IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アシックスの特許一覧

<>
  • 特開-靴 図1
  • 特開-靴 図2
  • 特開-靴 図3
  • 特開-靴 図4
  • 特開-靴 図5
  • 特開-靴 図6
  • 特開-靴 図7
  • 特開-靴 図8
  • 特開-靴 図9
  • 特開-靴 図10
  • 特開-靴 図11
  • 特開-靴 図12
  • 特開-靴 図13
  • 特開-靴 図14
  • 特開-靴 図15
  • 特開-靴 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092711
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 7/08 20220101AFI20240701BHJP
【FI】
A43B7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208833
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北山 裕教
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 将智
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 隆浩
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050BA36
4F050DA02
4F050DA05
4F050EA15
(57)【要約】
【課題】内部の湿度を低下させて不快感や臭いを抑制することができる靴を得ること。
【解決手段】足が載置される載置面2bを有し、載置面2bに凹部2cが形成されたソール2と、載置面2bを覆うアッパー3と、載置面2bの上に配置される載置体5と、凹部2cに収容された送風機4と、を備え、ソール2には、凹部2cから前方に向けて延びる溝2dと、ソール2の外周面と凹部2cとを連通させる連通部2fと、が形成されており、載置体5には、溝2dと重なる位置に第1の貫通孔5a1と第2の貫通孔5a2が形成されており、溝2dの内壁面は、溝2dの前端まで連続しており、1本の溝2dに対して、第1の貫通孔5a1と第2の貫通孔5a2とが1組設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足が載置される載置面を有し、前記載置面に凹部が形成されたソールと、
前記載置面との間に足が収容される空間を設けて前記載置面を覆うアッパーと、
前記載置面の上に配置される載置体と、
前記凹部に収容された送風機と、を備え、
前記載置面に載置された足のつま先側を前方、踵側を後方とした場合に、
前記ソールには、前記凹部から前方に向けて延びる溝と、前記ソールの外周面のうち前記アッパーに覆われていない面と前記凹部とを連通させる連通部と、が形成されており、
前記載置体には、前記溝と重なる位置に複数の貫通孔が形成されており、
複数の前記貫通孔の1つは前記溝に沿った前方に形成された第1の貫通孔であり、複数の前記貫通孔の1つは前記第1の貫通孔よりも後方に形成された第2の貫通孔であり、
前記溝の内壁面は、前記溝の前端まで連続しており、
1本の前記溝に対して、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが1組設けられている靴。
【請求項2】
前記送風機は、運転時に前記溝から前記連通部に向けて空気を流動させる請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記連通部は、前記ソールの内足側となる面または前記ソールの外足側となる面に連通している請求項1に記載の靴。
【請求項4】
前記ソールは、足の中足を支持する中足部を有し、
前記凹部は、前記中足部に形成されている請求項1に記載の靴。
【請求項5】
前記送風機は、硬質な部材で形成された硬質部に周囲を囲まれている請求項1に記載の靴。
【請求項6】
前記凹部の周囲が前記硬質部である請求項5に記載の靴。
【請求項7】
複数の前記貫通孔の1つは、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔との間に形成された第3の貫通孔である請求項1に記載の靴。
