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  • 特開-センサユニットおよびロボットハンド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092735
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】センサユニットおよびロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/02 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
B25J19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208869
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS14
3C707BS01
3C707DS01
3C707ES04
3C707KS34
3C707KV04
3C707KV15
3C707KW04
3C707KX08
3C707MT04
(57)【要約】
【課題】ロボットハンドの把持部で把持したときの把持物の保護と、センサの検出の精度のさらなる向上とを両立可能な技術を提供する。
【解決手段】センサユニット(20)は、ロボットハンド(12)の把持部(13)に設置されるダイヤフラム(21)と、それに設置された状態で外力を検出するセンサ(22)とを有する。ダイヤフラム(21)は変位に対する抵抗力を調整可能な膜を有し、センサ(22)は当該膜に設置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位に対する抵抗力を調整可能な膜を有するとともにロボットハンドの把持部に取り付け可能なダイヤフラムと、
前記膜に取り付けられているとともに外力を検出面で検出するセンサと、
を有するセンサユニット。
【請求項2】
前記膜は、前記検出面に対して垂直な方向に変位する、請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
前記ダイヤフラムは、前記膜の周縁部で前記膜を支持する周壁部を含み、
前記周壁部は、前記センサの検出面に対して垂直な方向に伸縮可能であるベローズ構造を有する、請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項4】
前記周壁部と前記膜とによって囲まれた空間には油が充填されており、かつ前記油の圧力が調整されている、請求項3に記載のセンサユニット。
【請求項5】
前記油の圧力を検出する油圧センサと、前記油圧センサが前記油の振動を検出した時により強い把持力で把持物を把持するように前記ロボットハンドを制御する制御部と、を備える、請求項4に記載のセンサユニット。
【請求項6】
把持物を把持する把持部と、
請求項1~5のいずれか一項に記載のセンサユニットと、
を有するロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサユニットおよびロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
商品の検査または仕分けでは、人の手で触れることで対象物を判別することがある。このように人の手で行われている作業をロボットハンドで行うことが検討されている。たとえば、ロボットハンドを用いて把持した把持物の内容物を検知する技術には、把持部の振動を検出するセンサを備えたロボットハンドで把持物を把持し、把持物を揺動させたときに検出する低周波振動の検出信号に応じて内容物を判別する技術が知られている。当該技術では、把持部で把持物を把持したときの滑り防止のため、また傷つけ防止などの把持物の保護のために、把持部における把持物に接触する部分に緩衝部材が配置される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-094639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来技術は、把持物の状態を、緩衝部材を介し、さらに把持部を介してセンサで検出する。そのため、ロボットハンドの把持部で把持したときの把持物の保護と、センサの検出の精度のさらなる向上とを両立させる観点から検討の余地が残されている。
【0005】
本発明の一態様は、ロボットハンドの把持部で把持したときの把持物の保護と、センサの検出の精度のさらなる向上とを両立可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンサユニットは、変位に対する抵抗力を調整可能な膜を有するとともにロボットハンドの把持部に取り付け可能なダイヤフラムと、前記膜に取り付けられるとともに外力を検出面で検出するセンサと、を有する。
