(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092764
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】燃料噴射ポンプの制御装置およびエンジン
(51)【国際特許分類】
F02D 1/10 20060101AFI20240701BHJP
F16H 21/10 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
F02D1/10 Z
F16H21/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208908
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】武井 克典
(72)【発明者】
【氏名】下村 亮介
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA02
3J062AB27
3J062AC07
3J062BA16
(57)【要約】
【課題】部品摩耗を低減することのできる燃料噴射ポンプの制御装置およびエンジンを提供する。
【解決手段】制御装置30は、ソレノイド31と、ソレノイド31と燃料噴射ポンプ20が有するストップレバー21とを連結するリンク機構32とを備える。リンク機構32は、ソレノイド31の可動軸311に接続され、可動軸311と一体的にスライド移動するスライドピン321を有する。制御装置30は、さらに、スライドピン321のスライド移動を下方から支える支持ピン331を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに備えられた燃料噴射ポンプに対して制御を行う制御装置であって、
ソレノイドと、
前記ソレノイドと前記燃料噴射ポンプが有する燃料噴射制御レバーとを連結するリンク機構とを備え、
前記リンク機構は、前記ソレノイドに接続されるスライド部材を有しており、
さらに、前記スライド部材を下方から支える支持部材を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記リンク機構は、前記スライド部材のスライド移動に伴って回動移動する回動部材と、前記スライド部材に対して一体的にスライド移動するとともに、前記回動部材に設けられた長孔に挿通されることで、前記スライド部材のスライド変位を前記回動部材の回動変位に変換する連結部材とを有していることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記長孔は、長手軸が途中で屈曲した曲げ長孔に形成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置であって、
さらに、前記スライド部材に対して上方から接触する当接部材を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
燃料噴射ポンプと、前記燃料噴射ポンプに対して制御を行う制御装置とを備えるエンジンであって、
前記制御装置は、請求項1から4の何れかに記載の制御装置であり、当該エンジンのブラケットを介して当該エンジンに取り付けられていることを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料噴射ポンプの制御装置、並びにこれを備えたエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンの燃料噴射ポンプにおける燃料噴射を制御するレバー(燃料噴射制御レバー)を、リンク機構を介してアクチュエータ(ソレノイド等)で移動させ、燃料噴射の制御を行う技術が開示されている。このような技術では、アクチュエータおよび燃料噴射ポンプのレイアウトやこれらを連結するリンク機構は、エンジンの機種毎に設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクチュエータおよびリンク機構からなる構成を燃料噴射ポンプの制御装置として使用する場合、繰り返しの動作によって制御装置における部品摩耗が発生し、燃料噴射が正確に制御できなくなる懸念がある。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、部品摩耗を低減することのできる燃料噴射ポンプの制御装置およびエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の第1の態様である制御装置は、エンジンに備えられた燃料噴射ポンプに対して制御を行う制御装置であって、ソレノイドと、前記ソレノイドと前記燃料噴射ポンプが有する燃料噴射制御レバーとを連結するリンク機構とを備え、前記リンク機構は、前記ソレノイドに接続されるスライド部材を有しており、さらに、前記スライド部材を下方から支える支持部材を備えることを特徴としている。
