(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092703
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】冷媒漏洩判定方法及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20240701BHJP
F24F 11/49 20180101ALI20240701BHJP
F24F 11/36 20180101ALI20240701BHJP
【FI】
F25B49/02 520Z
F24F11/49
F24F11/36
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208822
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】福山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】中西 喬也
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB03
3L260BA37
3L260BA52
3L260JA12
3L260JA13
(57)【要約】
【課題】冷媒回路からの冷媒の漏洩の有無を判定する。
【解決手段】冷媒漏洩判定方法は、以下の工程を備える。熱源ユニット20と利用ユニット30とを連絡配管5、6で接続することで形成された冷媒回路10に、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を充填する(S1)。そして、冷媒回路10内の第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する(S2)。そして、取得する工程(S2)後に、目標充填量になるまで冷媒回路10に冷媒を充填させる(S4)。そして、目標充填量を冷媒回路10に充填した後の通常運転時に、通常運転データを取得(S5)。そして、通常運転データと第1の試運転データとに基づいて、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定する(S6)。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源ユニット(20)と利用ユニット(30)とを連絡配管(5、6)で接続することで形成された冷媒回路(10)に、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を充填する工程(S1)と、
前記冷媒回路内の前記第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する工程(S2)と、
前記取得する工程後に、前記目標充填量になるまで前記冷媒回路に冷媒を充填させる工程(S3)と、
前記目標充填量を前記冷媒回路に充填した後の通常運転時に、通常運転データを取得する工程(S5)と、
前記通常運転データと前記第1の試運転データとに基づいて、前記冷媒回路からの冷媒の漏洩の有無を判定する工程(S6)と、
を備える、冷媒漏洩判定方法。
【請求項2】
前記冷媒回路に、前記第1充填量よりも多く、かつ前記目標充填量よりも少ない第2充填量の冷媒を充填する工程(S11)と、
前記冷媒回路内の前記第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する工程(S12)と、
をさらに備え、
前記判定する工程では、前記通常運転データと、前記第1の試運転データと、前記第2の試運転データと、に基づいて、前記冷媒回路からの冷媒の漏洩の有無を判定する、
請求項1に記載の冷媒漏洩判定方法。
【請求項3】
熱源ユニット(20)と、利用ユニット(30)と、前記熱源ユニットと前記利用ユニットとを接続する連絡配管(5、6)と、を備える冷凍サイクル装置であって、
前記熱源ユニットと前記利用ユニットとを前記連絡配管で接続することで形成された冷媒回路(10)と、
前記冷媒回路の運転を制御する制御部(20c)と、
を備え、
前記制御部は、前記冷媒回路内において、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する、冷凍サイクル装置(1)。
【請求項4】
前記制御部は、前記冷媒回路内において、前記第1充填量よりも多く、かつ前記目標充填量よりも少ない第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する、
請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
冷媒漏洩判定方法及び冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(国際公開2015/004747号公報)には、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器に冷媒が循環するように構成され、圧縮機と凝縮器とが第1延長配管で接続され、膨張弁と蒸発器とが第2延長配管で接続された冷媒回路と、冷媒回路の運転状態量を検出する検出部と、検出部で検出された運転状態量に基づいて冷媒回路内部の冷媒量を算出し、算出冷媒量と基準冷媒量とを比較することにより冷媒漏洩検知を行う冷媒漏洩検知運転を行う制御部とを備え、制御部は、冷媒漏洩検知運転時に、第2延長配管の出口の冷媒の乾き度を0.1以上、0.7以下に制御する、冷凍サイクル装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の冷凍サイクル装置では、冷媒漏洩検知運転時に、第2延長配管の出口の冷媒の乾き度を0.1以上、0.7以下に制御しなければいけない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の冷媒漏洩判定方法は、以下の工程を備える。熱源ユニットと利用ユニットとを連絡配管で接続することで形成された冷媒回路に、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を充填する。そして、冷媒回路内の第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する。そして、取得する工程後に、目標充填量になるまで冷媒回路に冷媒を充填させる。そして、目標充填量を冷媒回路に充填した後の通常運転時に、通常運転データを取得する。そして、通常運転データと第1の試運転データとに基づいて、冷媒回路からの冷媒の漏洩の有無を判定する。
【0005】
第1観点の冷媒漏洩判定方法によれば、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する。この第1の試運転データは、冷媒が漏洩したときの挙動を示すデータとなる。このため、目標充填量を充填した後の通常運転時に取得した通常運転データと、第1の試運転データとを比較することによって、冷媒回路からの冷媒の漏洩の有無を判定することができる。
【0006】
第2観点の冷媒漏洩判定方法は、第1観点の冷媒漏洩判定方法であって、以下の工程をさらに備える。冷媒回路に、第1充填量よりも多く、かつ目標充填量よりも少ない第2充填量の冷媒を充填する。冷媒回路内の第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する。判定する工程では、通常運転データと、第1の試運転データと、第2の試運転データと、に基づいて、冷媒回路からの冷媒の漏洩の有無を判定する。
【0007】
第2観点の冷媒漏洩判定方法では、第1充填量と目標充填量との間の第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する。この第2の試運転データは、冷媒が漏洩したときの挙動を示し、かつ第1の試運転データと異なるデータとなる。このため、目標充填量を充填した後の通常運転時に取得した通常運転データと、第1の試運転データ及び第2の試運転データとを比較することによって、冷媒の漏洩の有無の判定の精度を向上することができる。
【0008】
第3観点の冷凍サイクル装置は、熱源ユニットと、利用ユニットと、熱源ユニットと利用ユニットとを接続する連絡配管と、を備える冷凍サイクル装置である。冷凍サイクル装置は、冷媒回路と、制御部と、を備える。冷媒回路は、熱源ユニットと利用ユニットとを連絡配管で接続することで形成される。制御部は、冷媒回路の運転を制御する。制御部は、冷媒回路内において、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する。
【0009】
第3観点の冷凍サイクル装置によれば、制御部は、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する。この第1の試運転データは、冷媒が漏洩したときの挙動を示すデータとなる。このため、目標充填量を充填した後の通常運転時に取得した通常運転データと、第1の試運転データとを比較することによって、冷媒回路からの冷媒の漏洩の有無を判定することができる。
