(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092715
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】手乾燥装置
(51)【国際特許分類】
A47K 10/48 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
A47K10/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208842
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】中村 一博
(72)【発明者】
【氏名】古澤 雄大
(72)【発明者】
【氏名】入江 恭亮
(57)【要約】
【課題】開口から外への水滴の飛散を抑制できるとともに、乾燥にかかる時間が長くなることを抑制できる手乾燥装置を提供する。
【解決手段】前面部、背面部、右側面部、左側面部、及び底面部を有する内面と、開口と、を有する筐体と、吸込口と、前記前面部に設けられた前面吹出口と、を備え、側面視において、前記前面吹出口よりも上方における前記前面部と前記背面部との間の距離が最短となる二点を結ぶ直線を第1直線とし、前記第1直線を2等分し前記第1直線と直交する中心線と前記前面吹出口の吹き出し方向に延びる軸線との交点を第1交点とし、前記前面部の上端と前記背面部の上端とを結ぶ直線を第2直線とし、前記第1交点を通る垂線と前記第2直線との交点を第2交点としたとき、前記第1交点と前記第2交点との間の第1距離は、60mm以上105mm以下であることを特徴とする手乾燥装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面部、前記前面部と対向する背面部、前記前面部の右側端と前記背面部の右側端とを接続する右側面部、前記前面部の左側端と前記背面部の左側端とを接続する左側面部、及び前記前面部の下端と前記背面部の下端とを接続する底面部を有する内面と、前記内面によって囲まれた乾燥空間に使用者が手を差し入れるための開口と、を有する筐体と、
前記内面に設けられ、前記乾燥空間内の空気を吸い込む吸込口と、
前記前面部に設けられ、前記乾燥空間内に向けて空気を吹き出す前面吹出口と、
を備え、
側面視において、前記前面吹出口よりも上方における前記前面部と前記背面部との間の距離が最短となる二点を結ぶ直線を第1直線とし、前記第1直線を2等分し前記第1直線と直交する中心線と前記前面吹出口の吹き出し方向に延びる軸線との交点を第1交点とし、前記前面部の上端と前記背面部の上端とを結ぶ直線を第2直線とし、前記第1交点を通る垂線と前記第2直線との交点を第2交点としたとき、
前記第1交点と前記第2交点との間の第1距離は、60mm以上105mm以下であることを特徴とする手乾燥装置。
【請求項2】
前記第1距離は、75mm以上であることを特徴とする請求項1記載の手乾燥装置。
【請求項3】
前記前面吹出口は、下方に向けて空気を吹き出し、
前記中心線と前記軸線との間の角度は、65°以下であることを特徴とする請求項2記載の手乾燥装置。
【請求項4】
前記角度は、60°以下であることを特徴とする請求項3記載の手乾燥装置。
【請求項5】
前記角度は、45°以上であることを特徴とする請求項3または4に記載の手乾燥装置。
【請求項6】
前記前面部の上端と前記前面吹出口の中心との間の上下方向の第2距離は、50mm以上70mm以下であり、
前記前面吹出口の中心と前記底面部との間の上下方向の第3距離は、200mm以上240mm以下であることを特徴とする請求項2~4のいずれか1つに記載の手乾燥装置。
【請求項7】
側面視において、前記前面吹出口よりも上方における前記前面部と前記背面部との最短距離は、75mm以上90mm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の手乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、手乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ室や洗面所の壁面などに取り付けられ、手洗い後の使用者の手の乾燥に用いられる手乾燥装置がある。このような手乾燥装置では、開口から乾燥空間内に差し込まれた使用者の手に向かって吹出口から空気を吹き出すことで、使用者の手を乾燥させている。
【0003】
特許文献1では、乾燥空間内に吸込口を設けることで吹出口から吹き出された空気が、吸込口に吸い込まれて循環するような手乾燥装置が提案されている。このように吸引式にすることで、使用者の手に付着した水滴が、乾燥空間の外に飛散するのを抑制できる。しかし、このような手乾燥装置では、吸込口からの吸い込みが足りない場合には、吹出口から吹き出された空気が、吸込口ではなく開口から漏れてしまい、開口から外に水滴が飛散する場合があった。特に、水滴の付着が多い掌側を短時間で乾燥するために前側(すなわち、掌側)の吹出口から吹き出される空気の風速を大きくすると、開口から外に水滴が飛散しやすくなるという問題があった。
【0004】
開口から外への水滴の飛散を抑制する手段として、例えば、吹出口から吹き出された空気が使用者の手に当たる位置を低くすることが考えられる。しかし、乾燥空間の奥まで手を差し込みたくないと考える使用者は、開口付近で乾燥を行うため、吹出口から吹き出された空気が使用者の手に当たる位置を低くしすぎると、乾燥にかかる時間が長くなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、開口から外への水滴の飛散を抑制できるとともに、乾燥にかかる時間が長くなることを抑制できる手乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、前面部、前記前面部と対向する背面部、前記前面部の右側端と前記背面部の右側端とを接続する右側面部、前記前面部の左側端と前記背面部の左側端とを接続する左側面部、及び前記前面部の下端と前記背面部の下端とを接続する底面部を有する内面と、前記内面によって囲まれた乾燥空間に使用者が手を差し入れるための開口と、を有する筐体と、前記内面に設けられ、前記乾燥空間内の空気を吸い込む吸込口と、前記前面部に設けられ、前記乾燥空間内に向けて空気を吹き出す前面吹出口と、を備え、側面視において、前記前面吹出口よりも上方における前記前面部と前記背面部との間の距離が最短となる二点を結ぶ直線を第1直線とし、前記第1直線を2等分し前記第1直線と直交する中心線と前記前面吹出口の吹き出し方向に延びる軸線との交点を第1交点とし、前記前面部の上端と前記背面部の上端とを結ぶ直線を第2直線とし、前記第1交点を通る垂線と前記第2直線との交点を第2交点としたとき、前記第1交点と前記第2交点との間の第1距離は、60mm以上105mm以下であることを特徴とする手乾燥装置である。