【0007】
上記の構成によれば、支持部材がスライド部材を下方から支えることで、ソレノイドの可動軸がスライド部材の自重によって下方に傾くことを防止できる。ソレノイドの可動軸が傾くとソレノイド内部での部品摩耗が生じやすくなるので、この傾きを防止することでソレノイドの部品摩耗を抑制することができる。
【0008】
また、上記制御装置では、前記リンク機構は、前記スライド部材のスライド移動に伴って回動移動する回動部材と、前記スライド部材に対して一体的にスライド移動するとともに、前記回動部材に設けられた長孔に挿通されることで、前記スライド部材のスライド変位を前記回動部材の回動変位に変換する連結部材とを有している構成とすることができる。
【0009】
また、上記制御装置では、前記長孔は、長手軸が途中で屈曲した曲げ長孔に形成されている構成とすることができる。
【0010】
上記の構成によれば、スライド部材のスライド移動範囲の両端において、長孔の内壁と連結部材との接点における接線が、スライド部材のスライド移動方向に直交するようにすることができ、連結部材が長孔の内壁に沿って移動してソレノイドの可動軸を傾かせることを抑制できる。ソレノイドの可動軸が傾くとソレノイド内部での部品摩耗が生じやすくなるので、この傾きを防止することでソレノイドの部品摩耗を抑制することができる。
【0011】
また、上記制御装置は、さらに、前記スライド部材に対して上方から接触する当接部材を備える構成とすることができる。
【0012】
上記の構成によれば、スライド部材が当接部材に接触することで、スライド部材の持ち上がりを防止し、スライド部材に接続されたソレノイドの可動軸の傾きを防止することができる。この傾きを防止することでソレノイドの部品摩耗を抑制することができる。
【0013】
また、本開示の第2の態様であるエンジンは、燃料噴射ポンプと、前記燃料噴射ポンプに対して制御を行う制御装置とを備えるエンジンであって、前記制御装置は、上記記載の制御装置であり、当該エンジンのブラケットを介して当該エンジンに取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本開示の燃料噴射ポンプの制御装置およびエンジンは、支持部材がスライド部材のスライド移動を下方から支えることで、ソレノイドの可動軸がスライド部材の自重によって下方に傾くことを防止でき、この傾きに起因するソレノイドの部品摩耗を抑制することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の制御装置が適用されるエンジンの外観を示す斜視図である。
【
図2】燃料噴射ポンプと制御装置とを抜き出し、燃料噴射ポンプの背面側から見た斜視図である。
【
図4】連結軸によるスライドピンと第1リンク板および第2リンク板との連結機構を示す平面図である。
【
図5】ソレノイドの通電時におけるスライドピンと連結軸との状態を示す平面図である。
【
図6】制御装置における部品摩耗の課題を説明するためのスライドピン付近の拡大模式図であり、ソレノイドにおける非通電時の状態を示す。
【
図7】制御装置における部品摩耗の課題を説明するためのスライドピン付近の拡大模式図であり、ソレノイドにおける通電時の状態を示す。
【
図8】実施の形態1の制御装置におけるスライドピン付近の拡大模式図であり、ソレノイドにおける非通電時の状態を示す。
【
図9】実施の形態1の制御装置におけるスライドピン付近の拡大模式図であり、ソレノイドにおける通電時の状態を示す。
【
図10】制御装置における部品摩耗の課題を説明するためのスライドピン付近の拡大模式図であり、ソレノイドにおける通電時の状態を示している。
【
図11】実施の形態2の制御装置におけるスライドピン付近の拡大模式図であり、ソレノイドにおける非通電時の状態を示す。
【
図12】実施の形態2の制御装置におけるスライドピン付近の拡大模式図であり、ソレノイドにおける通電時の状態を示す。
【
図13】実施の形態3の制御装置におけるスライドピン付近の拡大模式図であり、ソレノイドにおける非通電時の状態を示す。
【
図14】実施の形態3の制御装置におけるスライドピン付近の拡大模式図であり、ソレノイドにおける通電時の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施の形態1〕