【0010】
第4観点の冷凍サイクル装置は、第3観点の冷凍サイクル装置であって、制御部は、冷媒回路内において、第1充填量よりも多く、かつ目標充填量よりも少ない第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する。
【0011】
第4観点の冷凍サイクル装置では、制御部は、第1充填量と目標充填量との間の第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する。この第2の試運転データは、冷媒が漏洩したときの挙動を示し、かつ第1の試運転データと異なるデータとなる。このため、目標充填量を充填した後の通常運転時に取得した通常運転データと、第1の試運転データ及び第2の試運転データとを比較することによって、冷媒の漏洩の有無の判定の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る管理システムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る冷凍サイクル装置の機能ブロック構成を示す図である。
【
図3】実施形態に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
【
図4】実施形態に係る冷媒漏洩判定方法を示すフローチャートである。
【
図5】変形例に係る冷媒漏洩判定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)冷凍サイクル装置の管理システムの全体構成
図1に示すように、冷凍サイクル装置1の管理システム100は、冷凍サイクル装置1を管理するための装置である。冷凍サイクル装置1の管理システム100は、冷凍サイクル装置1の冷媒漏洩の有無を判定し、冷媒漏洩が有ると判定されると、ユーザへの通知を行うためのシステムである。なお、ユーザとは、冷凍サイクル装置1を使用する者と、冷凍サイクル装置1の管理を行う者と、を含む。
【0014】
管理システム100は、冷凍サイクル装置1と、サーバ40と、情報機器50と、を備える。サーバ40は、冷凍サイクル装置1に接続される。情報機器50は、サーバ40に接続される。以下、管理システム100に含まれる各構成について説明する。
【0015】
(2)冷凍サイクル装置
冷凍サイクル装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことで、対象空間の熱負荷を処理する装置であって、例えば、対象空間の空気を調和させる空気調和装置等である。
図2及び
図3に示すように、冷凍サイクル装置1は、一台の熱源ユニット20と、複数の利用ユニット30と、熱源ユニット20と複数の利用ユニット30とを接続する連絡配管5、6と、リモコン36と、を有している。本実施形態では、熱源ユニット20と利用ユニット30とは、
図2に示す伝送線97を介して通信可能に接続されている。
【0016】
冷凍サイクル装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路10は、熱源ユニット20と利用ユニット30とが連絡配管5、6を介して接続されることによって構成されている。冷媒回路10には、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うための冷媒が充填されている。冷媒回路10に充填されている冷媒としては、特に限定されず、例えば、R32等が充填される。なお、冷媒回路10には、上述の冷媒と共に冷凍機油が充填される。
【0017】
(2-1)熱源ユニット
図3に示すように、熱源ユニット20は、連絡配管5、6を介して利用ユニット30と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。熱源ユニット20は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、第1熱交換器23と、第1膨張弁24と、第1ファン25と、レシーバ26と、ガス側閉鎖弁28と、液側閉鎖弁29と、第1冷媒配管11~第7冷媒配管17と、を有している。
【0018】
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機21としては、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素が圧縮機モータによって回転駆動される密閉式構造の圧縮機を用いることができる。圧縮機モータは、容量を変化させるためのものであり、インバータにより運転周波数の制御が可能である。圧縮機21の吸入側には、吸入管である第7冷媒配管17が接続されている。圧縮機21の吐出側には、吐出管である第1冷媒配管11が接続されている。
【0019】
四路切換弁22は、図示しない弁体が移動制御されることにより流路が切り換えられる弁であり、冷媒回路10を冷房接続状態と暖房接続状態とに切り換える弁である。具体的には、四路切換弁22は、冷房接続状態では、圧縮機21の吐出側に接続された第1冷媒配管11と、第1熱交換器23に接続された第2冷媒配管12とを接続しつつ、圧縮機21の吸入側に接続された第7冷媒配管17とレシーバ26と第6冷媒配管16と、ガス側閉鎖弁28に接続された第5冷媒配管15とを接続する状態に切り換えられる。また、四路切換弁22は、暖房接続状態では、圧縮機21の吐出側に接続された第1冷媒配管11と、ガス側閉鎖弁28に接続された第5冷媒配管15とを接続しつつ、圧縮機21の吸入側に接続された第7冷媒配管17とレシーバ26と第6冷媒配管16と、第1熱交換器23に接続された第2冷媒配管12とを接続する状態に切り換えられる。
【0020】
第1熱交換器23は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。第1熱交換器23のガス側端部は、第2冷媒配管12を介して四路切換弁22と接続されている。第1熱交換器23の液側端部は、第3冷媒配管13を介して第1膨張弁24と接続されている。
【0021】
第1膨張弁24は、冷媒回路10における第1熱交換器23の液側出口と液側閉鎖弁29との間に設けられている。第1膨張弁24は、図示しない弁座に対して図示しない弁体が移動制御されることで弁開度を調節可能な電動膨張弁である。第1膨張弁24と液側閉鎖弁29とは、第4冷媒配管14を介して接続されている。
【0022】
第1ファン25は、熱源ユニット20内に室外の空気を吸入して、第1熱交換器23において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。第1ファン25は、ファンモータによって回転駆動される。
【0023】
レシーバ26は、圧縮機21の吸入側と四路切換弁22の接続ポートの1つとの間に設けられており、冷媒回路10における余剰冷媒を液冷媒として貯留することが可能な冷媒容器である。レシーバ26の入口側は、第6冷媒配管16を介して四路切換弁22と接続されている。レシーバ26の出口側は、第7冷媒配管17を介して圧縮機21の吸入側に接続されている。
【0024】
液側閉鎖弁29は、熱源ユニット20における液側連絡配管6との接続部分に配置された手動弁である。ガス側閉鎖弁28は、熱源ユニット20におけるガス側連絡配管5との接続部分に配置された手動弁である。
【0025】
熱源ユニット20には、吐出圧力センサ61、吐出温度センサ62、吸入圧力センサ63、吸入温度センサ64、液側温度センサ65、外気温度センサ66等が設けられている。吐出圧力センサ61は、圧縮機21の吐出側と四路切換弁22の接続ポートの1つとを接続する吐出管である第1冷媒配管11を流れる冷媒の圧力を検出する。吐出温度センサ62は、吐出管である第1冷媒配管11を流れる冷媒の温度を検出する。吸入圧力センサ63は、圧縮機21の吸入側とレシーバ26とを接続する吸入配管である第7冷媒配管17を流れる冷媒の圧力を検出する。吸入温度センサ64は、吸入配管である第7冷媒配管17を流れる冷媒の温度を検出する。液側温度センサ65は、第1熱交換器23のうち四路切換弁22が接続されている側とは反対側である液側の出口を流れる冷媒の温度を検出する。外気温度センサ66は、第1熱交換器23を通過する前の屋外の空気温度を検出する。これらの各センサは、後述の第1制御部20cと電気的に接続されており、第1制御部20cに対して検出信号を送信する。
【0026】
また、
図2に示すように、熱源ユニット20は、第1通信部20aと、第1入力部20bと、第1制御部20cと、第1記憶部20dと、を有している。
【0027】
第1通信部20aは、利用ユニット30との間で通信を行うためのインターフェースである。また、第1通信部20aは、サーバ40との間で通信を行うためのインターフェースでもある。
【0028】
第1入力部20bは、作業者から、第1試運転の実行の指令を受け付けるボタンである。ここでは、第1入力部20bは、第1試運転の実行の指令を受け付けるボタンと、最終試運転の実行の指令を受け付けるボタンと、を有する。第1入力部20bによって第1試運転または最終試運転の実行の指令が受け付けられると、第1制御部20cによって第1試運転または最終試運転が実行されて、後述する複数の試運転データが検出される。