【0008】
この手乾燥装置によれば、第1距離を60mm以上とすることで、前面吹出口から吹き出された空気が使用者の手に当たる位置(第1交点)を、開口からほどよく離すことができる。これにより、使用者の手に当たってから上方(開口側)に向かう空気(吹き返しの風)の影響が少なくなり、使用者の掌から吹き飛ばされた大きな水滴が開口へ舞い上がることを抑制でき、開口から外への水滴の飛散を抑制できる。また、第1距離を105mm以下とすることで、前面吹出口から吹き出された空気が使用者の手に当たる位置(第1交点)が低くなりすぎない。これにより、開口付近における乾燥力の低下を抑制できるため、開口付近で乾燥を行う場合であっても、乾燥にかかる時間が長くなることを抑制できる。このように、この手乾燥装置によれば、開口から外への水滴の飛散を抑制できるとともに、乾燥にかかる時間が長くなることを抑制できる。したがって、高速乾燥を実現しつつ、吸込口からの空気の吸い込みによって乾燥空間内に最低限の負圧を発生させるだけで、開口から外への大小の水滴の飛散を効果的に抑制することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1距離は、75mm以上であることを特徴とする手乾燥装置である。
【0010】
この手乾燥装置によれば、第1距離を75mm以上とすることで、開口から外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記前面吹出口は、下方に向けて空気を吹き出し、前記中心線と前記軸線との間の角度は、65°以下であることを特徴とする手乾燥装置である。
【0012】
この手乾燥装置によれば、前面吹出口が下方に向けて空気を吹き出すことで、前面吹出口が上方に向けて空気を吹き出す場合や前面吹出口が水平方向に向けて空気を吹き出す場合に比べて、開口から外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。また、中心線と軸線との間の角度を65°以下とすることで、前面吹出口から吹き出された空気が使用者の手に当たるときの角度を小さくできる。これにより、使用者の手に当たってから下方に向かう空気の割合を多くし、使用者の手に当たってから上方に向かう空気の割合を少なくすることができる。したがって、中心線と軸線との間の角度を65°よりも大きくした場合(例えば、前面吹出口の位置を低くすることで第1距離を所定の範囲内にした場合)と比べて、使用者の手に当たってから上方に向かう空気(吹き返しの風)の影響が少なくなり、開口から外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、前記角度は、60°以下であることを特徴とする手乾燥装置である。
【0014】
この手乾燥装置によれば、中心線と軸線との間の角度を60°以下とすることで、開口から外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。
【0015】
第5の発明は、第3または第4の発明において、前記角度は、45°以上であることを特徴とする手乾燥装置である。
【0016】
この手乾燥装置によれば、中心線と軸線との間の角度を45°以上とすることで、前面吹出口から吹き出された空気が使用者の手に当たるときの角度が小さくなりすぎることを抑制できる。これにより、前面吹出口と、前面吹出口から吹き出された空気が使用者の手に当たる位置(第1交点)と、の間の距離が長くなりすぎることを抑制できる。したがって、前面吹出口から吹き出された空気が使用者の手に当たる位置(第1交点)における風速が小さくなりすぎることを抑制し、乾燥にかかる時間が長くなることを抑制できる。
【0017】
第6の発明は、第2~第4のいずれか1つの発明において、前記前面部の上端と前記前面吹出口の中心との間の上下方向の第2距離は、50mm以上70mm以下であり、前記前面吹出口の中心と前記底面部との間の上下方向の第3距離は、200mm以上240mm以下であることを特徴とする手乾燥装置である。
【0018】
この手乾燥装置によれば、第2距離を50mm以上70mm以下とすることで、前面吹出口から吹き出された空気が使用者の手に当たる位置(第1交点)を、前面吹出口よりも下側における最適な位置に配置できる。これにより、開口から外への水滴の飛散をより効果的に抑制できるとともに、乾燥にかかる時間が長くなることをより効果的に抑制できる。また、第3距離を200mm以上とすることで、前面吹出口よりも下方に所定以上の深さの空間を確保できる。これにより、使用者の手に当たってから下方に向かった空気が、底面部に当たって上方に向かうことを抑制できる。したがって、開口から外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。また、第3距離を240mm以下とすることで、乾燥空間が大きくなりすぎることを抑制できる。これにより、装置の大型化を抑制できる。
【0019】
第7の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明において、側面視において、前記前面吹出口よりも上方における前記前面部と前記背面部との最短距離は、75mm以上90mm以下であることを特徴とする手乾燥装置である。
【0020】
