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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092753
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】製造工程管理装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208892
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】倉林 宣彰
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA38
3C100AA43
3C100AA45
3C100BB02
3C100BB12
(57)【要約】
【課題】複数の製造工程それぞれにおいて、改善が必要な工程、不要な工程等を容易に把握させる。
【解決手段】製造工程管理装置(1)は、複数の製造工程を含む製造ラインの製造工程ごとの単位時間当たりの製造数量を取得する取得部(20)と、製造工程ごとに、幅を単位時間当たりの製造数量、長さを所定数量の製造を行うために必要な時間とした第1図面を作成する図作成部(11)と、第1図面を並べて表示部(30)に表示可能である表示制御部(13)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製造工程を含む製造ラインの前記製造工程ごとの単位時間当たりの製造数量を取得する取得部と、
前記製造工程ごとに、幅および長さを有する第1図面であって、前記幅は当該製造工程における単位時間当たりの製造数量を示す第1製造数量を表し、前記長さは前記第1製造数量で所定数量の製造を行うために必要な時間を表す第1図面を作成する図作成部と、
前記複数の製造工程それぞれの前記第1図面を、前記幅の方向および前記長さの方向を揃えて、並べて表示部に表示可能である表示制御部と、を備えた製造工程管理装置。
【請求項2】
前記の単位時間当たりの製造数量の調整を受け付ける調整受付部を備え、
前記調整受付部で受け付けた調整後の単位時間当たりの製造数量を第2製造数量としたとき、前記図作成部は、幅および長さを有する第2図面であって、前記幅は前記第2製造数量を表わし、前記長さは当該製造工程において所定数量の製造を行うために必要な時間を表わす第2図面を作成し、
前記表示制御部は、当該製造工程については、当該第2図面を、前記第1図面と比較可能に前記表示部に表示させる、請求項1に記載の製造工程管理装置。
【請求項3】
前記図作成部は、前記製造工程ごとに、幅および長さを有する第3図面であって、前記幅は当該製造工程における製造装置の稼働率が100%の場合の単位時間当たりの製造数量を示す第3製造数量を表し、前記長さは当該製造工程において、前記第3製造数量で所定数量の製造を行うために必要な時間を表わす第3図面を作成し、
前記表示制御部は、前記第1図面と前記第3図面とを比較可能に前記表示部に表示する、請求項1に記載の製造工程管理装置。
【請求項4】
前記製造工程ごとに、当該製造工程における製造に伴う製造品の待機時間を示す待機時間図を生成する待機時間図作成部を備え、
前記表示制御部は、時間軸を揃えて、前記第1図面と前記待機時間図とを並べて前記表示部に表示する、請求項1に記載の製造工程管理装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、時間の始点を揃えて、前記第1図面を並べて前記表示部に表示する、請求項1に記載の製造工程管理装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記製造ラインにおける複数の製造工程の前記第1図面および前記待機時間図を、時間軸を揃え連続して並べた全工程図を前記表示部に表示する、請求項4に記載の製造工程管理装置。
【請求項7】
前記全工程図の表示を行うか否かの選択を受け付ける選択受付部を備え、
前記表示制御部は、前記選択受付部で前記全工程図の表示を行うことを受け付けた場合、前記全工程図を前記表示部に表示する、請求項6に記載の製造工程管理装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、時間の始点を揃えて、前記第1図面および前記待機時間図を並べて前記表示部に表示する、請求項4に記載の製造工程管理装置。
