(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092722
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01F 12/10 20060101AFI20240701BHJP
A01D 69/00 20060101ALI20240701BHJP
A01D 41/12 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A01F12/10 K
A01D69/00 303Z
A01D41/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208850
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祥宏
(72)【発明者】
【氏名】菅 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】光原 昌希
(72)【発明者】
【氏名】増本 涼太
(72)【発明者】
【氏名】池田 太
【テーマコード(参考)】
2B074
2B076
【Fターム(参考)】
2B074AA02
2B074AB01
2B074AC02
2B074AD05
2B074AD06
2B074AE01
2B074AF02
2B074BA12
2B074BA18
2B074DA01
2B074DA02
2B074DC07
2B074DD01
2B074DE03
2B076AA03
2B076BA03
2B076BA07
2B076CC02
2B076DA10
2B076DB06
2B076DC01
2B076DC03
(57)【要約】
【課題】フィードチェーンクラッチの操作機構を簡素化したコンバインを実現する。
【解決手段】コンバインは、脱穀装置6と、刈取穀稈を脱穀装置に搬送するフィードチェーン15と、フィードチェーン15に動力を伝達する伝達状態とフィードチェーン15に動力を伝達しない遮断状態とに切換可能なフィードチェーンクラッチと、アクチュエータ100と、アクチュエータ100の第1動作により作動してフィードチェーンクラッチを伝達状態または遮断状態に切り換える第1機構Aと、アクチュエータ100の動作であって第1動作と異なる第2動作により作動してフィードチェーンクラッチを伝達状態から遮断状態へ切り換える第2機構Bと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置と、
刈取穀稈を前記脱穀装置に搬送するフィードチェーンと、
前記フィードチェーンに動力を伝達する伝達状態と前記フィードチェーンに動力を伝達しない遮断状態とに切換可能なフィードチェーンクラッチと、
アクチュエータと、
前記アクチュエータの第1動作により作動して前記フィードチェーンクラッチを前記伝達状態または前記遮断状態に切り換える第1機構と、
前記アクチュエータの動作であって前記第1動作と異なる第2動作により作動して前記フィードチェーンクラッチを前記伝達状態から前記遮断状態へ切り換える第2機構と、を備えるコンバイン。
【請求項2】
前記第1動作は、前記アクチュエータの正転動作及び逆転動作のうちの一方の動作であり、
前記第2動作は、前記アクチュエータの正転動作及び逆転動作のうちの他方の動作である請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第1機構は、
前記フィードチェーンクラッチへ操作力を伝達する操作ワイヤと、
前記操作ワイヤを前記フィードチェーンクラッチに向けて付勢する付勢部材と、
前記アクチュエータの前記第1動作に伴って移動する第1部材と、
前記操作ワイヤの操作端が接続されると共に前記第1部材に押されて回転移動する第2部材と、を備える請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記第1部材は、前記第2部材の回転の軸芯と同一の軸芯周りに回転移動する請求項3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記第2機構は、前記第1動作の際に空転し且つ前記第2動作の際に動力を下流へ伝達するラチェット機構を備える請求項1に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記第2機構は、
前記フィードチェーンクラッチを操作する操作部材と、
前記操作部材を所定の方向に付勢する付勢機構と、
前記操作部材を所定の位置に保持すると共に前記アクチュエータの前記第2動作に応じて前記操作部材の保持を解除する位置保持機構と、を備える請求項5に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記第1機構及び前記第2機構が前記脱穀装置の左側面に配置されている請求項1に記載のコンバイン。
【請求項8】
前記アクチュエータが前記脱穀装置の左側面における前記フィードチェーンの下方に配置されている請求項7に記載のコンバイン。
【請求項9】
第1操作具と、
第2操作具と、
前記アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記第1操作具が操作されたことに応じて前記アクチュエータに前記第1動作を実行させ、前記第2操作具が操作されたことに応じて前記アクチュエータに前記第2動作を実行させる請求項1から8のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項10】
前記第1操作具が、操縦者が搭乗する運転部に配置されている請求項9に記載のコンバイン。
【請求項11】
前記第2操作具が、機体の左側面に配置されている請求項10に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のコンバインは、フィードチェーンクラッチを操作する機構として、刈取部の上昇と下降に連動してフィードチェーンクラッチを遮断操作と下降操作とを行う昇降連動操作機構を備えると共に、停止スイッチの人為操作に連動してフィードチェーンクラッチの遮断操作を行う強制遮断操作機構を備えている。
【0003】
強制遮断操作機構は、脱穀装置の側面に設けられた遮断用モータによって動作する。連動停止操作機構は、機械式の機構であって、刈取部が非刈取レベルまで上昇した際に、この上昇に連動して連動ワイヤの張力が上昇してクラッチ操作アームを切り姿勢に操作する。刈取部が刈取レベルまで下降した際に、連動ワイヤの張力が低下してクラッチ操作アーム37を入り姿勢に操作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
