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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092760
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】塗装用データの作成方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20240701BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20240701BHJP
   B05D 1/40 20060101ALI20240701BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240701BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20240701BHJP
   G05B 19/4069 20060101ALI20240701BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B25J9/22 A
B05B12/00 A
B05D1/40 Z
B05D3/00 D
B05D1/02 Z
G05B19/4069
G05B19/42 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208900
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】593081224
【氏名又は名称】タクボエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104488
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 良夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 俊博
(72)【発明者】
【氏名】小島 光
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
4D075
4F035
【Fターム(参考)】
3C269AB13
3C269AB33
3C269BB09
3C269EF02
3C269EF69
3C269MN08
3C269MN42
3C269MN48
3C269QB02
3C269QC01
3C269QC10
3C269QD02
3C269QD05
3C269QD06
3C707AS13
3C707JS01
3C707JU02
3C707JU03
3C707LS09
3C707LS14
3C707LS20
3C707NS03
4D075AA01
4D075AA37
4D075AA67
4D075AA83
4D075AA84
4D075AA85
4F035AA03
4F035BA22
4F035BA23
4F035BC02
4F035CA02
4F035CA05
4F035CB04
4F035CB26
4F035CB29
(57)【要約】      (修正有)
【課題】塗装用データ作成に要する作業を容易にして作業時間を短縮にする。
【解決手段】外形及び寸法が異なるワークごとに外形寸法とワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データを記憶させた基本構成データベースと、スプレー条件が異なるごとに噴霧情報を記憶させた噴霧情報データベースを予め作成し、ワークの基本データ及びスプレー条件を設定し、設定したワークの基本データ及びスプレー条件と同一又は近似のデータを有するレコードを基本構成データベース又は噴霧情報データベースから抽出し、抽出したレコードのワークの配置に関するデータ、軌道データ及び噴霧情報を、設定したワークを塗装する際の設定値とし、設定値を用いて表示部でバーチャルな塗装シミュレーションを行い、設定値に不備が無い場合は設定値を塗装用データとして保存し、不備がある場合は修正後に設定値を塗装用データとして保存する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレーガンを備えた塗装ロボットと、回動軸を中心に回動自在とした治具と、治具に取り付けられた複数個のワークとを用いて、治具を回転することでワークを回動軸の周囲で公転させるとともに公転しているワークに向けてスプレーガンから塗料を噴霧することで行うワークの塗装のために用いる、塗装用データの作成方法であって、
外形及び寸法が異なるワークごとに、ワークの外形及び寸法データと、ワークを治具へ取り付ける際の個数及び方法等のワークの配置に関するデータと、塗装する際のスプレーガンの軌道データと、を記憶させた基本構成データベースと、
塗料に関する種類と吐出時間と吐出量、塗料を霧化するための霧化エアーの圧力、霧化した塗料の噴霧パターンを形成するためのパターンエアーの圧力等のスプレー条件が異なるごとに、スプレー条件に従って塗料粒子をワークに向けて噴霧した場合をバーチャルに再現するために用いられる、粒子速度、粒子径分布、噴霧パターン等の噴霧情報を記憶させた噴霧情報データベースと、を予め作成しておき、
塗装用データを作成する場合には、CPU(2)、操作部(3)、表示部(4)、及び記憶手段(5)を有するデータ作成装置(1)を用いて、
初期設定として、塗装ロボットに関する外形、機構、寸法等の基本データ、ワークに関する外形、寸法等の基本データ、塗装ロボットとワークの位置データ、スプレーガンとワークとの距離データ、及びスプレー条件を設定して設定値として、
前記基本構成データベースから、ワークの外形、寸法が前記初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似しているレコードを抽出し、該抽出したレコード内のワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データを、初期設定したワークについての、ワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データの設定値とし、
前記噴霧情報データベースから、スプレー条件が前記初期設定したスプレー条件と同一又は近似しているレコードを抽出し、該抽出したレコード内の噴霧情報を、初期設定したスプレー条件についての噴霧情報の設定値とし、
前記設定値とした塗装ロボット及びワークに関する基本データ、塗装ロボットとワークの位置データ、スプレーガンとワークとの距離データ、ワークの配置に関するデータ、及びスプレーガンの軌道データを用いて、スプレーガン(36)とワーク(34)の表示データを作成するとともに、
前記設定値とした噴霧情報に基づき、スプレーガン(36)からワーク(34)に向けて噴霧されてワーク(34)に塗着していく状態の塗料粒子の表示データと、塗装が完了した後にワーク(34)に塗着した塗料の状態の表示データを作成し、
該作成した表示データを用いて、ワーク(34)を取り付けた状態で回転している治具と、ティーチングされた軌道データに従い移動するスプレーガン(8)と、を表示部(4)に動画で表示するとともに、
スプレーガン(36)からワーク(34)に向けて噴霧されてワーク(34)に塗着していく塗料粒子と、塗装が完了した後にワーク(34)に塗着した塗料の状態と、を表示部(4)に表示し、
少なくともワークの配置、スプレーガンの軌道、塗装完了後にワークに塗着した塗料の状態のいずれかに不備がある場合は、
ワークの配置に関するデータ、スプレーガンの軌道データ、スプレー条件、又は噴霧情報の設定値の中の不備があるデータを修正して新たな設定値とし、
新たな設定値を反映させて、ワーク(34)を取り付けた状態で回転している治具(35)の動画表示、ティーチングされた軌道データに従い移動するスプレーガン(36)の動画表示、スプレーガン(36)からワーク(34)に向けて噴霧されてワーク(34)に塗着していく塗料粒子の表示、及び塗装が完了した後にワーク(34)に塗着した塗料の状態の表示を行い、
以後は不備が無くなるまで、不備があるデータの修正及び新たな設定値を反映させた表示を繰り返し、
設定値としたデータに不備がなく修正をしなかった場合、又は修正により不備が無くなった場合は、ワークの配置に関するデータ、スプレーガンの軌道データ、スプレー条件、及び噴霧情報についての設定値を、初期設定したワークを塗装する際の塗装用データとして記憶手段に記憶させて保存する、ことを特徴とした塗装用データの作成方法。
【請求項2】
