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特開2024-92725管理装置、ウェアラブル端末、および管理方法、並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092725
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】管理装置、ウェアラブル端末、および管理方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/60 20180101AFI20240701BHJP
【FI】
G16H20/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208858
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 航
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】単位時間における摂取カロリーを管理する。
【解決手段】ARグラス1は、ユーザの飲食を撮影した映像に基づいて、所定の単位時間(例えば、1分間)当たりのユーザが摂取した飲食物のカロリーを算出するカロリー算出部22と、カロリー算出部により算出された単位時間当たりのユーザが摂取した飲食物のカロリーが閾値を超えた場合、ユーザに警告を出力し、飲食が終了したか否かを判定する管理部23とを有し、カロリー算出部と管理部は、その処理を飲食が終了したと判定されるまで繰り返す。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの飲食を撮影した映像に基づいて、所定の単位時間当たりの前記ユーザが摂取した飲食物のカロリーを算出するカロリー算出部と、
前記カロリー算出部により算出された前記単位時間当たりの前記ユーザが摂取した飲食物のカロリーが閾値を超えた場合、前記ユーザに警告を出力し、前記飲食が終了したか否かを判定する管理部と
を有し、
前記カロリー算出部と前記管理部は、その処理を前記飲食が終了したと判定されるまで繰り返す
ことを特徴とする管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の管理装置であって、
前記管理部は、前記飲食の時間経過に基づいて、前記閾値を減少させる
ことを特徴とする管理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の管理装置であって、
前記管理部は、前記飲食の進んでいる度合いを進行度として算出し、前記進行度に基づいて前記閾値を減少させる
ことを特徴とする管理装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の管理装置を備えたウェアラブル端末であって、
前記ユーザに前記ウェアラブル端末が装着された状態で、前記ユーザの両眼または一方の眼の前方に配置される表示部を有し、
前記管理部により出力された前記警告を、前記表示部に表示する
ことを特徴とするウェアラブル端末。
【請求項5】
食事を管理する管理装置が実行する管理方法であって、
ユーザの飲食を撮影した映像に基づいて、所定の単位時間当たりの前記ユーザが摂取した飲食物のカロリーを算出するカロリー算出ステップと、
前記カロリー算出ステップの処理により算出された前記単位時間当たりの前記ユーザが摂取した前記飲食物のカロリーが閾値を超えた場合、前記ユーザに警告を出力する出力ステップと、
前記飲食が終了したか否かを判定する判定ステップと
を含み、
前記カロリー算出ステップと前記出力ステップの処理は、前記判定ステップにより前記飲食が終了したと判定されるまで繰り返される
ことを特徴とする管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置、ウェアラブル端末、および管理方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端末に搭載されているカメラ等を用いて料理等の静止画像を撮影し、料理の摂取カロリーや栄養価などを計算する技術がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-118562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、食事のスピードを遅くすることで、膵臓からインスリンが適切に分泌され、血糖値の上がり方が緩やかになる。
