(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092749
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】光半導体素子
(51)【国際特許分類】
H01S 5/50 20060101AFI20240701BHJP
H01S 5/227 20060101ALI20240701BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01S5/50 610
H01S5/227
H01S5/026 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208887
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青山 康之祐
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA26
5F173AA48
5F173AB13
5F173AB62
5F173AB64
5F173AB66
5F173AH02
5F173AH12
5F173AP33
5F173AP45
(57)【要約】 (修正有)
【課題】出力を向上できる光半導体素子を提供する。
【解決手段】光半導体素子は、面方位が{100}の第1主面を有する基板と、第1主面の上に設けられ、メサが形成された第1半導体層と第2半導体層と、を有し、メサは、レーザ部および光増幅器部を有し、レーザ部は、第1主面に垂直な第1面と第2面と、を有し、光増幅器部は、第1主面に垂直で第1面に連なる第3面および第5面と、第2面に連なる第4面および第6面と、光が出射する端面と、を有し、第1面と第2面との間の第1距離は、第5面と第6面との間の第2距離よりも小さく、第1面および第2面は、基板の{01-1}面に平行であり、端面は、{01-1}面に垂直であり、第3面および第4面は、互いに同じ方向に傾斜しており、第3面は、第4面よりも大きく傾斜しており、第5面および第6面は、第3面および第4面と同じ方向に傾斜しており、第2半導体層は、第1面から第6面に接する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面方位が{100}の第1主面を有する基板と、
前記第1主面の上に設けられ、メサが形成された第1半導体層と、
第2半導体層と、
を有し、
前記メサは、レーザ部および光増幅器部を有し、
前記レーザ部は、
前記第1主面に垂直な第1面と、
前記第1主面に垂直で、前記第1面に平行な第2面と、
を有し、
前記光増幅器部は、
前記第1主面に垂直で、前記第1面に連なる第3面と、
前記第1主面に垂直で、前記第2面に連なる第4面と、
前記第1主面に垂直で、前記第3面に連なる第5面と、
前記第1主面に垂直で、前記第4面に連なり、前記第5面に平行な第6面と、
前記第1主面に垂直で、前記第5面および前記第6面に連なり、光が出射する端面と、
を有し、
前記第1面と前記第2面との間の第1距離は、前記第5面と前記第6面との間の第2距離よりも小さく、
前記第1面および前記第2面は、前記基板の{01-1}面に平行であり、
前記端面は、前記{01-1}面に垂直であり、
前記第3面および前記第4面は、前記第1主面に平行な面内で、前記{01-1}面から互いに同じ方向に傾斜しており、
前記第3面は、前記第1主面に平行な面内で、前記第4面よりも大きく前記{01-1}面から傾斜しており、
前記第5面および前記第6面は、前記第1主面に平行な面内で、前記{01-1}面から前記第3面および前記第4面と同じ方向に傾斜しており、
前記第2半導体層は、前記第1面、前記第2面、前記第3面、前記第4面、前記第5面および前記第6面に接する、光半導体素子。
【請求項2】
前記第5面および前記第6面は、前記第1主面に平行な面内で、前記{01-1}面から前記第3面および前記第4面と同じ方向に6°以上8°以下傾斜している、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項3】
前記第3面は、前記第1主面に平行な面内で、前記第5面よりも0°以上1°以下大きく前記{01-1}面から傾斜している、請求項1または請求項2に記載の光半導体素子。
【請求項4】
前記第4面は、前記第1主面に平行な面内で、前記第6面よりも0°超3°以下小さく前記{01-1}面から傾斜している、請求項1または請求項2に記載の光半導体素子。
【請求項5】
前記第5面の前記第3面からの傾斜の大きさと、前記第6面の前記第4面からの傾斜の大きさとが等しい、請求項1または請求項2に記載の光半導体素子。
【請求項6】
前記第3面と前記第5面とが面一である、請求項1または請求項2に記載の光半導体素子。
【請求項7】
前記基板は、リン化インジウム基板である、請求項1または請求項2に記載の光半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
分布帰還型(distributed feedback:DFB)レーザと半導体光増幅器(semiconductor optical amplifier)とが集積された光半導体素子が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0243074号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近時、光半導体素子に対して、出力の向上が望まれている。
【0005】