刈取部は機体における前部に位置し、フィードチェーンクラッチは機体における後部に位置する。そうすると、強制遮断操作機構の連動ワイヤを機体における前部から後部まで長く配設する必要がある。加えて連動停止操作機構は、刈取部の昇降と連動する機械式の機構であるから、構造が複雑である。すなわち従来のフィードチェーンクラッチの操作機構には、構成を簡素化する余地がある。
【0006】
本発明の目的は、フィードチェーンクラッチの操作機構を簡素化したコンバインを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する手段として、本発明のコンバインは、脱穀装置と、刈取穀稈を前記脱穀装置に搬送するフィードチェーンと、前記フィードチェーンに動力を伝達する伝達状態と前記フィードチェーンに動力を伝達しない遮断状態とに切換可能なフィードチェーンクラッチと、アクチュエータと、前記アクチュエータの第1動作により作動して前記フィードチェーンクラッチを前記伝達状態または前記遮断状態に切り換える第1機構と、前記アクチュエータの動作であって前記第1動作と異なる第2動作により作動して前記フィードチェーンクラッチを前記伝達状態から前記遮断状態へ切り換える第2機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記の特徴によれば、アクチュエータにより作動してフィードチェーンクラッチの状態を切り換える第1機構及び第2機構を備えるので、フィードチェーンクラッチの操作機構を簡素化したコンバインを実現することが可能となる。例えば、アクチュエータをフィードチェーンクラッチの近くに配置すれば、従来のコンバインの様に連動ワイヤを機体前部の刈取部から機体後部のフィードチェーンクラッチまで長く配設する必要がない。また、従来のコンバインの様に刈取部の昇降と連動する機械式の機構を設ける必要がない。このように上記の構成によれば、フィードチェーンクラッチの操作機構を簡素化したコンバインを実現することが可能となる。
【0009】
本発明において、前記第1動作は、前記アクチュエータの正転動作及び逆転動作のうちの一方の動作であり、前記第2動作は、前記アクチュエータの正転動作及び逆転動作のうちの他方の動作であると好ましい。
【0010】
上記の特徴によれば、アクチュエータの正転及び逆転によりフィードチェーンクラッチが操作されるので、制御の態様を簡素化することができる。
【0011】
本発明において、前記第1機構は、前記フィードチェーンクラッチへ操作力を伝達する操作ワイヤと、前記操作ワイヤを前記フィードチェーンクラッチに向けて付勢する付勢部材と、前記アクチュエータの前記第1動作に伴って移動する第1部材と、前記操作ワイヤの操作端が接続されると共に前記第1部材に押されて回転移動する第2部材と、を備えると好ましい。
【0012】
上記の特徴によれば、回転移動する第2部材により操作ワイヤが操作されるので、フィードチェーンクラッチの入り切りがスムースに行われる。
【0013】
本発明において、前記第1部材は、前記第2部材の回転の軸芯と同一の軸芯周りに回転移動すると好ましい。
【0014】
上記の特徴によれば、第1部材と第2部材とが同一の軸芯周りに回動するので、第1機構をコンパクトに構成することが可能となる。
【0015】
本発明において、前記第2機構は、前記第1動作の際に空転し且つ前記第2動作の際に動力を下流へ伝達するラチェット機構を備えると好ましい。
【0016】
上記の特徴によれば、ラチェット機構が第1動作の際に空転するので、アクチュエータの第1動作による第1機構への影響を抑制することができる。
【0017】
本発明において、前記第2機構は、前記フィードチェーンクラッチを操作する操作部材と、前記操作部材を所定の方向に付勢する付勢機構と、前記操作部材を所定の位置に保持すると共に前記アクチュエータの前記第2動作に応じて前記操作部材の保持を解除する位置保持機構と、を備えると好ましい。
【0018】
上記の特徴によれば、第2操作によって操作部材の保持が解除され、付勢機構の付勢力によって操作部材がフィードチェーンクラッチを操作する。従って、第2機構によるフィードチェーンクラッチの操作が素早く行われる。
【0019】
本発明において、前記第1機構及び前記第2機構が前記脱穀装置の左側面に配置されていると好ましい。
【0020】
上記の特徴によれば、脱穀装置の左側面に配置されることが多いフィードチェーンクラッチの近傍に第1機構及び第2機構が配置されるので、フィードチェーンクラッチの操作機構を簡素化することができる。
【0021】
本発明において、前記アクチュエータが前記脱穀装置の左側面における前記フィードチェーンの下方に配置されていると好ましい。
【0022】
上記の特徴によれば、脱穀装置の左側面に配置されることが多いフィードチェーンクラッチの近傍にアクチュエータが配置されるので、フィードチェーンクラッチの操作機構を簡素化することができる。
【0023】
本発明において、第1操作具と、第2操作具と、前記アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1操作具が操作されたことに応じて前記アクチュエータに前記第1動作を実行させ、前記第2操作具が操作されたことに応じて前記アクチュエータに前記第2動作を実行させると好ましい。
【0024】
上記の特徴によれば、第1操作具及び第2操作具により、フィードチェーンクラッチを操作することができる。
【0025】
本発明において、前記第1操作具が、操縦者が搭乗する運転部に配置されていると好ましい。
【0026】
上記の特徴によれば、運転部に搭乗した操縦者がフィードチェーンクラッチを伝達状態または遮断状態へ切り換えることができる。
【0027】
本発明において、前記第2操作具が、機体の左側面に配置されていると好ましい。
【0028】
上記の特徴によれば、機体の左方にいるオペレータがフィードチェーンクラッチを遮断状態へ容易に切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図4】フィードチェーンに対する伝動機構の断面図である。
【
図5】フィードチェーンクラッチを操作する機構を示す側面図である。
【
図6】伝達状態における遮断切換操作機構を示す平面図である。
【
図7】指令停止操作機構により遮断状態に切り換わった状態における遮断切換操作機構を示す平面図である。
【
図8】連動停止操作機構により遮断状態に切り換わった状態における遮断切換操作機構を示す平面図である。
【
図12】第1動作が行われた状態の作動機構の要部を示す側面図である。
【
図13】第1動作が行われた状態の作動機構の要部を示す側面図である。
【