【0005】
上述した特許文献1の技術を用いることにより、食事の総カロリーを得ることが可能である。しかしながら、これらの技術を利用した場合においても、食事のスピードに関して管理することはできない。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、単位時間における摂取カロリーを管理することを可能とする、管理装置、ウェアラブル端末、および管理方法、並びにプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面の管理装置は、ユーザの飲食を撮影した映像に基づいて、所定の単位時間当たりのユーザが摂取した飲食物のカロリーを算出するカロリー算出部と、カロリー算出部により算出された単位時間当たりのユーザが摂取した飲食物のカロリーが閾値を超えた場合、ユーザに警告を出力し、飲食が終了したか否かを判定する管理部とを有し、カロリー算出部と管理部は、その処理を飲食が終了したと判定されるまで繰り返すことを特徴とする。
【0008】
本発明の一側面の管理装置方法は、食事を管理する管理装置が実行する管理方法であって、ユーザの飲食を撮影した映像に基づいて、所定の単位時間当たりのユーザが摂取した飲食物のカロリーを算出するカロリー算出ステップと、カロリー算出ステップの処理により算出された単位時間当たりのユーザが摂取した飲食物のカロリーが閾値を超えた場合、ユーザに警告を出力する出力ステップと、飲食が終了したか否かを判定する判定ステップとを含み、カロリー算出ステップと出力ステップの処理は、判定ステップにより飲食が終了したと判定されるまで繰り返されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、単位時間における摂取カロリーを管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ARグラス1の外観構成および利用例を示す図である。
図2図2は、ARグラス1の内部構成を示すブロック図である。
図3図3は、ARグラス1の動作を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、ARグラス1の動作を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、適切な順番で食事をするために用いられる閾値の変更について説明するための図である。
図6図6は、摂取カロリースピードに関する閾値の変更について説明するための図である。
図7図7は、今回の食事の取り方に関する情報の例を示す図である。
図8図8は、今回の食事の取り方に関する情報の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[一実施の形態]
図1は、本発明の一実施の形態に係るAR(Augmented Reality)グラス1の外観構成および利用例を示す図である。
【0012】
ARグラス1は、図1に示すように両耳殻にかけられることでユーザに装着される。
【0013】
ARグラス1は、装着状態において、ユーザの両眼の前方に、左眼用と右眼用の一対の表示部11が配置される構成となっている。表示部11には、例えば撮影部12で撮像された現実空間の撮影画像が表示される。また、表示部11は透過型であってもよい。
【0014】
ARグラス1には、図1に示すように、ユーザに装着された状態で、ユーザが視認する方向を被写体方向として撮像するように、前方に向けて撮影部12が配置されている。
【0015】
ARグラス1には、装着状態でユーザの右耳孔および左耳孔に挿入できるスピーカからなる音声出力部13が設けられる。
【0016】
なお、図1に示すARグラス1の外観は一例であり、ARグラス1をユーザが装着するための構造は多様に考えられる。
【0017】
ARグラス1は、例えば、テーブルに配膳された料理の飲食物がユーザの口元に運ばれる様子を撮影し、得られた映像に基づいて、ユーザが摂取した飲食物に含まれる栄養素を測定する。そしてARグラス1は、その測定結果に基づいて、所定の第1の栄養素が所定の閾値よりも多い飲食物から摂取を開始し、第1の栄養素を所定量摂取したのちに、第2の栄養素が所定の閾値よりも多い飲食物を食べ始めるように、飲食物の摂取の順番を決定し、その順番を、表示部11または音声出力部13を介してユーザに案内する。
