(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092704
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】遮蔽板製造装置および遮蔽板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/305 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
H01J37/305 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208823
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】根岸 勉
(72)【発明者】
【氏名】小塚 心尋
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA34
5C101AA39
5C101FF34
5C101FF56
5C101FF58
5C101GG10
(57)【要約】
【課題】容易に遮蔽板を製造できる遮蔽板製造装置を提供する。
【解決手段】遮蔽板製造装置100は、試料の一部を遮蔽板で遮蔽し、試料に荷電粒子ビームを照射して試料を加工する試料加工装置の遮蔽板を製造するための遮蔽板製造装置であって、基板2を回転可能に保持し、基板2にテープ4を巻き取る基板保持シャフト10と、基板2に巻き取られるテープ4に張力を付与する張力付与機構50と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の一部を遮蔽板で遮蔽し、前記試料に荷電粒子ビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置の前記遮蔽板を製造するための遮蔽板製造装置であって、
基板を回転可能に保持し、前記基板にテープを巻き取る基板保持シャフトと、
前記基板に巻き取られる前記テープに張力を付与する張力付与機構と、
を含む、遮蔽板製造装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記張力付与機構は、
前記テープの一端が固定される摺動部材と、
前記摺動部材に接続され、前記テープに張力を付与するバネと、
を含み、
前記基板保持シャフトを回転させることによって、前記テープは、前記テープの他端側から前記基板に巻き取られる、遮蔽板製造装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記張力付与機構は、
前記テープの一端が固定されるアームと、
前記アームが回転可能に固定されたアーム固定シャフトと、
前記テープを巻き取るときの前記基板保持シャフトの回転方向とは反対方向に前記アームを付勢するバネと、
を含み、
前記基板保持シャフトを回転させることによって、前記テープは、前記テープの他端側から前記基板に巻き取られる、遮蔽板製造装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記基板保持シャフトを受ける長孔が設けられた筐体と、
前記張力付与機構が前記テープに付与する張力の方向とは反対方向の力が前記テープに加わるように、前記基板保持シャフトを押さえるシャフト押さえ部材と、
を含む、遮蔽板製造装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記基板を前記基板保持シャフトに押し付ける基板固定用バネを含む、遮蔽板製造装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記基板保持シャフトを回転させるための摘みを含む、遮蔽板製造装置。
【請求項7】
試料の一部を遮蔽板で遮蔽し、前記試料に荷電粒子ビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置の前記遮蔽板の製造方法であって、
基板を回転可能に保持する基板保持シャフトに、前記基板を装着する工程と、
前記基板保持シャフトに保持された前記基板と張力付与機構との間にテープを掛け渡す工程と、
前記基板保持シャフトを回転させて、前記張力付与機構によって前記テープに張力を付与しながら前記基板に前記テープを巻き取る工程と、
を含む、遮蔽板の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記基板保持シャフトは、筐体に設けられた長孔に挿入され、
前記テープを前記基板に巻き取る工程では、
前記張力付与機構が前記テープに付与する張力の方向とは反対方向の力が前記テープに加わるように、前記基板保持シャフトを押さえる、遮蔽板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮蔽板製造装置および遮蔽板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンビームを用いて試料を加工する試料加工装置として、試料の断面を加工するためのクロスセクションポリッシャ(登録商標)や、薄膜試料を作製するためのイオンスライサ(登録商標)などが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、試料の一部を遮蔽板で覆い、試料の遮蔽板で覆われていない部分をイオンビームで切削して、試料の断面を加工する試料加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遮蔽板を用いた試料加工装置では、イオンビームが照射される遮蔽板の遮蔽面は平滑であることが望ましい。しかしながら、イオンビームの照射によって試料だけでなく遮蔽板もエッチングされるため、遮蔽面に凹凸ができてしまう。そのため、遮蔽板は何度も使用することができず、遮蔽面に凹凸ができると、交換する必要があった。
