(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092712
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】歪センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20240701BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01B7/16 R
A61B5/11 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208835
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】奥宮 保郎
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 茜
(72)【発明者】
【氏名】谷高 幸司
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 宗一
(72)【発明者】
【氏名】和田 洋平
【テーマコード(参考)】
2F063
4C038
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BA29
2F063BB08
2F063CA09
2F063EC07
2F063EC14
4C038VA04
4C038VB12
4C038VB13
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】本発明は、測定対象の微少な屈曲を精度よく測定することができる歪センサ装置の提供を課題とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る歪センサ装置1は、測定対象の屈曲を測定する歪センサ装置であって、測定対象に敷設される可撓性を有するシート状の基材10、この基材10の厚み方向に基材10と離間して配される伸縮性を有するセンサ20、及び基材10の屈曲時に、センサ20の基材10側への近接を抑制する離間部材30を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の屈曲を測定する歪センサ装置であって、
前記測定対象に敷設される可撓性を有するシート状の基材、
この基材の厚み方向に基材と離間して配される伸縮性を有するセンサ、及び
前記基材の屈曲時に、前記センサの前記基材側への近接を抑制する離間部材を備える歪センサ装置。
【請求項2】
前記離間部材が、前記基材上に並設される複数の立設部を有し、この複数の立設部の上部に前記センサが挿通されるセンサ用挿通穴又はセンサ用挿通溝が形成されている請求項1に記載の歪センサ装置。
【請求項3】
前記立設部の下部が上部よりも細く設けられている請求項2に記載の歪センサ装置。
【請求項4】
測定対象の屈曲を測定する歪センサ装置であって、
前記測定対象に敷設される可撓性を有するシート状の基材、
この基材の厚み方向に基材と離間して配される伸縮性を有するセンサ、及び
前記基材と前記センサとの間に介在され、前記歪みセンサの伸縮方向には伸縮するが、前記基材の厚み方向には伸縮しない異方性を有する離間部材を備える歪センサ装置。
【請求項5】
前記センサが張架して固定される一対の固定部をさらに備え、前記固定部が前記基材に固定される請求項1、請求項2又は請求項4に記載の歪センサ装置。
【請求項6】
前記測定対象に巻き付けられる巻き付け部材をさらに備え、
前記巻き付け部材及び前記基材それぞれに、互いに着脱可能な着脱部が設けられている請求項1、請求項2又は請求項4に記載の歪センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
センサによって測定対象の屈曲を測定して数値データ化する多様な試みがなされている。例えば、センサの伸縮に応じて抵抗値の変化を検出し、測定対象の屈曲を測定する歪センサ装置が公知である(例えば特開2016-80522号参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の歪センサ装置にあっては、測定対象の屈曲の際に検出した抵抗値の変化が微少であるため、測定精度の向上が困難である場合があることが判明した。
