、焼き色が付与されている(すなわち、褐色等を呈する)場合があるが、本発明における焼き面は、焼き色の有無や程度は特に制限されず、本発明の目的を損なわない限りいかなる焼き色が付与されていてよく、又は焼き色が付与されていないものであってもよい。
【0020】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、その皮における(A)皮の合わせ目部分、並びに(B)皮の合わせ目及び焼き面以外の部分の破断強度が、特定の関係を満たすことが重要である。これらの破断強度が特定の関係を満たすことによって、本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ、また、皮の合わせ目の食感が、口残りしない程度に、しっかりと感じられ得る。尚、「皮の合わせ目及び焼き面以外の部分」は、包餡麺帯食品の一種である餃子等では、一般に「腹」又は「腹部」とも称される。
本明細書において、焼き済み包餡麺帯食品の皮における「皮の合わせ目部分」並びに「皮の合わせ目及び焼き面以外の部分」を、説明の便宜上それぞれ「(A)」及び「(B)」と称する場合がある。
【0021】
本発明において、焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度は、テクスチャーアナライザーにて25℃で測定される。測定に用いられるテクスチャーアナライザーは、具体的にはStable Micro Systems社製「Texture Analyzer TA.XT.plus」である。当該テクスチャーアナライザーを用いて、焼き済み包餡麺帯食品の皮の(A)及び(B)に対し突き刺し試験を行って応力を測定し、その最大値(最大応力)を(A)及び(B)の破断強度とする。測定治具には、直径2mmの円柱プローブが用いられる。
【0022】
焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度を測定する際のテクスチャーアナライザーの設定(突き刺し試験の設定)は、下記の通りである。
[テクスチャーアナライザー設定]
・Test Mode :Compression
・Pre-Test Speed :2.0mm/sec
・Test Speed :1.0mm/sec
・Post-Test Speed :10.0mm/sec
・Target Mode :Distance
・Distance :10.0mm
・Trigger Force :2.0g
【0023】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、上述するように、皮の合わせ目がヒダを有するものであってよいが、その場合、(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)の破断強度の測定は、ヒダ以外の皮の重なり部分に対して行われる。また、焼き済み包餡麺帯食品の皮の破断強度の測定の際、焼き済み包餡麺帯食品の中具は予め取り出していてよい。
【0024】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、その皮における(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度が、下式(I)の関係を満たすことが好ましく、下式(I’)の関係を満たすことがより好ましく、下式(I’’)の関係を満たすことが特に好ましい。
1.5≦(A)の破断強度/(B)の破断強度≦5.3 ・・・(I)
1.6≦(A)の破断強度/(B)の破断強度≦5 ・・・(I’)
1.7≦(A)の破断強度/(B)の破断強度≦4.5 ・・・(I’’)
【0025】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)の破断強度は、皮の合わせ目の効果的な食感改善の観点から、好ましくは20gf以上であり、より好ましくは23gf以上であり、特に好ましくは25gf以上である。また、当該(A)の破断強度は、皮の合わせ目の効果的な食感改善の観点から、好ましくは120gf以下であり、より好ましくは100gf以下であり、特に好ましくは80gf以下である。
【0026】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品の皮における(B)の破断強度は、皮の合わせ目の効果的な食感改善の観点から、好ましくは8gf以上であり、より好ましくは9gf以上であり、特に好ましくは10gf以上である。また、当該(B)の破断強度は、皮の合わせ目の効果的な食感改善の観点から、好ましくは25gf以下であり、より好ましくは23gf以下であり、特に好ましくは22.5gf以下である。
【0027】
焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度の調整方法としては、例えば、下記(i)~(v)等が挙げられるが、これらに制限されず、当該破断強度は、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で調整し得る。
(i)生包餡麺帯食品に対し加熱処理を施す際に、生包餡麺帯食品の皮に水を塗布又は噴霧する。
(ii)生包餡麺帯食品に対して施す加熱処理の種類、加熱条件を変更する。
(iii)包餡麺帯食品の皮を作製する際に、皮の厚さを変動させる。
(iv)包餡麺帯食品の中具となる具材を作製する際に、当該具材の水分率を変動させる。
(v)焼き済み包餡麺帯食品の皮の一部((A)等)を、水に浸漬させる。
(A)及び/又は(B)の破断強度の調整は、上記(i)~(v)の方法、並びに自体公知の方法又はそれに準ずる方法を、適宜組み合わせて行ってよい。
【0028】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品の皮は、包餡麺帯食品の皮の通常の原料を使用し、通常の方法で作製し得る。本発明の焼き済み包餡麺帯食品の皮の作製方法は、必要に応じて、(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び/又は(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度を調整するための工程(例、皮の厚さを変動させること等)を含んでよい。