スプレーガンを備えた塗装ロボットと、回動軸を中心に回動自在とした治具と、治具に取り付けられた複数個のワークとを用いて、治具を回転することでワークを回動軸の周囲で公転させるとともに公転しているワークに向けてスプレーガンから塗料を噴霧することで行うワークの塗装のために用いる、塗装用データの作成方法であって、
外形及び寸法が異なるワークごとに、ワークの外形及び寸法データと、ワークを治具へ取り付ける際の個数及び方法等のワークの配置に関するデータと、塗装する際のスプレーガンの軌道データと、を記憶させた基本構成データベースと、
塗料に関する種類と吐出時間と吐出量、塗料を霧化するための霧化エアーの圧力、霧化した塗料の噴霧パターンを形成するためのパターンエアーの圧力等のスプレー条件が異なるごとに、スプレー条件に従って塗料粒子をワークに向けて噴霧した場合をバーチャルに再現するために用いられる、粒子速度、粒子径分布、噴霧パターン等の噴霧情報を記憶させた噴霧情報データベースと、を予め作成しておき、
塗装用データを作成する場合には、CPU(2)、操作部(3)、表示部(4)、及び記憶手段(5)を有するデータ作成装置(1)を用いて、
初期設定として、塗装ロボットに関する外形、機構、寸法等の基本データ、ワークに関する外形、寸法等の基本データ、塗装ロボットとワークの位置データ、スプレーガンとワークとの距離データ、及びスプレー条件を設定して設定値として、
前記基本構成データベースから、ワークの外形、寸法が前記初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似しているレコードを抽出し、該抽出したレコード内のワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データを、初期設定したワークについての、ワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データの設定値とし、
前記噴霧情報データベースから、スプレー条件が前記初期設定したスプレー条件と同一又は近似しているレコードを抽出し、該抽出したレコード内の噴霧情報を、初期設定したスプレー条件についての噴霧情報の設定値とし、
前記設定値とした塗装ロボット及びワークに関する基本データ、塗装ロボットとワークの位置データ、スプレーガンとワークとの距離データ、ワークの配置に関するデータ、及びスプレーガンの軌道データを用いて、スプレーガン(36)とワーク(34)の表示データを作成するとともに、
前記設定値とした噴霧情報に基づき、スプレーガン(36)からワーク(34)に向けて噴霧されてワーク(34)に塗着していく状態の塗料粒子の表示データと、塗装が完了した後にワーク(34)に塗着した塗料の状態の表示データを作成し、
該作成した表示データを用いて、ワーク(34)を取り付けた状態で回転している治具と、ティーチングされた軌道データに従い移動するスプレーガン(8)と、を表示部(4)に動画で表示するとともに、
スプレーガン(36)からワーク(34)に向けて噴霧されてワーク(34)に塗着していく塗料粒子と、塗装が完了した後にワーク(34)に塗着した塗料の状態と、を表示部(4)に表示し、
少なくともワークの配置、スプレーガンの軌道、塗装完了後にワークに塗着した塗料の状態のいずれかに不備がある場合は、
ワークの配置に関するデータ、スプレーガンの軌道データ、スプレー条件、又は噴霧情報の設定値の中の不備があるデータを修正して新たな設定値とし、
新たな設定値を反映させて、ワーク(34)を取り付けた状態で回転している治具(35)の動画表示、ティーチングされた軌道データに従い移動するスプレーガン(36)の動画表示、スプレーガン(36)からワーク(34)に向けて噴霧されてワーク(34)に塗着していく塗料粒子の表示、及び塗装が完了した後にワーク(34)に塗着した塗料の状態の表示を行い、
以後は不備が無くなるまで、不備があるデータの修正及び新たな設定値を反映させた表示を繰り返し、
設定値としたデータに不備がなく修正をしなかった場合、又は修正により不備が無くなった場合は、ワークの配置に関するデータ、スプレーガンの軌道データ、スプレー条件、及び噴霧情報についての設定値を、初期設定したワークを塗装する際の塗装用データとして記憶手段に記憶させて保存し、
少なくともワークの配置又はスプレーガンの軌道に不備があり、ワークの配置に関するデータ又はスプレーガンの軌道データの設定値の中の不備があるデータを修正した場合には、初期設定した形状及び寸法を有するワークを基本構成データベースに新規レコードとして追加するとともに、ワークの配置に関するデータ及びスプレーガンの軌道データの設定値を、新規追加したレコードにおけるワークの配置に関するデータ及びスプレーガンの軌道データとする、ことを特徴とした塗装用データの作成方法。
【請求項3】
スプレーガンを備えた塗装ロボットと、回動軸を中心に回動自在とした治具と、治具に取り付けられた複数個のワークとを用いて、治具を回転することでワークを回動軸の周囲で公転させるとともに公転しているワークに向けてスプレーガンから塗料を噴霧することで行うワークの塗装のために用いる、塗装用データの作成方法であって、
外形及び寸法が異なるワークごとに、ワークの外形及び寸法データと、ワークを治具へ取り付ける際の個数及び方法等のワークの配置に関するデータと、塗装する際のスプレーガンの軌道データと、を記憶させた基本構成データベースと、
塗料に関する種類と吐出時間と吐出量、塗料を霧化するための霧化エアーの圧力、霧化した塗料の噴霧パターンを形成するためのパターンエアーの圧力等のスプレー条件が異なるごとに、スプレー条件に従って塗料粒子をワークに向けて噴霧した場合をバーチャルに再現するために用いられる、粒子速度、粒子径分布、噴霧パターン等の噴霧情報を記憶させた噴霧情報データベースと、を予め作成しておき、
塗装用データを作成する場合には、CPU(2)、操作部(3)、表示部(4)、及び記憶手段(5)を有するデータ作成装置(1)を用いて、
初期設定として、塗装ロボットに関する外形、機構、寸法等の基本データ、ワークに関する外形、寸法等の基本データ、塗装ロボットとワークの位置データ、スプレーガンとワークとの距離データ、及びスプレー条件を設定して設定値として、
前記基本構成データベースから、ワークの外形、寸法が前記初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似しているレコードを抽出し、該抽出したレコード内のワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データを、初期設定したワークについての、ワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データの設定値とし、
前記噴霧情報データベースから、スプレー条件が前記初期設定したスプレー条件と同一又は近似しているレコードを抽出し、該抽出したレコード内の噴霧情報を、初期設定したスプレー条件についての噴霧情報の設定値とし、
前記設定値とした塗装ロボット及びワークに関する基本データ、塗装ロボットとワークの位置データ、スプレーガンとワークとの距離データ、ワークの配置に関するデータ、及びスプレーガンの軌道データを用いて、スプレーガン(36)とワーク(34)の表示データを作成するとともに、
前記設定値とした噴霧情報に基づき、スプレーガン(36)からワーク(34)に向けて噴霧されてワーク(34)に塗着していく状態の塗料粒子の表示データと、塗装が完了した後にワーク(34)に塗着した塗料の状態の表示データを作成し、
該作成した表示データを用いて、ワーク(34)を取り付けた状態で回転している治具と、ティーチングされた軌道データに従い移動するスプレーガン(8)と、を表示部(4)に動画で表示するとともに、
スプレーガン(36)からワーク(34)に向けて噴霧されてワーク(34)に塗着していく塗料粒子と、塗装が完了した後にワーク(34)に塗着した塗料の状態と、を表示部(4)に表示し、
少なくともワークの配置、スプレーガンの軌道、塗装完了後にワークに塗着した塗料の状態のいずれかに不備がある場合は、
ワークの配置に関するデータ、スプレーガンの軌道データ、スプレー条件、又は噴霧情報の設定値の中の不備があるデータを修正して新たな設定値とし、
新たな設定値を反映させて、ワーク(34)を取り付けた状態で回転している治具(35)の動画表示、ティーチングされた軌道データに従い移動するスプレーガン(36)の動画表示、スプレーガン(36)からワーク(34)に向けて噴霧されてワーク(34)に塗着していく塗料粒子の表示、及び塗装が完了した後にワーク(34)に塗着した塗料の状態の表示を行い、
以後は不備が無くなるまで、不備があるデータの修正及び新たな設定値を反映させた表示を繰り返し、