【0006】
このような問題に対して、基板に金属テープ等を巻いて遮蔽板を製造し、遮蔽面をテープで形成することが考えられる。これにより、基板にテープを巻きなおすことによって新たな遮蔽板を製造できる。
【0007】
上述したように、遮蔽面は平滑であることが望ましいが、テープを基板にしわなく貼り付けることは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る遮蔽板製造装置の一態様は、
試料の一部を遮蔽板で遮蔽し、前記試料に荷電粒子ビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置の前記遮蔽板を製造するための遮蔽板製造装置であって、
基板を回転可能に保持し、前記基板にテープを巻き取る基板保持シャフトと、
前記基板に巻き取られる前記テープに張力を付与する張力付与機構と、
を含む。
【0009】
このような遮蔽板製造装置では、テープに張力を付与しながら基板にテープを巻き取ることができる。そのため、このような遮蔽板製造装置では、基板にテープをしわなく貼り付けることができる。したがって、このような遮蔽板製造装置では、遮蔽板を容易に製造できる。
【0010】
本発明に係る遮蔽板の製造方法の一態様は、
試料の一部を遮蔽板で遮蔽し、前記試料に荷電粒子ビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置の前記遮蔽板の製造方法であって、
基板を回転可能に保持する基板保持シャフトに、前記基板を装着する工程と、
前記基板保持シャフトに保持された前記基板と張力付与機構との間にテープを掛け渡す
工程と、
前記基板保持シャフトを回転させて、前記張力付与機構によって前記テープに張力を付与しながら前記基板に前記テープを巻き取る工程と、
を含む。
【0011】
このような遮蔽板の製造方法では、テープに張力を付与しながら基板にテープを巻き取ることができるため、基板にテープをしわなく貼り付けることができる。したがって、このような遮蔽板の製造方法では、遮蔽板を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る遮蔽板製造装置を模式的に示す斜視図。
【
図2】第1実施形態に係る遮蔽板製造装置を模式的に示す斜視図。
【
図9】遮蔽板の製造方法の一例を示すフローチャート。
【
図20】第1実施形態に係る遮蔽板製造装置を用いて製造した遮蔽板にイオンビームを照射した結果を示す写真。
【
図21】基板にテープを手で巻いて製造した遮蔽板にイオンビームを照射した結果を示す写真。
【
図22】変形例に係る遮蔽板製造装置を模式的に示す斜視図。
【
図23】変形例に係る遮蔽板製造装置を模式的に示す断面図。
【
図24】遮蔽板を取り出すための取り出しツールを模式的に示す斜視図。
【
図25】スリットに取り出しツールを挿入した状態を模式的に示す図。
【
図26】遮蔽板を取り出す工程を示す模式的に示す断面図。
【
図27】遮蔽板を取り出す工程を示す模式的に示す断面図。
【
図28】遮蔽板を取り出す工程を示す模式的に示す断面図。
【
図29】第2実施形態に係る遮蔽板製造装置を模式的に示す斜視図。
【
図30】第2実施形態に係る遮蔽板製造装置の張力付与機構を説明するための図。
【
図31】第2実施形態に係る遮蔽板製造装置の張力付与機構を説明するための図。
【
図32】第3実施形態に係る試料加工装置の構成を示す図。
【
図33】第3実施形態に係る試料加工装置の遮蔽板を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0014】
1. 第1実施形態
1.1. 遮蔽板製造装置
まず、第1実施形態に係る遮蔽板製造装置について図面を参照しながら説明する。
図1および
図2は、第1実施形態に係る遮蔽板製造装置100を模式的に示す斜視図である。
【0015】
遮蔽板製造装置100は、試料加工装置用の遮蔽板を製造する装置である。試料加工装置は、試料の一部を遮蔽板で遮蔽し、試料にイオンビームを照射して試料を加工する装置である。試料加工装置は、例えば、試料の一部を遮蔽板で覆い、試料の遮蔽板で覆われていない部分をイオンビームで切削して、試料の断面を加工する装置である。試料加工装置は、例えば、クロスセクションポリッシャ(登録商標)である。
【0016】
基板2は、例えば、金属の板である。基板2として市販の遮蔽板を用いてもよい。テープ4は、例えば、導電性テープである。テープ4は、例えば、導電層と、粘着層と、を含む。導電層は、例えば、アルミニウム、銅、カーボンなどからなる金属箔や、グラファイトシートなどの導電性薄膜である。圧延によって製造された光沢のある金属箔は表面粗さが小さいため、導電層として好ましい。導電層の表面は、鏡面であることが好ましい。導電層の厚さは、例えば、50μm程度である。粘着層は、導電性を有する接着剤である。粘着層は、耐熱性を有する。
【0017】
遮蔽板製造装置100は、
図1および
図2に示すように、基板保持シャフト10と、摘み20と、筐体30と、シャフト押さえ部材40と、張力付与機構50と、を含む。
【0018】
図3は、基板保持シャフト10を説明するための図である。
【0019】