【0007】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るロボットハンドは、把持物を把持する把持部と、上記のセンサユニットと、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ロボットハンドの把持部で把持したときの把持物の保護と、センサの検出の精度のさらなる向上とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットハンドの構成を模式的に示す図である。
図2図1のA部の構成を拡大して模式的に示す図である。
図3図1のロボットハンドによる把持物の把持とセンサの外力の検出とを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
〔構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係るロボットハンドの構成を模式的に示す図である。図1に示されるロボット10は、ロボットアーム11と、その先端側に接続されているロボットハンド12と、その先端側に接続されている把持部13とを有する。なお、本実施形態において、鉛直方向をZ方向とし、Z方向に直交する二方向をX方向およびY方向とする。X方向およびY方向は互いに直交する方向である。
【0012】
ロボットハンド12は、把持部13と、センサユニット20とを有している。把持部13は、ロボット10における把持物を把持するための構成である。把持部13は、三本ある。それぞれの把持部13は、XY平面において、ロボットアーム11の中心軸から等距離であり、かつロボットハンド12の周方向における等間隔の三か所に配置されている。三本の把持部13は、例えば、XY平面方向において当該中心軸に対して互いに接近、離間するように作動して把持物を把持するように構成されている。
【0013】
センサユニット20は、ダイヤフラム21と、センサ22とを有している。センサユニット20は、把持部13のそれぞれの先端部に取り付けられている。図2は、図1のA部の構成を拡大して模式的に示す図である。
【0014】
ダイヤフラム21は、膜211を有している。膜211は、ダイヤフラム21が把持部13に取り付けられた状態で把持部13上に支持される。ダイヤフラム21の構成については後述する。
【0015】
センサ22は、膜211に取り付けられている。センサ22は、膜211との取付側とは反対側に、外力を検出する検出面221を有している。このように、センサ22は、膜211に取り付けられた状態で外力を検出するように膜211に取り付けられている。センサ22は、例えば、外力を検出可能な接触式のセンサである。センサ22の例には、静電容量式センサ、圧電式センサおよび抵抗膜式(巻線抵抗体)センサ、が含まれる。センサ22は、例えば静電容量式の触覚センサであり、検出面221にかかる外力の大きさを検出可能なセンサである。
【0016】
ダイヤフラム21は、把持部13から起立する周壁部213と、周壁部213の頂部を塞ぐ膜211とによって構成されている。このように、ダイヤフラム21は、膜211の周縁部で膜211を支持する周壁部213を有している。周壁部213は、全周にわたって、周壁部213の高さ方向に伸縮可能なベローズ構造を有している。当該ベローズ構造は、センサ22の検出面221に対して垂直な方向に伸縮可能である。このように、周壁部213は、センサ22の検出面221に対して垂直な方向に伸縮可能であるベローズ構造を有している。
【0017】
周壁部213と膜211とによって囲まれた空間には、圧力調整用の液体が充填されている。当該液体は、ダイヤフラム21の内圧を適切に設定可能な範囲において適宜に選択され得る。当該液体は、さらには安定した物性を有することが好ましい。当該液体の例には、水系媒体および油が含まれる。本実施形態では、ダイヤフラム21には、油圧調整用の油が充填されている。
【0018】
なお、ダイヤフラム21は、フッ素ゴムなどの柔軟な(変形可能な)材料で構成されていてもよいし、プラスチックまたは金属などの硬い(変形しない)材料で構成されていてもよい。たとえば、膜211および周壁部213は、いずれも、柔軟な材料で構成することもでき、硬い材料で構成することもでき、そのいずれであってもよい。ダイヤフラム21の材料は、把持物の種類および性状、ロボット10の作業内容、およびロボット10の作業環境などの諸条件に応じて適宜に選択され得る。把持部13で把持物を把持したときの把持物の損傷を抑制する観点では、ダイヤフラム21の材料は柔軟な材料であることが好ましい。把持部13で把持物を把持したときのセンサ22の検出の精度を高める観点では、ダイヤフラム21の材料は硬い材料であることが好ましい。
【0019】
センサユニット20は、さらに、圧力伝達管23と油圧センサ24とを有している。圧力伝達管23は、一端でダイヤフラム21の内部空間に接続されており、ダイヤフラム21内の油が充満している。油圧センサ24は、圧力伝達管23の他端に接続されており、圧力伝達管23内の油の圧力(油圧)を検出する圧力センサである。このように、センサユニット20は、ダイヤフラム21内の油圧を、圧力伝達管23を介して油圧センサ24で検出可能に構成されている。