図14】第2動作が行われた状態の作動機構の要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るコンバインの一例である自脱型コンバインについて、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0031】
〔全体構成〕
図1及び
図2に示すように、自脱型コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1,1によって自走する走行機体2の前部に、植立穀稈を刈り取る刈取部3が備えられている。走行機体2の前部右側に、キャビン4にて周囲が覆われた運転部5が備えられている。運転部5の後方には、刈取部3にて刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀装置6と、脱穀処理にて得られた穀粒を貯留する穀粒タンク7とが、横方向に並ぶ状態で配備されている。運転部5における運転座席8の下方に機体各部を駆動する動力源としてのエンジン9が備えられている。脱穀装置6への動力伝達を入切する脱穀クラッチ6a(
図15)が設けられている。
【0032】
この実施形態では、機体の前後方向を定義するときは、作業状態における機体進行方向に沿って定義し、機体の左右方向を定義するときは、機体進行方向視で見た状態で左右を定義する。すなわち、図面において、符号(FW)で示す方向が機体前側、
図1及び
図2に符号(BW)で示す方向が機体後側である。符号(LH)で示す方向が機体左側、符号(RH)で示す方向が機体右側である。符号(UP)で示す方向が上、符号(DW)で示す方向が下である。
【0033】
刈取部3は、刈取対象となる植立穀稈の株元を分草案内する分草具10、分草された植立穀稈を縦姿勢に引き起こす複数の引き起こし装置11、引き起された植立穀稈の株元を切断するバリカン型の刈取装置12、刈取穀稈を縦姿勢から徐々に横倒れ姿勢になるように姿勢変更しながら後方に搬送して脱穀装置6に供給する搬送装置13等を備えている。搬送装置13の上方側は防塵カバー14によって覆われている。
【0034】
刈取部3は、油圧式の昇降シリンダ3a(
図15)によって昇降可能なように構成されている。また、刈取部3への動力伝達を入切する刈取クラッチ3b(
図15)が設けられている。
【0035】
脱穀装置6の左側部には、刈取穀稈を脱穀装置6に搬送するフィードチェーン15と、その上方側に対向して設けられた挟持レール16とが備えられている。脱穀装置6の後方には、脱穀装置6からの排藁を切断する排藁カッタ17が備えられている。穀粒タンク7には、穀粒タンク7に貯留された穀粒を機外に排出する穀粒排出装置18が備えられている。
【0036】
脱穀装置6は、刈取穀稈の株元側をフィードチェーン15と挟持レール16とによって挟持搬送しながら、刈取穀稈の穂先側を扱室19内で脱穀処理する。扱室19には、扱胴20が設けられている。
【0037】
〔フィードチェーンに対する伝動構造〕
図3に示すように、フィードチェーン15は、後部側に位置する駆動スプロケット47と、前部側に位置する従動スプロケット48とにわたって巻回されている。フィードチェーン15に動力を伝達する伝達状態とフィードチェーン15への動力を遮断する遮断状態とに切り換え可能なフィードチェーンクラッチ49が備えられている。フィードチェーンクラッチ49は、駆動スプロケット47を回転可能に支持する駆動軸50に備えられている。
【0038】
図4に示すように、エンジン9からの動力は、伝動ケース54を介してフィードチェーンクラッチ49に伝達される。伝動ケース54について詳述すると、エンジン9からの動力は、伝動ベルト51及び入力プーリ52を介して中継軸53に伝達され、中継軸53からギア55,56を介して排塵ファン22の回転軸57に伝達される。さらに、回転軸57からの動力が2段階の減速用ギア機構58を介して、駆動軸50に相対回転可能に外挿された駆動ギア59に伝達される。駆動ギア59からの動力は、フィードチェーンクラッチ49を介して断続可能にフィードチェーン15の駆動スプロケット47に伝達される。
【0039】
駆動軸50に一体回転可能に且つ軸芯方向に移動可能に従動側シフト部材60がスプライン外嵌されている。駆動ギア59のうち従動側シフト部材60に対向する側の面には噛合い用の爪部からなる駆動側の噛み合い部61が形成されている。従動側シフト部材60のうち駆動ギア59に対向する側の面には噛合い用の爪部からなる従動側の噛み合い部62が形成されている。フィードチェーンクラッチ49は、駆動側の噛み合い部61と従動側の噛み合い部62とにより構成されている。減速用ギア機構58からの動力が駆動ギア59に伝達され、駆動ギア59からの動力がフィードチェーンクラッチ49を介して、駆動軸50及び駆動スプロケット47を介してフィードチェーン15に伝達される。
【0040】
フィードチェーンクラッチ49は、従動側シフト部材60が駆動ギア59側に移動して駆動側の噛み合い部61と従動側の噛み合い部62とが噛み合う伝達状態と、従動側シフト部材60が駆動スプロケット47側に移動して駆動側の噛み合い部61と従動側の噛み合い部62とが噛み合いを解除する遮断状態とに切り換え可能である。従動側シフト部材60を駆動ギア59側に移動付勢するコイルバネ63が駆動軸50に外挿されている。すなわち、従動側シフト部材60はクラッチ入位置側に付勢されている。
【0041】
駆動軸50における従動側シフト部材60に対して駆動スプロケット47側に位置する箇所に、多板摩擦式の制動機構64が設けられている。制動機構64は、後述するような外部からの操作力によって従動側シフト部材60が切位置に操作されるのに伴って、その従動側シフト部材60に制動力を付与する構成となっている。
【0042】
〔フィードチェーンクラッチの操作に関する構成〕
本実施形態のコンバインは、電動モータ100(アクチュエータの一例)と、第1機構Aと、第2機構Bと、を備える。第1機構Aは、電動モータ100の第1動作により作動してフィードチェーンクラッチを伝達状態または遮断状態に切り換える。第2機構Bは、電動モータ100の動作であって第1動作と異なる第2動作により作動してフィードチェーンクラッチを伝達状態から遮断状態へ切り換える。
【0043】
第1機構A及び第2機構Bは、フィードチェーンクラッチ49の伝達状態に対応する入位置と遮断状態に対応する切位置とに切り換え操作可能な操作部65に接続されている。第1機構Aは、後述する連動停止操作機構109を含む。第2機構Bは、人為的な停止指令に基づいて、操作部65を操作してフィードチェーンクラッチ49を遮断状態に切り換える指令停止操作機構66を含む。操作部65と指令停止操作機構66とによって、フィードチェーンクラッチ49を遮断状態に切り換え可能な遮断切換操作機構67が構成されている。
【0044】