【0005】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、測定対象の微少な屈曲を精度よく測定することができる歪センサ装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る歪センサ装置は、測定対象の屈曲を測定する歪センサ装置であって、前記測定対象に敷設される可撓性を有するシート状の基材、この基材の厚み方向に基材と離間して配される伸縮性を有するセンサ、及び前記基材の屈曲時に、前記センサの前記基材側への近接を抑制する離間部材を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る歪センサ装置は、測定対象の屈曲を測定する歪センサ装置であって、前記測定対象に敷設される可撓性を有するシート状の基材、この基材の厚み方向に基材と離間して配される伸縮性を有するセンサ、及び前記基材と前記センサとの間に介在され、前記歪みセンサの伸縮方向には伸縮するが、前記基材の厚み方向には伸縮しない異方性を有する離間部材を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る歪センサ装置は、センサが基材の厚み方向に基材と離間して配され、センサは基材の屈曲時に離間部材によって基材側への近接が抑制され、基材の屈曲に比してセンサの屈曲半径が大きく、センサの伸縮が大きいため、測定対象の微少な屈曲を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る歪センサ装置を示す模式的平面図である。
【
図2】
図2は、
図1の歪センサ装置の離間部材及び固定部の模式的正面図である。
【
図4】
図4は、
図1の歪センサ装置の離間部材及び固定部の模式的左側面図である。
【
図5】
図5は、
図1の歪センサ装置の離間部材及び固定部の模式的斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1の歪センサ装置の手(測定対象)への装着状態を示す模式的説明図である。
【
図7A】
図7Aは、
図1の歪センサ装置の作用を説明するための模式的説明図である。
【
図7B】
図7Bは、
図1の歪センサ装置の作用を説明するための模式的説明図である。
【
図8】
図8は、
図1とは異なる実施形態に係る歪センサ装置の離間部材及び固定部を示す模式的斜視図である。
【
図9】
図9は、
図1及び
図8とは異なる実施形態に係る歪センサ装置を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0011】
図1乃至
図7に示す歪センサ装置1は、測定対象の屈曲を測定するための装置である。特に、当該歪センサ装置1は、測定対象として、人、動物などの関節部位における屈曲の測定に適しており、さらに、身体障害などにより関節部位の屈曲が困難な測定対象であっても微少な屈曲の変化も検出しやすい装置である。また、当該歪みセンサ装置1を用いることで、例えば、ゲームコントローラのような従来の操作子を操作することが困難な人が自由に操作できる操作子を提供することができる。
【0012】
当該歪センサ装置1は、
図1に示すように、前記測定対象に敷設される可撓性を有するシート状の基材10、この基材10の厚み方向に基材10と離間して配される伸縮性を有するセンサ20、及び、前記基材10の屈曲時に、センサ20の基材10側への近接を抑制する離間部材30を備えている。
【0013】
当該歪センサ装置1は、センサ20が張架して固定される一対の固定部40をさらに備え、固定部40は基材10に固定されている。なお、張架とは、センサ20が伸長していない状態においてもセンサ20が弛みなく一対の固定部40に架け渡されていることを意味する。また、当該歪センサ装置1は、
図7に示すように、一対の固定部40に架け渡される配線50をさらに備え、この配線50は、一方の固定部40において前記センサ20に電気的に接続される。当該歪センサ装置1は、前記測定対象に巻き付けられる一対の巻き付け部材60をさらに備え、前記巻き付け部材60及び前記基材10それぞれに、互いに着脱可能な着脱部(図示省略)が設けられている。
【0014】
<基材>
前記基材10は、帯状であり、伸縮性を有している。基材10は測定対象の屈曲を阻害しない程度の伸縮性を有することが好ましい。基材10としては、例えばゴム、皮革、ニット、織物、不織布等が挙げられる。本実施形態においては、
