(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092709
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】管体接続具
(51)【国際特許分類】
F16L 5/00 20060101AFI20240701BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20240701BHJP
H02G 9/06 20060101ALI20240701BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
F16L5/00 A
F16L5/02 J
H02G9/06
H02G1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208830
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】522502347
【氏名又は名称】共栄ハンドホール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】弁理士法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 豊広
【テーマコード(参考)】
5G352
5G369
【Fターム(参考)】
5G352CG01
5G369AA05
5G369BA04
5G369DC09
5G369DD02
(57)【要約】
【課題】地中埋設箱の壁部に貫通形成された接続孔に管体を接続する作業の施工性を向上する。
【解決手段】接続孔13aに対して壁部13の内面13bから差し込まれて後端のフランジ部62を引っかけて保持される筒状の受け継手16と、受け継手16における壁部13の外面13cから突き出た部分の外周面に螺合されてフランジ部62との間で壁部を挟み付ける固定リング17と、管体12の端末を保持し受け継手16の先端側部分の内部に差し込まれる差し込み継手18を備える。受け継手16の内周面に、内側に張り出して差し込み継手18の差し込みを許容する一方で抜け止めをする抜け止め爪65を形成し、差し込み継手18の外周面に、抜け止め爪65に係止する係止爪84を形成するとともに、係止爪84の後方に、差し込みにより圧縮される弾性変形可能な環状のパッキン85を装着した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中埋設箱の壁部に貫通形成された接続孔に管体を接続する管体接続具であって、
接続孔に対して壁部の内面から差し込まれて後端のフランジ部を引っかけて保持される筒状の受け継手と、
前記受け継手における壁部の外面から突き出た部分の外周面に螺合されてフランジ部との間で壁部を挟み付ける固定リングと、
管体の端末を保持し前記受け継手の先端側部分の内部に差し込まれる差し込み継手を備え、
前記受け継手の内周面に、内側に張り出して前記差し込み継手の差し込みを許容する一方で抜け止めをする抜け止め爪が形成され、
前記差し込み継手の外周面に、前記抜け止め爪に係止する係止爪が形成されるとともに、前記係止爪の後方に、差し込みにより圧縮される弾性変形可能な環状のパッキンが装着された
管体接続具。
【請求項2】
前記パッキンの外周面に、先端側において先細りになる先細り面と、前記先細り面の後端から軸方向と平行に延びるストレート面が形成された
請求項1に記載の管体接続具。
【請求項3】
前記先細り面と前記ストレート面の内周側に、これらを変形させる空間部が形成された
請求項2に記載の管体接続具。
【請求項4】
前記差し込み継手の先端部であって前記係止爪を有する部分に、周方向で分割する割溝が形成された
請求項1または請求項2に記載の管体接続具。
【請求項5】
前記受け継手における前記抜け止め爪の形成位置が、壁部に対する固定時に前記固定リングが螺合する部位の内周面である
請求項1または請求項2に記載の管体接続具。
【請求項6】
前記差し込み継手における前記パッキンの装着位置が、壁部に対する固定時に前記受け継手における前記固定リングが螺合する部位の内周面に対応する部位である
請求項5に記載の管体接続具。
【請求項7】
前記受け継手における前記抜け止め爪の形成位置が前記受け継手の先端部である
請求項5に記載の管体接続具。
【請求項8】
前記差し込み継手に、先端側の小径部と、後端側の大径部と、これらの間で前記受け継手の先端に対向する段差面が形成され、
前記小径部に前記係止爪が形成されるとともに前記パッキンが装着され、
前記大径部内に管体の端末を保持する保持部が形成され、
前記大径部の外径が前記受け継手の外径と同等である
