(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092706
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】トランス電源回路
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20240701BHJP
H02M 5/06 20060101ALI20240701BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20240701BHJP
H01F 30/12 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01F30/10 M
H02M5/06
H01F37/00 C
H01F30/10 C
H01F30/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208825
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】517374937
【氏名又は名称】株式会社マキセンサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100130410
【弁理士】
【氏名又は名称】茅原 裕二
(72)【発明者】
【氏名】川口 正敏
【テーマコード(参考)】
5H750
【Fターム(参考)】
5H750BA01
5H750CC12
(57)【要約】
【課題】入力電圧が大きく変動しても故障の原因となる出力負荷電流の急激な増加を防ぎ、高温や低温の環境下でも使用可能なLED照明用のトランス電源回路を提供する。
【解決手段】本発明によるトランス電源回路1は、電流制御単巻トランス10とその制御回路20からなり、電流制御単巻トランス10は、単巻トランスの直列巻線部分を2つの磁気回路に分けた第1の磁気回路11及び第2の磁気回路12と、第1の磁気回路11及び第2の磁気回路12に共通に巻き付けられた直列巻線13と、第1の磁気回路11に巻き付けられた分路巻線14と、第2の磁気回路12に巻き付けられた2次出力巻線15を備え、制御回路20は、2次出力巻線15に接続された電流制御回路21を備えて構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流制御単巻トランスとその制御回路からなるトランス電源回路であって、
前記電流制御単巻トランスは、
単巻トランスの直列巻線部分を2つの磁気回路に分けた第1の磁気回路及び第2の磁気回路と、
前記第1の磁気回路及び前記第2の磁気回路に共通に巻き付けられた直列巻線と、
前記第1の磁気回路に巻き付けられた分路巻線と、
前記第2の磁気回路に巻き付けられた2次出力巻線を備え、
前記制御回路は、
前記2次出力巻線に接続された電流制御回路を備えて構成されていることを特徴とするトランス電源回路。
【請求項2】
前記2次出力巻線に電流制限抵抗が接続され、前記分路巻線にブリッジ形整流回路を介して負荷が接続されることを特徴とする請求項1に記載のトランス電源回路。
【請求項3】
前記2次出力巻線にブリッジ形整流回路が接続され、その出力端に電流制限抵抗と電流制限回路が接続され、前記分路巻線にブリッジ形整流回路を介して負荷が接続されることを特徴とする請求項1に記載のトランス電源回路。
【請求項4】
前記2次出力巻線に電流制限抵抗が接続され、出力電圧を調整するため前記分路巻線に出力電圧調整用巻線が設けられ、出力電圧巻線にブリッジ形整流回路を介して負荷が接続されることを特徴とする請求項1に記載のトランス電源回路。
【請求項5】
前記2次出力巻線に電流制限抵抗が接続され、前記分路巻線にブリッジ形整流回路が接続され、その出力端に平滑コンデンサを介して負荷が接続されることを特徴とする請求項1に記載のトランス電源回路。
【請求項6】
前記2次出力巻線にブリッジ形整流回路が接続され、その出力端に2つの電流制限抵抗が接続され、一方の電流制限抵抗と並列にその両端をショートするON/OFF回路が接続され、前記分路巻線にブリッジ形整流回路を介して負荷が接続されることを特徴とする請求項1に記載のトランス電源回路。