図1及び
図6に示すように、一端側が幅広となる幅広部11が設けられている。
【0015】
基材10には、下面に前記巻き付け部材60に着脱可能な前記着脱部が設けられている。この着脱部としては、例えば面ファスナーを採用することができる。この着脱部は、基材10の下面の全面に設けることも可能であるが、少なくとも基材10の前記固定部40の固定箇所、またはこの固定箇所よりも外側(一方の固定部40の固定箇所よりも他方の固定部40から離れた側)に設けるとよい。これにより、屈曲時に固定部40が測定対象から離間する(固定部40が浮いた状態となる)ことを抑制することができる。また、前述のように基材10は幅広部11を有するため、この幅広部11に着脱部を設けることで、基材10の着脱部と巻き付け部材60の着脱部との接触面積を大きくすることができ、巻き付け部材60に基材10をより安定して装着することができる。
【0016】
<固定部>
前記固定部40は、基材10に立設状態で固定され、上部に前記センサ20が固定されており、これにより前述のようにセンサ20は基材10の厚み方向に基材10と離間した状態で一対の固定部40に張架されて固定される。
【0017】
前述のように、一方(
図1の左側)の固定部40において、前記センサ20と一の配線50とが電気的に接続されており、この一方の固定部40の上面には、センサ20の一端と配線50とを接続する電極41が設けられている。また、他方の固定部40には、
図1に示すように、センサ20の他端と他の配線50とを電気的に接続し、センサ20の電気信号を取り出す電極41が形成されている。この他方の固定部40には、センサ20よりも下部(基材10側)に、
図4に示すように、前記配線50が挿通される配線用挿通穴43が形成されている。
【0018】
<離間部材>
前記離間部材30は、前述のようにセンサ20の基材10側への近接を抑制するための部材である。この離間部材30は、
図2に示すように、基材10上に並設される複数の板状の立設部31を有し、この立設部31には後述のようにセンサ20が挿通されるセンサ用挿通穴32及び配線50が挿通される配線用挿通穴33が形成されている。この複数の立設部31は、屈曲時に上端同士が離間可能に並設されており、離間部材30全体として基材10に追従して屈曲可能に設けられている。
【0019】
また、前述のように基材10の屈曲時に複数の立設部31の上端同士が離間可能に設けられていることで、離間部材30は、センサ20の伸縮方向に伸縮可能に設けられている(
図6参照)。離間部材30は、
図1及び
図5に示すように、隣接する立設部31同士を連結する複数の連結部35を有している。具体的には、連結部35は、一の立設部31とこれに隣接する他の立設部31とを、一方側(例えば、
図1の紙面上における下方側)で連結し、また、前記他の立設部31と、これに他方(前記一の立設部31の反対側)において隣接する立設部31とを、他方側(例えば、
図1の紙面上における上方側)で連結する。連結部35は、基材10上に(基材10に接して)配されており、隣接する立設部31の下部同士を連結している。連結部35は、平面視円弧状に形成されており、基材10の伸縮に従って変形する。なお、また連結部35は、最も外側に位置する立設部31と固定部40とを連結している。
【0020】
各立設部31には、
図3及び
図5に示すようにセンサ20が挿通されるセンサ用挿通穴32が上部に形成されている。このセンサ用挿通穴32の底部によってセンサ20の基材10側への近接が抑制される。なお、上部とは、立設部31の高さ方向中心よりも上方(基材10の反対側)であることを意味する。
【0021】
センサ用挿通穴32の形状および大きさは、特に限定されるものではなく、センサ20に干渉しない程度に設けられているとよい。
【0022】
立設部31は変形しにくい素材であることが望ましい。例えば軽くて変形しにくいプラスチックが好適に用いられる。立設部31を変形しにくい素材で作ることにより、離間部材30全体としてはセンサ20の伸縮方向(立設部31の並び方向)に伸縮するが、厚さ方向(立設部31の上下方向)には伸縮しにくい異方性を持たせることができる。離間部材30が異方性を有することにより、センサ20の基材10側への近接を抑制しつつ、離間部材30全体として基材10に追従して屈曲可能になっている。
【0023】
立設部31は、
図2及び