設定値としたデータに不備がなく修正をしなかった場合、又は修正により不備が無くなった場合は、ワークの配置に関するデータ、スプレーガンの軌道データ、スプレー条件、及び噴霧情報についての設定値を、初期設定したワークを塗装する際の塗装用データとして記憶手段に記憶させて保存し、
少なくとも塗装完了後にワークに塗着した塗料の状態に不備があり、スプレー条件又は噴霧情報の設定値の中の不備があるデータを修正した場合には、設定値のスプレー条件を噴霧情報データベースに新規レコードとして追加するとともに、設定値の噴霧情報を、新規追加したレコードの噴霧情報とする、ことを特徴とした塗装用データの作成方法。
【請求項4】
塗装が完了した後にワーク(34)に塗着した塗料の状態を表示部(4)に表示した際において、表示部(4)に表示されているワーク(34)の任意の箇所をマウスでなぞった場合に、当該箇所の塗料の平均膜厚を表示部(4)に表示することを特徴とする請求項1乃至は請求項3のいずれかに記載の塗装用データの作成方法。
【請求項5】
基本構成データベースから、ワークの外形、寸法が初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似しているレコードを抽出する際に、基本構成データベースに記憶されているデータの中に、初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似している外形、寸法のワークを有するレコードが無い場合には、予め定めた、ワークの外形及び寸法、スプレーガンの可動範囲に応じたワークの配置及びスプレーガンの軌道の決定手順に従い、初期設定したワークについての、ワークの配置に関するデータ及びスプレーガンの軌道データを決定して設定値とする、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の塗装用データの作成方法。
【請求項6】
基本構成データベースから、ワークの外形、寸法が初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似しているレコードを抽出する際に、基本構成データベースに記憶されているデータの中に、初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似している外形、寸法のワークを有するレコードが無い場合には、予め定めた、ワークの外形及び寸法、スプレーガンの可動範囲に応じたワークの配置及びスプレーガンの軌道の決定手順に従い、初期設定したワークについての、ワークの配置に関するデータ及びスプレーガンの軌道データを決定して設定値とする、ことを特徴とする請求項4に記載の塗装用データの作成方法。
【請求項7】
噴霧情報データベースから、スプレー条件が初期設定したスプレー条件と同一又は近似しているレコードを抽出する際に、噴霧情報データベースに記憶されているデータの中に、初期設定したスプレー条件と同一又は近似しているスプレー条件を有するレコードが無い場合には、予め定めた、スプレー条件に応じた噴霧情報の算出手順に従い、初期設定されたスプレー条件についての噴霧情報を算出して設定値とする、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の塗装用データの作成方法。
【請求項8】
噴霧情報データベースから、スプレー条件が初期設定したスプレー条件と同一又は近似しているレコードを抽出する際に、噴霧情報データベースに記憶されているデータの中に、初期設定したスプレー条件と同一又は近似しているスプレー条件を有するレコードが無い場合には、予め定めた、スプレー条件に応じた噴霧情報の算出手順に従い、初期設定されたスプレー条件についての噴霧情報を算出して設定値とする、ことを特徴とする請求項4に記載の塗装用データの作成方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装用データの作成方法に係り、より詳しくは、塗装の際のワークの配置データ、塗装の際のスプレーガンの軌道データ、及び、画面上で塗装を再現するための塗料粒子の噴霧データを複数作成してデータベース化しておき、実際のワークの塗装に用いる塗装用データを作成する際に、予めデータベース化しておいたワークの配置データ、スプレーガンの軌道データ及び画面上で塗装を再現するための塗料粒子の噴霧データの中から、実際のワークの外形寸法等の諸条件と同一又は近似するデータを抽出し、それらを組み合わせることで塗装用のデータを自動的に作成可能としたことを特徴とする塗装用データの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被塗装物(以下「ワーク」という。)の塗装に際しては、塗装の膜厚を均一にして良質な塗装面を得るために、塗装ロボットを用いて自動的に塗装を行う方法が採用されることがあるが、このような塗装ロボットを用いた塗装では、予め、ワークの外形寸法等に基づいて、ワークの配置や塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道等の塗装用データを作成しておくことが必要であり、このような、塗装用データの作成作業を一般に「ティーチング」という。
【0003】
そして、このティーチングで作成された塗装用データによって、塗装ロボットは、ティーチングされた軌道データに基づいてスプレーガンを移動することができ、これにより自動的にワークを塗装することが可能となるとともに、膜厚が均一な良質な塗装面を得ることが可能となる。従って、塗装ロボットを用いた塗装では、特に複数個のワークの塗装を行なう場合には、人件費等の経費を削減することができるとともに、すべてのワークに対して正確に同一の塗装を行なうことができるという利点がある。
【0004】
ここで、従来行われているティーチングについて図6を参照して説明すると、
図6において43が塗装ロボットであり、塗装ロボット43は、ワークに向けて塗料を噴霧するためのスプレーガンを備えている。また、図において44はワーク、42は塗装ロボット43の作動を制御するためのロボットコントローラー、41はティーチングペンダントであり、ワーク44は治具45に取り付けられている。そして、ティーチングは一般的に、前記ティーチングペンダント41を用いて行われる。即ち、このティーチングペンダント41は、ロボットコントローラー42のリモコンのような物であり、前記ロボットコントローラー42と接続されている。そして、ティーチングを行う際には、塗装ロボット43の近傍において、ティーチングペンダント41を用いて塗装ロボット43を操作し、所望するスプレーガンの位置を順にロボットコントローラー42に登録し、それにより、ロボットコントローラー42にスプレーガンの軌道を記憶させる方法が一般的である。
【0005】
しかしながら、この従来の方法では、スプレーガンとワークの距離やスプレーガンのワークへの狙い目に関しては、現物のワークを近くで見ながら、経験や勘に頼りながら目視判断によって行なっていたのが現状であるため、熟練者でなければ正確なティーチングができないとともに、曖昧にならざるを得なかった。またこの方法では、スプレーガンとワークの距離は現物合わせで行い、スプレーガンの狙い目はスケールや専用冶具を用いて確認する必要があるため、専用冶具をワークに当てないように慎重に作業しなければならず、作業が煩雑になり時間がかかっていた。
【0006】
そのために本出願人は過去において、塗装ロボット及びワークを表示部に3Dで表示し、ティーチングペンダントによってスプレーガンの軌道がロボットコントローラーに登録されるごとに、登録されたデータに基づいて、表示部に表示している塗装ロボットとワークの表示を変更し、それにより、表示部に3Dで表示されている塗装ロボットとワークを見ながら軌道データの登録を行うことを可能とし、塗装ロボットの近傍で現物のワークを近くで見ながらティーチングを行うことを不要とした。
【0007】
しかしながら、このような、表示部に表示されたと塗装ロボットとワークを見ながらティーチングする方法においても、ロボットコントローラーとティーチングペンダントは実物の実機を用いるため、ロボットコントローラーとティーチングペンダントが無いところではティーチングができないという問題点があった。
【0008】
そこで本出願人は、表示部にバーチャルな塗装ロボット、ワーク及びティーチングペンダントを3Dで表示し、その表示された塗装ロボット、ワーク及びティーチングペンダントを用いて、バーチャルな画面上で塗装ロボットの軌道を登録するオフラインティーチングの方法を提案した。
【0009】
即ち、このオフラインティーチングでは、初期設定において、塗装ロボットに関する外形、機構、寸法等の基本データ、ワークに関する外形、寸法等の基本データ、塗装ロボットとワークとの位置情報、及びスプレーガンとワークとの距離等の情報等をPC等の制御手段等に設定する。