【請求項7】
前記電流制御単巻トランスが三相接続され、前記2次出力巻線に三相整流回路が接続され、その出力端に2つの電流制限抵抗が接続され、一方の電流制限抵抗と並列にその両端をショートするON/OFF回路が接続され、前記分路巻線にはそれぞれブリッジ整流回路を介して負荷が接続されることを特徴とする請求項1に記載のトランス電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電圧の変動にも対応可能なLED照明用のトランス電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特に金属関係の工場のような高温の環境や、冷凍倉庫等のような低温の環境においては、LED照明装置の導入が難しく、現状の電源装置では寿命に問題がある。この点に関し、例えば特許文献1に開示されているようなトランス電源回路によれば、寿命に問題はないものの、入力電圧の変動に対して負荷電流が大きく変動してしまうという問題がある。
【0003】
また、LED照明装置の電源として、スイッチング電源も多く使用されている。スイッチング電源は、その主たる回路に電解コンデンサ、スイッチング素子及び高周波トランスを備えている。また、制御回路、過電圧保護回路、過電流保護回路等を備えており、高温環境である金属関係の工場や低温環境である冷凍倉庫等においては導入が難しいのが現状である。この点に関し、前記のトランス電源回路は高温や低温の環境でも使用できるものの、入力電圧が高くなるとLED負荷に流れる電流が急激に増加するため、電流制御用抵抗やLEDの発熱量が大きくなり、装置の故障に繋がるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、入力電圧が大きく変動しても故障の原因となる出力負荷電流の急激な増加を抑え、高温や低温の環境下でも使用可能なLED照明用のトランス電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明のトランス電源回路は、電流制御単巻トランスとその制御回路からなるトランス電源回路であって、前記電流制御単巻トランスは、単巻トランスの直列巻線部分を2つの磁気回路に分けた第1の磁気回路及び第2の磁気回路と、前記第1の磁気回路及び前記第2の磁気回路に共通に巻き付けられた直列巻線と、前記第1の磁気回路に巻き付けられた分路巻線と、前記第2の磁気回路に巻き付けられた2次出力巻線を備え、前記制御回路は、前記2次出力巻線に接続された電流制御回路を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のトランス電源回路において、前記2次出力巻線に電流制限抵抗が接続され、前記分路巻線にブリッジ形整流回路を介して負荷が接続される構成を採用することができる。
【0008】
また、本発明のトランス電源回路において、前記2次出力巻線にブリッジ形整流回路が接続され、その出力端に電流制限抵抗と電流制限回路が接続され、前記分路巻線にブリッジ形整流回路を介して負荷が接続される構成を採用することができる。
【0009】
また、本発明のトランス電源回路において、前記2次出力巻線に電流制限抵抗が接続され、出力電圧を調整するため前記分路巻線に出力電圧調整用巻線が設けられ、出力電圧巻線にブリッジ形整流回路を介して負荷が接続される構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明のトランス電源回路において、前記2次出力巻線に電流制限抵抗が接続され、前記分路巻線にブリッジ形整流回路が接続され、その出力端に平滑コンデンサを介して負荷が接続される構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明のトランス電源回路において、前記2次出力巻線にブリッジ形整流回路が接続され、その出力端に2つの電流制限抵抗が接続され、一方の電流制限抵抗と並列にその両端をショートするON/OFF回路が接続され、前記分路巻線にブリッジ形整流回路を介して負荷が接続される構成を採用することができる。
【0012】