【0029】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品の皮の原料の具体例としては、例えば、水、穀物粉、デンプン類(生デンプン、加工デンプン)、食用油脂(植物性油脂、動物性油脂)、食塩、糖類、卵(例、液卵、卵黄粉、卵白粉、全卵粉等)、脱脂粉乳、食物繊維、グルテン、アミノ酸類、ビタミン類、ミネラル類、エキス類、乳化剤、保存剤、酸化防止剤、pH調整剤、調味料、香辛料、香料、色素等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの原料は、単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
包餡麺帯食品の皮の原料に用いられる水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の精製水、水道水、アルカリ電解水等が挙げられるが、これらに限定されず、食品製造用水として適合するものを用い得る。
【0031】
包餡麺帯食品の皮の原料に用いられる「穀物粉」は、穀物を製粉、粉砕等して得られる、粉状乃至粒状の食品原料をいう。穀物粉の具体例としては、小麦粉、米粉、トウモロコシ粉、大麦粉、そば粉、馬鈴薯粉、大豆粉、小豆粉、ひえ粉、栗粉、キビ粉等が挙げられるがこれらに制限されない。これらの穀物粉は一種単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品の皮は、例えば、下記(1)~(3)の手順等で作製し得るが、これらに限定されず自体公知の手順又はそれに準ずる手順で作製してよい。
(1)皮の原料(例、水及び小麦粉等)を混錬して生地を得る。
(2)上記(1)で得られた生地を、圧延機(例、ロール式製麺機等)等で圧延して麺帯を得る。麺帯の厚さは、包餡麺帯食品の種類や大きさに応じて適宜設定し得るが、通常0.1~5mmであり、好ましくは0.2~2mmであり、より好ましくは0.3~1.5mmである。ここで、麺帯の厚さを変動させることによって、(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び/又は(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度を調整し得る。
(3)上記(2)で得られた麺帯を、所望の形状(例、円形状、楕円形状、半円形状、多角形状等)に切り抜くか、又は所望の形状の抜き型等を使用して打ち抜く。
【0033】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品の中具(餡)は、包餡麺帯食品の中具の通常の原料を使用し、通常の方法で作製し得る。本発明の焼き済み包餡麺帯食品の中具となる具材の作製方法は、必要に応じて、(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び/又は(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度を調整するための工程(例、中具となる具材の水分率を変動させること等)を含んでよい。
【0034】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品の中具の原料の具体例としては、例えば、肉類(例、鶏肉、豚肉、牛肉等)、魚介類(例、海老、カニ等)、野菜(例、キャベツ、玉ねぎ、白菜、ニラ、ニンニク、しいたけ等)、食用油脂(植物性油脂、動物性油脂)、食塩、糖類、アミノ酸類、ビタミン類、ミネラル類、エキス類、保存剤、酸化防止剤、pH調整剤、調味料、香辛料、香料等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの原料は、単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品の中具となる具材は、例えば、原料を必要に応じて細断した上で、混合すること等によって作製し得るが、当該作製方法に限定されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で作製してよい。ここで、中具となる具材の水分率を変動させることによって、(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び/又は(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度を調整し得る。中具となる具材の水分率は、その原料の水分率と配合割合から算出され、原料の配合割合を変動させること等によって、中具となる具材の水分率を変動させ得る。中具となる具材の水分率は、特に制限されないが通常10~90重量%であり、好ましくは15~85重量%である。
本発明において、中具の原料の水分率は、自体公知の方法(例えば、日本食品標準成分表2020年版(八訂)分析マニュアルの「第1章 一般成分及び関連成分」の「1.水分」に記載の方法等)又はそれに準ずる方法により測定し得る。中具の原料のうち、「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」に収載される食品素材は、水分率の算出に、日本食品標準成分表2020年版(八訂)に記載されている「可食部100g当たりの水分(g)」を利用してもよい。
【0036】
本発明において、中具となる具材を皮で包む(被覆する)際の包み方(被覆方法)は、皮の合わせ目を形成すること以外は特に制限されず、包餡麺帯食品の種類等に応じて、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行い得る。包餡麺帯食品の一種である餃子を例に挙げて説明すると、円形状又は楕円形状の皮の片面中央部に、中具となる具材を一塊にして載置した後、これを挟むように皮を折り返し、次いで、中具となる具材の周囲において対向する皮同士を圧着して皮の合わせ目を形成することによって、中具となる具材を皮で包み得る(すなわち、生餃子が得られる)が、包み方はこれに制限されない。