基板保持シャフト10は、基板2を保持する。基板保持シャフト10には、スリット12が設けられている。スリット12に基板2を挿入することによって、基板2を基板保持シャフト10で保持できる。基板保持シャフト10は、基板2の幅方向の両端を支持しており、基板2の中央部分が露出するように基板2を保持する。テープ4は、基板2の中央部分に貼り付けられる。
【0020】
基板保持シャフト10は、摘み20に接続されている。摘み20を回転させることによって、基板保持シャフト10が回転する。これにより、基板保持シャフト10に保持された基板2にテープ4を巻き取ることができる。
【0021】
基板保持シャフト10は、筐体30に回転可能に取り付けられている。基板保持シャフト10は、筐体30の長孔32に挿入されている。筐体30には、基板保持シャフト10を受ける長孔32が2つ設けられている。2つの長孔32のうちの一方には、基板保持シャフト10の一端が挿入され、2つの長孔32のうちの他方には、基板保持シャフト10の他端が挿入される。
【0022】
摘み20は、基板保持シャフト10を回転させるための摘みである。摘み20は、基板保持シャフト10の一方の端に取り付けられている。摘み20には、基板保持シャフト10の回転角度を示す番号が付されている。
【0023】
図4および
図5は、クリックストップ機構22を説明するための図である。摘み20には、摘み20に付された番号に対応する回転角度で基板保持シャフト10の回転を止めるクリックストップ機構22が設けられている。クリックストップ機構22は、基板保持シャフト10に設けられた複数の凹部24と、ストッパー26と、を含む。
【0024】
各凹部24は、摘み20に付された番号に対応する回転角度に設けられている。図示の例では、基板保持シャフト10には、摘み20に付された3つの番号に対応して3つの凹部24が設けられている。ストッパー26は、バネ26aと、バネ26aに先端に設けられた凸部26bと、を含む。凸部26bは、バネ26aによって基板保持シャフト10に押し付けられている。基板保持シャフト10を回転させて凸部26bが凹部24に嵌まると、基板保持シャフト10の回転を止めることができる。そのため、クリックストップ機構22によって、摘み20に付された番号に対応する回転角度で基板保持シャフト10の回転を止めることができる。バネ26aは、例えば、トーションバネである。
【0025】
筐体30には、基板保持シャフト10、シャフト押さえ部材40、および張力付与機構50が取り付けられている。筐体30には、基板保持シャフト10を取り付けるための軸受けとしての長孔32が設けられている。長孔32は、シャフト押さえ部材40が基板保持シャフト10を押す方向に長手方向を有している。
【0026】
筐体30は、第1板部材30aと、第2板部材30bと、を有している。第1板部材30aと第2板部材30bは、対向している。長孔32は、第1板部材30aと第2板部材30bに設けられており、基板保持シャフト10の一端は第1板部材30aに設けられた長孔32に挿入され、基板保持シャフト10の他端は第2板部材30bに設けられた長孔32に挿入されている。同様に、張力付与機構50のアーム固定シャフト54の一端は、第1板部材30aに設けられた孔に挿入され、アーム固定シャフト54の他端は、第2板部材30bに設けられた孔に挿入されている。アーム固定シャフト54は、筐体30に回転可能に支持されている。
【0027】
シャフト押さえ部材40は、基板保持シャフト10を押さえる。シャフト押さえ部材40は、張力付与機構50がテープ4に付与する張力の方向とは反対方向の力がテープ4に加わるように基板保持シャフト10を押さえる。シャフト押さえ部材40は、バネであり、基板保持シャフト10を張力付与機構50から遠ざかる方向に付勢する。シャフト押さえ部材40は、例えば、U字形状のバネである。図示の例では、シャフト押さえ部材40は2つのバネを有している。2つのバネのうちの一方は、基板保持シャフト10の一端を押さえ、2つのバネのうちの他方は、基板保持シャフト10の他端を押さえている。
【0028】
図6は、シャフト押さえ部材40を説明するための図である。
【0029】
シャフト押さえ部材40は、張力付与機構50がテープ4に付与する張力の方向とは反対方向の力がテープ4に加わるように基板保持シャフト10を押さえている。また、基板保持シャフト10は長孔32で支持されているため、基板保持シャフト10をフレキシブルに支持できる。そのため、
図6に示すように、基板保持シャフト10を回転させて基板2にテープ4を巻き取るときに、テープ4が撓むことを防ぐことができる。
【0030】
例えば、基板保持シャフト10の軸が固定されている場合、基板保持シャフト10の軸に対してテープ4が斜めに貼られると、
図6に示すように、テープ4の対向する2つの辺(第1辺4aおよび第2辺4b)のうちの一方の辺(図示の例では第1辺4a)が撓んでしまう。この状態で基板2にテープ4を巻き取ると、テープ4にしわができてしまう。
【0031】
これに対して、遮蔽板製造装置100では、シャフト押さえ部材40によって基板保持シャフト10を押さえつつ、長孔32によって基板保持シャフト10をフレキシブルに支持できる。そのため、テープ4が撓むことを防ぐことができる。したがって、基板2にテープ4をしわなく貼り付けることができる。
【0032】
図7および
図8は、張力付与機構50を説明するための図である。
【0033】
張力付与機構50は、基板2に巻き取られるテープ4に張力を付与する。張力付与機構50は、
図7および
図8に示すように、アーム52と、アーム固定シャフト54と、バネ56と、を含む。
【0034】