【0029】
第1制御部20cは、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置である。第1制御部20cは、第1記憶部20dに記憶されているプログラムを読み出して実行する。
【0030】
第1制御部20cは、熱源ユニット20を構成する各部の動作を制御する。第1制御部20cは、各利用ユニット30のそれぞれの第2制御部35との間で伝送線97を介して制御信号を通信できるようになっている。ここでは、伝送線97に接続された第1制御部20cと各第2制御部35とが協働することにより、冷凍サイクル装置1の全体の運転制御を行う。換言すると、第1制御部20cは、第2制御部35と協働して、冷媒回路10の運転を制御する。
【0031】
具体的には、第1制御部20cは、利用ユニット30の起動、停止、設定温度、設定湿度、設定風量、または設定風向、運転モード等の制御指令に従って、熱源ユニット20を構成する各部を動作させる。より具体的には、第1制御部20cは、圧縮機21の周波数、第1ファン25の回転数、第1膨張弁24の開度の調整等を行わせるための制御指令を生成する。
【0032】
さらに、第1制御部20cは、冷媒回路10内において、目標充填量(100%)よりも少ない第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する。目標充填量は、据付説明書に記載された必要な冷媒充填量である。また、目標充填量は、冷房運転、暖房運転などの通常運転を行う際に、冷媒回路10内を冷媒が循環する量である。第1充填量は、例えば、目標充填量の50%以上100%未満であり、本実施形態では目標充填量の70%とする。
【0033】
具体的には、第1制御部20cは、第1入力部20bが第1試運転の実行の指令を受け付けると、第1試運転を実行するために、熱源ユニット20を構成する各部を動作させるとともに、利用ユニット30の第2制御部35に、利用ユニット30を構成する各部を動作させるように指令を送る。そして、第1制御部20cは、第1試運転中に第1の試運転データを取得する。第1の試運転データは、例えば、各利用ユニット30の第2膨張弁33の開度などである。そして、第1制御部20cは、取得した第1の試運転データを第1記憶部20dに記憶させる。
【0034】
また、第1制御部20cは、冷媒回路10内において、目標充填量の冷媒を循環させる最終試運転を行って、最終の試運転データを取得する。具体的には、第1制御部20cは、第1入力部20bが最終試運転の実行の指令を受け付けると、最終試運転を実行するために、熱源ユニット20を構成する各部を動作させるとともに、利用ユニット30の第2制御部35に、利用ユニット30を構成する各部を動作させるように指令を送る。そして、第1制御部20cは、最終試運転中の最終の試運転データを取得する。最終の試運転データは、例えば、各利用ユニット30の第2膨張弁33の開度などである。そして、取得した最終の試運転データを第1記憶部20dに記憶させる。
【0035】
このように、第1制御部20cは、複数の試運転のモードを有している。本実施形態では、第1制御部20cは、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転と、目標充填量の冷媒を循環させる最終試運転と、の2つのモードを有している。
【0036】
さらには、第1制御部20cは、目標充填量を冷媒回路10に充填した後の通常運転時に、通常運転データを取得し、通常運転データと第1の試運転データとに基づいて、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定する。本実施形態では、第1制御部20cは、通常運転データと第1の試運転データと最終の試運転データとに基づいて、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定する。ここでは、第1制御部20cは、通常運転において、第1の試運転と類似した条件を満たす時の通常運転データと、第1の試運転データと、を比較して、第1の試運転データと類似した状態であるときに、冷媒回路10から冷媒が漏洩したと判定する。
【0037】
第1制御部20cが取得する第1の試運転データ及び最終の試運転データが、例えば、複数の利用ユニット30の全てが冷房運転をしたときの各第2膨張弁33の開度に関するデータとする。第1制御部20cは、通常運転中に、利用ユニット30の全てが冷房運転を行ったときに、通常運転データとして各第2膨張弁33の開度を取得する。そして、第1制御部20cは、第1の試運転データとしての各第2膨張弁33の開度と、最終の試運転データとしての各第2膨張弁33の開度と、通常運転データとしての各第2膨張弁33の開度と、を比較する。具体的には、通常運転時の各第2膨張弁33の開度が、最終試運転時の各第2膨張弁33の開度から、第1試運転時の各第2膨張弁33の開度にどれくらい近づいているかを演算して、冷媒漏洩の有無を判定する。なお、第1試運転、最終試運転及び通常運転での目標蒸発温度は同じである。
【0038】
第1記憶部20dは、ROM、RAM、及びハードディスク等を有している。第1記憶部20dには、第1制御部20cが読み出して実行可能なプログラムが記憶されている。また、第1記憶部20dには、第1の試運転データ、最終試運転テータ、通常運転データ等が記憶される。
【0039】
(2-2)利用ユニット
利用ユニット30は、例えば、対象空間である室内の壁面や天井等に設置される。利用ユニット30は、連絡配管5、6を介して熱源ユニット20と接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。なお、本実施形態の冷凍サイクル装置1では、1台の熱源ユニット20に対して複数台の利用ユニット30が互いに並列に接続されている。各利用ユニット30は互いに同様の構成であるため、以下では1つの利用ユニット30について説明する。
【0040】
利用ユニット30は、第2熱交換器31と、第8冷媒配管18と、第9冷媒配管19と、第2ファン32と、第2膨張弁33と、を有している。
【0041】
第2熱交換器31は、液側が、第8冷媒配管18を介して液側連絡配管6と接続され、ガス側端が、第9冷媒配管19を介してガス側連絡配管5と接続されている。第2熱交換器31は、冷房運転時には冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の凝縮器として機能する熱交換器である。
【0042】
第2ファン32は、利用ユニット30内に室内の空気を吸入して、第2熱交換器31において冷媒と熱交換させた後に、外部に排出するための空気流れを生じさせる。第2ファン32は、ファンモータによって回転駆動される。第2ファン32は、リモコン36から受け付けた設定風量で駆動させることができる。
【0043】
第2膨張弁33は、冷媒回路10において第2熱交換器31の液側入口と液側連絡配管6との間に設けられている。第2膨張弁33は、図示しない弁座に対して図示しない弁体が移動制御されることで弁開度を調節可能な電動膨張弁である。第2膨張弁33は、第2熱交換器31の液側に対応して設けられている。第2膨張弁33は、冷媒を減圧しながら第2熱交換器31を流れる冷媒の流量を調整する膨張機構である。
【0044】
利用ユニット30には、液側熱交温度センサ71、空気温度センサ72等が設けられている。液側熱交温度センサ71は、第2熱交換器31の液冷媒側の入口を流れる冷媒の温度を検出する。空気温度センサ72は、第2熱交換器31を通過する前の室内の空気温度を検出する。これらの各センサは、後述の第2制御部35と電気的に接続されており、第2制御部35に対して検出信号を送信する。
【0045】
利用ユニット30は、第2通信部34と、第2制御部35と、を有している。第2通信部34は、熱源ユニット20との間で通信を行うためのインターフェースである。
【0046】
第2制御部35は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサやメモリ等を含むマイクロコンピュータを有している。
【0047】
第2制御部35は、利用ユニット30を構成する各部の動作を制御する第2制御部35及び第2通信部34を有している。第2制御部35は、第2通信部34を介して熱源ユニット20から制御信号を受け付け、制御信号に基づいて利用ユニット30を構成する各部を動作させる。具体的には、第2制御部35は、第2ファン32の回転数、第2膨張弁33の開度の調整等を行わせるための制御指令を生成する。
【0048】
また、第2制御部35は、第2通信部34を介して熱源ユニット20に対してONまたはOFF状態、吸込み温度等の運転状態に関連するデータを送る。
【0049】