本開示は、出力を向上できる光半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光半導体素子は、面方位が{100}の第1主面を有する基板と、前記第1主面の上に設けられ、メサが形成された第1半導体層と、第2半導体層と、を有し、前記メサは、レーザ部および光増幅器部を有し、前記レーザ部は、前記第1主面に垂直な第1面と、前記第1主面に垂直で、前記第1面に平行な第2面と、を有し、前記光増幅器部は、前記第1主面に垂直で、前記第1面に連なる第3面と、前記第1主面に垂直で、前記第2面に連なる第4面と、前記第1主面に垂直で、前記第3面に連なる第5面と、前記第1主面に垂直で、前記第4面に連なり、前記第5面に平行な第6面と、前記第1主面に垂直で、前記第5面および前記第6面に連なり、光が出射する端面と、を有し、前記第1面と前記第2面との間の第1距離は、前記第5面と前記第6面との間の第2距離よりも小さく、前記第1面および前記第2面は、前記基板の{01-1}面に平行であり、前記端面は、前記{01-1}面に垂直であり、前記第3面および前記第4面は、前記第1主面に平行な面内で、前記{01-1}面から互いに同じ方向に傾斜しており、前記第3面は、前記第1主面に平行な面内で、前記第4面よりも大きく前記{01-1}面から傾斜しており、前記第5面および前記第6面は、前記第1主面に平行な面内で、前記{01-1}面から前記第3面および前記第4面と同じ方向に傾斜しており、前記第2半導体層は、前記第1面、前記第2面、前記第3面、前記第4面、前記第5面および前記第6面に接する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、出力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る光半導体素子を示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る光半導体素子を示す断面図(その1)である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る光半導体素子を示す断面図(その2)である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る光半導体素子を示す断面図(その3)である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る光半導体素子を示す断面図(その4)である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図14】
図14は、第1実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その9)である。
【
図15】
図15は、第1実施形態に係る光半導体素子の製造方法を示す断面図(その10)である。
【
図16】
図16は、傾斜角度と端面における反射率との関係を示す図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係る光半導体素子を示す模式図である。
【
図18】
図18は、第3実施形態に係る光半導体素子を示す模式図である。
【
図19】
図19は、第4実施形態に係る光半導体素子を示す模式図である。
【
図20】
図20は、光増幅器部に流す電流と光半導体素子の光出力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。本開示での結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、"-"(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本開示では数字の前に負の符号を付している。また、任意の点からみて、基板の[100]側を上方、上側または上ということがあり、基板の[-100]側を下方、下側または下ということがある。
【0010】
〔1〕 本開示の一態様に係る光半導体素子は、面方位が{100}の第1主面を有する基板と、前記第1主面の上に設けられ、メサが形成された第1半導体層と、第2半導体層と、を有し、前記メサは、レーザ部および光増幅器部を有し、前記レーザ部は、前記第1主面に垂直な第1面と、前記第1主面に垂直で、前記第1面に平行な第2面と、を有し、前記光増幅器部は、前記第1主面に垂直で、前記第1面に連なる第3面と、前記第1主面に垂直で、前記第2面に連なる第4面と、前記第1主面に垂直で、前記第3面に連なる第5面と、前記第1主面に垂直で、前記第4面に連なり、前記第5面に平行な第6面と、前記第1主面に垂直で、前記第5面および前記第6面に連なり、光が出射する端面と、を有し、前記第1面と前記第2面との間の第1距離は、前記第5面と前記第6面との間の第2距離よりも小さく、前記第1面および前記第2面は、前記基板の{01-1}面に平行であり、前記端面は、前記{01-1}面に垂直であり、前記第3面および前記第4面は、前記第1主面に平行な面内で、前記{01-1}面から互いに同じ方向に傾斜しており、前記第3面は、前記第1主面に平行な面内で、前記第4面よりも大きく前記{01-1}面から傾斜しており、前記第5面および前記第6面は、前記第1主面に平行な面内で、前記{01-1}面から前記第3面および前記第4面と同じ方向に傾斜しており、前記第2半導体層は、前記第1面、前記第2面、前記第3面、前記第4面、前記第5面および前記第6面に接する。
【0011】
第5面および第6面が、第1主面に平行な面内で、{01-1}面から第3面および第4面と同じ方向に傾斜しており、光増幅器部の光軸は端面に垂直な方向から傾斜している。光増幅器部の光軸が端面に垂直な方向から傾斜している場合、傾斜していない場合よりも端面における反射率が低い。従って、端面における反射が抑えられ、高い出力が得られる。また、レーザ部と光増幅器部との間では、光軸が一直線上にはなく、光の進行方向が異なるが、第2半導体層が設けられているため、光がメサ内に閉じ込められ、光のメサの外部への放射が抑制される。従って、出力を向上できる。
【0012】