図5に示すように、正面視において下部が上部よりも細く設けられている。下部が細く設けられているため、立設部31と基材10との接触面積を少なくすることができ、基材10の十分な可撓性及び伸縮性を確保しやすい。また、前記上部が下部よりも太く設けられているため、隣接する立設部31のセンサ用挿通穴32同士の間隔を小さく、基材10の屈曲時においてセンサ20の基材10側への近接をより的確に抑制することができる。
【0024】
離間部材30は基材10に固定されている。この固定方法は、特に限定されず、例えば基材10全面に塗布された接着剤によることも可能であるが、基材10の可撓性及び伸縮性の確保の観点から、部分的な固定とすることが好ましい。具体的には、例えば、複数の連結部35又は立設部31のうち1又は複数箇所において部分的に基材10と離間部材30とを縫製、接着などの手段で固定するとよい。
【0025】
各立設部31には、前記センサ用挿通穴32よりも下部(基材10側)に、
図2及び
図3に示すように、前記配線50が挿通される配線用挿通穴33が形成されている。
【0026】
<センサ>
センサ20は、長手方向に伸縮する糸状又は帯状の部材である。このセンサ20は、伸縮に応じて電気的特性が変化するものであり、伸縮により電気抵抗が変化する歪抵抗素子が好適に用いられる。センサ20としては、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう)を用いたCNT歪センサが特に好適に用いられる。センサ20は、センサ用挿通穴32に挿通され、両端が固定部40に固定されている。
【0027】
センサ20が糸状である場合、センサ20は、CNT束を含んで構成される。このCNT束は、複数のCNT(単繊維)をCNT素子の長手方向に概略配向した繊維束であり、樹脂によって被覆される。糸状のセンサ20は、径方向の中心から外側に向けて、CNT束からなる導電部と、CNT繊維と樹脂とが複合された導電層と、樹脂製の被覆膜とをこの順で有する。このセンサ20は、中心のCNT束が断裂し、その断裂した間隔が変化をすることで抵抗変化を生じさせることができる。
【0028】
一方、センサ20が帯状である場合、センサ20は多数のCNT繊維を含む樹脂組成物から構成される。具体的には、センサ20は、複数のCNT(単繊維)をCNT素子の長手方向に概略配向した複数の繊維束のシートと、これらの繊維束のシートを被覆する樹脂とを有する。このンサ20は、伸長歪が加えられた場合、内部のCNT繊維が切断してCNTの端部が離間したり、伸長歪みが緩和されて再接触したりして抵抗値に変化を生じる。
【0029】
前記CNTとしては、単層のシングルウォールナノチューブ(SWNT)や、多層のマルチウォールナノチューブ(MWNT)のいずれも用いることができる。中でも、導電性及び熱容量等の点から、MWNTが好ましく、直径1.5nm以上100nm以下のMWNTがさらに好ましい。
【0030】
前記CNTは、公知の方法で製造することができ、例えばCVD法、アーク法、レーザーアブレーション法、DIPS法、CoMoCAT法等により製造することができる。中でも、所望するサイズのCNT(MWNT)を効率的に得ることができる点から、鉄を触媒とし、エチレンガスを用いたCVD法により製造することが好ましい。この場合、石英ガラス基板や酸化膜付きシリコン基板等の基板に、触媒となる鉄又はニッケル薄膜を成膜した上に、垂直配向して成長した所望の長さのCNTの結晶を得ることができる。
【0031】
<配線>
一対の固定部40の電極41にそれぞれ電気的に接続される一対の配線50を有する。一方の配線50は、
図6に示すように、基材10とセンサ20との間(センサ20よりも下方(基材10側))に配される。この一方(下方)の配線50は、前記一方(
図1における左側)の固定部40の電極41に接続される。この一方の配線50は、
図6に示すように基材10とセンサ20との間(センサ20よりも下方(基材10側)に配される。具体的には、前記一方の配線50は、前述のように他方(
図1における右側)の固定部40の配線用挿通穴43、及び複数の立設部31の配線用挿通穴33に挿通され、前記一方(
図1における左側)の固定部40の電極41に接続される。このように前記一方の配線50が他方(
図1における右側)の固定部40側から離間部材40内に挿通され、一方(