【0010】
そして次に、設定したデータを用いて、3Dソフトによって、塗装ロボット及びワークの3D表示データを作成し、その3Dデータを用いて表示部に塗装ロボット及びワークを3Dで表示する。
【0011】
また、表示部にティーチングペンダントの画面を表示し、このティーチングペンダントの画面に表示されている矢印キーを操作すると表示されている塗装ロボットにおけるスプレーガンを動かすことを可能にし、ティーチングペンダントの画面に表示されている矢印キー及び確定キーの操作によって、画面上でスプレーガンの軌道の登録を行うことを可能にしている。そして、それにより作成したティーチングデータを用いて塗装を行うことで、ワークの塗装を容易にしている(特願2022-071631参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2018-192550号公報
【特許文献2】特開2013-184280号公報
【特許文献3】特開2006-315157号公報
【特許文献4】特開2005-238092号公報
【特許文献5】特開2004-114246号公報
【特許文献6】特開2000-288432号公報
【特許文献7】特開平10-264060号公報
【特許文献8】特開平10-264059号公報
【特許文献9】特開平6-31233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述のような、画面上でスプレーガンの軌道の登録を行い、それにより作成したティーチングデータを用いることでワークの塗装を行うことを可能にした場合でも、ワークの配置やスプレーガンの軌道のティーチング作業は必要であるため、ティーチングには時間がかかってしまう。
【0014】
そこで、本発明は、ティーチング作業を容易にすることで、ティーチング作業に必要な作業時間を短縮することを可能にした塗装用データの作成方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の塗装用データの作成方法は、
スプレーガンを備えた塗装ロボットと、回動軸を中心に回動自在とした治具と、治具に取り付けられた複数個のワークを用いて、治具を回転することでワークを回動軸の周囲で公転させるとともに公転しているワークに向けてスプレーガンから塗料を噴霧することで行うワークの塗装のために用いる塗装用データの作成方法であって、
外形及び寸法が異なるワークごとに、ワークの外形及び寸法データと、ワークを治具へ取り付ける際の個数及び方法等のワークの配置に関するデータと、塗装する際のスプレーガンの軌道データと、を記憶させた基本構成データベースと、
塗料に関する種類と吐出時間と吐出量、塗料を霧化するための霧化エアーの圧力、霧化した塗料の噴霧パターンを形成するためのパターンエアーの圧力等のスプレー条件が異なるごとに、スプレー条件に従って塗料粒子をワークに向けて噴霧した場合をバーチャルに再現するために用いられる、粒子速度、粒子径分布、噴霧パターン等の噴霧情報を記憶させた噴霧情報データベースと、を予め作成しておき、
塗装用データを作成する場合には、CPU、操作部、表示部、及び記憶手段を有するデータ作成装置を用いて、
初期設定として、塗装ロボットに関する外形、機構、寸法等の基本データ、ワークに関する外形、寸法等の基本データ、塗装ロボットとワークの位置データ、スプレーガンとワークとの距離データ、及びスプレー条件を設定して設定値として、
前記基本構成データベースから、ワークの外形、寸法が前記初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似しているレコードを抽出し、該抽出したレコード内のワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データを、初期設定したワークについての、ワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データの設定値とし、
前記噴霧情報データベースから、スプレー条件が前記初期設定したスプレー条件と同一又は近似しているレコードを抽出し、該抽出したレコード内の噴霧情報を、初期設定したスプレー条件についての噴霧情報の設定値とし、
前記制御手段に設定した塗装ロボット及びワークに関する基本データ、塗装ロボットとワークの位置データ、スプレーガンとワークとの距離データ、ワークの配置に関するデータ、及びスプレーガンの軌道データを用いて、スプレーガンとワークの表示データを作成するとともに、
前記設定値とした噴霧情報に基づき、スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子の表示データと、塗装が完了した後にワークに塗着した塗料の状態の表示データを作成し、
該作成した表示データを用いて、ワークを取り付けた状態で回転している治具と、ティーチングされた軌道データに従い移動するスプレーガンと、を表示部に動画で表示するとともに、
スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子と、塗装が完了した後にワークに塗着した塗料の状態を、表示部に表示し、
少なくともワークの配置、スプレーガンの軌道、塗装完了後にワークに塗着した塗料の状態のいずれかに不備がある場合は、
ワークの配置に関するデータ、スプレーガンの軌道データ、スプレー条件、又は噴霧情報の設定値の中の不備があるデータを修正して新たな設定値とし、
新たな設定値を反映させて、ワークを取り付けた状態で回転している治具の動画表示、ティーチングされた軌道データに従い移動するスプレーガンの動画表示、スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子の表示、及び塗装が完了した後にワークに塗着した塗料の状態の表示を行い、
以後は不備が無くなるまで、不備があるデータの修正及び新たな設定値を反映させた表示を繰り返し、
設定値としたデータに不備がなく修正をしなかった場合、又は修正により不備が無くなった場合は、ワークの配置に関するデータ、スプレーガンの軌道データ、スプレー条件、及び噴霧情報についての設定値を、初期設定したワークを塗装する際の塗装用データとして記憶手段に記憶させて保存する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の塗装用データの作成方法は、外形及び寸法が異なるワークごとに、ワークの外形及び寸法データと、ワークの治具への取り付け個数及び方法等のワークの配置に関するデータと、塗装する場合のスプレーガンの軌道データと、を記憶させた基本構成データベースと、塗料に関する種類と吐出時間と塗料の吐出量、塗料を霧化するための霧化エアーの圧力、霧化した塗料の噴霧パターンを形成するためのパターンエアーの圧力等のスプレー条件が異なるごとに、スプレー条件に従って塗料粒子をワークに向けて噴霧した場合をバーチャルに再現するために用いられる、粒子速度、粒子径分布、噴霧パターン等の噴霧情報を記憶させた噴霧情報データベースを予め作成しておく。
【0017】
そして、塗装用データを作成する際には、塗装用データを作成する場合には、CPU、操作部、表示部、及び記憶手段を有するデータ作成装置を用いて、まず、初期設定として、塗装ロボットに関する外形、機構、寸法等の基本データ、ワークに関する外形、寸法等の基本データ、塗装ロボットとワークの位置データ、スプレーガンとワークとの距離データ、及びスプレー条件を設定して設定値とする。
【0018】
そして次に、初期設定したワークに関する基本データとスプレー条件を用いて、予め作成した基本構成データベースと噴霧情報データベースから、ワークに関する基本データとスプレー条件が初期設定したワークに関する基本データとスプレー条件と同一又は近似しているレコードを抽出し、抽出したレコード内のワークの配置に関するデータ,スプレーガンの軌道データ及び噴霧情報を設定値とする。そして、その設定値としたデータと初期設定したデータを用いて、ワークを取り付けた状態で回転している治具と、ティーチングされた軌道データに従い移動するスプレーガンを表示部に動画で表示し、更に、スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子や塗装が完了した後にワークに塗着した塗料の状態を表示部に表示することとしている。
【0019】
そしてその後、表示部に表示されたワークやスプレーガンに不備がある場合は設定されたデータを修正して新たな設定値とし、新たな設定値を反映させて、ワークやスプレーガンの表示を行い、データに不備がなく修正をしなかった場合、又は修正により不備が無くなった場合は、ワークの配置に関するデータ、スプレーガンの軌道データ、スプレー条件、及び噴霧情報についての設定値を、初期設定したワークを塗装する際の塗装用データとして記憶手段に記憶させて保存することとしている。