〔2〕 〔1〕において、記第5面および前記第6面は、前記第1主面に平行な面内で、前記{01-1}面から前記第3面および前記第4面と同じ方向に6°以上8°以下傾斜していてもよい。この場合、特に反射率が低く、優れた出力が得られる。
【0013】
〔3〕 〔1〕または〔2〕において、前記第3面は、前記第1主面に平行な面内で、前記第5面よりも0°以上1°以下大きく前記{01-1}面から傾斜していてもよい。この場合、第3面の{01-1}面からの傾斜が小さく、光増幅器部内において、第3面を有する部分と第5面を有する部分との間に良好な光結合効率を得やすい。
【0014】
〔4〕 〔1〕から〔3〕のいずれかにおいて、前記第4面は、前記第1主面に平行な面内で、前記第6面よりも0°超3°以下小さく前記{01-1}面から傾斜していてもよい。この場合、光増幅器部内において、第4面を有する部分と第6面を有する部分との間での光軸のずれを小さく抑えやすい。
【0015】
〔5〕 〔1〕から〔4〕のいずれかにおいて、前記第5面の前記第3面からの傾斜の大きさと、前記第6面の前記第4面からの傾斜の大きさとが等しくてもよい。この場合、光増幅器部内において、第3面および第4面を有する部分と第5面および第6面を有する部分との間で光軸が一致する。
【0016】
〔6〕 〔1〕から〔4〕のいずれかにおいて、前記第3面と前記第5面とが面一であってもよい。この場合、第3面の{01-1}面からの傾斜を小さくしやすい。
【0017】
〔7〕 〔1〕から〔6〕のいずれかにおいて、前記基板は、リン化インジウム基板であってもよい。この場合、高出力を得やすい。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。第1実施形態は光半導体素子に関する。
図1は、第1実施形態に係る光半導体素子を示す模式図である。
図2から
図5は、第1実施形態に係る光半導体素子を示す断面図である。
図1は、メサの形状を平面視で示す。
図2は、
図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。
図3は、
図1中のIII-III線に沿った断面図に相当する。
図4は、
図1中のIV-IV線に沿った断面図に相当する。
図5は、
図1中のV-V線に沿った断面図に相当する。
【0019】
図1から
図5に示されるように、第1実施形態に係る光半導体素子1は、主として、基板20と、半導体層30と、半導体層80とを有する。
【0020】
基板20は、例えばn型のリン化インジウム(InP)基板である。基板20は、第1主面20Aと、第1主面20Aとは反対の第2主面20Bとを有する。基板20には、例えば1.0×1018cm-3の濃度でシリコン(Si)または硫黄(S)がドープされている。第1主面20Aの面方位は(100)であり、第2主面20Bの面方位は(-100)である。
【0021】
半導体層30は第1主面20Aの上に設けられている。半導体層30は、バッファ層32と、回折格子層33と、n型クラッド層34と、活性層35と、p型クラッド層36とを有する。半導体層30は第1半導体層の一例である。
【0022】
バッファ層32は基板20の上に設けられている。バッファ層32は、例えば厚さが500nm程度のn型のInP層である。バッファ層32には、例えば5.0×1017cm-3の濃度でSiがドープされている。バッファ層32は基板20の結晶方位を引き継いでいる。
【0023】
回折格子層33はバッファ層32の上に設けられている。回折格子層33は、例えば厚さが50nm程度のn型の砒化リン化ガリウムインジウム(GaInAsP)層である。回折格子層33の室温での発光波長λgは1.15μm程度である。回折格子層33には、例えば5.0×1017cm-3の濃度でSiがドープされている。回折格子層33はバッファ層32の結晶方位を引き継いでいる。
【0024】
n型クラッド層34は回折格子層33およびバッファ層32の上に設けられている。n型クラッド層34は回折格子層33を覆う。n型クラッド層34は、例えば厚さが500nm程度のn型のInP層である。n型クラッド層34には、例えば5.0×1017cm-3の濃度でSiがドープされている。n型クラッド層34は回折格子層33およびバッファ層32の結晶方位を引き継いでいる。
【0025】
活性層35はn型クラッド層34の上に設けられている。活性層35は、量子井戸層と、量子井戸層を間に挟む2つの障壁層とを有する。量子井戸層は、例えば厚さが80nm程度のGaInAsP層または砒化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInAs)層である。障壁層は、いずれも、例えば厚さが30nm程度のGaInAsP層またはAlGaInAs層である。障壁層の室温での発光波長λgは1.15μm程度である。活性層35はn型クラッド層34の結晶方位を引き継いでいる。
【0026】
p型クラッド層36は活性層35の上に設けられている。p型クラッド層36は、例えば厚さが200nm程度のp型のInP層である。p型クラッド層36には、例えば5.0×1017cm-3の濃度で亜鉛(Zn)がドープされている。p型クラッド層36は活性層35の結晶方位を引き継いでいる。
【0027】
半導体層30は基板20の結晶方位を引き継いでいる。以降の説明における結晶方位は、基板20の結晶方位である。半導体層30にはメサ31が形成されている。メサ31は、バッファ層32の一部が露出するように形成されている。メサ31の高さは、例えば1000nm程度である。メサ31は、レーザ部40および光増幅器部50を有する。詳細は後述するが、
図1に示されるように、概ね、レーザ部40は[0-1-1]方向に平行に延び、光増幅器部50は[0-1-1]方向から[01-1]方向に向けて6°以上8°以下傾斜した方向に平行に延びる。光増幅器部50はレーザ部40の[0-1-1]側の端部に繋がる。レーザ部40の[0-1-1]方向に平行な方向における寸法は、例えば350μm以上1000μm以下である。光増幅器部50の[0-1-1]方向に平行な方向における寸法は、例えば500μm以上1800μm以下である。