また、本発明のトランス電源回路において、前記電流制御単巻トランスが三相接続され、前記2次出力巻線に三相整流回路が接続され、その出力端に2つの電流制限抵抗が接続され、一方の電流制限抵抗と並列にその両端をショートするON/OFF回路が接続され、前記分路巻線にはそれぞれブリッジ整流回路を介して負荷が接続される構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のトランス電源回路によれば、入力電圧が大きく変動しても出力負荷電流が一定もしくは変動が少なくなるため、高温や低温の環境下でも故障せずに安全に使用可能なLED照明用電源を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明における電流制御単巻トランスの基本構成図。
【
図2】本発明における電流制御単巻トランスの原理を示す説明図。
【
図4】本発明における電流制御単巻トランスの略図。
【
図6】実測値データを収集したトランス電源回路の回路図。
【
図7】電流制限抵抗に対する入力電流とLED負荷電流の変化を示すグラフ。
【
図8】入力電圧の変化に対するLED負荷電流の増加比を示すグラフ。
【
図9】入力電流に対する負荷電流と制御電流の変化を示すグラフ。
【
図10】本発明のトランス電源回路の第1実施形態を示す回路図。
【
図11】本発明のトランス電源回路の第2実施形態を示す回路図。
【
図12】本発明のトランス電源回路の第3実施形態を示す回路図。
【
図13】本発明のトランス電源回路の第4実施形態を示す回路図。
【
図14】本発明のトランス電源回路の第5実施形態を示す回路図。
【
図15】本発明のトランス電源回路の第6実施形態を示す回路図。
【
図18】本発明のトランス電源回路の第7実施形態を示す回路図。
【
図20】ピーク電圧同期ON/OFF回路の構成を示す回路図。
【
図21】AC/DC変換回路及びDC電源ピーク電圧同期回路の構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明のトランス電源回路1は、例えば電圧変動が大きな機械の休止中、稼働中における電源電圧変動や、高温・低温、電界・磁界の強い場所において、LED照明装置用のトランス電源をより安全に使用するために開発された回路である。このトランス電源回路1は、電流制御単巻トランス10とその制御回路20を備えて構成されている。
【0017】
(電流制御単巻トランスの構成)
図1に示すように、本実施形態の電流制御単巻トランス10は、トロイダル型トランスであって、リング状のコア(鉄芯)からなる第1の磁気回路11と、同じくリング状のコア(鉄芯)からなる第2の磁気回路12を備えて構成されている。第1の磁気回路11のコアと第2の磁気回路12のコアは、透磁率が高い同じ材料の磁性体で同一形状に形成されており、第1の磁気回路11のコア断面積S
1 と第2の磁気回路12のコア断面積S
2 が等しく設定されている(S
1 =S
2 )。したがって、第1の磁気回路11と第2の磁気回路12は、飽和磁束密度等、同一特性を有している。ただし、制御する量が小さい場合には、S
1 >S
2 (S
1 ≠S
2 )でも制御可能である。
【0018】
図2に示すように、電流制御単巻トランス10は、単巻トランスの直列巻線部分を2つの磁気回路に分けた第1の磁気回路11と第2の磁気回路12からなる。第1の磁気回路11のコアと第2の磁気回路12のコアには共通して銅線を巻き付けた直列巻線13が設けられており、直列巻線13の一端は入力端子16に接続されている。第1の磁気回路11のコアには銅線を巻き付けた分路巻線14が設けられており、分路巻線14の一端は直列巻線13に接続され、他端は入力端子17に接続されている。分路巻線14の両端にはLED照明装置等の負荷30が接続される。第2の磁気回路12のコアには銅線を巻き付けた2次出力巻線15が設けられており、2次出力巻線15の両端には制御回路20を構成する電流制御回路21が接続されている。電流制御回路21にはAC-DC変換回路40が接続されている。なお、電流制御単巻トランス10は、EI型コアで構成することもできる。
【0019】
(電流制御単巻トランスの原理)
次に、電流制御単巻トランスの原理を説明する。このトランスによる負荷電流の制御方法は、単巻トランスの巻線比を変えずに電圧比を変えるという考え方に基づいている。