この手乾燥装置によれば、前面部と背面部との最短距離を75mm以上90mm以下とすることで、前面吹出口と、前面吹出口から吹き出された空気が使用者の手に当たる位置(第1交点)と、の間の距離が長くなりすぎることを抑制できる。これにより、前面吹出口から吹き出された空気が使用者の手に当たる位置(第1交点)における風速が小さくなりすぎることを抑制し、乾燥にかかる時間が長くなることを抑制できる。また、乾燥空間の十分な前後幅を確保でき、手を乾燥空間の奥深くまで差し込みたくないという心理を使用者に与えることを抑制できる。これらにより、乾燥にかかる時間が長くなることをより効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の態様によれば、開口から外への水滴の飛散を抑制できるとともに、乾燥にかかる時間が長くなることを抑制できる手乾燥装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る手乾燥装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1中の手乾燥装置を矢示A-A方向からみた断面図である。
【
図3】
図1中の手乾燥装置を矢示B-B方向からみた断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る手乾燥装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る手乾燥装置を示す斜視図である。
図2は、
図1中の手乾燥装置を矢示A-A方向からみた断面図である。
図3は、
図1中の手乾燥装置を矢示B-B方向からみた断面図である。
なお、本実施形態の説明において、手乾燥装置10の手前側を「前方」とし、奥側を「後方」とする。手乾燥装置10を使用する使用者は、例えば、後方を向いて手乾燥装置10の前方に立った状態で、乾燥空間SPに濡れた手を挿入する。「上方」、「下方」、「右側方」、「左側方」は、それぞれ、前方を向いて立った使用者から見た方向である。
【0025】
図1に示すように、手乾燥装置10は、筐体50(ケース)を有する。筐体50は、内側を向く内面50iと、内面50iによって囲まれた乾燥空間SPに使用者が手を差し入れる開口50Aと、を有する。開口50Aは、上方を向いている。
【0026】
例えば、筐体50は、上方に開口50Aが設けられた、上下方向に長い略直方体形状である。筐体50の外面50jは、正面91、背面92、右側面93、左側面94、及び底面95によって形成されている。
【0027】
手乾燥装置10は、内面50iに設けられた吹出口(前面吹出口61及び背面吹出口62)を有する。吹出口(前面吹出口61及び背面吹出口62)は、乾燥空間SP内に空気Fを吹き出す。使用者は、吹出口から吹き出された空気F(風)に手をかざすことで、濡れた手を乾かすことができる。
【0028】
筐体50の内面50iは、前面部51と、背面部52と、右側面部53と、左側面部54と、底面部55と、を有する。前面部51は、後方を向いた面である。背面部52は、前方を向いた面である。背面部52は、前面部51よりも後方に位置し、前面部51と対向する。右側面部53は、左側方を向いた面である。左側面部54は、右側方を向いた面である。左側面部54は、右側面部53と対向する。右側面部53は、前面部51の右側端と背面部52の右側端とを接続する。左側面部54は、前面部51の左側端と背面部52の左側端とを接続する。底面部55は、前面部51の下端と背面部52の下端とを接続し、乾燥空間SPの底を形成する。
【0029】
前面吹出口61は、前面部51に設けられている。前面吹出口61は、例えば、前面部51に設けられた開口である。前面吹出口61は、例えば、前面部51の上部に位置する。手乾燥装置10は、少なくとも1つの前面吹出口61を有する。この例では、手乾燥装置10は、左右方向に並んだ複数の前面吹出口61を有する。
【0030】
背面吹出口62は、背面部52に設けられている。背面吹出口62は、例えば、背面部52に設けられた開口である。背面吹出口62は、例えば、背面部52の上部に位置する。手乾燥装置10は、少なくとも1つの背面吹出口62を有する。この例では、手乾燥装置10は、左右方向に並んだ複数の背面吹出口62を有する。
【0031】
前面吹出口61と背面吹出口62とは、例えば、乾燥空間SPを挟んで前後方向に対面している。なお、前面吹出口61及び背面吹出口62は、開口に限らず、例えば、前面部51または背面部52等に取り付けられたノズルなどの吹出口でもよい。
【0032】
図3に示す断面において、前面部51及び背面部52は、湾曲した面である。具体的には、前面部51は、後方に向かって突出した湾曲部を有する。背面部52は、前方に向かって突出した湾曲部を有する。そのため、乾燥空間SPの幅(前後方向の長さ)は、上下方向に沿って変化している。乾燥空間SPは、上端部において最も幅が広く、上端部の下方に幅が狭い部分を有する。前面吹出口61及び背面吹出口62は、乾燥空間SPの上端部よりも下方に設けられている。
【0033】
この例では、前面吹出口61は、後下方を向いており、後下方に向けて空気Fを吹き出す。前面吹出口61は、後方を向いており、後方に向けて空気Fを吹き出してもよい。前面吹出口61は、後上方を向いており、後上方に向けて空気Fを吹き出してもよい。
【0034】
また、この例では、背面吹出口62は、前下方を向いており、前下方に向けて空気Fを吹き出す。背面吹出口62は、前方を向いており、前方に向けて空気Fを吹き出してもよい。背面吹出口62は、前上方を向いており、前上方に向けて空気Fを吹き出してもよい。
【0035】
なお、実施形態において、筐体50(内面50i及び外面50j)の形状は、上記に限らない。筐体には、上面が設けられてもよい。また、吹出口の位置、形状、数などは、上記に限らない。
【0036】
図2に示すように、手乾燥装置10は、乾燥空間SP内の空気Fを吸い込む吸込口63を有する。吸込口63は、筐体50の内面50iに設けられる。例えば、吸込口63は、内面50iの下部に設けられ、前面吹出口61及び背面吹出口62よりも下方に位置する。この例では、吸込口63は、底面部55に設けられ、上方を向いた開口である。
【0037】
手乾燥装置10は、吸込口63と吹出口(前面吹出口61及び背面吹出口62)とを接続する流路部70を有する。流路部70は、筐体50の内部に設けられる。流路部70は、吸込口63から吸い込んだ空気Fの少なくとも一部を吹出口(前面吹出口61及び背面吹出口62)へ導く流路である。