〔操作部〕
操作部65について説明する。
図4~
図6に示すように、操作部65には、駆動ギア59及び従動側シフト部材60とを切り離し操作可能なシフトフォーク式の操作部材としてのシフター部材68と、シフター部材68の回動軸芯周りにシフター部材68と一体回動可能なクラッチ操作アーム69と、が備えられている。シフター部材68は、伝動ケース54内に収容されている。シフター部材68は、後上がり傾斜方向に沿う軸芯Y4周りで回動可能に伝動ケース54に支持される支持軸部68aと、従動側シフト部材60の外周部に係合する係合操作部68bとを有する。
【0045】
支持軸部68aの伝動ケース54の外方側に突出する箇所に、クラッチ操作アーム69が一体回動可能に連結されている。クラッチ操作アーム69は、直線状に延びる帯板状に形成され、長手方向中間部が支持軸部68aに連結されている。クラッチ操作アーム69は、長手方向が脱穀装置6の側壁6Aに略沿うように設けられ、左右方向の設置スペースのコンパクト化を図っている。
【0046】
コイルバネ63の付勢力により従動側シフト部材60が駆動ギア59側に移動付勢されるので、クラッチ操作アーム69は入位置(伝達状態)に回動付勢されている。外部からの操作力によって、クラッチ操作アーム69が所定方向、具体的には
図6で示す平面視で左方向に回動操作されると、係合操作部68bが従動側シフト部材60を噛み合いを解除する方向にシフト操作させることができるように構成されている。
【0047】
〔指令停止操作機構〕
次に、指令停止操作機構66について説明する。
図5及び
図6に示すように、指令停止操作機構66には、操作部65を切位置に切り換わるように付勢する付勢機構としての遮断用コイルバネ70、操作部65を入位置に位置保持する位置保持機構71、操作部65と位置保持機構71とを連係し、かつ、遮断用コイルバネ70による付勢力を受ける連係機構72、等が備えられている。
【0048】
遮断用コイルバネ70は、従動側シフト部材60をクラッチ入位置側に付勢するコイルバネ63の付勢力よりも大きい付勢力を有している。位置保持機構71による操作部65の入位置での位置保持は、後述する作動機構73により解除される。
【0049】
連係機構72について説明する。
図5及び
図6に示すように、連係機構72は、位置保持機構71によって操作部65を入位置に保持するように連係するとともに、作動機構73により位置保持が解除されると、遮断用コイルバネ70の付勢力によってクラッチ操作アーム69を押圧するように構成されている。
【0050】
連係機構72には、水平方向にスライド移動可能な直線状の水平リンク74と、水平リンク74のスライド移動によってクラッチ操作アーム69を押圧する押圧リンク75とが備えられている。水平リンク74の一端部に押圧リンク75が連係され、かつ、水平リンク74の他端部に位置保持機構71が連係されている。
【0051】
水平リンク74は、脱穀装置6の側壁6Aに沿って前後方向に延びる状態で設けられている。水平リンク74を前後方向にスライド可能に支持する溝状のガイド部材76が備えられている。ガイド部材76は脱穀装置6の側壁6Aに固定されている。水平リンク74の長手方向(前後方向)の両側部に上下方向に貫通する支軸77a,77bが固定取付けされている。前後両側の支軸77a,77bには、夫々、下部にガイドローラ78が備えられている。ガイドローラ78はガイド部材76の内部に位置して、ガイド部材76の内面を転動しながら移動案内する。前部側の支軸77aの上部には、押圧リンク75の端部が枢支連結されている。後部側の支軸77bの上部には、位置保持機構71の端部が枢支連結されている。
【0052】
押圧リンク75は、上下向きの回動支軸79に一体回動可能な3つの押圧アーム80,81,82が備えられている。回動支軸79は、脱穀装置6の側壁6Aに固定されたボス部83により上下軸芯X1周りで回動可能に支持されている。第1押圧アーム80の揺動端部に遮断用コイルバネ70の一端が係止されている。第2押圧アーム81の揺動端部には、クラッチ操作アーム69に押圧作用する指令停止用操作ピン84が備えられている。
【0053】
第3押圧アーム82の揺動端部には、縦向きの連結軸85が設けられ、この連結軸85に対して連動リンク86の一端側に設けられたボス部87が回動可能に連結されている。連動リンク86の他端側のボス部88は、水平リンク74の前部側の支軸77に回動可能に連結されている。
【0054】
図6に示すように、遮断用コイルバネ70の付勢力によって第1押圧アーム80が前部側に揺動付勢されると、第2押圧アーム81に備えられた指令停止用操作ピン84がクラッチ操作アーム69を押圧作用する方向に力が作用するとともに、第3押圧アーム82が水平リンク74の前部側の支軸77を斜め右方向に押し操作するような力が作用する。その押し操作力によって水平リンク74に対して後方に向けてスライドするように力が作用する。
【0055】
しかし、水平リンク74は、位置保持機構71によって後方側への移動が阻止されて前部側スライド位置で位置保持される。その位置保持状態では、指令停止用操作ピン84がクラッチ操作アーム69を押し操作することはなく、クラッチ操作アーム69は入位置に保持される。
【0056】
位置保持機構71について説明する。
図5及び
図6に示すように、位置保持機構71は、上述したように遮断用コイルバネ70の付勢力によって、後方に向けてスライドするように力が作用している水平リンク74を前部側で位置保持して、クラッチ操作アーム69を入位置に保持する。位置保持機構71は、水平リンク74の後部側に連結される第1保持アーム89と、作動機構73側に連結される第2保持アーム90とを備えている。
【0057】
第1保持アーム89の一端部にボス部91が設けられ、そのボス部91が水平リンク74の後部側の支軸77bに上下軸芯X2周りで揺動可能に連結されている。第1保持アーム89の他端部にボス部92が設けられ、そのボス部92が第2保持アーム90の一端部に設けられた連結軸93に相対揺動可能に連結されている。第1保持アーム89と第2保持アーム90との間には、第1保持アーム89と第2保持アーム90とが前部側に折れ曲がり揺動するように付勢するバネ94が張設されている。
【0058】
脱穀装置6の側壁6Aに固定のブラケット95に位置固定状態で支持軸96が支持されている。第2保持アーム90の他端部に、支持軸96に回動可能に外嵌装着されるボス部97が一体的に設けられている。ボス部97には作動機構73が連結される連結アーム98が一体的に設けられている。
【0059】