請求項1または請求項2に記載の管体接続具。
【請求項9】
地中埋設箱の壁部に貫通形成された接続孔に管体を接続する管体接続構造であって、
接続孔に固定されて壁部の外面から突き出した筒状の受け継手の先端側部分の内部に対して、管体の端末を保持した差し込み継手を差し込んで、前記差し込み継手の外周面に一体形成された係止爪を前記受け継手の内周面に一体形成された抜け止め爪に係止して抜け止めするとともに、
前記差し込み継手の前記係止爪の後方に装着した弾性変形する環状のパッキンで抜け止めと止水をして接続状態を得る
管体接続構造。
【請求項10】
前記パッキンの外周面に、先端側において先細りになる先細り面と、前記先細り面の後端から軸方向と平行に延びるストレート面が形成されるとともに、
前記先細り面と前記ストレート面の内周側に、これらを変形させる空間部が形成され、
前記差し込み継手の先端部であって前記係止爪を有する部分に、周方向で分割する割溝が形成された
請求項9に記載の管体接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、螺旋波付き管のような管体をハンドホールなどの地中埋設箱に接続するための管体接続具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
管体接続具として、下記特許文献1、2に開示されたものがある。この管体接続具は、地中埋設箱の壁部に穿設された貫通孔に管体を接続するために、管接続具本体と、止水部材と、挟圧部材と、接続体と、係合体を備えている。
【0003】
管接続具本体は、中空円筒形状の筒状部の一端にフランジ部を有する構成である。筒状部は貫通孔を貫通するものであって、壁部の肉厚よりも長い長手状である。フランジ部は貫通孔の口径よりも大きい。また筒状部の外周面には外周螺子部が形成され、先端面には鋸歯が形成されている。
【0004】
止水材は、管接続具本体のフランジ部と壁部との間に配置されるものであり、貫通孔周縁の壁面の傾斜勾配(抜き勾配)に合わせて圧縮変形して壁面に密着すべく環状凹部を有している。
【0005】
挟圧部材は短円筒状であり、管接続具本体の外周螺子部に対応する内周螺子部が内周面に形成されている。この挟圧部材を、貫通孔に通した管接続具本体の先端から螺合して締め付けると、管接続具本体が貫通孔に固定され、フランジ部においては止水材による止水がなされる。
【0006】
接続体は、接続具本体の先端に管体を接続するためのものであり、短円筒形状に形成されている。接続体の基端側の内周面には管接続具本体の外周螺子部に対応する内周螺子部が形成されている。つまり、接続体は接続具本体の先端部に螺合して固定される。この固定時には接続具本体の先端面の鋸歯が接続体の緩みを抑制する。
【0007】
接続体における内周螺子部を有する側とは反対側の端は、管体が差し込まれる口(受け口)であり、その近傍には係合体を収容するための収容部が形成されている。係合体は、受け口に差し込まれた管体を抜け止めするためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5985935号公報
【特許文献2】特開2022-70700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の管体接続具は、部品として、管接続具本体と、止水部材と、挟圧部材と、接続体と、係合体が必要であり、部品点数は少なくないため、取扱いに難がある。そのうえ、特に管接続具本体に対する接続体の取付けは、管接続具本体を挟圧部材で壁部に固定した後でなければ行えない。つまり、壁部の内面から貫通孔に差し込んで突き出させた管接続具本体に挟圧部材を回転して嵌めて、締め付けた後、さらに管接続具本体の先端に接続体を回転して取り付けなければならない。このような構造であるため、施工性はよくない。
【0010】
また、特許文献1、2の管体接続具は、管体を固定するための接続体を管接続具本体の先端部に取り付ける構成である。このため、管接続具本体の筒状部の長さは、壁部の厚さと挟圧部材の軸方向の長さを加算した長さに加えて、さらに、接続体を取り付けるための長さが最低限必要である。管接続具本体の長さが長いと、地中埋設箱の内側から貫通孔に通す作業がおこないにくい。そのうえ、壁部に対する固定後に壁部の外面から突出する管接続具本体の長さも長くなってしまう。これらの点からも施工性はよくない。
【0011】
この発明の主たる目的は、施工性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのため、地中埋設箱の壁部に貫通形成された接続孔に管体を接続する管体接続具として、次の構成を採用する。
【0013】