各利用ユニット30には、各利用ユニット30に対する操作入力を受け付けるリモコン36が別途取り付けられる。リモコン36は、各利用ユニット30に対する制御指令を受け付ける入力部と、各利用ユニット30の運転状況を表示する表示部と、を有する。リモコン36の表示部に表示される運転状況には、冷房運転中、暖房運転中、点検中等の運転状態を示す情報や、設定温度、風量、風向き等の情報が含まれる。
【0050】
(3)サーバ
図1に示すサーバ40は、有線または無線を問わず、通信線を介して冷凍サイクル装置1に接続される。サーバ40は、冷凍サイクル装置1を監視及び制御する機能を有する。本実施形態のサーバ40は、クラウド上に構築されている。
【0051】
サーバ40は、第1制御部20cによって冷媒の漏洩が有ると判定されると、第1制御部20cからその旨の通知を受け、ユーザへの通知を行う。ここでは、サーバ40は、冷媒の漏洩が有ると判定されると、ユーザの情報機器50へ通知する。通知は、音、光、表示等によってユーザに警告を出すことで行う。
【0052】
(4)情報機器
情報機器50は、冷凍サイクル装置1において冷媒の漏洩が有ると判定されると、通知される機器である。情報機器50の種類は特に限定されないが、例えば、スマートフォン、ウェアラブルデバイス、パソコン、タブレットなどである。ウェアラブル機器としては、例えば、リストバンド型、腕時計型などの腕に装着するタイプの機器、ヘッドバンド型またはメガネ型などの頭に装着するタイプの機器、服型などの体に装着するタイプの機器などが挙げられる。
【0053】
(5)通常運転
冷凍サイクル装置1は、通常運転として、少なくとも冷房運転及び暖房運転モードを実行可能である。なお、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、複数の利用ユニット30が個別に冷房運転または暖房運転を行うことが可能である。
【0054】
冷凍サイクル装置1は、リモコン36等から受け付けた指示に基づいて、第1制御部20c及び第2制御部35が、冷房運転モードか暖房運転モードかを判断し、判断した運転モードを実行する。
【0055】
(5-1)冷房運転
冷房運転は、リモコン36を介して冷房運転の指令を受け付けた第1制御部20c及び第2制御部35が、熱源ユニット20及び利用ユニット30の構成機器として圧縮機21、四路切換弁22、第1膨張弁24、第1ファン25、第2ファン32、第2膨張弁33等を運転制御することによって行われる。
【0056】
冷房運転においては、第1熱交換器23が冷媒の凝縮器として機能し、かつ、第2熱交換器31が冷媒の蒸発器として機能する状態(
図1の四路切換弁22の実線で示される状態)になるように、四路切換弁22が切り換えられる。
【0057】
このような状態の冷媒回路10において、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルにおける高圧まで圧縮された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁22を通じて、第1熱交換器23に送られる。第1熱交換器23に送られた高圧の冷媒は、第1熱交換器23において、第1ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って凝縮する。第1熱交換器23において凝縮した高圧の冷媒は、第1膨張弁24に送られて、冷凍サイクルにおける低圧まで減圧される。第1膨張弁24において減圧された低圧の冷媒は、熱源ユニット20から流出して、液側連絡配管6を通じて、各利用ユニット30に分岐して送られる。利用ユニット30に送られた冷媒は、第2膨張弁33によって冷凍サイクルにおける低圧まで減圧されて、第2熱交換器31に送られる。第2熱交換器31に送られた低圧の冷媒は、第2熱交換器31において、第2ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って蒸発する。これにより、室内空気は冷却されて室内に吹き出される。第2熱交換器31において蒸発した低圧の冷媒は、ガス側連絡配管5、四路切換弁22及びレシーバ26を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。このように、冷房運転においては、第1制御部20c及び第2制御部35によって、冷媒回路10に封入された冷媒が圧縮機21、第1熱交換器23、第1膨張弁24、第2膨張弁33、及び第2熱交換器31の順に循環する動作がなされる。
【0058】
冷房運転時には、第1制御部20c及び第2制御部35は、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が、所定の目標蒸発温度に近づくように圧縮機21の容量を制御する容量制御を行う。圧縮機21の容量制御は圧縮機モータの回転数(周波数)制御により行われる。冷媒の蒸発温度は、吸入圧力センサ63で検出された吸入圧力を冷媒の飽和温度に換算することによって得られる。冷媒の蒸発温度は、冷房運転時において、第2膨張弁33の出口から第2熱交換器31を経由して圧縮機21の吸入側に至るまでの間を流れる冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を代表する圧力(冷媒回路10における冷媒の蒸発圧力)を冷媒の飽和温度に換算することによって得られる温度、又は、冷媒の蒸発器として機能する第2熱交換器31における冷媒の飽和温度を意味する。このため、第2熱交換器31に温度センサを設ける場合には、この温度センサによって検出される冷媒の温度を冷媒の蒸発温度としてもよい。
【0059】
(5-2)暖房運転
暖房運転は、リモコン36を介して暖房運転の指令を受け付けた第1制御部20c及び第2制御部35が、熱源ユニット20及び利用ユニット30の構成機器として圧縮機21、四路切換弁22、第1膨張弁24、第1ファン25、第2ファン32、第2膨張弁33等を運転制御することによって行われる。
【0060】
暖房運転においては、第1熱交換器23が冷媒の蒸発器として機能し、かつ、第2熱交換器31が冷媒の凝縮器として機能する状態(
図1の四路切換弁22の破線で示される状態)になるように、四路切換弁22が切り換えられる。
【0061】
このような状態の冷媒回路10において、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルにおける高圧まで圧縮された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁22及びガス側連絡配管5を通じて、第2熱交換器31に送られる。第2熱交換器31に送られた高圧の冷媒は、第2熱交換器31において、第2ファン32によって供給される室内空気と熱交換を行って凝縮する。これにより、室内空気は加熱されて室内に吹き出される。第2熱交換器31において凝縮した高圧の冷媒は、第2膨張弁33によって減圧されて、利用ユニット30から流出する。利用ユニット30から流出した冷媒は、液側連絡配管6を通じて、第1膨張弁24に送られて、冷凍サイクルにおける低圧まで減圧される。第1膨張弁24において減圧された低圧の冷媒は、第1熱交換器23に送られる。第1熱交換器23に送られた低圧の冷媒は、第1熱交換器23において、第1ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発する。第1熱交換器23において蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁22及びレシーバ26を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。このように、暖房運転においては、第1制御部20c及び第2制御部35によって、冷媒回路10に封入された冷媒が圧縮機21、第2熱交換器31、第2膨張弁33,第1膨張弁24、及び第1熱交換器23の順に循環する動作がなされる。
【0062】
暖房運転時には、第1制御部20c及び第2制御部35は、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、所定の目標凝縮温度に近づくように圧縮機21の容量を制御する容量制御を行う。圧縮機21の容量制御は圧縮機モータの回転数(周波数)制御により行われる。冷媒の凝縮温度は、吐出圧力センサ61で検出された吐出圧力を冷媒の飽和温度に換算することによって得られる。冷媒の凝縮温度は、暖房運転時において、圧縮機21の吐出側から第2熱交換器31を経由して第1膨張弁24に流入するまでの間を流れる高圧の冷媒を代表する圧力(冷媒回路10における冷媒の凝縮圧力)を冷媒の飽和温度に換算することによって得られる温度、又は、冷媒の凝縮器として機能する第2熱交換器31における冷媒の飽和温度を意味する。このため、第2熱交換器31に温度センサを設ける場合には、この温度センサによって検出される冷媒の温度を冷媒の凝縮温度としてもよい。
【0063】
(6)冷媒漏洩判定方法
続いて、本実施形態の冷媒漏洩判定方法について、説明する。
【0064】
冷凍サイクル装置1の施工時、まず、
図3及び