以下、本開示の制御装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本開示の制御装置30が適用されるエンジン10の外観を示す斜視図である。
図2は、燃料噴射ポンプ20と制御装置30とを抜き出し、燃料噴射ポンプ20の背面(エンジン本体との対向面)側から見た斜視図である。尚、ここでは説明の便宜上、エンジン本体に対して燃料噴射ポンプ20が配置されている側を正面とする。
【0017】
図1に示すように、エンジン10は燃料噴射ポンプ20を有しており、燃料噴射ポンプ20には制御装置30が接続されている。具体的には、
図2に示すように、燃料噴射ポンプ20にはストップレバー(燃料噴射制御レバー)21が設けられており、制御装置30はストップレバー21の移動制御が行えるようにストップレバー21に接続されている。ストップレバー21は、回動することによって燃料噴射ポンプ20の燃料噴射の実行と停止とを切り替えるものである。尚、ここでの回動とは、両方向に回転可能で角度範囲が制限されている回転運動を意味するものとする。制御装置30は、通電時にストップレバー21を噴射実行側へ移動させてエンジン10を駆動可能とし、非通電時にストップレバー21を噴射停止側へ移動させてエンジン10を停止させる。
【0018】
続いて、制御装置30の基本構成および基本動作を説明する。
図3は、制御装置30のみを抜き出して示す斜視図である。
図3に示すように、制御装置30は、ソレノイド31、リンク機構32および保持部材33を有している。ソレノイド31は、制御装置30の駆動源であり、ここではプル式(通電時に可動軸311をスリーブ312側に引き込む)のソレノイドを使用している。リンク機構32は、ソレノイド31とストップレバー21とを連結し、ソレノイド31の駆動によってストップレバー21の位置を切り替える。具体的には、リンク機構32は、ソレノイド31における可動軸311の直線変位をストップレバー21の回動変位に変換する。保持部材33は、ソレノイド31とリンク機構32とを所定の位置関係で保持する部材である。
【0019】
ソレノイド31は、可動軸311とスリーブ312とを有し、スリーブ312に対して可動軸311をスライド移動させるアクチュエータである。ソレノイド31は、スリーブ312が保持部材33において固定されている。
【0020】
リンク機構32は、スライドピン(スライド部材)321、第1リンク板(回動部材)322、第2リンク板(回動部材)323、回転軸324、連結軸(連結部材)325および伝達ロッド326を有している。
【0021】
スライドピン321は、ソレノイド31の可動軸311に接続され、可動軸311と一体的にスライド移動する部材である。より詳細には、スライドピン321の長手軸と可動軸311の長手軸とが平行となるようにスライドピン321と可動軸311とが接続され、スライドピン321はその長手軸方向に沿ってスライド移動可能である。
【0022】
第1リンク板322および第2リンク板323は、スライドピン321のスライド移動に伴って回動移動する部材である。第1リンク板322および第2リンク板323は、回転軸324に対して回転自在に軸支されており、両リンク板の主面が互いに平行となり、かつ、両リンク板の間にスライドピン321を挟み込むように配置される。回転軸324は、保持部材33において固定されている。
【0023】
連結軸325は、スライドピン321と第1リンク板322および第2リンク板323とを連結する部材である。
図4は、連結軸325によるスライドピン321と第1リンク板322および第2リンク板323との連結機構を示す平面図である。
【0024】
図4に示すように、スライドピン321の先端側(ソレノイド31と反対側)には、径の小さい小径部321aが設けられており、この小径部321aが連結軸325に設けられた貫通孔325aに挿通している。さらに、小径部321aにおける連結軸325よりも先端側には、圧縮バネS、ワッシャWおよび止め輪Rが配置されている。具体的には、連結軸325とワッシャWとの間に圧縮バネSを配置するとともに、ワッシャWの外側(先端側)に止め輪Rを配置し、ワッシャWおよび圧縮バネSが小径部321aから抜け落ちないようにされている。
【0025】
この場合、連結軸325が圧縮バネSから付勢力を受けて小径部321aの根本側の段差に押し当てられ、スライドピン321の移動範囲の大半でスライドピン321と連結軸325と相対的な位置関係が保持される。また、
図5に示すように、ソレノイド31が通電されてスライドピン321がスリーブ312側に引き込まれた状態では、連結軸325が圧縮バネSの付勢力に抗して先端側に幾分移動することも可能である。これにより、ソレノイド31への通電時に、スライドピン321と連結軸325との間に遊びを生じさせることができる。すなわち、ストップレバー21が噴射実行位置に到達して移動停止した後も、スライドピン321は上記遊びによって若干移動することが可能であり、ストップレバー21を噴射実行位置まで確実に移動させることが容易となる。