【0038】
流路部70は、第1流路71(例えば、吸い込み流路)と、第2流路72(例えば、吹き出し流路)と、を有する。第1流路71は、吸込口63から下方に延び、手乾燥装置10の下部を介して送風部81まで続く。すなわち、第1流路71は、送風部81よりも上流側に設けられている。第1流路71は、送風部81の作動により、吸込口63から吸い込んだ空気Fを、筐体50の底部へ導く。
【0039】
第2流路72は、流路部70において、送風部81の下流に設けられている。第2流路72は、第1流路71から供給された空気Fの少なくとも一部を、吹出口(前面吹出口61及び背面吹出口62)へ導く。
【0040】
具体的には、
図3に示すように、第2流路72は、送風部81の下流側に位置する共通流路72aと、共通流路72aから分岐する前側流路72b及び背側流路72cを有する。共通流路72aは、例えば、筐体50の前方で送風部81の上方に位置している。前側流路72bは、共通流路72aから上方に向けて延びている。前側流路72bは、筐体50の前側に位置して、上方に向かうにつれて幅広形状となっている。前側流路72bは、共通流路72aから前面吹出口61まで続いており、前面吹出口61へ空気Fを導く。
【0041】
背側流路72cは、共通流路72aから後方に向けて延びる横流路72c1と、横流路72c1から上方に向けて延びる縦流路72c2と、を有している。縦流路72c2は、筐体50の後ろ側に位置して、上方に向かうにつれて幅広形状となっている。背側流路72cは、横流路72c1と縦流路72c2とにより、共通流路72aから背面吹出口62まで続いており、背面吹出口62へ空気Fを導く。
【0042】
手乾燥装置10は、排水口75と、水路76と、水受け部77と、を有する。水受け部77は、乾燥空間SP内の水を集める水受けトレイである。乾燥空間SP内の水は、例えば、使用者の手に付着していた水滴などである。排水口75は、乾燥空間SP内の水を水受け部77へ排出する。水路76は、排水口75と水受け部77とを接続する。水路76は、乾燥空間SP内の水を、排水口75から水受け部77へ導く。
【0043】
排水口75は、筐体50の内面50iに設けられる。排水口75の位置は、吸込口63の位置とは異なる。つまり、排水口75は、吸込口63から離れている。この例では、排水口75は、底面部55に設けられた開口である。
【0044】
具体的には、
図2に示すように、排水口75は、底面部55の一端(左側端)に位置し、吸込口63は、底面部55の他端(右側端)に位置する。換言すると、排水口75は、左側面部54と隣接して設けられ、吸込口63は、右側面部53と隣接して設けられている。このように、吸込口63とは異なる排水口75を設けることにより、乾燥空間SP内の水と空気とを分離させることができる。これにより、流路部70を通過する空気Fがよりきれいになり、使い勝手をより向上させることができる。
【0045】
水路76及び水受け部77は、流路部70から離れている。つまり、水路76及び水受け部77は、流路部70とは独立して設けられる。この例では、水路76は、左側面部54に隣接し、排水口75から下方へ延びている。水受け部77は、水路76の下方に位置する。一方、流路部70の第1流路71は、右側面部53に隣接し、吸込口63から下方へ延びている。
【0046】
例えば、水受け部77の水が空気Fと接触すると、その水に含まれる物質や臭いによって、空気Fが汚れるおそれがある。これに対して、水受け部77の水と、流路部70を通過する空気Fと、を分離することで、流路部70を通過する空気Fが汚れることを抑制できる。これにより、前面吹出口61及び背面吹出口62から吹き出される空気Fの不快な臭いを抑制し、衛生性を向上させることができる。
【0047】
また、例えば、
図2に示すように、底面部55は、吸込口63から排水口75へ向かう下り傾斜を有する。つまり、排水口75の位置は、吸込口63の位置よりも低い。これにより、底面部55上の水は、排水口75へ向かうため、吸込口63から流路部70に水が浸入することを抑制できる。
【0048】
また、底面部55には、リブ57が設けられる。リブ57は、吸込口63の端部から上方に突出している。リブ57によって、底面部55上の水が、吸込口63から流路部70に浸入することを抑制できる。
【0049】
また、
図2に破線で表したように、吸込口63の上方にリブ59を設けてもよい。リブ59は、右側面部53から斜め下方に突出した庇である。リブ59は、上下方向において、吸込口63の少なくとも一部と重なる。リブ59によって、乾燥空間SP内の水が、吸込口63から流路部70に浸入するのを抑制できる。
【0050】
また、手乾燥装置10は、人体検知部80、送風部81、加熱部82、フィルタ部83、及び制御部87を有する。
【0051】
人体検知部80は、背面部52に設けられている。人体検知部80は、開口50Aから乾燥空間SP内に差し入れられた手を検知する。人体検知部80は、例えば、透過型の光センサ(フォトインタラプタ)である。人体検知部80は、これに限ることなく、使用者の手を検出可能な任意のセンサでよい。人体検知部80は、例えば、反射型の光センサ、測距センサ、焦電センサ、静電容量センサ、超音波センサ、及びマイクロ波センサなどでもよい。人体検知部80は、制御部87に接続されている。人体検知部80は、手を検知した場合に、検知信号を制御部87に向けて送信する。
【0052】
送風部81は、流路部70に設けられている。具体的には、送風部81は、第1流路71と第2流路72との間に設けられている。送風部81は、例えば、1つのモータで駆動可能な送風ファンである。送風部81が作動することで、流路部70内において、流路部70の上流から下流へ向かう風が発生する。すなわち、送風部81は、吸込口63に空気Fを吸い込ませ、吸込口63から吸い込んだ空気Fを、流路部70を介して吹出口(前面吹出口61及び背面吹出口62)から乾燥空間SPへ吹き出させる。なお、実施形態においては、送風部は、2つ以上のモータを有していてもよい。手乾燥装置には、1つ以上のモータを有するファンが2つ以上設けられてもよい。送風部81は、制御部87に電気的に接続され、制御部87により作動が制御されている。送風部81は、人体検知部80が人体(手)を検知したときに作動する。