すなわち、接続孔に対して壁部の内面から差し込まれて後端のフランジ部を引っかけて保持される筒状の受け継手と、受け継手における壁部の外面から突き出た部分の外周面に螺合されてフランジ部との間で壁部を挟み付ける固定リングと、管体の端末を保持し受け継手の先端側部分の内部に差し込まれる差し込み継手を備え、受け継手の内周面に、内側に張り出して差し込み継手の差し込みを許容する一方で抜け止めをする抜け止め爪を形成し、差し込み継手の外周面に、抜け止め爪に係止する係止爪を形成するとともに、係止爪の後方に、差し込みにより圧縮される弾性変形可能な環状のパッキンを装着する。
【0014】
このような構成を有する管体接続具では、受け継手の抜け止め爪と差し込み継手の係止爪とが係止する構成であるので、管体の端末に取り付けた差し込み継手を受け継手に対して直線的に差し込むことで接続が可能である。係止爪の後方のパッキンは圧縮されて受け継手と差し込み継手との間の止水をおこなうとともに、差し込み継手の引き抜き力に抵抗する。互に係止する抜け止め爪と係止爪はそれぞれ、受け継手、差し込み継手に形成されているので、部品点数は低減され、接続作業において差し込んで接続する部分に別の部材を用いる必要はない。また受け継手の先端部の外周面に取り付ける別の部材は不要であるため、受け継手の長さを抑制し得る。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、受け継手と固定リングと差し込み継手を備え、受け継手の抜け止め爪に対して差し込み継手の係止爪を係止して接続する構成であるので、受け継手を固定リングで固定したのち、差し込み継手を差し込むだけで接続できる。部品点数が少ないうえに、受け継手に対する直接の差し込みのみで接続できるので、施工性はよい。
【0016】
そして接続状態において、パッキンは受け継手と差し込み継手との間の止水をおこなうとともに、抜け止めの機能も果たすので、止水能力を有する強固な接続状態が得られる。
【0017】
また、受け継手には差し込み継手を保持するための別部材が不要であるので、差し込み継手を差し込む部分を受け継手における固定リングに対応する部位に持たせることもでき、受け継手の長さを極力短くできる。このため、受け継手を地中埋設箱の内面から差し込む作業が容易であるうえに、受け継手を壁部に対して固定したときに、壁部の外面から突出する長さが短くなり、施工の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】パッキンが非装着状態である差し込み継手を先端側から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を用いて、この発明の一形態を説明する。
【0020】
図1は管体接続構造11の断面図を示している。この図に示すように管体接続構造11は、地中ケーブル(図示せず)をとおす管体12を、ハンドホールのような地中埋設箱の側面の壁部13に形成された接続孔13aに接続するものである。図示例の管体12は螺旋溝付き管で構成されている。
【0021】
この接続をおこなう管体接続具15は、
図2に示したように3つの部材で構成される。すなわち、受け継手16と、固定リング17と、差し込み継手18である。受け継手16は接続孔13aに固定されるものであり、固定リング17はその固定のための締め付けをおこなうものである。差し込み継手18は管体12の端末を保持するものであって、受け継手16に差し込んで接続される。
【0022】
受け継手16は、接続孔13aに対して壁部13の内面13bから差し込まれて保持されるものである。筒状に形成されており、内部が地中ケーブルをとおす通路である。具体的には、円筒形に形成された本体筒部61と、本体筒部61の後端に形成されたフランジ部62を有している。フランジ部62は、本体筒部61を接続孔13aに通したときに接続孔13aの内面13b側の縁に引っかかる部分であり、接続孔13aの口径よりも大径の円環板状に形成されている。
【0023】
フランジ部62の前面、つまり壁部13に当接する面にはパッキン、つまり内面側パッキン63が備えられている。
【0024】
内面側パッキン63は壁部13との間で止水をおこなうものであり、フランジ部62と同じ円環板状に形成されている。内面側パッキン63の素材や形状は良好な止水性が得られるように考慮される。壁部13の内面13bは抜きテーパを有するので、板状であってもその圧縮変形で内面13bの傾斜に対応できるように発泡ゴムからなるもの、またはこれを用いたものを使用するのが望ましい。
【0025】
本体筒部61の外周面には、その全長にわたって雄ねじ64が形成されている。この雄ねじ64は固定リング17を螺合するためのものである。
【0026】
本体筒部61の長さL1は、短く設定されるのが好ましい(