【0028】
レーザ部40は、第1主面20Aに垂直な第1面111および第2面112を有する。第1面111の面方位は(01-1)であり、第2面112の面方位は(0-11)である。すなわち、第1面111および第2面112は、{01-1}面に平行である。第1面111と第2面112との間の第1距離W1は、例えば1.5μm以上2.5μm以下である。
【0029】
光増幅器部50は、テーパ部51と、平行部52とを有する。テーパ部51はレーザ部40の[0-1-1]側の端部に繋がり、平行部52はテーパ部51のレーザ部40とは反対の端部に繋がる。
【0030】
テーパ部51は、第1主面20Aに垂直な第3面113および第4面114を有する。第3面113は第1面111に連なり、第4面114は第2面112に連なる。第3面113および第4面114は、第1主面20Aに平行な面内で、それぞれ(01-1)面、(0-11)面から互いに同じ方向に傾斜している。第3面113および第4面114が傾斜する方向は、(100)面に平行な方向である。第3面113の(01-1)面からの傾斜は、第4面114の(0-11)面からの傾斜よりも大きい。すなわち、第3面113は、第1主面20Aに平行な面内で、第4面114よりも大きく{01-1}面から傾斜している。従って、第3面113と第4面114との間の第3距離W3は、レーザ部40から離れるに連れて漸増する。第3面113と(01-1)面とのなす角の大きさは角度θ13であり、第4面114と(0-11)面とのなす角の大きさは角度θ14であり、角度θ13が角度θ14よりも大きい。なお、本開示において、2つの面のなす角の大きさ(角度)は、0°以上90°以下である。また、2つの面のなす角の大きさ(角度)は、例えば顕微鏡観察を通じて測定できる。
【0031】
平行部52は、第1主面20Aに垂直な第5面115および第6面116を有する。第5面115と第6面116とは互いに平行である。第5面115と第6面116との間の第2距離W2は第1距離W1よりも大きい。逆の見方をすると、第1距離W1は第2距離W2よりも小さい。第2距離W2は、例えば2.0μm以上10μm以下である。第5面115および第6面116は、第1主面20Aに平行な面内で、それぞれ(01-1)面、(0-11)面から第3面113および第4面114と同じ方向に傾斜している。例えば、第5面115および第6面116は、第1主面20Aに平行な面内で、それぞれ(01-1)面、(0-11)面から第3面113および第4面114と同じ方向に6°以上8°以下傾斜している。第5面115と(01-1)面とのなす角の大きさは角度θ15であり、第6面116と(0-11)面とのなす角の大きさは角度θ16であり、角度θ15および角度θ16は互いに等しく、例えば6°以上8°以下である。
【0032】
第1実施形態では、第3面113および第5面115は、法線ベクトルが[01-1]方向と[011]方向との間を向くように傾斜し、第4面114および第6面116は、法線ベクトルが[0-11]方向と[0-1-1]方向との間を向くように傾斜している。
【0033】
第5面115は、第1主面20Aに平行な面内で、第3面113よりも小さく(01-1)面から傾斜している。逆の見方をすると、第3面113は、第1主面20Aに平行な面内で、第5面115よりも大きく(01-1)面から傾斜している。例えば、第3面113は、第1主面20Aに平行な面内で、第5面115よりも0°超1°以下大きく(01-1)面から傾斜している。角度θ13が角度θ15よりも大きく、例えば角度θ13と角度θ15との差が0°超1°以下である。
【0034】
第6面116は、第1主面20Aに平行な面内で、第4面114よりも大きく(0-11)面から傾斜している。逆の見方をすると、第4面114は、第1主面20Aに平行な面内で、第6面116よりも小さく(0-11)面から傾斜している。例えば、第4面114は、第1主面20Aに平行な面内で、第6面116よりも0°超1°以下小さく(0-11)面から傾斜している。角度θ16が角度θ14よりも大きく、例えば角度θ16と角度θ14との差が0°超1°以下である。
【0035】
例えば、角度θ13と角度θ15との差が角度θ16と角度θ14との差と等しく、テーパ部51と平行部52との境界において、テーパ部51の光軸および平行部52の光軸が互いに繋がるとともに、互いに平行である。平行部52の光軸は、例えば[0-1-1]方向から6°以上8°以下傾斜している。
【0036】
図2に示されるように、レーザ部40内では、回折格子層33に一定の周期の回折格子が形成されている。一方、
図3に示されるように、光増幅器部50内では、回折格子層33に回折格子が形成されておらず、メサ31内でバッファ層32の上面の全体が回折格子層33により覆われている。
【0037】
半導体層80は、メサ31を埋め込むようにして、メサ31の側方に設けられている。半導体層80は、p型ブロック層81と、n型ブロック層82とを有する。半導体層80は第1面111、第2面112、第3面113、第4面114、第5面115および第6面116に接する。半導体層80は第2半導体層の一例である。p型クラッド層36の上面の少なくとも一部は半導体層80から露出している。
【0038】
p型ブロック層81はバッファ層32の上に設けられている。p型ブロック層81は第1面111、第2面112、第3面113、第4面114、第5面115および第6面116に接する。p型ブロック層81は、バッファ層32、回折格子層33、n型クラッド層34、活性層35およびp型クラッド層36の各側面に接する。p型ブロック層81は、例えば最も厚い部分の厚さが1000nm以上1500nm以下のp型のInP層である。p型ブロック層81には、例えば1.0×1017cm-3以上1.0×1018cm-3以下の濃度でZnがドープされている。p型ブロック層81の一部に塩素(Cl)が添加されていてもよい。