【0037】
中具となる具材を皮で被覆して得られた生包餡麺帯食品に対し、焼成加熱を含む加熱処理を施すことによって、焼き済み包餡麺帯食品が得られうる。ここで、焼き済み包餡麺帯食品を得るために生包餡麺帯食品に対して施される加熱処理の種類、加熱条件を変更することによって、(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び/又は(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度を調整し得る。焼き済み包餡麺帯食品を得るために生包餡麺帯食品に対して施される加熱処理の加熱条件(加熱温度、加熱時間)は、(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度が特定の関係を満たし得れば特に制限されないが、焼成加熱の加熱温度は、通常180~280℃(好ましくは200~250℃)であり、加熱時間は、通常0.5~15分(好ましくは1~10分)である。また、焼き済み包餡麺帯食品を得るために生包餡麺帯食品に対して施される加熱処理は、上述の通り、焼成加熱に加えて、それ以外の加熱処理(例、湿式加熱、マイクロ波加熱、熱風加熱、赤外線加熱等)を含んでよく、その場合、焼成加熱以外の加熱処理の種類及び加熱条件も、(A)及び(B)の破断強度が特定の関係を満たし得れば特に制限されない。一態様として、焼き済み包餡麺帯食品を得るために生包餡麺帯食品に対して施される加熱処理が、焼成加熱に加えて、蒸し加熱を含む場合、蒸し加熱の加熱時間は、通常0.5~15分(好ましくは1~10分)である。
【0038】
生包餡麺帯食品に対し加熱処理を施す際、生包餡麺帯食品の皮に水を塗布又は噴霧することによって、(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び/又は(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度を調整し得る。生包餡麺帯食品の皮に水を塗布する方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行い得る。水を塗布する部位は適宜選択すればよいが、例えば(A)に水を塗布することによって、(A)の破断強度を低下させ得る。生包餡麺帯食品の皮に水を噴霧する方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行い得る。水を噴霧する部位は適宜選択すればよいが、例えば皮全体に水を噴霧することによって、(A)及び(B)の破断強度を低下させ得る。生包餡麺帯食品の皮に噴霧する水の量は、(A)及び(B)の破断強度に応じて適宜調整し得るが、生包餡麺帯食品100重量部に対して、好ましくは1重量部以上であり、より好ましくは3重量部以上であり、特に好ましくは5重量部以上である。また、生包餡麺帯食品の皮に噴霧する水の量は、生包餡麺帯食品100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは40重量部以下であり、更に好ましくは35重量部以下であり、特に好ましくは25重量部以下である。生包餡麺帯食品の皮に塗布又は噴霧する水は、食品の製造に用い得るものであれば特に制限されない。生包餡麺帯食品の皮に塗布又は噴霧する水は、本発明の目的を損なわない限り、水以外の成分を含有してよい。
【0039】
生包餡麺帯食品に対し加熱処理を施した後、得られた焼き済み包餡麺帯食品の皮の一部を水に浸漬させることによって、(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び/又は(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度を調整し得る。焼き済み包餡麺帯食品の皮の一部を水に浸漬させる方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行い得る。水に浸漬させる部位は適宜選択すればよいが、例えば(A)を水に浸漬することによって、(A)の破断強度を低下させ得る。焼き済み包餡麺帯食品の皮を水に浸漬させる時間、焼き済み包餡麺帯食品の皮を浸漬させる水の温度等は特に制限されず、(A)及び(B)の破断強度等に応じて適宜調整し得る。焼き済み包餡麺帯食品の皮の一部を浸漬させる水は、食品の製造に用い得るものであれば特に制限されない。焼き済み包餡麺帯食品の皮の一部を浸漬させる水は、本発明の目的を損なわない限り、水以外の成分を含有してよい。
【0040】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、本発明の目的を損なわない限り、通常の焼き済み包餡麺帯食品に施され得る処理が施されていてよい。例えば、本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、冷凍処理が施されていてよく、すなわち、本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、凍結しているもの(冷凍食品)であってよい。本発明の焼き済み包餡麺帯食品に冷凍処理が施される場合、冷凍処理は、焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度の調整後に、当該(A)及び(B)の破断強度が特定の関係を満たす状態にある焼き済み包餡麺帯食品に対して施され得る。
【0041】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品が、一態様として、凍結しているもの(冷凍食品)である場合、当該焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度は、凍結している焼き済み包餡麺帯食品を25℃で自然解凍(皮の温度が25℃になるまで静置)した後、テクスチャーアナライザーにて上述の通り測定される。したがって、焼き済み包餡麺帯食品が凍結しているものである場合、その凍結している焼き済み包餡麺帯食品を25℃で自然解凍した後、テクスチャーアナライザーにて25℃で測定した(A)及び(B)の破断強度が特定の関係を満たせば、その凍結している焼き済み包餡麺帯食品は、(A)及び(B)の破断強度が特定の関係を満たす状態にあるものと言える。
