(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092746
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240701BHJP
E02F 9/16 20060101ALI20240701BHJP
E02F 3/36 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
E02F9/00 J
E02F9/16 K
E02F3/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208882
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢
(72)【発明者】
【氏名】林 陽介
【テーマコード(参考)】
2D012
2D015
【Fターム(参考)】
2D012EA01
2D015BA01
2D015EA02
(57)【要約】
【課題】周辺部品のエッジ当たりを防止ししつつ、取付部品のネジ締結のための必要な部品の点数を削減する。
【解決手段】作業機は、機体と、機体に設置された第1部品としてのプレート(21)と、プレート(21)のエッジ部(24a)に設置され、外周面に丸みを帯びた棒状の保護部品である丸棒(26)と、プレート(21)にネジ締結される取付部品としての板金部品(28)を備えている。板金部品(28)は、ボルト(30)を用いてネジ締結された状態で、丸棒(26)に当接する側端面28aを有しており、丸棒(26)を回り止めとして用いて取り付けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品と、
前記第1部品のエッジ部に設置され、外周面に丸みを帯びた棒状の保護部品と、
前記第1部品、あるいは前記第1部品とは異なる第2部品にネジ締結された取付部品と、を備え、
前記取付部品は、前記保護部品に当接し、ネジ軸周りに回転不能であることを特徴とする作業機。
【請求項2】
前記保護部品は、金属の丸棒である請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記保護部品は、前記エッジ部に溶接されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項4】
前記丸棒の直径は、4~8mmであることを特徴とする請求項2に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、バックホー等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1、2に開示された、作業機(建設機械)が知られている。特許文献1に開示された作業機では、油タンクの縁に丸棒状の保護部材が設けられており、該保護部材にて油タンクの縁と油圧ホースとの接触を回避するようになっている。また、特許文献2に開示された作業機では、オイルタンクに、覗き窓が取り付けられ且つ当該オイルタンクの壁面から突出して油圧ホースを案内する外面を有する筒状部が設けられており、筒状部にて油圧ホースを案内して、オイルタンクと油圧ホースとの接触を回避するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-31513号公報
【特許文献2】特開2022-85494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術は、いずれも油圧ホースを保護するものであり、油圧ホースの保護に特化したものである。しかしながら、作業機においては、油圧ホース以外に、ハーネスや燃料チューブなど、何らかの部品や部材のエッジ(縁)との接触を回避すべき周辺部品は複数ある。
【0005】
従来、安全対策や周辺部品のエッジ当たりを防ぐ目的で、板金等のエッジ部にトリムと称されるゴム材等からなるカバー部材を取り付けることが行われている。しかしながら、カバー部材は取り付けに手間がかかり、また、エッジ部にカバー部材を取り付けるためのスペースである取付代を確保する必要がある。
【0006】
また、このようなエッジ部のある部品に対して、別の部品(以下、取付部品と称する)がボルト等を用いてネジ締結されることがある。その場合、取付部品がボルトと連れ回りすることを防ぐために、エッジ部のある部品に回り止め部品等が別途配置される。そのため、回り止め部品等、取付部品のネジ締結のために必要な部品の点数が増加するといった問題がある。
【0007】
本発明の一態様は、これらの課題に鑑みなされたもので、周辺部品のエッジ当たりを防止ししつつ、取付部品のネジ締結のために必要な部品の点数を削減することができる作業機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る作業機は、第1部品と、前記第1部品のエッジ部に設置され、外周面に丸みを帯びた棒状の保護部品と、前記第1部品あるいは前記第1部品とは異なる第2部品にネジ締結された取付部品と、を備え、前記取付部品は、前記保護部品に当接し、ネジ軸周りに回転不能であることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、エッジ部に配置された棒状の保護部品にて、ハーネスやホース、チューブ等の周辺部品のエッジ当たりを防止することができる。これにより、手間のかかるトリム等のカバー部品を取り付ける作業が不要になる。また、カバー部品を取り付ける構成に比べて、取付代を小さくできるといった利点もある。
【0010】