【0020】
なお、ダイヤフラム21内の油圧は、例えば圧力伝達管23からダイヤフラム21内へ特定量の油を充填し、ダイヤフラム21の内部空間および圧力伝達管23を外部に対して密封することによって適宜に設定されている。あるいは、ダイヤフラム21内の油圧は、ダイヤフラム21内への油の充填時における油圧を検出し、特定の油圧となった時点でダイヤフラム21の内部空間および圧力伝達管23を外部に対して密封することによって適宜に設定されている。圧力伝達管23への油の充填は、例えば、圧力伝達管23に介在する図示しない三方弁を介して油を充填することで実施することが可能である。また、圧力伝達管23における油圧は、例えば、当該油の密閉系に接続されているシリンダ内を進退可能なピストンの位置によって調整可能である。このようにダイヤフラム21内の油圧は特定の圧力に調整されている。
【0021】
油圧は、把持部13が把持の対象とする把持物の物性とロボット10による作業内容とに応じて適宜に設定される。たとえば、把持物が柔らかい物品であり、ロボット10の作業が良品の選別である場合には、当該油圧は、センサユニット20を介して把持部13が把持物を把持したときにセンサ22が把持物に損傷を与えない適度な圧力に設定される。
【0022】
〔把持物の検出〕
図3は、図1のロボットハンド12による把持物の把持とセンサ22の外力の検出とを説明するための図である。図3中、「3A」は把持物Pを把持する前の状態を示しており、「3B」は把持物Pを把持した直後の状態を示しており、「3C」は把持物Pを把持して取り扱う状態を示している。
【0023】
把持物Pは、ロボット10の作業領域に配置される。たとえば、把持物Pは、搬送ベルトなどの搬送装置によってロボット10の作業領域まで搬送されてもよいし、ロボット10が把持物Pの位置まで移動してもよい(3A)。
【0024】
ロボット10は、把持部13を開いて把持物Pに接近し、把持部13で挟んで把持部Pの両側部に接触する(3B)。
【0025】
ロボット10は、把持物Pを挟んで保持し、上方に移動する。こうして把持物Pがロボット10の把持部13に把持される(3C)。
【0026】
センサ22が膜211を介してダイヤフラム21に取り付けられていることから、把持部13で把持物Pを把持したときの把持物Pからの力がセンサ22によって検出される。
【0027】
ダイヤフラム21において、膜211はベローズ構造の周壁部213で支持されている。そのため、把持部13による把持物Pの把持時に、膜211は、周壁部213の高さ方向に沿って進退可能である。さらに、膜211は、把持物Pの表面に沿って、あるいはセンサ22の検出面221にかかる外力の向きに応じて傾くことが可能であり、また傾いたまま、あるいは自在に傾きながら、周壁部213の高さ方向へ進退可能である。
【0028】
[ダイヤフラムの効果]
ロボット10は、予め設定されている把持力で把持物Pを把持する。ダイヤフラム21内の油圧は、把持物Pの物性に応じて予め適切な油圧に調整されている。そのため、把持部13で把持物Pを把持したときに、把持部13が把持物Pを把持する力のうち、余剰な力の一部は、ダイヤフラム21の変形によって吸収される。よって、把持部13での把持による把持物Pの損傷が抑制される。また、センサ22の検出面221が把持物Pの形状に応じた適当な傾きで把持物Pに接する。よって、センサ22によって把持物Pから受ける力を高い精度で検出することが可能である。
【0029】
[制御部が油圧を参照する形態]
把持部13が特定の把持力で把持物Pを把持した当初では(図3の3B)、把持部13がダイヤフラム21を介して把持物Pに当接したことにより、油圧が微細に振動する。この振動による測定誤差が制御に与える影響を抑えるために、ロボットハンド12の制御部は、油圧センサ24の検出結果を参照して把持物Pからの力(把持物Pからセンサ22に作用する力)を特定する。
【0030】
例えば、図3の3Bにおいて、ロボットハンド12の制御部は、油圧センサ24の検出値の振動が収束した後(より具体的には、この振動の振幅が予め定められた閾値を下回った後)のセンサ22の検出値を、把持物Pからの力として特定する。このように、油圧センサ24の検出値の振動が収束する前のセンサ22の検出値を無視することで、この振動による測定誤差が制御に与える影響を抑えることができる。
【0031】
また、ロボットハンド12の制御部は、油圧センサ24の検出値をロボットハンド12の把持力の制御にも利用することができる。例えば、把持部13が特定の把持力で把持物Pを持ち上げる瞬間、あるいは把持している最中(図3の3C)において、把持力が不足し、あるいは把持物Pの姿勢が変化して把持物Pにおけるセンサ22の検出面221との接触部分が検出面221に沿って移動する(すなわち滑る)ことがある。このような滑りは、油圧の振動を生じさせる。このような場合では、ロボット10の制御部は、油圧センサ24の検出結果を参照してロボットハンド12の把持力を調整する。