【0042】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、喫食前に加熱されるものであることが好ましい。ここで、焼き済み包餡麺帯食品に対して喫食前に施される加熱処理は、焼き済み包餡麺帯食品を得るために生包餡麺帯食品に対して施される加熱処理とは別に行われるものである。すなわち、本発明において包餡麺帯食品は、中具となる具材を皮で被覆して製造された後から喫食されるまでの間に、加熱処理を少なくとも2回施され得る。本明細書において「喫食前に加熱される焼き済み包餡麺帯食品」は、喫食前の加熱処理が施される前の状態の焼き済み包餡麺帯食品(より詳細には、焼成加熱を含む加熱処理が生包餡麺帯食品に対し施された後、喫食前の加熱処理が施される前の状態の焼き済み包餡麺帯食品)を意味する。一態様として、本発明の焼き済み包餡麺帯食品が凍結しているもの(冷凍食品)である場合は、凍結している焼き済み包餡麺帯食品(焼き済み冷凍包餡麺帯食品)を、喫食前に加熱される焼き済み包餡麺帯食品として扱って、上述の通り、(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度の測定を行い得る。
【0043】
焼き済み包餡麺帯食品に対して喫食前に施される加熱処理は、当該加熱処理後の包餡麺帯食品が喫食に適した状態になれば特に制限されないが、焼き済み包餡麺帯食品の表面全体を均一に加熱し得ることから、マイクロ波加熱、湿式加熱(例、蒸し加熱等)及び熱風加熱からなる群より選択される少なくとも一つを含むことが好ましく、マイクロ波加熱を含むことが特に好ましい。これらの加熱処理は適宜組み合わせて行ってよい。また、これらの加熱処理は、いずれも一般的な装置(例、電子レンジ、スチームコンベクションオーブン等)を用いて行ってよい。
【0044】
焼き済み包餡麺帯食品に対して喫食前に施される加熱処理の加熱条件(加熱温度、加熱時間)は、当該加熱処理後の包餡麺帯食品が喫食に適した状態になれば特に制限されず、加熱方法の種類、焼き済み包餡麺帯食品の状態等に応じて設定すればよい。一態様として、焼き済み包餡麺帯食品に対して喫食前に施される加熱処理が、マイクロ波加熱を含むとき、マイクロ波加熱の加熱時間は、600Wの電子レンジを用いて5個の焼き済み包餡麺帯食品を加熱する場合を例に挙げると通常0.5~3分(好ましくは1~2分)である。当該加熱処理は、皮における(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度が特定の関係を満たす状態にある焼き済み包餡麺帯食品に対して施されるものである。
【0045】
本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目が好適な食感を有し得る。具体的には、本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、喫食前に加熱されても、喫食時における皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ得る。本発明において、焼き済み包餡麺帯食品の「皮の合わせ目の口残り」とは、包餡麺帯食品の皮の合わせ目及び皮のその他の部分を分離することなく口腔内に含んで咀嚼した際に、皮の合わせ目が、皮のその他の部分(焼き面を除く)に比べて噛み切りづらく、当該部分の消失後も口腔内に残る感覚をいう。また、本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、皮の合わせ目の食感が、口残りしない程度に、しっかりと感じられ得る。焼き済み包餡麺帯食品の皮の合わせ目の食感の評価(皮の合わせ目の口残りの有無やその程度の評価、皮の合わせ目の食感の強さの評価)は、例えば、専門パネルによる官能評価等によって行い得る。
【0046】
本発明によって提供される、焼き済み包餡麺帯食品の、皮の合わせ目の食感改善方法(本明細書中、「本発明の方法」と称する場合がある)について以下に説明する。
【0047】
本発明の方法が用いられる焼き済み包餡麺帯食品は、上述の本発明の焼き済み包餡麺帯食品と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0048】
本発明の方法は、焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び/又は(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度を調整することを含む。具体的には、当該(A)及び(B)の破断強度は、上述の本発明の焼き済み包餡麺帯食品に関して説明した式(I)の関係(より好ましくは(I’)の関係、特に好ましくは式(I’’)の関係)を満たすように調整されることが好ましい。尚、当該(A)及び(B)の破断強度の測定は、上述の本発明の焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)及び(B)の破断強度の測定方法と同様に行い得る。
【0049】
本発明の方法において、焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び/又は(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度の調整は、上述の本発明の焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)及び/又は(B)の破断強度の調整方法と同様に行い得る。
【0050】
本発明の方法は、焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び/又は(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度の調整工程に加えて、当該工程以外の工程を含んでよい。破断強度の調整工程以外の工程は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されないが、例えば、本発明の方法は、(A)及び/又は(B)の破断強度の調整後に、焼き済み包餡麺帯食品に冷凍処理を施すことを含み得る。