図4に示すように、熱源ユニット20と利用ユニット30とを連絡配管5、6で接続することで形成された冷媒回路10に、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を充填する(ステップS1)。この工程(S1)は、例えば、以下のように実施される。
【0065】
具体的には、初期充填量として、第1充填量以下の冷媒が充填された熱源ユニット20を準備する。ここでは、初期充填量として、第1充填量よりも少ない、例えば、目標充填量の50%の冷媒が充填された熱源ユニット20を準備する。そして、この熱源ユニット20を、複数の利用ユニット30と、液側連絡配管6及びガス側連絡配管5によって接続する。これにより、初期充填量の冷媒が充填された冷媒回路10を形成することができる。その後、冷媒回路10に、第1冷媒量まで冷媒を充填する。ここでは、目標充填量の20%の冷媒を追加で充填することによって、第1充填量として、目標充填量の70%の冷媒を充填する。
【0066】
追加で冷媒を充填する方法は、特に限定されないが、例えば、以下のように手動で行う。追加される冷媒が充填された容器と、熱源ユニット20のチャージポートとを接続する。ここでは、チャージポートは、ガス側閉鎖弁28または液側閉鎖弁29に設けられている。その後、容器の冷媒供給用の弁、及びチャージポートを作業者が開ける。そして、圧縮機21を駆動して、熱源ユニット20内を冷房運転または暖房運転と同じように冷媒を循環させる。これにより、容器内の冷媒を、チャージポートを介して冷媒回路10に流入させる。ここでは、チャージポートを介して冷媒回路10に流入する冷媒は、レシーバ26を通って圧縮機21に吸入される。冷媒回路10に充填された冷媒が、初期充填量と追加充填量との合計が第1充填量になると、容器の冷媒供給用の弁、及びチャージポートを作業者が閉じる。なお、連絡配管5、6の長さ、利用ユニット30の数などを考慮して、追加充填量を予め算出し、容器の重さを測りながら、充填する。
【0067】
次に、冷媒回路10内の第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する(ステップS2)。この工程(S2)は、例えば、以下のように実施される。
【0068】
具体的には、第1制御部20cは、第1入力部20bが第1試運転の実行の指令を受け付けると、第2制御部35と協働して、冷凍サイクル装置1を構成する各部を動作させて、全ての利用ユニット30が冷房運転または暖房運転となるように、冷媒回路10内に第1充填量の冷媒を循環させる。第1試運転が冷房運転の時には、第1制御部20cは、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が、所定の目標蒸発温度に近づくように圧縮機21の容量を制御する容量制御を行う。第1試運転の目標蒸発温度は、通常運転が冷房運転の時の目標蒸発温度と同じである。第1試運転が暖房運転の時には、第1制御部20cは、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、所定の目標凝縮温度に近づくように圧縮機21の容量を制御する容量制御を行う。第1試運転の目標凝縮温度は、通常運転が暖房運転の時の目標凝縮度と同じである。冷媒回路10内の冷媒の状態が安定すると、第1の試運転データとして、第1充填量の冷媒が循環された時の各利用ユニット30の第2膨張弁33の開度などを取得する。第1の試運転データを取得すると、圧縮機21を停止させる。第1制御部20cは、第1の試運転データを第1記憶部20dに記憶させる。
【0069】
次に、目標充填量になるまで冷媒回路10に冷媒を充填させる(ステップS3)。この工程(S3)は、例えば、以下のように実施される。
【0070】
具体的には、第1充填量の冷媒が充填された冷媒回路10に、目標充填量と第1充填量との差分の冷媒を充填する。ここでは、目標充填量の30%の冷媒を追加で充填することによって、目標充填量(100%)の冷媒を冷媒回路10に充填する。追加で冷媒を充填する方法は、第1充填量の冷媒を充填する工程(S1)と同様である。
【0071】
次に、冷媒回路10内の目標充填量の冷媒を循環させる最終試運転を行って、最終の試運転データを取得する(ステップS4)。この工程(S4)は、例えば、以下のように実施される。
【0072】
具体的には、第1制御部20cは、第1入力部20bが最終試運転の実行の指令を受け付けると、第2制御部35と協働して、冷凍サイクル装置1を構成する各部を動作させて、全ての利用ユニット30が冷房運転または暖房運転となるように、冷媒回路10内に目標充填量の冷媒を循環させる。なお、第1試運転が冷房運転の場合には最終試運転も冷房運転であり、第1試運転が暖房運転の場合には最終試運転も暖房運転である。最終試運転が冷房運転の時には、第1制御部20cは、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が、目標蒸発温度に近づくように圧縮機21の容量を制御する容量制御を行う。最終試運転の目標蒸発温度は、通常運転としての冷房運転の時の目標蒸発温度と同じである。最終試運転が暖房運転の時には、第1制御部20cは、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、目標凝縮温度に近づくように圧縮機21の容量を制御する容量制御を行う。最終試運転の目標凝縮温度は、通常運転としての暖房運転の時の目標凝縮度と同じである。冷媒回路10内の冷媒の状態が安定すると、最終の試運転データとして、目標充填量の冷媒が循環された時の各利用ユニット30の第2膨張弁33の開度などを取得する。最終の試運転データを取得すると、圧縮機21を停止させる。第1制御部20cは、最終の試運転データを第1記憶部20dに記憶させる。
【0073】
次に、目標充填量を冷媒回路10に充填した後の通常運転時に、通常運転データを取得する(ステップS5)。通常運転は、上述したように、ユーザがリモコン36で選択した暖房運転、冷房運転などである。
【0074】
次に、通常運転データと第1の試運転データとに基づいて、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定する(ステップS6)。本実施形態の判定する工程(S6)では、通常運転データと第1の試運転データと最終運転データとに基づいて、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定する。通常運転データを取得する工程(S5)及び判定する工程(S6)は、例えば、以下のように実施される。
【0075】
具体的には、第1制御部20cは、通常運転において、常時データを取得して、第1の試運転と類似した条件を満たす時のデータを、通常運転データとする。ここでは、第1制御部20cは、取得したデータのうち、全ての利用ユニット30が、第1試運転と同じ冷房運転または暖房運転となるときのデータを通常運転データとする。また、通常運転データとして、通常運転時の各利用ユニット30の第2膨張弁33の開度などを取得する。そして、第1制御部20cは、第1記憶部20dから第1の試運転データを読み出して、通常運転データと第1の試運転データとを比較して、通常運転データが第1の試運転データと類似した状態であるときに、冷媒回路10から冷媒が漏洩したと判定する。ここでは、第1制御部20cは、第1記憶部20dから第1の試運転データ及び最終の試運転データを読み出して、通常運転データと第1の試運転データと最終の試運転データとを比較して、通常運転データが最終の試運転データから第1の試運転データに近い状態であるときに、冷媒回路10から冷媒が漏洩したと判定する。例えば、第1制御部20cは、通常運転データとしての第2膨張弁33の開度の経時変化が、最終の試運転データとしての第2膨張弁33の開度から、第1の試運転データとしての第2膨張弁33の開度に近づいていると、冷媒回路10から冷媒が漏洩したと判定する。
【0076】
ここで、判定する工程(S6)での第1制御部20cの判断手法の一例を挙げる。第1試運転及び通常運転が、目標蒸発温度を一定とする冷房運転を行っているとする。この場合、第1試運転は、目標充填量よりも冷媒量が少ないため、蒸発温度が低くなることに起因して、目標充填量の冷媒が循環する場合に比べて、第2膨張弁33の開度が大きくなる。このため、第1制御部20cは、通常運転データとしての第2膨張弁33の開度が、第1の試運転データとしての第2膨張弁33の開度に近づくように、大きくなると、冷媒が漏洩している、と判定する。
【0077】
判定する工程(S6)において、第1制御部20cが、冷媒の漏洩は無いと判定すると、ユーザからの要求に応じて、通常運転を継続して、適宜、通常運転データを取得する工程(S5)及び判定する工程(S6)を実施する。一方、判定する工程(S6)において、第1制御部20cが、冷媒の漏洩が有ると判定すると、サーバ40に送信する。そして、サーバ40は、ユーザの情報機器50に通知する(ステップS7)。
【0078】
(7)特徴
(7-1)