【0026】
また、連結軸325は、第1リンク板322および第2リンク板323のそれぞれに設けられた長孔322a,323a(
図6~9等参照)に挿通するように配置されている。これにより、連結軸325は長孔322a,323aを介して第1リンク板322および第2リンク板323に力を伝達でき、連結軸325の直線変位が第1リンク板322および第2リンク板323の回動変位に変換される。また、第1リンク板322および第2リンク板323の回動は、常に一体的に生じるものであり、第1リンク板322および第2リンク板323の相対位置は回動によって変化しない。
【0027】
第1リンク板322および第2リンク板323の一方のリンク板(ここでは第1リンク板322)は、他方のリンク板(ここでは第2リンク板323)よりも長く形成されており、回転軸324を間に挟んだ一端側に連結軸325が接続されており、他端側に伝達ロッド326が接続されている。伝達ロッド326は、一端が第1リンク板322に接続され、他端が燃料噴射ポンプ20のストップレバー21に接続される。これにより、第1リンク板322が回動すると、伝達ロッド326を介してストップレバー21に動きが伝達され、ストップレバー21を噴射実行位置と噴射停止位置との間で移動させることが可能となる。尚、伝達ロッド326は、第1リンク板322およびストップレバー21に対して、第1リンク板322およびストップレバー21の回動面内において回転可能に取り付けられる。
【0028】
本実施の形態1に係る制御装置30は、繰り返し動作による部品摩耗を抑制するために、保持部材33に支持ピン(支持部材)331を設けたことを特徴の一つとしている。言い換えれば、制御装置30に支持ピン331を設けない場合は、部品摩耗の課題がある。先ずは、支持ピン331を設けない場合の部品摩耗の課題について、
図6および
図7を参照して説明する。
図6および
図7は、制御装置30における部品摩耗の課題を説明するためのスライドピン321付近の拡大模式図であり、
図6はソレノイド31における非通電時の状態、
図7はソレノイド31における通電時の状態を示している。尚、
図6および
図7に示す構成は、支持ピン331を含まない点以外、上述した制御装置30と同様の構成であるため、制御装置30と同一の部材には同じ部材番号を付して説明する。また、
図6および
図7におけるソレノイド31は断面を示している。
【0029】
上述したように、第1リンク板322および第2リンク板323のそれぞれには長孔322a,323aが設けられており、連結軸325は長孔322a,323aに挿通して配置されている。連結軸325は、制御装置30の駆動時において、長孔322a,323a内で変位することで、第1リンク板322および第2リンク板323に対する相対位置が変化する。
【0030】
ソレノイド31はスリーブ312の内部にガイド穴312aを有しており、可動軸311はガイド穴312aに沿ってスライド移動するようになっている。ソレノイド31では、可動軸311のスライド移動がスムーズに生じるように、ガイド穴312aの内径が可動軸311の外径よりも僅かに大きくされている。尚、ソレノイド31は、スリーブ312の内部に、可動軸311を付勢するためのスプリングや可動軸311の駆動力(電磁力)を発生させるためコイル等も有しているが、
図6および
図7ではスプリングおよびコイルの図示を省略している。
【0031】
ソレノイド31において、可動軸311におけるスライド移動をスムーズに行わせるためには、ガイド穴312aの長手軸と可動軸311の長手軸とが互いに平行になっていることが好ましい。ソレノイド31の非通電時、すなわち可動軸311がスリーブ312から押し出されている状態では、
図6に示すように、連結軸325が長孔322a,323aの最下部に位置しており、連結軸325は長孔322a,323aによって支えられている。このとき、可動軸311は、連結軸325およびスライドピン321を介して長孔322a,323aによって支えられ、ガイド穴312aに対して長手軸同士が平行となる状態が維持される。
【0032】
一方、ソレノイド31の通電時、すなわち可動軸311がスリーブ312に引き込まれている状態では、
図7に示すように、連結軸325が長孔322a,323aの最下部に位置しておらず、長孔322a,323aは連結軸325を支えていない。その結果、可動軸311は、これに接続されたスライドピン321および連結軸325の自重によって先端側が下がるように傾き、ガイド穴312aの長手軸と可動軸311の長手軸とが平行でなくなる。無論、