【0020】
従って本発明では、スプレーガンの軌道をティーチングすることなく、治具の回転とともに公転しているワークとティーチングされた軌道データに従い移動するスプレーガンを画面上に動画で表示することができるので、ティーチングに必要な作業時間を短縮することが可能である。
【0021】
また本発明では、初期設定したスプレー条件に従って、塗料粒子をワークに向けて噴霧した場合を画面でバーチャルに再現するために必要な粒子速度、粒子径分布、噴霧パターン等の噴霧情報を噴霧情報データベースから抽出して設定するために、噴霧情報を得るためにスプレー条件を用いて計算する必要がなく、従って、スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子や塗装が完了した後にワークに塗着した塗料の状態を、容易に表示部上に表示することが可能であり、これによっても、ティーチングに必要な作業時間を短縮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の塗装用データの作成方法の実施例に用いる装置のブロック図である。
図2】本発明の塗装用データの作成方法の実施例に用いられるソフトを説明するための図である。
図3】本発明の塗装用データの作成方法の実施例に用いられるデータベースを説明するための図である。
図4】本発明の塗装用データの作成方法の実施例を説明するためのフローチャートである。
図5】本発明の塗装用データの作成方法の実施例における表示部への表示の方法を説明するための図である。
図6】従来のティーチング方法を説明するためにブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の塗装用データの作成方法は、スプレーガンを備えた塗装ロボットと、回動軸を中心に回動自在とした治具と、治具に取り付けられた複数個のワークを用いて、治具を回転することでワークを回動軸の周囲で公転させるとともに公転しているワークに向けてスプレーガンから塗料を噴霧することで行うワークの塗装のために用いる塗装用データの作成方法としている。
【0024】
そして、本発明の塗装用データの作成方法では、予め、外形及び寸法が異なるワークごとに、ワークの外形及び寸法データと、ワークを治具へ取り付ける際の個数及び方法等のワークの配置に関するデータと、塗装する際のスプレーガンの軌道データと、を記憶させた基本構成データベースを作成しておく。
【0025】
またそれとともに、塗料に関しての種類と吐出時間と吐出量、塗料を霧化するための霧化エアーの圧力、霧化した塗料の噴霧パターンを形成するためのパターンエアーの圧力等のスプレー条件が異なるごとに、スプレー条件に従って塗料粒子をワークに向けて噴霧した場合をバーチャルに再現するために用いられる、粒子速度、粒子径分布、噴霧パターン等の噴霧情報を記憶させた噴霧情報データベースを予め作成しておく。
【0026】
そして、塗装用データを作成する際には、CPU、操作部、表示部、及び記憶手段を有するデータ作成装置を用いて、まず、初期設定として、塗装ロボットに関する外形、機構、寸法等の基本データ、ワークに関する外形、寸法等の基本データ、塗装ロボットとワークの位置データ、スプレーガンとワークとの距離データ、及びスプレー条件を設定して、設定値とする。
【0027】
次に、基本構成データベースから、ワークの外形、寸法が初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似しているレコードを抽出し、抽出したレコード内のワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データを、初期設定したワークについての、ワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データの設定値とする。
【0028】
またそれとともに、噴霧情報データベースから、スプレー条件が初期設定したスプレー条件と同一又は近似しているレコードを抽出し、抽出したレコード内の噴霧情報を、初期設定したスプレー条件についての噴霧情報の設定値とする。
【0029】
その後、設定値とした塗装ロボット及びワークに関する基本データ、塗装ロボットとワークの位置データ、スプレーガンとワークとの距離データ、ワークの配置に関するデータ、及びスプレーガンの軌道データを用いて、スプレーガンとワークの表示データを作成する。
【0030】
そして、作成した表示データを用いて、治具の回転に伴って移動しているワークと、ティーチングされた軌道データに従い移動するスプレーガンを動画で表示する。
【0031】
また、設定値とした噴霧情報に基づき、スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子と、塗装が完了した後にワークに塗着した塗料の状態の表示データを作成し、その作成した表示データを用いて、スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子と、塗装が完了した後にワークに塗着した塗料の状態を表示部に表示する。
【0032】
そして、少なくとも、表示されているワークの配置やスプレーガンの軌道、又は塗装完了後にワークに塗着した塗料の表示のいずれかに不備がある場合は、ワークの配置に関するデータ、スプレーガンの軌道データ、スプレー条件、又は噴霧情報の設定値の中の不備があるデータを修正して新たな設定値とする。
【0033】
そしてデータを修正した後に、新たな設定値を反映させて、ワークを取り付けた状態で回転している治具と、ティーチングされた軌道データに従い移動するスプレーガンを動画表示するとともに、スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子の状態の表示及び、塗装が完了した後にワークに塗着した塗料の状態の表示を行い、以後は、不備が無くなるまで、不備があるデータの修正及び新たな設定値を反映させた表示を繰り返す。
【0034】
そして、設定したデータに不備がなく修正をしなかった場合、又は設定したデータに不備はあったが修正により不備が無くなった場合は、ワークの配置に関するデータ、スプレーガンの軌道データ、スプレー条件、及び噴霧情報についての設定値を、初期設定したワークを塗装する際の塗装用データとして記憶手段に記憶させて保存する。
【0035】
ここで、ワークの配置又はスプレーガンの軌道のいずれかに不備があり、ワークの配置に関するデータ又はスプレーガンの軌道データの設定値の中の不備があるデータを修正した場合には、初期設定したワークを基本構成データベースに新規レコードとして追加し、ワークの配置に関するデータ及びスプレーガンの軌道データの設定値を、新規追加したレコードにおけるワークの配置に関するデータ及びスプレーガンの軌道データとするとよい。
また、塗装完了後にワークに塗着した塗料の状態に不備があり、スプレー条件又は噴霧情報の設定値の中の不備があるデータを修正した場合には、設定値のスプレー条件を、噴霧情報データベースに新規レコードとして追加し、設定値の噴霧情報を新規追加したレコードの噴霧情報とすると良い。
そうすると、これらにより、データベースにおける蓄積データが増えていきデータベースとしての機能を高めることが可能となる。
【0036】
また、塗装が完了した後にワークに塗着した塗料の状態を表示部に表示した際には、画面上のワークの任意の箇所をマウスでなぞった場合に、当該箇所の塗料の平均膜厚を画面に表示すると良く、それにより、平均膜厚を視覚で確認することが可能となる。
【0037】
更に、基本構成データベースから、ワークの外形、寸法が初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似しているレコードを抽出する際に、基本構成データベースに記憶されているデータの中に、初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似している外形、寸法のワークを有するレコードが無い場合には、ワークの外形及び寸法とスプレーガンの可動範囲に応じて予め設定された、ワークの配置に関するデータ及びスプレーガンの軌道データを、初期設定したワークについての、ワークの配置に関するデータ及びスプレーガンの軌道データの設定値とするとよい。
【0038】
更にまた、噴霧情報データベースから、スプレー条件が初期設定したスプレー条件と同一又は近似しているレコードを抽出する際に、噴霧情報データベースに記憶されているデータの中に、初期設定したスプレー条件と同一又は近似しているスプレー条件を有するレコードが無い場合には、ワークの外形及び寸法とスプレーガンの可動範囲に応じて予め設定した噴霧情報を、初期設定したスプレー条件についての噴霧情報の設定値とすると良い。