【0051】
本発明の方法は、皮の合わせ目の食感を改善でき、本発明の方法が用いられた焼き済み包餡麺帯食品は、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ得る。また、本発明の方法が用いられた焼き済み包餡麺帯食品は、皮の合わせ目の食感が、口残りしない程度に、しっかりと感じられ得る。
【0052】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
尚、以下の実施例において用いられた原料は、特にことわりのない限り、いずれも食品用として市販されているものである。
【実施例0053】
<試験区1の焼き済み冷凍餃子の作製>
下記(1)~(4)の手順で、焼き済み冷凍餃子(焼き済み餃子を凍結させて得られた冷凍品)を作製した(以下において、「試験区1の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0054】
(1)餃子の中具となる具材の作製
豚ひき肉、キャベツ、ニラ、ニンニク、食塩及びゴマ油を、下表1に示す配合で混合し、餃子の中具となる具材(水分率:74.2重量%)を作製した。ここで、キャベツ及びニラは、それぞれみじん切りしてから他の原料と混合し、ニンニクはすりおろしてから他の原料と混合した。
下表1に示す豚ひき肉の水分率には、加熱乾燥法により測定された豚ひき肉の水分率を用い、その他の原料(キャベツ、ニラ、ニンニク、食塩、ゴマ油)の水分率は、日本食品標準成分表2020年版(八訂)に記載されている「可食部100g当たりの水分(g)」を利用して算出された。
【0055】
【表1】
【0056】
(2)餃子の皮の作製
小麦粉、食塩及び水を、下表2に示す配合で混錬して作製した生地を、ロール式製麺機で0.7mm程度の厚さに圧延し、麺帯を作製した。次いで、当該麺帯を楕円形状(長径:90mm、短径:80mm)に切り抜き、餃子用の皮(1枚当たりの重量:5g)を作製した。
【0057】
【表2】
【0058】
(3)生餃子の作製
上記(1)にて作製した具材(中具となる具材)12gを、上記(2)にて作製した皮で包んで、中具の周囲に皮の合わせ目(耳)が形成されている三日月形の生餃子(すなわち、皮の合わせ目が形成された皮を含む生餃子)を作製した。中具となる具材を皮で包む際、皮の合わせ目にヒダをつけた。
【0059】
(4)生餃子の加熱処理(焼き済み餃子の調製)及び冷凍処理(焼き済み冷凍餃子の調製)
上記(3)にて作製した生餃子に対し、蒸し加熱及び焼成加熱を順に行い、焼き済み餃子を調製した。蒸し加熱は、ガスコンロ及び蒸し器を使用して4分間行った。焼成加熱は、ホットプレートを使用し、230℃で4分間行った。
得られた焼き済み餃子(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面が形成された皮を含む焼き済み餃子)を、底面(焼き面)が上になるようにトレイに収容した後(トレイ1枚当たりの餃子の数:5個)、-35℃で急速凍結を行い、焼き済み冷凍餃子を得た。
【0060】
<試験区2の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子に対し水(生餃子1個当たり1g)を噴霧したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区2の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0061】
<試験区3の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子に対し水(生餃子1個当たり2g)を噴霧したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区3の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0062】
<試験区4の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子に対し水(生餃子1個当たり4g)を噴霧したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区4の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0063】
<試験区5の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子の皮の合わせ目(耳)の全面に水を薄く1回塗布し、次いで、生餃子に対し水(生餃子1個当たり1g)を噴霧したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区5の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0064】
<試験区6の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(2)において、生地を0.5mm程度の厚さに圧延して麺帯を作製したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区6の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0065】
<試験区7の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(2)において、生地を0.5mm程度の厚さに圧延して麺帯を作製したこと、及び、上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子に対し水(生餃子1個当たり2g)を噴霧したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区7の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0066】