本実施形態の冷媒漏洩判定方法は、以下の工程を備える。熱源ユニット20と利用ユニット30とを連絡配管5、6で接続することで形成された冷媒回路10に、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を充填する(ステップS1)。そして、冷媒回路10内の第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する(ステップS2)。そして、取得する工程(S2)後に、目標充填量になるまで冷媒回路10に冷媒を充填させる(ステップS3)。そして、目標充填量を冷媒回路10に充填した後の通常運転時に、通常運転データを取得する(ステップS5)。そして、通常運転データと第1の試運転データとに基づいて、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定する(ステップS6)。
【0079】
本実施形態の冷媒漏洩判定方法によれば、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する。この第1の試運転データは、冷媒が漏洩したときの挙動を示すデータとなる。このため、目標充填量を充填した後の通常運転時に取得した通常運転データと、第1の試運転データとを比較することによって、熱源ユニット20と利用ユニット30と連絡配管5、6とを備える冷凍サイクル装置1の施工場所、配管長さ等に関わらず、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定することができる。したがって、本実施形態の冷媒漏洩判定方法では、冷媒漏洩を判定するために、条件を一定にした特別な運転を行う必要がなく、通常運転で冷媒漏洩を判定することができる。また、本実施形態の冷媒漏洩判定方法では、施工場所、配管長さ等を考慮せずに、通常運転データと第1の試運転データとを比較することによって、冷媒の漏洩の判定を判定できるので、判定の精度を向上できる。
【0080】
なお、本実施形態の冷媒漏洩判定方法は、冷媒回路10内の目標充填量の冷媒を循環させる最終試運転を行って、最終の試運転データを取得する工程(S4)をさらに備えている。
【0081】
(7-2)
本実施形態の冷凍サイクル装置1は、熱源ユニット20と、利用ユニット30と、熱源ユニット20と利用ユニット30とを接続する連絡配管5、6と、を備える冷凍サイクル装置である。冷凍サイクル装置1は、冷媒回路10と、第1制御部20cと、を備える。冷媒回路10は、熱源ユニット20と利用ユニット30とを連絡配管5、6で接続することで形成される。第1制御部20cは、冷媒回路10の運転を制御する。第1制御部20cは、冷媒回路10内において、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する。
【0082】
本実施形態の冷凍サイクル装置1によれば、第1制御部20cは、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する。この第1の試運転データは、冷媒が漏洩したときの挙動を示すデータとなる。このため、第1制御部20cによって、目標充填量を充填した後の通常運転時に取得した通常運転データと、第1の試運転データとを比較することによって、冷凍サイクル装置1の施工場所、配管長さ等に関わらず、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定することができる。したがって、本実施形態の冷凍サイクル装置1では、冷媒漏洩を判定するために、条件を一定にする特別な運転を行う必要がなく、通常運転で冷媒漏洩を判定することができる。また、本実施形態の冷凍サイクル装置1では、施工場所、配管長さ等を考慮せずに、第1制御部20cが通常運転データと第1の試運転データとを比較することによって、冷媒の漏洩の判定を判定できるので、判定の精度を向上できる。
【0083】
なお、本実施形態の冷凍サイクル装置1の第1制御部20cは、複数の試運転(本実施形態では、第1試運転及び最終試運転)のモードを有し、複数の試運転の各試運転データを取得する。
【0084】
(8)変形例
(8-1)変形例1
上述した実施形態では、目標充填量よりも少ない充填量の冷媒を循環させる試運転は、第1試運転のみである例を挙げたが、これに限定されない。本開示の冷媒漏洩判定方法及び冷凍サイクル装置1は、目標充填量よりも少ない充填量の冷媒を循環させる試運転を複数行ってもよい。本変形例の冷媒漏洩判定方法及び冷凍サイクル装置は、第1試運転に加えて、目標充填量よりも少ない充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行う。
【0085】
(8-1-1)冷凍サイクル装置
本変形例の第1制御部20cは、冷媒回路10内において、第1充填量よりも多く、かつ目標充填量よりも少ない第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する。第2充填量は、例えば、目標充填量の50%以上100%未満であり、本変形例では目標充填量の90%とする。
【0086】
具体的には、本変形例の第1制御部20cは、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転と、第1の充填量よりも多く、かつ目標充填量よりも少ない第2の充填量の冷媒を循環させる第2試運転と、目標充填量の冷媒を循環させる最終試運転と、の3つのモードを有している。第1試運転及び最終試運転のモードは、上記実施形態と同様である。以下、追加された第2試運転について、説明する。
【0087】
第1制御部20cは、第1入力部20bが第2試運転の実行の指令を受け付けると、第2試運転を実行するために、熱源ユニット20を構成する各部を動作させるとともに、利用ユニット30の第2制御部35に、利用ユニット30を構成する各部を動作させるように指令を送る。そして、第1制御部20cは、第2試運転中に第2の試運転データを取得する。第2の試運転データは、例えば、各利用ユニット30の第2膨張弁33の開度などである。そして、第1制御部20cは、取得した第2の試運転データを第1記憶部20dに記憶させる。
【0088】
また、第1制御部20cは、通常運転時に、通常運転データを取得し、通常運転データと第1の試運転データと、第2の試運転データと、最終の試運転データと、に基づいて、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定する。ここでは、第1制御部20cは、通常運転において、第1の試運転と類似した条件を満たす時の通常運転データと、第1の試運転データと、第2の試運転データと、最終の試運転データと、を比較して、最終の試運転データから、第1の試運転データまたは第2の試運転データと類似した状態であるときに、冷媒回路10から冷媒が漏洩したと判定する。
【0089】
第1制御部20cが取得する第1の試運転データ、第2の試運転データ及び最終の試運転データが、例えば、複数の利用ユニット30の全てが冷房運転をしたときの各第2膨張弁33の開度に関するデータとする。第1制御部20cは、通常運転中に、利用ユニット30の全てが冷房運転を行ったときに、通常運転データとして各第2膨張弁33の開度を取得する。そして、第1制御部20cは、第1の試運転データとしての各第2膨張弁33の開度と、第2の試運転データとしての各第2膨張弁33の開度と、最終の試運転データとしての各第2膨張弁33の開度と、通常運転データとしての各第2膨張弁33の開度と、を比較する。具体的には、通常運転時の各第2膨張弁33の開度が、最終試運転時の各第2膨張弁33の開度から、第1試運転時の各第2膨張弁33の開度及び第2試運転時の各第2膨張弁33にどれくらい近づいているかを演算して、冷媒漏洩の有無を判定する。また、第1制御部20cは、第1の試運転データの各第2膨張弁33の開度から、第2の試運転データの各第2膨張弁33の開度までの変化を考慮する。第2膨張弁の開度の変化とは、例えば、線形的、二次曲線的などである。なお、第1試運転、最終試運転及び通常運転での目標蒸発温度は同じである。
【0090】
また、本変形例の第1入力部20bは、第2試運転の実行の指令を受け付けるボタンをさらに有している。
【0091】
(8-1-2)冷媒漏洩判定方法
本変形例の冷媒漏洩判定方法は、上述した実施形態の冷媒漏洩方法と基本的には同様であるが、
図5に示すように、第2充填量の冷媒を充填する工程(S11)及び第2の試運転データを取得する工程(S12)をさらに備えている点において異なる。
【0092】
具体的には、上記実施形態と同様に、第1冷媒量の冷媒を充填する工程(S1)及び第1の試運転データを取得する工程(S2)を実施する。次に、冷媒回路10に、第1充填量よりも多く、かつ目標充填量よりも少ない第2充填量の冷媒を充填する(ステップS11)。この工程(S11)は、例えば、以下のように実施される。
【0093】
第1充填量の冷媒が充填された冷媒回路10に、第2充填量(90%)と第1充填量(70%)との差分の冷媒を充填する。ここでは、目標充填量の20%の冷媒を追加で充填することによって、第2充填量(90%)の冷媒を冷媒回路10に充填する。追加で冷媒を充填する方法は、第1充填量の冷媒を充填する工程(S1)と同様である。