【実施例0039】
本発明の塗装用データの作成方法(以下単に「データ作成方法」という。)の実施例について説明すると、本実施例のデータ作成方法は、塗装ロボットにより一度に複数のワークの塗装を行う場合に用いる塗装用データの作成方法である。より詳しくは、1又は複数個のスプレーガンを備えた塗装ロボットと、回動軸を中心に回動自在とした1又は複数個の治具と、この治具に取り付けられた複数個のワークを用いて、治具を回転することで、治具の回動軸の周囲でワークを公転させるとともに、公転しているワークに向けてスプレーガンから塗料を噴霧することでワークの塗装を行う場合に用いる塗装用データの作成方法としている。
【0040】
ここで、本実施例のデータ作成方法により塗装用データを作成するために用いるデータ作成装置を説明すると、図1は本実施例に用いるデータ作成装置を説明するブロック図であり、図において1がデータ作成装置である。そして、本実施例では、データ作成装置としてPC等のコンピュータを用いている(以下「PC」という。)。即ち、本実施例のデータ作成方法は、PC1を用いて、このPC1にデータ作成に必要な各種のソフトやデータベースファイルを記憶させた状態で実施されることとしている。
【0041】
なお、前記PC1は、一般的なPCと同様に、制御手段と演算手段を有した中央処理装置としてのCPU2を有しており、このCPU2に、キーボード、マウス、タッチペン等の入力手段としての操作部3、モニター等の出力手段としての表示部4、記憶手段5、及び電源6が接続されている。そして、記憶手段5は、RAM等の主記憶手段と、ハードディスク、SSD等の補助記憶装置としてのストレージを有している。なおその他、出力手段としてスピーカーを備えてもよく、更に、プリンターや外部機器との接続のためのインターフェースを備えていることは言うまでもない。
【0042】
次に、前記PC1を用いた本実施例のデータ作成方法について説明すると、図4は本実施例のデータ作成方法を説明するためのフローチャートであり、本実施例のデータ作成方法では、まず、予め、S1において、データベース21を作成しておく。そして、本実施例において予め作成しておくデータベースは、基本構成データベース22と噴霧情報データベース23としており、これらのデータベースは、記憶手段5にデータベースファイルとして保存される。なお図3が本実施例で予め作成されるデータベース21を示した図である。
【0043】
まず、基本構成データベース22は、塗装を行う際の基本的な構成を蓄積するデータベースであり、外形及び寸法が異なるワークごとに一つのレコードが作成され、各レコードには、ワークの外形及び寸法データと、ワークを治具に取り付ける際のワークの配置に関するデータと、前記外形及び寸法のワークを塗装する際のスプレーガンの軌道データとが記憶される。そして、本実施例では、ワークの配置に関するデータとしては、治具に取り付けるワークの個数、治具に取り付ける際のワーク間の間隔、及び、ワークが公転している際における、ワークを含む治具全体の、回動軸の軸方向に向いて見た際の直径が記憶される。但しこれらのデータに限定されることはなく、その他、更に、縦置き、平置き等のワークの取り付け方法のデータを記憶しても良い。
【0044】
次に、噴霧情報データベース23は、スプレーガンからワークに向けて噴霧された塗料粒子を表示部にバーチャルに表示するために用いられるバーチャルな噴霧情報を蓄積するデータベースであり、スプレー条件が異なるごとに一つのレコードが作成され、各レコードには、スプレー条件とそれに対応する噴霧情報が記憶される。
【0045】
そして、スプレー条件としては、少なくとも、塗料に関する条件とエアーに関する条件があり、塗料に関する条件としては、種類、吐出時間、吐出量が記憶され、エアーに関する条件としては、塗料を霧化してワークに向けて噴霧するための霧化エアーの圧力、霧化した塗料の噴霧パターンを形成するためのパターンエアーの圧力等が記憶される。
【0046】
一方、噴霧情報は、上記のスプレー条件で塗料粒子をワークに向けて噴霧した場合の塗料粒子の状態を、表示部にバーチャルに表示するために用いられる情報であり、塗料粒子の粒子速度、粒子径分布、噴霧パターン等が記憶される。そして、スプレー条件ごとの噴霧情報は、この噴霧情報を用いて流体解析を行うことで、スプレーガンからワークに向けて噴霧された塗料粒子を、表示部にバーチャルに表示するために用いられるものであり、前述したように、バーチャルな噴霧情報としている。
【0047】
なお、基本構成データベースに蓄積されるデータは、本実施例においては、作業者が実際のワークと塗装ロボット等を用いて行ったティーチングの結果のデータを用いている。
【0048】
また、噴霧情報データベースに蓄積されるデータは、スプレーガンからの塗料の噴霧を現実に行ない、その際の塗料粒子の粒子速度、粒子径分布及び噴霧パターンを計測し、その後、この計測された現実の噴霧情報を用いて、現実の塗装をバーチャルな空間で表示するために必要な、バーチャルな噴霧情報としての塗料粒子の粒子速度、粒子径分布及び噴霧パターンを算出することで得たデータを用いている(第7091161号特許公報参照)。また、噴霧情報を計測するために塗料を噴霧する際のスプレー条件は、作業者が実際のワークと塗装ロボット等を用いてティーチングを行う際のスプレー条件を参考にしている。
【0049】
次に、本実施例では、前述したデータベースを予め作成して記憶手段5に記憶させるとともに、S2において、塗装用データ作成のために必要な各種のソフトをPC1にインストールしておく。
【0050】
ここで、図2は、本実施例で用いるソフト11を示しており、これらのソフト11は、予め前記記憶手段5にインストールされる。そして本実施例においてこれらのソフトとしては、メインソフト12と、3Dソフト13と、塗装ソフト14と、ロボットコントローラーソフト15と、ティーチングペンダントソフト16を具備している。
【0051】
そして、メインソフト12は、本実施例のデータ作成方法を実施するための主な手順等を記憶したソフトとしており、ロボットコントローラーソフト15は、塗装ロボットの作動を制御するために用いられるロボットコントローラーと同等の機能を有するソフトとしている。また、ティーチングペンダントソフト16は、ロボットコントローラーに塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道データを教示するティーチングペンダントと同等の機能を有するソフトとしている。更に3Dソフト13は、表示部4に塗装ロボットとワークを3Dで表示する機能を有するソフトとしている。更にまた、塗装ソフト14は、本実施例においては、軌道データに従った塗料噴霧のシミュレーションを表示部4でバーチャルに行うために用いることとしている。
【0052】
次に、本実施例のデータ作成方法では、S3において初期設定を行う。即ち、操作部3を用いて、塗装を行うための各種データを設定する。そしてその設定を受けてCPU2が、設定したデータを設定値として記憶手段5に記憶する。
【0053】
ここで、初期設定する各種データについて説明すると、本実施例において初期設定するデータとしては、塗装ロボットに関する基本データと、塗装対象のワークに関する基本データと、塗装ロボットとワークの位置データと、スプレーガンとワークとの距離データと、塗料を噴霧する際のスプレー条件としている。
【0054】
そして、塗装ロボットに関する基本データとしては、塗装ロボットの外形、機構、寸法等のデータとしており、ワークに関する基本データとしては、ワークの外形、寸法等のデータとしている。
【0055】
なお、本実施例では、表示部4に、初期設定する項目と初期設定値を入力する入力欄を表示し、初期設定を行う場合は、初期設定する値を入力欄に直接入力することで、入力された値を設定値とし、これにより、入力欄に入力することで初期設定した設定値を、そのまま表示部4に表示することとしている。しかしこの方法には限定されず、予め、初期設定するデータを作成して保存しておき、その保存してあるデータを呼び出して、その呼び出したデータを設定値として、表示部4の初期設定値の欄に表示してもよい。そしてこのとき、予め初期設定用に作成したデータは、PC1の記憶手段5に保存しておいてもよく、あるいは、フラッシュメモリー等の外部記憶手段に保存しておいてもよい。また、初期設定用に作成したデータを外部記憶手段に保存した場合は、初期設定する際に、外部記憶手段をPCに接続して、その接続した外部記憶手段のデータを読み出してもよく、あるいは、外部記憶手段のデータを一旦PCに保存し、その保存したデータから読み出してもよい。
【0056】