<試験区8の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(2)において、生地を0.5mm程度の厚さに圧延して麺帯を作製したこと、及び、上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子に対し水(生餃子1個当たり4g)を噴霧したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区8の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0067】
<試験区9の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(1)において、豚ひき肉、キャベツ、ニラ、ニンニク、食塩及びゴマ油を、下表3に示す配合で混合し、餃子の中具となる具材(水分率:80.0重量%)を作製したこと、上記の手順(2)において、生地を0.5mm程度の厚さに圧延して麺帯を作製したこと、及び、上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子の皮の合わせ目(耳)の全面に水を薄く1回塗布し、次いで、生餃子に対し水(生餃子1個当たり1g)を噴霧したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区9の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0068】
【表3】
【0069】
<試験区10の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(2)において、生地を1mm程度の厚さに圧延して麺帯を作製したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区10の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0070】
<試験区11の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(2)において、生地を1mm程度の厚さに圧延して麺帯を作製したこと、及び、上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子に対し水(生餃子1個当たり1g)を噴霧したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区11の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0071】
<試験区12の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(2)において、生地を1mm程度の厚さに圧延して麺帯を作製したこと、及び、上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子に対し水(生餃子1個当たり4g)を噴霧したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区12の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0072】
<試験区13の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(1)において、豚ひき肉、キャベツ、ニラ、ニンニク、食塩及びゴマ油を、表3に示す配合で混合し、餃子の中具となる具材(水分率:80.0重量%)を作製したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区13の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0073】
<試験区14の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(1)において、豚ひき肉、キャベツ、ニラ、ニンニク、食塩及びゴマ油を、表3に示す配合で混合し、餃子の中具となる具材(水分率:80.0重量%)を作製したこと、及び、上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子に対し水(生餃子1個当たり1g)を噴霧したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区14の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0074】
<試験区15の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(1)において、豚ひき肉、キャベツ、ニラ、ニンニク、食塩及びゴマ油を、表3に示す配合で混合し、餃子の中具となる具材(水分率:80.0重量%)を作製したこと、及び、上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子に対し水(生餃子1個当たり4g)を噴霧したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区15の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0075】
<試験区16の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(1)において、豚ひき肉、キャベツ、ニラ、ニンニク、食塩及びゴマ油を、表3に示す配合で混合し、餃子の中具となる具材(水分率:80.0重量%)を作製したこと、及び、上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子の皮の合わせ目(耳)の全面に水を薄く1回塗布し、次いで、生餃子に対し水(生餃子1個当たり1g)を噴霧したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区16の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0076】