第2保持アーム90に、第1保持アーム89の端縁に接当して前部側への相対揺動を規制する接当規制部99が設けられている。第1保持アーム89と第2保持アーム90との枢支連結点X3が、第1保持アーム89の一端部の揺動軸芯X2と、第2保持アーム90の他端部の揺動軸芯X4とを結ぶ仮想線よりも少しだけ前部側に寄った位置で、接当規制部99が第1保持アーム89の端縁に接当してそれ以上の前部側への折れ曲がり揺動が規制される。接当規制部99によって前部側への相対揺動が規制されている状態で、後方に移動付勢される水平リンク74が位置規制され、位置保持状態となる。
【0060】
〔連動停止操作機構〕
操作部65を操作してフィードチェーンクラッチ49を遮断状態に切り換える連動停止操作機構109が備えられている。
図5、
図6に示すように、連動停止操作機構109は、クラッチ操作アーム69に対して押し作用する押し作用部111、作動機構73と押し作用部111とを連係する連動操作ワイヤ112等を備えている。
【0061】
図6に示すように、押し作用部111は、クラッチ操作アーム69における長手方向に対して指令停止用操作ピン84が作用する側とは反対側箇所に近接した箇所に設けられている。押し作用部111には、脱穀装置6の側壁6Aに固定支持された支軸113と、支軸113に回動自在に外嵌されたボス部114と、ボス部114の外周部から周方向に位置を異ならせて平面視略L字状に径方向外方に延びる2個のアーム115,116と、復帰用バネ117とが備えられている。
【0062】
2個のアームのうちの一方の第1アーム115はボス部114から左側に向けて一体的に延設されている。第1アーム115の揺動端部にストローク吸収用のバネ119を介して連動操作ワイヤ112が連係されている。2個のアームのうちの他方の第2アーム116はボス部114から後側に向けて一体的に延設されている。第2アーム116の揺動端部にクラッチ操作アーム69に接当して押し操作可能な連動停止用操作ピン120が設けられている。
【0063】
押し作用部111は、連動操作ワイヤ112の引き操作により、第1アーム115及び第2アーム116が支軸113の軸芯X6周りで平面視右周り方向に揺動する。それに伴って、連動停止用操作ピン120がクラッチ操作アーム69を押圧作用する方向に揺動する。その結果、シフター部材68が回動して従動側シフト部材60をシフト操作してフィードチェーンクラッチ49を遮断状態に切り換える。
【0064】
この場合にも、指令停止操作機構66の場合と同様に、従動側シフト部材60は、遮断状態に切り換わるとともに、遮断用コイルバネ70の大きい付勢力によって制動機構64に押圧されて制動力が付与される。制動することによってフィードチェーン15の慣性力による回転を抑制して迅速に停止させることができる。
【0065】
連動操作ワイヤ112の引き操作が行われていないときは、復帰用バネ117の付勢力により連動停止用操作ピン120がクラッチ操作アーム69から離れる方向に移動し、クラッチ操作アーム69がコイルバネ63の付勢力により入位置に戻される。
【0066】
〔緩衝機構〕
指令停止操作機構66及び連動停止操作機構109における操作部65との連係における緩衝機構について説明する。指令停止操作機構66を操作部65に連係する第1緩衝機構K1と、連動停止操作機構109を操作部65に連係する第2緩衝機構K2と、が備えられ、第1緩衝機構K1及び第2緩衝機構K2は、指令停止操作機構66及び連動停止操作機構109の一方の機構が遮断状態への切り換えを実行するときに、一方の機構の操作力を、指令停止操作機構66及び連動停止操作機構109の他方の機構に伝達させないように構成されている。
【0067】
説明を加えると、上述したように、指令停止操作機構66における指令停止用操作ピン84が操作部65におけるクラッチ操作アーム69に対して接当作用して押し移動させる機構が第1緩衝機構K1である。又、連動停止操作機構109における連動停止用操作ピン120が操作部65におけるクラッチ操作アーム69に対して接当作用して押し移動させる機構が第2緩衝機構K2である。
【0068】
第1緩衝機構K1は、連動停止操作機構109による切り換え操作が行われるときは、
図8に示すように、指令停止操作機構66をクラッチ操作アーム69から離間させて、連動停止操作機構109の操作力を指令停止操作機構66に伝達させることはない。又、第2緩衝機構K2は、指令停止操作機構66による切り換え操作が行われるときは、
図7に示すように、連動停止操作機構109をクラッチ操作アーム69から離間させて、指令停止操作機構66の操作力を連動停止操作機構109に伝達させることはない。
【0069】
操作部65は、クラッチ操作アーム69が所定方向(
図6における左方向)に回動することにより、フィードチェーンクラッチ49を遮断状態に切り換える構成である。指令停止用操作ピン84がクラッチ操作アーム69に対して接当作用して所定方向に回動するように押し移動させると、連動停止用操作ピン120はクラッチ操作アーム69から離間するので、連動停止用操作ピン120に操作力が伝わることはない。
【0070】
連動停止用操作ピン120がクラッチ操作アーム69に対して接当作用して所定方向に回動するように押し移動させると、指令停止用操作ピン84はクラッチ操作アーム69から離間するので、指令停止用操作ピン84に操作力が伝わることはない。
【0071】
〔作動機構〕
【0072】
作動機構73について説明する。
図3、
図5に示すように、作動機構73には、電動モータ100(アクチュエータの一例)と、電動モータ100と位置保持機構71とを連係する解除用操作ワイヤ101と、電動モータ100と連動停止操作機構109とを連係する連動操作ワイヤ112と、電動モータ100の操作量を検出するポテンショメータ102とが備えられている。電動モータ100及びポテンショメータ102は、脱穀装置6の側壁6Aに支持されている取付プレート103に取り付けられている。
【0073】
【0074】
電動モータ100の出力軸100aに、駆動ギア121が固定されている。
【0075】
駆動ギア121の側面(機体左右方向の左側の面、紙面手前側の面)に、突出部材121aが設けられている。突出部材121aは、後述する押下レバー128と接触可能である。突出部材121aは、ボールベアリングであり、自由に回転可能である。
【0076】
電動モータ100の出力軸100aに対して自由に揺動可能な状態で、揺動部材122が設けられている。すなわち、出力軸100a、駆動ギア121、及び揺動部材122は、同一の軸芯X7周りに回転または揺動可能である。揺動部材122は、駆動ギア121に対して機体左右方向の右側(紙面奥側)に配置されている。
【0077】
揺動部材122の上端部に、解除用操作ワイヤ101が接続されている。揺動部材122の前端部に、付勢部材引張りバネが接続されている。付勢部材引張りバネは、揺動部材122を時計回りに付勢する。付勢部材引張りバネは、取付プレート103に支持されている。