【請求項9】
前記取得部は、前記製造工程ごとの単位時間当たりの製造数量として、当該製造工程における直近の稼働日の単位時間当たりの製造数量を取得する、請求項1に記載の製造工程管理装置。
【請求項10】
1つの前記製造工程について複数の製造装置が割り当てられている場合、
前記取得部は、前記製造装置毎の単位時間当たりの製造数量を取得し、
前記図作成部は、前記製造装置毎に、幅および長さを有する第2図面であって、前記幅は当該製造装置における単位時間当たりの製造数量を示す第1製造数量を表し、前記長さは当該製造工程において、前記第1製造数量で所定数量の製造を行うために必要な時間を表わす第4図面を作成し、
前記表示制御部は、前記第4図面を前記製造装置ごとに並べて前記表示部に表示可能である、請求項1に記載の製造工程管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製造ラインに含まれる複数の製造工程を管理する製造工程管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品を複数の製造工程を経て製造することが行われている。これらの製造工程における在庫管理のため、例えば、特許文献1には、時系列で各工程の在庫量を表示する管理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-75906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の製造工程それぞれにおいて、改善が必要な工程、不要な工程等を容易に把握することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る製造工程管理装置は、複数の製造工程を含む製造ラインの前記製造工程ごとの単位時間当たりの製造数量を取得する取得部と、前記製造工程ごとに、幅および長さを有する第1図面であって、前記幅は当該製造工程における単位時間当たりの製造数量を示す第1製造数量を表し、前記長さは前記第1製造数量で所定数量の製造を行うために必要な時間を表す第1図面を作成する図作成部と、前記複数の製造工程それぞれの前記第1図面を、前記幅の方向および前記長さの方向を揃えて、並べて表示部に表示可能である表示制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、改善が必要な製造工程を容易に認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の実施形態1に係る製造工程管理装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
図2】製造工程管理装置の図作成部が作成する棒形状の図面の例を示す図である。
図3】製造工程ごとに、図作成部が作成する棒形状の図面の例を示す図である。
図4】調整部による調整の結果、およびリードタイムを示す図である。
図5】本開示の実施形態2に係る製造工程管理装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
図6】製造工程ごとに、図作成部が作成する棒形状の図面、および待機時間図作成部が作成する待機図面図の例を示す図である。
図7】調整部による調整の結果、およびリードタイムを示す図である。
図8】1つの製造工程を複数の製造蔵置で実行する場合の棒形状の図面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
〔概要〕
本実施形態に係る製造工程管理装置1は、製造ライン100に含まれる複数の製造工程を管理するものである。具体的には、製造工程管理装置1は、各製造工程における処理量および処理時間を幅および長さを有する図面で表示することにより、管理者に、各製造工程の改善の要否の判断を容易に行わせるものである。さらに、製造工程管理装置1は、改善した場合の結果を管理者が容易に認識できるように表示することにより、管理者に改善の効果を容易に認識させるものである。
【0009】
〔製造工程管理装置1〕