図7に示すような可動軸311が傾いた状態は、可動軸311がスリーブ312内に完全に引き込まれた状態でのみ発生するものではなく、可動軸311がその近辺の移動範囲内にある状態でも生じる。
【0033】
このように、可動軸311の先端側が下がるように傾くことで、逆に可動軸311の根本側が持ち上がり、ガイド穴312aの内部では可動軸311の後端部がガイド穴312aの内壁に接触する。このような接触が生じた状態で可動軸311のスライド移動を繰り返し行うと、接触箇所での部品摩耗が促進されることになり、ソレノイド31の動作不良、ひいては制御装置30による燃料噴射ポンプ20の制御不良の発生が生じる虞がある。
【0034】
次いで、支持ピン331を設けた場合の作用について、
図8および
図9を参照して説明する。
図8および
図9は、本実施の形態1の制御装置30におけるスライドピン321付近の拡大模式図であり、
図8はソレノイド31における非通電時の状態、
図9はソレノイド31における通電時の状態を示している。
【0035】
図8および
図9に示すように、支持ピン331は、ソレノイド31の非通電時および通電時の何れにおいても、スライドピン321に対して、より詳細には小径部321aに対して下側で接するように配置されている。これにより、支持ピン331は、スライドピン321のスライド移動を常に下方から支えることができる。その結果、スライドピン321および連結軸325の自重によって可動軸311が傾くことを防止でき、ガイド穴312aの長手軸と可動軸311の長手軸とが互いに平行となる状態を保持でき、ソレノイド31の部品摩耗を抑制することができる。
【0036】
尚、支持ピン331は、スライドピン321との接触による摩耗を抑制するため、スライドピン321との接触箇所に、スライドピン321のスライド移動に対して従動回転可能なローラ331a(
図3参照)が設けられていてもよい。
【0037】
〔実施の形態2〕
本実施の形態2に係る制御装置30は、繰り返し動作による部品摩耗を抑制するために、第1リンク板322および第2リンク板323に設けられる長孔322a,323aの形状を工夫した点を他の特徴としている。言い換えれば、長孔322a,323aの形状によっては、部品摩耗の課題がある。先ずは、部品摩耗の課題を発生させる長孔322a,323aの形状について、
図10を参照して説明する。
図10は、部品摩耗の課題を説明するためのスライドピン321付近の拡大模式図であり、ソレノイド31における通電時の状態を示している。
【0038】
図10に示す状態では、ソレノイド31の通電によってスライドピン321がスリーブ312側に引き込まれ、このとき、連結軸325は圧縮バネSの付勢力F1によって長孔322a,323aの内壁、詳細にはスライドピン321の引き込み側の内壁に押し付けられる。また、圧縮バネSの付勢力F1は、スライドピン321の長手軸と平行な方向に作用する。
【0039】
ソレノイド31の非通電時において、スライドピン321の長手軸と、長孔322a,323aの内壁(詳細には連結軸325との接点における接線)とは直交している(
図6,8参照)。一方、ソレノイド31の通電時においては、
図10に示すように、スライドピン321の長手軸に対して長孔322a,323aの内壁が直交せず、幾分傾いた状態となる。そのため、圧縮バネSの付勢力F1は、長孔322a,323aの内壁に直交する方向の分力F2と、長孔322a,323aの内壁に平行な方向の分力F3とに分けることができる。
【0040】
このため、ソレノイド31の通電時において、付勢力F1を受ける連結軸325は、分力F3によって長孔322a,323a内で変位する。
図10の例では、連結軸325は、長孔322a,323aに沿って上方に変位する。この長孔322a,323a内での連結軸325の変位に伴い、スライドピン321および可動軸311は先端側が持ち上がるように傾き、ガイド穴312aの長手軸と可動軸311の長手軸とが平行でなくなる。
【0041】
このように、可動軸311の先端側が持ち上がるように傾くことで、逆に可動軸311の根本側が下がり、ガイド穴312aの内部では可動軸311の後端部がガイド穴312aの内壁に接触する。このような接触が生じた状態で可動軸311のスライド移動を繰り返し行うと、接触箇所での部品摩耗が促進されることになり、ソレノイド31の動作不良、ひいては制御装置30による燃料噴射ポンプ20の制御不良の発生が生じる虞がある。
【0042】
次いで、長孔322a,323aの形状を工夫することで上記課題を解決する場合の作用について、
図11および