アーム52には、テープ4の一端が固定される。テープ4は、基板保持シャフト10に保持された基板2とアーム52との間に掛け渡される。テープ4の一端は、アーム52に固定され、基板保持シャフト10を回転させることによって、テープ4はテープ4の他端側から基板保持シャフト10に巻き取られる。アーム52は、アーム固定シャフト54に回転可能に固定されている。アーム52には、アーム52の可動範囲を制限するストッパー53が設けられている。アーム固定シャフト54は、回転可能に筐体30に取り付けられている。
【0035】
バネ56は、テープ4を巻き取るときの基板保持シャフト10の回転方向とは反対方向にアーム52が回転するように、アーム52を付勢する。これにより、テープ4に張力を付与できる。バネ56は、例えば、トーションバネである。
【0036】
1.2. 遮蔽板の製造方法
次に、遮蔽板製造装置100を用いた遮蔽板の製造方法について説明する。
図9は、遮蔽板製造装置100を用いた遮蔽板の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図10~
図19は、遮蔽板の製造工程を模式的に示す図である。
【0037】
(1)基板の装着(S10)
まず、
図10に示すように、基板保持シャフト10に基板2を装着する。具体的には、まず、摘み20を回転させて摘み20の番号を「1」にする。これにより、基板保持シャフト10が回転し、基板保持シャフト10に設けられたスリット12が、筐体30やアーム52の影にならない位置になる。次に、基板2をスリット12に挿入する。これにより、基板保持シャフト10に基板2を装着できる。
【0038】
(2)テープを掛け渡す(S20)
次に、
図11に示すように、基板保持シャフト10に保持された基板2と張力付与機構50のアーム52との間にテープ4を掛け渡す。具体的には、テープ4の一端をアーム52に貼り付け、テープ4の他端を基板保持シャフト10および基板2に貼り付ける。テープ4は、粘着層を有しているため、アーム52、基板保持シャフト10、および基板2にテープ4を貼り付けることができる。このようにして、基板保持シャフト10に保持された基板2と張力付与機構50のアーム52との間にテープ4を掛け渡すことができる。
【0039】
なお、上記では、テープ4の他端を基板保持シャフト10および基板2に貼りつけたがテープ4の他端を基板2のみに貼り付けてもよい。また、テープ4の他端をスリット12の中に入れ込んでもよい。また、テープ4の他端を基板保持シャフト10に貼り付けた後、基板保持シャフト10を回転させることによってテープ4を基板2に貼り付けてもよい。
【0040】
(3)基板にテープを巻き取る(S30)
次に、
図12に示すように、基板保持シャフト10を回転させて、基板2にテープ4を巻き取る。具体的には、摘み20を回転させて摘み20の番号を「1」から「2」にする。これにより、基板保持シャフト10が所定の角度だけ回転し、テープ4が基板2に巻き取られる。
【0041】
このとき、テープ4には、張力付与機構50によって張力が付与される。具体的には、バネ56が、テープ4を巻き取るときの基板保持シャフト10の回転方向とは反対方向にアーム52が回転するように、アーム52を付勢する。そのため、テープ4が基板2に巻き取られるときに、テープ4に張力が付与され、テープ4は張った状態を維持できる。基板保持シャフト10を回転させるときにアーム固定シャフト54に指をのせ、アーム52に力を付与してもよい。これにより、テープ4に加えられる張力を大きくできる。
【0042】
シャフト押さえ部材40は、張力付与機構50がテープ4に付与する張力の方向とは反対方向の力がテープ4に加わるように、基板保持シャフト10を押さえている。また、基板保持シャフト10は長孔32に挿入されており、基板保持シャフト10はフレキシブルに動くことができる。したがって、テープ4が撓むことを防ぐことができる。
【0043】
このように、遮蔽板製造装置100では、テープ4に張力を付与しながら基板2にテープ4を巻き取ることができるため、基板2にテープ4をしわなく貼り付けることができる。
【0044】
(4)テープをカットする(S40)
次に、テープ4をカットする。具体的には、まず、
図13および
図14に示すように、テープカットツール60を基板2に沿ってスリット12内に挿入する。これにより、テープ4をカットできる。テープカットツール60は、例えば、スリット12の幅よりも幅が小さいカッターナイフである。
【0045】
次に、
図15に示すように、摘み20を回転させて摘み20の番号を「2」から「1」にする。
【0046】
次に、
図16および
図17に示すように、テープカットツール60を基板2に沿ってスリット12内に挿入する。これにより、テープ4をカットできる。このように、テープカットツール60を基板2に沿ってスリット12内に挿入することによって、基板2のエッジに巻かれたテープ4に力が加わるため、テープ4を基板2に密着させることができる。これにより、テープ4の端までしわなく基板2に貼り付けることができる。このようにして、遮蔽板6を製造できる。
【0047】
(5)遮蔽板を取り出す(S50)
次に、
図18に示すように、基板保持シャフト10から遮蔽板6を取り出す。具体的には、摘み20を回転させて摘み20の番号を「1」から「3」にする。これにより、
図19に示すように、基板保持シャフト10のスリット12の開口から遮蔽板6を取り出すことができる。
【0048】
以上の工程により、遮蔽板6を製造できる。
【0049】
1.3. 効果
遮蔽板製造装置100は、試料加工装置の遮蔽板6を製造するための遮蔽板製造装置であって、基板2を回転可能に保持し、基板2にテープ4を巻き取る基板保持シャフト10と、基板2に巻き取られるテープ4に張力を付与する張力付与機構50と、を含む。そのため、遮蔽板製造装置100では、テープ4に張力を付与しながら基板2にテープ4を巻き取ることができる。したがって、遮蔽板製造装置100では、基板2にテープ4をしわなく貼り付けることができる。よって、遮蔽板製造装置100では、容易に遮蔽板6を製造できる。