次に、図1を参照して、製造工程管理装置1について説明する。図1は、製造工程管理装置1の詳細を示す機能ブロック図である。図1に示すように、製造工程管理装置1は、製造ライン100に含まれる複数の製造工程(製造工程A、製造工程B、製造工程C、製造工程D)を管理するものであり、制御部10、取得部20、表示部30、および受付部40を含む。
【0010】
制御部10は、製造工程管理装置1における各種処理を実行するものであり、図作成部11、調整部(調整受付部)12、および表示制御部13を含む。
【0011】
図作成部11は、各製造工程における単位時間当たりの製造数量、および単位時間当たりの製造数量で所定数量を製造するために必要な時間を示す図を作成するものである。
【0012】
具体的には、図作成部11は、幅が製造工程における単位時間当たりの製造数量を示す第1製造数量を表し、長さが第1製造数量で所定数量の製造を行うために必要な時間を表す図面(第1図面)を作成する。以下では、一例として、図作成部11は幅および長さを有する棒形状の図面(棒状図面)を作成する例を挙げて説明する。すなわち、棒状図面の幅が単位時間当たりの製造数量を示し、長さが第1製造数量で所定数量の製造を行うために必要な時間を示す。図作成部11により作成される図面は、幅および長さによって、それぞれ量を示す形態であればよく、図示のような矩形に限定されない。例えば、矩形の四隅の少なくとも何れかが削れた形状であってもよい。図作成部11が作成する図の具体例について、図2を参照して説明する。
【0013】
図2に、図作成部11が作成する図の例を示す。図2の201に示すように、例えば或る製造工程において、単位時間当たりの製造数量をYとし、製造数量Yで、所定数量を製造するために必要な時間をXとしたとき、図作成部11は、図2に示すような、長さX、幅Yの棒状図面を作成する。図2の201で示す棒状図面は、Yが単位時間当たりの製造数量、Xが時間を示すので、棒状図面の面積S(=X×Y)は、所定数量を示す。単位時間当たりの製造数量は、当該製造工程を実行する製造装置の能力から算出してもよいし、該製造装置の直近の稼働日の稼働状況から算出してもよい。
【0014】
また、図作成部11は、所定数量を2台の製造装置で製造する場合、図2の202に示すように、製造装置毎に棒状図面を作成する。この場合、所定数量が変わらず、製造装置が2台となるので、長さがX/2、幅がYの棒状図面が2つ生成される。この2つの棒状図面は、時間の始点、すなわち長さの始点を揃えるように生成される。この2つの棒状図面を合わせた面積は、(X/2×Y)+(X/2×Y)=X×Yとなり、201で示す棒状図面と同じである。
【0015】
また、図作成部11は、2台の製造装置の製造能力が異なる場合、それぞれの製造装置の製造能力に合わせた棒状図面を作成する。例えば、一方の製造装置の単位時間当たり製造数量が他方の製造装置の単位時間当たりの製造数量の1.5倍であった場合、図2の203に示すように、棒状図面を作成する。例えば、一方の製造装置の単位時間当たりの製造数量を2Y/3、他方の製造装置の単位時間当たりの製造数量をYとすれば、所定数量を製造するために必要な時間は3X/5となる。
【0016】
また、図作成部11は、棒状図面に、製造装置の稼働率が100%のときの棒状図面(第3図面)を重ねて表示してもよい。図2の204は、201に示す棒状図面に、製造装置の稼働率が100%のときの棒状図面211を重ねて表示した例を示す。すなわち、稼働率が100%のときの単位時間当たりの製造数量を第3製造数量としたとき、幅を第3製造数量、長さを第3製造数量で所定数量の製造を行うために必要な時間とした棒状図面211を作成してもよい。ここでは、棒状図面211を破線で示している。このように、稼働率が100%の場合を重ねて表示することで、管理者は、稼働率が100%の場合と100%でない場合とにおける、所定数量を製造するために必要な時間を比較しつつ認識することができる。
【0017】
また、稼働率ではなく、製造装置の能力を100%発揮している状態、すなわち、最大製造能力で製造を行う場合の図面を棒状図面に重ねて表示してもよい。
【0018】
図3は、製造構成A~製造工程Dについて、図作成部11が作成する棒状図面の例を示す。図3では、表示部30に表示例301として、図作成部11が作成する棒状図面が表示される例を示す。
【0019】
ここでは、製造工程Aであれば、棒状図面の幅であるAYが製造工程Aにおける単位時間当たりの製造数量を示し、棒状図面の長さであるAXが製造工程Aにおいて、所定数量を製造するための時間を示す。そして、棒形面積(AX×AY)は、所定数量を示す。