【0039】
n型ブロック層82はp型ブロック層81の上に設けられている。n型ブロック層82は、例えば最も厚い部分の厚さが300nm以上500nm以下のn型のInP層である。n型ブロック層82には、例えば5.0×1018cm-3程度の濃度でSiがドープされている。n型ブロック層82の一部にClが添加されていてもよい。
【0040】
光半導体素子1は、更に、p型半導体層83と、コンタクト層84と、電極71と、電極72と、配線73と、絶縁膜91と、反射防止膜93と、高反射膜94とを有する。
【0041】
p型半導体層83はp型クラッド層36およびn型ブロック層82の上に設けられている。p型半導体層83は、例えば最も厚い部分の厚さが2500nm以上3500nm以下のp型のInP層である。p型半導体層83には、例えば1.0×1018cm-3以上2.0×1018cm-3以下の濃度でZnがドープされている。p型半導体層83はp型クラッド層36の一部として機能し得る。
【0042】
コンタクト層84はp型半導体層83の上に設けられている。コンタクト層84は、p型のGaInAsP層と、p型の砒化インジウムガリウム(InGaAs)層とを有する。GaInAsP層はp型半導体層83の上に設けられている。例えば、GaInAsP層の厚さは200nm程度であり、GaInAsP層には、2.0×1018cm-3程度の濃度でZnがドープされている。InGaAs層はGaInAsP層の上に設けられている。例えば、InGaAs層の厚さは300nm程度であり、InGaAs層には、8.0×1018cm-3程度の濃度でZnがドープされている。コンタクト層84のバンドギャップは、p型半導体層83のバンドギャップよりも小さい。
【0043】
電極71はコンタクト層84の上に設けられている。電極71は、平面視でメサ31と重なるように設けられている。例えば、平面視で電極71の輪郭の内側にメサ31の輪郭がある。
【0044】
基板20、バッファ層32、半導体層80、p型半導体層83、コンタクト層84の積層体に、トレンチ85が形成されている。トレンチ85は、メサ31を間に挟むようにして、メサ31の[01-1]側と[0-11]側に形成されている。トレンチ85は、例えばメサ31に沿って延びる。
【0045】
絶縁膜91は、コンタクト層84の上面と、電極71の上面および側面と、トレンチ85の内壁面および底面とを覆う。絶縁膜91は、例えば酸化ケイ素(SiO2)膜、酸窒化ケイ素(SiON)膜または窒化ケイ素(SiN)膜である。絶縁膜91に、電極71の上面の一部が露出する開口部92が形成されている。
【0046】
配線73は絶縁膜91の上に設けられている。配線73はトレンチ85の内側にも設けられている。配線73は電極71に接する。配線73は、例えばAu配線である。
【0047】
電極72は基板20の第2主面20Bの下に設けられている。電極72は基板20に接する。
【0048】
なお、コンタクト層84、電極71および配線73は、レーザ部40と光増幅器部50との間で、絶縁分離されており、レーザ部40および光増幅器部50に互いに独立した電圧を印加できる。
【0049】
メサ31は、面方位が(0-1-1)の第1端面31Aと、面方位が(011)の第2端面31Bとを有する。反射防止膜93は第1端面31Aを覆い、高反射膜94は第2端面31Bを覆う。例えば、反射防止膜93は、高屈折率膜として酸化アルミニウム(Al2O3)または二酸化タンタル(Ta2O3)層と、低屈折率膜として酸化ケイ素(SiO2)または酸化チタン(TiO2)膜とを含み、高屈折率膜が第1端面31Aと低屈折率膜との間にある。例えば、高反射膜94は、高屈折率膜として酸化アルミニウム(Al2O3)または二酸化タンタル(Ta2O3)層と、低屈折率膜として酸化ケイ素(SiO2)または酸化チタン(TiO2)膜とを含み、高屈折率膜が第2端面31Bと低屈折率膜との間にある構造を2周期以上5周期以下繰り返した多層構造を有する。
【0050】
光半導体素子1では、平面視でメサ31のレーザ部40を含む部分がDFBレーザとして機能し、平面視でメサ31の光増幅器部50を含む部分がSOAとして機能する。
【0051】
次に、第1実施形態に係る光半導体素子1の製造方法について説明する。
図6から
図15は、第1実施形態に係る光半導体素子1の製造方法を示す断面図である。
図6から
図15は、
図1中のIV-IV線に沿った断面の変化を示す。
【0052】
まず、
図6に示されるように、まず、第1主面20Aおよび第2主面20Bを有する基板20を準備し、第1主面20Aの上にバッファ層32を形成する。次に、バッファ層32の上に回折格子層33を形成する。回折格子層33は、最終的な寸法よりも広く形成してよい。レーザ部40に含まれる部分では、回折格子層33に回折格子を形成し(
図2参照)、光増幅器部50に含まれる部分では、回折格子層33によりバッファ層32の上面の全体を覆う。
【0053】
次に、
図7に示されるように、回折格子層33およびバッファ層32の上にn型クラッド層34を形成する。n型クラッド層34は回折格子層33を覆う。次に、n型クラッド層34の上に活性層35を形成し、活性層35の上にp型クラッド層36を形成する。
【0054】
次に、
図8に示されるように、p型クラッド層36の上にマスク39を形成する。マスク39は、メサ31を形成する領域上に形成される。マスク39は、例えばSiO
2膜である。
【0055】
次に、