【0018】
ARグラス1は、例えば、テーブルに配膳された料理の飲食物がユーザの口元に運ばれる様子を撮影し、得られた映像に基づいて、食事中に複数回測定可能な所定の単位時間当たりのユーザが摂取した飲食物のカロリーを算出する。そしてARグラス1は、算出した単位時間当たりのユーザが摂取した飲食物のカロリーが閾値を超えた場合、表示部11または音声出力部13を介してユーザに警告する。
【0019】
[ARグラス1の内部構成]
図2は、ARグラス1の内部構成を示すブロック図である。ARグラス1は、表示部11、撮影部12、音声出力部13、制御部14、および記憶部15を含んで構成されている。
【0020】
表示部11は、制御部14による制御に基づいて、撮影部12により撮影された映像や、制御部14から出力された警告情報および飲食物の摂取の順番を案内する案内情報を表示する。なお表示部11には、撮影画像をリアルタイムで表示し、さらに警告情報や案内情報を、表示した撮影映像中の各飲食物の位置に対応するよう重畳表示することもできる。また、表示部11は、表示部11をスルー状態にした上で(撮影した映像の表示は行わず)、実空間に存在する飲食物の位置に対応するよう、警告情報や案内情報を表示することができる。
【0021】
撮影部12は、例えばビデオカメラであり、ユーザが飲食する料理やユーザが飲食する動作などの、ユーザの飲食を撮影し、撮影した映像を制御部14に出力する。
【0022】
音声出力部13は、例えばイヤホンスピーカを有し、制御部14による制御に基づいて、音声信号データを出力(再生)する。
【0023】
管理装置としての制御部14は、図示は省略するが、制御部14は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部位(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリ等)、ハードウェアを含む、その他の要素から構成される。
【0024】
記憶部15は、記憶部位(ROM、RAM、不揮発メモリ等)から構成される。制御部14は、記憶部15に記憶された図示せぬ制御用アプリケーションプログラムを実行することで、ARグラス1全体を制御するとともに、栄養素測定部21、カロリー算出部22、および管理部23として機能する。
【0025】
栄養素測定部21は、撮影部12により撮影されたユーザの飲食の映像に基づいて、配膳された料理一品ごと、および全体のたんぱく質(P:Protein)、脂質(F:Fat)、炭水化物(C:Carbohydrate)、並びに食物繊維の含有量を測定する。
【0026】
また、栄養素測定部21は、撮影部12により撮影されたユーザの飲食の映像に基づいて、ユーザが摂取した飲食物に含まれる栄養素を測定する。栄養素の測定方法は、いずれの方法であってもよいが、例えば、機械学習による画像解析などを用いることができる。
【0027】
カロリー算出部22は、撮影部12により撮影されたユーザの飲食の映像に基づいて、配膳された料理一品ごと、および全体のカロリーを算出する。
【0028】
また、カロリー算出部22は、撮影部12により撮影されたユーザの飲食の映像に基づいて、所定の単位時間当たりにユーザが摂取した飲食物のカロリーを算出する。所定時間内にユーザが摂取した飲食物のカロリーは、食事のスピードを示すパラメータとしても用いられる。また、カロリーの算出は、いずれの方法であってもよいが、例えば、機械学習による画像解析などを用いることができる。
【0029】
管理部23は、栄養素測定部21による測定結果に基づいて、所定の第1の栄養素が所定の閾値よりも多い飲食物から摂取を開始し、第1の栄養素を所定量摂取したのちに、第2の栄養素が所定の閾値よりも多い飲食物を食べるように、飲食物の摂取の順番を決定し、その順番を、表示部11または音声出力部13を介してユーザに案内する。
【0030】
管理部23は、カロリー算出部22により算出された単位時間当たりのユーザが摂取した飲食物のカロリーが閾値を超えた場合、表示部11または音声出力部13を介してユーザに警告する。
【0031】
管理部23は、食事の終了後に、ユーザの食事の取り方に関する情報を生成し、表示部11または音声出力部13を介して提示する。
【0032】
記憶部15は、上述した制御用アプリケーションプログラムと、その実行のために必要なユーザ情報15aを含む各種データ、これらの処理により生成された情報を記憶する。