【0020】
同様に、製造工程Bであれば、棒状図面の幅であるBYが製造工程Bにおける単位時間当たりの製造数量を示し、棒状図面の長さであるBXが製造工程Aにおいて、所定数量を製造するための時間を示す。そして、棒状図面の面積(BX×BY)は、所定数量を示す。
【0021】
製造工程Cであれば、棒状図面の幅であるCYが製造工程Cにおける単位時間当たりの製造数量を示し、棒状図面の長さであるCXが製造工程Aにおいて、所定数量を製造するための時間を示す。そして、棒状図面の面積(CX×CY)は、所定数量を示す。
【0022】
製造工程Dであれば、棒状図面の幅であるDYが製造工程Dにおける単位時間当たりの製造数量を示し、棒状図面の長さであるDXが製造工程Aにおいて、所定数量を製造するための時間を示す。そして、棒状図面の面積(DX×DY)は、所定数量を示す。
【0023】
図3に示すように、表示例301では、表示制御部13は、時間の始点を揃えて、棒状図面を並べて表示部30に表示している。
【0024】
調整部12は、受付部40で受け付けた管理者からの調整内容を図作成部11に通知し、図作成部11において調整後の棒状図面(第2図面)を作成させる。調整内容としては、単位時間当たりの製造数量が挙げられる。調整後の単位時間当たりの製造数量を第2製造数量とすれば、図作成部11は、調整部12の指示に従い、幅を第2製造数量、長さを当該製造工程において所定数量の製造を行うために必要な時間とした棒状図面を作成する。調整後の棒状図面の例については、後述する。
【0025】
表示制御部13は、図作成部11が作成した製造工程ごとの棒状図面を幅の方向および長さの方向を揃えて、所定の配置で、表示部30に表示させる。例えば、表示制御部13は、複数の製造工程それぞれの棒状図面を並べて表示部30に表示する。また、表示制御部13は、調整部12による調整が行われた場合、調整前後の棒状図面を比較可能に表示してもよい。棒状図面の並べ方の詳細については後述する。
【0026】
取得部20は、製造ライン100に含まれる各製造工程の単位時間当たりの製造数量を取得し、図作成部11に通知する。単位時間当たりの製造数量は、直近の稼働日の単位時間当たりの製造数量を取得するものであってもよい。
【0027】
表示部30は、後述する表示制御部13の制御に従い、各種情報を表示する。
【0028】
受付部40は、管理者等からの指示を受け付け、その内容を調整部12に通知する。
【0029】
〔調整部12による調整、および表示制御部13による配置〕
次に、図4を参照して、調整部12における調整、および表示制御部13による配置について説明する。図4は、調整部12における調整の例、および表示制御部13による配置の例を示す図である。
【0030】
まず、図4の表示例401は、表示制御部13が、図作成部11が作成した棒状図面を、棒状図面の時間軸すなわち長さの始点を揃えて配置して表示部30に表示した例を示す。表示例401では、各製造工程の長さの始点が揃っているので、管理者は、各製造工程における製造時間の差異を容易に認識することができる。
【0031】
図4の表示例402は、管理者による調整を受け付けた後に、図作成部11が作成した棒状図面を、長さの始点を揃えて配置して表示部30に表示した例を示す。
【0032】
管理者は、表示例401の状態から、各製造工程の処理時間にバラつきがあることを容易に認識できる。製造工程ごとに処理時間にバラつきがあると、前工程の処理が早く終わり過ぎて仕掛在庫が増える、逆に前工程の処理が終わらずに処理すべきワークが存在せず無駄な待機時間が発生する等の弊害が生ずる可能性がある。
【0033】
そこで、管理者は、各製造工程の処理時間が一致するように、それぞれの製造工程における単位時間当たりの製造数を調整することが考えられる。
【0034】
表示例402は、このように、管理者がそれぞれの製造工程における単位時間当たりの製造数を調整した結果を示すものである。ここでは、製造工程Aの単位時間当たりの製造数量をAY-1、製造工程Bの単位時間当たりの製造数量をBY-1、製造工程Cの単位時間当たりの製造数量をCY-1、製造工程Dの単位時間当たりの製造数量をDY-1とし、この結果、各製造工程の処理時間がZX-1となっている。
【0035】