【0053】
加熱部82は、流路部70内の空気Fを暖める。加熱部82は、共通流路72aに設けられ、前面吹出口61及び背面吹出口62に向かう空気Fを加熱可能なヒータとなっている。加熱部82で、空気Fを加熱することにより、前面吹出口61及び背面吹出口62から温風を吹き出させることができる。
【0054】
これにより、例えば、使用者の手を乾燥させる場合に、使用者が冷たさを感じることを緩和することができ、使い勝手を向上させることができる。なお、この例では、加熱部82を設けているが、加熱部82は必要に応じて設けられていればよい。加熱部82は、制御部87に電気的に接続され、制御部87により制御されている。
【0055】
フィルタ部83は、送風部81よりも上流側(第1流路71)に設けられている。フィルタ部83は、流路部70(第1流路71)内を流れる空気F中に含まれる異物(菌や塵埃)を捕集する。
【0056】
フィルタ部83は、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタである。HEPAフィルタは、定格流量で0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集効率を有する。HEPAフィルタの初期圧力損失は、例えば、245Pa以下である。なお、フィルタ部83は、HEPAフィルタでなくてもよい。フィルタ部83は、例えば、粒子捕集効率がHEPAフィルタよりも低いフィルタでもよい。また、流路部70には、フィルタ部83以外の他のフィルタ部が設けられていてもよい。
【0057】
制御部87は、人体検知部80、送風部81、及び加熱部82と電気的に接続されている。制御部87は、人体検知部80の検出結果に応じて、送風部81及び加熱部82の作動を制御する。なお、手乾燥装置10は、複数の制御部87を有していてもよい。
【0058】
以下、実施形態に係る手乾燥装置10における、前面吹出口61や背面吹出口62の配置や吹き出し方向について、詳しく説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る手乾燥装置の一部を示す断面図である。
図4では、筐体50の内面50iの前面部51及び背面部52の上部を拡大して示している。
図4に示すように、側面視において、前面吹出口61よりも上方における前面部51と背面部52との間の距離が最短となる二点を結ぶ直線を第1直線IL1とする。また、側面視において、第1直線IL1を2等分し、第1直線IL1と直交する線を中心線CLとする。また、側面視において、中心線CLと、前面吹出口61の吹き出し方向に延びる軸線AL1と、の交点を第1交点IP1とする。また、側面視において、前面部51の上端51uと、背面部52の上端52uと、を結ぶ直線を第2直線IL2とする。また、側面視において、第1交点IP1を通る垂線を垂線PL1とする。また、側面視において、垂線PL1と、第2直線IL2と、の交点を第2交点IP2とする。
【0059】
実施形態において、第1交点IP1と第2交点IP2との間の第1距離D1は、60mm以上105mm以下である。第1距離D1は、好ましくは70mm以上、より好ましくは75mm以上である。第1距離D1は、好ましくは100mm以下、より好ましくは95mm以下である。
【0060】
第1距離D1を60mm未満とすると、前面吹出口61から吹き出された空気Fが、吸込口63ではなく開口50Aから漏れてしまい、開口50Aから外に水滴が飛散するおそれがある。これに対し、第1距離D1を60mm以上とすることで、前面吹出口61から吹き出された空気Fが使用者の手に当たる位置(第1交点IP1)を、開口50Aからほどよく離すことができる。これにより、使用者の手に当たってから上方(開口50A側)に向かう空気F(吹き返しの風)の影響が少なくなり、使用者の掌から吹き飛ばされた大きな水滴が開口50Aへ舞い上がることを抑制でき、開口50Aから外への水滴の飛散を抑制できる。
【0061】
また、第1距離D1が105mmを超えると、前面吹出口61から吹き出された空気Fが使用者の手に当たる位置(第1交点IP1)が低くなりすぎ、開口50A付近における乾燥力が低下するため、開口50A付近で乾燥を行う場合に、乾燥にかかる時間が長くなるおそれがある。これに対し、第1距離D1を105mm以下とすることで、前面吹出口61から吹き出された空気Fが使用者の手に当たる位置(第1交点IP1)が低くなりすぎない。これにより、開口50A付近における乾燥力の低下を抑制できるため、開口50A付近で乾燥を行う場合であっても、乾燥にかかる時間が長くなることを抑制できる。
【0062】
このように、実施形態に係る手乾燥装置10によれば、開口50Aから外への水滴の飛散を抑制できるとともに、乾燥にかかる時間が長くなることを抑制できる。したがって、高速乾燥を実現しつつ、吸込口63からの空気の吸い込みによって乾燥空間SP内に最低限の負圧を発生させるだけで、開口50Aから外への大小の水滴の飛散を効果的に抑制することができる。
【0063】
また、第1距離D1を70mm以上とすることで、開口50Aから外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。第1距離D1を75mm以上とすることで、開口50Aから外への水滴の飛散をさらに効果的に抑制できる。また、第1距離D1を100mm以下とすることで、乾燥にかかる時間が長くなることをより効果的に抑制できる。第1距離D1を95mm以下とすることで、乾燥にかかる時間が長くなることをさらに効果的に抑制できる。
【0064】
また、前面吹出口61は、下方に向けて空気を吹き出すことが好ましい。つまり、前面吹出口61の中心61cを通る水平線を水平線HL1としたとき、軸線AL1と水平線HL1との間の角度θ2は、0°よりも大きいことが好ましい。角度θ2は、より好ましくは10°以上40°以下、さらに好ましくは20°以上30°以下である。なお、角度θ2は、劣角である。
【0065】