【請求項8】
前記溝は、前記載置面に載置される足のつま先よりも前方となる第1の領域まで延びており、
前記第1の貫通孔は前記第1の領域に形成されている請求項1に記載の靴。
【請求項9】
前記第2の貫通孔は、前記載置面に載置される足の基節骨に対向する第2の領域に形成されている請求項1に記載の靴。
【請求項10】
前記溝には、前記貫通孔と重なる領域に幅が広がった拡幅部が設けられている請求項1に記載の靴。
【請求項11】
前記送風機と前記載置体との間には、3mm以上の隙間が形成されている請求項1に記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部を換気する靴に関する。
【背景技術】
【0002】
靴の内部は、着用者の足の発汗などによって、湿度が高くなりやすい。靴の内部の湿度が高くなると、蒸れによって着用者が不快に感じたり、臭いが発生したりするといった問題が生じる。そこで、特許文献1に開示された靴のように、内部を換気して靴の内部の湿度が高くなることを防ぐ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-296260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では靴の内部の換気を行っているものの、空気の流路などまで考慮されておらず、靴の内部の湿度を十分に低下させることができず、不快感や臭いを十分に抑制できるものではなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、内部の湿度を低下させて不快感や臭いを抑制することができる靴を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る靴は、足が載置される載置面を有し、載置面に凹部が形成されたソールと、載置面との間に足が収容される空間を設けて載置面を覆うアッパーと、載置面の上に配置される載置体と、凹部に収容された送風機と、を備え、載置面に載置された足のつま先側を前方、踵側を後方とした場合に、ソールには、凹部から前方に向けて延びる溝と、ソールの外周面のうちアッパーに覆われていない面と凹部とを連通させる連通部と、が形成されており、載置体には、溝と重なる位置に複数の貫通孔が形成されており、複数の貫通孔の1つは溝に沿った前方に形成された第1の貫通孔であり、複数の貫通孔の1つは第1の貫通孔よりも後方に形成された第2の貫通孔であり、溝の内壁面は、溝の前端まで連続しており、1本の溝に対して、第1の貫通孔と第2の貫通孔とが1組設けられている靴。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る靴は、内部の湿度を低下させて不快感や臭いを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る靴の平面図である。
図2図2は、図1に示した靴の斜視図である。
図3図3は、図1に示した靴をIII-III線に沿って切断した断面図である。
図4図4は、ソールの斜視図である。
図5図5は、ソールの平面図である。
図6図6は、つま先部分の靴の内部の一例を示す図である。
図7図7は、つま先部分の靴の内部の一例を示す図である。
図8図8は、アッパーの分解斜視図である。
図9図9は、インソールを上側から見た斜視図である。
図10図10は、インソールを下側から見た斜視図である。
図11図11は、インソールに形成された第1のインソール開口および第2のインソール開口の断面形状を示す図である。
図12図12は、送風機の概略構成を示す斜視図である。
図13図13は、中底の平面図であって、第1の領域および第2の領域の第1の変形例を説明するための図である。
図14図14は、中底の平面図であって、第1の領域および第2の領域の第2の変形例を説明するための図である。
図15図15は、ソールの変形例を示す図である。
図16図16は、インソールの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る靴の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下の説明において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態1に係る靴の平面図である。図2は、図1に示した靴の斜視図である。図3は、図1に示した靴をIII-III線に沿って切断した断面図である。