図3参照)。すなわち、壁部13の厚さL2に、固定リング17の軸方向の長さL3を足した長さを基準にして、寸法誤差等に対応できる余裕を持つように本体筒部61の長さL1が設定される。図示例では、壁部13の厚さL2と固定リング17の軸方向の長さL3を足した長さに、内面側パッキン63の厚さL4等も考慮に加えて、その長さよりも長めに形成している。
【0027】
受け継手16の内周面、つまり本体筒部61の内周面には、
図3にも示したように、内側に張り出す抜け止め爪65が形成されている。抜け止め爪65は、差し込み継手18の差し込みを許容する一方で、差し込まれた差し込み継手18の抜け止めをするためのものである。
【0028】
抜け止め爪65の断面形状は、おおよそ直角三角形状である。本体筒部61の先端側に対応する部位に後端側ほど小径になる傾斜面65aがあり、軸方向に延びる若干のストレート面65bを介して係止段部65cが本体筒部61の後端側に対応する部位にある。この抜け止め爪65は内周面の全周に形成されている。
【0029】
抜け止め爪65を形成する位置は、本体筒部61の先端から後退した位置である。差し込み深さを短くすることと固定強度を得ることとの関係から、受け継手16の先端部であって、受け継手16を壁部13に対して固定したときに固定リング17が螺合する部位の内周面であるとよい。換言すれば壁部13の外面13cから突き出した部分のうち壁部13に近い部位の内周面である。
【0030】
本体筒部61の内周面における抜け止め爪65よりも先端側の部分は、止水のためのシール面66であり、平滑な円周面で構成されている。このシール面66の位置も壁部13に対する固定時に固定リング17が螺合する部位の内周面である。
【0031】
固定リング17は、受け継手16の本体筒部61に挿嵌可能な短円筒形であり、短円筒形のリング本体部71における壁部13の外面13cに対向する面には、外周方向に張り出す鍔部72が形成されている。鍔部72は、受け継手16のフランジ部62と同様に壁部13に当たる面を構成する。この鍔部72における壁部13に当たる面には、パッキン、つまり外面側パッキン73が備えられている。
【0032】
外面側パッキン73は、壁部13との間で止水をおこなうものであり、鍔部72と同じ円環板状に形成されている。外面側パッキン73の素材や形状は良好な止水性が得られるように考慮される。固定リング17が受け継手16を固定するためのものであることから、強固な固定を実現できるように硬めに構成されるのが好ましい。具体的には、
図3に示したように、硬めのゴム層73aの片面に水膨張性不織布73bを一体化した2層構造のパッキンを使用するとよい。この場合、外面側パッキン73は、水膨張性不織布73bを壁部13に当てるように備えられる。
【0033】
固定リング17の外周面には、回転操作の便宜のため、周方向に等間隔をあけて軸方向に延びる複数の凸条74が形成されている。
【0034】
一方、固定リング17の内周面には、受け継手16の本体筒部61に形成した雄ねじ64に螺合する雌ねじ75が形成されている。このため、接続孔13aに保持した受け継手16における壁部13の外面13cから突き出た部分の外周面に固定リング17を螺合すると、受け継手16のフランジ部62との間で壁部13を挟み付けることになる。
【0035】
図4に示したように差し込み継手18は、受け継手16と同様に円筒形状であり、先端側の小径部81と、後端側で小径部81よりも大径の大径部82と、これらの間で受け継手16の先端に対向する段差面83を有している。小径部81は、受け継手16の先端側部分、具体的には先端部の内部に差し込まれる部分である。
【0036】
この小径部81の外周面に、抜け止め爪65に係止する係止爪84が形成されるとともに、係止爪84の後方に、差し込みにより圧縮される弾性変形可能な環状のパッキン85が装着されている。
【0037】
係止爪84は、小径部81の先端に形成され、その断面形状が外周方向に張り出す直角三角形状である。すなわち、後方ほど大径になる傾斜面84aと、傾斜面84aの後端で軸方向と直交する方向に広がる係止段部84bを有している。
【0038】
係止爪84の後方の全周には、環状溝86が形成されている。環状溝86は周方向全体にわたって軸方向での長さが一定であり、パッキン85が装着される。環状溝86の軸方向の長さはパッキン85の対応する方向の長さよりも若干長く設定されている。
【0039】