前面吹出口61が下方に向けて空気Fを吹き出すことで、前面吹出口61が上方に向けて空気を吹き出す場合や前面吹出口61が水平方向に向けて空気を吹き出す場合に比べて、開口50Aから外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。角度θ2を10°以上40°以下とすることで、開口50Aから外への水滴の飛散をさらに効果的に抑制できる。角度θ2を20°以上30°以下とすることで、開口50Aから外への水滴の飛散をさらに効果的に抑制できる。
【0066】
また、中心線CLと軸線AL1との間の角度θ1は、65°以下であることが好ましい。角度θ1は、より好ましくは60°以下である。また、角度θ1は、より好ましくは45°以上である。なお、角度θ1は、劣角である。
【0067】
角度θ1を65°以下とすることで、前面吹出口61から吹き出された空気Fが使用者の手に当たるときの角度を小さくできる。これにより、使用者の手に当たってから下方に向かう空気の割合を多くし、使用者の手に当たってから上方に向かう空気の割合を少なくすることができる。したがって、角度θ1を65°よりも大きくした場合(例えば、前面吹出口61の位置を低くすることで第1距離D1を所定の範囲内にした場合)と比べて、使用者の手に当たってから上方に向かう空気(吹き返しの風)の影響が少なくなり、開口50Aから外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。また、角度θ1を60°以下とすることで、開口50Aから外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。
【0068】
また、角度θ1を45°以上とすることで、前面吹出口61から吹き出された空気Fが使用者の手に当たるときの角度が小さくなりすぎることを抑制できる。これにより、前面吹出口61と、前面吹出口61から吹き出された空気Fが使用者の手に当たる位置(第1交点IP1)と、の間の距離が長くなりすぎることを抑制できる。したがって、前面吹出口61から吹き出された空気Fが使用者の手に当たる位置(第1交点IP1)における風速が小さくなりすぎることを抑制し、乾燥にかかる時間が長くなることを抑制できる。
【0069】
また、前面部51の上端51uと前面吹出口61の中心61cとの間の上下方向の第2距離D2は、50mm以上70mm以下であることが好ましい。第2距離D2は、より好ましくは55mm以上65mm以下である。
【0070】
第2距離D2を50mm以上70mm以下とすることで、前面吹出口61から吹き出された空気Fが使用者の手に当たる位置(第1交点IP1)を、前面吹出口61よりも下側における最適な位置に配置できる。これにより、開口50Aから外への水滴の飛散をより効果的に抑制できるとともに、乾燥にかかる時間が長くなることをより効果的に抑制できる。第2距離D2を55mm以上65mm以下とすることで、開口50Aから外への水滴の飛散をさらに効果的に抑制できるとともに、乾燥にかかる時間が長くなることをさらに効果的に抑制できる。
【0071】
また、前面吹出口61の中心61cと底面部55との間の上下方向の第3距離D3(
図3参照)は、200mm以上240mm以下であることが好ましい。第3距離D3は、より好ましくは210mm以上230mm以下である。
【0072】
上述のように、底面部55は、例えば、傾斜を有する。この場合、第3距離D3は、例えば、右側面部53から左側面部54までの間の1/4地点における前面吹出口61の中心61cと底面部55との間の上下方向の距離として定義される。より具体的には、第3距離D3は、以下のように定義される。右側面部53から左側面部54までの間に位置し、右側面部53及び左側面部54から等距離の平面を第1平面とする。右側面部53と第1平面との間に位置し、右側面部53及び第1平面から等距離の平面を第2平面とする。第2平面と底面部55とが交差する位置において最も高さが低い点を最低点とする。前面吹出口61の中心61cと最低点との間の上下方向の距離を第3距離D3とする。
【0073】
第3距離D3を200mm以上とすることで、前面吹出口61よりも下方に所定以上の深さの空間を確保できる。これにより、使用者の手に当たってから下方に向かった空気が、底面部55に当たって上方に向かうことを抑制できる。したがって、開口50Aから外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。第3距離D3を210mm以上とすることで、開口50Aから外への水滴の飛散をさらに効果的に抑制できる。
【0074】
また、第3距離D3を240mm以下とすることで、乾燥空間SPが大きくなりすぎることを抑制できる。これにより、装置の大型化を抑制できる。第3距離D3を230mm以下とすることで、装置の大型化をより効果的に抑制できる。
【0075】
前面吹出口61よりも上方における前面部51と背面部52との最短距離Dminは、75mm以上90mm以下であることが好ましい。最短距離Dminは、より好ましくは80mm以上85mm以下である。
【0076】
この手乾燥装置によれば、最短距離Dminを75mm以上90mm以下とすることで、前面吹出口61と、前面吹出口61から吹き出された空気Fが使用者の手に当たる位置(第1交点IP1)と、の間の距離が長くなりすぎることを抑制できる。これにより、前面吹出口61から吹き出された空気Fが使用者の手に当たる位置(第1交点IP1)における風速が小さくなりすぎることを抑制し、乾燥にかかる時間が長くなることを抑制できる。また、乾燥空間SPの十分な前後幅を確保でき、手を乾燥空間SPの奥深くまで差し込みたくないという心理を使用者に与えることを抑制できる。これらにより、乾燥にかかる時間が長くなることをより効果的に抑制できる。最短距離Dminを80mm以上85mm以下とすることで、乾燥にかかる時間が長くなることをさらに効果的に抑制できる。
【0077】
また、
図4に示すように、側面視において、中心線CLと、背面吹出口62の吹き出し方向に延びる軸線AL2と、の交点を第3交点IP3とする。また、側面視において、第3交点IP3を通る垂線を垂線PL2とする。また、側面視において、垂線PL2と、第2直線IL2と、の交点を第4交点IP4とする。なお、第1直線IL1は、側面視において、背面吹出口62よりも上方における前面部51と背面部52との間の距離が最短となる二点を結ぶ直線であってもよい。