【0011】
図1を含む各図には、左足用の靴1のみを図示している。靴1は、左足用と右足用とで左右対称構造であるため、本実施の形態では左足用の靴1のみを説明し、右足用の靴1の説明を省略する。以下の説明においては、靴1の着用者の足のつま先側を前方とし、踵側を後方とする。靴1を平面視した状態において前後方向と直交する方向を足幅方向とする。
【0012】
また、足のうちの解剖学的正位における正中側を内足側と称し、足のうちの解剖学的正位における正中側とは反対側を外足側と称する。すなわち、解剖学的正位における正中に近い側を内足側と称し、解剖学的正位における正中に遠い側を外足側と称する。また、上下方向とは、他に特段の記載がない限り、前後方向及び足幅方向の両方向に直交する方向を意味する。
【0013】
靴1は、ソール2と、アッパー3と、送風機4と、を備える。図4は、ソールの斜視図である。図5は、ソールの平面図である。ソール2は、地面に接する靴底面2aと、着用者の足が載置される載置面2bとを有する。ソール2は、標準的な体型の着用者の足の前足部を支持するソール前足部R1と、標準的な体型の着用者の足の中足部を支持するソール中足部R2と、標準的な体型の着用者の足の後足部を支持するソール後足部R3と、に分けられる。
【0014】
ソール2の載置面2bには、靴底面2a側に凹んだ凹部2cが形成されている。凹部2cには、送風機4が収容される。
【0015】
ソール2の載置面2bには、凹部2cから前方に向けて延びる複数の溝2dが形成されている。溝2dの先端(前端)には、溝2dの幅が広がった第1の拡幅部2e1が設けられている。また、第1の拡幅部2e1よりも後方には溝2dの幅が広がった第2の拡幅部2e2が設けられている。複数の溝2dのそれぞれは分岐することなく前方に向けて延びている。これは、複数の溝2dのそれぞれの内壁面は前端まで連続していると換言できる。
【0016】
図6は、つま先部分の靴の内部の一例を示す図である。図6では、靴1の内部の足も示している。靴1には、図6に示すように靴1の内部で足の前方に空間が設けられている場合がある。以下の説明では、靴1の内部で足の前方に設けられた空間をつま先空間と称する。第1の拡幅部2e1は、例えば、つま先空間と重なる領域(第1の領域)に設けられている。
【0017】
図7は、つま先部分の靴の内部の一例を示す図である。図7では、靴1の内部の足の骨格モデルも示している。足のつま先部分は、中足骨Bf、基節骨Bg、中節骨Bh、末節骨Biと呼ばれる骨で構成される。また、各骨同士の連接部分が関節となるが、末節骨Biと中節骨Bhとの間が遠位趾節間関節であるDIP関節Jaであり、中節骨Bhと基節骨Bgとの間が近位趾節間関節であるPIP関節Jbであり、基節骨Bgと中足骨Bfとの間が中足趾節関節であるMP関節Jcである。第2の拡幅部2e2は、例えば、基節骨に対向する領域(第2の領域)に設けられている。これは、第2の拡幅部2e2は、PIP関節JbとMP関節Jcとの間となる領域に設けられているとも換言できる。
【0018】
ソール2には、ソール2の外側面のうちアッパー3に覆われていない領域、特に内足側を向く面に連通部2fが形成されている。連通部2fは、ソール2の内足側を向く面と凹部2cとを連通させる孔である。なお、連通部2fは、載置面2bを凹ませた溝状に形成されていてもよい。
【0019】
ソール2は、歩行時および走行時に足に加わる衝撃を緩和するためにクッション性のある材料で形成されている。一方、ソール2における凹部2cの周囲は、他の部分よりも硬質な部材で形成された硬質部2gとなっている。硬質部2gは、例えば合成樹脂で形成されている。凹部2cの深さは、後述する送風機4の厚さよりも大きくなっている。例えば、凹部2cの深さと送風機4の厚さとの差は3mm以上となっている。なお、凹部2cが硬質部2gとなっている例に限られず、硬質の合成樹脂または金属などの材料からなるフレームを硬質部とし、そのフレームで周囲が囲まれた送風機4が凹部2cに設けられる構成であってもよい。
【0020】
図3に示すように、アッパー3は、ソール2の載置面2b上に設けられる。アッパー3は、縫合、溶着、接着またはこれらの組み合わせによってソール2の載置面2bに固定される。