図1における左側)の固定部40の電極41に接続されるものであるため、センサ20の両端に接続される一対の電極41からの電気信号(センサ20の電気抵抗の変化)を、センサ20の片側(前記他方の固定部40側)から一対の配線50によって取り出すことができる。また、前記下方の配線50は、前述のように他方(
図1における右側)の固定部40の配線用挿通穴43、及び複数の立設部31の配線用挿通穴33に挿通されるものであるので、基材10と離間して配されている。このように、前記下方の配線50は、基材10に固定されているものではないので、基材10の伸縮に追従し過ぎることがなく、基材10の伸縮による配線50の劣化を抑制することができる。なお、配線50は長手方向に伸縮性を有することが好ましい。
【0032】
<巻き付け部材>
当該歪センサ装置1は、上面に前記着脱部を有し、
図6に示すように、測定対象に巻き付けられる一対の前記巻き付け部材60を備えている。当該歪センサ装置1にあっては、例えば一方の巻き付け部材60を手首に巻き付け、他方の巻き付け部材60を指に巻き付け、一対の巻き付け部材60に基材10を取り付けることで、手の関節の屈曲を測定することができる。巻き付け部材60の着脱部としては、基材10の着脱部と同様に面ファスナーを採用することができる。
【0033】
また、巻き付け部材60の着脱部は、例えば全面に亘って設けられる等、基材10の着脱部よりも面積が大きく設けられているとよい。これにより、巻き付け部材60に基材10を種々の角度で取付けることが選択でき、複雑に様々な方向に屈曲する関節において所望する方向の屈曲を測定しやすい。
【0034】
巻き付け部材60は、下面の一端側に、巻き付け状態を維持するための維持部(図示省略)を有する。この維持部は、例えば巻き付け部材60の上面の面ファスナーと着脱可能な面ファスナーを採用できる。
【0035】
<利点>
当該歪センサ装置1は、
図6に示すように、測定対象が屈曲した際に基材10が測定対象に従って屈曲し、基材10の屈曲に従ってセンサ20が伸長することで、電気抵抗値が変化し、この変化量を検出することで、測定対象の屈曲を測定することができる。特に、当該歪センサ装置1は、センサ20が基材10の厚み方向に基材10と離間して配され、センサ20は基材10の屈曲時に離間部材30によって基材10側への近接が抑制されているので、基材10の屈曲半径(測定対象の屈曲中心からの距離)に比してセンサ20の屈曲半径が大きく、センサ20の伸び量が大きくなり、このため、測定対象の微少な屈曲であっても精度よく測定することができる。
【0036】
図7を参酌し、指の屈曲を精度よく検出できることを例にとり説明する。指の屈曲中心から指表面の距離を7.5mm、屈曲角度θを10°とした場合(
図7A参照)、指表面の伸び量は1.3mmである。一方、当該歪センサ装置1を用いてセンサ20を指表面からの距離r‘(7.5mm)離間させた場合(
図7B参照)、センサ20の伸び量は2.6mmとなる。このように、指表面に直接センサを付設するよりも、当該歪センサ装置1のようにセンサ20を指表面から離間させることでセンサ20の伸び量が大きくなり、このため、測定対象の微少な屈曲であっても精度よく測定することができる。
【0037】
前記離間部材30が、センサ20が挿通されるセンサ用挿通穴32が上部に形成された複数の立設部31を有するため、屈曲時における基材10とセンサ20との離間状態を維持しやすい。
【0038】
また、基材10に固定される一対の固定部40にセンサ20が張架されて固定されているので、センサ20の伸長状態を安定して維持することができる。
【0039】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0040】
つまり、前記実施形態においては、各立設部31にセンサ20が挿通されるセンサ用挿通穴32を形成するものについて説明したが、例えば
図8に示すように、各立設部31の上方にセンサ20が挿通される挿通溝37を設けることも可能である(なお、前記実施形態と同一機能または同一構造を有する部材については
図8において同一符号を用いて説明を省略する(
図9も同様))。この挿通溝37にあってもセンサ用挿通穴32と同様に、底部によってセンサ20の基材10側への近接が抑制される。挿通溝37の開口形成方向は、側方であってもよいが、
図8に示すように上方であることが好ましく、これにより挿通溝37の側壁によってセンサ20の立設部31からの側方への離脱を抑制できる。また、挿通溝37は、側壁上部から開口に向けて突出したフランジ部37aを有することが好ましく、これによりフランジ37aによってセンサ20の立設部31からの上方への離脱を抑制できる。