【0078】
解除用操作ワイヤ101は、インナーワイヤ101aとアウターワイヤ101bとを備えている。アウターワイヤ101bの両端部は機体に固定されている。インナーワイヤ101aの一端部は、連結アーム98に連結されている。インナーワイヤ101aの他端部は、揺動部材122の上端部に連結されている。
【0079】
なお本実施形態では、時計回りを、機体左右方向の右側から見て時計回りの方向と定義する。時計回りが、図面中の矢印CWで示される。反時計回りを、機体左右方向の右側から見て反時計回りの方向と定義する。反時計回りが、図面中の矢印CCWで示される。
【0080】
揺動部材122の下端部に、ラチェット機構Dが設けられている。ラチェット機構Dは、駆動ギア121が時計回りに回転したときに空転し、駆動ギア121が反時計回りに回転したときに揺動部材122を反時計回りに揺動させる。
【0081】
ラチェット機構Dの詳細が
図11に示されている。ラチェット機構Dは、軸部位124、ラチェット部材125、ねじりバネ126、ピン127により構成されている。
【0082】
軸部位124は、揺動部材122から右へ突出する、軸状の部位である。
【0083】
ラチェット部材125は、軸芯X8回りに揺動可能な状態で軸部位124に揺動可能に支持される部材である。ラチェット部材125は、ねじりバネ126によって時計回りに付勢されている。
【0084】
ピン127は、揺動部材122から右へ突出する、ピン状の部材である。
【0085】
ラチェット部材125の上部は、駆動ギア121の歯溝に入り込んだ状態となっている。ラチェット部材125の下部は、ピン127に接触している。
【0086】
駆動ギア121の上方に、押下レバー128が設けられている。押下レバー128は、軸芯X9回りに揺動可能な状態で、取付プレート103に支持されている。押下レバー128を反時計回りに付勢する付勢部材引張りバネが設けられている。
【0087】
押下レバー128は、駆動ギア121の突出部材121aの上面に接触して、突出部材121aを下方に押している。
【0088】
ポテンショメータ102の検出部材102aが、押下レバー128の後面に接触している。駆動ギア121の回転に伴い、突出部材121aが移動し、押下レバー128が揺動する。押下レバー128の揺動に伴い、検出部材102aが移動する。ポテンショメータ102は、押下レバー128の揺動量を検出することにより、電動モータ100の操作量を検出する。
【0089】
駆動ギア121の前側に、駆動ギア121と噛み合って従動回転する従動ギア130が設けられている。従動ギア130は、軸芯X10回りに自由回転が可能な状態で、取付プレート103に支持されている。
【0090】
図11を参照しながら、従動ギア130の周辺の構成について説明する。取付プレート103から左に突出する状態で、固定軸部材131が設けられている。
【0091】
回転部材132が、軸芯X10回りに自由回転が可能な状態で、ベアリングを介して固定軸部材131に支持されている。回転部材132は、円筒状の部位である円筒部位132aと、円筒部位132aから径方向外側へ突出する突出部位132bと、を備える。連動操作ワイヤ112のインナワイヤの端部112a(操作端の一例)が、突出部位132bに接続されている。
【0092】
そして回転部材132の円筒部位132aの外側に、ベアリングを介して従動ギア130が設けられている。従動ギア130及び回転部材132は、軸芯X10回りに、それぞれ自由に回転が可能である。
【0093】
従動ギア130の側面(機体左右方向の左側の面、紙面手前側の面)に、操作部材130aが設けられている。部材130aは、従動ギア130の回転に伴って移動し、突出部位132bと接触して回転部材132を回転させる。
【0094】
〔作動機構の動作〕
図11-14を参照しながら、作動機構73の動作について説明する。本実施形態では、電動モータ100が正転動作すると出力軸100aが時計回りに回転し、電動モータ100が逆転動作すると出力軸100aが反時計回りに回転するとする。
【0095】
作動機構73は、電動モータ100が正転動作(以下「第1動作」とする)すると、連動操作ワイヤ112の引き操作及び引き操作の解除を行う。
【0096】
作動機構73は、電動モータ100が逆転動作(以下「第2動作」とする)すると、解除用操作ワイヤ101の引き操作を行う。
【0097】
〔第1動作〕
電動モータ100が第1動作(正転動作、出力軸100aの時計回り方向の回転)を行った場合の作動機構73の動作について説明する。なお電動モータ100は制御装置43(後述)によって制御される。
【0098】
作動機構73が
図11の状態にあるとする。連動操作ワイヤ112及び解除用操作ワイヤ101の引き操作は解除されている。
【0099】
電動モータ100が第1動作を行い出力軸100aが時計回りに回転すると、従動ギア130が反時計回りに回転する。部材130aが突出部位132bを反時計回り方向に押すことにより回転部材132が反時計回りに回転し、突出部位132bに接続された連動操作ワイヤ112が引き操作される。これにより、フィードチェーンクラッチ49が遮断状態に切り換わる。
【0100】
図12の状態まで駆動ギア121及び従動ギア130が回転すると、制御装置43が電動モータ100を停止させる。詳しくは、ポテンショメータ102の出力が
図12の状態に対応する値になったことに応じて、制御装置43が電動モータ100を停止させる。
【0101】
上述の連動操作ワイヤ112の引き操作(
図11の状態から
図12の状態までの変化)は、コイルバネ63及び復帰用バネ117の付勢力に抗して行われる。ここで、付勢部材引張りバネによって反時計回りに付勢された押下レバー128が、突出部材121aを下向きに押している。この押下力が、駆動ギア121の時計回りの回転及び従動ギア130の反時計回りの回転を補助して、連動操作ワイヤ112の引き操作を補助している。
【0102】
出力軸100aが、
図12の状態から更に時計回りに回転すると、従動ギア130及び回転部材132が反時計回りに回転して、突出部位132b及び連動操作ワイヤ112の端部112aが軸芯X10回りに回転移動する。端部112aが下死点(連動操作ワイヤ112の固定されたアウタワイヤ端部と軸芯X10とを結ぶ直線Liと、端部112aの円軌道と、の交点)を超えると、コイルバネ63及び復帰用バネ117に引かれて回転部材132が回転し、端部112a及び突出部位132bが上死点(直線Liと端部112aの円軌道との交点、
図14の位置)まで移動する。このようにして、連動操作ワイヤ112の引き操作が解除されて、クラッチ操作アーム69がコイルバネ63の付勢力により入位置に戻され、フィードチェーンクラッチ49が伝達状態に切り換わる。