【0033】
[ARグラス1の動作]
次に、図3および図4のフローチャートを参照して、ARグラス1の動作について説明する。図1に示したように、テーブルに料理が配膳されており、ARグラス1を装着したユーザは、これらの料理をこれから摂取する状態とする(食事を開始する状態)。その状態において、ステップS1において、撮影部12は、撮影を開始する。撮影部12はテーブルに配膳された料理を撮影するとともに、飲食物がユーザの口元に運ばれる様子、すなわちユーザの飲食を撮影する。
【0034】
ステップS2において、栄養素測定部21は、撮影部12により撮影された映像に基づいて、配膳された料理一品ごと、並びに全体のたんぱく質(P)、脂質(F)、炭水化物(C)、および食物繊維の含有量を測定する。また、カロリー算出部22は、撮影部12により撮影された映像に基づいて、配膳された料理一品ごと、および全体の総カロリーを算出する。
【0035】
ステップS3において、管理部23は、栄養素測定部21の測定結果および記憶部15に記憶されているユーザ情報15aに基づいて、配膳された料理のPFCバランスとカロリーが適切であるか否かを判定する。
【0036】
具体的には、管理部23は、例えば、理想的なPFCバランスを、たんぱく質(P):脂質(F):炭水化物(C)=1.3~2:2~2.5:5~6とし、ステップS2で栄養素測定部21により測定された配膳された料理全体のPFCバランスが理想のPFCバランスの範囲内になっているか否かを判定する。
【0037】
管理部23はまた、ステップS2でカロリー算出部22により算出された配膳された料理全体の総カロリーが、ユーザ情報15aとして記憶されているユーザの推定エネルギー必要量を超えているか否かを判定する。
【0038】
なお推定エネルギー必要量は、基礎代謝量(kcal/日)と身体活動レベルの乗算で算出される。基礎代謝量(kcal/日)は、基礎代謝基準値(kcal/kg/日)と参照体重(kg)の乗算で算出される。身体活動レベルは総エネルギー消費量(kcal/日)を1日あたりの基礎代謝量(kcal/日)で除算することで算出される。すなわち推定エネルギー必要量に代えて、それを算出するためのこれらのパラメータがユーザ情報15aとして記憶されるようにし、そのパラメータに基づいて管理部23がユーザの推定エネルギー必要量を算出してもよい。
【0039】
ステップS3で、配膳された料理全体のPFCバランスと総カロリーが適切ではないと判定した場合、ステップS4において、管理部23は、警告のための情報を表示部11または音声出力部13を介してユーザに通知する。例えば、「PFCバランスもカロリーも適正ではありません。脂質を○○%削減するとよいでしょう」、「総カロリー量は問題ありませんが、PFCバランスが適正ではありません。炭水化物を○○%削減するとよいでしょう」などのメッセージが、表示部11に表示され、または音声で音声出力部13から出力される。
【0040】
ステップS3で、食事全体のPFCバランスと総カロリーは適切であると判定された場合、または、ステップS4で警告がユーザに通知されると、ステップS5において、管理部23は、配膳された料理の摂取の順番を決定し、ユーザに案内する。
【0041】
例えば、最初にたんぱく質(P)の割合が高い飲食物または食物繊維が多い飲食物を最初に摂取することとする。管理部23は、図5に示すように、最初に摂取の順番を案内する際、すなわちユーザが飲食物を摂取する前のタイミングにおいては、食物繊維についての閾値Eの値を、値e0とし、食物繊維が閾値E(=値e0)以上であるサラダを、最初に摂取すべき料理として選択し、それを案内する。なお食物繊維の他、たんぱく質(P)、脂質(F)、炭水化物(C)、および食物繊維についてもそれぞれ閾値Eが設けられている。
【0042】
そしてたんぱく質(P)の割合が高いまたは食物繊維が多い飲食物が食べ始めから所定の量(例えば、半分)以下まで低下したタイミングで、脂質(F)または炭水化物(C)の割合が所定の閾値より多い飲食物を摂取することとする。各栄養素の閾値Eは、後述するように、ステップS12の処理で、食事が進むにつれて更新されて、次のステップS5の処理で、管理部23は、更新された閾値Eに基づいて、摂取する料理を選択し、それを案内する。
【0043】
このようにして決定された、配膳された料理の順番がユーザに案内される。
【0044】