<試験区17の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子に対し水(生餃子1個当たり1g)を噴霧したこと、及び、焼き済み餃子を急速凍結する前に、焼き済み餃子の皮の合わせ目(耳)を温水(70℃)に2秒間浸漬したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区17の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0077】
<試験区18の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子の皮の合わせ目(耳)の全面に水を薄く1回塗布し、次いで、生餃子に対し水(生餃子1個当たり1g)を噴霧したこと、及び、焼き済み餃子を急速凍結する前に、焼き済み餃子の皮の合わせ目(耳)を温水(70℃)に2秒間浸漬したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区18の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0078】
<試験区19の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(1)において、豚ひき肉、キャベツ、ニラ、ニンニク、食塩及びゴマ油を、下表4に示す配合で混合し、餃子の中具となる具材(水分率:60.6重量%)を作製したこと、並びに、上記の手順(4)において、生餃子に加熱処理(蒸し加熱及び焼成加熱)を施す前に、生餃子に対し水(生餃子1個当たり2g)を噴霧したこと、及び、焼き済み餃子を急速凍結する前に、焼き済み餃子の皮の合わせ目(耳)を温水(70℃)に2秒間浸漬したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区19の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0079】
【表4】
【0080】
<試験区20の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(1)において、豚ひき肉、キャベツ、ニラ、ニンニク、食塩及びゴマ油を、表4に示す配合で混合し、餃子の中具となる具材(水分率:60.6重量%)を作製したこと、及び、上記の手順(4)において、焼き済み餃子を急速凍結する前に、焼き済み餃子の皮の合わせ目(耳)を温水(70℃)に30秒間浸漬したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区20の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。
【0081】
<試験区21の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(4)において、生餃子に対し、ボイル加熱及び焼成加熱を順に行い、焼き済み餃子を調製したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区21の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。ボイル加熱は、鍋を使用し、沸騰したお湯で2分間行った。
【0082】
<試験区22の焼き済み冷凍餃子の作製>
上記の手順(4)において、生餃子に対し、ボイル加熱及び焼成加熱を順に行い、焼き済み餃子を調製したこと以外は、試験区1と同様の手順で、焼き済み冷凍餃子を作製した(以下において、「試験区22の焼き済み冷凍餃子」とも称する)。ボイル加熱は、鍋を使用し、沸騰したお湯で1分間行った。
【0083】
<焼き済み冷凍餃子の皮における(A)及び(B)の破断強度の測定>
試験区1~22の各焼き済み冷凍餃子をトレイから取り出し、皿に並べてラップをかけ、その状態で25℃にて、皮の温度が25℃になるまで(60~120分間)静置して、各焼き済み冷凍餃子を自然解凍した。
次いで、自然解凍した各焼き済み包餡麺帯食品の皮における(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度を測定した。具体的には、自然解凍した各焼き済み包餡麺帯食品の皮における「皮の合わせ目部分」及び「皮の合わせ目及び焼き面以外の部分」に対し、テクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製「Texture Analyzer TA.XT.plus」)を用いて25℃で突き刺し試験を行って応力を測定し、その最大値(最大応力)を、(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度とした。ここで、皮の合わせ目部分に対する突き刺し試験((A)の破断強度の測定)は、ヒダ以外の皮の重なり部分に対して行った。また、破断強度の測定の際、焼き済み包餡麺帯食品の中具は予め取り出した。
上述の突き刺し試験(破断強度の測定)において、測定治具には、直径2mmの円柱プローブが用い、また、テクスチャーアナライザーは、下記の通り設定した。
[テクスチャーアナライザー設定]
・Test Mode :Compression
・Pre-Test Speed :2.0mm/sec
・Test Speed :1.0mm/sec
・Post-Test Speed :10.0mm/sec
・Target Mode :Distance
・Distance :10.0mm
・Trigger Force :2.0g
【0084】
測定結果を、下表5~7に示す。また、試験区1~22の焼き済み冷凍餃子の破断強度を、横軸を(B)の破断強度とし、縦軸を(A)の破断強度としてプロットしたグラフを図1に示す。
【0085】
<官能評価>