【0103】
〔ラチェット機構の空転〕
電動モータ100の第1動作により駆動ギア121が時計回りに回転すると、ラチェット部材125は、駆動ギア121の歯によって前方に押される。ラチェット部材125は、付勢部材引張りバネの付勢力に抗して反時計回りに揺動し、駆動ギア121の回転によって近付いてきた隣の歯溝に入り込む。このようにラチェット機構Dが空転するので、揺動部材122は揺動せず、解除用操作ワイヤ101は引き操作されない。揺動部材122は、取付プレート103から突出するピン122aに後方から接触した状態で、
図11の位置に留まる。
【0104】
〔第2動作、ラチェット機構の作動〕
電動モータ100が第2動作(逆転動作、出力軸100aの反時計回り方向の回転)を行った場合の作動機構73の動作について説明する。
【0105】
作動機構73が
図11の状態にあるとする。連動操作ワイヤ112及び解除用操作ワイヤ101の引き操作は解除されている。
【0106】
電動モータ100が第2動作を行い出力軸100aが反時計回りに回転すると、駆動ギア121の歯がラチェット部材125を後方へ押す。ラチェット部材125は軸芯X8回りに時計回りに揺動しようとするが、ピン127の存在により揺動部材122に対する揺動が阻害される。結果的に、駆動ギア121の歯に押されて揺動部材122が反時計回りに揺動する。すなわちラチェット機構Dは、電動モータ100が第2動作を行った際に、動力を下流へ伝達して揺動部材122を揺動させる。
【0107】
揺動部材122の反時計回りの揺動により、解除用操作ワイヤ101が引き操作される。揺動部材122は、ピン122aに上方から接触する位置まで揺動し、
図14の位置に留まる。
【0108】
解除用操作ワイヤ101の引き操作により、第2保持アーム90が第1保持アーム89との接当規制状態が解除される側に揺動する。
【0109】
第2保持アーム90の揺動により、第1保持アーム89と第2保持アーム90との枢支連結点X3が、第1保持アーム89の一端部の揺動軸芯X2と、第2保持アーム90の他端部の揺動軸芯X4とを結ぶ仮想線よりも後部側に位置すると、第1保持アーム89と第2保持アーム90とが後部側に折れ曲がり、水平リンク74の後方側へのスライド移動を許容する状態となる。水平リンク74は常に遮断用コイルバネ70の付勢力によって後方側に向けて移動する方向に力が作用しているので、枢支連結点X3が仮想線(デッドポイント)を少しでも後側に超えると、水平リンク74が迅速に後方に移動する。その結果、位置保持機構71による位置保持が解除される。
【0110】
位置保持機構71による位置保持が解除されると、第2押圧アーム81すなわち指令停止用操作ピン84がクラッチ操作アーム69を押圧作用する方向に揺動する。その結果、シフター部材68が回動して従動側シフト部材60をシフト操作してフィードチェーンクラッチ49を遮断状態に切り換える。
【0111】
従動側シフト部材60は、遮断状態に切り換わるとともに、遮断用コイルバネ70の付勢力によって制動機構64に押圧されて制動力が付与される。フィードチェーン15の慣性力による回転を抑制して迅速に停止させることができる。
【0112】
このように指令停止操作機構66によってフィードチェーンクラッチ49が停止されたときは、オペレータによって位置保持機構71が位置保持状態に手動で戻し操作されるまで停止状態を維持する。
【0113】
制御装置43は、電動モータ100に第2動作(逆転動作)を行わせた後、第1動作(正転動作)を行わせて元の状態(第2動作を行う前の状態)に電動モータ100を復帰させる。なお第1動作の際にはラチェット機構Dが空転するので、揺動部材122は動かない。
【0114】
位置保持機構71が位置保持状態に戻し操作された後は、バネ94の付勢力により、第1保持アーム89と第2保持アーム90とが前部側に折れ曲がり揺動する状態に復帰する。これに伴い、解除用操作ワイヤ101及び揺動部材122は引き操作が解除された状態(
図6、
図11)に復帰する。
【0115】
図6に示すように、解除用操作ワイヤ101は、平面視で水平リンク74と平行な状態で設けられ、駆動軸50に動力を伝達する無端回動体としての伝動ベルト51が、水平リンク74と解除用操作ワイヤ101との間の空間を利用して上下に通されている。
【0116】
〔制御構成〕
図15を参照しながら、本実施形態の自脱型コンバインの制御に関する構成について説明する。
【0117】
運転部5に、刈取部3の昇降を指示する刈取昇降レバー5aが設けられている。刈取昇降レバー5aが受け付けた操作に応じて、制御装置43が昇降シリンダ3aを作動させて刈取部3を上昇または下降させる。
【0118】
刈取クラッチ3b及び脱穀クラッチ6aを操作するクラッチ用モータ140が設けられている。なお、クラッチ用モータ140が、刈取クラッチ3bの操作用と脱穀クラッチ6aの操作用の2つのモータを含んでもよい。
【0119】
予め設定された高さまで刈取部3が上昇すると、制御装置43は、電動モータ100を第1動作(正転動作)させて、フィードチェーンクラッチ49を遮断状態に切り換える。また制御装置43は、クラッチ用モータ140を作動させて刈取クラッチ3b及び脱穀クラッチ6aを所定のタイミングで切り状態に切り換える。
【0120】
また、予め設定された高さまで刈取部3が下降すると、制御装置43は、電動モータ100を第2動作(逆転動作)させて、フィードチェーンクラッチ49を伝達状態に切り換える。また制御装置43は、クラッチ用モータ140を作動させて刈取クラッチ3b及び脱穀クラッチ6aを所定のタイミングで入り状態に切り換える。
【0121】
図1に示すように、脱穀装置6の外装カバー23のうち、フィードチェーン15の搬送始端部に近い箇所に、機体外方側から手動で押し操作可能な停止スイッチ108が設けられている。すなわち停止スイッチ108は、機体の左側面に配置されている。
【0122】
フィードチェーン15が回動して脱穀装置6が作動しているときにオペレータにより停止スイッチ108が操作されると、制御装置43は、電動モータ100を第2動作(逆転動作)させてフィードチェーンクラッチ49を遮断状態に切り換えると共に、エンジン制御部43aに対して、エンジン9の作動を停止させるための制御情報を指令する。エンジン制御部43aは、例えば、燃料供給路中に備えられた燃料遮断弁を操作してエンジン9に対する燃料供給を停止させる等の処理によりエンジン9の作動を停止させる。
【0123】
制御装置43は、第2動作から所定の時間が経過した時に、第1動作を実行させて電動モータ100を第2動作の実行前の状態に復帰させる。
【0124】