また、ワークに関する基本データを初期設定する場合は、PC1にスキャナーを接続してワークをスキャンし、それで得られた外形、寸法等のデータを表示部4に表示してもよい。更に、初期設定用に予めワークに関する基本データを作成しておく場合も、スキャナーでワークをスキャンすることで、ワークの基本データを得てもよい。
【0057】
次に、S4においてCPU2は、初期設定されたデータと前記予め作成したデータベースを用いて、初期設定されたデータと同一又は近似しているデータを有するレコードをデータベースから抽出し、抽出したレコードのデータの中で、塗装に必要なものを設定値として記憶手段5に記憶する。
【0058】
まず、前記初期設定したワークの外形、寸法を用いて基本構成データベースを検索し、基本構成データベースに蓄積されているデータの中から、初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似しているワークの外形、寸法を有するレコードを抽出する。そして、抽出したレコード内の、ワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データを、ワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データに関する設定値とし、記憶手段5に記憶する。また、設定値として記憶手段5に記憶したワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データを、表示部4に表示した初期設定値とともに、表示部4に表示する。
【0059】
次に、前記初期設定したスプレー条件を用いて噴霧情報データベースを検索して、噴霧情報データベースに蓄積されているデータの中から、初期設定したスプレー条件と同一又は近似しているスプレー条件を有するレコードを抽出する。そして、抽出したレコード内の噴霧情報を、噴霧情報の設定値として記憶手段5に記憶するとともに、設定値として記憶手段5に記憶した噴霧情報を、表示部4に表示した初期設定値とともに、表示部4に表示する。
【0060】
次に、S5において、3Dソフト13が、記憶手段5に記憶したデータを用いて、塗装ロボットやワークを表示部4に表示させるための3D表示データを作成する。そして3D表示データを作成するために用いるデータとしては、初期設定して記憶手段5に記憶したデータと、基本構成データベースと噴霧情報データベースから抽出したレコードのデータの中で設定値として記憶手段5に記憶したデータとしている。
【0061】
即ち、初期設定したデータとしては、塗装ロボットに関する、外形、機構、寸法等の基本データと、ワークに関する、外形、寸法等の基本データと、塗装ロボットとワークの位置データと、スプレーガンとワークとの距離データ、及びスプレー条件としている。
【0062】
また、データベースから抽出したレコード内のデータとしては、基本構成データベースから抽出したレコードの、ワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データ、及び、噴霧情報データベースから抽出したレコードの、噴霧情報としている。
【0063】
次に3Dソフト13は、S6において、前記3D表示データを用いて、表示部4に、塗装ロボットとワークを3Dまたは2Dで表示する。そして、ワークの表示は、ワークの配置に関する設定値に従った状態で、治具に取り付けられた表示とする。即ちワークは、設定された個数が、設定された間隔で、ワークを含む治具全体の回動軸の軸方向で見た際の直径が設定された直径になるようにして、また適宜、設定された取り付け方法(縦置き、平置き)で治具に取り付けられた状態で、表示される。
【0064】
そして、その状態において、操作部3を用いた指示があった場合に、S7において、スプレーガンと、治具及びワークを、動画表示する。即ち、ワークを取り付けた状態の治具を回転させ、それにより、治具の回転に伴って治具の回転軸の周囲で公転するワークを、回転する治具とともに表示部4に動画で表示する。また、それとともに、設定値とされたスプレーガンの軌道データに従い、スプレーガンを移動させながら動画表示する。更に、その動画表示とともに、本実施例のデータ作成方法では、記憶手段5に記憶した噴霧情報に基づき、スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子を表示する。そしてこれにより、ティーチングのシミュレーションを行う。
【0065】
更にまた、本本実施例では、S8において、塗装が完了した後にワークに塗着した塗料の状態を表示することとしている。
【0066】
なお、スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子の表示は、静止画で表示してもよいが、動画で表示してもよく、動画で表示することで、より現実に即したティーチングのシミュレーションを行うことができる。
【0067】
そして動画で表示する場合には、記憶手段5に記憶した噴霧情報に基づき、噴霧された塗料粒子の流体解析を行い、その解析結果に従って、スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子を表示部4に動画で表示すると良い。
【0068】
なお、流体解析に関しては、流体解析ソフトを用いて行われており、流体解析方法には種々の方法があるため、具体的な計算方法等の詳細は省略するが、一例としては、スプレーガンとワーク間の空間を要素に分け、その間を計算させることで、塗料粒子の移動をバーチャルとして実現する方法が考えられる。また、流体解析には時間がかかるため、予め噴霧情報に対応した流体解析を行いその解析結果データをPC1や外部記憶装置やデータベースに記憶させておき、その記憶させたおいたデータを用いて動画表示してもよい。またデータベースに記憶しておく場合には、噴霧情報データベースに、スプレー条件や噴霧情報とともに、記憶させておいてもよい。
【0069】
また、記憶手段に記憶される噴霧情報には、噴霧した場合を画面でバーチャルに再現するために用いられる粒子速度、粒子径分布、噴霧パターン等の情報があるために、これらの情報を用いることにより、ワークに塗着した塗料の状態を知ることができるので、本実施例では、S8において、ワークに塗着した塗料の状態を表示することとしている。即ち、スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子を動画で表示した場合は、動画が終了した後に、ワークに塗着した塗料の状態を表示することとしている。また、スプレーガンからワークに向けて噴霧されてワークに塗着していく塗料粒子の表示を静止画で表示する場合は、静止画の表示とともに、塗装が完了した後にワークに塗着した塗料の状態を表示部上に表示することとしている。
【0070】
そして本実施例では、塗装が完了した後にワークに塗着した塗料の状態を表示部上に表示した際において、画面上のワークの任意の箇所をマウスでなぞった場合に、当該箇所の塗料の平均膜厚を計算して、計算した平均膜厚を画面に、数値又はグラデーションで表示することとしている。従って、これにより、平均膜厚を数値や色彩で把握することが可能である。
【0071】
次に、S7、8において表示部4における表示を視認した後に、少なくともワークの配置、スプレーガンの軌道、噴霧された塗料粒子の表示、又は塗装完了後にワークに塗着した塗料の状態のいずれかに不備がある場合は、S9において、不備のあるデータの修正を行う。
【0072】
即ち、ワークの配置又はスプレーガンの軌道に不備がある場合は、設定値として記憶手段に記憶させたワークの配置に関するデータ、スプレーガンの軌道データの中の、不備があるデータを修正する。また、噴霧された塗料粒子の表示又は塗装完了後にワークに塗着した塗料の状態に不備がある場合は、設定値として記憶手段に記憶させたスプレー条件、又は噴霧情報のデータの中の不備があるデータを修正する。
【0073】
そして、データの修正は、ワークの配置、スプレー条件、噴霧情報等を修正する場合には、表示部4に表示した設定値の欄の値を直接修正可能とし、表示部4の画面でデータを修正入力することとしており、それを受けて、CPU2が設定値を修正するとともに、記憶手段5に記憶させてある設定値のデータを書き換えることとしている。
【0074】
一方、軌道データを修正する場合には、修正ボタンの押下又はクリック等により軌道データを修正する旨の指示が与えられると、CPU2がティーチングペンダントソフト16を起動して、表示部4に、少なくともティーチングに必要な矢印キー及び確定キーを具備したティーチングペンダントを表示し、表示された矢印キー及び確定キーを操作することによって、塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道をロボットコントローラーソフト15に教示することとしている。