しかも、上記構成では、取付部品は、保護部品に当接してネジ軸周りに回転不能に構成されている。つまり、保護部品を、取付部品がネジ軸周りに連れ回るのを防ぐ回り止めとしても機能させている。これにより、回り止め部品を別途配置する必要がなく、取付部品のネジ締結のために必要な部品の点数を削減することができる。また、取付部品は、保護部品に当接しさえすれば連れ回りが防止されるので、回り止め部品を別途配置する構成に比べて、形状簡素化も可能になる。
【0011】
本発明の一態様に係る作業機において、前記保護部品は、金属の丸棒であってもよい。これによれば、耐久性に優れた保護部品を安定して得ることができる。
【0012】
本発明の一態様に係る作業機において、前記保護部品は、前記エッジ部に溶接されていてもよい。これによれば、保護部品を簡単、かつ堅固に取り付けることができる。
【0013】
本発明の一態様に係る作業機において、前記丸棒の直径は、4~8mmであってもよい。これによれば、周辺部品のエッジ当たりを防ぐ保護部品としての機能、および取付部品の回り止めとしての機能の両方を確保しつつ、無駄にスペースを取ることを回避できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、周辺部品のエッジ当たりを防止ししつつ、取付部品のネジ締結のための必要な部品の点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る作業機の全体構成を示す概略斜視図である。
【
図2】上記作業機におけるキャビンの内部を示す概略斜視図である。
【
図3】上記作業機をステップの上面近傍を水平面で切断した断面斜視図である。
【
図5】丸棒が配置されているエッジ部を別の角度から見た要部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(作業機の概略)
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る作業機1の全体構成を示す概略斜視図である。本実施形態では、作業機1としてバックホーを例示する。
【0017】
図1に示すように、作業機1は、走行装置2と、機体3と、作業装置4と、を備える。機体3は、走行装置2のフレーム上に軸受体を介して縦軸(上下方向の軸)回りに旋回可能に支持されている。機体3には、キャビン5、原動機6、ボンネット7、カウンタウェイト8、および作業装置4等が設置されている。
【0018】
キャビン5の内部(以下、室内と称する)には、オペレータ(運転者)が着座する運転席20(
図2参照)が設けられている。以下、運転席20に着座した作業者の前側を前方、作業者の後側を後方、作業者の左側を左方、作業者の右側を右方として説明する。キャビン5は、機体3の左寄りに設置されている。
【0019】
作業装置4は、作動流体圧としての作動油圧により作動する装置であり、機体3の前部に設置されている。作業装置4は、油圧シリンダ11、12R,12L,13、14により回動される第1ブーム15、第2ブーム16、アーム17、バケット18などを備えている。
【0020】
(キャビン内部)
図2は、作業機1のキャビン5の内部を示す概略斜視図である。
図2に示すように、室内には、前述した運転席20が設置されている。運転席20は、室内の床面となるステップ(第1部品)21上に設置されている。運転席20の周囲には、走行装置2、作業装置4、および機体3を操作するための、操作レバー22が複数配置されている。また、運転席20の下には、エアコンユニット23が配置されている。
【0021】
図3は、作業機1をステップ21の上面近傍を水平面で切断した断面斜視図である。
図4は、
図3に示す領域Bの拡大図である。
図4に示すように、エアコンユニット23は、ステップ21に形成された開口24の内側に配置されている。開口24の下方には、エアコンユニット23を保持するための保持部材25が配置されており、保持部材25の取付面にエアコンユニット23は保持される。
【0022】
(ハーネスのエッジ当たり回避)
ところで、
図4に示すように、保持部材25がステップ21よりも下側に位置し、開口24から突き出るようにエアコンユニット23が取り付けられる構成では、エアコンユニット23のハーネス(図示しない)も、開口24を通してステップ21の上面側へと引き出される。そのため、ハーネスが開口24のエッジ部24aに接触することを回避する策を講じる必要がある。
【0023】
そこで、作業機1においては、
図4に示すように、ステップ21における開口24のエッジ部24aに、金属製の丸棒26が配置されている。丸棒26は、外周面に丸みを帯びた棒状の保護部品であり、エッジ部24aに沿うように配置されている。
【0024】
本実施形態では、丸棒26とステップ21とは共に金属製であるため、溶接にて丸棒26をエッジ部24aに取り付けている。これによれば、保護部品である丸棒26を簡単かつ堅固に取り付けることができる。但し、丸棒26のエッジ部24aへの取り付け方法は、溶接に限定されるものではない。
【0025】
本実施形態では、保護部品として、金属の丸棒26を用いることで、耐久性に優れた保護部品を安定して得ることができる。但し、保護部品の断面は円形に限らず、断面が楕円形の棒状部材であってよいし、断面がDカットされた円弧状の棒状部材などであってもよい。
【0026】
エッジ部24aにおいて、丸棒26を配置する部位は、少なくともエアコンユニット23のハーネス(図示しない)が接触する可能性のある部位である。なお、ハーネスだけでなく、油圧ホース、燃料チューブなどの、エッジ部24aとの接触を回避すべき周辺部品が接触する可能性がある部位にも丸棒26を配置すればよい。
【0027】