図9に示されるように、マスク39をエッチングマスクとして用いて、p型クラッド層36と、活性層35と、n型クラッド層34と、回折格子層33と、バッファ層32の一部とのドライエッチングを行う。この結果、メサ31が形成される。メサ31はレーザ部40および光増幅器部50を有し、光増幅器部50はテーパ部51および平行部52を有する。また、レーザ部40は第1面111および第2面112を有し、テーパ部51は第3面113および第4面114を有し、平行部52は第5面115および第6面116を有する。ドライエッチングとしては、例えば四塩化ケイ素(SiCl
4)を用いた反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)を行う。
【0056】
次に、
図10に示されるように、マスク39を成長マスクとして用いて、メサ31から露出しているバッファ層32の上にp型ブロック層81を形成し、p型ブロック層81の上にn型ブロック層82を形成する。この結果、p型ブロック層81およびn型ブロック層82を含む半導体層80によりメサ31が埋め込まれる。半導体層80は第1面111、第2面112、第3面113、第4面114、第5面115および第6面116に接する。
【0057】
次に、
図11に示されるように、マスク39を除去する。マスク39は、例えばフッ酸(HF)を用いて除去できる。次に、p型クラッド層36およびn型ブロック層82の上にp型半導体層83を形成し、p型半導体層83の上にコンタクト層84を形成する。p型半導体層83はp型クラッド層36と一体化する。
【0058】
次に、
図12に示されるように、コンタクト層84の上に電極71を形成する。
【0059】
次に、
図13に示されるように、基板20、バッファ層32、半導体層80、p型半導体層83、コンタクト層84の積層体に、トレンチ85を形成する。トレンチ85は、例えばエッチングマスク(図示せず)を用いたドライエッチングにより形成できる。ドライエッチングとしては、例えばSiCl
4を用いたRIEを行う。次に、コンタクト層84の上面と、電極71の上面および側面と、トレンチ85の内壁面および底面とを覆う絶縁膜91を形成し、絶縁膜91に、電極71の上面の一部が露出する開口部92を形成する。
【0060】
次に、
図14に示されるように、絶縁膜91の上に配線73を形成する。配線73はトレンチ85の内側にも形成する。配線73は電極71に接する。
【0061】
次に、
図15に示されるように、基板20を第2主面20Bから研磨する。次に、第2主面20Bの下に基板20に接する電極72を形成する。
【0062】
次に、メサ31の第1端面31Aを覆う反射防止膜93と、第2端面31Bを覆う高反射膜94とを形成する。
【0063】
このようにして、第1実施形態に係る光半導体素子1を製造できる。
【0064】
光半導体素子1では、電極71と電極72との間に電圧が印加されると、レーザ部40において光が発生し、光増幅器部50により出力が増幅されて第1端面31Aからレーザ光が出射される。第5面115および第6面116は、第1主面20Aに平行な面内で、それぞれ(01-1)面、(0-11)面から第3面113および第4面114と同じ方向に傾斜しており、光増幅器部50の光軸は第1端面31Aに垂直な方向から傾斜している。
図16に示されるように、光増幅器部50の光軸が第1端面31Aに垂直な方向から傾斜している場合、すなわち傾斜角度αが0°より大きい場合には、傾斜していない場合、すなわち傾斜角度αが0°の場合よりも、第1端面31Aにおける反射率が低い。従って、光半導体素子1では、第1端面31Aにおける反射が抑えられ、高い出力が得られる。傾斜角度αが6°以上8°以下の場合には、特に反射率が低く、優れた出力が得られる。
図16は、傾斜角度αと第1端面31Aにおける反射率との関係を示す図である。反射率は対数で表示している。
【0065】
レーザ部40と光増幅器部50との間では、光軸が一直線上にはなく、光の進行方向が異なるが、半導体層80が設けられているため、光がメサ31内に閉じ込められ、光のメサ31の外部への放射が抑制される。
【0066】
なお、{01-1}面からの傾斜が過大な面をエッチングにより形成する場合、傾斜が小さい面との間のエッチングレートの相違が大きくなるおそれがある。また、メサの埋め込みのために、{01-1}面からの傾斜が過大な面に接するように半導体層を成長させる場合、傾斜が小さい面との間で結晶成長の進行具合の相違が大きくなるおそれがある。エッチングレートの相違および結晶成長の進行具合の相違は、光半導体素子の製造の安定性および製造された光半導体素子の信頼性を低下させるおそれがある。一方、光半導体素子1では、第1面111、第2面112、第3面113、第4面114、第5面115および第6面116のうちでは、第3面113が最も高次で、{01-1}面からの傾斜が大きい面であるところ、角度θ13と角度θ15との差は0°超1°以下である。従って、{01-1}面からの傾斜が小さく、エッチングレートの相違および結晶成長の進行具合の相違が小さく抑えられる。
【0067】
角度θ13と角度θ15との差が0°超1°以下であり、角度θ16と角度θ14との差が0°超1°以下であることで、第3面113および第4面114の{01-1}面からの傾斜が小さく、テーパ部51と平行部52との間に良好な光結合効率が得られる。
【0068】
第5面115の第3面113からの傾斜の大きさと、第6面116の第4面114からの傾斜の大きさとが等しい場合、テーパ部51と平行部52との間で光軸が一致する。
【0069】
基板20がInP基板であることで、高出力を得やすい。
【0070】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主としてメサの構成の点で第1実施形態と相違する。
図17は、第2実施形態に係る光半導体素子を示す模式図である。
図17は、メサの形状を平面視で示す。
【0071】