図3に示すように、一般的な単巻トランスにおいて出力電圧を変えるには、直列巻線と分路巻線の巻数比(N
1 :N
2 )を変えることになる。これは、入力側から見た直列巻線部分のインピーダンスZ
1 と分路巻線部分のインピーダンスZ
2 の比を変えることである。ここでコア内に発生する磁束を考えると、直列巻線部分により発生する磁束Φ
1 と分路巻線部分により発生する磁束Φ
2 の比と考えられる。そこで、磁束Φ
1 だけを変えることができれば、直列巻線と分路巻線の巻数比(N
1 :N
2 )を変えることに等しくなる。
【0020】
この原理を利用したものが
図2、
図4、
図5の回路構成であり、直列巻線13を第1の磁気回路11と第2の磁気回路12に共通に巻き付けて2次出力電流を変えることにより、第1の磁気回路11の直列巻線13部分の磁束を変化させている。これをインピーダンス的に考えると、
図2において電流制御回路21に流れる電流I
3 を大きくすると、第2の磁気回路12のインピーダンスZ
3 が小さくなり、V
1 の電圧は低くなりV
2 の電圧は高くなる。
【0021】
一方、電流制御回路21に流れる電流を小さくすると、第2の磁気回路12のインピーダンスZ3 が大きくなり、V1 の電圧は高くなる。このときV2 の電圧は低くなるので、直列巻線13と分路巻線14の巻線比を変えずに第2の磁気回路12の2次出力電流を変化させることによって、負荷電圧V2 (VOUT )を変化させることができる。
【0022】
このような原理によれば、
図2に示す電流制御単巻トランス10において、入力端子16,17間に入力電圧V
INを印加すると、第1の磁気回路11に磁束Φ
1 、第2の磁気回路12に磁束Φ
2 が発生し、励磁電流が流れる。また、第2の磁気回路12の2次出力巻線15の両端に電圧V
3 が発生する。
【0023】
ここで、電流制御回路21に流れる電流を大きくし、2次出力巻線15に流れる電流を大きくすると、第2の磁気回路12の磁束Φ2 と逆向きの磁束が発生して第2の磁気回路12中の磁束Φ2 が減少し、共通の直列巻線13に流れる電流I1 が増加する。I1 が増加すると負荷電流I2 も増加する。
【0024】
一方、電流制御回路21に流れる電流を小さくし、2次出力巻線15に流れる電流を小さくすると、第2の磁気回路12の2次出力電流I3 が減少し、第2の磁気回路12中の磁束Φ2 は増加するので共通の直列巻線13を流れる電流I2 は減少する。I1 が減少すると負荷電流I2 も減少する。
【0025】
以上のとおり、本発明のトランス電源回路1によれば、電流制御単巻トランス10の2次出力巻線15に流れる電流I3 を電流制御回路21で制御することにより、直列巻線13を流れる電流I1 を制御し、ひいては分路巻線14に接続された負荷30に流れる電流I2 を制御することができる。
【0026】
(電流制御単巻トランスの実測値データ)
図6は実測値データを収集したトランス電源回路1の回路図であり、以下の条件で入力電流I
1 とLED負荷電流I
2 の電流値を測定した。
・第1の磁気回路のコア断面積S
1 =第2の磁気回路のコア断面積S
2
・直列巻線の巻数N
1 =400
T
・分路巻線の巻数N
2 =1600
T
・2次出力巻線の巻数N
3 =400
T
【0027】
図7は電流制限回路21の電流制限抵抗R
3 の抵抗値(Ω)を変化させたときの入力電流I
1 とLED負荷電流I
2 の変化を示したものであり、同図より、電流制限抵抗R
3 の抵抗値を大きくする(2次出力電流I
3 を小さくする)ことによりLED負荷電流I
2 を小さくできる(制御できる)ことが判明した。
【0028】
図8は入力電圧V
INを上昇させたときのLED負荷電流I
2 の増加比を示したものであり、同図より、本発明の電源は従来の電源に比べて入力電圧V
INの上昇に対するLED負荷電流I
2 の増加を抑えられることが判明した。
【0029】
図9は入力電流I
1 に対する負荷電流I
2 と制御電流I
3 の変化を示したものである。単巻トランスについて直列巻線の巻数をN
1 、分路巻線の巻数をN
2 とすると、I
2 =N
2 +N
1 /N
2 ×I