このように、表示例402では、管理者の調整結果が表示されている。よって、管理者は表示例402を確認することで、調整がうまくいったかどうかを認識することができる。
【0036】
表示例403は、表示制御部13が、各製造工程の棒状図面を、時間軸を揃えて並べた配置で表示部30に表示したものである。このように、時間軸を揃えて並べることにより、製造工程Aから製造工程Dまでの全ての製造工程を処理した場合の処理時間、すなわち、製造ライン100における処理時間を認識することができる。ここでは、製造ライン100における処理時間は各製造工程の処理時間(ZX-1)の4倍となる。
【0037】
ここでは、表示例401、表示例402、表示例403を分けて表示しているが、1画面に3つの表示例を並べて表示してもよいし、何れか2つを1つの画面に並べて表示してもよい。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る製造工程管理装置1は、取得部20、図作成部11、および表示制御部13を含む。取得部20は、複数の製造工程(例えば、製造工程A、製造工程B、製造工程C、製造工程D)を含む製造ライン100の前記製造工程ごとの単位時間当たりの製造数量を取得する。図作成部11は、前記製造工程ごとに、幅が当該製造工程における単位時間当たりの製造数量を示す第1製造数量を表わし、長さが当該製造工程において、前記第1製造数量で所定数量の製造を行うために必要な時間を表わす第1図面を作成する。表示制御部13は、複数の製造工程それぞれの第1図面を幅の方向および長さの方向を揃えて、並べて表示部30に表示可能である。
【0039】
これにより、製造工程ごとに、所定数量の製造を行うために必要な時間が棒形状の図面として表示されるので、製造ラインの管理者が製造工程ごとに、所定数量の製造に必要な時間を視覚的に、かつ容易に認識できる。よって、管理者は、仕掛在庫が増える可能性がある製造工程、前工程の終了待ちとなり処理の開始に影響がでる製造工程、在庫量削減のために改善が必要な製造工程を容易に認識できる。
【0040】
また、棒形状の図面は、幅が第1製造数量、長さが時間、面積が製造予定の所定数量を示すことになるので、管理者はこれらの情報を短時間で容易に認識できる。
【0041】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0042】
図5に示すように、本実施形態に係る製造工程管理装置1Aは、制御部10Aに待機時間図作成部14を含む。この点が、上述した実施形態1における製造工程管理装置1の制御部10と異なる。
【0043】
待機時間図作成部14は、製造工程ごとに、当該製造工程における製造に伴う製造品の待機時間を示す待機時間図を生成する。例えば、待機時間図作成部14は、長さが待機時間を示す棒状図面を作成する。
【0044】
図6に、待機時間図の例を示す。図6では、表示部30に表示例601として、待機時間図作成部14が作成する図面が表示される例を示す。
【0045】
図6に示すように、待機時間図作成部14が作成する待機時間図は、図作成部11が作成する棒状図面に隣接して、棒状図面と同じ形状で作成される。そして、待機時間図は、棒状図面に長さに相当する辺に続く辺が待機時間を示すようになっている。図6に示す例で言えば、製造工程Aでは、611で示す図が待機時間図であり、待機時間はAWである。
【0046】
製造工程Aと同様に、製造工程Bでは、612で示す図が待機時間図であり、待機時間はBWである。製造工程Cでは、613で示す図が待機時間図であり、待機時間はCWである。製造工程Dでは、614で示す図が待機時間図であり、待機時間はDWである。
【0047】
待機時間図が、図作成部11が生成した棒状図面と同様の形状で作成されることにより、管理者は各製造工程における処理時間と当該製造工程の製造に伴う製造品の待機時間とを合わせて認識することができ、それぞれの製造工程の製造処理において実際に必要な時間を認識することができる。
【0048】
〔調整部12による調整、および表示制御部13による配置〕
次に、図7を参照して、調整部12における調整、および表示制御部13による配置について説明する。図7は、調整部12における調整の例、および表示制御部13による配置の例を示す図である。
【0049】
