(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092708
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】光学ガラス、光学素子、カメラ用交換レンズ、顕微鏡用対物レンズ、接合レンズ、光学系、及び光学装置
(51)【国際特許分類】
C03C 3/062 20060101AFI20240701BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C03C3/062
G02B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208828
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】500267712
【氏名又は名称】光ガラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 美幸
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB01
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4G062NN02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い屈折率、低い部分分散比を有する光学ガラスを提供する。
【解決手段】質量%で、SiO
2含有率:15%以上30%以下、Na
2O含有率:0%よりも大きく10%以下、K
2O含有率:0%よりも大きく15%以下、Nb
2O
5含有率:35%以上65%以下、MgO、CaO、SrO及びBaOの総含有率(ΣRO:R=Mg,Ca、Sr、Baを示す):0%よりも大きく20%以下であり、B
2O
3を実質的に含有しない、光学ガラス。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
SiO2含有率:15%以上30%以下、
Na2O含有率:0%よりも大きく10%以下、
K2O含有率:0%よりも大きく15%以下、
Nb2O5含有率:35%以上65%以下、
MgO、CaO、SrO及びBaOの総含有率(ΣRO:R=Mg,Ca、Sr、Baを示す):0%よりも大きく20%以下であり、
B2O3を実質的に含有しない、光学ガラス。
【請求項2】
質量%で、
MgO含有率:0%以上10%以下、
CaO含有率:0%以上10以下、
SrO含有率:0%以上5%以下、
BaO含有率:0%以上15%以下、である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
質量%で、
Li2O含有率:0%以上10%以下、である、請求項1または2に記載の光学ガラス。
【請求項4】
質量%で、
Al2O3含有率:0%以上5%以下、
TiO2含有率:0%以上5%以下、
ZnO含有率:0%以上10%以下、
ZrO2含有率:0%以上5%以下、
WO3含有率:0%以上5%以下、である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項5】
質量%で、
Li2O、Na2O及びK2Oの総含有率(ΣA2O:A=Li、Na、Kを示す):5%以上15%以下、である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項6】
質量%で、
Li2O、Na2O及びK2Oの総含有率(ΣA2O:A=Li、Na、Kを示す)に対するSiO2+Nb2O5の総含有率の比(SiO2+Nb2O5)/ΣA2O(式中、A=Li、Na、Kを示す):5.8以上9.4以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項7】
質量%で、
SiO2の含有率に対するTiO2、ZnO、ZrO2、Nb2O5及びWO3の総含有率に対する比(TiO2+ZnO+ZrO2+Nb2O5+WO3)/SiO2:1.5以上2.9以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項8】
質量%で、
Li2O、Na2O及びK2Oの総含有率(ΣA2O:A=Li、Na、Kを示す)に対するMgO、CaO、SrO及びBaOの総含有率の比ΣRO(式中、R=Mg,Ca、Sr、Baを示す)/ΣA2O(式中、A=Li、Na、Kを示す)0.30以上1.76以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項9】
d線に対する屈折率(nd)が、1.75以上1.95以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項10】
アッベ数(νd)が、15以上35以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項11】
部分分散比(Pg,F)が、0.58以上0.63以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項12】
下記式(1):
(MTl+100-MTl)/MA×100≦0.1・・・(1)
(式中、MAは前記光学ガラスの重量、MTl+100は、液相温度+100℃における前記光学ガラスの重量減少量、MTlは、液相温度における前記光学ガラスの重量減少量)を満たす、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の光学ガラスを用いた光学素子。