【0078】
実施形態において、第3交点IP3と第4交点IP4との間の第4距離D4は、65mm以上110mm以下である。第4距離D4は、好ましくは80mm以上、より好ましくは85mm以上である。第4距離D4は、好ましくは105mm以下、より好ましくは100mm以下である。
【0079】
第4距離D4を65mm未満とすると、背面吹出口62から吹き出された空気Fが、吸込口63ではなく開口50Aから漏れてしまい、開口50Aから外に水滴が飛散するおそれがある。これに対し、第4距離D4を65mm以上とすることで、背面吹出口62から吹き出された空気Fが使用者の手に当たる位置(第3交点IP3)を、開口50Aからほどよく離すことができる。これにより、使用者の手に当たってから上方(開口50A側)に向かう空気F(吹き返しの風)の影響が少なくなり、使用者の掌から吹き飛ばされた大きな水滴が開口50Aへ舞い上がることを抑制でき、開口50Aから外への水滴の飛散を抑制できる。
【0080】
また、第4距離D4が110mmを超えると、背面吹出口62から吹き出された空気Fが使用者の手に当たる位置(第3交点IP3)が低くなりすぎ、開口50A付近における乾燥力が低下するため、開口50A付近で乾燥を行う場合に、乾燥にかかる時間が長くなるおそれがある。これに対し、第4距離D4を110mm以下とすることで、背面吹出口62から吹き出された空気Fが使用者の手に当たる位置(第3交点IP3)が低くなりすぎない。これにより、開口50A付近における乾燥力の低下を抑制できるため、開口50A付近で乾燥を行う場合であっても、乾燥にかかる時間が長くなることを抑制できる。
【0081】
また、第4距離D4を80mm以上とすることで、開口50Aから外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。第4距離D4を85mm以上とすることで、開口50Aから外への水滴の飛散をさらに効果的に抑制できる。また、第4距離D4を105mm以下とすることで、乾燥にかかる時間が長くなることをより効果的に抑制できる。第4距離D4を100mm以下とすることで、乾燥にかかる時間が長くなることをさらに効果的に抑制できる。
【0082】
また、背面吹出口62は、下方に向けて空気を吹き出すことが好ましい。つまり、背面吹出口62の中心62cを通る水平線を水平線HL2としたとき、軸線AL2と水平線HL2との間の角度θ4は、0°よりも大きいことが好ましい。角度θ4は、より好ましくは25°以上55°以下、さらに好ましくは35°以上45°以下である。なお、角度θ4は、劣角である。
【0083】
背面吹出口62が下方に向けて空気Fを吹き出すことで、背面吹出口62が上方に向けて空気を吹き出す場合や背面吹出口62が水平方向に向けて空気を吹き出す場合に比べて、開口50Aから外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。角度θ4を25°以上55°以下とすることで、開口50Aから外への水滴の飛散をさらに効果的に抑制できる。角度θ4を35°以上45°以下とすることで、開口50Aから外への水滴の飛散をさらに効果的に抑制できる。
【0084】
また、中心線CLと軸線AL2との間の角度θ3は、70°以下であることが好ましい。角度θ3は、より好ましくは65°以下である。また、角度θ3は、より好ましくは50°以上である。なお、角度θ3は、劣角である。
【0085】
角度θ3を70°以下とすることで、背面吹出口62から吹き出された空気Fが使用者の手に当たるときの角度を小さくできる。これにより、使用者の手に当たってから下方に向かう空気の割合を多くし、使用者の手に当たってから上方に向かう空気の割合を少なくすることができる。したがって、角度θ3を70°よりも大きくした場合(例えば、背面吹出口62の位置を低くすることで第4距離D4を所定の範囲内にした場合)と比べて、使用者の手に当たってから上方に向かう空気(吹き返しの風)の影響が少なくなり、開口50Aから外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。また、角度θ3を65°以下とすることで、開口50Aから外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。
【0086】
また、角度θ3を50°以上とすることで、背面吹出口62から吹き出された空気Fが使用者の手に当たるときの角度が小さくなりすぎることを抑制できる。これにより、背面吹出口62と、背面吹出口62から吹き出された空気Fが使用者の手に当たる位置(第3交点IP3)と、の間の距離が長くなりすぎることを抑制できる。したがって、背面吹出口62から吹き出された空気Fが使用者の手に当たる位置(第3交点IP3)における風速が小さくなりすぎることを抑制し、乾燥にかかる時間が長くなることを抑制できる。
【0087】
また、背面部52の上端52uと背面吹出口62の中心62cとの間の上下方向の第5距離D5は、50mm以上70mm以下であることが好ましい。第5距離D5は、より好ましくは55mm以上65mm以下である。
【0088】
第5距離D5を50mm以上70mm以下とすることで、背面吹出口62から吹き出された空気Fが使用者の手に当たる位置(第3交点IP3)を、背面吹出口62よりも下側における最適な位置に配置できる。これにより、開口50Aから外への水滴の飛散をより効果的に抑制できるとともに、乾燥にかかる時間が長くなることをより効果的に抑制できる。第5距離D5を55mm以上65mm以下とすることで、開口50Aから外への水滴の飛散をさらに効果的に抑制できるとともに、乾燥にかかる時間が長くなることをさらに効果的に抑制できる。
【0089】
また、背面吹出口62の中心62cと底面部55との間の上下方向の第6距離D6(
図3参照)は、200mm以上240mm以下であることが好ましい。第6距離D6は、より好ましくは210mm以上230mm以下である。
【0090】
上述のように、底面部55は、例えば、傾斜を有する。この場合、第6距離D6は、例えば、右側面部53から左側面部54までの間の1/4地点における背面吹出口62の中心62cと底面部55との間の上下方向の距離として定義される。より具体的には、第6距離D6は、背面吹出口62の中心62cと上述の最低点との間の上下方向の距離として定義される。