図17に示されるように、第2実施形態に係る光半導体素子2では、レーザ部40が、第1主面20Aに垂直な第1面211および第2面212を有する。第1面211の面方位は(0-11)であり、第2面212の面方位は(01-1)である。すなわち、第1面211および第2面212は、{01-1}面に平行である。第1面211と第2面212との間の第1距離W1は、例えば1.5μm以上2.5μm以下である。
【0072】
テーパ部51は、第1主面20Aに垂直な第3面213および第4面214を有する。第3面213は第1面211に連なり、第4面214は第2面212に連なる。第3面213および第4面214は、第1主面20Aに平行な面内で、それぞれ(0-11)面、(01-1)面から互いに同じ方向に傾斜している。第3面213および第4面214が傾斜する方向は、(100)面に平行な方向である。第3面213の(0-11)面からの傾斜は、第4面214の(01-1)面からの傾斜よりも大きい。すなわち、第3面213は、第1主面20Aに平行な面内で、第4面214よりも大きく{01-1}面から傾斜している。従って、第3面213と第4面214との間の第3距離W3は、レーザ部40から離れるに連れて漸増する。第3面213と(0-11)面とのなす角の大きさは角度θ23であり、第4面214と(01-1)面とのなす角の大きさは角度θ24であり、角度θ23が角度θ24よりも大きい。
【0073】
平行部52は、第1主面20Aに垂直な第5面215および第6面216を有する。第5面215と第6面216とは互いに平行である。第5面215と第6面216との間の第2距離W2は第1距離W1よりも大きい。逆の見方をすると、第1距離W1は第2距離W2よりも小さい。第2距離W2は、例えば2.0μm以上10μm以下である。第5面215および第6面216は、第1主面20Aに平行な面内で、それぞれ(0-11)面、(01-1)面から第3面213および第4面214と同じ方向に傾斜している。例えば、第5面215および第6面216は、第1主面20Aに平行な面内で、それぞれ(0-11)面、(01-1)面から第3面213および第4面214と同じ方向に6°以上8°以下傾斜している。第5面215と(0-11)面とのなす角の大きさは角度θ25であり、第6面216と(01-1)面とのなす角の大きさは角度θ26であり、角度θ25および角度θ26は互いに等しく、例えば6°以上8°以下である。
【0074】
第2実施形態では、第3面213および第5面215は、法線ベクトルが[0-11]方向と[011]方向との間を向くように傾斜し、第4面214および第6面216は、法線ベクトルが[01-1]方向と[0-1-1]方向との間を向くように傾斜している。
【0075】
第5面215は、第1主面20Aに平行な面内で、第3面213よりも小さく(0-11)面から傾斜している。逆の見方をすると、第3面213は、第1主面20Aに平行な面内で、第5面215よりも大きく(0-11)面から傾斜している。例えば、第3面213は、第1主面20Aに平行な面内で、第5面215よりも0°超1°以下大きく(0-11)面から傾斜している。角度θ23が角度θ25よりも大きく、例えば角度θ23と角度θ25との差が0°超1°以下である。
【0076】
第6面216は、第1主面20Aに平行な面内で、第4面214よりも大きく(01-1)面から傾斜している。逆の見方をすると、第4面214は、第1主面20Aに平行な面内で、第6面216よりも小さく(01-1)面から傾斜している。例えば、第4面214は、第1主面20Aに平行な面内で、第6面216よりも0°超1°以下小さく(01-1)面から傾斜している。角度θ26が角度θ24よりも大きく、例えば角度θ26と角度θ24との差が0°超1°以下である。
【0077】
例えば、角度θ23と角度θ25との差が角度θ26と角度θ24との差と等しく、テーパ部51と平行部52との境界において、テーパ部51の光軸および平行部52の光軸が互いに繋がるとともに、互いに平行である。平行部52の光軸は、例えば[0-1-1]方向から6°以上8°以下傾斜している。
【0078】
第2実施形態の他の構成は第1実施形態の構成と同じである。
【0079】
第2実施形態によっても、第1実施形態と同じ効果が得られる。
【0080】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、主としてテーパ部の構成の点で第1実施形態と相違する。
図18は、第3実施形態に係る光半導体素子を示す模式図である。
図18は、メサの形状を平面視で示す。
【0081】
図18に示されるように、第3実施形態に係る光半導体素子3では、テーパ部51は、第1主面20Aに垂直な第3面313および第4面314を有する。第3面313は第1面111および第5面115に連なり、第4面314は第2面112および第6面116に連なる。第3面313および第4面314は、第1主面20Aに平行な面内で、それぞれ(01-1)面、(0-11)面から互いに同じ方向に傾斜している。第3面313および第4面314が傾斜する方向は、(100)面に平行な方向である。第3面313の(01-1)面からの傾斜は、第4面314の(0-11)面からの傾斜よりも大きい。すなわち、第3面313は、第1主面20Aに平行な面内で、第4面314よりも大きく{01-1}面から傾斜している。従って、第3面313と第4面314との間の第3距離W3は、レーザ部40から離れるに連れて漸増する。第3面313と(01-1)面とのなす角の大きさは角度θ33であり、第4面314と(0-11)面とのなす角の大きさは角度θ34であり、角度θ33が角度θ34よりも大きい。
【0082】
第3面313は第5面115と面一である。つまり、第1主面20Aに平行な面内で、第3面313の(01-1)面からの傾斜の大きさは、第5面115の(01-1)面からの傾斜の大きさと等しい。従って、第3面313は、第1主面20Aに平行な面内で、第5面115よりも0°大きく(01-1)面から傾斜している。角度θ33は角度θ15と等しく、角度θ33と角度θ15との差は0°である。