【請求項14】
請求項13に記載の光学素子を含む、光学系。
【請求項15】
請求項14に記載の光学系を含む、顕微鏡用対物レンズ。
【請求項16】
請求項14に記載の光学系を含む、カメラ用交換レンズ。
【請求項17】
請求項14に記載の光学系を含む、光学装置。
【請求項18】
第一のレンズ要素と第二のレンズ要素とを有し、
前記第一のレンズ要素と前記第二のレンズ要素の少なくとも1つは、請求項1~12のいずれか一項に記載の光学ガラスである、接合レンズ。
【請求項19】
請求項18に記載の接合レンズを含む、光学系。
【請求項20】
請求項19に記載の光学系を含む、顕微鏡用対物レンズ。
【請求項21】
請求項19に記載の光学系を含む、カメラ用交換レンズ。
【請求項22】
請求項19に記載の光学系を含む、光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、光学素子、カメラ用交換レンズ、顕微鏡用対物レンズ、接合レンズ、光学系、及び光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な用途のため、高い屈折率、低い部分分散比を有する光学ガラスが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の一つの態様は、質量%で、SiO2含有率:15%以上30%以下、Na2O含有率:0%よりも大きく10%以下、K2O含有率:0%よりも大きく15%以下、Nb2O5含有率:35%以上65%以下、MgO、CaO、SrO及びBaOの総含有率(ΣRO:式中、R=Mg,Ca、Sr、Baを示す):0%よりも大きく20%以下であり、B2O3を実質的に含有しない、光学ガラス。
【0005】
本発明の他の態様は、上述の光学ガラスを用いた光学素子である。
【0006】
本発明の他の態様は、上述の光学素子を含む、光学系である。
【0007】
本発明の他の態様は、上述の光学系を含む、顕微鏡用対物レンズである。
【0008】
本発明の他の態様は、上述の光学系を含む、カメラ用交換レンズである。
【0009】
本発明の他の態様は、上述の光学系を含む、光学装置である。
【0010】
本発明に係る他の態様は、第一のレンズ要素と第二のレンズ要素とを有し、第一のレンズ要素と第二のレンズ要素の少なくとも1つは、上述の光学ガラスである、接合レンズである。
【0011】
本発明に係る他の態様は、上述の接合レンズを含む、光学系である。
【0012】
本発明に係る他の態様は、上述の接合レンズを含む光学系を含む、顕微鏡用対物レンズである。
【0013】
本発明に係る他の態様は、上述の接合レンズを含む光学系を含む、カメラ用交換レンズである。
【0014】
本発明に係る他の態様は、上述の接合レンズを含む光学系を含む、光学装置である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る光学装置を撮像装置とした一例を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る光学装置を撮像装置とした他の例を示す概略図であり、撮像装置の正面図である。
【
図3】本実施形態に係る光学装置を撮像装置とした他の例を示す概略図であり、撮像装置の背面図である。
【
図4】本実施形態に係る多光子顕微鏡の構成の一例の示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る接合レンズの一例を示す概略図である。
【
図6】本実施形態に係る光学ガラスの各実施例のn
dとν
dをプロットしたグラフである。
【
図7】本実施形態に係る光学ガラスの各実施例のP
g,Fとν
dをプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0017】
なお、Q含有率が「0~N%」という表現は、Q成分を含まない場合及び、Q成分が0%を超えてN%以下である場合を含む表現である。
【0018】
また、「Q成分を含まない」という表現は、このQ成分を実質的に含まないことを意味し、この構成成分の含有率が不純物レベル程度以下であることを指す。不純物レベル程度以下とは、例えば、0.01%未満であることを意味する。
【0019】
また、「耐失透安定性」という表現は、ガラスの失透に対する耐性のことを意味する。ここで「失透」とは、ガラスをガラス転移温度以上に昇温した際、あるいは融液状態から液相温度以下に降温した際に生じる結晶化又は分相等により、ガラスの透明性が失われる現象のことを意味する。
【0020】
以下、本実施形態に係る光学ガラスの組成、物性、及びそれらの用途について説明する。
【0021】
<光学ガラスの組成>
本実施形態に係る光学ガラスは、質量%で、SiO2含有率:15%以上30%以下、Na2O含有率:0%よりも大きく10%以下、K2O含有率:0%よりも大きく15%以下、Nb2O5含有率:35%以上65%以下、MgO、CaO、SrO及びBaOの総含有率(ΣRO:式中、R=Mg,Ca、Sr、Baを示す):0%よりも大きく20%以下であり、B2O3を実質的に含有しない、光学ガラスである。
【0022】