【0021】
図8は、アッパーの分解斜視図である。アッパー3は、覆い部3aと中底3bとを備える。アッパー3では、覆い部3aと中底3bとに囲まれた空間が、着用者の足が入る空間となる。覆い部3aは、着用者の足の甲側の部分を覆う。覆い部3aの上部には、履き口3cが形成されている。履き口3cは、着用者の足をアッパー3の内部に入れるための開口である。覆い部3aのうちソール2と対向する領域には底部開口3dが形成されている。
【0022】
中底3bは、底部開口3dを塞ぐように設けられている。中底3bは、外周部分が底部開口3dの縁に縫合、溶着、または接着によって接合されて、覆い部3aと一体とされている。
【0023】
中底3bには、ソール2に設けられた第1の拡幅部2e1および第2の拡幅部2e2と重なる位置に貫通孔が形成されている。中底3bに形成された貫通孔のうち、第1の拡幅部2e1に重なる貫通孔を第1の中底開口3e1とし、第2の拡幅部2e2に重なる貫通孔を第2の中底開口3e2とする。
【0024】
インソール5は、靴1の内部であって、中底3bの上に設けられる。一般的に、インソール5は中底3bに接着されず、靴1の内部から取り出し可能とされている。インソールのうち靴1に内部側を向く面を表面とし、中底3b側を向く面を裏面とする。
【0025】
図9は、インソールを上側から見た斜視図である。図10は、インソールを下側から見た斜視図である。インソール5には、ソール2に設けられた第1の拡幅部2e1および第2の拡幅部2e2と重なる位置に貫通孔が形成されている。インソール5に形成された貫通孔のうち、第1の拡幅部2e1に重なる貫通孔を第1のインソール開口(第1の貫通孔)5a1とし、第2の拡幅部2e2に重なる開口を第2のインソール開口(第2の貫通孔)5a2とする。
【0026】
ソール2に形成された第1の拡幅部2e1および第2の拡幅部2e2と、中底に形成された第1の中底開口3e1および第2の中底開口3e2と、インソール5に形成された第1のインソール開口5a1および第2のインソール開口5a2とが重なっているので、ソール2に形成された溝2dと靴1の内部とが連通される。
【0027】
図11は、インソールに形成された第1のインソール開口および第2のインソール開口の断面形状を示す図である。第1のインソール開口5a1の内径および第2のインソール5a2の内径は、上面側よりも下面側のほうが大きくなっている。
【0028】
送風機4は、ソール2の凹部2cに収容される。図12は、送風機の概略構成を示す斜視図である。送風機4は、遠心送風機である。送風機4は、吸込口4bと吹出口4cとが形成された筐体4aと、筐体4aの内部に収容された羽根車4dと、図示を省略した電動機と、図示を省略したバッテリーと、を備える。なお、送風機4は軸流送風機であってもよい。
【0029】
送風機4は、バッテリーから供給された電流で電動機が駆動されると、羽根車4dが回転する。羽根車4dが回転することで、吸込口4bから筐体4aの内部に吸い込まれた空気が吹出口4cから吹き出される。なお、以下の説明では、送風機4の電動機が駆動されることを単に送風機4が運転されるともいう。
【0030】
送風機4は、吸込口4bを上方に向けるとともに、吹出口4cを連通部2fに向けて凹部2cに設けられる。なお、送風機4の筐体4aの厚さよりも深い深さで凹部2cは形成されている。そのため、吸込口4bと中底3bとの間には隙間が形成される。送風機4の運転時には溝2dから連通部2fに向けて空気が流動される。より具体的には、送風機4の運転時には、第1にインソール開口5a1、第2のインソール5a2、第1の中底開口3e1、および第2の中底開口3e2を通じて靴1の内部の空気が溝2dに吸い込まれ、吸い込まれた空気は送風機4を経由して連通部2fから靴の外部に排出される。
【0031】
以上説明したように、靴1では、送風機4の運転時には、靴1の内部の空気が溝2dを通じて外部に排出される。すなわち、靴1の内部が送風機4によって換気される。これにより、靴1の内部の湿度を低下させて、使用者の不快感や足の臭いの発生を抑制することができる。
【0032】
また、空気の流路である溝2dは分岐されておらず、さらに靴1の内部と溝2dとを連通させる開口(第1の中底開口3e1、第2の中底開口3e2、第1のインソール開口5a1、第2のインソール開口5a2)が前後に間隔をあけて形成されている。このような空気の流路の構成によって、靴1の内部の湿度の十分な低下を図ることができる。