【0041】
また、前記実施形態においては、並設される複数の立設部31を離間部材30が有するものについて説明したが、例えば、立設部31を有さず、離間部材30が、基材10とセンサ20との間に介在され、前記歪みセンサ20の伸縮方向には伸縮するが、前記基材10の厚み方向には伸縮しない異方性を有するものであってもよい。具体的には、
図9に示すように、離間部材30が、可撓性の板状部材から構成され、下面が基材10と当接するとともに上面にセンサ20が当接するものであってもよく、この板状の離間部材30によって基材10の屈曲時におけるセンサ20の基材10側への近接を抑制することも可能である。なお、「異方性」とは、センサ20の伸縮方向の伸縮に比して基材10の厚み方向に伸縮しないことを意味する。離間部材30がセンサ20の長手方向に伸縮性を有することによりセンサ20の伸縮を阻害しにくく、また、離間部材30が前記異方性を有することにより、基材10の屈曲時において離間部材30によってセンサ20の基材10側への近接を抑制しやすい。
【0042】
さらに、並設される複数の立設部31を離間部材30が有する場合であっても、離間部材30が連結部35を有さず、複数の立設部31がそれぞれ基材10に固定されるものであってもよい。ただし、前記実施形態のように、離間部材30が、隣接する立設部31同士を連結する複数の連結部35を有することが好ましく、基材10と離間部材30との固定作業を簡便とすることができる。
【0043】
また、センサ20は、一部が伸長するものも採用可能である。例えば、一対の固定部40に張架されるセンサ20が、伸長する一部の伸長部位(例えばCNT歪センサ)と、他部の非伸長の通電部位とを有することも可能である。なお、伸長部位及び通電部位の配設箇所は種々設計変更可能であり、例えば、伸長部位を中央に配し、一対の通電部位を伸長部位の両端に配することも可能であり、また、伸長部位を一端に配し、他端に通電部位を配することも可能である。
【0044】
さらに、前記実施形態においては、前記一方の配線50が他方の固定部40から離間部材40内に挿通されるものであったが、配線50が離間部材40内に挿通されるものに限定されず、例えば一対の配線がそれぞれ一対の電極に離間部材の外側に配設されているものであってもよい。
【0045】
また、配線50を採用する場合であっても、前記実施形態のように配線50がセンサ20よりも下部(基材10側)に配されるものに限定されず、例えば、センサ20のセンサ用挿通穴32に配線50を挿通させることも可能である。ただし、前記実施形態のように配線50をセンサ20よりも下部に配することで、屈曲時などにおける配線50の負荷を軽減することができる。
【0046】
さらに、巻き付け部材60は、必須ではなく、例えば、特開2016-80522号公報に開示されるような測定対象に貼着される粘着包帯を基材10の固定部40として採用することも可能である。また、巻き付け部材60を有する場合にあっても、前記実施形態のように、一対の巻き付け部材60を有するものに限定されない。例えば、袋状部材(指サック状の部材)を指先に装着し、巻き付け部材60を手首に巻き付け、袋状部材及び巻き付け部材60に基材10を装着してもよい。
【0047】
また、前記実施形態では、手の関節の屈曲を測定する場合を想定したが、測定対象はこれに限定されるものではない。当該歪みセンサ装置1は、例えば適宜他の関節の屈曲の測定に応用できる。また、その際に各部のサイズは適宜調整してもよい。例えばひざの関節を測定する場合は、前記実施形態よりもセンサの幅が広く、伸縮方向に長いものを用いてもよい。さらに、センサのサイズに応じて立設部の上部の幅、下部の幅、間隔も、前記実施形態よりも広くしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明に係る歪センサ装置1は、測定対象の微少な屈曲を容易かつ確実に測定できるため、種々の測定対象の屈曲を測定することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 歪センサ装置
10 基材
11 幅広部
20 センサ
30 離間部材
31 立設部
32 センサ用挿通穴
33 配線用挿通穴
35 連結部
37 挿通溝
37a フランジ
40 固定部
41 電極
43 配線用挿通穴
50 配線
60 巻き付け部材