まず、図7の表示例701は、表示制御部13が、図作成部11が作成した棒状図面および待機時間図作成部14が作成した待機時間図を、棒状図面の時間軸すなわち長さの始点を揃えて配置して表示部30に表示した例を示す。表示例701では、各製造工程の長さの始点が揃っているので、管理者は、各製造工程における製造時間および待機時間の合計の差異を容易に認識することができる。
【0050】
図7の表示例702は、管理者による調整を受け付けた後に、図作成部11が作成した棒状図面および待機時間図作成部14が作成した待機時間図を、長さの始点を揃えて配置して表示部30に表示した例を示す。
【0051】
管理者は、表示例701の状態から、各製造工程の処理時間と待機時間との合計時間にバラつきがあることを容易に認識できる。製造工程ごとに合計時間にバラつきがあると、前工程の処理が早く終わり過ぎて仕掛在庫が増える、逆に前工程の処理が終わらずに処理すべきワークが存在せず無駄な時間が発生する等の弊害が生ずる可能性がある。
【0052】
そこで、管理者は、各製造工程の処理時間が一致するように、それぞれの製造工程における単位時間当たりの製造数を調整することが考えられる。
【0053】
表示例702は、このように、管理者がそれぞれの製造工程における単位時間当たりの製造数を調整した結果を示すものである。ここでは、製造工程Aの単位時間当たりの製造数量をAY-2、製造工程Bの単位時間当たりの製造数量をBY-2、製造工程Cの単位時間当たりの製造数量をCY-2、製造工程Dの単位時間当たりの製造数量をDY-2としている。この結果、各製造工程の処理時間がZX-2となっている。
【0054】
このように、表示例702では、管理者の調整結果が表示されている。よって、管理者は表示例702を確認することで、調整がうまくいったかどうかを認識することができる。
【0055】
表示例703は、表示制御部13が、各製造工程の棒状図面および待機時間図を、時間軸を揃えて並べた配置で表示部30に表示したものである。各製造工程の棒状図面および待機時間図を、時間軸揃えて連続して並べた配置の図を全行程図とも呼ぶ。このように、時間軸を揃えて連続して並べることにより、製造工程Aから製造工程Dまでの全ての製造工程を処理した場合の処理時間と待機時間との合計、すなわち、製造ライン100において処理を行うときの実際の処理時間を認識することができる。ここでは、製造ライン100における処理時間は各製造工程の処理時間(ZX-2)の4倍にそれぞれの製造工程における待機時間(AW-2、BW-2、CW-2、DW-2)を加算したものとなる。
【0056】
上述した全工程図は、表示部30に表示してもよいし、しなくてもよい。また、選択受付部(図示せず)を備え、全工程図を表示するかしないかを管理者が選択可能とする構成であってもよい。
【0057】
ここでは、表示例701、表示例702、表示例703を分けて表示しているが、1画面に3つの表示例を並べて表示してもよいし、何れか2つを1つの画面に並べて表示してもよい。
【0058】
〔1つの製造工程に複数の製造装置が含まれる場合〕
次に、図8を参照して、1つの製造工程に複数の製造装置が含まれる場合について説明する。図8は、1つの製造工程に複数の製造装置が含まれる場合における棒状図面および待機時間図の例を示す。
【0059】
例えば、製造工程Aを処理する製造装置が、製造装置A1と製造装置A2との2台存在する場合、図8の表示例801に示すように、製造装置A1についての棒状図面(第4図面)および待機時間図が時間軸を揃えて表示され、同じように、製造装置A2についての棒状図面(第4図面)および待機時間図が時間軸を揃えて表示される。そして、製造装置A1についての棒状図面と製造装置A2についての棒状図面との長さの始点が揃うように配置される。
【0060】
表示例801では、製造装置A1の棒状図面が、長さAX-a1、幅AY-a1、待機時間図が長さAW-a1、幅AY-a1で作成されている。また、製造装置A2の棒状図面が、長さAX-a1、幅AY-b1、待機時間図が長さAW-a1、幅AY-b1で作成されている。
【0061】
これにより、管理者は、製造工程Aを処理するための処理時間を容易に認識できるとともに、製造工程Aにおける製造装置A1と製造装置A2とが処理する割合を視覚的に認識することができる。
【0062】