パッキン85は、外周面に、先端側において先細りになる先細り面85aと、先細り面85aの後端から軸方向と平行に延びるストレート面85bを有している。また、先細り面85aとストレート面85bの内周側に、これらを変形させる空間部85cが形成されている。すなわち、パッキン85は、短円筒状をなし環状溝86に嵌まる円環部85eと、円環部85eの先端から外周方向に広がり先細り面85aを構成する拡径部85fと、拡径部85fの後端から後方に延びてストレート面85bを構成する裾部85gを有している。円環部85eと、拡径部85f及び裾部85gとの間が前述の空間部85cである。また、裾部85gの長さは、その後端が円環部85eの後端よりも後方に位置するように長く形成されている。
【0040】
円環部85eの厚さは環状溝86の深さと同じに設定される。また円環部85eの内周面には、密着力を高めてシール性を向上するために円周方向に延びるリング状のリブが複数形成されている。リブは断面三角形のリブ85hと断面半円形のリブ85jであり、断面三角形のリブ85hは内周面の先端に形成され、断面半円形のリブ85jは、中間部から後方に寄った位置に2本、間隔をあけて形成されている。
【0041】
パッキン85の円環部85eの内径は環状溝86の外径よりも小さく設定されている。パッキン85を環状溝86に嵌めて、
図4に示したように両者の後端をそろえると、断面半円形のリブ85jは潰れ、断面三角形のリブ85hは、潰れながら先端側に倒れることになる。
【0042】
そして、差し込み継手18の先端部であって係止爪84を有する部分には、
図5に示したように周方向で分割する割溝87が形成されている。
【0043】
割溝87は、周方向に一定幅で、等間隔に複数形成されている。この割溝87は係止爪84の半径方向での弾性変位を可能にするためのものである。図示例では割溝87は4個形成しており、このため係止爪84は周方向において4個に分断されることになる。
【0044】
割溝87が形成される範囲は、小径部81の先端から、パッキン85を保持する環状溝86よりも前方までに設定して、割溝87がパッキン85の機能に影響を与えないようにしている。
【0045】
前述したように受け継手16における抜け止め爪65の形成位置は、壁部13に対する固定時に固定リング17が螺合する部位の内周面である。このため、その抜け止め爪65に係止する係止爪84の位置、すなわち差し込み継手18における係止爪84の形成位置も受け継手16における固定リング17が螺合する部位の内周面に対応する部位となる(
図1参照)。また、シール面66の位置が壁部13に対する固定時に固定リング17が螺合する部位の内周面であるので、差し込み継手18におけるパッキン85の装着位置は、受け継手16における固定リング17が螺合する部位の内周面に対応する部位となる。
【0046】
小径部81と反対側の大径部82は、管体12の端末を保持する部分であり、その内部が保持部82aである。保持部82aには、
図4に示したように管体12の螺旋溝に螺合する雌ねじ88が形成されている。管体12の保持が管体12との螺合のみでおこなえて止水もできるように、保持部82aは全体に水膨張性不織布89を貼り付け等によって有している。
【0047】
大径部82の外径は、管体12の外径より一回り大きい程度に形成されており、このため、大径部82の太さは受け継手16の外径と同等となる。
【0048】
大径部82の外周面には、回転操作の便宜のため、周方向に等間隔をあけて軸方向に延びる複数の凸条82bが形成されている。
【0049】
以上のように構成された管体接続具15は、次のように使用されて管体接続構造11を構成する。
【0050】
まず、受け継手16を壁部13に固定する。つまり受け継手16の本体筒部61を壁部13の内面側から接続孔13aに差し込んで、フランジ部62を接続孔13aの縁に引っかける。この保持状態で、壁部13の外面13cから突き出した本体筒部61の先端部に固定リング17を挿嵌して螺合し、壁部13を締め付ける。このとき、抜け止め爪65の形成位置を受け継手16の先端部としており、受け継手16の本体筒部61の長さを極力短くした構成であるので、受け継手16を接続孔13aに差し込む作業は至って容易である。
【0051】
しかも、受け継手16に備えられた内面側パッキン63は壁部13の内面13bの抜き勾配に柔軟に対応し、固定リング17に備えられた外面側パッキン73は壁部13を強力に締め付ける。このため、強力な固定ができる。外面側パッキン73は、のちに地中においてその水膨張性不織布73bが水分を吸収して膨張し、高い止水性を有することになる。
【0052】
壁部13に対して受け継手16を固定すると、前述のように受け継手16が短いので、
図6に示したように、受け継手16の本体筒部61の先端は固定リング17から僅かに突出する程度である。このため、施工に際して、たとえば受け継手16を予め地中埋設箱に固定しておいても、作業に支障をきたすことはない。
【0053】
このように受け継手16を壁部13に固定する一方で、