ユーザへの案内の具体例は、決定した食事の順番を、例えば、テキストや音声のメッセージによってユーザに通知される。なお、決定された飲食物の摂取の順番に変更がなければ、新たなテキストや音声のメッセージの通知を省略するものとしてもよい。また、食べてもよい飲食物の個所に対してマーカー等を重畳して表示させたり、まだ食べてはいけない飲食物の個所に対してバツ印等を表示部11に重畳して表示させたりモザイク処理を施して見難くするなどの処理を施すことにより、ユーザが直感的にわかりやすい方法で、正しい飲食物の順番を提示することも可能である。
【0045】
閾値Eの初期値は、実験的経験的に定められるものであっても、ユーザにより適宜設定可能であってもよい。
【0046】
次に、ステップS6において、栄養素測定部21は、撮影部12により撮影されたユーザの飲食の映像に基づいて、ユーザが摂取した飲食物に含まれるたんぱく質、脂質、炭水化物、および食物繊維の含有量の測定を開始する。具体的には、撮影部12により撮影されたユーザの飲食の映像のうち、箸やスプーンにより口元に運ばれる飲食物の映像、またはお椀やコップから直接口元に運ばれる飲食物の映像から、その飲食物に含まれる栄養素の含有量が測定される。
【0047】
また、カロリー算出部22は、撮影部12により撮影されたユーザの飲食の映像に基づいて、ユーザが飲食物を摂取するごとに、食事中に複数回測定可能な所定の単位時間(例えば、1分間)当たりのユーザが摂取したカロリーの算出を開始する。具体的には、撮影部12により撮影されたユーザの飲食の映像のうち、箸やスプーンより口元に運ばれる飲食物の映像、またはお椀やコップから直接口元に運ばれる飲食物の映像から、その飲食物のカロリーが算出される。
【0048】
ステップS7において、管理部23は、ステップS6で測定されたユーザが摂取した飲食物のPFCバランスが、ステップS5で案内した飲食物の摂取順番の場合のPFCバランスに対応しているか否かを比較し、飲食物の摂取の順番が適切であるか否かを判定する。
【0049】
ステップS7で、飲食物の摂取の順番が適切ではないと判定した場合、ステップS8において、管理部23は、適切な順番で飲食物を摂取するための情報を、表示部11または音声出力部13を介して案内する。例えば、管理部23は、警告メッセージや警告音などで注意喚起を行うためのデータを生成し、表示部11または音声出力部13を介して出力する。具体的には、表示部11に、食べてもよい料理の個所に対してマーカー等を重畳して表示させたり、まだ食べてはいけない料理の個所に対してバツ印等を重畳して表示させたりモザイク処理を施して見難くするなどの処理を施すことにより、ユーザが直感的にわかりやすい方法で、正しい食事の順番を提示することも可能である。
【0050】
ステップS7で、食事の順番は適切であると判定された場合、または、ステップS8で適切な順番で飲食物を摂取するための情報が案内された後、ステップS9において、管理部23は、ステップS6でカロリー算出部22により算出された単位時間当たりのユーザが摂取した飲食物のカロリー(以下、適宜、カロリー摂取スピードと称する)が所定の閾値より大きいか否かを判定する。
【0051】
一般的に、1分間に30kcal以下のカロリー摂取スピードが推奨されているが、例えば、空腹時においては、食事の最初の方では、食事スピードが速くなり、カロリー摂取スピードも推奨スピードより速くなることが予想される。そこで、図6に示すように、食事開始の際にはカロリー摂取スピードの閾値Sの値(=値s0)を大きなものとする。そしてカロリー摂取スピードの閾値Sは、後述するように、ステップS12の処理で、食事が進むにつれて理想値に近づくように変更される(値s1,・・・)。
【0052】
ステップS9において、カロリー摂取スピードが適切でないと判定した場合、ステップS10において、管理部23は、カロリー摂取スピードを適切なものにするための情報を、表示部11または音声出力部13を介して案内する。例えば、警告メッセージが表示部11に表示され、警告音が音声出力部13から出力される。
【0053】
ステップS9で、カロリー摂取スピードは適切であると判定された場合、または、ステップS10で、カロリー摂取スピードを適切なものにするための情報が案内された後、ステップS11において、管理部23は、食事が終了したか否かを判定する。例えば、撮影部12により撮影された映像に飲食物の映像が含まれなくなった場合、管理部23は食事が終了したと判定する。管理部23は、所定の時間以上、ユーザの口元に運ばれる飲食物の映像が撮影部12により撮影されなかった場合、食事が終了したと判定してもよい。