表示例801に対して、それぞれの製造装置の製造能力を挙げた場合、すなわち単位時間当たりの製造数量を上げた場合の棒状図面および待機時間図を、表示例801に示す図面に重ねて表示してもよい。図8の802は、表示例801に、単位時間当たりの製造数量を上げた場合の棒状図面および待機時間図を破線(図8の811)で重ねた状態を示す図である。ここでは、製造装置A1の単位時間当たりの製造数量をAY-a2、製造装置A2の単位時間当たりの製造数量をAY-b2とした場合の例を示す。この場合、処理時間を示す棒状図面の長さはAX-a2、待機時間を示す待機時間図の長さはAW-a2となっている。
【0063】
このように、表示例801に、単位時間当たりの製造数量を上げた場合の図面を重ねて表示することにより、管理者は、単位時間当たりの製造数量を上げる調整を行ったときにどのようになるのかを容易に認識することができる。
【0064】
ここでは、表示例801の状態から、単位時間当たりの製造数量を上げた場合の例として説明したが、逆に、表示例802で示す破線を製造装置A1、および製造装置A2の100%の能力を発揮した状態とし、当該状態から製造装置A1、および製造装置A2の能力を下げた場合の例としてもよい。すなわち、製造装置A1、および製造装置A2を100%の能力を発揮している状態から、能力を下げた場合にどのようになるのかを管理者に認識させるものであってもよい。
【0065】
〔ソフトウェアによる実現例〕
製造工程管理装置1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部10、10Aに含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0066】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0067】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0068】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本開示の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0069】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0070】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る製造工程管理装置は、複数の製造工程を含む製造ラインの前記製造工程ごとの単位時間当たりの製造数量を取得する取得部と、前記製造工程ごとに、幅および長さを有する第1図面であって、前記幅は当該製造工程における単位時間当たりの製造数量を示す第1製造数量を表し、前記長さは前記第1製造数量で所定数量の製造を行うために必要な時間を表す第1図面を作成する図作成部と、前記複数の製造工程それぞれの前記第1図面を、前記幅の方向および前記長さの方向を揃えて、並べて表示部に表示可能である表示制御部と、を備える。
【0071】
これにより、製造工程ごとに、所定数量の製造を行うために必要な時間が幅および長さを有する図面として表示されるので、製造ラインの管理者が製造工程ごとに、所定数量の製造に必要な時間を視覚的に、かつ容易に認識できる。よって、管理者は、仕掛在庫が増える可能性がある製造工程、前工程の終了待ちとなり処理の開始に影響がでる製造工程、在庫量削減のために改善が必要な製造工程を容易に認識できる。
【0072】
また、幅および長さを有する図面は、幅が第1製造数量、長さが時間、面積が製造予定の所定数量を示すことになるので、管理者はこれらの情報を短時間で容易に認識できる。
【0073】
本開示の態様2に係る製造工程管理装置は、前記態様1において、前記の単位時間当たりの製造数量の調整を受け付ける調整受付部を備え、前記調整受付部で受け付けた調整後の単位時間当たりの製造数量を第2製造数量としたとき、前記図作成部は、幅および長さを有する第2図面であって、前記幅は前記第2製造数量を表わし、前記長さは当該製造工程において所定数量の製造を行うために必要な時間を表わす第2図面を作成し、前記表示制御部は、当該製造工程については、当該第2図面を、前記第1図面と比較可能に前記表示部に表示させる。
【0074】
これにより、製造工程の単位時間当たりの製造数量を調整した場合における、所定数量を製造するために必要な時間(必要時間)が第2図面として表示されるので、管理者は、調整後の必要時間を容易に認識できる。よって、どのような調整を行えば、どのような在庫量となるかを容易に認識することができる。