【0094】
次に、冷媒回路10内の第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する(ステップS12)。この工程(S12)は、例えば、以下のように実施される。
【0095】
具体的には、第1制御部20cは、第1入力部20bが第2試運転の実行の指令を受け付けると、第2制御部35と協働して、冷凍サイクル装置1を構成する各部を動作させて、全ての利用ユニット30が冷房運転または暖房運転となるように、冷媒回路10内に第2充填量の冷媒を循環させる。なお、第1試運転が冷房運転の場合には第2試運転も冷房運転であり、第1試運転が暖房運転の場合には第2試運転も暖房運転である。第2試運転が冷房運転の時には、第1制御部20cは、冷媒回路10における冷媒の蒸発温度が、目標蒸発温度に近づくように圧縮機21の容量を制御する容量制御を行う。第2試運転の目標蒸発温度は、通常運転としての冷房運転の時の目標蒸発温度と同じである。第2試運転が暖房運転の時には、第1制御部20cは、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度が、目標凝縮温度に近づくように圧縮機21の容量を制御する容量制御を行う。第2試運転の目標凝縮温度は、通常運転としての暖房運転の時の目標凝縮度と同じである。冷媒回路10内の冷媒の状態が安定すると、第2の試運転データとして、第2充填量の冷媒が循環された時の各利用ユニット30の第2膨張弁33の開度などを取得する。第1制御部20cが第2の試運転データを取得すると、圧縮機21を停止させる。第1制御部20cは、第2の試運転データを第1記憶部20dに記憶させる。
【0096】
次に、目標充填量になるまで冷媒回路10に冷媒を充填させる(ステップS3)。この工程(S3)では、第2充填量の冷媒が充填された冷媒回路10に、目標充填量と第2充填量との差分の冷媒を充填する。ここでは、容器の重さを測りながら、予め試算した冷媒追加量として、目標充填量の10%の冷媒を追加で充填することによって、目標充填量の冷媒を冷媒回路10に充填する。
【0097】
次に、上記実施形態1と同様に、最終の試運転データを取得する工程(S4)を実施する。
【0098】
次に、目標充填量を冷媒回路10に充填した後の通常運転時に、通常運転データを取得する(ステップS5)。次に、通常運転データと、第1の試運転データと、第2の試運転データと、に基づいて、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定する(ステップS6)。通常運転データを取得する工程(S5)及び判定する工程(S6)は、例えば、以下のように実施される。
【0099】
具体的には、上述した実施形態と同様に、第1制御部20cは、通常運転データを取得する。そして、第1制御部20cは、第1記憶部20dから第1の試運転データ、第2の試運転データ及び最終の試運転データを読み出して、通常運転データと第1の試運転データ、第2の試運転データ及び最終の試運転データとを比較して、通常運転データが第1の試運転データまたは第2の試運転データと類似した状態であるときに、冷媒回路10から冷媒が漏洩したと判定する。例えば、第1制御部20cは、通常運転データとしての第2膨張弁33の開度の経時変化が、最終の試運転データとしての第2膨張弁33の開度から、第2の試運転データとしての第2膨張弁33の開度または第1の試運転データとしての第2膨張弁33の開度に近づいていると、冷媒回路10から冷媒が漏洩したと判定する。ここでは、第1制御部20cは、第1の試運転データ、第2の試運転データ及び最終の試運転データから、第2膨張弁33の開度の変化の様子から、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定する。
【0100】
(8-1-3)特徴
本変形例の冷媒漏洩判定方法は、以下の工程をさらに備える。冷媒回路10に、第1充填量よりも多く、かつ目標充填量よりも少ない第2充填量の冷媒を充填する(S11)。冷媒回路10内の第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する(S12)。判定する工程(S6)では、通常運転データと、第1の試運転データと、第2の試運転データと、に基づいて、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定する。
【0101】
ここでは、第1充填量と目標充填量との間の第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する。この第2の試運転データは、冷媒が漏洩したときの挙動を示し、かつ第1の試運転データと異なるデータとなる。このため、目標充填量を充填した後の通常運転時に取得した通常運転データと、第1の試運転データ及び第2の試運転データとを比較することによって、冷媒の漏洩の有無の判定の精度を向上することができる。
【0102】
本変形例の冷凍サイクル装置1は、第1制御部20cは、冷媒回路10内において、第1充填量よりも多く、かつ目標充填量よりも少ない第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する。
【0103】
ここでは、第1制御部20cは、第1充填量と目標充填量との間の第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する。この第2の試運転データは、冷媒が漏洩したときの挙動を示し、かつ第1の試運転データと異なるデータとなる。このため、目標充填量を充填した後の通常運転時に取得した通常運転データと、第1の試運転データ及び第2の試運転データとを比較することによって、冷媒の漏洩の有無の判定の精度を向上することができる。
【0104】
(8-2)変形例2
上述した実施形態では、目標充填量の50%以上の第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行う例を挙げたが、これに限定されない。本変形例では、目標充填量の50%未満の冷媒を循環させる試運転をさらに行う。
【0105】
具体的には、本変形例の冷凍サイクル装置の第1制御部20cは、冷媒回路10内において、第1充填量よりも少ない第3充填量の冷媒を循環させる第3試運転を行って、第3の試運転データを取得する。第3充填量は、例えば、目標充填量の50%未満であり、本変形例では目標充填量の30%とする。
【0106】
また、本変形例の冷媒漏洩判定方法は、第1冷媒量の冷媒を充填する工程(S1)に先立って、冷媒回路10に第1充填量よりも少ない第3冷媒量の冷媒を充填する工程と、冷媒回路10内の第3充填量の冷媒を循環させる第3試運転を行って、第3の試運転データを取得する工程と、をさらに備える。
【0107】
具体的には、第3充填量の冷媒を充填する工程では、初期充填量として、第3充填量以下の冷媒が充填された熱源ユニット20を準備する。そして、この熱源ユニット20と、複数の利用ユニット30とを、連絡配管5、6によって接続する。これにより、初期充填量の冷媒が充填された冷媒回路10を形成することができる。初期充填量が第3充填量未満の場合には、冷媒回路10に、第3冷媒量まで冷媒を充填する。
【0108】
第3の試運転データを取得する工程では、第1試運転及び最終試運転と同様に、第3試運転を行って、第3の試運転データを取得する。
【0109】
図5に示す判定する工程(S6)では、通常運転データと、第1~第3の試運転データ及び最終の試運転データに基づいて、冷媒回路10からの冷媒の漏洩の有無を判定する。
【0110】
本変形例のように、本開示の冷媒漏洩判定方法及び冷凍サイクル装置1は、目標充填量よりも少ない任意の充填量の冷媒を循環させる試運転を、適宜行ってもよい。
【0111】
(8-3)変形例3
上記実施形態では、第1の試運転データを取得した後、圧縮機21を停止し(ステップS2)、冷媒を追加充填して(ステップS3)、最終試運転を行う(ステップS4)が、これに限定されない。本変形例では、第1試運転データを取得した後、圧縮機21を停止させずに(ステップS2)、冷媒を追加充填して(ステップS3)、最終試運転を行う(ステップS4)。
【0112】
具体的には、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行った後、圧縮機21を停止させずに、冷媒の追加充填を行い、目標充填量に達した時点で、第1入力部20bによって最終試運転の実行とし、最終の試運転データを取得する。
【0113】
なお、変形例1及び2のように、3回以上の異なる充填量の試運転を行う場合にも、本変形例を適用することができる。本変形例によれば、複数回の試運転全体に要する時間を短縮できる。
【0114】
(8-4)変形例4