【0054】
ステップS11で、食事が終了していないと判定された場合、ステップS12において、管理部23は、飲食物の摂取の順番を決める基準となるたんぱく質(P)、脂質(F)、炭水化物(C)、および食物繊維についても閾値Eの値が変更される。例えば図5の例では、食物繊維の閾値Eの値が、値e0から値e1(e0>e1)に変更される。
【0055】
また摂取カロリースピードの閾値Sが、図6に示すように、値s0から値s1(s0>s1)に変更される。
【0056】
管理部23は、閾値Eと閾値Sの一方を更新してもよいし、閾値Eと閾値Sの両方を更新してもよい。管理部23は、閾値Eと閾値Sの両方について、同じタイミングで更新してもよいし、異なるタイミングで更新してもよい。
【0057】
管理部23は、食事が終了していないと判定した場合、すぐに閾値E,Sを更新してもよいし、一定時間の後に閾値E,Sを更新してもよい。管理部23は、食事が終了していないと判定した場合のうち、数回に1回の割合で閾値E,Sを更新してもよい。
【0058】
管理部23は、食事が終了したか否かを判定しなくてもよい。管理部23は、所定の時間が経過したら閾値E,Sを更新してもよい。所定の時間は1分でもよいし、一定の時間でもよいし、ランダムでもよい。つまり、管理部23は、食事の時間経過に基づいて、閾値E,Sを更新してもよい。
【0059】
管理部23は、食事が進んでいるか否かを判定し、食事が進んでいたら閾値E,Sを更新してもよい。管理部23は、食事の進んでいる度合いを進行度として算出し、進行度に基づいて閾値E,Sを更新してもよい。管理部23は、進行度が所定値を超えたら、閾値E,Sを更新してもよい。つまり、管理部23は、進行度に基づいて、閾値E,Sを更新してもよい。
【0060】
管理部23は、栄養素測定部21が測定した料理全体の栄養素とその時点までにユーザが摂取した栄養素との割合に基づいて、進行度を算出してもよい。管理部23は、カロリー算出部22が算出した料理全体のカロリーとその時点までにユーザが摂取したカロリーとの割合に基づいて、進行度を算出してもよい。管理部23は、栄養素測定部21が測定した料理全体の栄養素とその時点までにユーザが摂取した栄養素、およびカロリー算出部22が算出した料理全体のカロリーとその時点までにユーザが摂取したカロリーに基づいて、進行度を算出してもよい。
【0061】
その後、処理は、ステップS5に戻り、それ以降の処理が実行される。つまり、管理部23は、食事が終了したと判定されるまで、ステップS5からステップS12の処理を繰り返す。すなわち更新された栄養素の閾値Eで料理の摂取順番が決定される。このように閾値Eを更新するようにしたので、図5の例では、次に、食物繊維の含有量が値e0より少ないが、値e1以上有するレバニラが次に摂取可能な料理として案内される。このようにすることで、ユーザに対して、サラダなどの一品のみを食べ続けさせることなく、時間の経過に伴って、他の料理を食べても良いと通知することができる。これにより、食物繊維の含有量の高い飲食物を優先しつつ、ユーザの食事の質を向上させることができる。
【0062】
また上述したように、摂取カロリースピードの閾値Sも食事が進むにつれて理想値に近づくように変更されるので、無理なくユーザの食事の質を向上させることができる。一般的に、快適な食事のスピードは一定ではなく、空腹感の高い食事開始時には早く食べたいが、食事が進むにつれてゆっくりとしたスピードで食べることに苦痛を感じにくくなる。例えば、閾値Sをはじめから理想値に設定してしまうと、食事開始時からしばらくの間、頻繁に警告が発生する可能性が高くなり、ユーザの快適な食事環境を阻害してしまう恐れがあるが、そのようなことを防止することができる。
【0063】
閾値の初期値、および、閾値の減少の割合は、実験的経験的に定められるものであっても、ユーザにより適宜設定可能であってもよい。
【0064】
ステップS11において、食事が終了したと判定された場合、ステップS13において、撮影部12は、ユーザの飲食の撮影を終了する。
【0065】
ステップS14において、管理部23は、今回の食事の取り方に関する情報を生成し、表示部11または音声出力部13を介して提示する。
【0066】
図7は、今回の食事の取り方に関する情報の一例を示す。この情報には、食事の取り方が良かったのか悪かったのかなどのコメントとともに、食事中のPFCバランスの推移、食事中の摂取カロリースピード、今回の食事全体のPFCバランス、理想的な食事のPFCバランスが示される。