【0083】
第4面314は、第1主面20Aに平行な面内で、例えば、第6面116よりも0°超3°以下小さく(0-11)面から傾斜している。例えば、角度θ34と角度θ16との差は0°超3°以下である。
【0084】
第3実施形態の他の構成は第1実施形態の構成と同じである。
【0085】
第3実施形態によっても、第1端面31Aにおける反射が抑えられ、高い出力が得られる。また、半導体層80が設けられているため、光がメサ31内に閉じ込められ、光のメサ31の外部への放射が抑制される。
【0086】
第3面313が第5面115と面一であることで、第3面313の{01-1}面からの傾斜がより小さく抑えられ、エッチングレートの相違および結晶成長の進行具合の相違が更に小さく抑えられる。
【0087】
第4面314が、第1主面20Aに平行な面内で、第6面116よりも0°超3°以下小さく(0-11)面から傾斜していることで、テーパ部51と平行部52との間での光軸のずれを小さく抑えやすい。
【0088】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、主としてテーパ部の構成の点で第2実施形態と相違する。
図19は、第4実施形態に係る光半導体素子を示す模式図である。
図19は、メサの形状を平面視で示す。
【0089】
図19に示されるように、第4実施形態に係る光半導体素子4では、テーパ部51は、第1主面20Aに垂直な第3面413および第4面414を有する。第3面413は第1面211および第5面215に連なり、第4面414は第2面212および第6面216に連なる。第3面413および第4面414は、第1主面20Aに平行な面内で、それぞれ(0-11)面、(01-1)面から互いに同じ方向に傾斜している。第3面413および第4面414が傾斜する方向は、(100)面に平行な方向である。第3面413の(0-11)面からの傾斜は、第4面414の(01-1)面からの傾斜よりも大きい。すなわち、第3面413は、第1主面20Aに平行な面内で、第4面414よりも大きく{01-1}面から傾斜している。従って、第3面413と第4面414との間の第3距離W3は、レーザ部40から離れるに連れて漸増する。第3面413と(0-11)面とのなす角の大きさは角度θ43であり、第4面414と(01-1)面とのなす角の大きさは角度θ44であり、角度θ43が角度θ44よりも大きい。
【0090】
第3面413は第5面215と面一である。つまり、第1主面20Aに平行な面内で、第3面413の(0-11)面からの傾斜の大きさは、第5面215の(0-11)面からの傾斜の大きさと等しい。従って、第3面413は、第1主面20Aに平行な面内で、第5面215よりも0°大きく(0-11)面から傾斜している。角度θ43は角度θ25と等しく、角度θ43と角度θ25との差は0°である。
【0091】
第4面414は、第1主面20Aに平行な面内で、例えば、第6面216よりも0°超3°以下小さく(01-1)面から傾斜している。例えば、角度θ44と角度θ26との差は0°超3°以下である。
【0092】
第4実施形態の他の構成は第2実施形態の構成と同じである。
【0093】
第4実施形態によっても、第1端面31Aにおける反射が抑えられ、高い出力が得られる。また、半導体層80が設けられているため、光がメサ31内に閉じ込められ、光のメサ31の外部への放射が抑制される。
【0094】
第3面413が第5面215と面一であることで、第3面413の{01-1}面からの傾斜がより小さく抑えられ、エッチングレートの相違および結晶成長の進行具合の相違が更に小さく抑えられる。
【0095】
第4面414が、第1主面20Aに平行な面内で、第6面216よりも0°超3°以下小さく(0-11)面から傾斜していることで、テーパ部51と平行部52との間での光軸のずれを小さく抑えやすい。
【0096】
ここで、第1実施形態に係る光半導体素子1について本願発明者が行った実験の結果について説明する。この実験では、レーザ部40に250mAの電流を流して連続波(continuous wave:CW)を出射させ、光増幅器部50に流す電流を変化させながら、光半導体素子1の光出力を測定した。なお、光半導体素子1を載置したステージの温度は、25℃、45℃または65℃とした。この結果を
図20に示す。
図20は、光増幅器部50に流す電流と光半導体素子1の光出力との関係を示す図である。
【0097】
図20に示されるように、ステージの温度が25℃の場合、光増幅器部50に流す電流が590mAのときに350mWの光出力が得られた。また、ステージの温度が45℃の場合、光増幅器部50に流す電流が722mAのときに350mWの光出力が得られた。
【0098】
以上、実施形態について詳述したが、本開示は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1、2、3、4:光半導体素子
20:基板
20A:第1主面
20B:第2主面
30、80:半導体層
31:メサ
31A:第1端面
31B:第2端面
32:バッファ層
33:回折格子層
34:n型クラッド層
35:活性層
36:p型クラッド層
39:マスク
40:レーザ部
50:光増幅器部
51:テーパ部
52:平行部
71、72:電極
73:配線
81:p型ブロック層
82:n型ブロック層
83:p型半導体層
84:コンタクト層
85:トレンチ
91:絶縁膜
92:開口部
93:反射防止膜
94:高反射膜
111、211:第1面
112、212:第2面
113、213、313、413:第3面
114、214、314、414:第4面
115、215:第5面
116、216:第6面
W1:第1距離
W2:第2距離
W3:第3距離
θ13、θ14、θ15、θ16、θ23、θ24、θ25、θ26、θ33、θ34、θ43、θ44:角度