図12を参照して説明する。
図11および
図12は、本実施の形態2の制御装置30におけるスライドピン321付近の拡大模式図であり、
図11はソレノイド31における非通電時の状態、
図12はソレノイド31における通電時の状態を示している。
【0043】
図11および
図12の構成において、長孔322a,323aは、その長手軸が1本の直線状ではなく、途中で屈曲している。これにより、長孔322a,323aは、略「く」の字型に曲がった曲げ長孔として形成されている。長孔322a,323aは、スライドピン321のスライド移動範囲の両端において、長孔322a,323aの内壁と連結軸325との接点における接線を、スライドピン321のスライド移動方向に直交させることができる。
【0044】
図11に示すように、ソレノイド31の非通電時において、スライドピン321の長手軸と、長孔322a,323aの内壁と連結軸325との接点における接線L1とは直交する。すなわち、接線L1は、スライドピン321のスライド移動方向に直交する。さらに、長孔322a,323aを曲げ長孔とすることで、ソレノイド31の通電時においても、
図12に示すように、スライドピン321の長手軸と、長孔322a,323aの内壁と連結軸325との接点における接線L2とを直交させる(すなわち、接線L2をスライドピン321のスライド移動方向に直交させる)ことができる。これにより、圧縮バネSの付勢力F1において、長孔322a,323aの内壁に平行な方向の分力F3が発生することを防止でき、可動軸311の先端側が上がるように傾くことを防止して、ソレノイド31の部品摩耗を抑制することができる。
【0045】
尚、連結軸325は、長孔322a,323aとの接触による摩耗を抑制するため、例えば、硬質クロムメッキ等による摩耗抑制の対策が講じられていることが好ましい。あるいは、長孔322a,323aとの接触箇所に、長孔322a,323a内での摺動移動に対して従動回転可能なローラが設けられていてもよい。
【0046】
〔実施の形態3〕
本実施の形態3では、上記実施の形態2で説明した可動軸311の先端側の持ち上がりを防止することのできる他の構成について説明する。
図13および
図14は、本実施の形態3の制御装置30におけるスライドピン321付近の拡大模式図であり、
図13はソレノイド31における非通電時の状態、
図12はソレノイド31における通電時の状態を示している。
【0047】
図13および
図14に示す構成では、スライドピン321のスライド移動範囲の全体で、スライドピン321の小径部321aに対して上方から接触し、スライドピン321の持ち上がりを規制する当接部材332が設けられている。当接部材332は、スライドピン321に向かってバネ力を作用させる板バネ部材とし、保持部材33に固定的に取り付けられることが好ましい。
【0048】
本実施の形態3に係る制御装置30では、スライドピン321の小径部321aが当接部材332に常に接触することで、スライドピン321の持ち上がり、ひいてはスライドピン321に接続された可動軸311の持ち上がりを防止することができる。これにより、ソレノイド31の部品摩耗を抑制することができる。
【0049】
また、当接部材332は、これを板バネ部材とすることで、支持ピン331と当接部材332との間でスライドピン321の小径部321aを挟み込み力が大きくなりすぎることを抑制でき、スライドピン321のスライド移動を阻害しないようにすることができる。
【0050】
上記実施の形態1~3で説明した制御装置30は、部品点数の削減および燃料噴射ポンプ20に対する位置精度向上の観点より、エンジン10に対して直接取り付けられることが好ましい。この場合の具体例としては、エンジン10のブラケットを制御装置30における保持部材33として使用することが考えられる(
図1参照)。このように、制御装置30をエンジン10に対して直接取り付ける場合、制御装置30はエンジン10に含まれる構成であると見なすことができる。
【0051】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
【符号の説明】
【0052】
10 エンジン
20 燃料噴射ポンプ
21 ストップレバー(燃料噴射制御レバー)
30 制御装置
31 ソレノイド
311 可動軸
312 スリーブ
312a ガイド穴
32 リンク機構
321 スライドピン(スライド部材)
321a 小径部
322 第1リンク板(回動部材)
323 第2リンク板(回動部材)
322a,323a 長孔
324 回転軸
325 連結軸(連結部材)
325a 貫通孔
326 伝達ロッド
33 保持部材
331 支持ピン(支持部材)
332 当接部材