1 の関係が成り立つから、
図6の巻数の場合I
2 =1600
T +400
T /1600
T ×I
1 =1.25I
1 となり、
図9より、電流制御単巻トランス10の特徴として、実測値データからI
1 =I
3 、I
2 =1.25I
1 の関係が成立することが判明した。
【0030】
(トランス電源回路の実施形態)
以上が電流制御単巻トランス10の構成と原理であるが、これを利用した本発明のトランス電源回路の実施形態としては、例えば
図10~20に示す回路構成が考えられる。
【0031】
図10は本発明の第1実施形態を示すものである。このトランス電源回路1-1は、前記構成からなる電流制御単巻トランス10において、2次出力巻線15に電流制限抵抗22が接続され、分路巻線14にブリッジ形整流回路31を介して複数個のLEDを直列接続した負荷のLEDランプ32が接続されている。電流制御単巻トランス10の特性上、前記のとおりI
1 =I
3 の関係が成立するので、LEDランプ32の電流特性はダイオードと同じ特性であるが、負荷を流れる負荷電流I
2 は入力電流I
1 、制御電流I
3 の特性に近くなる。このため、入力電圧の変動に対してダイオード特性と抵抗特性の中間の特性となり、入力電圧の上昇に対して負荷電流の上昇がより小さくなる。また、シンプルな構造であるため、故障も少なくなる。
【0032】
図11は本発明の第2実施形態を示すものである。このトランス電源回路1-2は、前記構成からなる電流制御単巻トランス10において、2次出力巻線15にブリッジ形整流回路23が接続され、その出力端に電流制限抵抗22と電流制限回路24が接続されている。また、分路巻線14にはブリッジ形整流回路31を介して負荷のLEDランプ32が接続されている。この構成によると、2次出力巻線15の出力を整流して電流制限回路24を設けることにより、LEDランプ32の負荷電流I
2 の増加を小さく抑えることができる。また、万が一電流制限回路24がショートしても、電流制限抵抗22が設けられているため、制御電流I
3 は急上昇せず、負荷電流I
2 の最大値を制限することができる。
【0033】
図12は本発明の第3実施形態を示すものである。このトランス電源回路1-3は、前記構成からなる電流制御単巻トランス10において、2次出力巻線15に電流制限抵抗22が接続され、分路巻線14には出力電圧を調整するため出力電圧調整用巻線25が設けられている。この回路では、分路巻線14は電圧調整部分N
2-1 と出力電圧部分N
2-2 とから構成されている。また、出力電圧部分N
2-2 にはブリッジ形整流回路31を介して負荷のLEDランプ32が接続されている。この構成によると、出力電圧調整用巻線25で巻数比を調整することによって、出力電圧を負荷のLEDランプ32の規格に合わせて調整することができる。
【0034】
図13は本発明の第4実施形態を示すものである。このトランス電源回路1-4は、前記構成からなる電流制御単巻トランス10において、2次出力巻線15に電流制限抵抗22が接続され、分路巻線14にブリッジ形整流回路31が接続され、その出力端に平滑コンデンサ33を介して負荷のLEDランプ32が接続されている。この構成によると、負荷出力側のブリッジ形整流回路(全波整流回路)31の出力に平滑コンデンサ33が並列に接続されているので、平滑コンデンサ33にチャージされる電流は入力電流I
1 (制御電流I
3 )により制限される。このため、平滑コンデンサ33のチャージ電流は急激に大きくならないので、電源の力率の低下を抑えることができる。
【0035】
図14は本発明の第5実施形態を示すものである。このトランス電源回路1-5は、前記構成からなる電流制御単巻トランス10において、2次出力巻線15にブリッジ形整流回路23が接続され、その出力端に制御用の2つの電流制限抵抗22,34が接続され、一方の電流制限抵抗34と並列にその両端をショートする回路として、入力電圧のピーク時に一定時間ONし、それ以外の時間はOFFするON/OFF回路(ピーク電圧同期ON/OFF回路)26が接続されている。また、分路巻線14にはブリッジ形整流回路31を介して負荷のLEDランプ32が接続されている。この構成によると、入力電圧のピーク時には、ON/OFF回路26がONして制御電流I