SiO2は、ガラス骨格を形成し、化学的耐久性を向上させる成分であるが、その含有率が高すぎると、ガラスを高屈折率とすることが難しくなってしまう。かかる観点から、SiO2の含有率は、15%以上30%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは17%であり、より好ましくは19%であり、更に好ましくは20%である。また、この含有率の上限は、好ましく29.5%であり、より好ましくは29.0%であり、更に好ましくは28.5%である。
【0023】
Na2Oは、原料の熔融性を高め、Pg,Fを低下させる成分である。この含有率が高すぎると、高屈折率とすることが困難となり、耐失透安定性も低下してしまう。かかる観点から、Na2Oの含有率は、0%より大きく10%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは0.5%であり、より好ましくは1.0%であり、更に好ましくは1.5%である。また、この含有率の上限は、好ましくは9%であり、より好ましくは8%であり、更に好ましくは7%である。
【0024】
K2Oは、ガラスの屈折率を高め、ガラス原料の熔融性を向上させる成分であるが、その含有率が高すぎるとPg,Fを大きく増加させてしまう。かかる観点から、K2Oの含有率は、0%より大きく15%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは1%であり、より好ましくは2%であり、更に好ましく3%である。また、この含有率の上限は、好ましくは14%であり、好ましくは13%であり、更に好ましくは12%である。
【0025】
Nb2O5は、屈折率を高め、ガラスを高分散化させる成分であるが、この含有率が低すぎると、高屈折率、高分散とすることが困難となってしまう。また、この含有率が高すぎると、耐失透安定性が低下してしまう。かかる観点から、Nb2O5の含有率は、35%以上65%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは37%であり、より好ましくは39%であり、更に好ましくは40%である。また、この含有率の上限は、好ましくは64%であり、より好ましくは63%であり、更に好ましくは62%である。
【0026】
B2O3は、ガラス骨格を形成する成分であるが、高温熔解下では揮発してしまう。かかる観点から、B2O3を実質的に含有しないことが好ましい。
【0027】
本実施形態に係る光学ガラスは、任意成分として、MgO、CaO、SrO、BaO、Li2O、Al2O3、TiO2、ZnO、ZrO2、WO3、及びSb2O3からなる群より選ばれる1種以上を更に含有することが好ましい。
【0028】
MgOは、Pg,Fを増大させずにガラスの耐失透安定性を高める成分である。MgOを含まない場合、ガラスの耐失透安定性が低下し、高屈折率とすることが困難になってしまう。また、この含有率が高すぎると、ガラスを高分散とすることが困難になってしまう。かかる観点から、MgOの含有率は、0%以上10%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは0.5%であり、より好ましくは1.0%であり、更に好ましくは1.5%である。また、この含有率の上限は、好ましくは9%であり、より好ましくは8%であり、更に好ましくは7%である。
【0029】
CaOは、ガラスの恒数調整に有効な成分である。かかる観点から、CaOの含有率は、0%以上10%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは0.5%であり、より好ましくは1.0%であり、更に好ましくは1.5%である。また、この含有率の上限は、好ましくは9%であり、より好ましくは8%であり、更に好ましくは7%である。
【0030】
SrOは、ガラスの恒数調整に有効な成分である。かかる観点から、SrOの含有率は、0%以上5%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは0.5%であり、より好ましくは1.0%であり、更に好ましくは1.5%である。また、この含有率の上限は、好ましくは4.5%であり、より好ましくは4.0%であり、更に好ましくは3.5%である。
【0031】
BaOは、ガラスの屈折率を高める成分であるが、その含有率が高すぎるとPg,Fを大きく増加させてしまう。かかる観点から、BaOの含有率は、0%以上15%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは1%であり、より好ましくは2%であり、更に好ましくは3%である。また、この含有率の上限は、好ましくは14%であり、より好ましくは13%であり、更に好ましくは12%である。
【0032】
耐失透安定性の観点から、MgO、CaO、SrO及びBaOの総含有率(ΣRO:式中、R=Mg,Ca、Sr、Baを示す)は、0%より大きく20%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは1%であり、より好ましくは2%であり、更に好ましくは3%である。また、この含有率の上限は、好ましくは19%であり、より好ましくは18%であり、更に好ましくは17%である。
【0033】
Li2Oは、ガラスの屈折率を高め、ガラス原料の熔融性を向上させる成分であるが、その含有率が高すぎると、耐失透安定性が低下してしまう。かかる観点から、Li2Oの含有率は、0%以上10%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは0.5%であり、より好ましくは1.0%であり、更に好ましくは1.5%である。また、この含有率の上限は、好ましくは9%であり、より好ましくは8%であり、更に好ましくは7%である。