図7に示したようにして管体12の端末に差し込み継手18を保持する。すなわち、管体12の端末に対して差し込み継手18の大径部82を嵌めて回転する。回転させて嵌めるだけでよいので作業は簡単である。受け継手16の水膨張性不織布89も、のちに地中において水分を吸収して膨張し、管体12との間に高い止水性をもたらす。
【0054】
管体12を保持した差し込み継手18は、
図6に示したように、接続孔13aに固定されて壁部13の外面13cから突き出した受け継手16の先端側部分の内部に対して直線的に差し込むと、接続が完了する。差し込みにより、差し込み継手18の外周面に一体形成された係止爪84は、弾性変位して受け継手16の内周面に一体形成された抜け止め爪65を乗り越えたのち、抜け止め爪65に係止する。これによって抜け止めがなされる。
【0055】
係止爪84の後方に装着されたパッキン85も差し込みにより圧縮されて弾性変形しながら進入し、圧縮された状態でシール面66に密着する。進入時には、先細り面85aの形状と、その変形性を高める空間部85cの存在とにより円滑に移動する。このため、係止爪84が弾性変位することと相まって、柔らかく挿入できる。そして、圧縮されたパッキン85は、先細り面85aもストレート面85bもシール面66に密着しており、止水性は高い。
【0056】
そのうえ、パッキン85のストレート面85bを構成する裾部85gは空間部85cにおいて比較的に自由に変形し得る構造であり、抜き方向の力が作用した場合に、裾部85gは先細り面85aを構成する拡径部85fと共に軸方向において縮む方向に圧縮される。この変形によって抵抗し、止水性を維持したまま引き抜きに対して抜け防止をはかる。このため、この管体接続構造11では係止爪84にかかる負荷を低減しつつ、高い引っ張り抵抗力を有する。
【0057】
以上のように、受け継手16を固定リング17で壁部13に固定したのち、差し込み継手18を直線的に差し込むだけで接続できるので、作業は容易であり、現場での施工性が極めて良好である。
【0058】
作業性の良さは、差し込み継手18を差し込む部分を受け継手16における固定リング17に対応する部位に持たせて受け継手16の長さを極力短くしたことによっても向上する。つまり、受け継手16を地中埋設箱の内面13bから差し込む作業が容易である。また受け継手16を壁部13に対して固定した状態での壁部13の外面13cから突出する長さが短いので、施工に際して作業性が向上する。
【0059】
また、差し込み継手18の差し込みやすさは、係止爪84を有する部分に割溝87を形成したこと、パッキン85の外周面に先細り面85aを形成し、その内周側に変形をしやすくする空間部85cを形成したことによって高められる。
【0060】
しかも接続状態において、受け継手16と差し込み継手18との間では、パッキン85が止水をおこなう。そして止水と同時に抜け止めの機能も果たす。このため、高い止水能力を有する強固な接続状態が得られる。このような良好な止水性と耐引き抜き性は、パッキン85の先細り面85aとストレート面85bと空間部85cによって確保される。
【0061】
そのパッキン85は、ストレート面85bを有し、軸方向に長く形成されているので、差し込み状態で安定性を付与する機能も発揮する。このため、接続状態で係止爪84部分に集中荷重がかかることを抑制することもでき、この点からも強固な接続状態が得られる。
【0062】
そのうえ、受け継手16には差し込み継手18を保持するための別部材が不要であるうえに、受け継手16の先端部に外周側に張り出す部分を必要としない構成であるので従来用いられていたようなベルマウスも不要である。このため、部品点数を前述のように少なくすることができ、取扱い性と施工性の良さをより高めることができる。
【0063】
部品点数が少ないことに加えて、差し込み継手18を小径部81と大径部82を有する構造として、管体12を保持する大径部82の外径を受け継手16の外径と同等にしたので、受け継手16や固定リング17の大型化を避けることができる。このため、受け継手16の長さを抑えることと相まって、管体接続具15のコンパクト化もはかれる。
【0064】
以上の一形態の構成において、管体12には螺旋溝付き管を例示したが、蛇腹状の管であってもよい。そのほか、この発明は前述の構成のみに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
11…管体接続構造
12…管体
13…壁部
13a…接続孔
13b…内面
13c…外面
15…管体接続具
16…受け継手
17…固定リング
18…差し込み継手
62…フランジ部
65…抜け止め爪
81…小径部
82…大径部
82a…保持部
83…段差面
84…係止爪
85…パッキン
85a…先細り面
85b…ストレート面
85c…空間部
87…割溝