【0067】
図7の例では、食事開始において、たんぱく質(P)が多めに摂取され、その後徐々に脂質(F)や炭水化物(C)が摂取されていることが示されている。食事中の摂取カロリースピードも、一定の速度であることが示されている。今回の食事全体のPFCバランスも、理想的な食事のPFCバランスと同等のものとなっている。このように、図7を参照することで、ユーザは、今回の食事のとり方は適切であったことを把握することができる。
【0068】
図8は、今回の食事の取り方に関する情報の他の例を示す。図8の例では、食事開始において、炭水化物(C)が多めに摂取されていることが示されている。食事中の摂取カロリースピードも、一定でない(食事中の総カロリーの遷移の傾きが一定でない)ことが示されている。グラフ中黒丸で示されている部分は、早食い傾向であることが示されている。今回の食事全体のPFCバランスも、理想的な食事のPFCバランスと比べ、たんぱく質(P)が不足していることが示されている。図8を参照することで、ユーザは、今回の食事のとり方は不適切であったことを把握することができる。
【0069】
ステップS14において、今回の食事の取り方に関する情報がユーザに提示されると、処理は終了する。
【0070】
<栄養管理に用いる情報の他の例>
上述した例では、栄養管理に用いる情報として、食事の動画像を用いるものとして説明したが、これ以外の情報も併せて栄養管理に利用すると好適である。
【0071】
例えば、血糖値センサからユーザの血糖値情報を取得可能な場合、食事終了から60~120分経過後の血糖値上昇幅をユーザに通知することができる。特に、食後高血糖(140mg/dL)が確認された場合、食事の総カロリーやPFCバランス、および、摂食の順番やスピードの問題点とともに、ユーザに通知することができる。また、スマートウォッチから、1日の消費カロリーデータと自律神経活性度を取得可能な場合、消費カロリーに基づいて、推定エネルギー必要量の導出にあたって必要な身体活動レベルを食事の都度決定したり、自律神経活性度に基づいて、胃腸に負担がかかっていない食事であるかをモニタリングすることができる。
【0072】
<摂取カロリーの計測方法の他の例>
上述した実施の形態では、ARグラス1は、撮影部12により撮影された飲食物の映像から、飲食物の栄養素を測定し、またカロリーを算出したが、近赤外線栄養計測デバイスを利用することもできる。従来実施されていた摂取カロリーの測定方法と上述した方法を併用することで、摂取カロリーの測定精度を向上させることも可能である。
【0073】
<振動による情報伝達>
上述した実施の形態では、ARグラス1は、表示部11および音声出力部13を介して情報を出力したが、例えば振動で情報をユーザに伝達することができる。例えば、摂取カロリースピードが速いことが検知された場合(ステップS9)、摂取カロリースピードを適切にするための支援として、適切な咀嚼のタイミングを振動で案内することもできる。
【0074】
<他の構成>
ARグラス1は、表示部11が一方の眼の前方に配置されていてもよい。つまり、ARグラス1は、左眼用の表示部11が配置され、右眼用の表示部は配置されなくてもよい。または、ARグラス1は、右眼用の表示部11が配置され、左眼用の表示部は配置されなくてもよい。
【0075】
上述した実施の形態では、1つのARグラス1が、表示部11~記憶部15を有するようにしたが、これらの機能は、複数の装置で構成されていてもよい。例えば、制御部14は、管理装置として別途設け、ネットワークを介してARグラス1と接続し、撮影部12からの映像を取得して上述した処理を実行し、適宜情報をARグラス1の表示部11に表示するようにもできる。また、表示部11~記憶部15の機能の一部またはすべてを、スマートフォンによって実現することも可能である。また、ARグラス1に代わって、例えば、HMD(HeadMountedDisplay)など、ユーザの視野角全体の画像を取得可能であって、かつ、ユーザの視野に対して所定の情報を重畳可能なウェアラブル端末を用いることも可能である。
【0076】
管理部23は、栄養素測定部21による測定結果に基づいて、第1の栄養素が第1の閾値よりも多い飲食物を選択し、第1の栄養素を所定量摂取したのちに、第2の栄養素が第2の閾値よりも多い飲食物を選択してもよい。管理部23は、選択された飲食物を表示部11に表示するか、または音声出力部13から音声を出力してもよい。また、管理部23は、栄養素の量が多い順に飲食物に対して順位を付けて、その順位をユーザに案内してもよい。