【0034】
Al2O3は、ガラスを高分散化し、化学的耐久性を向上させる成分であるが、その含有率が高すぎるとPg,Fを大きく増加させてしまう。かかる観点から、Al2O3の含有率は、0%以上5%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは0.2%であり、より好ましくは0.4%であり、更に好ましくは0.6%である。また、この含有率の上限は、好ましくは4%であり、より好ましくは3%であり、更に好ましくは2%である。
【0035】
TiO2は、ガラスの屈折率を高め、高分散化させる成分であるが、その含有率が高すぎるとPg,Fを大きく増加させ、透過率も悪化させてしまう。かかる観点から、TiO2の含有率は、0%以上5%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは0.2%であり、より好ましくは0.4%であり、更に好ましくは0.6%である。また、この含有率の上限は、好ましくは4%であり、より好ましくは3%であり、更に好ましくは2%である。
【0036】
ZnOは、ガラスの屈折率を高め、耐失透安定性を一層向上させる成分である。かかる観点から、ZnOの含有率は、0%以上10%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは0.5%であり、より好ましくは1.0%であり、更に好ましくは1.5%である。また、この含有率の上限は、好ましくは9%であり、より好ましくは8%であり、更に好ましくは7%である。
【0037】
ZrO2は、ガラスの屈折率を高め、高分散とする成分であるとともに、Pg,Fを低下させる効果を有する。この含有率が高すぎると、ガラス原料の熔融性や耐失透安定性を低下させてしまう。かかる観点から、ZrO2の含有率は、0%以上5%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは0.2%であり、より好ましくは0.4%であり、更に好ましくは0.6%である。また、この含有率の上限は、好ましくは4%であり、より好ましくは3%であり、更に好ましくは2%である。
【0038】
WO3は、ガラスの屈折率を高め、高分散化させるとともに、耐失透安定性を一層向上させる成分である。かかる観点から、WO3の含有率は、0%以上5%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは0.2%であり、より好ましくは0.4%であり、更に好ましくは0.6%である。また、この含有率の上限は、好ましくは4%であり、より好ましくは3%であり、更に好ましくは2%である。
【0039】
Sb2O3は、ガラスを清澄する脱泡剤として機能する成分であるが、その含有率が高すぎると透過率を低下させてしまう。かかる観点から、Sb2O3の含有率は、0%以上1%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは0.01%であり、より好ましくは0.02%であり、更に好ましくは0.03%である。また、この含有率の上限は、好ましくは0.80%であり、より好ましくは0.60%であり、更に好ましくは0.40%である。
【0040】
ガラスの熔融性を調整する観点から、Li2O、Na2O及びK2Oの総含有率(ΣA2O:式中、A=Li、Na、Kを示す)は、5%以上15%以下である。そして、この含有率の下限は、好ましくは6%であり、より好ましくは7%であり、更に好ましくは8%である。また、この含有率の上限は、好ましくは14%であり、より好ましくは13%であり、更に好ましくは12%である。
【0041】
熔融性の調整及び耐失透安定性の観点から、Li2O、Na2O及びK2Oの総含有率(ΣA2O:式中、A=Li、Na、Kを示す)に対するSiO2及びNb2O5の総含有率(SiO2+Nb2O5)の比(SiO2+Nb2O5)/ΣA2Oは、5.8以上9.4以下である。そして、この比の上限は、好ましくは9.3であり、より好ましくは9.2であり、更に好ましくは9.1である。また、この比の下限は、好ましくは5.9であり、より好ましくは6.0であり、更に好ましくは6.1である。
【0042】
耐失透安定性の観点から、SiO2の含有率に対するTiO2、ZnO、ZrO2、Nb2O5及びWO3の総含有率(TiO2+ZnO+ZrO2+Nb2O5+WO3)の比(TiO2+ZnO+ZrO2+Nb2O5+WO3)/SiO2は、1.5以上2.9以下である。そして、この比の上限は、好ましくは2.8であり、より好ましくは2.7であり、更に好ましくは2.6である。また、この比の下限は、好ましくは1.6であり、より好ましくは1.7であり、更に好ましくは1.8である。
【0043】
熔融性の調整及び耐失透安定性の観点から、Li2O、Na2O及びK2Oの総含有率(ΣA2O:式中、A=Li、Na、Kを示す)に対するMgO、CaO、SrO及びBaOの総含有率(ΣRO:式中、R=Mg、Ca、Sr、Baを示す)の比ΣRO/ΣA2Oは、0.30以上1.76以下である。そして、この比の上限は、好ましくは1.75であり、より好ましくは1.74であり、更に好ましくは1.73である。また、この比の下限は、好ましくは0.31であり、より好ましくは0.32であり、更に好ましくは0.33である。
【0044】