また、エッジ部24aの先端(角)に対する丸棒26の位置も、外周面がエッジ部24aの先端よりも開口24側に突出していてもよいし、逆に外周面がエッジ部24aの先端よりも内側に位置していてもよい。要は、周辺部材が、丸棒26に接触することでエッジ部24aに接触しなければよい。
【0028】
図5は、丸棒26が配置されているエッジ部24aを別の角度から見た要部の拡大斜視図である。
図5に示すように、周辺部品27は、エッジ部24aに丸棒26が取り付けられていることで、丸棒26と接触し、丸棒26の丸みを帯びた外周面で受けられる。これにより、周辺部品27の接触部の応力集中が緩和され、周辺部品27の損傷が防止される。
【0029】
そして、このような構成とすることで、エッジ部24aにトリム等のカバー部材を取り付ける手間のかかる作業が必要なくなり、作業工程を簡素化できる。また、カバー部材を取り付ける構成では、エッジ部24aの先端から内側に向かってカバー部材を取り付けるスペースである取付代が必要となる。これに対し、丸棒26の場合、エッジ部24aの先端から内側に丸棒26の太さ分のスペースを確保するだけでよい。したがって、カバー部材の取付代の確保が困難な狭いエッジ部においても、周辺部品27とエッジ部との接触を回避できる。また、カバー部材の場合、エッジ部24aに挿し込んで取り付けるため、経年変化による材質の劣化で外れ易くなるといった不具合があるが、このような不具合も解消できる。
【0030】
(連れ回り防止)
しかも、作業機1においては、エッジ部24aに配置された丸棒26を、ステップ21に取り付けられる取付部品の回り止めとしても利用している。
図4、
図5に示すように、ステップ21における開口24の近傍には、取付部品である一対の板金部品28が配置されており、ステップ21にボルト30にて固定されている(ネジ締結されている)。このように板金部品28をネジ締結する際、ボルト30の回転に伴って板金部品28が連れ回りする。
【0031】
そのため、従来は、板金部品28が付き当たるように、プレート上に回り止め部品を配置し、回り止め部品に板金部品28を付き当てた状態でネジ締結していた。その場合、前述したように、回り止め部品等の板金部品28のネジ締結のために必要な部品の点数が増加するといった問題があった。また、板金部品28の形状は、回り止め部品を取り付ける位置、および回り止め部品の形状によって左右されるため、形状が複雑化するといった問題もあった。
【0032】
これに対し、作業機1においては、
図4に示すように、取付部品である板金部品28は、保護部品である丸棒26に当接し、ネジ軸周りに回転不能となっている。つまり、板金部品28を、エッジ部24aに配置された丸棒26に突き当たらせて、丸棒26を、板金部品28をボルト30でプレート21に固定する際の回り止めとして利用している。これにより、回り止め部品を別途に配置することが不要となり、板金部品28のネジ締結のために必要な部品の点数を削減することができる。しかも、板金部品28の形状は、丸棒26に突き当たる形状であればよいので、回り止め部品を用いる場合に比べて、簡素化することができる。
【0033】
具体的には、取付部品である板金部品28は、プレート21の所定の取付位置に配置された状態で、丸棒26に当接する側端面28aを有している。板金部品28の形状を、プレート21の所定の取付位置に配置された状態で、丸棒26に当接する側端面28aを有する形状とすることで、丸棒26を回り止めとして利用することができる。
【0034】
なお、ここでは、第1部品としてプレート21を例示し、取付部品として板金部品28を例示した。しかしながら、保護部品が取り付けられる第1部品、および保護部品を回り止めとして利用してネジ締結される取付部品は、これらに限られるものではない。
【0035】
また、例えば、第1部品としての機体フレームに保護部品が取り付けられ、機体フレームに取付部品としての電装品取付ブラケットがネジ締結される構成に採用してもよい。電装品ブラケットにより取り付けられる電装品の例としては、例えば、警報装置(ホーン、走行ブザー、旋回アラームなど)、カメラ、ライト、表示装置、各種センサ等を挙げることができる。これらの電装品から延びるハーネス等のエッジ当たりが保護部品にて保護されると共に、保護部品は、機体フレームにネジ締結される電装品取付ブラケットの回り止めとして機能する。あるいは、機体フレームに電装品等を取り付けるための第1ブラケット(第1部品)に保護部品が取り付けられ、この第1ブラケットに他の電装品等を取り付けるための第2ブラケット(取付部品)がネジ締結される構成に採用してもよい。
【0036】
また、上述した説明では、取付部品としての板金部品28が、保護部品としての丸棒26が取り付けられている第1部品としてのプレート21にネジ締結される構成を例示した。しかしながら、取付部品がネジ締結される対象は、保護部品が取り付けられている第1部品に限定されるものではなく、第1部品とは別の第2部品にネジ締結される場合に、第1部品に取り付けられた保護部品を回り止めとして用いてもよい。
【0037】
また、丸棒26の直径は、特に限定されるものではないが、4~8mmの範囲としてもよい。このような太さとすることで、周辺部品27エッジ当たりを防ぐ保護部品としての機能、および取付部品の回り止めとしての機能の両方を確保しつつ、無駄にスペースを取ることを回避できる。
【0038】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1 作業機
2 走行装置
3 機体
4 作業装置
5 キャビン
20 運転席
21 プレート(第1部品)
22 操作レバー
23 エアコンユニット
24 開口
24a エッジ部
25 保持部材
26 丸棒(保護部品)
27 周辺部品
28 板金部品(取付部品)
28a 側端面
30 ボルト(ネジ)