このように、制御装置43は、刈取昇降レバー5a(第1操作具の一例)が操作されたことに応じて電動モータ100に第1動作(正転動作)を実行させ、停止スイッチ108(第2操作具の一例)が操作されたことに応じて電動モータ100に第2動作(逆転動作)を実行させる。刈取昇降レバー5a(第1操作具)は、操縦者が搭乗する運転部5に配置されている。停止スイッチ108(第2操作具)は、機体の左側面に配置されている。
【0125】
本実施形態の自脱型コンバインは、電動モータ100(アクチュエータの一例)と、第1機構Aと、第2機構Bと、を備える。
【0126】
第1機構Aは、電動モータ100の第1動作により作動してフィードチェーンクラッチ49を伝達状態または遮断状態に切り換える。
【0127】
第1機構Aは、フィードチェーンクラッチ49へ操作力を伝達する連動操作ワイヤ112(操作ワイヤの一例)と、操作ワイヤをフィードチェーンクラッチに向けて付勢する復帰用バネ117(付勢部材の一例)と、電動モータ100の第1動作(正転動作)に伴って移動する部材130a(第1部材の一例)と、連動操作ワイヤ112の操作端が接続されると共に部材130aに押されて回転移動する回転部材132(第2部材の一例)と、を備える。
【0128】
部材130a(第1部材)は、回転部材132(第2部材)の回転の軸芯と同一の軸芯X10周りに回転移動する。
【0129】
詳しくは、第1機構Aには、駆動ギア121、従動ギア130、回転部材132、連動操作ワイヤ112、及び連動停止操作機構109が含まれる。
【0130】
第2機構Bは、電動モータ100の動作であって第1動作と異なる第2動作により作動してフィードチェーンクラッチ49を伝達状態から遮断状態へ切り換える。
【0131】
第2機構は、第1動作(正転動作)の際に空転し且つ第2動作(逆転動作)の際に動力を下流へ伝達するラチェット機構Dを備える。
【0132】
第2機構は、フィードチェーンクラッチ49を操作する指令停止用操作ピン84(操作部材の一例)と、指令停止用操作ピン84を所定の方向に付勢する遮断用コイルバネ70(付勢機構の一例)と、指令停止用操作ピン84を所定の位置に保持すると共に電動モータ100の第2動作(逆転動作)に応じて指令停止用操作ピン84の保持を解除する位置保持機構71と、を備える。
【0133】
詳しくは、第2機構Bには、駆動ギア121、ラチェット機構D、揺動部材122、解除用操作ワイヤ101、及び指令停止操作機構66が含まれる。
【0134】
本実施形態の自脱型コンバインでは、1つの電動モータ100により、第1機構Aと第2機構Bの両方を作動させることができる。
【0135】
図3に示されるように、第1機構A及び第2機構Bは脱穀装置6の左側面に配置されている。そして電動モータ100が脱穀装置6の左側面におけるフィードチェーン15の下方に配置されている。すなわち、フィードチェーンクラッチ49を入切するために必要な全ての機構(電動モータ100、第1機構A、及び第2機構B)が、脱穀装置6の左側面に配置されている。
【0136】
このように構成された本実施形態の自脱型コンバインによれば、フィードチェーンクラッチ49、刈取クラッチ3b、及び脱穀クラッチ6aが、制御装置43に制御されるアクチュエータ(電動モータ100、クラッチ用モータ140)で入り切りされるので、フィードチェーン15、刈取部3、及び脱穀装置6の作動/停止のタイミングを適切に制御することが容易になる。
【0137】
また、第1機構Aによるフィードチェーンクラッチ49の入り操作は、上述の機構により素早く行われる。すなわち、連動操作ワイヤ112が引き操作された
図12の状態から、電動モータ100が第1動作を行うと、突出部位132bが軸芯X10回りに回転する。そして連動操作ワイヤ112の端部112aが下死点を超えると、端部112aはコイルバネ63及び復帰用バネ117に引かれて上方に移動し、連動操作ワイヤ112の引き操作が解除される。これにより、フィードチェーンクラッチ49の入り操作が素早く行われ、フィードチェーンクラッチ49の甘噛み等の動作不良を抑制することができる。
【0138】
そして第2機構Bによるフィードチェーンクラッチ49の切り操作は、位置保持機構71による位置保持の解除により、遮断用コイルバネ70の付勢力を受けた第2押圧アーム81の指令停止用操作ピン84がクラッチ操作アーム69を操作することで行われる。これにより、クラッチ操作アーム69の操作が素早く行われ、フィードチェーンクラッチ49を素早く遮断状態に切り換えることができる。
【0139】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではない。以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0140】
(1)上述の実施形態では、電動モータ100の正転動作が第1動作であり、正転動作により第1機構Aが作動する。電動モータ100の逆転動作が第2動作であり、逆転動作により第2機構Bが作動する。逆の形態も可能である。すなわち、電動モータ100の逆転動作が第1動作であり、逆転動作により第1機構Aが動作するよう、作動機構73が構成されてもよい。電動モータ100の正転動作が第2動作であり、正転動作により第2機構Bが動作するよう、作動機構73が構成されてもよい。
【0141】
(2)押下レバー128は、なくてもよい。
【0142】
(3)ポテンショメータ102に代わる他の構成(回転位置センサ、ステッピングモータの採用)により、電動モータ100の回転位置が制御されてもよい。
【0143】
(4)上述の実施形態では、刈取昇降レバー5aが第1操作具に対応し、停止スイッチ108が第2操作具に対応する。第1操作具、第2操作具が他の形態の操作具であってもよい。
【0144】
(5)上述の実施形態では、電動モータ100がアクチュエータに対応する。アクチュエータが、他の形態、例えば油圧モータ等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、刈取穀稈を脱穀装置に搬送するフィードチェーンを備え、フィードチェーンクラッチによってフィードチェーンへの動力を断続可能に構成されているコンバインに適用できる。
【符号の説明】
【0146】
5 :運転部
5a :刈取昇降レバー(第1操作具)
6 :脱穀装置
15 :フィードチェーン
43 :制御装置
49 :フィードチェーンクラッチ
65 :操作部
70 :遮断用コイルバネ(付勢機構)
71 :位置保持機構
84 :指令停止用操作ピン(操作部材)
100 :電動モータ(アクチュエータ)
108 :停止スイッチ(第2操作具)
112 :連動操作ワイヤ(操作ワイヤ)
112a :端部(操作端)
117 :復帰用バネ(付勢部材)
130a :部材(第1部材)
132 :回転部材(第2部材)
A :第1機構
B :第2機構
D :ラチェット機構
X10 :軸芯