その他必要に応じて清澄、着色、消色、光学恒数の調整等の目的で、上述した成分以外のもので、公知の清澄剤や着色剤、脱泡剤、フッ素化合物、リン酸等の成分をガラス組成に適量添加することができる。また、上述した成分に限らず、本実施形態の効果が得られる範囲でその他の成分を添加することもできる。
【0045】
上述した各成分は、不純物の含有率が低い高純度品を原料として使用することが好ましい。例えば、SiO2原料、Nb2O5原料のうち1又は2以上について高純度品を使用することが好ましい。高純度品とは、当該成分を99.85質量%以上含むものである。高純度品の使用によって、不純物量が少なくなる結果、例えば、波長400nm以下の光の内部透過率をより高くできる傾向がある。
【0046】
<光学ガラスの物性>
レンズの薄型化の観点からは、本実施形態に係る光学ガラスは、高い屈折率を有している(屈折率(nd)が大きい)ことが望ましい。しかしながら、一般的に、屈折率(nd)が高いほど透過率が低下する傾向にある。かかる観点から、本実施形態に係る光学ガラスにおけるd線に対する屈折率(nd)は、1.75以上1.95以下である。そして、屈折率(nd)の下限は、好ましくは1.76であり、より好ましくは1.77であり、更に好ましくは1.78である。また、屈折率(nd)の上限は、好ましくは1.93であり、より好ましくは1.91であり、更に好ましくは1.90である。
【0047】
光学レンズ等の収差補正の観点からは、本実施形態に係る光学ガラスは、小さなアッベ数(νd)を有することが望ましい。かかる観点から、本実施形態に係る光学ガラスにおけるアッベ数(νd)は、15以上35以下である。そして、アッベ数(νd)の下限は、好ましくは17であり、より好ましくは19であり、更に好ましくは21である。アッベ数(νd)の上限は、好ましくは33であり、より好ましくは31であり、更に好ましくは29.7である。
【0048】
レンズの収差補正の観点からは、本実施形態に係る光学ガラスは、小さな部分分散比(Pg,F)を有することが望ましいため、部分分散比の値は0.63以下とすることが好ましい。かかる観点から、本実施形態に係る光学ガラスの部分分散比(Pg,F)は、0.58~0.63である。そして、部分分散比(Pg,F)の下限は、好ましくは0.585であり、より好ましくは0.590であり、更に好ましくは0.595である。また、部分分散比(Pg,F)の上限は、好ましくは0.628であり、より好ましくは0.626であり、更に好ましくは0.624である。
【0049】
本実施形態に係る光学ガラスは、屈折率(nd)が、1.75以上1.95以下であり、アッベ数(νd)が、15以上35以下であり、部分分散比(Pg,F)が、0.58以上0.63以下である、という各物性を併せ持つことが好ましい。
【0050】
上述したように、本実施形態に係る光学ガラスは、高屈折率(屈折率(nd)が大きいこと)、高分散(アッベ数(νd)が小さいこと)でありながら、部分分散比(Pg,F)を小さくすることができる。このような光学ガラスを用いると、例えば、光学レンズ等の光学素子を薄型化することができ、色収差や他の収差が良好に補正された光学系を設計することができる。
【0051】
本実施形態に係る光学ガラスは、加熱軟化工程時における成型性の確保等の観点から、ガラス転移温度(Tg)は、555~655℃である。そして、ガラス転移温度(Tg)の下限は、好ましくは560℃であり、より好ましくは565℃であり、更に好ましくは570℃である。また、ガラス転移温度(Tg)の上限は、好ましくは650℃であり、より好ましくは645℃であり、更に好ましくは640℃である。加熱軟化工程とは、光学ガラスを加熱して成形する(いわゆるリヒートプレス)際に、光学ガラスを加熱する工程のことを指す。
【0052】
本実施形態に係る光学ガラスは、加熱熔融工程における重量減少率を小さくすることが望ましい。重量減少率(△M)とは、以下の式(2):
△M=(MTl+100-MTl)/MA×100・・・(2)
で表され、式中、MAは光学ガラスの重量、MTl+100は、液相温度+100℃における光学ガラスの重量減少量、MTlは、液相温度における光学ガラスの重量減少量を表す。例えば、仕込の試料重量(MA)が30mgである場合、液相温度+100℃における試料重量が25mgであれば重量減少量MTl+100は5mgであり、液相温度における試料重量が27mgであれば重量減少量MTlは3mgであるので、重量減少率△Mは、(5mg-3mg)/30mg×100=6.67%となる。また、重量減少率△Mの上限は、好ましくは0.1%、より好ましくは0.09%、さらに好ましくは、0.08%である。なお、加熱熔融工程とは、原料調合を行い、一度熔解させてガラスフリットと呼ばれる粒状のガラスを生成した後、板状あるいはゴブ状のガラスを得るために、ガラスフリットを再熔解させる工程のことを指す。加熱熔融工程で熔解されたガラスフリットの融液は、板状あるいはゴブ状に成形された状態で冷却されて光学ガラスとなる。
【0053】
本実施形態に係る光学ガラスは、加熱熔融工程における重量減少率を小さくすることで、製造条件変動による光学性能の安定性を高めることができ、また製造過程における設備のダメージを少なくすることができる。
【0054】