上述した実施形態では、冷媒漏洩の有無を判定する手法として、第2膨張弁33の開度を用いる例を挙げて説明したが、これに限定されない。本開示の冷媒漏洩判定方法及び冷凍サイクル装置1では、冷媒漏洩の有無を判定する手法として、例えば、第2膨張弁33の開度、蒸発器(第2熱交換器31または第1熱交換器23)の出口過熱度、凝縮器(第1熱交換器23または第2熱交換器31)の出口過冷却度、利用ユニット30の液管出口で検知する液管温度などを単独または組み合わせてもよい。換言すると、第1の試運転データ、最終の試運転データ及び通常運転データは、第2膨張弁33の開度、蒸発器(第2熱交換器31または第1熱交換器23)の出口過熱度、凝縮器(第1熱交換器23または第2熱交換器31)の出口過冷却度、利用ユニット30の液管出口で検知する液管温度などの少なくとも1つのデータである。第1制御部20cは、通常運転データが第1の試運転データに近づくように、蒸発器の出口過熱度が大きい、凝縮器の出口過冷却度が小さい、利用ユニット30の液管出口で検知する液管温度が低い場合などに、冷媒が漏洩している、と判定する。
【0115】
なお、過冷却度は、例えば、吐出圧力センサ61によって検出される冷媒の圧力を冷媒の飽和温度に換算し、この飽和温度を液側温度センサ65によって検出される冷媒の温度から差し引いた温度差を用いることができる。過熱度は、例えば、吸入圧力センサ63によって検出される冷媒の圧力を冷媒の飽和温度に換算し、この飽和温度から吸入温度センサ64によって検出される冷媒の温度を差し引いた温度差を用いることができる。
【0116】
(8-5)変形例5
上述した実施形態では、冷媒の充填は手動で行われるが、これに限定されず、自動で行われてもよい。
【0117】
(8-6)変形例6
上述した実施形態では、複数の利用ユニット30が個別に冷房運転または暖房運転を行うことが可能な冷凍サイクル装置1を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本変形例の冷凍サイクル装置は、複数の利用ユニット30が個別に冷房運転または暖房運転を行うことが可能でない。この場合、例えば、複数の利用ユニット30に共通の第2膨張弁33が設けられている。
【0118】
(8-7)変形例7
上述した実施形態では、冷凍サイクル装置1は、3台の利用ユニット30を備えているが、利用ユニット30の数は限定されない。本開示の冷凍サイクル装置は、2台以上の利用ユニット30を備えてもよく、1台の利用ユニット30を備えてもよい。
【0119】
(8-8)変形例8
上述した実施形態では、冷房運転及び暖房運転を行う冷凍サイクル装置1を例に挙げて説明したが、本開示の冷凍サイクル装置は、これに限定されず、除湿運転等をさらに行ってもよい。本変形例の冷凍サイクル装置は、冷房専用の空気調和装置である。
【0120】
(8-9)変形例9
上述した実施形態では、冷凍サイクル装置1として空気調和装置を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本開示の冷凍サイクル装置は、給湯装置、床暖房装置、冷蔵装置等であってもよい。
【0121】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0122】
1 :冷凍サイクル装置
5,6 :連絡配管
10 :冷媒回路
20 :熱源ユニット
20c :第1制御部(制御部)
30 :利用ユニット
35 :第2制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0123】
【特許文献1】国際公開2015/004747号公報
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源ユニット(20)と利用ユニット(30)とを連絡配管(5、6)で接続することで形成された冷媒回路(10)に、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を充填する工程(S1)と、
前記冷媒回路内の前記第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する工程(S2)と、
前記取得する工程後に、前記目標充填量になるまで前記冷媒回路に冷媒を充填させる工程(S3)と、
前記目標充填量を前記冷媒回路に充填した後の通常運転時に、通常運転データを取得する工程(S5)と、
前記通常運転データと前記第1の試運転データとに基づいて、前記冷媒回路からの冷媒の漏洩の有無を判定する工程(S6)と、
を備え、
前記第1試運転及び前記通常運転での目標蒸発温度または目標凝縮温度は、同じである、冷媒漏洩判定方法。
【請求項2】
前記冷媒回路に、前記第1充填量よりも多く、かつ前記目標充填量よりも少ない第2充填量の冷媒を充填する工程(S11)と、
前記冷媒回路内の前記第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する工程(S12)と、
をさらに備え、
前記判定する工程では、前記通常運転データと、前記第1の試運転データと、前記第2の試運転データと、に基づいて、前記冷媒回路からの冷媒の漏洩の有無を判定する、
請求項1に記載の冷媒漏洩判定方法。
【請求項3】
熱源ユニット(20)と、利用ユニット(30)と、前記熱源ユニットと前記利用ユニットとを接続する連絡配管(5、6)と、を備える冷凍サイクル装置であって、
前記熱源ユニットと前記利用ユニットとを前記連絡配管で接続することで形成された冷媒回路(10)と、
前記冷媒回路の運転を制御する制御部(20c)と、
を備え、
前記制御部は、前記冷媒回路内において、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得し、
前記第1試運転の目標蒸発温度または目標凝縮温度は、前記目標充填量を前記冷媒回路に充填した後の通常運転時の目標蒸発温度または目標凝縮温度と同じである、冷凍サイクル装置(1)。
【請求項4】
前記制御部は、前記冷媒回路内において、前記第1充填量よりも多く、かつ前記目標充填量よりも少ない第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する、
請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源ユニット(20)と利用ユニット(30)とを連絡配管(5、6)で接続することで形成された冷媒回路(10)に、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を充填する工程(S1)と、
前記冷媒回路内の前記第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得する工程(S2)と、
前記取得する工程後に、前記目標充填量になるまで前記冷媒回路に冷媒を充填させる工程(S3)と、
前記目標充填量を前記冷媒回路に充填した後の通常運転時に、通常運転データを取得する工程(S5)と、
前記通常運転データと、前記第1試運転時に取得した前記第1の試運転データと、を比較することによって、前記冷媒回路からの冷媒の漏洩の有無を判定する工程(S6)と、
を備え、
前記第1試運転及び前記通常運転での目標蒸発温度または目標凝縮温度は、同じである、冷媒漏洩判定方法。
【請求項2】
前記冷媒回路に、前記第1充填量よりも多く、かつ前記目標充填量よりも少ない第2充填量の冷媒を充填する工程(S11)と、
前記冷媒回路内の前記第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得する工程(S12)と、
をさらに備え、
前記判定する工程では、前記通常運転データと、前記第1試運転時に取得した前記第1の試運転データと、前記第2試運転時に取得した前記第2の試運転データと、を比較することによって、前記冷媒回路からの冷媒の漏洩の有無を判定する、
請求項1に記載の冷媒漏洩判定方法。
【請求項3】
熱源ユニット(20)と、利用ユニット(30)と、前記熱源ユニットと前記利用ユニットとを接続する連絡配管(5、6)と、を備える冷凍サイクル装置であって、
前記熱源ユニットと前記利用ユニットとを前記連絡配管で接続することで形成された冷媒回路(10)と、
前記冷媒回路の運転を制御する制御部(20c)と、
を備え、
前記制御部は、前記冷媒回路内において、目標充填量よりも少ない第1充填量の冷媒を循環させる第1試運転を行って、第1の試運転データを取得し、
前記第1試運転の目標蒸発温度または目標凝縮温度は、前記目標充填量を前記冷媒回路に充填した後の通常運転時の目標蒸発温度または目標凝縮温度と同じであり、
前記制御部は、前記通常運転時に取得した通常運転データと、前記第1試運転時に取得した前記第1の試運転データと、を比較することによって、前記冷媒回路からの冷媒の漏洩の有無を判定する、冷凍サイクル装置(1)。
【請求項4】
前記制御部は、
前記冷媒回路内において、前記第1充填量よりも多く、かつ前記目標充填量よりも少ない第2充填量の冷媒を循環させる第2試運転を行って、第2の試運転データを取得し、
前記通常運転データと、前記第1試運転時に取得した前記第1の試運転データと、前記第2試運転時に取得した前記第2の試運転データと、を比較することによって、前記冷媒回路からの冷媒の漏洩の有無を判定する、
請求項3に記載の冷凍サイクル装置。