【0033】
また、第1の拡幅部2e1、第1の中底開口3e1および第1のインソール開口5a1が形成された第1の領域は、靴1の内部でも空間が大きく、湿度が高くなりやすいつま先空間と重なる領域である。この第1の領域に形成された第1の中底開口3e1および第1のインソール開口5a1から空気が吸い込まれるので、靴の内部の湿度を効率よく低下させることができる。なお、溝2dに第1の拡幅部2e1が形成されている例を挙げて説明したが、溝2dに第1の拡幅部2e1は必ずしも形成されていなくてもよい。第1の中底開口3e1と、第1のインソール開口5a1と、溝2dとが、第1の領域で重ねて形成されていれば、靴1の内部から溝2d、凹部2c、連通部2f、靴1の外部とつながる空気の流路が形成され、靴1の内部の換気が可能となる。
【0034】
また、第2の拡幅部2e2、第2の中底開口3e2および第2のインソール開口5a2が形成された第2の領域は、足裏のなかで最も蒸れやすい部分(指間部)に対向する領域である。第1の領域に形成された第1の拡幅部2e1、第1の中底開口3e1および第1のインソール開口5a1と送風機4を接続する溝の中途部に相当するこの第2の領域に形成された第2の中底開口3e2および第2のインソール開口5a2から空気が靴1の内部に空気が吹き出される。そのため、最も蒸れやすい指間部に空気が当たり不快感が低下する。また、第2の中底開口3e2および第2のインソール開口5a2から空気が吹き出されるため、第1の中底開口3e1および第1のインソール開口5a1から吸い込まれる空気が増加する。なお、溝2dに第2の拡幅部2e2が形成されている例を挙げて説明したが、溝2dに第2の拡幅部2e2は必ずしも形成されていなくてもよい。第2の中底開口3e2と、第2のインソール開口5a2と、溝2dとが、第2の領域で重ねて形成されていれば、靴1の内部から溝2d、凹部2c、連通部2f、靴1の外部とつながる空気の流路が形成され、靴1の内部の換気が可能となる。
【0035】
また、送風機4から吹き出された空気を靴1の外部に排出させる連通部2fがソール2の内足側となる面に形成されているので、靴底面2aに連通部2fが形成される場合に比べて、埃などが凹部2cに侵入しにくくなる。これにより、埃などが原因となる送風機4の故障の発生を抑えることができる。なお、連通部2fは、ソール2の外足側となる面に形成されていてもよい。また、連通部2fは、ソール2の底面に形成されていてもよい。なお、ソール2の外足側となる面に設けるよりも連通部2fと外部との接触が減るので、ソール2の内足側となる面に連通部2fを設けるほうがより好ましい。
【0036】
また、凹部2cは、歩行時および走行時に足からの衝撃が他の領域に比べて加わりにくいソール中足部R2に設けられている。そのため、凹部2cに設けられた送風機4に加わる衝撃を減らすことができ、送風機4の故障の発生を抑えることができる。
【0037】
また、凹部2cの周囲は硬質な部材で形成された硬質部2gとなっているので、送風機4に加わる衝撃をより一層減らすことができる。これにより、送風機4の故障の発生をより一層抑えることができる。
【0038】
また、凹部2cの深さは、送風機4の厚さよりも大きくなっているので、凹部2cを覆う中底3bと送風機4の吸込口4bとの間には隙間が形成される。したがって、送風機4の吸込口4bが中底3bに塞がれて空気を吸い込むことができなくなることを防ぐことができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、靴1の内部の空気が溝2dおよび連通部2fを通じて靴1の外部に排出される例を示したが、靴1の内部の空気が連通部2fおよび溝2dを通じて靴1に内部に吹き出されるように構成してもよい。この場合、靴1の内部に吹き出された空気は、主に履き口3cを通じて靴1の外部に排出される。このような空気の流れであっても靴1の内部を換気して湿度の低下を図ることができる。
【0040】