【0050】
遮蔽板製造装置100では、張力付与機構50は、テープ4の一端が固定されるアーム
52と、アーム52が回転可能に固定されたアーム固定シャフト54と、テープ4を巻き取るときの基板保持シャフト10の回転方向とは反対方向にアーム52を付勢するバネ56と、を含む。また、遮蔽板製造装置100では、基板保持シャフト10を回転させることによって、テープ4は、テープ4の他端側から基板2に巻き取られる。このように、張力付与機構50が、バネ56がテープ4を巻き取るときの基板保持シャフト10の回転方向とは反対方向にアーム52を付勢することによって、テープ4に張力を付与できる。
【0051】
遮蔽板製造装置100は、基板保持シャフト10を受ける長孔32が設けられた筐体30と、張力付与機構50がテープ4に付与する張力の方向とは反対方向の力がテープ4に加わるように、基板保持シャフト10を押さえるシャフト押さえ部材40と、を含む。そのため、上述したように、テープ4を基板2に巻き取るときに、テープ4が撓むことを防ぐことができる。したがって、基板2にテープ4をしわなく貼り付けることができる。
【0052】
遮蔽板製造装置100は、基板保持シャフト10を回転させるための摘み20を含む。そのため、基板保持シャフト10を手動で容易に回転させることができる。
【0053】
遮蔽板製造装置100を用いた遮蔽板6の製造方法は、基板2を回転可能に保持する基板保持シャフト10に、基板2を装着する工程と、基板保持シャフト10に保持された基板2と張力付与機構50との間にテープ4を掛け渡す工程と、基板保持シャフト10を回転させて、張力付与機構50によってテープ4に張力を付与しながら基板2にテープ4を巻き取る工程と、を含む。遮蔽板製造装置100を用いた遮蔽板6の製造方法では、張力付与機構50によってテープ4に張力を付与しながら基板2にテープ4を巻き取るため、基板2にテープ4をしわなく貼り付けることができる。したがって、遮蔽板製造装置100を用いた遮蔽板6の製造方法では、容易に遮蔽板6を製造できる。
【0054】
遮蔽板製造装置100を用いた遮蔽板6の製造方法では、基板保持シャフト10は、筐体30に設けられた長孔32に挿入されている。また、テープ4を基板2に巻き取る工程では、張力付与機構50がテープ4に付与する張力の方向とは反対方向の力がテープ4に加わるように、シャフト押さえ部材40が基板保持シャフト10を押さえる。そのため、テープ4を基板2に巻き取るときに、テープ4が撓むことを防ぐことができる。したがって、基板2にテープ4をしわなく貼り付けることができる。このように、遮蔽板製造装置100を用いた遮蔽板6の製造方法では、容易に基板2にテープ4をしわなく貼り付けることができ、容易に遮蔽板6を製造できる。
【0055】
図20は、遮蔽板製造装置100を用いて製造した遮蔽板にイオンビームを照射した結果を示す写真である。
図21は、基板にテープを手で巻いて製造した遮蔽板にイオンビームを照射した結果を示す写真である。ここでは、テープとしてアルミテープを用いた。また、遮蔽板にイオンビームを加速電圧6kVで8時間照射した。
【0056】
図21に示すように、基板にテープを手で巻いた場合、テープにしわができ、しわの部分が選択的にエッチングされてしまう。これに対して、遮蔽板製造装置100を用いて製造した遮蔽板にはテープにしわがないため、テープで形成された遮蔽面が均等にエッチングされる。したがって、遮蔽板製造装置100を用いて製造した遮蔽板は、寿命が長い。
【0057】
1.4. 変形例
1.4.1. 遮蔽板製造装置
図22は、変形例に係る遮蔽板製造装置100を模式的に示す斜視図である。
図23は、変形例に係る遮蔽板製造装置100を模式的に示す断面図である。以下、遮蔽板製造装置100の変形例において、上述した遮蔽板製造装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0058】
変形例に係る遮蔽板製造装置100は、
図22および
図23に示すように、基板2を基板保持シャフト10に押し付ける基板固定用バネ70を含む。
【0059】
基板固定用バネ70は、スリット12内に設けられている。基板固定用バネ70は、スリット12内において、基板2を基板保持シャフト10のスリット12を規定する面に押し付ける。これにより、基板保持シャフト10に基板2を確実に固定できる。
【0060】
スリット12内の空間は、
図23に示すように、スリット12の開口側の第1空間12aと、スリット12の底側の第2空間12bと、を有している。第2空間12bの幅W2は、第1空間12aの幅W1よりも大きい。そのため、第1空間12aと第2空間12bとの間にフック(段差)14が形成される。スリット12内に挿入された基板2は、基板固定用バネ70に押されて、基板保持シャフト10のフック14に引っかかる。これにより、基板保持シャフト10に基板2を確実に固定できる。
【0061】
1.4.2. 遮蔽板の製造方法
変形例に係る遮蔽板製造装置100を用いた遮蔽板の製造方法は、
図9に示す基板保持シャフト10に基板2を装着する工程S10、および遮蔽板6を取り出す工程S50が異なる点を除いて、上述した遮蔽板の製造方法と同様である。以下では、上述した遮蔽板の製造方法と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0062】
まず、基板2を装着する工程S10について説明する。