本実施形態に係る光学ガラスの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、製造条件は、適宜好適な条件を選択することができる。例えば、上述した各原料に対応する酸化物、水酸化物、リン酸化合物(リン酸塩、正リン酸等)、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、及びフッ化物等を目標組成となるように調合し、好ましくは1100~1500℃、より好ましくは1340~1400℃にて熔融し、攪拌することで均一化し、泡切れを行った後、金型に流し成型する製造方法等を採用できる。このようにして得られた光学ガラスは、必要に応じてリヒートプレス等を行って所望の形状に加工し、研磨等を施すことで、所望の光学素子とすることができる。
【0055】
<光学ガラスの用途>
本実施形態に係る光学ガラスは、例えば、光学機器が備える光学素子として好適に用いることができる。このような光学素子には、ミラー、レンズ、プリズム、フィルタ等が含まれる。また上記光学素子が用いられる光学系としては、例えば、対物レンズ、集光レンズ、結像レンズ、カメラ用交換レンズ等が挙げられる。そして、これらの光学系は、レンズ交換式カメラ、レンズ非交換式カメラ等の撮像装置、蛍光顕微鏡や多光子顕微鏡等の顕微鏡装置の各種光学装置に好適に使用できる。かかる光学装置は、上述した撮像装置や顕微鏡に限られず、望遠鏡、双眼鏡、レーザー距離計、プロジェクタ等も含まれるが、これらに限られない。以下に、これらの一例を説明する。
【0056】
撮像装置
図1は、本実施形態に係る光学装置を撮像装置とした一例を示す斜視図である。撮像装置1はいわゆるデジタル一眼レフカメラ(レンズ交換式カメラ)であり、撮影レンズ103(光学系)は本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。カメラボディ101のレンズマウント(不図示)にレンズ鏡筒102が着脱自在に取り付けられる。そして、該レンズ鏡筒102のレンズ103を通した光が、カメラボディ101の背面側に配置されたマルチチップモジュール106のセンサチップ(固体撮像素子)104上に結像される。このセンサチップ104は、いわゆるCMOSイメージセンサー等のベアチップであり、マルチチップモジュール106は、例えばセンサチップ104がガラス基板105上にベアチップ実装されたCOG(Chip On Glass)タイプのモジュールである。
【0057】
図2及び
図3は、本実施形態に係る光学装置を撮像装置とした他の例を示す概略図である。
図2は、撮像装置CAMの正面図を示し、
図3は、撮像装置CAMの背面図を示す。撮像装置CAMはいわゆるデジタルスチルカメラ(レンズ非交換式カメラ)であり、撮影レンズWL(光学系)は本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。
【0058】
撮像装置CAMは、電源ボタン(不図示)を押すと、撮影レンズWLのシャッタ(不図示)が開放されて、撮影レンズWLで被写体(物体)からの光が集光され、像面に配置された撮像素子に結像される。撮像素子に結像された被写体像は、撮像装置CAMの背後に配置された液晶モニターMに表示される。撮影者は、液晶モニターMを見ながら被写体像の構図を決めた後、レリーズボタンB1を押し下げて被写体像を撮像素子で撮像し、メモリー(不図示)に記録保存する。
【0059】
撮像装置CAMには、被写体が暗い場合に補助光を発光する補助光発光部EF、撮像装置CAMの種々の条件設定等に使用するファンクションボタンB2等が配置されている。
【0060】
このようなデジタルカメラ等に用いられる光学系には、より高い解像度、低い色収差、小型化が求められる。これらを実現するには光学系に分散特性が互いに異なるガラスを用いることが有効である。特に、低分散でありながらより高い部分分散比(Pg,F)を有するガラスの需要は高い。このような観点から、本実施形態に係る光学ガラスは、かかる光学機器の部材として好適である。なお、本実施形態において適用可能な光学機器としては、上述した撮像装置に限らず、例えばプロジェクタ等も挙げられる。光学素子についても、レンズに限らず、例えばプリズム等も挙げられる。
【0061】
顕微鏡
図4は、本実施形態に係る多光子顕微鏡2の構成の例を示すブロック図である。多光子顕微鏡2は、対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210を備える。対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210のうち少なくとも1つは、本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。以下、多光子顕微鏡2の光学系を中心に説明する。
【0062】
パルスレーザ装置201は、例えば、近赤外波長(約1000nm)であって、パルス幅がフェムト秒単位の(例えば、100フェムト秒の)超短パルス光を射出する。パルスレーザ装置201から射出された直後の超短パルス光は、一般に所定の方向に偏光された直線偏光となっている。
【0063】
パルス分割装置202は、超短パルス光を分割し、超短パルス光の繰り返し周波数を高くして射出する。
【0064】
ビーム調整部203は、パルス分割装置202から入射される超短パルス光のビーム径を、対物レンズ206の瞳径に合わせて調整する機能、試料Sから発せられる光の波長と超短パルス光の波長との軸上の色収差(ピント差)を補正するために超短パルス光の集光及び発散角度を調整する機能、超短パルス光のパルス幅が光学系を通過する間に群速度分散により広がってしまうのを補正するために、逆の群速度分散を超短パルス光に与えるプリチャープ機能(群速度分散補償機能)等を有する。
【0065】