【0032】
例えば、ロボットハンド12の制御部は、把持部13が把持物Pを把持して取り扱っているときに、油圧センサ24の検出値の振動(例えば、予め定められた閾値を上回る振幅を有する振動)を検知すると、より強い力で把持物Pを把持するようロボットハンド12を制御する。例えば、把持物Pを把持する把持力が予め定められた増加量だけ増加するようロボットハンド12を制御する。ロボットハンド12の制御部は、このような動作を、油圧センサ24の検出値の振動が収束するまで(例えば、振動の振幅が予め定められた閾値を下回るまで)繰り返す。こうして、より適切な強さで把持物Pが把持部13によって把持され、滑りが解消される。このように、本実施形態では、油圧センサ24の検出値に基づいて、ロボットハンド12の把持力がより適切な把持力へ調整される。
【0033】
把持力の特定の増加量は、把持物Pの物性およびロボット10の作業内容に応じて適宜に設定される。たとえば把持物Pが果物のように柔らかく、かつ変形しやすい物品である場合には、当該増加量は、把持部13の把持物Pへのさらなる変位量(移動量)が把持物Pの表面の状態に影響を実質的に及ぼさない範囲となる十分に小さい値に設定される。
【0034】
〔主な作用効果〕
センサユニット20は、ロボットハンド12の把持部13に取り付け可能なダイヤフラム21と、ダイヤフラム21の膜211に取り付けられたセンサ22とを有し、センサ22は、膜211に取り付けられた状態で外力を検出面221で検出する。このように、センサユニット20は、センサ22が、ダイヤフラム21による緩衝作用が得られる状態で外力を検出可能に構成されている。よって、センサ22の検出面221が把持物Pの表面に当接した状態、すなわち検出面が外力を検出する状態、では、既にダイヤフラム21による緩衝作用が十分に発現されている。よって、外力検出時にはセンサ22の検出面221は、把持物Pの表面を傷つけないように把持物Pに当接し、かつその状態でセンサ22は把持物Pからの外力を検出する。
【0035】
また、膜211は検出面221に対して垂直な方向に変位する。このため、把持部13による把持物Pの把持時に、ダイヤフラム21による緩衝作用が十分に発現されやすい。
【0036】
また、ダイヤフラム21は、膜211の周縁部で膜211を支持する周壁部213を含む。そして周壁部213は、センサ22の検出面221に対して垂直な方向に伸縮可能であるベローズ構造を有する。ベローズ構造の周壁部213は、検出面221に対する垂直方向のみならず、検出面221に対して斜めの方向にもその向きに正対するように傾くことができ、かつその状態で伸縮可能である。よって、検出面221を把持物Pに接する方向に向けやすく、把持による把持物Pの損傷を抑制する観点、および、把持物Pからの外力を高い精度で検出する観点から有利である。
【0037】
また、周壁部213と膜211とによって囲まれた空間には油が充填されている。そして当該油の圧力(油圧)が調整されている。このため、ダイヤフラム21の膜211の変位に対して把持物Pおよびロボット10の作業内容に応じた適度な抵抗力を発現させる観点から好適である。また、充填物が油であることは、把持物Pの滑りを十分に検出可能である観点、ならびに、物理的および化学的に十分に安定な観点から好適である。
【0038】
また、センサユニット20は、油圧センサ24とともに、油圧センサ24が油の振動を検出した時により強い把持力で把持物Pを把持するようにロボットハンド12を制御する制御部をさらに備える。センサユニット20が当該制御部をさらに備えることは、必要最小限の把持力での把持を実現する観点から有利である。
【0039】
〔制御部に関する他の態様〕
上記の制御部の機能は、油圧センサの検出値に応じた前述の制御例を実施するようにコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。たとえば当該コンピュータは、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有し、この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、前述の制御部の制御が実現される。
【0040】
当該プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記のコンピュータが備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記コンピュータに供給されてもよい。
【0041】
また、上記制御部による制御の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記の制御を実現する論理回路が形成された集積回路によって上記の制御を実現することも可能である。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記の制御を実現することも可能である。