試験区1~22の焼き済み冷凍餃子が収容された各トレイにラップをかけ、電子レンジでマイクロ波加熱(600W、1分20秒)を行った。マイクロ波加熱後の各餃子を、5名の専門パネルが喫食し、皮の合わせ目(耳)の食感(皮の合わせ目の口残り、皮の合わせ目の食感の強さ)について評価を行った。皮の合わせ目の食感の評価は、5名の専門パネルがそれぞれ下記の尺度に基づき0.5点刻みで評点付けし、5名の平均点を算出することにより行われた。尚、餃子の喫食は、各餃子をマイクロ波加熱後に半分にカットし、カットされた餃子全部を一度に(餃子の皮と中具とが分離しないように)口に含んで咀嚼することにより行った。また、各専門パネルは、評点が0.5点変動するには、皮の合わせ目の口残り、皮の合わせ目の食感の強さがどの程度変動すればよいのか等が専門パネル間で共通となるよう予め訓練された。
【0086】
(皮の合わせ目の口残りの評価尺度)
4点:皮の合わせ目が口残りしない。
3点:皮の合わせ目がほとんど口残りしない。
2点:皮の合わせ目が皮の合わせ目がやや口残りする。
1点:皮の合わせ目が口残りする。
【0087】
(皮の合わせ目の食感の強さの評価尺度)
4点:皮の合わせ目の食感は、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分に比べて強く、しっかりと感じられる。
3点:皮の合わせ目の食感は、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分に比べてやや強く、しっかりと感じられる。
2点:皮の合わせ目の食感は、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分に比べてやや弱く、十分に感じられない。
1点:皮の合わせ目の食感は、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分に比べて弱すぎ、ほとんど感じられない。
【0088】
評価結果を、下表5~7に示す。各表中の「総合評価」は、皮の合わせ目の口残り及び皮の合わせ目の食感の強さの評価結果のいずれか一方又は両方が2点以下である場合を「×」とし、皮の合わせ目の口残り及び皮の合わせ目の食感の強さの評価結果が両方とも2点を超える場合を「〇」とした。
【0089】
【表5】
【0090】
【表6】
【0091】
【表7】
【0092】
表5~7に示されるように、皮における(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度の比((A)の破断強度/(B)の破断強度)が1.76~4.48である、試験区2~5、7~9、11、12、14~19、22の焼き済み冷凍餃子は、マイクロ波加熱後に喫食した際、皮の合わせ目が口残りせず、かつ、皮の合わせ目の食感がしっかりと感じられた(皮の合わせ目の口残りの評点:2.30~3.90、皮の合わせ目の食感の強さの評点:2.20~3.80、総合評価:〇)。
一方、(A)の破断強度/(B)の破断強度)が5.64、6.12、5.46、5.35である、試験区1、6、10、13の焼き済み冷凍餃子は、マイクロ波加熱後に喫食した際、皮の合わせ目が口残りした(皮の合わせ目の口残りの評点:1.20~1.80、総合評価:×)。また、(A)の破断強度/(B)の破断強度)が1.30、1.47である、試験区20、21の焼き済み冷凍餃子は、マイクロ波加熱後に喫食した際、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分に比べて弱く、あまり感じられなかった(皮の合わせ目の食感の強さの評点:1.30、1.80、総合評価:×)。
【0093】
上記の結果から、皮における(A)(すなわち、皮の合わせ目部分)及び(B)(すなわち、皮の合わせ目及び焼き面以外の部分)の破断強度が、特定の関係を満たす焼き済み包餡麺帯食品は、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ得ることが示唆された。また、皮における(A)及び(B)の破断強度が、特定の関係を満たす焼き済み包餡麺帯食品は、皮の合わせ目の食感が、口残りしない程度に、しっかりと感じられ得ることも示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目が好適な食感を有し得る焼き済み包餡麺帯食品が提供される。本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ得る。また、本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、皮の合わせ目の食感がしっかりと感じられ得る。本発明の焼き済み包餡麺帯食品は、好ましくは、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ、かつ、皮の合わせ目の食感がしっかりと感じられ得る。
また、本発明によれば、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目が好適な食感を有し得る焼き済み包餡麺帯食品の製造方法が提供される。本発明の製造方法によって得られる焼き済み包餡麺帯食品は、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ得る。また、本発明の製造方法によって得られる焼き済み包餡麺帯食品は、皮の合わせ目の食感がしっかりと感じられ得る。本発明の製造方法によって得られる焼き済み包餡麺帯食品は、好ましくは、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ、かつ、皮の合わせ目の食感がしっかりと感じられ得る。
また、本発明によれば、焼き済み包餡麺帯食品の、皮の合わせ目の食感改善方法が提供される。本発明の方法が用いられた焼き済み包餡麺帯食品は、喫食前に加熱されても、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ得る。また、本発明の方法が用いられた焼き済み包餡麺帯食品は、皮の合わせ目の食感がしっかりと感じられ得る。本発明の方法が用いられた焼き済み包餡麺帯食品は、好ましくは、皮の合わせ目の口残りの発生が抑えられ、かつ、皮の合わせ目の食感がしっかりと感じられ得る。
図1