また、第1のインソール開口5a1の内径および第2のインソール5a2の内径は、上面側よりも下面側のほうが大きくなっている。すなわち、中底3bと対向する面側の径が大きくなっている。そのため、靴1の内部でインソール5が多少ずれたとしても中底3bに形成された第1の中底開口3e1および第2の中底開口3e2と第1のインソール開口5a1の内径および第2のインソール5a2とが重ならないといった状態になりにくい。第1の中底開口3e1および第2の中底開口3e2と第1のインソール開口5a1の内径および第2のインソール5a2とが重ならない状態では、靴1の内部と溝2dとが連通せずに換気できない状態となる。本実施の形態では、第1のインソール開口5a1の内径および第2のインソール5a2の内径は、上面側よりも下面側のほうが大きくなっているため、第1の中底開口3e1および第2の中底開口3e2と第1のインソール開口5a1の内径および第2のインソール5a2とが重ならずに換気ができない状態となることを防ぐことができる。なお、第1のインソール開口5a1および第2のインソール開口5a2は、上面側と下面側とで内径が等しくなっていてもよい。
【0041】
なお、アッパー3の底部開口3dが中底3bによって塞がれている例を説明したが、これに限られない。アッパー3の底部開口3dが中底3bによって塞がれていない場合には、靴1の内部にソール2の載置面2bが露出しており、載置面2bの上に直接インソール5が配置される。アッパー3の底部開口3dが中底3bによって塞がれている場合には、中底3が載置面2bと対向する載置体となる。アッパー3の底部開口3dが中底3bによって塞がれていない場合には、インソール5が載置面2bと対向する載置体となる。本実施の形態では、凹部2cの深さと送風機4の厚さとに差を設けることによって、載置体である中底3bと送風機4との間に隙間が形成される。これにより、通風抵抗が低下し送風量が増加する。
【0042】
次に、第1の拡幅部2e1、第1の中底開口3e1、および第1のインソール開口5a1が形成される第1の領域と、第2の拡幅部2e2、第2の中底開口3e2、および第2のインソール開口5a2が形成される第2の領域との変形例について説明する。
【0043】
図13は、中底の平面図であって、第1の領域および第2の領域の第1の変形例を説明するための図である。靴1を平面視した状態で靴1の中心を通る垂線であるシューズセンター軸Cと中底3bの後端との交点を0%とし、そこからシューズセンター軸上でどれだけ離れているかをパーセンテージで示し、靴1のサイズを100%とする。なお、図13では、0%となる地点を地点P0と示し、100%となる地点を地点P100と示している。
【0044】
第1の変形例では、平面視において、シューズセンター軸C上の100%となる地点P100から延びる垂線L100よりも前方となる領域を第1の領域とする。また、平面視において、シューズセンター軸C上の70%となる地点P70から延びる垂線L70と、シューズセンター軸C上の90%となる地点P90から延びる垂線L90との間の領域を第2の領域とする。
【0045】
第1の変形例のように第1の領域と第2の領域を規定した場合も、靴1の内部で湿度が高くなりやすい領域の空気を排出するとともに、足裏の蒸れやすい部分の周囲の空気を排出して、靴1の内部の湿度低下および不快感の減少を図ることができる。
【0046】
図14は、中底の平面図であって、第1の領域および第2の領域の第2の変形例を説明するための図である。靴1を平面視した状態で靴1の中心を通る垂線であるシューズセンター軸Cと中底3bの後端との交点を0%とし、そこからシューズセンター軸上でどれだけ離れているかをパーセンテージで示し、シューズセンター軸Cと中底3bの前端との交点を100%とする。なお、図14では、0%となる地点を地点P0と示し、100%となる地点を地点P100と示している。
【0047】
第2の変形例では、平面視において、シューズセンター軸C上の85%となる地点P85から延びる垂線L85と、シューズセンター軸C上の100%となる地点P100から延びる垂線L100との間の領域を第1の領域とする。また、平面視において、シューズセンター軸C上の60%となる地点P60から延びる垂線L60と、シューズセンター軸C上の80%となる地点P80から延びる垂線L80との間の領域を第2の領域とする。
【0048】
第2の変形例のように第1の領域と第2の領域を規定した場合も、靴1の内部で湿度が高くなりやすい領域の空気を排出するとともに、足裏の蒸れやすい部分の周囲の空気を排出して、靴1の内部の湿度低下および不快感の減少を図ることができる。
【0049】