パルスレーザ装置201から射出された超短パルス光は、パルス分割装置202によりその繰り返し周波数が大きくされ、ビーム調整部203により上記した調整が行われる。そして、ビーム調整部203から射出された超短パルス光は、ダイクロイックミラー204によりダイクロイックミラーの方向に反射され、ダイクロイックミラー205を通過し、対物レンズ206により集光されて試料Sに照射される。このとき、走査手段(不図示)を用いることにより、超短パルス光を試料Sの観察面上に走査させてもよい。
【0066】
例えば、試料Sを蛍光観察する場合、試料Sの超短パルス光の被照射領域及びその近傍では、試料Sが染色されている蛍光色素が多光子励起され、赤外波長である超短パルス光より波長が短い蛍光(以下、「観察光」という。)が発せられる。
【0067】
試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた観察光は、対物レンズ206によりコリメートされ、その波長に応じて、ダイクロイックミラー205により反射されたり、あるいは、ダイクロイックミラー205を透過する。
【0068】
ダイクロイックミラー205により反射された観察光は、蛍光検出部207に入射する。蛍光検出部207は、例えば、バリアフィルタ、PMT(photo multiplier tube:光電子増倍管)等により構成され、ダイクロイックミラー205により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部207は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0069】
なお、ダイクロイックミラー205を光路から外すことにより、試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた全ての観察光を蛍光検出部211で検出するようにしてもよい。その場合、観察光は、走査手段(不図示)によりデスキャンされ、ダイクロイックミラー204を透過し、集光レンズ208により集光され、対物レンズ206の焦点位置とほぼ共役な位置に設けられているピンホール209を通過し、結像レンズ210を透過して、蛍光検出部211に入射する。
【0070】
蛍光検出部211は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、結像レンズ210により蛍光検出部211の受光面において結像した観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部211は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0071】
また、試料Sから対物レンズ206と逆の方向に発せられた観察光は、ダイクロイックミラー212により反射され、蛍光検出部213に入射する。蛍光検出部113は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、ダイクロイックミラー212により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部213は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0072】
蛍光検出部207、211、213からそれぞれ出力された電気信号は、例えば、コンピュータ(不図示)に入力され、そのコンピュータは、入力された電気信号に基づいて、観察画像を生成し、生成した観察画像を表示したり、観察画像のデータを記憶したりすることができる。
【0073】
接合レンズ
図5は、本実施形態に係る接合レンズの一例を示す概略図である。接合レンズ3は、第一のレンズ要素301と第二のレンズ要素302とを有する複合レンズである。第一のレンズ要素と第二のレンズ要素の少なくとも1つは、本実施形態に係る光学ガラスを用いる。第一のレンズ要素と第二のレンズ要素は、接合部材303を介して接合されている。接合部材303としては、公知の接着剤等を用いることができる。なお、「レンズ要素」とは、単レンズ又は接合レンズを構成する各々のレンズのことを意味する。
【0074】
本実施形態に係る接合レンズは、色収差補正の観点で有用であり、上述した光学素子や光学系や光学装置等に好適に使用できる。そして、接合レンズを含む光学系は、カメラ用交換レンズや光学装置等にとりわけ好適に使用できる。なお、上述の態様では2つのレンズ要素を用いた接合レンズについて説明したが、これに限られず、3つ以上のレンズ要素を用いた接合レンズとしてもよい。3つ以上のレンズ要素を用いた接合レンズとする場合、3つ以上のレンズ要素のうち少なくとも1つが本実施形態に係る光学ガラスを用いて形成されていればよい。
【実施例0075】
本実施形態に係る光学ガラスの実施例及び比較例について説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
各実施例及び各比較例に係る光学ガラスの各サンプルは、以下の手順で作製した。まず、表1~表6に記載の化学組成(重量%)となるように酸化物、炭酸塩、及び硝酸塩等のガラス原料を、合計の重量が100gとなるよう秤量した。次に、秤量した原料を混合して坩堝に投入し1200~1400℃の温度で熔融させて攪拌均質化した。清澄を行った後、金型等に鋳込んで徐冷し、成型することで各サンプルを得た。
【0077】
図6は、本実施形態に係る光学ガラスの各実施例のn
dとν