3 が大きくなると、入力電流I
1 も大きくなり、負荷のLEDランプ32に大きな電流が流れて照明が明るくなる。ピーク時以外はON/OFF回路26がOFFして制御電流I
3 が小さくなり、入力電流I
1 も小さくなるので、負荷のLEDランプ32に流れる電流が小さいため照明は暗くなる。したがって、
図14に示すように、パルス電流を負荷のLEDランプ32に出力することにより、LEDに流れる最大電流が大きくなるため、LED照明が明るく見えるようになる。
【0036】
図15と
図16は本発明の第6実施形態を示すものである。このトランス電源回路1-6は三相電源-単相照明用の電源回路であって、前記構成からなる電流制御単巻トランス10が三相(U相、V相、W相)接続され、制御出力側が三相整流回路35に接続されている。三相整流回路35の出力端には、電流制限抵抗22と電流制限回路24が接続されている。また、電流制御単巻トランス10の各分路巻線14にはブリッジ形整流回路31を介して負荷のLEDランプ32が接続されている。入力電圧の変動が大きく制御回路20の制御電流値が大きくなると電源回路の消費電力が大きくなり、LEDランプ32からなる照明装置の効率が悪くなる。そこで本実施形態では、LEDランプ32と絶縁された制御回路20側に過電流を阻止する電流制限回路24を設けたことが特徴である。
【0037】
図17は電流制限回路の構成を示す回路図である。電流制限回路24は、バイアス抵抗41、電界効果トランジスタ(FET)42、トランジスタ43、電流制限抵抗44、バイパス抵抗45、ゲートリーク抵抗46、過電圧防止抵抗47、定電圧保持用ツェナーダイオード48、及び整流用コンデンサ49を備えてなる。バイアス抵抗41は、一端が過電圧防止抵抗47を介してAC-DC変換回路40の出力端子に接続され、他端が電界効果トランジスタ42のゲートに接続される。電界効果トランジスタ42は、ドレインが電流制限抵抗22を介してブリッジ形整流回路23の出力端子に接続され、ソースが電流制限抵抗44の一端に接続される。トランジスタ43は、ベースがバイパス抵抗45に接続され、コレクタがバイアス抵抗41の他端に接続され、エミッタが電流制限抵抗44の他端に接続される。なお、定電圧保持用ツェナーダイオード48はバイアス電圧を一定に保持するための素子、整流用コンデンサ49はバイアス電圧を直流に整流するための素子である。
【0038】
この電流制限回路24の構成によれば、バイアス抵抗41からゲート・ソース間に電圧がかかると、電界効果トランジスタ42がONし、ブリッジ形整流回路23から電流制限抵抗22を介して電流制限回路24に電流が流れる。電流制限抵抗44に流れる電流が制限電流を超えると、ベースにバイアス電圧がかかりトランジスタ43がONし、コレクタ・エミッタ間に電流が流れる。これにより、ゲート・ソース間の電圧が遮断されて電界効果トランジスタ42がOFFし、電流制限回路24に流れる電流が遮断される。この電界効果トランジスタ42とトランジスタ43のON/OFF切替が高速で行われることにより、制御回路20に定格を超える過電流が流れるのを阻止し、電流を制限することができる。なお、入力電圧が上昇すると発熱量が多くなるバイパス抵抗45を耐熱性のセメント抵抗やホーロー抵抗で構成することにより、電流制限回路24の耐熱性が高くなるので、高温環境下でも使用することが可能になる。
【0039】
図18と
図19は本発明の第7実施形態を示すものである。このトランス電源回路1-7は三相電源-単相照明用の電源回路であって、前記構成からなる電流制御単巻トランス10が三相(U相、V相、W相)接続され、制御出力側が三相整流回路35に接続されている。三相整流回路35の出力端には制御用の2つの電流制御抵抗22,34が接続され、一方の電流制限抵抗34と並列にその両端をショートする回路として、各三相入力の電圧のピークに同期して一定時間ONし、それ以外の時間はOFFする三相入力同期形のON/OFF回路(ピーク電圧同期ON/OFF回路)26が接続されている。また、電流制御単巻トランス10の各分路巻線14にはブリッジ形整流回路31を介して負荷のLEDランプ30が接続されている。入力電圧の変動が大きく制御回路20の制御電流値が大きくなると電源回路の消費電力が大きくなり、LEDランプ32からなる照明装置の効率が悪くなる。そこで本実施形態では、LEDランプ32と絶縁された制御回路20側に入力電圧のピークに合わせて制御電圧を調整するON/OFF回路26を設けたことが特徴である。