図15は、ソールの変形例を示す図である。図16は、インソールの変形例を示す図である。図15および図16に示すように、第1の拡幅部2e1と第2の拡幅部2e2との間に第3の拡幅部2e3を設け、インソール5の第3の拡幅部2e3と重なる位置に貫通孔として第3のインソール開口5a3を形成してもよい。なお、図示は省略するが、中底3bにも第3の拡幅部2e3と重なる位置に貫通孔が形成される。なお、第3の拡幅部2e3は必ずしも形成されていなくてもよい。第3のインソール開口5a3と、図示を省略した中底に形成された貫通孔と、溝2dとが重なっていれば、靴1の内部から溝2d、凹部2c、連通部2f、靴1の外部とつながる空気の流路が形成され、靴1の内部の換気が可能となる。
【0050】
以下、本発明の諸態様を記載する。
【0051】
第1の態様に係る靴は、足が載置される載置面を有し、前記載置面に凹部が形成されたソールと、前記載置面との間に足が収容される空間を設けて前記載置面を覆うアッパーと、前記載置面の上に配置される載置体と、前記凹部に収容された送風機と、を備え、前記載置面に載置された足のつま先側を前方、踵側を後方とした場合に、前記ソールには、前記凹部から前方に向けて延びる溝と、前記ソールの外周面のうち前記アッパーに覆われていない面と前記凹部とを連通させる連通部と、が形成されており、前記載置体には、前記溝と重なる位置に複数の貫通孔が形成されており、複数の前記貫通孔の1つは前記溝に沿った前方に形成された第1の貫通孔であり、複数の前記貫通孔の1つは前記第1の貫通孔よりも後方に形成された第2の貫通孔であり、前記溝の内壁面は、前記溝の前端まで連続しており、1本の前記溝に対して、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが1組設けられている。
【0052】
第2の態様に係る靴は、第1の態様に係る靴において、前記送風機が、運転時に前記溝から前記連通部に向けて空気を流動させる。
【0053】
第3の態様に係る靴は、第1または第2の態様に係る靴において、前記連通部が、前記ソールの内足側となる面または前記ソールの外足側となる面に連通している。
【0054】
第4の態様に係る靴は、第1から第3のいずれかの態様に係る靴において、前記ソールが、足の中足を支持する中足部を有し、前記凹部は、前記中足部に形成されている。
【0055】
第5の態様に係る靴は、第1から第4のいずれかの態様に係る靴において、前記送風機が、硬質な部材で形成された硬質部に周囲を囲まれている。
【0056】
第6の態様に係る靴は、第5の態様に係る靴において、前記凹部の周囲が前記硬質部である。
【0057】
第7の態様に係る靴は、第1から第6のいずれかの態様に係る靴において、複数の前記貫通孔の1つが、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔との間に形成された第3の貫通孔である。
【0058】
第8の態様に係る靴は、第1から第7のいずれかの態様に係る靴において、前記溝が、前記載置面に載置される足のつま先よりも前方となる第1の領域まで延びており、前記第1の貫通孔は前記第1の領域に形成されている。
【0059】
第9の態様に係る靴は、第1から第8のいずれかの態様に係る靴において、前記第2の貫通孔が、前記載置面に載置される足の基節骨に対向する第2の領域に形成されている。
【0060】
第10の態様に係る靴は、第1から第9のいずれかの態様に係る靴において、前記溝に、前記貫通孔と重なる領域に幅が広がった拡幅部が設けられている。
【0061】
第11の態様に係る靴は、第1から第10のいずれかの態様に係る靴において、前記送風機と前記載置体との間には、3mm以上の隙間が形成されている。
【符号の説明】
【0062】
1 靴、2 ソール、2a 靴底面、2b 載置面、2c 凹部、2d 溝、2e1 第1の拡幅部、2e2 第2の拡幅部、2f 連通部、2g 硬質部、3 アッパー、3a 覆い部、3b 中底、3c 履き口、3d 底部開口、3e1 第1の中底開口、3e2 第2の中底開口、4 送風機、4a 筐体、4b 吸込口、4c 吹出口、4d 羽根車、4e 通信部、5 インソール、5a1 第1のインソール開口、5a2 第2のインソール開口、5a3 第3のインソール開口、R1 ソール前足部、R2 ソール中足部、R3 ソール後足部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16