dをプロットしたグラフであり、
図7は、本実施形態に係る光学ガラスの各実施例のP
g,Fとν
dをプロットしたグラフである。
【0078】
屈折率(nd)とアッベ数(νd)
本実施形態に係る光学ガラスの各サンプルの屈折率(nd)及びアッベ数(νd)は、屈折率測定器(株式会社島津デバイス製造製:KPR-3000)を用いて測定及び算出した。また、屈折率は、Vブロックで測定した。ndは、587.562nmの光に対するガラスの屈折率を示す。νdは、以下の式(3)より求めた。nC、nF、はそれぞれ波長656.273nm、486.133nmの光に対するガラスの屈折率を示す。屈折率の値は、小数点以下第5位までとした。
νd=(nd-1)/(nF-nC)・・・(3)
【0079】
部分分散比(Pg,F)
本実施形態に係る光学ガラスの各サンプルの部分分散比(Pg,F)は、主分散(nF-nC)に対する部分分散(ng-nF)の比を示し、以下の式(4)より求めた。ngは、波長435.835nmの光に対するガラスの屈折率を示す。部分分散比(Pg,F)の値は、小数点以下第4位までとした。
Pg,F=(ng-nF)/(nF-nC)・・・(4)
【0080】
ガラスの転移温度(Tg)
本実施例1~17の各サンプルのガラス転移温度(Tg)は、JOGIS-08:2019に従い直径5mm長さ40mmの円柱状に加工したサンプルについて20gfの力を加えながら硝子熱膨張測定用電気炉で4℃/分の速度で昇温し試料寸法の変化を測定し、線膨張率の変化からガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0081】
液相温度(Tl)
各サンプルの液相温度(Tl)は、ガラス約0.1gを穴の空いた白金板に乗せ、10℃刻みの温度勾配がついた試験炉内で18分間保持した後、炉から出して急冷し、倍率100倍の顕微鏡で失透の有無を観察した。なお液相温度の値は、高温側から見て失透が生じない最低温度とした。
【0082】
重量減少率
実施例15~17、比較例1~3の各サンプルについて、以下の手順で重量減少率を算出した。
【0083】
酸化物換算において100gとなるガラス原料を調合し、1340℃の温度で120分間熔解し鋳型にキャスト後、徐冷したガラスを準備し、同じガラス片から熱重量(TG)測定用試料と、液相温度測定用試料を採取した。熱重量(TG)測定用試料はガラスを乳鉢を用いて粉砕したものとし、試料重量は30mg(=MA)とした。また、液相温度測定用試料は乳鉢等で粒状に粉砕し1粒の重さが約0.1gになるよう調整したものを用いた。
【0084】
本実施形態に係る光学ガラスの各サンプルの熱重量(TG)は、示差熱・熱重量同時測定装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製:TG―DTA2000SA)を用いた。測定する温度域は液相+100℃を十分に超える温度域を測定範囲とし毎分20℃の昇温速度とした。試料の液相温度については前述の方法で測定した。本実施例15~17と比較例1~3の熱重量(TG)測定温度域は20℃から1350℃とした。また、測定装置のリファレンス側には白金製のセルを用いた。また、光学ガラスの各サンプルの重量は20℃/分の速度で昇温しながら連続的に重量が記録される。そのデータから該当温度部分を抜粋した重量と加熱前の試料重量との差を重量減少量とした。
【0085】
各光学ガラスの液相温度における重量減少量をMTl、各光学ガラスの液相温度+100℃における重量減少量をMTl+100、光学ガラスの重量をMA、重量減少率(%)を△Mとして以下の式(2)に代入して算出した。
△M=(MTl+100-MTl)/MA×100・・・(2)
MA:光学ガラスの重量
MTl+100:液相温度+100℃における光学ガラスの重量減少量
MTl:液相温度における光学ガラスの重量減少量
【0086】
実施例、及び比較例の光学ガラスについて、各成分の酸化物基準の質量%による組成、及び各物性の評価結果を表1~6に示す。
【0087】
特に断りがない限り、各成分の含有率は質量%基準である。式中の「ΣA2O」は、Li2OとNa2OとK2Oの総含有率;(A=Li、Na、K)を示す。また、式中の「ΣRO」は、MgOとCaOとSrOとBaOの総含有率;(R=Mg、Ca、Sr、Ba)を示す。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
表1~6に見られるとおり、本実施形態に係る光学ガラスは、高い屈折率(nd)、小さいアッベ数(νd)、小さいPg,F値を有することが確認された。また、実施例15~17では、重量減少率が小さいことが確認された。
1・・・撮像装置、101・・・カメラボディ、102・・・レンズ鏡筒、103・・・レンズ、104・・・センサチップ、105・・・ガラス基板、106・・・マルチチップモジュール、CAM・・・撮像装置(レンズ非交換式カメラ)、WL・・・撮影レンズ、M・・・液晶モニター、EF・・・補助光発光部、B1・・・レリーズボタン、B2・・・ファンクションボタン、2・・・多光子顕微鏡、201・・・パルスレーザ装置、202・・・パルス分割装置、203・・・ビーム調整部、204,205,212・・・ダイクロイックミラー、206・・・対物レンズ、207,211,213・・・蛍光検出部、208・・・集光レンズ、209・・・ピンホール、210・・・結像レンズ、S・・・試料、3・・・接合レンズ、301・・・第一のレンズ要素、302・・・第二のレンズ要素、303・・・接合部材