図22に示すように、遮蔽板製造装置100の基板保持シャフト10に基板2を装着する。具体的には、まず、摘み20を回転させて摘み20の番号を「1」にする。次に、基板2をスリット12に挿入する。
【0063】
このとき、基板2の先端部分からスリット12に挿入する。ここで、試料加工装置では、遮蔽板6の先端部分のエッジに沿ってエッチングされる。そのため、遮蔽板6の先端部分となる基板2の先端部分からスリット12に挿入することによって、遮蔽板6の先端部分を保護できる。
【0064】
基板2をスリット12に挿入すると、基板2は基板固定用バネ70によって基板保持シャフト10に押さえつけられ、基板2はフック14に引っかかる。これにより、基板保持シャフト10に基板2を装着できる。
【0065】
次に、遮蔽板6を取り出す工程S50について説明する。
図24は、遮蔽板6を取り出すための取り出しツール80を模式的に示す斜視図である。
図25は、スリット12に取り出しツール80を挿入した状態を模式的に示す図である。
図26~
図28は、取り出しツール80を用いて基板保持シャフト10から遮蔽板6を取り出す工程を示す模式的に示す断面図である。
【0066】
取り出しツール80は、遮蔽板6を基板保持シャフト10のスリット12から取り出すためのツールである。取り出しツール80は、
図24に示すように、遮蔽板6を引っ掛けるための爪82を有している。
【0067】
遮蔽板6を取り出す工程では、まず、
図25および
図26に示すように、スリット12に取り出しツール80を挿入する。このとき、
図26に示すように、スリット12内において、取り出しツール80の爪82を遮蔽板6に引っ掛ける。次に、
図27に示すように、取り出しツール80で遮蔽板6を押して遮蔽板6を傾ける。これにより、遮蔽板6がフック14から外れる。次に、
図28に示すように、スリット12から取り出しツール80を引き出す。これにより、スリット12内から遮蔽板6を取り出すことができる。
【0068】
変形例に係る遮蔽板製造装置100を用いた遮蔽板の製造方法では、取り出しツール80を用いて遮蔽板6を取り出すため、テープ4の表面に汚れが付いたり、傷ができたりすることを防ぐことができる。
【0069】
2. 第2実施形態
2.1. 遮蔽板製造装置
次に、第2実施形態に係る遮蔽板製造装置について、図面を参照しながら説明する。
図29は、第2実施形態に係る遮蔽板製造装置200を模式的に示す斜視図である。以下、第2実施形態に係る遮蔽板製造装置200において、第1実施形態に係る遮蔽板製造装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0070】
遮蔽板製造装置200は、張力付与機構50の構成が異なる点を除いて上述した遮蔽板製造装置100と同様である。以下では、上述した遮蔽板製造装置100と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0071】
図30は、遮蔽板製造装置200の張力付与機構50を説明するための図である。
【0072】
張力付与機構50は、
図29および
図30に示すように、スライダー(摺動部材)502と、バネ504と、ガイド506と、を含む。
【0073】
スライダー502は、
図29に示すように、筐体30に設けられたガイド506に沿って摺動する。ガイド506は、例えば、基板保持シャフト10に対して垂直に延びている。スライダー502およびガイド506は、リニアガイドを構成している。スライダー502には、テープ4の一端が貼り付けられる。
【0074】
なお、
図31に示すように、スライダー502の後端部503までテープ4を貼ってもよい。これにより、テープ4を折り曲げることができ、テープ4が張力によって剥がれることを防ぐことができる。また、図示はしないが、スライダー502には、テープ4を固定するための固定部材が設けられていてもよい。固定部材は、例えば、テープ4を挟むクリップであってもよい。固定部材でテープ4を固定することによって、テープ4の粘着力だけでテープ4をスライダー502に固定する場合と比べて、テープ4をスライダー502に確実に固定できる。
【0075】
バネ504は、スライダー502に接続されている。バネ504は、基板保持シャフト10に保持された基板2とスライダー502との間に掛け渡されたテープ4に張力が付与されるように、スライダー502を付勢する。バネ504は、例えば、圧縮バネである。バネ504は、例えば、コイルバネである。遮蔽板製造装置200では、テープ4に張力を付与するバネ504として一般的なコイルバネを用いることができる。
【0076】
2.2. 遮蔽板の製造方法
次に、遮蔽板製造装置200を用いた遮蔽板の製造方法について説明する。遮蔽板製造装置200を用いた遮蔽板の製造方法の流れは、上述した
図9に示す遮蔽板製造装置100を用いた遮蔽板の製造方法の流れと同様である。以下、上述した遮蔽板製造装置100を用いた遮蔽板の製造方法と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0077】
(1)基板の装着(S10)
まず、遮蔽板製造装置200の基板保持シャフト10に基板2を装着する。
【0078】
(2)テープを掛け渡す(S20)
次に、
図29に示すように、基板保持シャフト10に保持された基板2とスライダー502との間にテープ4を掛け渡す。具体的には、テープ4の一端をスライダー502に貼り付け、テープ4の他端を基板保持シャフト10および基板2に貼り付ける。テープ4は、粘着層を有しているため、スライダー502、基板保持シャフト10、およびスライダー502にテープ4を貼り付けることができる。
【0079】