【0091】
第6距離D6を200mm以上とすることで、背面吹出口62よりも下方に所定以上の深さの空間を確保できる。これにより、使用者の手に当たってから下方に向かった空気が、底面部55に当たって上方に向かうことを抑制できる。したがって、開口50Aから外への水滴の飛散をより効果的に抑制できる。第6距離D6を210mm以上とすることで、開口50Aから外への水滴の飛散をさらに効果的に抑制できる。
【0092】
また、第6距離D6を240mm以下とすることで、装置の大型化を抑制できる。第6距離D6を230mm以下とすることで、装置の大型化をより効果的に抑制できる。
【0093】
吸込口63の断面積は、2500mm2以上3500mm2以下であることが好ましい。前面吹出口61の断面積は、300mm2以上400mm2以下であることが好ましい。背面吹出口62の断面積は、100mm2以上200mm2以下であることが好ましい。
【0094】
高速な乾燥のためには、前面吹出口61及び背面吹出口62は、高速に空気を吹き出すことが望ましい。具体的には、例えば、前面吹出口61及び背面吹出口62に空気を送るための送風部81が駆動している駆動時において、各吹出し口(前面吹出口61及び背面吹出口62のそれぞれ)が吹き出す空気の風速は、好ましくは90m/s(メートル毎秒)以上、より好ましくは92m/s以上である。また、前面吹出口61及び背面吹出口62に空気を送るための送風部81が駆動している駆動時において、前面吹出口61及び背面吹出口62から吹き出される空気の風量の合計は、好ましくは2.0m3/min(立方メートル毎時)以上、より好ましくは2.2m3/min以上である。これにより、使用者の手を例えば10秒程度で乾燥可能な高速乾燥を実現できる。
【0095】
なお、この例では、前面部51の上端51u及び背面部52の上端52uは、同じ高さに位置する。つまり、この例では、第2直線IL2は、水平方向に沿う。前面部51の上端51uは、背面部52の上端52uと異なる高さに位置していてもよい。前面部51の上端51uは、背面部52の上端52uよりも低い位置に位置していてもよいし、背面部52の上端52uよりも高い位置に位置していてもよい。つまり、第2直線IL2は、前方に傾斜する線であってもよいし、後方に傾斜する線であってもよい。
【0096】
実施形態は、以下の構成を含んでもよい。
【0097】
(構成1)
前面部、前記前面部と対向する背面部、前記前面部の右側端と前記背面部の右側端とを接続する右側面部、前記前面部の左側端と前記背面部の左側端とを接続する左側面部、及び前記前面部の下端と前記背面部の下端とを接続する底面部を有する内面と、前記内面によって囲まれた乾燥空間に使用者が手を差し入れるための開口と、を有する筐体と、
前記内面に設けられ、前記乾燥空間内の空気を吸い込む吸込口と、
前記前面部に設けられ、前記乾燥空間内に向けて空気を吹き出す前面吹出口と、
を備え、
側面視において、前記前面吹出口よりも上方における前記前面部と前記背面部との間の距離が最短となる二点を結ぶ直線を第1直線とし、前記第1直線を2等分し前記第1直線と直交する中心線と前記前面吹出口の吹き出し方向に延びる軸線との交点を第1交点とし、前記前面部の上端と前記背面部の上端とを結ぶ直線を第2直線とし、前記第1交点を通る垂線と前記第2直線との交点を第2交点としたとき、
前記第1交点と前記第2交点との間の第1距離は、60mm以上105mm以下であることを特徴とする手乾燥装置。
【0098】
(構成2)
前記第1距離は、75mm以上であることを特徴とする構成1記載の手乾燥装置。
【0099】
(構成3)
前記前面吹出口は、下方に向けて空気を吹き出し、
前記中心線と前記軸線との間の角度は、65°以下であることを特徴とする構成1または2に記載の手乾燥装置。
【0100】
(構成4)
前記角度は、60°以下であることを特徴とする構成3記載の手乾燥装置。
【0101】
(構成5)
前記角度は、45°以上であることを特徴とする構成1~4のいずれか1つに記載の手乾燥装置。
【0102】
(構成6)
前記前面部の上端と前記前面吹出口の中心との間の上下方向の第2距離は、50mm以上70mm以下であり、
前記前面吹出口の中心と前記底面部との間の上下方向の第3距離は、200mm以上240mm以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の手乾燥装置。
【0103】
(構成7)
側面視において、前記前面吹出口よりも上方における前記前面部と前記背面部との最短距離は、75mm以上90mm以下であることを特徴とする構成1~6のいずれか1つに記載の手乾燥装置。
【0104】
以上のように、実施形態によれば、開口から外への水滴の飛散を抑制できるとともに、乾燥にかかる時間が長くなることを抑制できる手乾燥装置が提供される。
【0105】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、手乾燥装置などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0106】
10:手乾燥装置
50:筐体
50A:開口
50i:内面
50j:外面
51:前面部
51u:上端
52:背面部
52u:上端
53:右側面部
54:左側面部
55:底面部
57、59:リブ
61:前面吹出口
61c:中心
62:背面吹出口
62c:中心
63:吸込口
70:流路部
71:第1流路
72:第2流路
72a:共通流路
72b:前側流路
72c:背側流路
72c1:横流路
72c2:縦流路
75:排水口
76:水路
77:水受け部
80:人体検知部
81:送風部
82:加熱部
83:フィルタ部
87:制御部
91:正面
92:背面
93:右側面
94:左側面
95:底面
θ1~θ4:角度
AL1、AL2:軸線
CL:中心線
D1~D6:第1~第6距離
Dmin:最短距離
F:空気
HL1、HL2:水平線
IL1、IL2:第1、第2直線
IP1~IP4:第1~第4交点
PL1、PL2:垂線
SP:乾燥空間