【0042】
また、前述の実施形態における油圧センサ24の検出結果に応じた制御、および、センサ22の検出結果に応じた制御、の一方または両方における各処理を、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。たとえば、センサ22の検出値と、油圧センサ24の検出値とを入力値とする学習データによって、AIに学習させてもよい。たとえば、センサ22の検出値および油圧センサ24の検出値から、AIが把持物Pごとの適正な把持力を学習してもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0043】
〔変形例〕
把持当初の油圧の微細な振動は、やがては収まる。したがって、上記の制御部による油圧の検出値の参照に代えて、把持部13で把持物Pを把持してから、前述の油の振動が収まるのに十分な特定の時間が経過した後のセンサ22の検出値をセンサ22の測定値として決定してもよい。このような待機時間は、実機による実験によって特定可能である。このような態様によっても、センサ22の正確な検出値を取得することが可能である。
【0044】
また、ロボット10の作業環境において、撮像による把持物Pの状態観察を伴う場合には、撮像された画像に基づいて、把持時における把持物Pの滑りを検出してもよい。
【0045】
また、ロボットハンド12の把持部13は、三本より少なくても、例えば二本であってもよいし、三本よりも多くても、例えば四本または五本であってもよい。
【0046】
〔まとめ〕
以上の説明から明らかなように、本発明の第一の態様のセンサユニット(20)は、変位に対する抵抗力を調整可能な膜(211)を有するとともにロボットハンド(12)の把持部(13)に取り付け可能なダイヤフラム(21)と、膜に取り付けられるとともに外力を検出面(221)で検出するセンサ(22)と、を有する。第一の態様によれば、ロボットハンドの把持部で把持したときの把持物の保護と、センサの検出の精度のさらなる向上とを両立させることができる。
【0047】
本発明の第二の態様のセンサユニットは、第一の態様において、膜が検出面に対して垂直な方向に変位する。第二の態様は、ダイヤフラムによる十分な緩衝作用によって把持時における把持物の傷つきを防止する観点からより一層効果的である。
【0048】
本発明の第三の態様のセンサユニットは、第一の態様または第二の態様において、ダイヤフラムが膜の周縁部で膜を支持する周壁部(213)を含み、当該周壁部がセンサの検出面に対して垂直な方向に伸縮可能であるベローズ構造を有する。第三の態様は、把持部による把持物の傷つきを防止する観点および外力の検出精度を高める観点からより一層効果的である。
【0049】
本発明の第四の態様のセンサユニットは、第一の態様から第三の態様のいずれかにおいて、周壁部と膜とによって囲まれた空間には油が充填されており、かつ油の圧力が調整されている。第四の態様は、ダイヤフラムにおいて把持物の物性および把持による作業内容に応じた適切な抵抗力を発現させる観点、および、把持部における把持物の滑りを精密に検出する観点からより一層効果的である。
【0050】
本発明の第五の態様のセンサユニットは、第四の態様において、油の圧力を検出する油圧センサ(24)と、油圧センサが油の振動を検出した時により強い把持力で把持物を把持するようにロボットハンドを制御する制御部と、をさらに備える。第五の態様は、必要最小限の把持力での把持物の把持を把持部によって実現する観点からより一層効果的である。
【0051】
本発明の第六の態様のロボットハンドは、把持物を把持する把持部と、第一の態様から第五の態様のいずれかのセンサユニットと、を有する。第六の態様によれば、ロボットハンドの把持部で把持したときの把持物の保護と、センサの検出の精度のさらなる向上とを両立させることができる。
【0052】
前記構成によれば、従来に比べて、イチゴまたは桃などの高級な果物のような柔らかい物品をより繊細に把持することが可能となり、人の手による当該物品の把持と同等の作業をロボットで実現することが期待される。よって、本発明は、産業化の発展に寄与することが期待され、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献することが期待される。
【0053】
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10 ロボット
11 ロボットアーム
12 ロボットハンド
13 把持部
20 センサユニット
21 ダイヤフラム
22 センサ
23 圧力伝達管
24 油圧センサ
211 膜
213 周壁部
221 検出面
3A 把持物Pを把持する前の状態
3B 把持物Pを把持した直後の状態
3C 把持物Pを把持して取り扱う状態
P 把持物
図1
図2
図3