【0075】
本開示の態様3に係る製造工程管理装置は、前記態様1または2において、前記図作成部は、前記製造工程ごとに、幅および長さを有する第3図面であって、前記幅は当該製造工程における製造装置の稼働率が100%の場合の単位時間当たりの製造数量を示す第3製造数量を表し、前記長さは当該製造工程において、前記第3製造数量で所定数量の製造を行うために必要な時間を表わす第3図面を作成し、前記表示制御部は、前記第1図面と前記第3図面とを比較可能に前記表示部に表示する。
【0076】
これにより、管理者は、稼働率が100%の場合と100%でない場合とにおける、所定数量を製造するために必要な時間を比較しつつ認識することができる。
【0077】
本開示の態様4に係る製造工程管理装置は、前記態様1~3の何れかにおいて、前記製造工程ごとに、当該製造工程における製造に伴う製造品の待機時間を示す待機時間図を生成する待機時間図作成部を備え、前記表示制御部は、時間軸を揃えて、前記第1図面と前記待機時間図とを並べて前記表示部に表示する。
【0078】
これにより、管理者は、製造工程ごとに、実際の処理に係る時間を認識することができる。
【0079】
本開示の態様5に係る製造工程管理装置は、前記態様1~3の何れかにおいて、前記表示制御部は、時間始点を揃えて、前記第1図面を並べて前記表示部に表示する。
【0080】
これにより、管理者は、製造工程ごとの処理時間の違いを容易に認識することができる。
【0081】
本開示の態様6に係る製造工程管理装置は、前記態様1~5の何れかにおいて、前記表示制御部は、前記製造ラインにおける複数の製造工程の前記第1図面および前記待機時間図を、時間軸を揃えて連続して並べた全工程図を前記表示部に表示する。
【0082】
これにより、管理者は、製造ラインの全製造工程における処理時間を認識することができる。
【0083】
本開示の態様7に係る製造工程管理装置は、前記態様6において、前記全工程図の表示を行うか否かの選択を受け付ける選択受付部を備え、前記表示制御部は、前記選択受付部で前記全工程図の表示を行うことを受け付けた場合、前記全工程図を前記表示部に表示する。
【0084】
これにより、全工程図の表示を行うか否かを選択的にすることができる。
【0085】
本開示の態様8に係る製造工程管理装置は、前記態様1~8の何れかにおいて、前記表示制御部は、時間の始点を揃えて、前記第1図面および前記待機時間図を並べて前記表示部に表示する。
【0086】
これにより、管理者は、待機時間図を含む状態で、製造工程ごとの処理時間の違いを容易に認識することができる。
【0087】
本開示の態様9に係る製造工程管理装置は、前記態様1~8の何れかにおいて、前記取得部は、前記製造工程ごとの単位時間当たりの製造数量として、当該製造工程における直近の稼働日の単位時間当たりの製造数量を取得する。
【0088】
これにより、製造工程後の単位時間当たりの製造数量を実体に基づいたものとすることができる。
【0089】
本開示の態様10に係る製造工程管理装置は、前記態様1~9の何れかにおいて、1つの前記製造工程について複数の製造装置が割り当てられている場合、前記取得部は、前記製造装置毎の単位時間当たりの製造数量を取得し、前記図作成部は、前記製造装置毎に、幅および長さを有する第2図面であって、前記幅は当該製造装置における単位時間当たりの製造数量を示す第1製造数量を表し、前記長さは当該製造工程において、前記第1製造数量で所定数量の製造を行うために必要な時間を表わす第4図面を作成し、前記表示制御部は、前記第4図面を前記製造装置ごとに並べて前記表示部に表示可能である。
【0090】
これにより、複数の製造装置が1つの製造工程を処理する場合に、管理者は製造装置毎の情報を視覚的に、かつ容易に認識できる。
【0091】
以上、本開示に係る発明について、諸図面および実施例に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0092】
1、1A 製造工程管理装置
10、10A 制御部
11 図作成部
12 調整部
13 表示制御部
14 待機時間図作成部
20 取得部
30 表示部
40 受付部
100 製造ライン
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