なお、図示はしないが、テープ4の他端を、クリップ等の固定部材でスライダー502に固定してもよい。
【0080】
(3)基板にテープを巻き取る(S30)
次に、基板保持シャフト10を回転させて、基板2にテープ4を巻き取る。具体的には、摘み20を回転させて摘み20の番号を「1」から「2」にする。これにより、基板保持シャフト10が所定の角度だけ回転し、テープ4が基板2に巻き取られる。
【0081】
このとき、テープ4には、張力付与機構50によって張力が付与される。具体的には、基板2にテープ4が巻き取られることによって、バネ504が圧縮され、バネ504に反力が生じる。これにより、テープ4に張力が付与される。基板2にテープ4が巻き取られるほど、バネ504がテープ4に付与する張力が強くなる。
【0082】
基板保持シャフト10を回転させるときには、テープ4がスライダー502から剥がれないようにスライダー502上のテープ4を指で押さえてもよい。
【0083】
シャフト押さえ部材40は、張力付与機構50がテープ4に付与する張力の方向とは反対方向の力がテープ4に加わるように、基板保持シャフト10を押さえている。また、基板保持シャフト10は長孔32に挿入されており、基板保持シャフト10はフレキシブルに動くことができる。したがって、テープ4が撓むことを防ぐことができる。
【0084】
(4)テープをカットする(S40)
次に、テープカットツール60を用いてテープ4をカットする。なお、テープ4をカットする前に、テープ4を押さえていた指をテープ4から離すことで、テープ4をスライダー502からはがしてもよい。
【0085】
(5)遮蔽板を取り出す(S50)
次に、基板保持シャフト10から遮蔽板6を取り出す。例えば、
図24に示す取り出しツール80を用いて遮蔽板6を取り出してもよい。
【0086】
以上の工程により、遮蔽板6を製造できる。
【0087】
2.3. 効果
遮蔽板製造装置200では、張力付与機構50は、テープ4の一端が固定されるスライダー502と、スライダー502に接続され、テープ4に張力を付与するバネ504と、を含む。また、基板保持シャフト10を回転させることによって、テープ4は、テープ4の他端側から基板2に巻き取られる。そのため、遮蔽板製造装置200では、遮蔽板製造装置100と同様に、基板2にテープ4をしわなく貼り付けることができる。
【0088】
3. 第3実施形態
3.1. 試料加工装置
次に、第3実施形態に係る試料加工装置について、図面を参照しながら説明する。
図3
2は、第3実施形態に係る試料加工装置300の構成を示す図である。
【0089】
試料加工装置300は、試料Sの一部を遮蔽板6で遮蔽し、試料SにイオンビームIBを照射して試料Sを加工する。試料加工装置300では、例えば、走査電子顕微鏡用の断面試料を作製できる。なお、試料加工装置300は、イオンビーム以外の荷電粒子ビーム(電子ビーム等)を照射する装置であってもよい。
【0090】
試料加工装置300は、
図32に示すように、遮蔽板6を含む。試料加工装置300は、さらに、イオン源310と、遮蔽板ホルダー330と、支持部材340と、試料ステージ350と、チャンバー360と、を含む。
【0091】
イオン源310は、試料SにイオンビームIBを照射する。イオン源310は、チャンバー360の上部に取り付けられている。イオン源310は、例えば、所定の加速電圧でイオンを加速させてイオンビームIBを放出するイオン銃である。イオンビームIBとしては、例えば、Arイオンビームを用いることができる。
【0092】
遮蔽板6は、試料S上に配置される。遮蔽板6は、試料Sの上面Saの一部を覆う。試料S上に遮蔽板6を配置してイオンビームIBを照射することによって、イオンビームIBによりエッチングされる照射領域と遮蔽板6で遮蔽されてエッチングされない非照射領域との境界に沿って断面を形成できる。
【0093】
遮蔽板ホルダー330は、遮蔽板6を保持している。支持部材340は、遮蔽板ホルダー330を支持している。支持部材340は、遮蔽板6の位置を調整するための遮蔽板位置調整機構を備えている。
【0094】
試料ステージ350には、試料位置調整機構352が設けられている。試料位置調整機構352上には、試料Sを保持する試料ホルダー354が装着されている。試料位置調整機構352によって試料Sの位置を調整できる。
【0095】
試料ステージ350は、試料ホルダー354に保持された試料Sおよび遮蔽板6を軸Aを回転軸として回転可能な回転機構を備えている。軸Aは、イオンビームIBの光軸に直交する軸である。回転機構は、例えば、モーター駆動によって動作する。試料加工装置300では、回転機構によって試料Sおよび遮蔽板6を軸Aを回転軸(スイング軸)としてスイングさせながら、イオンビームIBを試料Sに照射できる。
【0096】
試料加工装置300では、遮蔽板位置調整機構および試料位置調整機構352によって、遮蔽板6と試料Sとの間の位置関係を調整できる。さらに、遮蔽板位置調整機構および試料位置調整機構352によって、試料Sとイオン源310との間の位置関係、および遮蔽板6とイオン源310との間の位置関係を調整できる。
【0097】
チャンバー360内には、試料Sが収容される。チャンバー360内は、不図示の真空ポンプによって真空状態にできる。チャンバー360内において、試料SにイオンビームIBが照射される。
【0098】
なお、図示はしないが試料加工装置300は、遮蔽板6および試料Sの位置を確認するためのカメラ、および試料Sの加工状況を確認するためのカメラを備えていてもよい。
【0099】
図33は、試料加工装置300の遮蔽板6を模式的に示す断面図である。
【0100】