【0077】
管理部23は、ユーザの年齢や性別の入力を受け付け、ユーザ情報15aとして記憶してもよい。また、管理部23は、ユーザの撮影画像の入力を受け付け、画像に基づいてユーザの年齢や性別を推定し、ユーザ情報15aとして記憶してもよい。そして、管理部23は、ユーザの年令や性別に基づいて栄養素やカロリーを管理してもよい。管理部23は、ユーザの年令や性別に基づいて閾値E,Sを変更してもよい。
ステップS3では、配膳された料理全体のPFCバランスと総カロリーが適切か否かが判定される。ただし、ユーザが配膳された料理全体を全て摂取するとは限らない。そこで、撮影部12は、ユーザの周辺の様子を撮影してもよい。また、管理部23は、撮影された映像に基づいて、テーブルに配膳された料理を摂取する人数、年齢や性別を判定してもよい。管理部23は、栄養素測定部21によって測定された栄養素の量や、カロリー算出部22によって算出されたカロリーを、ユーザが摂取すると見込まれる推定量に換算してもよい。管理部23は、栄養素の量やカロリーを判定した人数で除算することにより推定量を換算してもよいし、年齢や性別に基づいて配分してもよい。なお、ステップS6では、撮影部12は飲食物がユーザの口元に運ばれる様子を撮影するので、上記推定量に換算する必要はない。
【0078】
また上述した図3図4のフローチャートでは、例えば、ステップS5での飲食物の摂取順番の案内、ステップS7での飲食物の摂取の順番が適切であるか否かの判定、ステップS9での摂取カロリースピードが適切であるか否かの判定などは、図3,4に示す順番に限らず実行することができ、一部の処理が省略されてもよい。
【0079】
[実施形態の補足説明]
上述した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態の順序、フローチャートにおける処理の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図は、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0080】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0081】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0082】
[効果のまとめ]
上述した管理装置としての制御部14は、
ユーザの飲食を撮影した映像に基づいて、所定の単位時間(例えば、1分間)当たりのユーザが摂取した飲食物のカロリーを算出するカロリー算出部22と、
カロリー算出部により算出された単位時間当たりのユーザが摂取した飲食物のカロリーが閾値を超えた場合、ユーザに警告を出力し、飲食が終了したか否かを判定する管理部23と
を有し、
カロリー算出部と管理部は、その処理を飲食が終了したと判定されるまで繰り返す
ことを特徴とする。
【0083】
このような構成を有するようにしたので、単位時間における摂取カロリーを管理することができる。
【0084】
また、管理部23が、飲食の時間経過に基づいて、閾値を減少させる。
また、管理部23が、飲食の進んでいる度合いを進行度として算出し、進行度に基づいて閾値を減少させる。
【0085】
このような構成を有するようにしたので、ユーザの快適な食事環境を阻害することなく、食事のスピードを適正に管理することが可能となる。
【0086】
また、ARグラス1は、
ユーザにARグラス1が装着された状態で、ユーザの両眼または一方の眼の前方に配置される表示部11を有し、
制御部14の管理部23により出力された警告を、表示部11に表示する。
【0087】
このような構成を有するようにしたので、直感的にわかりやすい方法でユーザに通知を行うことができる。
【0088】
本開示は、SDGs(Sustainable Development Goals)の「すべての人に健康と福祉を」の実現に貢献し、ヘルスケア製品・サービスによる価値創出に寄与する事項を含む。
【符号の説明】
【0089】
1…ARグラス、 11…表示部、 12…撮影部、 13…音声出力部、 14…制御部、 15…記憶部、 21…栄養素測定部、 22…カロリー算出部、 23…管理部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8