【0075】
即ち、表示された矢印キー及び確定キーを操作すると、スプレーガンの軌道が前記ロボットコントローラーソフト15に教示され、ロボットコントローラーソフト15はその情報を3Dソフト13に伝える。そうすると、3Dソフト13は、ロボットコントローラーソフト15からの指示に従い、スプレーガンの表示位置を新たな位置に変更し、更にそれとともに、新たな位置におけるスプレーガンとワークとの距離を計算する。また、ティーチングペンダントにおける確定キーの選択により軌道が確定したときは、その軌道データがロボットコントローラーソフトに伝えられ、その位置が新たな設定値として記憶手段5に記憶されて軌道データが書き換えられる。従って、これにより、ティーチングに基づく塗装ロボットの稼働状況を表示部4で確認することができるので、表示部4に表示された塗装ロボットのスプレーガン及びワークを見ながら、軌道データの修正を行うことができる。
【0076】
次に、このように不備のあるデータを修正した後に、新たな設定値を反映させて、S5における3D表示データの作成、S6における塗装ロボットとワークの表示、及び、S7、8におけるティーチングのシミュレーションを再度行う。そして以後は、シミュレーション後の不備の確認、不備がある場合の不備のあるデータの修正、S5における3D表示データの作成、S6における塗装ロボットとワークの表示、及び、S7、8におけるティーチングのシミュレーションを、不備が無くなるまで繰り返す。
【0077】
なお、図5は表示部4を説明するための図であり、図において32は、初期設定値等の設定値を表示または入力する部分であり、33は塗装ロボットやワーク、治具を表示するための3D表示部であり、34がワーク、35が治具、36がスプレーガンである。そして、治具35は、回動軸によってテーブル37に回動自在に支持されている。また、38は、軌道データを修正する旨の指示により表示されるティーチングペンダント画面であり、図示は省略するが、この画面においては、少なくともティーチングに必要な矢印キー及び確定キーを具備したティーチングペンダントが表示される。
【0078】
次に、ワークの配置、スプレーガンの軌道、及び塗装完了後にワークに塗着した塗料の状態の表示のいずれにも不備が無くデータの修正を行わなかった場合、又は、不備があったが修正により不備が無くなった場合は、S10において、設定値として記憶手段5に記憶した各種データの保存を行う。即ち、設定値として記憶手段5に記憶したデータとしては、初期設定したデータと、データベースから抽出したデータがあり、初期設定したデータとしては、少なくとも、塗装ロボットに関する基本データ、ワークに関する基本データ、及びスプレー条件があり、データベースから抽出したデータとしては、ワークの配置に関するデータ、スプレーガンの軌道データ、及び噴霧条件があるが、S10においては、これらのデータを、初期設定したワークを塗装する際の塗装用データとして、記憶手段5に記憶して保存し、これにより塗装用データの作成が完了する。そして、保存したデータは、他のPC、外付けのハードディスク、ロボットコントローラー、USBメモリ等に移動して、実際のワークの塗装の際に使用できるようにする。
【0079】
また、本実施例では、少なくともワークの配置又はスプレーガンの軌道に不備があり、記憶手段5に記憶したワークの配置に関するデータ又はスプレーガンの軌道データ中の不備があるデータを修正した場合には、初期設定した外形及び寸法を有するワークについて、基本構成データベースに新規レコードとして追加する。そして、ワークの配置に関するデータ及びスプレーガンの軌道データに関する設定値を、新規追加したレコードにおけるワークの配置に関するデータ及びスプレーガンの軌道データとする。そして、それにより、基本構成データベースの蓄積データを増やすことを可能としている。
【0080】
更に、それとともに本実施例では、少なくとも塗装完了後にワークに塗着した塗料の状態に不備があり、記憶手段5に記憶したスプレー条件又は噴霧情報の中の不備があるデータを修正した場合は、修正後の記憶手段5に記憶されているスプレー条件について噴霧情報データベースに新規レコードを追加する。そして、設定値の噴霧情報を、新規追加したレコードの噴霧情報とする。そして、それにより、噴霧情報データベースの蓄積データを増やすことを可能としている。
【0081】
なお、本実施例では、S4において、基本構成データベースに蓄積されているデータの中から、初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似しているワークの外形、寸法を有するレコードを抽出し、そのレコード内のワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データを記憶手段5に記憶することしているが、蓄積データが少ない場合には、基本構成データベースに記憶されているデータの中に、初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似している外形、寸法のワークを有するレコードが無い場合が考えられる。そこで、本実施例では、初期設定したワークの外形、寸法と同一又は近似している外形、寸法のワークを有するレコードが無い場合には、予め設定したロジックにより、ワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データの設定値を決めることとしている。
【0082】
即ち、ワークの配置とスプレーガンの軌道は、ワークの外形及び寸法、スプレーガンの可動範囲によって決定される。そこで本実施例では、ワークの外形及び寸法、スプレーガンの可動範囲に応じたワークの配置及びスプレーガンの軌道の決定手順を予め定めておき、初期設定されたワークの基本データと、初期設定された塗装ロボットの基本データに基づくスプレーガンの可動範囲を用いて、予め定めた手順に従い、ワークの配置及びスプレーガンの軌道を決めて、設定値にすることとしている。例えばワークの外形及び寸法とスプレーガンの可動範囲に応じて、ワークがスプレーガンの可動範囲に入るように、ワークの個数や配置方法を決める手順やテーブルを予め定めておく。
【0083】
また、本実施例では、スプレー条件に応じた噴霧情報の算出手順を予め定めておき、初期設定したスプレー条件と同一又は近似しているスプレー条件が噴霧情報データベースに蓄積されているデータの中に無い場合には、初期設定されたスプレー条件に応じて、予め定めた手順に従って算出した噴霧情報を噴霧情報の設定値としている。例えば、スプレー条件に従って噴霧した塗料粒子を画面でバーチャルに再現するために必要な粒子速度、粒子径分布、噴霧パターンを、スプレー条件に対応して算出できるようなロジックやテーブルを予め設定しておく。
【0084】
このように本実施例の塗装用データの作成方法では、予め、ワークの配置に関するデータとスプレーガンの軌道データを蓄積した基本構成データベースと、スプレー条件に対応した噴霧情報を蓄積した噴霧情報データベースを作成しておき、初期設定されたワークの基本データとスプレー条件を用いて、予め作成したデータベースから同一又は近似しているワーク及びスプレー条件のレコードを抽出し、その抽出したデータを用いて、スプレーガンやワークを動画表示するとともに、スプレーガンから噴霧されてワークに向けて移動している塗料粒子を動画で表示することとしている。
【0085】
従って、本実施例の塗装用データの作成方法では、スプレーガンの軌道のティーチングやワークの配置を行うことなく、塗装のシミュレーションを行うことができるので、ティーチングに必要な作業時間を短縮することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の塗装用データの作成方法では、ティーチングを行うことなくシミュレーションを行うことを可能にしているため、塗装ロボットによる塗装に用いる塗装用データの作成方法の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 データ作成装置(PC)
2 CPU
3 操作部
4 表示部
5 記憶手段(RAM、ストレージ等)
6 電源
11 メインソフト
12 3Dソフト
13 塗装ソフト
14 ティーチングソフト
15 ロボットコントローラーソフト
16 ティーチングペンダントソフト
21 基本構成データベース
22 噴霧情報データベース
32 数値表示部
33 3D画面
34 ワーク
35 治具
36 スプレーガン
37 テーブル
38 ティーチングペンダント画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6