【0040】
図20はON/OFF回路(ピーク電圧同期ON/OFF回路)の構成を示す回路図である。ON/OFF回路26は、バイアス抵抗51、電界効果トランジスタ(FET)52、トランジスタ53、電流制限抵抗54、トランジスタ55、ゲートリーク抵抗56、及びDC電源ピーク電圧同期回路57を備えてなる。バイアス抵抗51は、一端がAC-DC変換回路40の出力端子にDC電源ピーク電圧同期回路57を介して接続され、他端が電界効果トランジスタ52のゲートに接続される。電界効果トランジスタ52は、ドレインが電流制限抵抗22を介してブリッジ形整流回路23の出力端子に接続され、ソースが電流制限抵抗54の一端に接続される。トランジスタ53は、ベースが電界効果トランジスタ52のソースに接続され、コレクタがバイアス抵抗51の他端に接続され、エミッタが電流制限抵抗54の他端に接続される。トランジスタ55は、ベースがDC電源ピーク電圧同期回路57に接続され、コレクタがバイアス抵抗51の他端に接続され、エミッタが電流制限抵抗54の他端に接続される。
【0041】
図21はAC/DC変換回路40とDC電源ピーク電圧同期回路57の構成を示す回路図である。AC/DC変換回路40では、入力された交流電圧(AC16V)をブリッジ形整流回路61で全波整流し(A点)、安定化電源62を介して出力電圧が一定の直流電圧(DC15V)を制御回路用電源として出力する。DC電源ピーク電圧同期回路57では、定電圧ツェナーダイオード65を介して定電圧(7.5V)が入力され(B点)、同期信号検出回路63にて基準同期信号(7.5V、0V)を検出し、ピーク電圧のタイミングとなる同期信号をCPU処理回路64に出力する(C点)。CPU処理回路64では入力された同期信号に基づいて、入力電圧のピーク値が変動しても変わらない0Vのタイミングで同期信号を検出し、CPU処理回路64でON/OFF信号に変換処理し、ピーク電圧同期信号として出力する(D点)。
【0042】
このように、本実施形態のON/OFF回路(ピーク電圧同期ON/OFF回路)26によれば、入力電圧のピーク時に一定時間ONし、それ以外の時間はOFFすることにより、パルス電流を負荷のLEDランプ32に供給して、LEDに流れる最大電流を大きくすることができる。すなわち、
図22のパルス幅と電流との関係に示すとおり、1周期の電流量は等しいため(平均電流:I、パルス電流:4I
P )、LEDランプ32にパルス電流を供給してパルス状に強く発光させることにより、明るく視覚されるようになる。また、ピーク電流とパルスを同期させることにより、より強いパルス電流を安定して出力することができる。さらに、パルス幅Δtを調整することにより、消費電力を少なくして省エネルギー化を図ることができるという効果がある。
【符号の説明】
【0043】
1:トランス電源回路
10:電流制御単巻トランス
11:第1の磁気回路
12:第2の磁気回路
13:直列巻線
14:分路巻線
15:2次出力巻線
16:入力端子
17:入力端子
20:制御回路
21:電流制御回路
22:電流制限抵抗
23:ブリッジ形整流回路
24:電流制限回路
25:出力電圧調整用巻線
26:ON/OFF回路(ピーク電圧同期ON/OFF回路)
30:負荷
31:ブリッジ形整流回路
32:LEDランプ
33:平滑コンデンサ
34:電流制限抵抗
35:三相整流回路
40:AC-DC変換回路
41:バイアス抵抗
42:電界効果トランジスタ(FET)
43:トランジスタ
44:電流制限抵抗
45:バイパス抵抗
46:ゲートリーク抵抗
47:過電圧防止抵抗
48:定電圧保持用ツェナーダイオード
49:整流用コンデンサ
51:バイアス抵抗
52:電界効果トランジスタ(FET)
53:トランジスタ
54:電流制限抵抗
55:トランジスタ
56:ゲートリーク抵抗
57:DC電源ピーク電圧同期回路
61:ブリッジ形整流回路
62:安定化電源
63:同期信号検出回路
64:CPU処理回路
65:定電圧ツェナーダイオード