遮蔽板6は、試料Sの上面Saに配置される。イオンビームIBは、試料Sおよび遮蔽
板6の回転軸(スイング軸)となる軸Aに対して垂直に照射される。軸Aは、試料Sの上面Saと遮蔽板6との境界を通る。試料Sの上面Saは、軸Aに平行である。試料加工装置300では、軸Aに平行な試料Sの上面SaにイオンビームIBを照射し、上面Saに垂直な断面を形成できる。
【0101】
遮蔽板6は、遮蔽面602と、底面604と、上面606と、を含む。
【0102】
遮蔽面602は、イオンビームIBが照射される面である。遮蔽面602は、第1傾斜面602aと、第2傾斜面602bと、を有している。
【0103】
第1傾斜面602aは、底面604に接続されている。第1傾斜面602aと底面604によってエッジ603が形成される。第1傾斜面602aは、垂直ではなく、試料Sの上面Saの垂線に対してわずかに傾いている。第1傾斜面602aと試料Sの上面Saがなす角度θ1は、鋭角である。第1傾斜面602aと試料Sの上面Saがなす角度θ1は、例えば、85°<θ1<90°である。第1傾斜面602aが試料Sの上面Saの垂線に対して傾いていることによって、イオンビームIBの照射角度がずれた場合でも遮蔽板6が試料Sの上面Saに影をつくることを防ぐことができる。
【0104】
第2傾斜面602bは、第1傾斜面602aに接続されている。第2傾斜面602bは、上面606に接続されている。第2傾斜面602bと上面606によって、エッジ605が形成される。第2傾斜面602bは、第1傾斜面602aよりも試料Sの上面Saに対する傾斜角度が小さい。第2傾斜面602bと試料Sの上面Saがなす角度θ2は、鋭角である。第2傾斜面602bと試料Sの上面Saがなす角度θ2は、例えば、65°<θ2<θ1である。
【0105】
遮蔽面602が第2傾斜面602bを有することによって、遮蔽板6が大きくなることを防ぎつつ、遮蔽面602と上面606が形成するエッジ605をイオンビームIBの強度が弱い位置に配置できる。例えば、遮蔽面602が1つの傾斜面のみからなる場合、エッジ605をイオンビームIBの強度が弱い位置に配置するためには、遮蔽板6の高さを大きくしなければならず、遮蔽板6とイオン源310との間の距離が小さくなってしまう。
【0106】
これに対して、遮蔽面602が、第1傾斜面602aよりも傾斜角度が小さい第2傾斜面602bを有することによって、遮蔽板6の高さが大きくなることを防ぎつつ、エッジ605をイオンビームIBの強度が弱い位置に配置できる。したがって、遮蔽板6とイオン源310との間の距離を適切に保ちつつ、エッジ605をイオンビームIBの強度が弱い位置に配置できる。
【0107】
底面604は、試料Sの上面Saを向く面である。底面604は、遮蔽面602に接続されている。遮蔽面602と底面604によって、エッジ603が形成される。図示の例では、第1傾斜面602aが底面604に接続されてエッジ603を形成している。エッジ603は、イオンビームIBでエッチングされる照射領域と遮蔽板6で遮蔽されてイオンビームIBでエッチングされない非照射領域との境界を決める。
【0108】
底面604は、試料Sの上面Saに対して傾斜しているため、底面604の一部は試料Sに接触しない。図示はしないが、エッジ603のみが試料Sの上面Saにあたるように遮蔽板6が遮蔽板ホルダー330で支持されていてもよい。
【0109】
遮蔽板6は、基板2と、テープ4と、を含む。テープ4は、導電層402と、粘着層404と、を含む。導電層402は、例えば、アルミニウム、銅、カーボンなどからなる金
属箔や、グラファイトシートなどの導電性薄膜である。粘着層404は、導電性を有する接着剤である。
【0110】
遮蔽板6では、遮蔽面602、底面604、および上面606は、テープ4で形成されている。ここで、試料Sの断面形状は、遮蔽面602の形状に影響を受ける。特に、第1傾斜面602aおよびエッジ603の形状は、試料Sの断面形状に影響を与える。遮蔽板6では、遮蔽面602および底面604がテープ4で形成されているため、テープ4を貼り替えることによって、しわのない平滑な第1傾斜面602aおよびしわのない平滑な底面604を形成できる。したがって、試料加工装置300では、低コスト化を図ることができる。
【0111】
上述した遮蔽板製造装置100および遮蔽板製造装置200を用いることによって、容易に、しわのない平滑な第1傾斜面602aおよびしわのない平滑な底面604を有する遮蔽板6を製造できる。
【0112】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0113】
2…基板、4…テープ、4a…第1辺、4b…第2辺、6…遮蔽板、10…基板保持シャフト、12…スリット、12a…第1空間、12b…第2空間、14…フック、20…摘み、22…クリックストップ機構、24…凹部、26…ストッパー、26a…バネ、26b…凸部、30…筐体、30a…第1板部材、30b…第2板部材、32…長孔、40…シャフト押さえ部材、50…張力付与機構、52…アーム、53…ストッパー、54…アーム固定シャフト、56…バネ、60…テープカットツール、70…基板固定用バネ、80…取り出しツール、82…爪、100…遮蔽板製造装置、200…遮蔽板製造装置、300…試料加工装置、310…イオン源、330…遮蔽板ホルダー、340…支持部材、350…試料ステージ、352…試料位置調整機構、354…試料ホルダー、360…チャンバー、402…導電層、404…粘着層、502…スライダー、503…後端部、504…バネ、506…ガイド、602…遮蔽面、602a…第1傾斜面、602b…第2傾斜面、603…エッジ、604…底面、605…エッジ、606…上面